(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
本明細書中において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0011】
本明細書中において、板、シート等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
本明細書中において、スクリーン面とは、スクリーン全体として見たときにおける、スクリーンの平面方向となる面を示すものであり、スクリーンの画面(表示面)に平行であるとする。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の映像表示装置1を示す図である。
図1では映像表示装置1を側面から見た様子を示している。
映像表示装置1は、スクリーン10、映像源LS等を有しており、スクリーン10の背面側(裏面側)に位置する映像源LSから映像光を投射して透過させ、スクリーン10の画面に映像を表示する背面投射型の表示装置である。
【0013】
ここで、理解を容易にするために、
図1を含め以下に示す各図において、適宜、XYZ直交座標系を設けて示している。この座標系では、スクリーン10の画面左右方向(水平方向)をX方向、画面上下方向(鉛直方向)をY方向とし、スクリーン10の厚み方向をZ方向とする。スクリーン10の画面は、XY面に平行であり、スクリーン10の厚み方向(Z方向)は、スクリーン10の画面に直交する。
また、スクリーン10の出光側(観察者側)の正面方向に位置する観察者O1から見て画面左右方向の右側に向かう方向を+X方向、画面上下方向の上側に向かう方向を+Y方向、厚み方向において入光側(映像源側)から出光側(観察者側)に向かう方向を+Z方向とする。
さらに、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向、厚み方向とは、特に断りが無い場合、このスクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)、厚み方向(奥行き方向)であり、それぞれ、Y方向、X方向、Z方向に平行であるとする。
【0014】
映像源LSは、映像光Lをスクリーン10へ投影する映像投射装置であり、例えば、短焦点型のプロジェクタである。
この映像源LSは、映像表示装置1の使用状態において、スクリーン10の画面(表示領域)を映像源側(−Z側)の正面方向(スクリーン面の法線方向)から見た場合に、スクリーン10の画面左右方向の中央であって、スクリーン10の画面よりも鉛直方向下方側(−Y側)に位置している。
映像源LSは、奥行き方向(Z方向)において、スクリーン10の表面からの距離が、従来の汎用プロジェクタに比べて大幅に近い位置から斜めに映像光Lを投影できる。したがって、従来の汎用プロジェクタに比べて、映像源LSは、スクリーン10までの映像光Lの投射距離が短く、投射された映像光Lがスクリーン10に入射する入射角度が大きく、その変化量(入射角度の最小値から最大値までの変化量)も大きい。
【0015】
スクリーン10は、映像源LSが投射した映像光Lを透過させて表示する透過型スクリーンである。このスクリーン10は、映像光を投射しない不使用時等において、スクリーン10の向こう側の景色を出光側(+Z側)からも入光側(−Z側)からも観察できる透明性を有している。
スクリーン10は、映像光Lが入射する入光面10aと、これに対向し、映像光Lが出射する出光面10bを有している。入光面10aと出光面10bとは、互いに平行であり、スクリーン面(XY面)に平行である。
スクリーン10の画面(表示領域)は、使用状態において、出光側(+Z側)の観察者O1側から見て長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。
スクリーン10は、その画面サイズが対角40〜100インチ程度であり、画面の横縦比が16:9である。なお、これに限らず、スクリーン10の画面サイズは、例えば、40インチ以下としてもよく、使用目的や使用環境等に応じて、スクリーン10の画面の大きさや形状を適宜選択できるものとする。
【0016】
一般的に、スクリーン10は、樹脂製の薄い層の積層体等であり、それ単独では平面性を維持するだけの十分な剛性を有していない場合が多い。そのため、スクリーン10は、その出光側や入光側に光透過性を有する不図示の接合層を介して不図示の支持板に一体に接合(あるいは部分固定)され、画面の平面性を維持することが好ましい。
支持板は、光透過性を有し、剛性が高い平板状の部材である。支持板としては、アクリル樹脂やPC樹脂等の樹脂製、ガラス製等の板状の部材が好適である。
本実施形態の映像表示装置1は、例えば、店舗等のショーウィンドウに適用される。したがって、上述のような支持板としては、店舗等のショーウィンドウを構成する窓ガラス(ガラス板)等が好適である。
また、これに限らず、スクリーン10は、不図示の枠部材等によってその四辺等が支持され、その平面性を維持する形態としてもよい。
【0017】
図2は、第1実施形態のスクリーン10の層構成を示す図である。
図2では、スクリーン10の出光側(観察者側、+Z側)の画面中央(画面の幾何学的中心)となる点A(
図1参照)を通り、画面上下方向(Y方向)に平行であって、スクリーン面に垂直(厚み方向であるZ方向に平行)な断面の一部を拡大して示している。
スクリーン10は、
図2に示すように、その入光側(−Z側、映像源側)から順に、基材層11、第1光学形状層12、反射層13、第2光学形状層14、保護層15を備えている。
【0018】
基材層11は、光透過性を有するシート状の部材である。基材層11は、その出光側(観察者側,+Z側)に、第1光学形状層12が一体に形成されている。この基材層11は、第1光学形状層12を形成する基材(ベース)となる層である。
基材層11は、例えば、高い光透過性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等により形成される。
【0019】
図3は、第1実施形態の単位光学形状121及び反射層13を説明する図である。
図3では、前述の
図2に示すスクリーン10の断面図をさらに拡大し、理解を容易にするために基材層11及び保護層15を省略して示している。
第1光学形状層12は、基材層11の出光側(+Z側)に形成された光透過性を有する層である。第1光学形状層12の出光側の面には、単位光学形状(単位レンズ)121が複数配列されて形成されたリニアフレネルレンズ形状を有している。
【0020】
単位光学形状121は、略三角柱形状であり、画面左右方向を長手方向とし、画面上下方向に複数配列されている。この単位光学形状121は、
図2及び
図3に示すように、スクリーン面に直交する方向(Z方向)に平行であって、単位光学形状121の配列方向(Y方向)に平行な断面における断面形状が、出光側(+Z側)に凸となる略三角形形状である。
単位光学形状121は、映像光が入射する第1の面(レンズ面)121aと、これに対向する第2の面(非レンズ面)121bとを有している。1つの単位光学形状121において、第2の面121bは、頂点tを挟んで第1の面121aの下側に位置している。
また、
図2及び
図3に示すスクリーン10の断面において、隣り合う単位光学形状121間の谷底となる点をそれぞれ点v1、点v2とする。点v1は、1つの単位光学形状121において、頂点tよりも上側に位置し、第1の面121aの入光側端となる点である。点v2は、1つの単位光学形状121において、頂点tよりも下側に位置し、第2の面121bの入光側端となる点である。
【0021】
本実施形態では、第1の面121aは、平面であり、第2の面121bは、周期的ななめらかな凹凸を有する曲面である。また、本実施形態では、第2の面121bの出光側に反射層13が形成されている。
第1の面121aがスクリーン面に平行な面となす角度、即ち、頂点tと点v1とを通りYZ面に垂直な平面がスクリーン面に平行な面となす角度は、θ1である。
また、第2の面121bがスクリーン面に平行な面となす角度、即ち、点tと点v2を通りYZ平面に垂直な平面H(
図2及び
図3において破線で図示)がスクリーン面に平行な面となす角度は、θ2である。
この角度θ1,θ2は、θ2>θ1という関係を満たしている。
【0022】
単位光学形状121の配列ピッチは、Pであり、単位光学形状121の高さ(厚み方向における頂点tから谷底となる点v2までの寸法)は、hである。
理解を容易にするために、
図2及び
図3では、単位光学形状121の配列ピッチP、角度θ1,θ2は、単位光学形状121の配列方向において一定である例を示している。しかし、本実施形態の単位光学形状121は、実際には、配列ピッチPは一定であるが、単位光学形状221の配列方向において画面上下方向の上側へ向かうにつれて(映像源LSから離れるにつれて)、角度θ2は次第に小さくなっている。
【0023】
角度θ1,θ2、配列ピッチP等は、映像源LSからの映像光の投射角度(スクリーン10への映像光の入射角度)や、映像源LSの画素(ピクセル)の大きさ、スクリーン10の画面サイズ、各層の屈折率等に応じて、適宜設定してよい。例えば、単位光学形状121の配列方向に沿って、配列ピッチPが変化する形態としてもよい。
【0024】
第1光学形状層12は、光透過性の高いウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリチオール系、ブタジエンアクリレート系等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。
なお、本実施形態では、第1光学形状層12を形成する樹脂として、紫外線硬化型樹脂を例に挙げて説明するが、これに限らず、例えば、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0025】
反射層13は、入射した光の一部を反射し、入射したその他の光の少なくとも一部を透過する半透過型の反射層であり、所謂、ハーフミラーである。本実施形態の反射層13は、単位光学形状121の第2の面121b上(第2の面121bの出光側)に形成されている。
前述のように、第2の面121bは、周期性を有するなめらかな凹凸を有する曲面であり、反射層13は、この曲面に追従して形成され、曲面の凹凸を維持した状態で成膜されている。そのため、反射層13の第1光学形状層12側(入光側)の面及び第2光学形状層14側(出光側)の面は、周期性を有するなめらかな凹凸を有する曲面となっている。
反射層13は、入射した光の一部をこの曲面の凹凸により拡散して反射し、入射したその他の光を拡散しないで透過する。
【0026】
図4及び
図5は、第1実施形態の反射層13の曲面について説明する図である。
図4(a)は、
図2に示すスクリーン10の断面の一部をさらに拡大したものであり、
図4(b)は、スクリーン10の画面左右方向(X方向)及び画面上下方向(Y方向)に平行な断面の一部を拡大したものである。
図5では、スクリーン内の反射層13を模式的に示している。なお、
図4及び
図5では、理解を容易にするために、スクリーン10内の反射層13のみを示している。
【0027】
図4に示すように、反射層13の両面(第1光学形状層12側の面及び第2光学形状層14側の面)は、周期性を有するなめらかな凹凸を有する曲面である。この凹凸は、反射層13の延在方向(長手方向、単位光学形状121の長手方向に等しい)と、反射層13の幅方向(延在方向に交差する方向)との2方向において、周期的に複数配列されて形成されている。本実施形態では、反射層13の長手方向は、画面左右方向(X方向)であり、反射層13の幅方向は、点tと点v2とを含みYZ平面に垂直な面である平面Hに平行な方向である。
【0028】
反射層13の幅方向における周期的な凹凸及び延在方向における周期的な凹凸は、その凹凸の方向(山谷の方向)が前述の平面Hに直交する方向である。
また、反射層13は、
図4(a)に示すように、その配列方向(Y方向)及びスクリーン10の厚み方向(Z方向)に平行な断面おいて、凹凸の極大となる点k1と極小となる点k2が少なくとも1つずつ存在している。また、反射層13は、
図4(a)に示すように、極小となる点k2の方が、入光側(−Z側)となるように形成されている。
【0029】
反射層13の幅方向(
図4に示す平面H方向)において、凹凸の極大となる点k1と極小となる点k2との間の寸法をD1とし、反射層13の長手方向(単位光学形状121の長手方向)における極大となる点k3と極小となる点k4の間の寸法をD2とする。この寸法D1,D2は、各方向における凹凸の周期の1/2に相当する。この寸法D1,D2は、D2>D1であり、寸法D2は、寸法D1の2〜3倍程度である。
本実施形態では、寸法D1は、数十μmであり、寸法D2は、数十μmから数百μm程度である。
【0030】
また、反射層13の幅方向及び長手方向において、凹凸の高さ(凹凸の高さ方向における極大点と極小点との間の寸法)は、数μm〜数十μmである。
また、各反射層13において、映像光を効率よく出光側に向ける観点から、その幅方向においては入光側(−Z側)に極小となる点k2が位置することが好ましい。
【0031】
また、
図4(a)に示すように、反射層13の幅方向において、反射層13の接線(特に、反射層13の第2光学形状層14側の面の接線)が、スクリーン面の法線方向となす角度をαとする。この時、角度αは、0°以上30°以下とすることが、映像光を反射層13で反射させて、出光側の正面方向に位置する観察者O1へ向ける観点から好ましい。
角度αがこの範囲外となると、スクリーン10に入射した映像光が反射層13に入射しなくなったり、映像光が反射層13で反射しても出光側の正面方向に位置する観察者O1に届かない方向へ向かったりする等の問題がある。したがって、角度αは、上記範囲内が好ましい。
【0032】
なお、スクリーン10内には、複数の反射層13が設けられているが、反射層13の凹凸の周期や凹凸の高さ(深さ)は、全ての反射層13において等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、例えば、隣り合う反射層13において凹凸の周期の位相が異なっていてもよいし、一致していてもよいし、反射層13の配列方向に沿って次第に又は段階的に凹凸の位相が異なってもよい。
【0033】
反射層13は、アルミニウム、銀、ニッケル等の光反射性の高い金属を蒸着したり、光反射性の高い金属をスパッタリングしたりして形成される。また、反射層13は、高い透明性を有し、光の吸収損失が小さく、高い反射率を実現できる誘電体多層膜により形成してもよい。
本実施形態の反射層13は、第2の面121b上に、アルミニウムを蒸着することにより形成されている。
【0034】
第2光学形状層14は、第1光学形状層12及び反射層13の出光側(+Z側)に設けられた光透過性を有する層である。
第2光学形状層14は、単位光学形状121による凹凸の谷部を埋めるように形成されており、第1光学形状層12及び反射層13の出光側(+Z側)の面を平坦としている。したがって、第2光学形状層14の入光側(−Z側)の面は、単位光学形状121の略逆型の形状が複数配列されて形成されている。
このような第2光学形状層14を設けることにより、反射層13を保護できる。また、第2光学形状層14を設けることにより、さらに出光側に保護層15等を積層しやすくなり、また、支持板等への接合も容易となる。
【0035】
第2光学形状層14の屈折率は、第1光学形状層12の屈折率と等しい、又は、略等しい(等しいとみなせる程度に屈折率差が小さい)ことが望ましい。また、第2光学形状層14は、第1光学形状層12と同じ紫外線硬化型樹脂を用いて形成することが好ましいが、異なる材料により形成してもよい。
本実施形態の第2光学形状層14は、第1光学形状層12と同じ材料(紫外線硬化型樹脂)により形成され、その屈折率が第1光学形状層12の屈折率に等しい。
【0036】
保護層15は、第2光学形状層14の出光側(+Z側)に形成された光透過性を有する層であり、このスクリーン10の出光側を保護する機能を有している。
保護層15は、光透過性の高い樹脂製のシート状の部材により形成される。保護層15は、例えば、基材層11と同様の材料により形成されたシート状の部材を用いてもよい。
上述のように、本実施形態のスクリーン10は、光を拡散する作用を有する粒子等の拡散材を含有した光拡散層を備えておらず、スクリーン10に入射した映像光は、反射層13の周期性を有する凹凸を有する曲面での反射によって拡散される。
【0037】
本実施形態のスクリーン10は、例えば、以下のような製造方法により製造される。
基材層11を用意し、その一方の面に、単位光学形状121を賦形する成形型に紫外線硬化型樹脂を充填した状態で積層し、紫外線を照射して樹脂を硬化させるUV成形法により第1光学形状層12を形成する。
このとき、単位光学形状121を賦形する成形型の第2の面121bを賦形する面は、前述の平面Hに相当する方向及び画面左右方向に相当する2方向において周期性を有する凹凸を有する曲面となっている。この凹凸は、単位光学形状121を賦形する成形型をバイト等で切削して作製する際に、バイトを波状に動かす、うねりを有するバイト等で切削する等により形成される。なお、この曲面の形成方向は、上記に限らず、適宜選択して適用してよい。
【0038】
第1光学形状層12を、基材層11の一方の面に形成した後、第2の面121bに、アルミニウムを蒸着して反射層13を形成する。
その後、反射層13の上から、単位光学形状121間の谷部を充填して平面状となるように、紫外線硬化型樹脂を塗布し、保護層15を積層して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、第2光学形状層14及び保護層15を一体に形成する。その後、所定の大きさに裁断する等により、スクリーン10が完成する。
基材層11及び保護層15は、枚葉状としてもよいし、ウェブ状としてもよい。
本実施形態では、単位光学形状121の第2の面121bの曲面形状を成形型によって賦形することにより、多数のスクリーン10を製造する場合にも、品質のばらつきが少なく、安定して製造できる。
【0039】
ここで、本実施形態の単位光学形状121に入射した映像光の様子について説明する。
図3に示すように、映像源LSから投射されて入光側(−Z側)からスクリーン10に入射した映像光の一部(映像光La)は、第1の面121aの入光側端部(点v1側端部)の領域Bを透過して、反射層13に入射し、反射され、スクリーン10の出光側(+Z側)の正面方向に位置する観察者O1(
図1参照)が映像を視認可能な方向に出射する。このとき、反射層13が前述のような周期性を有する凹凸からなる曲面を有するので、反射した光は、
図5に示すように、画面上下方向及び画面左右方向に適宜拡散される。
また、スクリーン10に入射した映像光Laの一部は、第1の面121aを透過するが、スクリーン10の出光側上方へ出射するので(例えば、映像光Lb)、観察者O1には届ない。
【0040】
また、出光側(+Z側)上方からスクリーン10に入射する太陽光や照明光等の外光Gaや入光側(−Z側)上方から入射する外光Gcは、いずれも、第1の面121aを透過してスクリーン10の入光側や出光側の下方へ出射する。また、一部の外光Gb,Gdは、反射層13で反射してスクリーン10の上方へ出射したり、スクリーン10と空気との界面で全反射を繰り返す等して、スクリーン10内で次第に減衰したりする。したがって、出光側の正面方向に位置する観察者O1にこれらの外光が届くことはなく、外光による映像のコントラスト低下を抑制できる。
【0041】
図6は、第1実施形態のスクリーン10での映像光及び外光の様子を示す図である。
図6では、
図2と同様に、画面中央となる点Aを通り、単位光学形状121の配列方向(Y方向)及び厚み方向(Z方向)に平行なスクリーン10の断面の一部を拡大して示している。
図6では、理解を容易にするために、スクリーン10内の基材層11と第1光学形状層12との界面や第2光学形状層14と保護層15との界面には、屈折率差がないものとして示している。
スクリーン10の下方に位置する映像源LSから投射され、スクリーン10に入光側(−Z側)から入射する映像光L1のうち、一部の映像光L2は、スクリーン10の入光面10aで反射して上方へ向かう。この映像光L2は、スクリーン10の入光側(映像源側)の正面方向に位置する観察者O2には届かない。
【0042】
また、スクリーン10に入射した映像光L1のうち、一部の映像光L3は、単位光学形状121の第1の面121aの点v1側(画面上下方向上側)の領域Bを透過し、反射層13へ入射して反射し、スクリーン10の出光側(+Z側)の正面方向に位置する観察者O1側へ向けて出射する。この映像光L3は、反射層13の凹凸により、画面上下方向及び画面左右方向に拡散され、スクリーン10の出光側の正面方向に位置する観察者O1に、良好な視野角を有する映像を表示できる。
なお、一部の映像光L4は、反射層13を透過するが、その光量は小さく、また、スクリーン10の出光側上方へ出射するので、出光側や入光側の正面方向に位置している観察者O1,O2が、この映像光L4を視認することはない。
【0043】
次に、入光側(−Z側)又は出光側(+Z側)の上方からスクリーン10に入射する映像光以外の太陽光や照明光等の外界からの光(以下、外光という)について説明する。
図6に示すように、スクリーン10に入射する外光G1,G4のうち、一部の外光G2,G5は、スクリーン10の出光面10b、入光面10aで反射して、それぞれスクリーン10の下方へ向かい、いずれも観察者O1,O2には届かない。
また、外光G1のうち、スクリーン10に入射した一部の外光G3は、第1の面121aを透過して、スクリーン10の入光側下方へ向かい、スクリーン10の入光側下方へ出射したり、スクリーン10の入光面10aで反射してスクリーン10内部下方へ進み、次第に減衰したりする。
【0044】
また、外光G4のうち、スクリーン10に入射した外光G6は、第1の面121aを透過して、スクリーン10の出光側下方へ向かい、スクリーン10の出光側下方へ出射したり、スクリーン10の出光面10bで反射してスクリーン10内部下方へ進み、次第に減衰したりする。
また、前述の
図3に示す外光Gc,Gdのように、一部の外光は、スクリーン10に入射して反射層13で反射して、スクリーン10の入光側上方等へ出射したり、スクリーン10内部上方へ進み、スクリーン10と空気との界面で反射(全反射を含む)を繰り返す等して、次第に減衰したりする。
上述のように、スクリーン10に上方から入射する外光は、いずれも観察者O1,O2には到達しないので、外光による映像のコントラスト低下を抑制できる。
【0045】
また、スクリーン10は、光を拡散する拡散粒子等を含有する光拡散層を備えていないので、スクリーン面に小さい入射角度で入射してこのスクリーン10を透過する外光G7,G8は、拡散されない。したがって、入光側(−Z側)及び出光側(+Z側)から、観察者O2,O1が、スクリーン10を通してスクリーン10の向こう側の景色を観察した場合に、スクリーン10の向こう側の景色がぼやけたり、白くにじんだりすることなく、高い透明性を有して観察することができる。
【0046】
従来の透過型スクリーンでは、映像源側が透けて見えないようにスクリーンの透明性が非常に低く設計されており、スクリーンの向こう側の景色を見ることができない。また、従来の透過型スクリーンは、十分な視野角を有する映像を提供するために、光を拡散する拡散粒子等を含有する光拡散層等を備えている場合が多く、他の層の透明性を向上させたとしても、光拡散層の拡散粒子によって外光も拡散されるため、スクリーンの向こう側の景色がぼやけたり、白くにじんだりして観察されたりするという問題がある。
【0047】
しかし、本実施形態のスクリーン10は、拡散粒子等を含有する光拡散層を備えておらず、反射層13の両面が周期性を有する凹凸を有する曲面であり、映像光は、反射層13で反射する際に凹凸によって拡散される。また、本実施形態のスクリーン10では、反射層13を透過する光は拡散されない。
したがって、本実施形態によれば、スクリーン10は、良好な視野角及び明るさや解像度を有する映像を出光側(+Z側)の観察者O1に表示でき、かつ、映像光を投射しない状態等において、外光の多い環境下であっても、スクリーン10の向こう側(−Z側)の景色が白くにじんだり、ぼけたりすることがなく観察者O1に良好に視認され、高い透明性を実現できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、反射層13を透過する光は拡散されず、スクリーン10は、高い透明性を有しているので、映像光を投射しない状態等において、スクリーン10の入光側(−Z側)にいる観察者O2にもスクリーン10の向こう側(+Z側)の景色が良好に視認される。さらに、スクリーン10に映像光が投射された状態においても、観察者O1,O2が、スクリーン10の向こう側(入光側、出光側)の景色を一部視認することが可能である。
【0049】
また、本実施形態によれば、反射層13の曲面の周期性を有する凹凸の周期や凹凸の高さ(深さ)等を調整することにより、スクリーン10の画面左右方向及び画面上下方向の光の拡散度合を調整することができる。これにより、スクリーン10は、画面左右方向及び画面上下方向での視野角制御を容易に行うことができる。
また、本実施形態によれば、例えば、光を拡散する粒子を含有する光拡散層や、微細な凹凸形状を有するマット面等に比べて、視野角の制御が容易である。
【0050】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態のスクリーン20を説明する図である。
図7(a)は、画面中央となる点を通り画面上下方向及び厚み方向に平行なスクリーン20の断面の一部を拡大して示している。
図7(a)に示すスクリーン20の断面は、前述の
図2に示すスクリーン10の断面に相当する。
図7(b)は、スクリーン20の第1光学形状層22を出光側(+Z側)から見た様子を示している。
図7(b)では、理解を容易にするために、反射層23や第2光学形状層24、保護層15を省略して示している。
第2実施形態のスクリーン20は、前述の第1実施形態のスクリーン20と略同様の形態であるが、第1光学形状層22が、出光側(+Z側)の面にサーキュラーフレネルレンズ形状を有している点が異なる。
したがって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0051】
第2実施形態のスクリーン20は、入光側(−Z側)から順に、基材層11、第1光学形状層22、反射層23、第2光学形状層24、保護層15を備えている。この第2実施形態のスクリーン20は、第1実施形態に示す映像表示装置1に適用可能である。
第1光学形状層22は、出光側の面に、単位光学形状221が同心円状に配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状を有している。
また、第2光学形状層24は、第1光学形状層22及び反射層23の出光側(+Z側)に設けられた光透過性を有する層であり、入光側(−Z側)の面に、単位光学形状221の略逆型の形状が複数配列されて形成されている。
【0052】
単位光学形状221は、
図7(b)に示すように、正面方向(Z方向)から見て真円の一部形状(円弧状)であり、スクリーン20の画面(表示領域)外に位置する点Cを中心として、同心円状に複数配列されている。即ち、第1光学形状層22は、点Cを中心(フレネルセンター)とする、所謂オフセット構造のサーキュラーフレネルレンズ形状を有している。
単位光学形状221は、第1の面221aと第2の面221bとを有し、厚み方向及び配列方向に平行な断面形状が、出光側(+Z側)に凸となる略三角形形状である。
本実施形態では、点Cは、
図7(b)に示すように、スクリーン20の画面左右方向(X方向)の中央であって画面外下方に位置している。また、点Cと点Aとは、スクリーン10を正面方向から見た場合、
図3に示すように、画面上下方向(Y方向)に平行な同一直線上に位置している。
【0053】
第2の面221bは、前述の第1実施形態の第2の面121bと同様に、周期性を有する凹凸からなる曲面となっている。
反射層23は、第2の面221b上に、アルミニウムを蒸着することにより形成されている。
反射層23は、第2の面221bの曲面に追従して形成され、その曲面を維持した状態で成膜されている。反射層23は、その第1光学形状層22側の面及び第2光学形状層24側の面が、
図7に示す断面において、前述の第1実施形態と同様に、反射層23の幅方向(点tと点v2を結ぶ直線Sの方向)と延在方向(第2の面221bの延在方向)との2方向に周期性を有するなめらかな凹凸を有する曲面となっている。
【0054】
第1実施形態と同様に、反射層23の延在方向における凹凸の周期は、反射層23の幅方向における凹凸の周期よりも大きく、幅方向における凹凸の周期の2〜3倍程度である。また、第1実施形態と同様に、
図7に示す断面において、反射層23の接線が、スクリーン面の法線方向となす角度αは、0°以上30°以下である。
【0055】
本実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様に、透明性が高く良好な映像を表示できるスクリーン20及び映像表示装置1とすることができる。また、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、反射層13の曲面形状を制御することにより、スクリーン20の視野角を所望の大きさに制御することができる。
また、本実施形態によれば、第1光学形状層22は、フレネルセンターとなる点Cが、スクリーン10の表示領域外であって画面上下方向下側に位置しており、所謂オフセット構造のサーキュラーフレネルレンズ形状を有している。したがって、スクリーン10の表示領域外であって画面上下方向下側に位置する短焦点型の映像源LSから投射された入射角度の大きい映像光であっても、画面左右方向の映像が暗くなることがなく、明るさの面均一性の高い良好な映像を表示することができる。
【0056】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態のスクリーン30の層構成を示す図である。
図8では、画面中央となる点Aを通り画面上下方向(単位光学形状321の配列方向)及び厚み方向に平行なスクリーン30の断面の一部を拡大して示している。
図8に示すスクリーン30の断面は、
図2に示す第1実施形態のスクリーン10の断面に相当する。
第3実施形態のスクリーン30は、第1実施形態のスクリーン10と略同様の形態であるが、反射層33が、高い透明性を有する樹脂により形成されており、その屈折率が第1光学形状層32及び第2光学形状層34よりも屈折率が低い点が異なる。したがって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第3実施形態のスクリーン30は、入光側(−Z側)から順に、基材層11、第1光学形状層32、反射層33、第2光学形状層34、保護層15を備えている。
第3実施形態のスクリーン30は、第1実施形態の映像表示装置1に適用可能である。
【0057】
第1光学形状層32は、出光側(+Z側)の面に単位光学形状321が複数配列されたリニアフレネルレンズ形状を有している。単位光学形状321は、第1の面321a及び第2の面321bを有し、出光側に凸となる三角柱形状であり、その長手方向を画面左右方向とし、画面上下方向に複数配列されている。
この第1光学形状層32のリニアフレネルレンズ形状は、第1実施形態の第1光学形状層12のリニアフレネルレンズ形状と同様である。また、第2の面321bは、第1実施形態の第2の面121bと同様に、周期性を有するなめらかな凹凸を有する曲面である。
【0058】
第1光学形状層32は、光透過性が高く、一般的な紫外線硬化型樹脂よりも屈折率の高い紫外線硬化型樹脂が用いられている。例えば、第1光学形状層32は、エポキシアクリレート系の紫外線硬化型樹脂や、金属酸化物が添加されて高屈折率化されたウレタン系等の紫外線硬化型樹脂により形成されている。また、第1光学形状層32は、酸化チタン(TiO
2)が添加されて高屈折率化された紫外線硬化型樹脂を用いてもよい。
この第1光学形状層32の屈折率は、約1.56〜1.7程度のものが好ましい。
【0059】
反射層33は、光透過性を有し、隣接する第1光学形状層32及び第2光学形状層34よりも屈折率が低い層である。本実施形態の反射層33は、第2の面321bに形成されており、その両面が反射層33の幅方向と反射層33の延在方向とに周期性を有するなめらかな凹凸を有する曲面となっている。
反射層33に臨界角以上の入射角で入射する光は、凹凸形状により、全反射する際に拡散され、反射層33に臨界角未満の入射角で入射する光は、少なくとも一部が拡散されないで透過する。
本実施形態では、反射層33と隣接する第2光学形状層34との界面Kは、映像光の少なくとも一部(臨界角以上の角度で入射する映像光)を全反射する全反射面となり、この界面Kも曲面となっている。
【0060】
反射層33の両面の周期性を有する凹凸からなる曲面は、第1実施形態と同様に、反射層33の幅方向(
図8において、点tと点v2とを通りYZ面に垂直な平面Hに平行な方向)の凹凸の周期に比べて、反射層33の長手方向(スクリーン30の画面左右方向、X方向)の凹凸の周期が大きく、幅方向の凹凸の周期の2〜3倍程度である。
また、
図8に示す断面において、反射層33の接線がスクリーン30の法線方向となす角度αは、第1実施形態と同様に、0°以上30°以下である。
【0061】
反射層33は、光透過性が高く、隣接する第1光学形状層32及び第2光学形状層34よりも屈折率の低い材料により形成されている。反射層33は、例えば、フッ化マグネシウム(MgF
2)やフッ化アルミニウム(AlF
3)等の金属フッ化物、酸化ケイ素(SiO
2)、シリコン系樹脂が好適である。
反射層33は、上述の材料を蒸着したり、スパッタリングしたりすることにより、形成される。また、反射層33は、前述の金属フッ化物等の箔を転写したり、前述の金属フッ化物等の薄膜を含有した塗料を塗布したりして形成してもよい。
【0062】
反射層33の屈折率は、約1.35〜1.45であることが、第2光学形状層34との界面Kで映像光を効率よく全反射させる観点から好ましい。
また、反射層33の厚さは、0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
反射層33の厚さが0.3μm以下であると、界面Kでの映像光の全反射が不十分となったり、映像光が全反射する際に干渉が生じて映像が劣化したりするため、好ましくない。また、界面Kで映像光を十分に全反射させ、かつ、映像光が全反射する際に生じ得る干渉を抑制するという効果を高める観点から、反射層33の厚さは1μm以上であることがより好ましい。
また、反射層33の厚さが10μmよりも大きくなると、蒸着等による反射層33の形成が困難となったり、第2の面321bの曲面の凹凸形状を埋めて平坦化し、反射層33の第2光学形状層34側の界面Kが平面状となってしまったりするため、好ましくない。
【0063】
第2光学形状層34は、第1光学形状層32及び反射層33の出光側(+Z側)に設けられた光透過性を有する層である。第2光学形状層34は、反射層33よりも屈折率が高い。第2光学形状層34と反射層33との界面Kは、入射する映像光の少なくとも一部(界面Kに臨界角以上の角度で入射する映像光)を全反射させて、出光側(+Z側)の観察者O1側へ向ける機能を有する。
第2光学形状層34は、第1光学形状層32及び反射層33の出光側から単位光学形状321による凹凸の谷部を埋めるように形成され、第1光学形状層32の出光側(観察者側)の面を平坦にしている。第2光学形状層34の入光側(−Z側)の面は、第1光学形状層32の単位光学形状321の略逆型の形状が複数配列されて形成されている。
【0064】
第2光学形状層34は、光透過性が高く、一般的な紫外線硬化型樹脂よりも屈折率の高い紫外線硬化型樹脂、例えば、前述の第1光学形状層12と同様の材料である、エポキシアクリレート系の紫外線硬化型樹脂、金属酸化物が添加されて高屈折率化されたウレタン系等の紫外線硬化型樹脂、酸化チタン(TiO
2)が添加されて高屈折率化された紫外線硬化型樹脂等を用いて形成されている。
第2光学形状層34の屈折率は、約1.56〜1.7であることが、反射層33との界面Kで映像光を効率よく全反射させる観点から好ましい。また、第2光学形状層34の屈折率は、第1光学形状層32の屈折率と等しい、又は、略等しい(等しいとみなせる程度に屈折率差が小さい)ことが望ましい。
【0065】
本実施形態では、第2光学形状層34は、第1光学形状層32と同一の樹脂によって形成されている。なお、これに限らず、第2光学形状層34と第1光学形状層32とは、異なる樹脂により形成されていてもよい。
また、本実施形態では、第2光学形状層34は、紫外線硬化型樹脂により形成される例を挙げて説明するが、これに限らず、例えば、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0066】
本実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様に、透明性が高く良好な映像を表示できるスクリーン30及び映像表示装置1とすることができる。また、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、反射層33の曲面形状を制御することにより、スクリーン30の視野角を所望の大きさに制御することができる。
また、本実施形態によれば、界面Kで映像光を全反射させて出光側(+Z側)へ向けるので、通常の金属薄膜等による反射層で反射させる場合に比べて、映像光の反射時の光量損失が小さく、より明るい映像を表示することができる。
また、本実施形態によれば、反射層33は、高い透明性を有する樹脂により形成されるので、通常の金属薄膜等によって反射層を形成する場合に比べて、スクリーン30の透明性をさらに向上させることができる。
【0067】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、スクリーン10,20,30の出光側(+Z側)や入光側(−Z側)の面に、傷つき防止を目的としたハードコート層を設けてもよい。ハードコート層は、例えば、スクリーンの出光側の面に、ハードコート機能を有する紫外線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート等)を塗布して形成する等により、形成することができる。
また、ハードコート層に限らず、スクリーン10,20,30の使用環境や使用目的等に応じて、出光側や入光側の面に、例えば、反射防止機能、紫外線吸収機能、防汚機能、帯電防止機能等、適宜必要な機能を有する層を1つ又は複数選択して設けてもよい。さらに、スクリーン10,20,30の出光側(+Z側)にタッチパネル層等を設けてもよい。
【0068】
例えば、スクリーン10,20,30の入光側の表面に反射防止層を設けることにより、映像光のスクリーン入射時の反射を抑制し、入射光量を増大させることができる。また、スクリーン10,20,30の出光側の表面に反射防止層を設けた場合には、映像光の一部が、スクリーンの出光側表面で反射して入光側から出射する等により、入光側の観察者O2に映像が一部漏れて見えてしまうこと等も防止できる。
【0069】
(2)各実施形態において、スクリーン10,20,30は、第1光学形状層12,22,32や第2光学形状層14,24,34が十分な厚みや剛性等を有している場合には、基材層11及び保護層15の少なくとも一方を備えない形態としてもよい。
また、スクリーン10,20,30は、基材層11及び保護層15の少なくとも一方をスクリーンの平面性を維持できる程の十分な剛性を有する板状の部材としてもよい。この場合、スクリーンの平面性を維持するために接合する支持板等を省略できる。
【0070】
(3)各実施形態において、映像源LSは、例えば、スクリーン10,20,30の斜め下側等に配置される形態としてもよい。
このとき、第1実施形態及び第3実施形態では、スクリーン10,30は、単位光学形状121,321の配列方向及び長手方向を、映像源LSの位置に合わせて傾けた形態とする。また、第2実施形態では、スクリーン20は、映像源LSの位置に合わせてフレネルセンターとなる点Cの位置をずらして単位光学形状221を配列した形態とする。このような形態とすれば、映像源LSの位置等の自由度が向上する。
また、各実施形態において、スクリーン上方からの外光の影響が小さい環境下で使用される場合等には、例えば、映像源LSは、スクリーン面の法線方向から見たとき、スクリーン10,20,30の画面左右方向の中央であって画面外上方に位置する形態としてもよい。このとき、スクリーン10,20,30は、各実施形態に示した形態とはその画面上下方向を反転させた形態となる。
【0071】
(4)各実施形態において、単位光学形状121,221,321の第1の面、第2の面は、折れ面状としてもよい。また、単位光学形状121,221,321は、3つ以上の複数の面によって形成される多角形形状としてもよい。
また、反射層13,23,33は、第2の面121b,221b,321bに加え、第1の面121a,221a,321aの少なくとも一部にも形成される形態としてもよい。特に、第3実施形態の反射層33は、第1の面321a及び第2の面321b上に形成される形態としてもよい。
また、単位光学形状121,221,321は、第1の面も第2の面と同様な周期性を有する凹凸形状を有する曲面により形成される形態としてもよい。
【0072】
(5)各実施形態において、スクリーン10,20,30は、画面(表示領域)が矩形形状である例を示したが、これに限らず、例えば、正方形や平行四辺形等の他の四角形形状や多角形形状、円形、長円形、楕円形等としてもよい。
【0073】
(6)各実施形態において、反射層13,23,33よりも出光側(+Z側)に、光を透過するが、黒や灰色等の暗色系の着色材等で着色され、光吸収性を有する光吸収層を備える形態とし、映像の黒輝度の低減や映像源側からの外光吸収を図り、映像のコントラスト向上を図ってもよい。
また、各実施形態において、反射層13,23,33よりも入光側(−Z側)に、上述のような光吸収層を設けて、背面側から入射する外光を吸収し、映像のコントラスト向上を図ってもよい。
なお、上述の光吸収層は、着色材を含有せず、透明な層であって光吸収作用を有する層としてもよい。
【0074】
(7)各実施形態において、映像源LSは、例えば、P波の偏光成分を有する映像光を投射するものとしてもよい。
映像源LSは、映像光が入射角φで各スクリーン部へ投射されるように位置及び角度が設定されている。この入射角φは、各スクリーン部へ投射された映像光(P波)の反射率がゼロとなる入射角(ブリュースター角)をφb(°)とした場合、(φb−10)°以上85°以下の範囲に設定される。例えば、各スクリーン部へ投射された映像光の反射率がゼロとなる入射角φbが60°である場合、映像光の入射角φは、50〜85°の範囲に設定される。
【0075】
このように、P波の偏光成分を有する映像光を投射する映像源を用いることにより、各スクリーン部への入射角φが大きい場合にも、スクリーン10,20,30の表面における鏡面反射を抑制することができ、映像源の設置位置等、投射系の設計の自由度を上げることができる。また、このような映像源を用いることにより、各スクリーン部又は透明層に入射する際に入射面での映像光の反射を低減でき、映像の明るさ、鮮明さの向上を図ることができる。
なお、角度φb(ブリュースター角)は、映像光が投射される各スクリーン部の表面又は透明層の材質により異なる。
また、このような形態の場合、スクリーンの入光側表面を構成する基材層としては、例えば、TAC製のシート状の部材が好適である。
【0076】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。