(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
  <実施形態1>
  実施形態1を
図1から
図6によって説明する。本実施形態では、ドアトリム20(車両用ドアトリム)として、ドアパネル11の車室内側に取り付けられ、車両用ドア10の車室内側面を構成するものを例示する。以下の説明では、
図1の紙面左側、
図3の紙面右側を車両前方とするとともに
図1の紙面右側、
図3の紙面左側を車両後方とし、
図1及び
図3の紙面上側を車両上方とするとともに
図1及び
図3の紙面下側を車両下方として、各部を説明する。
 
【0016】
  ドアパネル11は、
図2に示されるように、それぞれパネル状をなすドアアウタパネル11Aとドアインナパネル11Bとを備えている。これらのパネル11A,11Bは、金属製とされ、鉄やアルミニウムなどの金属板材をプレス加工することで形成されている。ドアインナパネル11Bには、車両上端部にインナーウェザストリップ13が取り付けられている。このインナーウェザストリップ13には、後述する係止部45に係止される被係止部13Aが車室内に向けて開口するようにして設けられている。
 
【0017】
  ドアトリム20は、
図2に示すように、車室内側を向く主面を構成する主面部21と、主面部21の上部から車室外側に向かって立ち上がる上縁部23とを、有している。上縁部23は、主面部21に連なる部分に、湾曲状をなす湾曲部24を有している。上縁部23は、車両用ドア10が備える窓の下方に位置するショルダー部とも呼ばれる部分である。上縁部23は、座席に着座した乗員が肘を置くことが想定され、また、車両用ドア10の開閉の際に手を掛ける等して、外部から荷重が掛かり易い部分であると言える。また、ドアトリム20には、ドアインサイドハンドル(不図示)を取り付けるためのドアインサイドハンドル用孔25や、アームレスト26、ドアポケット27等が設けられている(
図1参照)。
 
【0018】
  ドアトリム20は、
図2に示すように、トリムボード30を主体として構成されている。トリムボード30は、板状の基材31と、基材31の車室外側の面31B(一方の板面)に設けられた樹脂成形体40とを備えている。本実施形態では、トリムボード30は、ドアトリム20のアッパー部を構成するものとされ、上縁部23に沿って複数の樹脂成形体40を有している。また、トリムボード30は、上縁部23に沿って、樹脂成形体40とは異なる構成を有する他の樹脂成形体50を有している(
図1参照)。他の樹脂成形体50は、2本のリブを繋ぐ直線状のリブ繋ぎ部を有して構成されている。また、トリムボード30には、基材31の車室内側の面31Aを被覆するようにして表皮材29が貼着されている。
 
【0019】
  基材31は、繊維が熱可塑性樹脂により結着された構成を有している。繊維としては、木材等を解織して得た木質繊維、ケナフ等の靭皮植物繊維、或いは、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維等から選ばれる繊維を例示することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレンを例示することができる。基材31は、後述するように繊維及び熱可塑性樹脂を含むプレボード39から成形されている。基材31における各部の構成については、後に説明する。
 
【0020】
  樹脂成形体40は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂によって一体的に形成されている。樹脂成形体40は、
図3に示すように、複数のリブ41と、複数のリブ41を繋ぐリブ繋ぎ部43と、を有している。リブ繋ぎ部43は、後述するリブ成形空間71に樹脂材料を供給するためのランナー73内の溶融樹脂67からなる部分であり、ランナー跡(ランナー部)とも称される構成である(
図6参照)。本実施形態では、樹脂成形体40は、ランナー73を介して溶融樹脂67が供給された他の成形部品として、被係止部13Aに対して係止される係止部45を更に有している(
図2参照)。なお、
図3においては、係止部45を省略し、樹脂成形体40の複数のリブ41及びリブ繋ぎ部43を模式的に描いている。
 
【0021】
  複数のリブ41は、
図3に示されるように、車両前後方向に並列するとともに車両前後方向と交差する方向に互い並行して延びる構成とされる。本実施形態では、複数のリブ41は、上縁部23の湾曲部24において、車両上下方向に互いに並行して延びる構成とされている。このような構成により、上縁部23(湾曲部24)を補強して、ドアトリム20の剛性を高めることが可能とされている。
 
【0022】
  複数のリブ41は、
図3に示されるように、車両後方から順に並ぶ第1リブ41A、第2リブ41B、第3リブ41Cを含んで構成されている。第1リブ41A、第2リブ41B、第3リブ41Cは、略同じ間隔を有して並列している。第1リブ41A、第2リブ41B、第3リブ41Cは、車両上下方向において、上端部の位置がほぼ同じとされるものの、下端部の位置が第1リブ41Aより第2リブ41B及び第3リブ41Cの方が車両上方に位置している。そして、第2リブ41B及び第3リブ41Cは、第1リブ41Aより長さ寸法が小さく、互いに同等の長さ寸法を有している。
 
【0023】
  リブ繋ぎ部43は、
図2及び
図3に示されるように、基材31の車室外側の面31Bから突出する突条状をなし、複数のリブ41のそれぞれの下端部に連なる構成とされている。本実施形態では、リブ繋ぎ部43は、車両前後方向にクランク状に延設されている。具体的には、リブ繋ぎ部43は、第1リブ41Aの下端部から車両前方に向けて延設され、第2リブ41Bの直下において車両上方に屈曲し、さらに、第2リブ41Bの下端部で車両後方に屈曲して第3リブ41Cの下端部まで延設されている。なお、リブ繋ぎ部43が複数のリブ41を繋ぐ位置は、それらの下端部に限られないが、本実施形態のように、複数のリブ41が湾曲部24に形成される構成においては、成形性の観点から、相対的に主面部21に近い位置とされることが好ましい。
 
【0024】
  基材31は、
図4に示されるように、一般部32と、樹脂成形体40との接合部34と、接合部34のうちリブ繋ぎ部43と接合する部分の周囲に位置し、一般部32より板厚が小さい薄板部36と、接合部34のうち複数のリブ41と接合する部分の周囲にそれぞれ位置し、一般部32より板厚が小さい複数のリブ側薄板部38(
図3参照)と、を有している。なお、
図3及び
図4においては、薄板部36及びリブ側薄板部38が形成された領域に網掛けを付して描いている。
 
【0025】
  一般部32は、
図3及び
図4に示されるように、基材31における薄板部36及び複数のリブ側薄板部38の周囲に位置する所定の板厚を有する板状の部分であり、基材31の大部分を占めている。一方、薄板部36及びリブ側薄板部38は、接合部34に沿って延設された、一定幅を有する帯状の領域に局在して形成されている。
 
【0026】
  接合部34は、
図4に示されるように、樹脂成形体40が基材31に対して固着される部分とされる。詳細には、接合部34には、樹脂成形体40の成形時に、樹脂成形体40を成形するための溶融樹脂67が一部含浸して、固化した樹脂のアンカー効果や溶着効果により、樹脂成形体40が固着されるようになっている。
 
【0027】
  薄板部36は、
図4に示されるように、一般部32よりも板厚方向に圧縮された部分とされ、一般部32に比して密度(単位体積当たりの繊維及び熱可塑性樹脂の重さ)が高い高密度部とされる。薄板部36は、リブ繋ぎ部43の周囲を所定の幅寸法を有して取り囲むようにして配設されている。このような構成により、ランナー73内の溶融樹脂67が、接合部34の周囲に漏れ出る事態を抑制可能とされている。なお、リブ側薄板部38の構成も薄板部36と同様とされており、その説明を省略する。
 
【0028】
  具体的には、薄板部36の板厚は、一般部32の板厚を基準として60%以下とされている。また、薄板部36の幅寸法(リブ繋ぎ部43の外周端から当該外周端とは反対側の端部までの寸法)は、薄板部36の板厚以上とされている。薄板部36は、基材31の車室外側の面31Bを凹ませるようにして形成されている。基材31の板厚は、一般部32から薄板部36に向かうにつれて次第に小さくなっている。なお、薄板部36における車室内側の面は、凹凸を有しない平坦面とされ、表皮材29に被覆されてドアトリム20の意匠面を構成している。
 
【0029】
  薄板部36は、
図3に示されるように、車両上方又は車両下方に向けて屈曲しつつ車両前後方向に延設されている。本実施形態では、薄板部36が、車両前後方向にクランク状に延設されている。言い換えれば、薄板部36は、車両前後方向に対して垂直に延びるようにして延設される部分を含んでいる。さらに言い換えれば、薄板部36は、車両前後方向において、相対的に車両下側に配される下側薄板部と、相対的に車両上側に配される上側薄板部と、を含んでいる。具体的には、薄板部36は、下側薄板部が第1リブ41Aの下端部から車両前方に向けて第2リブ41Bの直下まで延設され、上側薄板部が第2リブ41Bの下端部から第3リブ41Cの下端部まで延設されている。そして、下側薄板部の前端部と上側薄板部の後端部とが、第2リブ41Bの直下において、車両上下方向に延びる垂直薄板部によって接続されている。
 
【0030】
  複数のリブ側薄板部38の各々は、
図3に示されるように、短冊状をなし、帯状の薄板部36の側方にそれぞれ連なるようにして配されている。複数のリブ側薄板部38は、車両前後方向において互いに離間して配されるとともに、互いに並行して延びる構成とされている。複数のリブ側薄板部38のうち、第2リブ41B及び第3リブ41Cの周囲にそれぞれ形成されたリブ側薄板部38は、第1リブ41Aの周囲に形成されたリブ側薄板部38より長さ寸法が短い構成とされている。そして、薄板部36が、複数のリブ側薄板部38の各々に対して直交するように配されている。
 
【0031】
  次に、ドアトリム20を製造する成形装置60について、
図5及び
図6を参照しつつ説明する。成形装置60は、射出プレス成形装置とされ、一対の成形型61,70と、射出装置65とを備えている。本実施形態では、上側に配された成形型61が基材31の車室内側の面31Aを成形するキャビ型とされ、下側に配された成形型70が基材31の車室外側の面31Bを成形するコア型とされるもの例示する。射出装置65は、例えば、スクリュウタイプのものとされ、本実施形態では成形型70に設けられている。また、成形型70は、アンダーカット部を有する係止部45を成形するために、図示しないスライド型等を更に含んで構成されている。
 
【0032】
  成形型61は、図示しない駆動装置(例えば、電動モータ、エアシリンダ、油圧シリンダなど)によって、成形型70に対して移動が可能な可動型とされる。一対の成形型61,70は、成形型61を成形型70に対して接近離間させることで型閉じ及び型開きが可能な構成となっている。
 
【0033】
  成形型70は、
図1に示すように、型閉じ状態では成形型61に対して基材31の板厚だけ離間して対向配置される。これにより、成形型61と成形型70との間には基材31を成形するための基材成形空間が形成される。成形型61及び成形型70で、プレボード39をプレスすると、プレボード39が基材成形空間の形状に対応する形に圧縮され、その結果、基材31が成形される。
 
【0034】
  成形型70の成形面70Aには、複数のリブ41をそれぞれ成形するための複数のリブ成形空間71と、複数のリブ成形空間71に連通して、各リブ成形空間71に溶融樹脂67を供給するためのランナー73が凹設されている。ランナー73は、その中央部付近において、射出装置65のノズルと接続されている。このような構成により、一の射出装置65から、ランナー73を介して複数のリブ成形空間71内に溶融樹脂67を射出可能となっている。リブ成形空間71及びランナー73は、基材成形空間と連通され、リブ成形空間71及びランナー73に溶融樹脂67を射出することで、樹脂成形体40が基材31に接合された状態で成形される。
 
【0035】
  成形型70の成形面70Aには、リブ成形空間71及びランナー73の周囲に、成形型61に向かって突出する突出部75が形成されている。この突出部75は、基材31における薄板部36及びリブ側薄板部38を成形するためのものであり、突出端面の形状が、
図3において網掛けを付して示す薄板部36及びリブ側薄板部38の形状に対応している。
 
【0036】
  次に、成形装置60によるドアトリム20の製造方法について、
図5及び
図6を参照しつつ説明する。本実施形態におけるドアトリム20の製造方法は、プレボード39を成形するプレボード成形工程と、成形型61,70によってプレボード39から基材31をプレス成形する基材成形工程と、成形型61,70によって基材31がプレスされた状態で、基材31に接合された樹脂成形体40を射出成形する成形体成形工程と、を備えている。
 
【0037】
  プレボード成形工程では、繊維と熱可塑性樹脂が混合されたマット材を加熱して、平板状に成形する。そして、成形された平板状の成形品を、所定長さ(例えば、成形後の基材31の長さ寸法よりも長めの寸法)に切断することによりプレボード39を得る。プレボード39の板厚及び密度は、板面方向において略均一なものとされている。
 
【0038】
  基材成形工程では、プレボード39を再度ポリプロピレンが溶融軟化する程度に加熱し、成形型70にセットして、成形型61及び成形型70を型閉じする。これにより、成形型61,70によってプレボード39から基材31がプレス成形される。なお、この型閉じ時に、プレボード39の周端部を、成形型61,70でせん断することにより切除してもよい。
 
【0039】
  基材成形工程では、薄板部36の板厚が一般部32の板厚より小さくなるように基材31をプレス成形する。さらに、本実施形態では、基材成形工程において、リブ側薄板部38の板厚も、薄板部36の板厚と同様に、一般部32の板厚より小さくなるように基材31をプレス成形する。この際、プレボード39には、成形型70における突出部75と対向する箇所(薄板部36及びリブ側薄板部38に対応する箇所)に、突出部75以外の平坦な部分と対向する箇所(一般部32に対応する箇所)に比して、高いプレス圧が掛かる。この結果、薄板部36及びリブ側薄板部38が一般部32より高密度な状態に圧縮されるとともに、成形型70(突出部75)と薄板部36及びリブ側薄板部38との間に隙間を生じ難くなっている。なお、基材成形工程において、プレボード39のうちリブ成形空間71及びランナー73と対向する箇所は、相対的に周囲(薄板部36及びリブ側薄板部38)よりも盛り上がった状態となる。この盛り上がった箇所は、基材31における樹脂成形体40との接合部34となる。
 
【0040】
  成形体成形工程では、成形型61,70を型閉じした状態で、射出装置65からランナー73を介してリブ成形空間71内へ溶融樹脂67を射出する。詳細には、射出装置65からランナー73に流入した溶融樹脂67は、ランナー73の延設方向に沿って車両前方及び車両後方に向けて流動する。本実施形態では、ランナー73がクランク状に延設されており、直線状のランナー73に比べて、その屈曲部分等における流動性に劣る虞があるが、このようなランナー73の形状を加味して、各種成形条件が適宜設定されている。そして、ランナー73を流動する溶融樹脂67は、ランナー73から分岐する各リブ成形空間71に流入し、リブ成形空間71に充填される。
 
【0041】
  射出された溶融樹脂67は、接合部34において基材31内部の軟化した熱可塑性樹脂を押し込みつつ、繊維の内部へと浸透する。繊維の内部に浸透した溶融樹脂67は、基材31内部の軟化した熱可塑性樹脂と一部混ざり合う。この際、基材31における接合部34の周囲に位置する薄板部36及びリブ側薄板部38は一般部32に比べて高密度な状態とされているから、仮に当該部分が一般部32と同様の密度を有する構成と比べて、接合部34に浸透した溶融樹脂67が薄板部36又はリブ側薄板部38側にまで拡がり難くなっている。さらに、薄板部36及びリブ側薄板部38は、成形型70(突出部75)との間に隙間を生じ難い構成とされており、そのような隙間から溶融樹脂67が漏れ出し難くなっている。
 
【0042】
  次に、リブ成形空間71及びランナー73内に充填された溶融樹脂67を、冷却固化する。すると、複数のリブ41及びリブ繋ぎ部43が基材31と接合された状態で射出成形される。この後、成形型61,70を開き、脱型して、基材31と樹脂成形体40が一体的に形成されたトリムボード30が得られる。そして、トリムボード30に表皮材29を貼着する工程や、各種機能部品を取り付ける工程等を経て、ドアトリム20の製造が完了する。
 
【0043】
  続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、例えば、乗員が上縁部23に肘を置く等して、基材31に対して外部から車両下方に向かうような力が作用した場合に、薄板部が車両前後方向に直線状に延設される構成に比べて、薄板部36に掛かる応力を車両上方又は車両下方に分散させることができる。この結果、直線状の薄板部を備える基材に比べて、基材31が車両上下方向に変形し難くなり、ドアトリム20の剛性を十分に確保することができる。
 
【0044】
  また、本実施形態では、薄板部36は、車両前後方向にクランク状に延設されている。このため、好適にドアトリム20の剛性を向上することができる。
 
【0045】
  <実施形態2>
  本発明の実施形態2を
図7によって説明する。本実施形態では、樹脂成形体140及び薄板部136の構成が、実施形態1の樹脂成形体40及び薄板部136とは相違する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
 
【0046】
  複数のリブ141は、車両後方から順に並ぶ第1リブ141A、第2リブ141B、第3リブ141Cを含んで構成されている。第1リブ141A、第2リブ141B、第3リブ141Cは、略同じ間隔を有して並列している。第1リブ141A、第2リブ141B、第3リブ141Cは、車両上下方向において、上端部と下端部の位置がほぼ同じとされ、互いに同等の長さ寸法を有している。
 
【0047】
  リブ繋ぎ部143は、基材31の車室外側の面31Bから突出する突条状をなし、複数のリブ141のそれぞれの下端部に連なる構成とされている。本実施形態では、リブ繋ぎ部143は、車両前後方向に一定ピッチの波状に延設されている。具体的には、リブ繋ぎ部143は、複数のリブ141の間隔と同等の波長を有するサインカーブのような軌跡を描き、互いに隣り合うリブ141の間において、2回屈曲する(山状の部分と谷状の部分を有する)構成とされている。そして、リブ繋ぎ部143は、複数のリブ141の各々に対して斜めに交差するようにして連なる構成とされている。なお、リブ繋ぎ部143が複数のリブ141を繋ぐ位置は、複数のリブ141の下端部に限られないが、本実施形態のように、複数のリブ141が湾曲部24に形成される構成においては、成形性の観点から、相対的に主面部21に近い位置とされることが好ましい。
 
【0048】
  薄板部136は、車両上方又は車両下方に向けて屈曲しつつ車両前後方向に延設されている。本実施形態では、薄板部136が、車両前後方向に一定ピッチの波状に延設されている。言い換えれば、薄板部136は、車両前後方向に対して斜めに延びるようにして延設される部分を含んでいる。さらに言い換えれば、薄板部136は、車両前後方向において、相対的に車両下側に配される下側薄板部と、相対的に車両上側に配される上側薄板部と、を含んでいる。具体的には、薄板部136は、下側薄板部が複数のリブ141の下端部より車両下方において谷状に延設され、上側薄板部が複数のリブ141の下端部より車両上方において山状に延設されている。
 
【0049】
  複数のリブ側薄板部38の各々は、短冊状をなし、帯状の薄板部136の側方にそれぞれ連なるようにして配されている。複数のリブ側薄板部38は、車両前後方向において互いに離間して配されるとともに、互いに並行して延びる構成とされている。複数のリブ側薄板部38の各々は、互いに同等の長さ寸法を有している。そして、薄板部136が、複数のリブ側薄板部38の各々に対して斜めに交差するように配されている。
 
【0050】
  続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、薄板部136は、車両前後方向に波状に延設されている。このため、好適にドアトリム20の剛性を向上することができる。さらに、本実施形態によれば、実施形態1のようなクランク状に延設された薄板部36に比べて、好適にドアトリム20の剛性を向上することができる。
 
【0051】
  また、本実施形態によれば、薄板部136は、一定ピッチの波状に延設されるとともに、複数のリブ側薄板部38の各々に対して斜めに交差するように配されている。このため、例えば、薄板部36のようにクランク状に延設され、複数のリブ側薄板部38の各々に対して直交するように配されている構成に比べて、複数のリブ141の長さ寸法を等しいものとし易い。このため、複数のリブ141の長さ寸法が同等とされることにより、各リブ141A,141B,141C成形時における樹脂の収縮量を均一化することができ、基材31に意図しない変形が生じる事態を抑制することができる。さらに、各リブ141A,141B,141Cの長さ寸法を十分に確保し易く、複数のリブ141により好適に基材31を補強することができる。
 
【実施例】
【0052】
   以下、実施例に基づいて本発明を更に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0053】
[1]試験片の作成
(1)比較例
  比較例として、
図8に示されるように、基材と、同等の長さ寸法を有する3本のリブ1を有するとともに、3本のリブ1の下端部が直線状のリブ繋ぎ部3で接続された樹脂成形体4を、2個備える試験片を作成した。この基材は、薄板部6が直線状に延設されている。基材において、一般部の板厚を約2.3mmとし、薄板部6の板厚を約1.3mmとし、薄板部6がリブ繋ぎ部3の周囲を約5mmの幅寸法を有して取り囲む構成とした。
 (2)実施例1
  実施例1として、
図3に示されるように、比較例のリブ1に比して、2本のリブ41B,41Cの長さ寸法を約20mm小さくし、3本のリブ41の下端部がクランク状のリブ繋ぎ部43で接続された樹脂成形体40を、2個備える試験片を作成した。この基材31は、薄板部36がクランク状に延設されている。実施例1におけるその他の構成は、比較例と同様とした。
 (3)実施例2
  実施例2として、
図7に示されるように、比較例と同等の長さ寸法の3本のリブ141を有するとともに、3本のリブ141の下端部が波状のリブ繋ぎ部143で接続された樹脂成形体140を、2個備える試験片を作成した。リブ繋ぎ部143の波形は、隣り合うリブ141の間隔と同等の波長(約60mm)を有し、その振幅が約15mm程度とされている。この基材31は、薄板部136が波状に延設されている。実施例2におけるその他の構成は、比較例と同様とした。
【0054】
[2]剛性評価
(1)剛性評価試験
  上記[1](1)〜(3)で得られた、試験片の各5個について、リブの並び方向を横方向として、基材に対して縦方向に49Nの力を加えた際の基材の変形量を測定した。その結果を
図9の表に示す。基材の変形量の平均値は、比較例では4.5mm/49Nであり、実施例1では3.0mm/49Nであり、実施例2では2.3mm/49Nであった。
(2)実施例1の剛性評価
  剛性評価試験により、実施例1では、比較例に比べて、一部のリブ41B,41Cの長さ寸法が小さくなっているものの、基材31の剛性が高いことが確かめられた。これは、比較例では、直線状の薄板部6に応力が収集し、薄板部6を起点として撓み変形を生じたが、実施例1では、比較例に比べて薄板部36に係る応力を車両上方又は車両下方に分散され、薄板部36を起点する撓み変形量が低減されたためと推察され得る。
(3)実施例2の剛性評価
  剛性評価試験により、実施例2では、比較例に比べて基材31の剛性が高く、さらに、実施例1に比べても基材31の剛性が高いことが確かめられた。これは、比較例では、直線状の薄板部6に応力が収集し、薄板部6を起点として撓み変形を生じたが、実施例2では、比較例に比べて薄板部136に係る応力が車両上方又は車両下方に分散され、薄板部136を起点する撓み変形量が低減されたためと推察され得る。さらに、実施例2では、実施例1に比べて応力を分散する箇所(車両上方または車両下方に屈曲する部位)が増加したため、より一層、薄板部136に作用する応力が分散され、実施例1より薄板部136を起点する撓み変形量が低減されたためと推察され得る。また、実施例2では、実施例1のように一部のリブ41B,41Cの長さ寸法を小さくする必要がなく、実施例1に比べてリブ141による基材31の補強の効果が高いためと考えられる。
【0055】
  <他の実施形態>
  本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
  (1)上記実施形態以外にも、ドアトリムにおける、樹脂成形体の配置、配設数は適宜変更可能である。例えば、樹脂成形体がドアトリムの主面部に配された構成においても、本願明細書に開示の技術は有効である。また、リブ繋ぎ部の配置は、成形性やドアトリムにおける他の構造物の配置構成等を考慮して適宜設定可能である。
  (2)上記実施形態では、樹脂成形体として、3本のリブを備えるとともに、リブ繋ぎ部がクランク状又は波状に延設される構成を例示したが、これに限定されない。例えば、リブ繋ぎ部によって、互いに接続されるリブの本数は、2本ないし、4本以上であっても構わない。また、リブ繋ぎ部の形状は適宜変更可能であり、例えば、リブ繋ぎ部は一定ピッチを有しない波状に延設されていてもよい。
  (3)上記実施形態では、薄板部がリブ繋ぎ部の周囲を所定の幅寸法を有して取り囲む構成を例示したが、これに限られない。例えば、薄板部がリブ繋ぎ部の周囲を異なる幅寸法を有して取り囲む構成とし、薄板部が車両上方又は車両下方に向けて屈曲する屈曲形状に比べ、リブ繋ぎ部の屈曲形状を緩やかなものとしてもよい。さらに、薄板部及びリブ側薄板部は、接合部の全周を取り囲まず、一部のみを取り囲む構成であっても構わない。
  (4)上記実施形態では、リブ側薄板部を備える構成を例示したが、リブ側薄板部を備えていない構成であってもよい。また、リブ側薄板部の形状、配置は適宜変更可能である。
  (5)上記実施形態では、下型が固定型とされる成形装置を例示したが、これに限られない。また、成形装置や成形構造体の製造方法は、成形構造体の形状、材質等に応じて適宜変更可能である。