(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照明手段は、前記撮像手段の光軸と同一の軸で前記被検査物に照明光を照射する、同軸落射照明、及び前記軸を中心とした同心円状の周方向から前記被検査物に照明光を照射する周方向照明、を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の外観検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような各種欠陥を適切に検出し得る画像を撮影するためには、例えば、照明光の向き、照明光の光量(強さ)、照明光の色(波長)などの各要素と、それらの値の組み合わせからなる照明条件を、ワークに応じて適切に設定(調整)する必要がある。
【0006】
しかしながら、このような照明条件の設定を行うためには、相応の光学知識(或いは十分な経験)が必要であり、そのような技能を備えたオペレーターが、必ずしも検査装置を運用する現場にいるとは限らないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、十分な光学知識や経験がなくとも、外観検査装置において最適な照明条件を設定できるような技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る外観検査装置は、被検査物に照明光を照射する照明手段と、前記被検査物を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された被検査物の画像を分析し、前記被検査物の欠陥を検出する欠陥検出手段と、前記被検査物に照射される前記照明光の照明条件を設定する照明条件設定手段と、前記欠陥検出手段が前記被検査物の欠陥を検出するのに最も適した照明条件である最適照明条件を、複数の異なる前記照明条件によって撮像された画像に基づいて各照明条件をスコア化することにより、導出する最適照明条件導出手段と、を有する。
【0009】
ここで、「各照明条件をスコア化する」とは、当該照明条件の適切性を数値として求めることをいう。このような構成を有することによって、十分な光学知識や経験を有していないオペレーターであっても、適切な照明条件で検査対象物の外観検査を実施することが可能になる。なお、ここでいう照明条件とは、例えば照明光の色(波長)、強さ(輝度)
などの照明の要素、及びこれらの値の組み合わせによって定義される条件である。
【0010】
また、前記外観検査装置は、前記照明条件を定義する要素として、前記被検査物に照射される照明光の方向、強さ、色、の少なくともいずれかの要素が含まれることを特徴としてもよい。これらの各要素およびその組み合わせによって、検査対象物のどのような欠陥を検出するかが決定されることが一般的であり、前記照明条件を定義する要素として含まれていることが望ましい。
【0011】
また、前記最適照明条件導出手段は、前記照明条件を定義する各要素の全ての組み合わせから、所定の要素の値を固定した第一の探索用照明条件を複数選定して前記スコア化を行い、この中から最も良いスコアの仮最適照明条件を求める第一の探索と、前記第一の探索で得られた仮最適照明条件に基づいて、真に最適な照明条件が存在するであろう範囲を推定し、当該範囲内で上記所定の要素の値の固定を解除した照明条件で、さらに前記スコア化を行って、真の最適照明条件を求める第二の探索と、を行うことによって、前記最適照明条件を導出してもよい。また、前記第二の探索は、二分探索法を用いて行われるものであってもよい。
【0012】
照明条件を定義する要素が複数項目に及ぶと、それらの各値同士の組み合わせ数は膨大になるため、これらの組み合わせの全てでワークを撮像していると、多くの時間を要することになり、現実的な時間で最適な照明条件を決定することができない。この点、上記のような方法によると、ワークの撮像を実際に行う照明条件を絞り込むことができ、効率的に最適な照明条件の設定を行うことが可能になる。
【0013】
また、前記最適照明条件導出手段は、前記被検査物が二以上ある場合に、前記被検査物個々の相違による被検査物ごとの最適照明条件の相違を平準化して、複数の前記被検査物の検査に適合する平準最適照明条件を導出してもよい。
【0014】
例えば、同一ロットの製品であっても、厳密には個々の製品でその特性(形状、品質)には、差異が生じることがあるため、これらの検査のための最適な照明条件も、それに応じて異なる場合もある。このような場合に、個々の製品に応じた最適照明条件を設定しようとすると、製品ごとに照明条件を設定する、ということにもなりかねない。
【0015】
この点、上記のような外観検査装置の構成であると、(検査上許容し得る)所定のバラツキの範囲内で平準化された照明条件を、最適な照明条件として設定することで、そのような問題を解決することができる。
【0016】
また、前記照明手段は、前記撮像手段の光軸と同一の軸で前記被検査物に照明光を照射する、同軸落射照明、及び前記軸を中心とした同心円状の周方向から前記被検査物に照明光を照射する周方向照明、を備えるものであってもよい。
【0017】
このような構成であれば、ワークの周囲からのみ照明を照射する場合に比べて、ワーク表面の形状による拡散反射の影響を抑えた画像の取得が可能になる一方、最適照明条件の設定が複雑になるため、本発明の適用に好適である。
【0018】
また、前記外観検査装置は、前記欠陥検出手段によって欠陥の検出が行われる前記被検査物の領域を特定する、検査領域特定手段、をさらに有していてもよい。被検査物全体を検査対象とするのでは無く、検査すべき箇所が定まっているのであれば、当該箇所のみを検査対象とすることで、最適な照明条件の候補を絞り込むことができる。すなわち、特定された領域において欠陥を適切に検出し得る照明条件のみを候補とすればよく、被検査物全体を対象とするよりも効率的に最適照明条件を設定することが可能になる。
【0019】
また、前記照明条件設定手段は、前記最適照明条件導出手段によって導出された最適照明条件に合わせて、自動で照明条件を設定してもよい。このような構成であると、照明条件の設定作業を効率化することができる。
【0020】
また、前記外観検査装置は、前記照明光が均一に反射せず光沢ムラの生じる表面を有する物品、を前記被検査物としてもよい。例えば、フレキシブルプリント基板、硬質基板、など表面にメタル部分を有する物品、和紙、不織布など表面に凹凸のあるシート状物品、模様が描かれている物品など、被検査物の検査面の反射率が一様でない場合には光沢ムラが生じ、撮像された画像における光沢ムラに検出すべき欠陥が紛れてしまう。即ち、光沢ムラを生じる表面を有する物品については、異常を検出するための閾値を設定するのが困難となるが、照明条件を最適化することでこのような光沢ムラを効果的に抑止することができるため、本発明の適用に好適である。
【0021】
また、上記の課題を解決するため、本発明に係る外観検査装置の設定方法は被検査物に照明光を照射しつつ前記被検査物を撮像することによって得られた画像に基づいて、前記被検査物における欠陥を検出する、物品の外観検査装置の照明条件の設定方法であって、前記照明条件を定義する各要素の全ての組み合わせから、所定の要素の値を固定した複数の探索用の照明条件を選定する、第1のステップと、前記第1のステップによって設定された探索用照明条件による撮像を行う、第2のステップと、前記第2のステップで得られた画像に基づいて前記の各探索用照明条件をスコア化する第3のステップと、前記第3のステップでスコア化された各探索用照明条件の対比を行い、仮の最適照明条件を求める第4のステップと、前記第4のステップで求めた仮の最適照明条件に基づいて、真に最適な照明条件が存在するであろう範囲を推定し、当該範囲内で上記所定の要素の値の固定を解除した照明条件で、さらに前記スコア化を行って、真の最適照明条件を求める第5のステップと、前記第5のステップで求めた真の最適照明条件を、外観検査における照明条件として設定する、第6のステップと、を有する。
【0022】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を含む外観検査システムとしても特定することができる。また、前記外観検査装置が行う方法として特定することもできる。上記処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、十分な光学知識や経験がなくとも、外観検査装置において最適な照明条件を設定できるような技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例について説明する。
【0026】
<適用例>
図1は本適用例に係る、外観検査装置の概略を示すブロック図である。
図1に示す様に、本適用例に係る外観検査装置9は、検査装置本体91、制御部92、出力部93、入力部94、記憶部95を備えており、これらは電気的に接続されている。なお、検査装置本体91は、カラーカメラなどの撮像部911、第1照明部912及び第2照明部913を備えている。
【0027】
制御部92はコンピュータのCPU(プロセッサ)であって、機能モジュールとして、画像処理部921、欠陥検出部922、照明条件設定部923、最適照明条件導出部924を備えている。出力部93はインターフェース画面、検査結果、取得画像などを出力するためのもので、典型的にはディスプレイ装置によって構成される。入力部94は検査に必要な条件やパラメータなどを入力するためのもので、例えば、キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなどの各種入力装置によって構成される。記憶部95は例えば、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置ハードディスクなどにより構成される。これらの制御部92、出力部93、入力部94、記憶部95は、検査装置本体91と一体に構成されていてもよいし、別体の汎用コンピュータとして構成されていてもよい。
【0028】
画像処理部921は、撮像部911が撮像したワークの画像データを処理し、欠陥検出用の画像を生成する。なお、撮像部911が撮像したワークの画像データは、記憶部95に格納される。欠陥検出部922は、画像処理部921によって生成された欠陥検出用画像に基づいて、ワークの欠陥を検出する。具体的には、欠陥の種類に応じて予め設定された閾値などに基づいて、画像を構成する各画素の輝度値から、ワークの欠陥の有無の判定、欠陥の種類の判別などを行う。
【0029】
照明条件設定部923は、後述する第1照明部912及び第2照明部913を制御し、ワークに対する照射光が所定の照明条件となるように設定する。ここで、照明条件とは、照射光の色(波長)、強さ(輝度)などの照明の要素、及びこれらの値の組み合わせによって定義される条件である。最適照明条件導出部924は、予め定められたアルゴリズムに基づいて、欠陥を検出するのに適した画像を取得(撮像)するために、ワークの特性に応じて最も適した照明条件を導出する。
【0030】
図2は、本適用例に係る検査装置本体91の概略構成を示す図である。
図2に示すように、本適用例の撮像部911は、ワークWの上方に光軸が鉛直方向に向くように設けられる。この撮像部911の光軸には、ハーフミラー等のビームスプリッター914が設けられ、ビームスプリッター914に対して、撮像部911の光軸と直交する方向に、同軸落射照明用の第1照明部912が配置される。この第1照明部912は、例えば、R,G,Bの各色の光を照射する、LED光源912R,912G,912Bによって構成される。LED光源912R,912G,912Bは、それぞれその光軸をビームスプリッター914に向けて設けられ、各光源から発せられた光は混合しつつビームスプリッター914を介してワークWに向けて照射される。
【0031】
ビームスプリッター914の下方には、斜め入射照明用の第2照明部913が設けられる。この第2照明部913は、LED光源913R,913G,913Bが、それぞれ複数個、光軸を鉛直方向に向け、かつリング状に配列された構成をとる。そして、第2照明部913とワークWとの間に拡散板915が配置されている。これにより、R,G,Bの各色の光は、混合しつつ拡散板915を介してワークWに向けて照射される。
【0032】
次に、最適照明条件導出部924が、ワークに応じた最適照明条件を導出する処理について説明する。処理の概要は、設定可能な照明条件をスコア化し、当該スコアが最もよかった照明条件を最適照明条件とするものである。
【0033】
ここで、照明条件のスコアは、例えば、当該照明条件で撮像された各画像データについて、画像上のワークに該当する領域の平均輝度値を、予め設定された目標平均輝度値から引き、この値に、ワークに該当する領域の輝度値の偏差を足して算出する。即ち、この例では、検査領域の輝度値の平均が目標平均輝度値に近く、偏差が小さいほど小さな値を返すことになっており、最もスコアの値が小さい照明条件を最適な照明条件としている。
【0034】
ここで、第1照明部912、第2照明部913について、R、G、Bそれぞれの光源のON、OFFのみが切替え可能である場合には、照明条件(照明条件を構成する要素及びその値の組み合わせ)の総数は、2
6(2段階
(2方向×3色(RGB)))=64通りとなる。この場合には、全ての照明条件でワークWの撮像を行い、64通りのスコアを比較して、最適照明条件を導出すればよい。
【0035】
一方、第1照明部912、第2照明部913の各LED光源について、光量(照明強度)の調節が、例えば256段階で可能である場合には、照明条件の総数は膨大になり(256
6通り)、これらすべての照明条件で撮像を行ってスコアを算出することは、およそ現実的でない。
【0036】
そのため、このような場合には、設定可能な全ての照明条件の中から、最適な照明条件となる組み合わせが含まれると推定される一群の照明条件グループを絞り込む第一次探索(以下、疎探索ともいう)を行った上で、当該絞り込んだ照明条件グループから、真に最適な照明条件となる組み合わせを探索する、第二次探索(以下、詳細探索ともいう)を行って、最適照明条件を導出する。
【0037】
疎探索は、例えば、第1照明部912、第2照明部913の各LED光源について、照明強度が同一(即ち白色照明)、かつ8段階のみに限定した照明条件のそれぞれについて、撮像を行ってスコアを算出する。この場合には、64(8
2)通りの照明条件について、スコアの算出を行えばよい。そして、算出されたスコアが最も小さい照明条件を仮最適照明条件とする。
【0038】
次に、詳細探索において、上記で算出された仮最適照明条件を基準として、真に最適な照明条件があると推定される範囲内で、照明強度の限定を無くした照明条件で、さらに(撮像及び)スコア化を行う。この際、網羅的に上記範囲内の照明条件でのスコア化を行うと、多くの時間を要するため、例えば2分探索法を用いることで限定された上記範囲内の照明条件について、スコア化を行い、真に最適な照明条件を求める。
【0039】
以上のようにして、最適照明条件導出部924がワークに応じた最適照明条件を導出するため、外観検査装置9のオペレーターに十分な光学知識や経験がなくとも、最適な照明条件を設定することができる。
【0040】
<実施例>
以下に、この発明を実施するための形態の一例を、さらに詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0041】
図3は本実施例に係る、外観検査装置1の概略を示すブロック図である。また、
図4は本実施例に係る検査装置本体11の光学部分の概略構成を示す図である。
図3に示す様に、本適用例に係る外観検査装置1は、検査装置本体11、制御部12、表示部13、入力部14、記憶部15を備えており、これらは電気的に接続されている。
【0042】
検査装置本体11は、観察光学系としてカメラ111を、照明光学系として、第1照明部112、第2照明部113、第3照明部114、第4照明部115を備えている。カメラ111はn×m個の受光素子をマトリクス状に配列した撮像素子を有し、カラー画像を撮像できるものである。光を検出した受光素子が制御部12に対して信号を出力することで、制御部12が画像データを取得する。なお撮像素子の各受光素子が、撮像された画像の各画素に対応している。カメラ111は、ワークWの上方に光軸が鉛直方向に向くようにして、ワークWが載置される検査位置を撮像エリア内に収めるように配置される。なお、ワークWは、光沢ムラがある物品であってもよいし、光沢ムラがない物品であってもよい。
【0043】
第1照明部112、第2照明部113、第3照明部114、第4照明部115の各照明部は、検査位置に載置されたワークWに対して照明光を照射する。各照明部は、後述するように照明条件設定部123の制御により、検査対象物に照射する照明光の色や光量が調整される。照明部を含む検査装置本体11の光学系については後に詳述する。
【0044】
制御部12は演算処理装置であって、機能モジュールとして、画像処理部121、欠陥検出部122、照明条件設定部123、最適照明条件導出部124を備えている。表示部13は、例えば液晶ディスプレイ装置であり、インターフェース画面、検査結果、取得画像などを出力する。入力部14は、例えば、キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなどの各種入力装置であり、検査に必要な条件やパラメータなどを入力するために用いられる。記憶部15は例えば、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置ハードディスクなどであり、制御部の各機能モジュールを実現するためのプログラムや、取得した画像データ、欠陥検出のための閾値、などの各種データが格納される。これらの制御部12、表示部13、入力部14、記憶部15は、検査装置本体11と一体に構成されていてもよいし、別体の汎用コンピュータとして構成されていてもよい。さらに、検査装置本体11とは離れた箇所に設置され、有線または無線の通信手段によって接続されていてもよい。
【0045】
画像処理部121は、カメラ111と接続されており、カメラ111が撮像したワークWの画像データを処理し、欠陥検出用の画像を生成する。なお、カメラ111が撮像したワークWの画像データは、記憶部15に格納される。
【0046】
欠陥検出部122は、画像処理部121によって生成された欠陥検出用画像に基づいて、ワークの欠陥を検出する。具体的には、欠陥の種類に応じて予め設定された閾値などに基づいて、画像を構成する各画素の輝度値から、ワークの欠陥の有無の判定、欠陥の種類の判別などを行う。ここで、欠陥検出部122が検出する欠陥とは、例えば色彩欠陥、および凹凸欠陥である。色彩欠陥は、ワークWの製造工程時や製造工程後に、異物や汚れが付着するなどして生じた欠陥であり、凹凸欠陥は、ワークWの製造工程時における成形不良や、製造工程後に何かにぶつけるなどして生じたキズや打痕である。外観検査装置1は、欠陥検出部122が欠陥を検出しなかったワークWを良品とし、画像処理ユニット4が欠陥を検出したワークWを不良品とする。
【0047】
照明条件設定部123は、第1照明部112、第2照明部113、第3照明部114、第4照明部115を制御し、ワークに対する照射光が所定の照明条件となるように調整(設定)する。ここで、照明条件とは、照射光の方向、色(波長)、強さ(輝度)などの照明の要素、及びこれらの値の組み合わせによって定義される条件である。最適照明条件導出部124は、予め定められたアルゴリズムに基づいて、欠陥を検出するのに適した画像を取得(撮像)するために、ワークWの特性に応じて最も適した照明条件を導出する。
【0048】
次に、
図4及び
図5に基づいて、検査装置本体11の光学系について詳細に説明する。
図4は、カメラ111の光軸方向における検査装置本体11の断面図であり、
図5は、検
査装置本体11の第2照明部113、第3照明部114、第4照明部115を平面視した状態を示す説明図である。検査装置本体11は、検査位置を覆うドーム状の部分を有しており、カメラ111と検査位置との間に配置したハーフミラー116を備える。カメラ111は、ハーフミラー116を通して、検査位置のワークWを撮像する。また、検査装置本体11は、照明光を、ワークWに照射する第1照明部112、第2照明部113、第3照明部114、および第4照明部115を備えている。
【0049】
第1照明部112は、ハーフミラー116と略同じ高さに設けられる。ここでいう高さ方向は、カメラ111の光軸方向である。第1照明部112は、発光色が赤色である赤色LED112R、発光色が緑色である緑色LED112G、および発光色が青色である青色LED112Bを1組の発光素子群とし、この発光素子群を1組以上有している。赤色LED112R、緑色LED112G、青色LED112Bは、発光面をハーフミラー116に向けて配置される。赤色LED112R、緑色LED112G、青色LED112Bの少なくとも1つを発光させることにより照射される光が、第1照明部112の照明光である。第1照明部112の照明光は、ハーフミラー116によって、カメラ111の光軸に合わせた方向から、ワークWに照射される。すなわち、第1照明部112の照明光は、検査対象物で反射された正反射光がカメラ111の各受光素子で受光される方向に照射される同軸落射照明である。
【0050】
赤色LED112R、緑色LED112G、青色LED112Bは、照明条件設定部123からの制御により、発光光量(発光のON/OFFも含む)が設定される。なお、発光光量は256段階の調節が可能となっている。
【0051】
図4、および
図5に示すように、第2照明部113、第3照明部114、および第4照明部115は、カメラ111の光軸を中心とする平面視リング形状の空間であり、カメラ111の光軸を中心とする円の内周側から外周側に向けて、この順に設けられている。
【0052】
第2照明部113は、発光色が赤色である赤色LED113R、発光色が緑色である緑色LED113G、および発光色が青色である青色LED113Bを1組の発光素子群とし、この発光素子群を複数組有している。第2照明部113は、リング状に配置された複数組の発光素子群を有しており、赤色LED113R、緑色LED113G、および青色LED113Bは、発光面を下側(検査位置側)に向けて取り付けられる。
【0053】
また、第2照明部113の下端側には、第2照明部113の照明光を検査位置に照射する向きに傾斜させて照射する拡散板が取り付けられている。
【0054】
赤色LED113R、緑色LED113G、青色LED113Bの少なくとも1つを発光させることにより照射される光が、第2照明部113の照明光である。赤色LED112R、緑色LED112G、青色LED112Bは、照明条件設定部123からの制御により、256段階で発光光量(発光のON/OFFも含む)が設定される。
【0055】
なお、第3照明部114及び、第4照明部115については、第2照明部113と同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0056】
そして、第2照明部113、第3照明部114、および第4照明部115は、それぞれが遮光板によって区切られており、隣接する照明部の照明光が互いの照明部に入射するのを防止している。
【0057】
第2照明部113、第3照明部114、および第4照明部115の各色LEDの少なくとも1つの色を発光させた光は、拡散板を通してワークWに照射される。ここで、2つ以
上の色のLEDを発光させた場合は、拡散板よりもLED側で光が混合されたうえ、拡散板を通してワークWに照射される。なお、カメラ111の光軸に対する、各照明部の拡散板の傾斜角は、それぞれ異なっているので、第2照明部113、第3照明部114、および第4照明部115がワークWに照射する照明光の照射角度は、それぞれ異なる。
【0058】
例えば、第2照明部113の赤色LED113R、緑色LED113G、および青色LED113Bの少なくとも1つを発光させたことによる照明光は、カメラ111の光軸とのなす角度が20°程度である方向からワークWに照射される。また、第3照明部114の赤色LED114R、緑色LED114G、および青色LED114Bの少なくとも1つを発光させたことによる照明光は、カメラ111の光軸とのなす角度が37°程度である方向からワークWに照射される。また、第4照明部115の赤色LED115R、緑色LED115G、および青色LED115Bの少なくとも1つを発光させたことによる照明光は、カメラ111の光軸とのなす角度が60°程度である方向からワークWに照射される。なお、
図4において、実線矢印は照明光の照射方向を示している。
【0059】
次に、最適照明条件導出部124が、ワークに応じた最適照明条件を導出する処理について説明する。処理の概要は、設定可能な照明条件をスコア化し、当該スコアが最もよかった照明条件を最適照明条件とするものである。スコア化は各照明条件の下で撮像されたワークWの画像データに基づいて、例えば次の数式により求められる。
【数1】
【0060】
数式1において、V
aは目標平均輝度値であり、例えば初期設定は127(256階調の場合の中間値)としておくと良い。また、X
iはi番目の画素の輝度(R、G、Bの平均値とする)である。また、Xバー(上線)は平均値であり、nは検査領域中の画素の総数(必ず
しもワークW全体とは限らない)である。imgは設定可能な照明条件で撮像した画像の集合である。img
uは照明条件uで撮像した画像である。f(img)は画像imgのスコア(小さいほ
どムラがなく、かつ、目標平均輝度値に近い)である。
【0061】
上記式では、検査対象領域の平均輝度値を、予め設定された目標平均輝度値から引き、この値に、ワークに該当する領域の輝度値の偏差を足してスコアを算出している。即ち、この例では、検査領域の輝度値の平均が目標平均輝度値に近く、偏差が小さいほど小さな値を返すことになっており、最もスコアの値が小さい照明条件が最適な照明条件となる。
【0062】
ここで、本実施例における照明条件(照明光の向き、色、強度の値の組み合わせ)の総数は256
12通りであり(256段階
(4方向×3色(RGB)))であり、これらすべての照明条件で撮像を行ってスコアを算出することは、およそ現実的でない。
【0063】
そのため、実際には、設定可能な全ての照明条件の中から、最適な照明条件となる組み合わせが含まれると推定される一群の照明条件グループを絞り込む疎探索を行った上で、当該絞り込んだ照明条件グループから、真に最適な照明条件となる組み合わせを探索する、詳細探索を行って、最適照明条件を導出する。
【0064】
具体的には以下のようなフローにより、最適照明条件の導出を現実的に許容できる程度
の時間で行うようにしている。
図6は本実施例において最適照明条件の導出を行う処理の流れを示している。
図6に示すように、最適照明条件導出部124は、まず、設定可能な全ての照明条件から、所定の要素の値を固定した疎探索用の照明条件を選定する。例えば、各LED光源の照明強度について、3段階(例えば、照明強度が0、127、255)であり、全てのLED光源が同一の照明強度(即ち照明光の色は、白色のみ)となる照明条件を選定する(ステップS1)。
【0065】
こうすると、対象となる照明条件の組み合わせは、3段階
(4方向×1色)で、81通りとなる。そして、このようにして選定した照明条件の下でワークWの撮像を行い(ステップS2)、得られた画像データに基づいて、該当する照明条件を上記数式1によりスコア化する(ステップS3)。さらに、スコア化した81通りの照明条件について、スコアの対比を行い、最もスコアの良い照明条件を仮の最適照明条件とする(ステップS4)。ここまでが疎探索に該当する。
【0066】
続けて、ステップS4で求めた仮の最適照明条件を基準として真の最適な照明条件を求める処理を行う。具体的には、仮の最適照明条件から、真に最適な照明条件が存在するであろう範囲を推定し、当該範囲内で照明強度の限定を無くした照明条件で、さらに(ワークの撮像及び)スコア化を行う。この際、網羅的に上記範囲内の照明条件でのスコア化を行うと、多くの時間を要するため、例えば二分探索法を用いてさらに限定した上記範囲内の照明条件について、スコア化を行い、真に最適な照明条件を求める(ステップS5)。ここまでが詳細探索に該当する。
【0067】
そして、ステップS5で導出した最適照明条件を、外観検査に用いる最適照明条件として設定し(ステップS6)、処理を終了する。
【0068】
以上のような外観検査装置の構成によると、照明条件を定義する要素の組み合わせ数が多数であっても、ワークの撮像を実際に行う照明条件を絞り込むことができ、オペレーターに十分な光学知識や経験がなくとも、効率的に最適な照明条件の設定を行うことが可能になる。
【0069】
<変形例1>
なお、上記の実施例では、単一のワークを対象として、最適照明条件の設定を行ったが、複数のワークを対象とする(平準化された)最適照明条件の設定を行うことも可能である。例えば、同一ロットの製品であっても、厳密には個々の製品でその特性(形状、品質)には、差異が生じることがあるため、これらの検査のための最適な照明条件も、それに応じて異なる場合がある。このような場合に、個々の製品に応じた最適照明条件を設定しようとすると、製品ごとに都度照明条件を設定する、ということにもなりかねない。
【0070】
この点、(検査上許容し得る)所定のバラツキの範囲内で平準化された照明条件を、複数のワークに対する最適な照明条件として設定することで、上記のような問題を解決することができる。
【0071】
具体的には、複数のワークについて、上記で示した疎探索を行い、その際のスコアを該複数ワーク分保存しておく。そして、これらの複数のワークでスコアが最小となる照明条件を最適照明条件とする。下記の数式2によって、これを算出する。
【数2】
【0072】
数式2において、Wは対象とするワークの総数であり、img
u,vは照明条件uで撮像したワークvの画像である。
【0073】
<変形例2>
また、外観検査装置1は、ワークの全体を検査対象とするのでは無く、ワークにおける特定領域のみを検査対象として、これに最適化された照明条件を導出するようにしてもよい。
図7は、本変形例に係る外観検査装置1の概略を示すブロック図である。
図7に示すように、本変形例に係る外観検査装置1は、実施例1と比べて、制御部12の機能モジュールとして検査領域特定部125をさらに備えている点に特徴を有する。
【0074】
検査領域特定部125は、ワークの検査面における一定の領域(以下、検査対象領域ともいう)を検査対象として特定する。当該検査対象領域は、例えば検査仕様書などによりワークに応じて具体的に定められており、この情報が予め入力部14を介して記憶部15に登録、保持されている。なお、検査対象領域の情報は、その都度オペレーターによって入力されるのであっても構わない。領域の特定はどのような範囲であってもよく、例えば基板上の特定の部品のみを検査対象領域としてもよいし、一定範囲の金属部分のみを検査対象領域としてもよい。
【0075】
検査領域特定部125は、現に検査対象となっているワークに対応する検査対象領域の情報を取得することによって、当該ワークの検査対象領域を特定する。このようにして、検査対象領域が特定されると、欠陥検出部122は、当該検査対象領域のみを対象として欠陥の検出を行う。そして、最適照明条件導出部124は、当該検査対象領域のみを対象として、撮像データのスコア化を行い、最適照明条件を導出する。
【0076】
このような構成によると、ワーク全体を対象とするよりも、スコア化のために必要な処理(演算)を少なくすることができ、より効率的に最適照明条件を設定することができる。
【0077】
<その他>
上記の実施例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば上記実施例では、照明条件を決定する要素は、照明光の向き、色、照明強度としているが、必ずしもこれに限定されず、これらの要素のうち、一部のみを対象とするものであっても良いし、逆にカメラのシャッタースピードなど他の要素を含んでいても良い。
【0078】
また、スコアの算出方法も、上記の例に限定されず、例えばワークを撮像した画像の良品部と欠陥部の輝度値の差が最大となる照明条件が最良のスコアとなるようにしてもよい。
【0079】
本発明の一の態様は、被検査物に照明光を照射する照明手段(112;113;114;115)と、前記被検査物を撮像する撮像手段(111)と、前記撮像手段によって撮像された被検査物の画像を分析し、前記被検査物の欠陥を検出する欠陥検出手段(122
)と、前記被検査物に照射される前記照明光の照明条件を設定する照明条件設定手段(123)と、前記欠陥検出手段が前記被検査物の欠陥を検出するのに最も適した照明条件である最適照明条件を、複数の異なる前記照明条件によって撮像された画像に基づいて各照明条件をスコア化することにより、導出する最適照明条件導出手段(124)と、を有する、外観検査装置1である。