特許第6968985号(P6968985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6968985乗客収容保持装置、娯楽用乗り物用のための少なくとも1個のこのような乗客収容保持装置を備えた車両、車両を運転するための方法、及び少なくとも1個のこのような車両を備えた娯楽用乗り物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968985
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】乗客収容保持装置、娯楽用乗り物用のための少なくとも1個のこのような乗客収容保持装置を備えた車両、車両を運転するための方法、及び少なくとも1個のこのような車両を備えた娯楽用乗り物
(51)【国際特許分類】
   A63G 7/00 20060101AFI20211111BHJP
   B60N 99/00 20060101ALI20211111BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20211111BHJP
【FI】
   A63G7/00
   B60N99/00
   B60N2/90
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-511957(P2020-511957)
(86)(22)【出願日】2018年8月14日
(65)【公表番号】特表2020-531188(P2020-531188A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(86)【国際出願番号】EP2018072001
(87)【国際公開番号】WO2019048194
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】102017120645.0
(32)【優先日】2017年9月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507357047
【氏名又は名称】マック ライデス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ベヘラー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュラーデ、シュテファン
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05015933(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0015394(US,A1)
【文献】 実開平02−082653(JP,U)
【文献】 特開2015−074350(JP,A)
【文献】 特表2017−523393(JP,A)
【文献】 欧州特許第03003789(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 1/00−33/00
B60N 99/00
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
娯楽用乗り物(14)のための乗客収容保持装置であって、
乗客を収容保持するための収容保持部分(16)と、
拘束装置(24)であって、前記収容保持部分(16)への乗客のアクセスを可能にする開放位置と、前記収容保持部分(16)内に容された乗客を拘束することができる閉鎖位置との間で位置調節可能である拘束装置(24)と、
ロック状態で前記拘束装置(24)を閉鎖位置に固定し、ロック解除状態で前記拘束装置(24)を解放するロック可能な安全装置(32)と、
認識手段(55)を有するチェックユニット(52)であって、認識手段(55)によって、前記安全装置(32)がロック状態にあるかロック解除状態にあるかを冗長的に及びフェールセーフ的に確認することができ、相応する状態信号を発生するチェックユニット(52)と、を備えており、
前記安全装置(32)を権限のある人によってのみロック状態にすることができ、
前記チェックユニット(52)が操作検出手段(53)を備え、この操作検出手段によって、前記安全装置(32)がロック状態にあるか又はロック解除状態にあるかを操作に対して安全に確認することができ娯楽用乗り物(14)のための乗客収容保持装置。
【請求項2】
前記安全装置(32)が、乗客収容保持装置又は前記拘束装置(24)に固定された保持要素(34)と、保持要素(34)と相対的に動くことができる相手方要素(36)とを備え、相手方要素(36)が前記安全装置(32)のロック状態で保持要素(34)によって定置保持され、前記操作検出手段(53)が少なくとも相手方要素(36)上に配置された、前記チェックユニット(52)によって読み取ることができる識別手段(54)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の乗客収容保持装置。
【請求項3】
前記安全装置(32)が操作可能な安全スイッチ(40)を備え、この安全スイッチが前記拘束装置(24)を固定及び解放するために、前記保持要素(34)と協働することを特徴とする、請求項に記載の乗客収容保持装置。
【請求項4】
前記保持要素(34)が前記安全スイッチ(40)によって形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の乗客収容保持装置。
【請求項5】
前記安全装置(32)がロック状態にあるかどうかを確認できるように、前記チェックユニット(52)と前記安全スイッチ(40)が形成されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の乗客収容保持装置。
【請求項6】
前記チェックユニット(52)と前記安全装置(32)の定置された構成要素が1つの構造ユニットにまとめられていることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の乗客収容保持装置。
【請求項7】
前記相手方要素(36)が自動開放するように前記保持要素(34)と協働することを特徴とする、請求項3〜6のいずれか一項に記載の乗客収容保持装置。
【請求項8】
前記相手方要素(36)がベルト舌片(42)として形成され、このベルト舌片が前記拘束装置(24)又は乗客収容保持装置に連結されたベルト(44)に固定されていることを特徴とする、請求項3〜7のいずれか一項に記載の乗客収容保持装置。
【請求項9】
前記ベルト(44)がベルト長さ調節装置(46)を備えていることを特徴とする、請求項に記載の乗客収容保持装置。
【請求項10】
前記ベルト(44)がその自由端に、掴み部分(48)を形成していることを特徴とする、請求項又はに記載の乗客収容保持装置。
【請求項11】
前記ベルト(44)の固定された端部が負荷解除要素(50)に連結されていることを特徴とする、請求項10のいずれか一項に記載の乗客収容保持装置。
【請求項12】
前記乗客収容保持装置が固定保持ユニット(28)を備え、この固定保持ユニットによって、前記拘束装置(24)が少なくとも閉鎖位置に固定保持可能であることを特徴とする、請求項11のいずれか一項に記載の乗客収容保持装置。
【請求項13】
前記乗客収容保持装置が検査ユニット(56)を備え、この検査ユニットによって、前記固定保持ユニット(28)の機能性が確認可能であり、前記検査ユニット(56)が相応する機能性信号を発生することを特徴とする、請求項12に記載の乗客収容保持装置。
【請求項14】
請求項13に記載の少なくとも1個の乗客収容保持装置(10)を備えている、娯楽用乗り物(14)のための車両。
【請求項15】
車両(12)が、
少なくとも2個の乗客収容保持装置(10)と、
前記チェックユニット(52)と通信を行う通信システム(58)と、を備え、この通信システムによって、前記チェックユニット(52)の状態信号が当該の乗客収容保持装置(10)に一義的に割り当て可能であることを特徴とする、請求項14に記載の車両。
【請求項16】
前記検査ユニット(56)の機能性信号が当該の乗客収容保持装置(10)に割り当て可能であるように、前記通信システム(58)が前記検査ユニット(56)と通信を行うことを特徴とする、請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記拘束装置(24)を閉鎖位置に動かすステップと、
ロック状態にセットされる前記安全装置(32)を用いて、前記拘束装置(24)を閉鎖位置に固定するステップと、
前記安全装置(32)がロック状態にあるかどうかを前記認識手段(55)を用いて、及び相応する状態信号の発生を前記チェックユニット(52)を用いて、冗長的及びフェールセーフ的に確認するステップと、を有する、請求項15又は16に記載の車両を運転するための方法。
【請求項18】
前記安全装置(32)がロック状態にあるかどうかを前記操作検出手段(53)を用いて、及び相応する信号の発生を前記チェックユニット(52)を用いて、操作に対して安全に確認するステップを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記検査ユニット(56)を用いて、前記固定保持ユニット(28)の機能性と、相応する機能性信号の発生とを検査するステップを有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記通信システム(58)を用いて機能性信号を当該の乗客収容保持装置(10)に割り当てるステップと、
当該の乗客収容保持装置(10)の固定保持ユニット(28)の機能性が与えられていない場合に、前記拘束装置(24)を閉鎖位置に固定することによって、当該の乗客収容保持装置(10)を封鎖するステップと、を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記安全装置(32)をロックすることによって、前記拘束装置(24)を閉鎖位置に固定するステップを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記安全装置(32)と前記安全スイッチ(40)をロック解除するステップと、
前記相手方要素(36)がこれ以上前記保持要素(34)に接触しなくなるまで、前記拘束装置(24)と安全弓形部材(25)を閉鎖位置から徐々に動かすステップと、
前記相手方要素(36)が前記保持要素(34)に接触しなくなったときに、前記拘束装置(24)と前記安全弓形部材(25)を開放位置に動かすステップと、を有する、請求項1721のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記車両(12)が請求項1722のいずれか一項に記載の方法によって運転可能である、請求項1416のいずれか一項に記載の車両(12)を備えた、娯楽用乗り物(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、娯楽用乗り物のための乗客収容保持装置に関する。本発明はさらに、娯楽用乗り物のための少なくとも1個のこのような乗客収容保持装置を備えた車両と、車両を運転するための方法に関する。本発明はさらに、少なくとも1個のこのような車両を備えた娯楽用乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
娯楽用乗り物を経済的に運転できるようにするためには、娯楽用乗り物が魅力的であることがきわめて重要である。従って、乗客が驚くようなできるだけ多くの走行体験を実現する努力がなされる。ジェットコースタに関しては、この走行体験は特に宙返り、急なカーブ、大きな勾配を有する区間及びらせん形区間によって実現される。
【0003】
この走行体験は、乗客が娯楽用乗り物内で安全に拘束され得るときにのみ実現可能である。そのために、娯楽用乗り物は乗客収容保持装置を備えた多数の車両を備えている。乗客は乗客収容保持装置内に着座し、姿勢を調整し或いは、収まることができる。乗客収容保持装置内で、乗客はしばしば安全弓形部材を有する拘束装置によって保持される。そのために、拘束装置及び特に安全弓形部材は、乗客収容保持装置への乗客のアクセスを可能にする開放位置から閉鎖位置へ操作される。この閉鎖位置では、乗客は走行中に大きな加速度及び荷重の場合にも乗客収容保持装置から落下しないように、乗客収容保持装置内で拘束装置と協働する。安全弓形部材は位置調節装置によって開放位置と閉鎖位置の間で調節される。位置調節装置は通常は、液圧システムによって動作する。しかし、位置調節装置を機械的に、電気的に又は空気圧的に動かすこともできる。さらに、安全弓形部材を乗客自身によって或いは娯楽用乗り物の管理者によって、開閉位置と閉鎖位置との間で調節することもできる。
【0004】
乗客が走行中に乗客収容保持装置から落下しないように、拘束装置を閉鎖位置に固定しなければならない。そのために、ロック可能な安全装置が使用される。この安全装置はロック状態で拘束装置を閉鎖位置に固定し、ロック解除状態で拘束装置を解放する。安全装置はいろいろな形状に形成可能であり、例えば機械的に、空気圧的に又は液圧的に拘束装置を閉鎖位置に固定することができる。よって、用語「ロック可能」は機械的なロックの存在を前提としていない。
【0005】
多くの場合、娯楽用乗り物の乗客又は管理者は安全装置をロックされた状態にしなければならない。この場合、誤操作を発生し得るので、安全装置は拘束装置を閉鎖位置に固定することを保証しない。そのため、乗客の安全性が保証されない。これはあらゆる状況下で回避しなければならない。安全装置の誤操作にもかかわらず走行が開始されることを防止するために、例えば(特許文献1)によるチェックユニットが知られている。このチェックユニットは、安全装置が正しくロックされているかどうかを確認することができる。若干のチェックユニットは、少なくとも1個の安全装置がロックされていないことを確認すると、走行を開始できないように形成されている。しかし、チェックユニットはその固有の状態を示して異常を指示することはできない。従って、チェックユニットが完璧には機能しないことが起こりうる。例えば、チェック装置は、安全装置がロックされていなくてもロックされていると報告し得る。これは特に、娯楽用乗り物の管理者が、チェック装置の情報を信用して、安全装置の手動の又は視覚的な検査を省略する傾向があるため問題である。
【0006】
安全装置は多くの場合、乗客の手の届く範囲に配置されている。上記のように形成されたチェックユニットの場合には、乗客は、意図的に安全装置をロック状態にしないか又は再びロック解除することによって、走行の開始を阻止するか又は遅らせることができる。さらに、安全装置がロックされていなくてもチェックユニットが安全装置のロックを確認するように、乗客は例えば持参した金属板を安全装置に挿入することができる。従って、少なくとも1個の安全装置がロックされていなくても、走行が開始され得る。これは予測のつかない結果をもたらし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7837566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、娯楽用乗り物の運転の安全性を高めることができ、かつ乗客によって引き起こされる遅延を回避することができる乗客収容保持装置を提供することである。特に、安全装置が実際にロック状態にあるかどうかを確認することができる乗客収容保持装置を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の実施と実現の根底をなす課題は、安全性を高めてかつ少ない遅延で運転することができる娯楽用乗り物のための車両と娯楽用乗り物を提供することである。さらに、本発明の実施形態の根底をなす課題は、このような車両を運転するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1、15、18及び23に記載した特徴によって解決される。有利な実施形態は従属請求項の対象である。
本発明の実施形態は、乗客を収容保持するための収容保持部分と、拘束装置であって、収容保持部分への乗客のアクセスを可能にする開放位置と、収容保持された乗客が収容保持部分内で拘束装置と協働することができる閉鎖位置との間で位置調節可能である拘束装置と、ロック状態で拘束装置を閉鎖位置に固定し、ロック解除状態で拘束装置を解放するロック可能な安全装置と、認識手段を有するチェックユニットであって、認識手段によって、安全装置がロック状態にあるかロック解除状態にあるかどうかを冗長的に及びフェールセーフ的に確認することができ、相応する状態信号を発生するチェックユニットと、を備える、娯楽用乗り物のための乗客収容保持装置に関する。
【0011】
「フェールセーフ的に」とは次のように理解される。状態信号は、安全装置がロック状態にあるかどうかについての情報だけでなく、チェックユニットが適切に機能しているかどうかについての情報も含んでいる。認識手段が冗長的に形成されているので、認識手段の誤動作は、安全装置の実際の状態を示す状態信号をもたらさない。さらに、チェックユニットは、1個又はすべての認識手段の故障又は誤動作が認識されるように形成されている。チェックユニットは少なくとも認識手段に関して自己検査を行う。そのために、チェックユニットは例えば、少なくとも2つの認識手段を直列に接続配置した検査回路を備えている。検査回路は抵抗測定を行う。1個又はすべての認識手段が不正確に作動すると、抵抗が変化する。
【0012】
チェックユニットが正確に作動しているか否かの情報は同様に、状態信号に含まれている。従って、認識手段が適切に機能していないときには、それだけでも娯楽用乗り物の運転を中断することができる。これによって、安全装置の状態を確実に確認することなしに、娯楽用乗り物を運転することが防止される。これにより、娯楽用乗り物の運転安全性が高められる。
【0013】
他の実施形態によれば、チェックユニットは操作検出手段を備え、この操作検出手段によって、安全装置がロック状態にあるか又はロック解除状態にあるかを、操作に対して安全に確認することができる。この場合、チェックユニットは相応する状態信号を発生する。
【0014】
娯楽用乗り物の運転は特に、チェックユニット及び/又は安全装置が不正操作をできないように設計されているため安全である。操作に対して安全な設計は例えば、権限のある人、特に娯楽用乗り物の管理者だけが安全装置をロック状態にすることができるようにすることによって実現可能である。そのために、操作検出手段は近接センサを備えることができる。娯楽用乗り物の管理者がこの近接センサを持っているので、管理者が安全装置のすぐ近くにとどまるときにのみ、安全装置をロック状態にすることができる。
【0015】
さらに、安全装置は、一度ロック状態になると直ちにロック状態を固定保持し、走行の終了後再び変更できるように形成可能である。特に、古い娯楽用乗り物の場合には、走行中に安全装置を再びロック解除状態にすることができる。最新の娯楽用乗り物の場合にも、ロックされた状態が走行開始直前から走行終了まで維持されるので、乗り込んだ乗客はそのときまで、安全装置を再びロック解除状態にし、運転の開始を遅らせることができる。
【0016】
安全装置がロック状態にあるかロック解除状態にあるかを、操作に対して安全に確認することができることによって、運転の開始が確実になり、予定どおりになる。チェックユニットが状態信号を発生することにより、安全装置がロック状態にあるか又はロック解除状態にあるかを直ちに確認することができる。娯楽用乗り物の管理者は直ちに介入し、結果として生じる運転の開始遅延を少なくすることができる。
【0017】
他の実施形態に応じて、安全装置は乗客収容保持装置又は拘束装置に固定された保持要素と、この保持要素と相対的に動くことができる相手方要素を備え、この相手方要素は安全装置のロック状態で保持要素によって定置保持され、操作検出手段は少なくとも相手方要素上に配置された、チェックユニットによって読み取ることができる識別手段を備えている。保持要素は乗客収容保持装置又は拘束装置に対して動かないように固定されている。これに対して、相手方要素は保持要素と相対的に動くことができる。例えば、保持要素は突起として形成可能であり、相手方要素は錠の落とし穴のように形成可能であり、またその逆に形成することもできる。それによって、ロック状態ではかみ合い連結が生じる。代わりに、磁力を発生してもよい。この磁力によって、相手方要素は保持要素によって保持される。
【0018】
識別手段によって、予定の相手方要素だけが保持要素と協働することを一義的に確認することができる。識別手段は例えば相手方要素に取付けられたバーコード、トランスポンダ又はRFIDチップとして形成可能である。人の目には見えないように、識別手段を相手方要素に取付けることが望ましい。これにより、識別手段の意図的な破壊を防止することができる。よって、操作が防止される。
【0019】
発展実施形態では、安全装置が操作可能な安全スイッチを備え、この安全スイッチは拘束装置を固定及び解放するために、保持要素と協働する。安全スイッチの使用は特に、制御回路内に組み込み可能であり、それによって遠隔制御可能であるという利点がある。さらに、安全スイッチが識別ラベルを備えることができるので、状態信号を所定のチェックユニットに一義的に割り当てることができる。それによって、娯楽用乗り物の管理者は、どの安全装置がロック状態にあるか否かの情報を受け取る。管理者が介入しなければならない場合には、管理者はどの乗客収容装置が該当するのかを知っているので、長時間かかる捜索が省略される。
【0020】
発展形態では、保持要素が安全スイッチによって形成可能である。これにより、簡単に組立て可能なコンパクトなモジュールが生じる。さらに、部品の数が少なくなる。よって、エラーの生じる可能性が小さくなる。
【0021】
他の実施形態は、安全装置がロック状態にあるかどうかを、PLeレベル又はSIL3レベルで確認できるように、チェックユニットと特に安全スイッチが形成されていることを特徴とする。PLとはいわゆるパフォーマンスレベルであると理解される。このパフォーマンスレベルは規格EN13849に定義されている。パフォーマンスレベルは安全機能の信頼性の程度である。この場合、レベルaは最も低い段階を示し、レベルeは最も高い段階を示す。SILは安全保全レベルを示し、同様に安全機能の信頼性を表す。レベルPLeとSIL3レベルは、リスク低減に対する大きな寄与を保証する。これに相応して、娯楽用乗り物の運転の安全性が高い。
【0022】
他の実施形態では、チェックユニットと安全装置の定置された構成要素が1つの構造ユニットにまとめられている。基本的には、安全装置とチェックユニットの機能は、空間的に分離して配置可能である異なる下位単位に分配可能である。その場合、用語「安全装置」と「チェックユニット」は、構造的に関連するユニットでなければならないと解釈すべきではない。例えば光学的に又は誘導的に動作可能な認識手段を、分析要素に対して空間的に分離して配置することができる。この分析要素は認識手段の信号を分析し、状態信号を発生する。さらに、娯楽用乗り物の管理者への状態信号の伝達は、他のユニットが引き受けることができる。
【0023】
しかし特に、チェックユニットと安全装置の定置された構成要素を安全スイッチ内でまとめることができる。定置された構成要素とは、場所を固定して乗客収容保持装置内に設置されているか又は乗客収容保持装置内で正確に定められた位置の間の所定の軌道に沿って動く構成要素であると理解される。例えば、相手方要素は定置された構成要素を形成しない。これは、相手方要素が、その軌道を設定することなしに、保持要素と相対的に動くことができるためである。保持要素は乗客収容装置内で正確に定めることができる2つの位置の間の設定された軌道に沿って移動することができ、従ってその可動性にもかかわらず定置された構成要素を形成する。
【0024】
安全装置とチェックユニットの定置された構成要素を1つの構造ユニットにまとめることは、特に組立ての際に有利である。これは、チェックユニットと安全装置のいろいろな構成要素の配線が省略されるか又は少なくとも大幅に簡単化されるためである。さらに、ロジスティクスと在庫管理が簡単になる。これは、1つの構造ユニットだけを在庫すればよく、多数の個々の構成要素を在庫する必要がないためである。
【0025】
安全装置の定置されたすべての構成要素とチェックユニット、ひいてはその機能が、1つの構造ユニットにまとめられるときにも、個々のケースで、構造ユニットの外に配置された1つ又は複数の要素によって1つ又は複数の機能を実施することが有利な場合がある。その際、構造ユニットの外に配置された要素によって実施される機能の種類と数は自由に選択可能である。
【0026】
他の実施形態の場合には、相手方要素が自己開放するように保持要素と協働する。自己開放するように協働するとは、安全装置がロック解除状態にセットされるときに、相手方要素が解放されるだけでなく、保持要素から離れるように移動させられることであると理解される。これは例えば、相手方要素を保持要素の方へ動かす際に、相手方要素と協働するばねが圧縮されることによって達成される。圧縮されたばねはロック状態で保持要素によって圧縮保持され、ロック解除状態で解放される。解放時に、ばねは相手方要素を保持要素から離れるように動かす。これによって、乗客は安全装置がロック解除されたことのリターン情報を受け取る。乗客自身はこれに関して何ら行う必要はない。さらに、乗客が気づかずに既に行われたロック解除を待つことが防止される。これによって、乗客は、ロック解除が行われた直後、乗客収容保持装置から離れることができる。よって、娯楽用乗り物の稼働率が高まる。
【0027】
他の実施形態に応じて、相手方要素はベルト舌片として形成され、このベルト舌片は拘束装置又は乗客収容保持装置に連結されたベルトに固定されている。ベルト舌片と引張り力伝達手段としてのベルトを備えたベルトシステムは、低コストで調達することができ、動作に信頼性があり、そして簡単に操作及び交換することができる。
【0028】
他の実施形態は、ベルトがベルト長さ調節装置を備えていることを特徴とする。ベルト長さ調節装置によって、乗客及び/又は管理者はベルト有効長さを体の寸法に合わせることができる。従って、乗客は一方では快適に、他方では確実に乗客収容保持装置内に収容保持される。
【0029】
他の実施形態は、ベルトがその自由端に、掴み部分、特にベルトループを形成していることを特徴とする。掴み部分、特にベルトループは、ベルトの掴みと特にベルト長さの調節を容易にする。ベルトループの代わりに、掴み部分を形成するために、良好に掴むことができる、ボールのような物体を、ベルトに嵌め込むことができる。
【0030】
他の実施形態では、ベルトの自由端は負荷解除要素に連結可能である。固定保持ユニットは、運転中に拘束装置に作用する力の大部分を受け止めるように設計される。負荷解除要素により、運転中ベルトは著しく低下した負荷下でのみ運転され、それによってベルトの摩耗が低減され、まれにしか交換しなくてよい。負荷解除要素自体は乗客収容保持装置に又は車両の適当な個所に固定することができる。
【0031】
他の実施形態の場合には、乗客収容保持装置が固定保持ユニットを備え、この固定保持ユニットによって、拘束装置を少なくとも閉鎖位置に固定保持可能である。この場合、拘束装置が分離された2つのシステムによって閉鎖位置に保持されるので、固定保持ユニットが故障した場合に冗長性が達成される。そして、拘束装置は安全装置によって閉鎖位置に保持される。
【0032】
発展した実施形態では、乗客収容保持装置が検査ユニットを備え、この検査ユニットによって、固定保持ユニットの機能性が確認可能であり、検査ユニットが相応する機能性信号を発生する。固定保持ユニットは例えば液圧又は空気圧で動作可能である。検査ユニットによって、固定保持ユニットが適切に機能しているかどうかを検出することができる。機能していない場合には、検査ユニットが相応する機能性信号を発生するので、特に娯楽用乗り物の管理者は適切な対策を講じることができる。固定保持ユニットの機能性は検査ユニットなしでも検査可能であり、例えば拘束装置の手動の及び/又は視覚的な点検によって検査可能である。この点検は娯楽用乗り物の管理者によって行われる。
【0033】
本発明の他の実施形態は、上記の実施形態のいずれか一つに記載した少なくとも1つの乗客収容保持装置を備えた娯楽用乗り物のための車両に関する。
提案した車両によって達成可能な技術的な効果及び利点は、乗客収容保持装置について説明したものと一致している。要約すると、乗客による安全装置の操作が困難であるか又は不可能であるので、車両の運転時に安全性が高められ、乗客によって引き起こされる遅延が少なくなる。
【0034】
他の実施形態では、車両が、少なくとも2個の乗客収容保持装置と、チェックユニットと通信を行う通信システムとを備え、この通信システムによって、チェックユニットの状態信号を当該の乗客収容保持装置に一義的に割り当てることができる。チェックユニットは通信システムによって読み取ることができる識別ラベルを備えている。この識別ラベルは、チェックユニットによってチェックされる乗客収容保持装置に対するチェックユニットの割り当てを可能にする。それによって、娯楽用乗り物の管理者は、どの安全装置がロック状態であり、どの安全装置がロック状態ではないかの情報を得る。管理者の介入が必要である場合には、長時間かかる捜索が省略される。これによって、運転開始の遅延が少なくなる。
【0035】
他の実施形態では、検査ユニットの機能性信号が当該の乗客収容保持装置に割り当て可能であるように、通信システムが検査ユニットと通信を行う。上述のように、検出ユニットを用いて、固定保持ユニットが適切に機能しているかどうかを検出することができる。適切に機能していない場合には、検査ユニットが相応する機能性信号を発生するので、特に娯楽用乗り物の管理者は適切な対策を講じることができる。検査ユニットも、通信システムによって読み取ることができる識別ラベルを備えている。この識別ラベルは、検査ユニットによって検査される乗客収容保持装置に対する検査ユニットの割り当てを可能にする。管理者の介入が必要である場合には、長時間かかる捜索が省略される。これによって、運転開始の遅延が少なくなる。
【0036】
本発明の実施形態は、上記実施形態のいずれか一つに記載した車両を運転するための方法に関し、この方法は、
拘束装置を閉鎖位置に動かすステップと、
ロック状態にセットされる安全装置を用いて、拘束装置を閉鎖位置に固定するステップと、
安全装置がロック状態にあるかどうかを認識手段を用いて及び相応する状態信号の発生をチェックユニットを用いて、冗長的及びフェールセーフ的に確認するステップと、を有する。
【0037】
提案した方法によって達成可能な技術的な効果及び利点は、乗客収容保持装置について説明したものと一致している。強調したい点は、認識手段の機能性に関する情報を適切に表すことと、冗長的に設計された認識手段の一つが故障した場合に、対応する指示を状態信号によって得ることが、提案した方法によって可能であり、それによって対策を直ちに又は間もなく講じることができることである。
【0038】
発展実施形態では、方法は、
安全装置がロック状態にあるかどうか及び相応する状態信号の発生を、操作検出手段を用いて、操作に対して安全に確認するステップを有する。
【0039】
当該の車両は、安全性を高めて及び乗客によって引き起こされる遅延を減らすことによって運転可能である。これは、乗客による安全装置の操作が困難又は不可能になるためである。
【0040】
他の実施形態では、方法は、
検査ユニットを用いて、固定保持ユニットの機能性を検査し、相応する機能性信号を発生するステップを有する。
【0041】
この実施形態では、固定保持ユニットが適切に機能するかどうかを確認することができる。機能性信号に基づいて、娯楽用乗り物の管理者は固定保持ユニットの状態に関する実際の情報を有する。
【0042】
固定保持ユニットが適切に機能しないときには、直ちに対策を講じることができ、それによって運転安全性が高まる。
発展実施形態では、方法は、
通信システムを用いて機能性信号を当該の乗客収容保持装置に割り当てるステップと、
当該の乗客収容保持装置の固定保持ユニットの機能性が与えられていない場合に、拘束装置を閉鎖位置に固定することによって、当該の乗客収容保持装置を封鎖するステップと、を有する。
【0043】
通信システムを介して、固定保持ユニットが適切に機能していない乗客収容保持装置を直ちに識別することができる。この場合、当該の乗客収容保持装置が封鎖されるので、これ以上この乗客収容保持装置を乗客が使用することができない。これは、拘束装置がロープによって、乗客収容保持装置の収容保持部分へのアクセスを遮断する位置にもたらされることによって行われる。これにより、固定保持ユニットが適切に機能しないにもかかわらず当該の乗客収容保持装置が使用されることが防止される。固定保持ユニットが適切に機能する残りの乗客収容保持装置はさらに使用可能である。
【0044】
公知の娯楽用乗り物の場合には、車両の一列の乗客収容保持装置のすべての安全弓形部材が、同じ液圧回路によって操作される。通常は、少なくとも4個の乗客収容保持装置が一列に配置されている。1個の乗客収容保持装置において固定保持ユニットが適切に機能しないときには、全列の乗客収容保持装置を停止しなければならない。それによって、娯楽用乗り物の収容力が非常に小さくなる。
【0045】
提案によれば、実際に該当する乗客収容保持装置だけが停止させられる。適切に機能しない乗客収容保持装置は運転終了後修理されるか又は交換される。これによって、娯楽用乗り物の収容力は、絶対的に必要な程度しか制限されない。
【0046】
発展実施形態において方法は、
安全装置をロックすることによって、拘束装置を閉鎖位置に固定するステップを有する。
【0047】
安全装置がいずれにしても設けられているので、固定保持ユニットが適切に機能しない場合には、拘束装置を閉鎖位置に固定するため及び乗客が当該の乗客収容保持装置にアクセスすることを防止するために、安全装置を利用することができる。拘束装置を閉鎖位置に固定するための付加的な手段は不要になる。これによってさらに、故障した固定保持ユニットを有する乗客収容保持装置が実際に封鎖されているかどうかのチェックを行うことができる。通信システムは固定保持ユニットの機能性に関する情報と、安全装置の状態に関する情報を提供する。固定保持ユニットが適切に機能しない場合には、同じ乗客収容保持装置の安全装置がロック状態にあるときにのみ、走行を開始することができる。ロックされた状態は運転終了まで解消されない。
【0048】
発展実施形態において方法は、
安全装置と特に安全スイッチをロック解除するステップと、
相手方要素が保持要素に接触しなくなるまで、拘束装置と特に安全弓形部材を閉鎖位置から徐々に動かすステップと、
相手方要素が保持要素に接触しなくなったときに、拘束装置と特に安全弓形部材を開放位置に動かすステップと、を有する。
【0049】
上述のように、相手方要素は保持要素と自己開放するように協働する。そのために、相手方要素を安全装置内に入れる際に、例えばばねが圧縮される。ばねは応力除去時に負荷解除され、相手方要素を保持要素から離れるように押す。この解決策の場合しかし、相手方要素がコントロールされずに安全装置から飛び出し、車両のパネル部品又は娯楽用乗り物の乗客又は管理者に当たることがある。これを防止するために、この実施形態での方法は、先ず最初に安全装置がロック解除され、続いて相手方要素が、保持要素と接触しなくなるまで、安全弓形部材によって安全装置から外に徐々に引っ張られる。そのために、安全弓形部材は閉鎖位置から開放位置の方へ移動する。この場合、相手方要素はゆっくりとコントロールされて移動する。相手方要素が保持要素から十分に離れているときは、安全弓形部材は開放位置ヘ移動可能である。相手方要素が保持要素から十分に離れているという情報は、安全弓形部材の位置を介して或いは操作検出手段を介して発生可能である。例えば安全スイッチがRFIDチップをこれ以上認識できないときは、これは、安全弓形部材が開放位置に移動可能であるという情報として評価される。
【0050】
必要な場合、相手方要素が完全に安全装置から外に引っ張られているときに、安全弓形部材を所定の時間停止することができる。それによって、例えば相手方要素の振り子運動を減衰することができ、この振り子運動は開放位置への安全弓形部材の移動によって増幅されない。
【0051】
本発明は、前述の実施形態のいずれか一つに記載の車両を備えた娯楽用乗り物に関する。この場合、車両は上述の実施形態のいずれか一つに記載の方法によって運転可能である。
【0052】
提案に係る娯楽用乗り物によって達成可能な効果と利点は、本乗客収容保持装置、提案に係る娯楽用乗り物及び本方法について説明したものに一致する。要約すると、車両は安全性が高められ、乗客によって引き起こされる遅延が少ない。これは、乗客による安全装置の操作が困難であるか又は不可能であるためである。
【0053】
次に、添付の図を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明に係る乗客収容保持装置の実施の形態を示す斜視図である。
図2図1に示した乗客収容保持装置の正面図である。
図3図2の切断面A−Aに沿った乗客収容保持装置の断面図である。
図4図3に示した範囲Xの拡大図である。
図5】本発明に係る相手方要素の原理的な平面図である。
図6】本発明に係る乗客収容保持装置を多数備えている娯楽用乗り物の原理的な平面図である。
図7a】提案に係る安全装置のロック状態を示す斜視図である。
図7b図7aに示した安全装置のロック解除状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1図3において、本発明に係る乗客収容保持装置10の実施の形態がいろいろな図によって示される。乗客収容保持装置10は図6に示した車両12に配置され、この車両は娯楽用乗り物14の一部である。
【0056】
乗客収容保持装置10は収容保持部分16を備えている。この収容保持部分は図示した実施形態では乗客座席として形成され、この乗客座席は座面18(図3参照)と、背もたれ20と、2つの側方支持部22を備えている。乗客収容保持装置10はさらに、安全弓形部材25を有する拘束装置24を備えている。この安全弓形部材は乗客収容保持装置10に回転可能に取付けられ、位置調節装置26によって図示していない開放位置と図1図3に示した閉鎖位置との間で調節可能である。位置調節装置26は図示した実施の形態では、安全弓形部材25を開放位置及び閉鎖位置に固定保持できるように形成されている。その点では、位置調節装置26は固定保持ユニット28としても役立つ。そのために、位置調節装置26又は固定保持ユニット28は例えば図示していない液圧システムに接続されている。
【0057】
開放位置では、乗客が収容保持部分16にアクセス可能であるので、乗客は収容保持部分16に着座し、そして再びこの収容保持部分から立ち上がることができる。
安全弓形部材25は大腿部クッション30を備えている。この大腿部クッションは閉鎖位置で、収容保持部分16に着座した図示していない乗客の大腿の上に置かれる。
【0058】
本発明に係る乗客収容保持装置10はさらに安全装置32を備えている。この安全装置は特に図3図4に良好に示してある。図示した実施の形態では、安全装置32は保持要素34と相手方要素36を備えている。保持要素34は安全スイッチ40上に配置された突起38として形成されている。相手方要素36はベルト44に連結されたベルト舌片42として形成され、開口45を形成している(図5参照)。さらに、ベルト44を選択可能な長さに固定するベルト長さ調節装置46が設けられている。ベルト44はさらに、その自由端に、掴み部分48を形成している。この掴み部分はここではベルトループとして形成されている。ベルト44は自由端とは反対側の端部に、負荷解除要素50によって乗客収容保持装置10に固定されている。
【0059】
安全スイッチ40は安全弓形部材25の大腿部クッション30内に配置されている。この安全スイッチ40によって、保持要素34を軸方向に動かすことができる。保持要素34は第1端位置でベルト舌片42の開口45にかみ合い係合する。一方、保持要素34の第2端位置では、かみ合い係合は不可能である。
【0060】
安全スイッチ40にはチェックユニット52が組み込まれている。このチェックユニットは認識手段55を備えている。この認識手段によって、安全装置32がロック状態にあるか否かについての情報を冗長的に及びフェールセーフ的に提示することができる。制御ユニット52はさらに、操作検出手段53を備えている。この操作検出手段によって、安全装置32がロック状態にあるか否かを、操作に対して安全に確認することができる。操作検出手段53は相手方要素36に配置された識別手段54を含んでいる。この識別手段は例えばRFIDチップとして形成可能である。その際、安全スイッチ40のチェックユニット52は識別手段54を読み取ることができ、従って正しい相手方要素36が安全装置32に挿入されているかどうかを確認することができる。さらに、安全スイッチ40は、保持要素34が実際に相手方要素36にかみ合い係合しているかどうかを確認することができる。安全装置32は、保持要素34が正しいものであることが確認された相手方要素36に係合しているときにのみ、ロック状態にある。安全スイッチ40は、チェックユニット52と安全装置32の定置部品をまとめた構造ユニットを形成している。
【0061】
乗客収容保持装置10はさらに、検査ユニット56を備えている。この検査ユニットによって、固定保持ユニット28が適切に機能しているか否かを検査することができる。娯楽用乗り物14は検査ユニット56なしでも、本発明に従って運転可能である。この場合、固定保持ユニット28の機能性は娯楽用乗り物14の管理者によって特に目視によって検査される。
【0062】
娯楽用乗り物14は図6に示した通信システム58を備えている。この通信システム58は娯楽用乗り物14の制御ユニット60とチェックユニット52と検査ユニット56に接続されている。制御ユニット60は通常ハウジング61内に配置されている。このハウジング内で、娯楽用乗り物14の運転に対して責任をもつ管理者が作業している。ハウジング61内にはディスプレイ63が配置されている。このディスプレイは制御ユニット60に接続され、娯楽用乗り物12の状態に関する重要なすべての情報を表示する。さらに、娯楽用乗り物14の管理者によって使用される、ウェアラブル、タブレットのような幾つかの可搬式端末機器62を、通信システム58に接続することができる。
【0063】
チェックユニット52と検査ユニット56はそれぞれ識別ラベルを有する。この識別ラベルが通信システム58を経て制御ユニット60に伝送可能であるので、チェックユニット52と検査ユニット56は一義的に識別可能であり、かつそれによって監視される乗客収容装置10に割り当て可能である。
【0064】
娯楽用乗り物14は次のように運転される。先ず最初に、拘束装置24が位置調節装置26によって開放位置に動かされるので、乗客は乗客収容保持装置10の収容保持部分16に入る。乗客が収容保持部分16内に着座した後で、拘束装置24が位置調節装置26によって閉鎖位置にセットされる。開放位置と閉鎖位置の間の操作は代替的に、娯楽用乗り物14の管理者によって或いは乗客自身によって行うことができる。続いて、拘束装置24が固定保持ユニット28によって閉鎖位置に固定される。娯楽用乗り物14の管理者は、安全弓形部材25のセット間違いと機能エラーを識別するために、体に対する安全弓形部材25の密接を検査し、安全弓形部材25を引っ張る。適切に行われていないときには、管理者又は乗客はベルト44を全長にわたって引っ張る。管理者又は乗客は図7aに示すように、ベルト44のベルト舌片42を安全装置32内に差し込む。管理者又は乗客は掴み部分48を掴むことによってベルト44を引っ張ってピンと張ることができる。
【0065】
安全スイッチ40は、保持要素34がベルト舌片42にかみ合い係合しているかどうかを検査する。安全スイッチ40はさらに、ベルト舌片42が正しいベルト舌片42であるかどうかをチェックする。同時に、安全スイッチ40が適切に機能しているかどうかを、安全スイッチ自身が検査する。すべての条件が満足されると、安全スイッチ40は状態信号を発生し、それによって安全装置32はロック状態にあり、安全スイッチ40は正しく機能する。通信システム58は状態信号を制御ユニット60及び/又は可搬式端末機器62に伝送する。
【0066】
同時に、固定保持ユニット28が正しく機能しているかどうかが検査ユニット56によって検査される。既に述べたように、固定保持ユニット28が液圧で運転可能であるので、検査ユニット56は例えばいわゆるA/B試験に基づいて、液圧系が漏れているかどうか及び流量損失が存在するかどうかを検査することができる。固定保持ユニット28が正しく機能している場合には、検査ユニット56は相応する機能性信号を発生する。この機能性信号は通信システム58を経て制御ユニット60及び/又は可搬式端末機器62に伝送される。
【0067】
固定保持ユニット28が正しく機能していない場合には、A/B試験は多くの場合、管理者及び/又は乗客にとって感じることができるか又は目に見える、拘束装置24と特に安全弓形部材25の動きのずれをもたらす。例えば安全弓形部材25が隣の安全弓形部材よりもゆっくり又は速く動くと、安全弓形部材は異なる位置に停止し、及び/又は娯楽用乗り物の管理者が安全弓形部材を体の近くの閉鎖位置に押しても、閉鎖位置にとどまらない。従って、管理者及び/又は乗客は、検査ユニット56によって発生した機能性信号なしに、固定保持ユニット28が正しく機能しているか否かを確認することができる。さらに、乗客収容保持装置10の他の異常、例えば損傷した大腿部クッション30を認識することができる。
【0068】
安全装置32がロック状態にあり、チェックユニット52又は安全スイッチ40が正しく作動し、そして機能性信号及び/又は娯楽用乗り物14の管理者が固定保持ユニット28の機能性を確認すると、制御ユニット60は許可信号を発生する。従って、当該の乗り物12の走行を開始することができる。
【0069】
走行が終了すると、安全スイッチ40は保持要素34を第2端位置にセットする。それによって、ベルト舌片42が解放される。相手方要素36、すなわちベルト舌片42は自己開放するように保持要素34と協働作用する。その結果、保持要素34がベルト舌片42の開口45から離れると、ベルト舌片42は安全装置32から抜ける。そのとき、安全装置32は、図7bに示す位置にある。続いて、拘束装置24が開放位置に動かされるので、乗客は乗客収容装置10から離れることができる。
【0070】
安全スイッチ40によって、安全装置32がロック状態にないことが確認された場合及び/又は安全スイッチ40がその機能性の異常を確認した場合には、安全スイッチ40はこの状況を示す状態信号を発生する。この状態信号はさらに制御ユニット60と可搬式端末機器62に伝送される。それによって、娯楽用乗り物14の管理者は対策を講じることができる。安全スイッチ40が一義的な識別ラベルを有することにより、どの乗客収容保持装置10に当該の安全スイッチ40が存在するかの情報が管理者に示される。管理者は当該の乗客収容装置10を直接探し出すことができる。
【0071】
固定保持ユニット28がもう適切に機能していないことが検査ユニット56によって確認された場合には、検査ユニット56は相応する機能性信号を出力する。この機能性信号は通信システム58によって制御ユニット60と可搬式端末機器62に伝送される。
【0072】
上述のように、娯楽用乗り物14は検査ユニット56なしに運転することも可能である。A/B試験が管理者にとって目に見えるか又は感じられる、目標状態からの乗客収容保持装置10と特に固定保持ユニット28のずれを示すときには、このずれを確認した管理者は、ハウジング61内で着座する管理者に、例えば無線でこれを指し示すことができる。通信システム58と通信するスマートホン又はタブレットの形をした可搬式端末機器62は不要である。
【0073】
乗客が当該の乗客収容保持装置10から離れると、この乗客収容保持装置10の拘束装置24は管理者によって閉鎖位置に動かされ、安全装置32によって閉鎖位置に固定される。検査ユニット56が設けられている場合には、運転終了まで拘束装置24が閉鎖位置から外に移動できないように、制御ユニット60を形成することができる。検査ユニット56が設けられていない場合には、ハウジング61内に着座する管理者は、運転終了まで拘束装置24が閉鎖位置から外に移動しないようにする命令を、制御ユニット60に与えることができる。
【0074】
従って、乗客は娯楽用乗り物14の運転終了まで、機能しない固定保持ユニット28を備えた乗客収容保持装置10にアクセスすることができない。運転終了後、故障した固定保持ユニット28を交換することができる。
【符号の説明】
【0075】
10…乗客収容保持装置、12…車両、14…娯楽用乗り物、16…収容保持部分、18…座面、20…背もたれ、22…側方支持部、24…拘束装置、25…安全弓形部材、26…位置調節装置、28…固定保持ユニット、30…大腿部クッション、32…安全装置、34…保持要素、36…相手方要素、38…突起、40…安全スイッチ、42…ベルト舌片、44…ベルト、45…開口、46…ベルト長さ調節装置、48…ベルトループ、50…負荷解除要素、52…チェックユニット、53…操作検出手段、54…識別手段、55…認識手段、56…検査ユニット、58…通信システム、60…制御ユニット、61…ハウジング、62…可搬式端末機器、63…ディスプレイ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b