特許第6969710号(P6969710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6969710
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】プライマー組成物、印刷物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 153/02 20060101AFI20211111BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20211111BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20211111BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20211111BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20211111BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20211111BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C09D153/02
   C09D5/00 D
   C09D7/65
   C09D7/61
   C09D7/63
   B32B27/00 104
   B32B27/32
【請求項の数】9
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2021-532453(P2021-532453)
(86)(22)【出願日】2020年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2020048339
【審査請求日】2021年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2020-107641(P2020-107641)
(32)【優先日】2020年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】片山 悠
(72)【発明者】
【氏名】進藤 朋美
(72)【発明者】
【氏名】清水 健太
(72)【発明者】
【氏名】茂呂居 直
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−153364(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/083925(WO,A1)
【文献】 特開平8−259849(JP,A)
【文献】 特開平4−13747(JP,A)
【文献】 特開2018−58219(JP,A)
【文献】 特開2015−189178(JP,A)
【文献】 特開2013−82221(JP,A)
【文献】 特開平9−66593(JP,A)
【文献】 特開2007−112832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
B65D 65/00− 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系重合体ブロック(a)と、ブタジエン系重合体ブロック、イソプレン系重合体ブロックまたはこれらの水素添加物ブロックの少なくともいずれか一つ(b)からなるブロック共重合体(A)を含有するプライマー組成物であり、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が5/95〜70/30であり、
前記プライマー組成物が、印刷インキ層の上に印刷されることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(A)が無水マレイン酸変性されたブロック共重合体であり、酸価が1〜30[mgCHONa/g]であることを特徴とする請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
プライマー組成物が、助樹脂(B)および/またはブロッキング防止剤(C)を含有し、助樹脂(B)を含有する場合には下記(1)を満たし、ブロッキング防止剤(C)を含有する場合には下記(2)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のプライマー組成物。
(1)助樹脂(B)のTgが50℃以上であり、ブロック共重合体(A)と助樹脂(B)の質量比 (A)/(B)が99/1〜50/50であること
(2)プライマー組成物全量中にブロッキング防止剤(C)を0.1〜5.0質量%含有すること
【請求項4】
前記ブロッキング防止剤(C)が、ポリオレフィンワックス、アマイドワックス、シリカの少なくともいずれかを含有することを特徴とする
請求項3に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記プライマー組成物が押出し樹脂と接するプライマーであり、前記押出し樹脂が少なくともポリプロピレンを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項6】
前記プライマー組成物が印刷される基材が、少なくともポリプロピレンを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項7】
基材上に、請求項1〜のいずれかに記載のプライマー組成物により形成されたプライマー層を有する印刷物。
【請求項8】
基材上に、印刷インキ層、プライマー層、押出し樹脂層が少なくともこの順に積層された積層体であり、前記プライマー層が請求項1〜のいずれかに記載のプライマーにより形成されたことを特徴とする積層体。
【請求項9】
基材上に、印刷インキ層、プライマー層、押出し樹脂層、シーラント層が少なくともこの順に積層された積層体であり、前記プライマー層が請求項1〜のいずれかに記載のプライマーにより形成され、前記シーラント層が少なくともポリプロピレンを含有することを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出しラミネーションによって形成される積層体に用いられるプライマー組成物、印刷物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品用パッケージ材料用途、各種産業用パッケージ材料用途等にポリエチレン、ポリプロピレンを代表とするポリオレフィン(フィルム)が汎用的に使われている。これらのパッケージには複数のフィルム貼り合わせてラミネート加工された積層体が主流であるが、ポリオレフィンを用いた包装材としては、接着剤を使用したラミネート方法と、接着剤を使用せずに溶融した樹脂を押出すラミネート方法がある。
【0003】
押出しラミネーションの場合、押出し樹脂はポリエチレンであることがほとんどである。このようなポリエチレン押出しラミネーションの積層体は、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム基材の上に印刷層(インキ層)を設け、該印刷層面にポリエチレンを溶融押出ししてラミネートすることにより製造される。他方、押出し樹脂としてポリエチレンではなくポリプロピレンが用いられることもある。
【0004】
しかし、現在の汎用パッケージ用リキッドインキは、押出し樹脂がポリエチレンの押出しラミネーションに対する適性を有しているものは多いが、押出し樹脂がポリプロプレンの押出しラミネーションに適性があるパッケージ用リキッドインキは、塩素化プロピレン系を用いたインキといった一部の種類にとどまっている。このような塩素化ポリプロピレン系のインキは、印刷時にトルエンを用いることから環境的な問題がある。更に、樹脂中に塩素を多く含むため、ダイオキシン発生等の環境への懸念がある。
また近年では海洋プラスチック汚染の問題から、パッケージのリサイクルを推進していくことが必要になってきており、よりリサイクルし易いパッケージとして単一素材で構成されたモノマテリアルのパッケージが求められている。
【0005】
このような観点から、塩素化ポリプロピレンを主成分としない汎用のインキで、ポリプロピレンを溶融押出ししてラミネートすることにより製造される積層体が所望される。
特許文献1には、ポリプロピレン樹脂を使用して押出しラミネーションを可能にするために、酸変性ポリプロピレンを含むアンカーコート層の上にポリプロピレン樹脂を溶融押出しすることが記載されている。しかし、特許文献1の方法は、アンカーコート層をポリオレフィンフィルム(基材)上に直接設けるものであり、印刷層を有する基材を用いた場合のような、密着性の低下が懸念される材料を用いることを想定したものではない。従って、汎用のインキを用いた印刷層を有する場合にも十分な密着性を有するポリプロプレン押出しラミネーションを実現できる積層体の実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−163688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、押出しラミネーションの積層体の密着性、ラミネート強度を向上させることであり、特に、汎用のインキを使用した印刷層を有する場合にも、ポリプロピレン押出し樹脂層が剥離することなく、高い密着性、ラミネード強度を実現できる、押出し樹脂の積層体に用いられるプライマー組成物、印刷物及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリプロピレン樹脂溶融押出しにおいて、スチレン系重合体ブロック(a)と、ブタジエン系重合体ブロック、イソプレン系重合体ブロックまたはこれらの水素添加物ブロックの少なくともいずれか一つ(b)からなるブロック共重合体(A)を含有するプライマー組成物であり、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が5/95〜70/30であるプライマー組成物をコート剤として用いることにより、上記課題を解決することを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、スチレン系重合体ブロック(a)と、ブタジエン系重合体ブロック、イソプレン系重合体ブロックまたはこれらの水素添加物ブロックの少なくともいずれか一つ(b)からなるブロック共重合体(A)を含有するプライマー組成物であり、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が5/95〜70/30であることを特徴とするプライマー組成物に関する。
【0010】
また本発明は、ブロック共重合体(A)が無水マレイン酸変性されたブロック共重合体であり、酸価が1〜30[mgCHONa/g]であるプライマー組成物に関する。
【0011】
また本発明は、助樹脂(B)および/またはブロッキング防止剤(C)を含有し、助樹脂(B)を含有する場合には下記(1)を満たし、ブロッキング防止剤(C)を含有する場合には下記(2)を満たすプライマー組成物である。
(1)助樹脂(B)のTgが50℃以上であり、ブロック共重合体(A)と助樹脂(B)の質量比 (A)/(B)が99/1〜50/50であること
(2)プライマー組成物全量中にブロッキング防止剤(C)を0.1〜5.0質量%含有すること
また、本発明は、プライマー組成物が押出し樹脂と接するプライマーであり、前記押出し樹脂が少なくともポリプロピレンを含有するプライマー組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記プライマー組成物が印刷される基材が、少なくともポリプロピレンを含有するプライマー組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記プライマー組成物が、印刷インキ層の上に印刷されるプライマー組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、基材上に、プライマー組成物を印刷して形成されたプライマー層を有する印刷物に関する。
【0015】
また、本発明は、基材上に、印刷インキ層、前記プライマー層、押出し樹脂層が少なくともこの順に積層された積層体積層体に関する。
【0016】
また、本発明は、基材上に、印刷インキ層、前記プライマー層、押出し樹脂層、シーラント層が少なくともこの順に積層された積層体であり、前記シーラント層が少なくともポリプロピレンを含有することを特徴とする積層体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ポリプロプレン押出しラミネーションの積層体の密着性、ラミネート強度を向上させることができる。また、ポリプロプレン押出しラミネーションの積層体において、塩素化ポリプロピレン系以外の汎用樹脂を使用できるため、環境負荷を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<プライマー組成物>
本発明のプライマー組成物は、スチレン系重合体ブロック(a)と、ブタジエン系重合体ブロック、イソプレン系重合体ブロックまたはこれらの水素添加物ブロックの少なくともいずれか一つ(b)からなるブロック共重合体(A)を含有するプライマー組成物であり、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の重量比(a)/(b)が5/95〜70/30であるプライマー組成物である。基材上に、本発明のプライマー組成物により形成されたプライマー層を設けることにより、溶融した押出し樹脂との密着性を向上させることができる。
【0019】
(ブロック共重合体(A))
スチレン系重合体ブロック(a)と、ブタジエン系重合体ブロック、イソプレン系重合体ブロックの少なくともいずれか一つ(b)からなる共重合体は、トリブロック共重合体、テトラブロック共重合体が好ましく、直鎖構造であることが好ましい。具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体またはスチレン−ブタジエン−スチレン−イソプレン−スチレン共重合体が好ましい。
ブタジエン系重合体ブロックを構成するブタジエン構成単位は、1,4−結合のブタジエンにより構成されていてもよいし、1,2−結合のブタジエンにより構成されていてもよいが、1,4−結合のブタジエン系重合体ブロック(b−1)と、1,2−結合のブタジエン系重合体ブロック(b−2)を両方有することが好ましい。ブロック共重合体(A)中の1,4−結合のブタジエン系重合体ブロック(b−1)と、1,2−結合のブタジエン系重合体ブロック(b−2)の割合は特に限定されないが、例えば、重量比で(b−1):(b−2)=90:10〜30:70であることが好ましい。
【0020】
ブロック共重合体(A)を構成するブタジエン系重合体ブロックまたはイソプレン系重合体ブロックは、水素添加物ブロックであることが好ましい。水素添加により、ブロック共重合体(A)の耐熱性を向上でき、耐ブロッキング性を向上することができる。例えば1,4−結合のブタジエンに水素添加した場合、該ブタジエンはエチレン単位のブロックとなり、1,2−結合のブタジエンに水素添加した場合は、該ブタジエンはブチレン単位のブロックとなる。ブタジエン系重合体ブロックおよび/またはイソプレン系重合体ブロックの水素添加は部分的に行われていればよいが、ブロック共重合体(A)中に1,4−結合のブタジエン重合体ブロック(b−1)と1,2−結合のブタジエン系重合体ブロック(b−2)を両方有する場合は、水素添加を1,2−結合のブタジエン系重合体ブロック(b−2)に選択的に行うことが好ましい。1,2−結合のブタジエンにより構成されたブロック(b−2)に選択的に水添する場合、スチレン系重合体ブロック(a)と、1,4−結合のブタジエン系重合体ブロック(b−1)と、ブチレンにより構成されたブロック(1,2−結合のブタジエン系重合体(b−2)に水添したブロック)と、スチレン系重合体ブロック(a)の構成単位(スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン)をブロック共重合体(A)中に含むことが好ましい。
【0021】
また、ブタジエン系重合体ブロックおよび/またはイソプレン系重合体ブロックの水素添加を完全に水添した部分を有することも好ましい。この場合、スチレン系重合体ブロック(a)と、エチレンにより構成されたブロック(1,4−結合のブタジエン系重合体(b−1)に水添したブロック)と、ブチレンにより構成されたブロック(1,2−結合のブタジエン系重合体(b−2)に水添したブロック)と、スチレン系重合体ブロック(a)の構成単位(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)の構成単位をブロック共重合体(A)中に含むことが好ましい。
【0022】
重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の重量比(a)/(b)は5/95〜70/30であるが、耐ブロッキング性向上のためには、重合体ブロック(a)のスチレンの割合が高い方が好ましく、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の重量比(a)/(b)が10/90以上であることが好ましく、15/85以上であることがより好ましく、25/75以上であることがより好ましく、30/70であることが更に好ましい。一方、スチレンの割合が高くなりすぎるとラミネート特性が低下する傾向があることから、合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の重量比(a)/(b)が65/35以下であることが好ましく、60/40以下であることが好ましく、50/50であることがより好ましく、40/60であることがより好ましく、35/65であることがより好ましい。
【0023】
ブロック共重合体(A)は、α−β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物がグラフト重合されて酸変性されたものであることが好ましい。α−β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、無水マレイン酸等が用いられるが、無水マレイン酸が密着性向上や溶解性、他樹脂との相溶性向上の観点から好ましい。α−β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物が付加される量は特に制限はないが、酸価は1〜30[mgCHONa/g]であることが好ましく、5〜20[mgCHONa/g]であることがより好ましい。
【0024】
ブロック共重合体(A)のガラス転移温度(以下「Tg」と称する場合がある)は、−60℃〜30℃の範囲であることが好ましく、−40〜10℃の範囲がより好ましい。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0025】
(助樹脂(B))
本発明のプライマー組成物は、前記したブロック共重合体(A)の他に、助樹脂(B)を含有してもよい。助樹脂(B)は、本発明のプライマー組成物に用いるブロック共重合体(A)のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度の樹脂を更に含有することが好ましく、例えば、Tgが50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上の樹脂を用いることが好ましい。このようなガラス転移温度の高い樹脂(C)を含有することにより、組成物の塗膜の硬度を高くすることができ、耐ブロッキング性を向上することができる。本発明のプライマー組成物に必要に応じて併用される助樹脂(B)の例としては、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ポリビニルブチラール樹脂、石油樹脂などを挙げることができる。これらの助樹脂(B)は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
助樹脂(B)の含有量は特に限定されるものではないが、プライマー層の上に設ける溶融樹脂との密着性、及び耐ブロッキング性を共に向上させる観点から、ブロック共重合体(A)と助樹脂(B)の重量比 (A)/(B)が99/1〜50/50であることが好ましく、98/2〜55/45であることが好ましく、97/3〜50/50であることが好ましく、95/5〜60/40であることが好ましい。
【0026】
(ブロッキング防止剤(C))
また、本発明のプライマー組成物は、ブロッキング防止剤(C)を含有してもよい。ブロッキング防止剤(C)を含有することにより、耐ブロッキング性を向上させることができる。本発明のプライマー組成物に必要に応じて併用されるブロッキング防止剤(C)としては、各種ワックスや微粒子を用いることができる。微粒子としては
無機系微粒子、有機系微粒子、有機無機複合微粒子等の一般的に用いられるブロッキング防止剤を用いることができる。
【0027】
無機系微粒子としては、例えば、シリカ、ジルコニア、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。有機系微粒子としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等を利用した樹脂ビーズ系が挙げられる。また、有機無機複合微粒子としては、アクリル−シリコン系、シリコーン系の微粒子が挙げられる。中でも、無機系微粒子を用いることが好ましく、シリカを用いることが好ましい。シリカは、より具体的には合成非晶質シリカを用いることが好ましい。
【0028】
また、ブロッキング防止剤(C)として、ワックスを用いることも好ましい。ワックスの例としては、カルナバ系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン−ワックス、アマイドワックスなどのワックスを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。中でも、ポリオレフィンワックスおよび/またはアマイドワックスを使用することが好ましい。
【0029】
前記ポリオレフィンワックスの具体例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、が挙げられ、MPP−635VF(MicroPowders,Inc.)、MP−620VF XF(Micro Powders社製)、ハイワックス200P(三井化学(株)社製)、ハイワックスNP055(三井化学(株)社製)等が挙げられる。
【0030】
前記アマイドワックスの具体例としては脂肪酸アマイド系ワックスが挙げられ、例えばパルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、ステアリルエルカ酸アマイド等が挙げられる。
【0031】
前記ブロッキング防止剤(C)の配合量は特に限定されるものではないが、本発明のプライマー組成物全量中にブロッキング防止剤(C)を0.1〜5.0質量%含有することが好ましく、0.1〜3.0質量%含有することが好ましく、0.1〜2.0質量%含有することが好ましく、0.1〜1質量%含有することが好ましい。ブロッキング防止剤(C)の総量が本発明のプライマー組成物全量に対し0.1質量%以上であればブロッキング性を保持できる傾向にあり、ブロッキング防止剤(C)の総量がプライマー組成物全量に対し5質量%以下であれば密着性、ラミネート強度が保持できる傾向にある。前記ブロッキング防止剤(C)の配合量は、本発明のプライマー組成物中の樹脂成分(ブロック共重合体(A)と助樹脂(B))の総重量に対して、質量比(樹脂総重量)/(ブロッキング防止剤(C)総重量)が99/1〜80/20であることが好ましく、95/5〜90/10であることが好ましい。
【0032】
(その他添加剤)
前記方法で得られた本発明のアンカーコーティング剤は、前記した成分のほかに、必要に応じてその他の添加剤等を含有していても良い。
【0033】
前記添加剤としては、例えば酸化防止剤、耐光剤、可塑剤、造膜助剤、レベリング剤、発泡剤、増粘剤、着色剤、難燃剤、他の水性樹脂、各種フィラー等を、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0034】
(溶剤)
本発明のプライマー組成物は、溶剤と混合して液状の形態を有していることが好ましい。溶剤としては有機溶剤が挙げられ、例えばトルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、1−メトキシ2−プロパノール等のアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤があげられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いることができる。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤を用いないことが望ましい。
【0035】
中でも樹脂の溶解性、プライマーの乾燥性の観点から、脂肪族有機溶剤、エステル系溶剤、脂肪族アルコール系溶剤から選択される溶剤を用いることが好ましく、より具体的には、メチルシクロヘキサンや酢酸n−プロピルを使用することが好ましい。どちらか一方のみでもよいが、両方有することが好ましい。
溶剤の配合量は特に限定されるものではないが、本発明のプライマー組成物全量中に溶剤を85〜95質量%含有することが好ましい。
【0036】
(プライマー組成物)
本発明のプライマー組成物の粘度は、プライマー組成物の製造時やプライマー塗工時の作業性の観点から、10mPa・s以上、1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0037】
プライマー組成物の粘度は、ブロック共重合体(A)、及び該ブロック共重合体(A)と共に使用される原材料の種類や量、例えば助樹脂(B)、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。
【0038】
本発明のプライマー組成物は、前記ブロック共重合体(A)と、必要に応じて他樹脂(B)、はブロッキング防止剤(C)、及び他の添加剤を有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。はブロッキング防止剤(C)を含有する場合は、ブロック共重合体(A)と、必要に応じて他樹脂(B)を有機溶媒に溶解及び/又は分散した組成物に直接添加し混合分散させてもよいし、はブロッキング防止剤の分散体を作製した後、ブロック共重合体(A)を含む組成物と混合してもよい。分散方法としては、公知の方法、例えばメディアを用いた分散装置として、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等を使用することができ、メディアを用いないものとして超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等で分散することができる。
【0039】
プライマー組成物中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、押出し溶融樹脂との密着性を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
本発明のプライマー組成物は、例えば、ポリオレフィンを溶融押出しにより作製するラミネートフィルム(積層体)において、押出し樹脂層との密着性を向上させ、ラミネート強度を向上させるためのプライマー層を形成するコーティング剤として好適に使用することができる。
<積層体>
以下、本発明のプライマー組成物を用いた積層体について説明する。本発明の積層体の層構成は、本発明のプライマー組成物により形成されたプライマー層と、該プライマー層の上に溶融押出しにより形成されたポリオレフィン樹脂層を有するものであり、その他の構成については限定されるものではなく、用途や目的に応じて適宜設計可能である。以下、その一例として、基材層/印刷インキ層/プライマー層/押出し樹脂層/シーラント層が順次積層された構成の積層体について説明する。なお、本発明では、印刷層の上にプライマー層を設けたものを印刷物ともいう。
【0040】
(基材層)
基材層は特に限定されるものではないが、基材層の上に印刷層を設ける場合は、印刷基材として使用されている各種基材を挙げることができる。そのような基材として、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、ポリエチレン(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられる。また、透明性を必要としない用途の場合は、紙、合成紙、不織布、アルミ箔を使用することもできる。中でも、モノマテリアル化の観点からポリオレフィンフィルムであることが好ましい。本発明のプライマー層は各層間の密着性を良好にさせることができ、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィン樹脂を用いたフィルムであることが好ましい。特にポリプロピレン材料との密着性に優れていることから、ポリプロピレンフィルムを好適に用いることができる。
【0041】
これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。
【0042】
基材フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていることが好ましく、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。
【0043】
(印刷インキ層)
基材層の上に、文字や図形、記号等の装飾層である印刷インキ層を設けることができる。当該印刷はフィルムへの印刷に使用される各種印刷インキの印刷により設けることができる。
【0044】
当該印刷インキとしては、種々のインキが使用可能である。使用される着色剤については、着色顔料、白色顔料等いずれでもよい。着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機顔料、無機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。
【0045】
無機顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。また、ガラスフレークまたは塊状フレークを母材とした上に金属、もしくは金属酸化物をコートした光輝性顔料(メタシャイン;日本板硝子株式会社)を使用できる。墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0046】
また、白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、等があげられる。尚、前記顔料の平均粒径は、10〜200nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜150nm程度のものである。
【0047】
また前記着色顔料の添加量としては、十分な画像濃度や印刷画像の耐光性を得るため、インキ全量の1〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0048】
使用される樹脂系については、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。求められる特性によって種々の樹脂系が選択されるが、例えば、オレフィンとの密着性を求める場合には塩素化ポリプロピレン樹脂、耐油性を求める場合には酢酸セルロース樹脂をポリイソシアネートで鎖伸張したものなどが用いられる。そのほかにも、ポリエステル−ポリウレタン系樹脂やアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂などが用いられ、耐久性などを求める場合には、印刷時にこれらの樹脂系インキにさらに硬化剤を加えてインキ皮膜の強度を向上させる場合もある。本発明においては、印刷インキ層の上にプライマー層を設けることによりポリオレフィン溶融樹脂との密着性を高めることができるので、例えばポリプロピレン押出し樹脂層との密着性が悪いことからこれまで使用することができなかった塩素化ポリプロピレン樹脂系以外のインキ材料を好適に用いることができる。ポリプロピレン溶融樹脂を押出しラミネーションする場合、従来は塩素化ポリプロプロピレン系のインキを用いて密着性を維持していたが、本発明のプライマー層を設けることにより、種々のインキ材料を用いることが可能になる。そのため、塩素化ポリプロピレン系のインキを用いる場合に問題になっていたトルエン溶剤の使用を回避でき、また、塩素を多く含むことによるダイオキシン発生の問題を回避できる。そのため、より環境負荷を低減させた積層体を得ることができる。
【0049】
印刷インキは、更に必要に応じて、併用樹脂、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤、分散剤などを含むこともできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。例えばポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、あるいはα−オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体などが挙げられる。具体的にはソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)などを挙げることができる。またBYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)なども適宜使用できる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート適性の観点から5質量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2質量%の範囲である。
【0050】
本発明の印刷インキ層に用いられるインキは、前記したような着色剤、樹脂、添加剤等を混合して得られ、溶剤系、水性、無溶剤系等の各種形態で用いられる。もっとも普及しているのは溶剤系であるが、有機溶剤の蒸発による排出や作業環境の悪化などから、有機溶剤の排出が極めて少ない水性やUV硬化系などの無溶剤系を用いることも好ましい。
溶剤としては有機溶剤が挙げられ、例えばトルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールのアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤があげられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いることができる。
【0051】
上述したように塩素化ポリプロピレン系以外のインキを用いた場合、トルエン溶剤の使用を回避することができるため、作業環境負荷を低減できる。
【0052】
本発明の印刷インキ層は、インキを基材フィルムに印刷することにより形成できる。印刷方式ではグラビア印刷、フレキソ印刷、平版印刷、インクジェット方式等があげられ、生産数量を優先する場合には、高速印刷が可能なグラビア印刷やフレキソ印刷が主に用いられる。逆に、少量の印刷の場合には、版の作成が不要なインクジェット方式が有用である。このように形成される本発明の印刷インキ層の膜厚は限定されるものではないが、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。また、印刷インキ層の膜厚は、カラーインキの場合は約0.4〜0.9g/m、白インキの場合は約0.8〜1.5g/mであることが好ましい。
【0053】
(プライマー層)
前記印刷インキ層の上に、押出し樹脂層との密着性を向上させるためのプライマー層が設けられる。本発明のプライマー層は、プライマー組成物により形成される。プライマー組成物の構成については前記したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0054】
プライマー層は、印刷インキ層の上にプライマー組成物をコーティングすることにより得られる。コーティング方法として、具体的な例としては、ロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができる。このように形成される本発明のプライマー層の膜厚は、基材層およびインキ層や押出し樹脂層との密着性を保持するため、0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。また、プライマー層の膜厚は、0.1〜2.0g/m、好ましくは0.3〜1.0g/mであることが好ましい。プライマー層の膜厚が薄すぎると押出し樹脂層との密着性が不十分になり、プライマー層の膜厚が厚すぎると耐ブロッキング性が不十分になる。
【0055】
(押出し樹脂層)
前記プライマー層を形成した後、熱可塑性樹脂をプライマー層の上に押出しラミネートすることにより、押出し樹脂層を形成する。基材の上に印刷層及びプライマー層を形成した積層フィルムを一旦巻き取ってロール状にする工程を設けてもよいし、ロール状に巻き取らずにそのまま押出し樹脂層を設けてもよい。
【0056】
押出し樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂のポリオレフィン系樹脂が好ましい。本発明のプライマー層はポリプロピレン系樹脂との接着性に優れていることから、ポリプロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。
【0057】
ポリプロピレン系樹脂は、例えば、プロピレン単独重合体や、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体及びプロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、さらには、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0058】
ポリプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、加工安定性や他の層と共押出加工する際の加工性、更にフィルムの成膜性も向上する。
【0059】
また、押出し樹脂層は、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましいが、ポリプロピレン系樹脂を主成分として他の樹脂と他の樹脂を併用して用いてもよい。併用できる他の樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)等の直鎖状ポリエチレン、分岐状ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等や、ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィン構造を有するモノマーとエチレン等との共重合体が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。
【0060】
基材にポリプロピレン系樹脂を用いている場合は、押出し樹脂層もプロピレン単独重合体のポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0061】
本発明の押出し樹脂層は単層の押出し樹脂層であってもよいし、共押出積層法で積層された多層の押出し樹脂層であってもよい。多層の場合、各層の構成は積層体が必要とする用途・性能に応じて適宜選択可能であるが、本発明の積層体はポリプロピレン系樹脂と密着性に優れるプライマー層を有することから、プライマー層と直接接する層をポリプロピレン系樹脂とすることができる。また、押出し樹脂層は織布であってもよい。織布を構成する樹脂は、上述した押出し樹脂層に用いられる樹脂であればよく、ポリプロピレン系の樹脂であることが好ましい。
このように形成される本発明の押出し樹脂層の膜厚は限定されるものではないが、例えば50μm以下、好ましくは30μm以下である。
【0062】
(シーラント層)
本発明の積層体は、押出し樹脂層の上に、シーラント層を設けることができる。シーラント層の材質としては特に限定されるものではなく、前記基材層に用いられる材質と同様のものを用いることができるが、押出し樹脂層にポリプロピレンを用いた場合はポリプロピレン(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)を用いることが好ましい。シーラント層は、押出し樹脂層の形成時に、溶融樹脂層を流しながら同時にシーラント層に用いるフィルムを張り付けることにより形成することができる。
【0063】
本発明の積層体の層構成は、上記した基材層/印刷インキ層/プライマー層/押出し樹脂層/シーラント層の構成に限定されるものではない。例えば、印刷インキ層を設けずに基材層/プライマー層/押出し樹脂層の積層体としてもよいし、シーラント層を設けない積層体としてもよい。
また、本発明の積層体の構成は、例えば、基材層や押出樹脂層に更に他の基材と張り合わせた積層体としてもよい。他の基材としては特に限定されるものではなく、積層体の用途や求められる機能に応じて適宜選択可能である。他の基材を更に設ける場合、積層方法としては、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
【0064】
他の基材を積層する場合、積層体の最表面となる層は、接着剤や粘着剤の塗布性を向上させるために、あるいは、最表面に印刷等を施したうえで、基材とラミネートする場合などの際には、接着剤、粘着剤、印刷インキとの密着性等を向上させるため、前記押出樹脂層に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0065】
本発明の印刷物または積層体は、食品、薬品、化粧品、サニタリー用品、工業部品、雑貨、雑誌等に用いる軟包装材、包装袋、容器、容器の蓋材等の各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0066】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。表中の空欄は未配合であることを示す。
【0067】
<実施例1>
(プライマー組成物の作製)
ブロック共重合体(A)としてマレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が30/70、酸価が19[mgCHONa/g])(クレイトンFG1901:クレイトン株式会社製)を表1に記載の配合比率で溶剤に溶解して実施例1のプライマー組成物を作製した。溶剤は、メチルシクロヘキサンとn−プロピルアセテートを用いた。
【0068】
(ポリウレタン尿素樹脂溶液Pの調整)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール84.5部(水酸基価:56.6mgKOH/g)とポリエチレングリコール15.5部(水酸基価:278mgKOH/g)およびイソホロンジイソシアネート27.55部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.84重量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル68.7部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン7.83部、ジ−n−ブチルアミン0.11部、酢酸エチル136.8部およびイソプロピルアルコール110.7部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン尿素樹脂溶液Pを得た。得られたポリウレタン尿素樹脂溶液Pは、樹脂固形分濃度30.4質量%、Tgが3℃、樹脂固形分のMwは54,000であった
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂溶液Kの調整)
水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(樹脂モノマー組成が重量%で塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/3/5、水酸基価(mgKOH)=64)を酢酸エチルで15%溶液とし、これを塩酢ビ樹脂溶液Kとした。
(ウレタン・塩酢ビ系インキの調整)
ポリウレタン樹脂溶液Pを30部、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂溶液Kを30部、フタロシアニン系青色顔料10部(DIC(株)製FASTGEN Blue LA5380)、酢酸エチル30部の混合物をダイノーミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を使用して練肉し、ウレタン・塩酢ビ系の青色印刷インキを作成した。
【0069】
得られた印刷インキの粘度を酢酸エチル/IPA=70/30でザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整した。
【0070】
(印刷物及び積層体の作製)
次に、調整後のインキを、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア校正機により、片面にコロナ処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルム、東洋紡績株式会社製)へ印刷して、乾燥することにより、基材(OPPフィルム)に印刷インキ層を形成し、続いて同様に、プライマー組成物を印刷して乾燥することによりプライマー層を形成し、印刷層とプライマー層を有するOPPフィルム印刷物を得た。
続いて、OPPフィルム印刷物からフィルムを順次くり出して、押出し樹脂層を設けると同時に、該押出し樹脂層に無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、CPPフィルム)を貼り付けて、OPPフィルム/印刷インキ層/プライマー層/押出し樹脂層/CPPフィルムの実施例1の積層体を作製した。なお、押出し樹脂層は、プロピレン単独重合体〔密度:0.90g/cm3、MFR:7.5g/10分〕を用い、該プロピレン単独重合体を押出法により押出温度250℃でTダイから押出樹脂層の厚さが10μmになるように押出すことにより形成した。
【0071】
<実施例2>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてマレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が13/87、酸価が11[mgCHONa/g])(クレイトンFG1924:クレイトン株式会社製)を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例2のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0072】
<実施例3>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が30/70)(クレイトンG1652:クレイトン株式会社製)を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例3のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0073】
<実施例4>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が20/80)(クレイトンG1730:クレイトン株式会社製)を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例4のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0074】
<実施例5>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてマレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が30/70、酸価が10[mgCHONa/g])(タフテック(登録商標)M−1913:旭化成株式会社製)を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例5のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0075】
<実施例6>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてマレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が20/80、酸価が10[mgCHONa/g])(タフテック(登録商標)M−1943:旭化成株式会社製)を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例6のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0076】
<実施例7>
実施例1を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例7のプライマー組成物及び実施例7の積層体を作製した。
【0077】
<実施例8>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が30/70)(タフテック(登録商標)H−1041:旭化成株式会社製))を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例8のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0078】
<実施例9>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が67/33)(タフテック(登録商標)H−1043:旭化成株式会社製))を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例9のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0079】
<実施例10>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が12/88)(タフテック(登録商標)H−1221:旭化成株式会社製))を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例10のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0080】
<実施例11>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が20/80)(タフテック(登録商標)P−1083:旭化成株式会社製))を表1に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例11のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0081】
<実施例12>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が30/70)(タフテック(登録商標)P−1500:旭化成株式会社製))を表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例12のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0082】
<実施例13>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が30/70)(アサプレン(登録商標)T−411:旭化成株式会社製))を表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例13のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0083】
<実施例14>
実施例1のプライマー組成物において、ブロック共重合体(A)としてスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(スチレン系重合体ブロック(a)とブタジエン系重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が30/70)(アサプレン(登録商標)T−432:旭化成株式会社製))を表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例14のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0084】
<実施例15>
実施例1のプライマー組成物において、ブロッキング防止剤(C)としてアマイドワックス(エチレンビスオレイン酸アマイド)を更に加えて表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例15のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0085】
<実施例16>
実施例2のプライマー組成物において、フィッシャートロプシュワックス(SasolwaxH1、固形分酸価0.1mgKOH/g:Sasol Performance Chemicals社製)を更に加えて表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例2と同様にして、実施例16のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0086】
<実施例17>
実施例3のプライマー組成物において、ポリエチレンワックス(ハイワックス200P:三井化学(株)社製)を更に加えて表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例3と同様にして、実施例17のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0087】
<実施例18>
実施例4の組成物において、ポリプロピレンワックス(ハイワックスNP055:三井化学(株)社製)を更に加えて表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例4と同様にして、実施例18のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0088】
<実施例19>
実施例5の組成物において、助樹脂として、Tgが50℃のケトン樹脂(TEGO VariPlus AP:Evonik Industries社製)を更に加えて表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例5と同様にして、実施例19のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0089】
<実施例20>
実施例6の組成物において、助樹脂として、Tgが90℃のケトン樹脂(TEGO VariPlus SK:Evonik Industries社製)を更に加えて表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例6と同様にして、実施例20のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0090】
<実施例21>
実施例7の組成物において、助樹脂として、Tgが85℃のアクリル樹脂(DEGALAN LP 67/11、溶剤系アクリル樹脂(固形分100%):Evonik Industries社製)を更に加えて表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例7と同様にして、実施例21のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0091】
<実施例22>
実施例8の組成物において、助樹脂として、Tgが76℃の塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂(ソルバインAL:日信化学工業株式会社社製)を更に加えて表2に記載の配合比率で混合した以外は実施例8と同様にして、実施例22のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0092】
<実施例23>
実施例9の組成物において、助樹脂として、Tgが68℃の塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂(ソルバインC5R:日信化学工業株式会社社製)を更に加えて表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例9と同様にして、実施例23のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0093】
<実施例24>
実施例10の組成物において、助樹脂として、Tgが150℃の工業用工業用硝化綿L1/8(ニトロセルロース、固形分30%、JIS K−6703により溶液濃度25.0%における粘度1.6〜2.9%品:太平化学製品株式会社製)を更に加えて表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例10と同様にして、実施例24のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0094】
<実施例25>
実施例11の組成物において、助樹脂として、実施例1において作製したポリウレタン尿素樹脂溶液P(Tgが3℃、樹脂固形分約30%)を更に加えて表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例11と同様にして、実施例25のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0095】
<実施例26>
実施例12の組成物において、助樹脂として、Tgが50℃のケトン樹脂(TEGO VariPlus AP:Evonik Industries社製)を、ワックスとしてアマイドワックス(エチレンビスオレイン酸アマイド)を更に加えて表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例12と同様にして、実施例26のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0096】
<実施例27>
実施例1の組成物において、助樹脂として、Tgが68℃の塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂(ソルバインC5R:日信化学工業株式会社社製)を、ワックスとしてポリエチレンワックス(ハイワックス200P:三井化学(株)社製)を更に加えて表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、実施例27のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0097】
<実施例28>
実施例3の組成物において、助樹脂として、Tgが90℃のケトン樹脂(TEGO VariPlus SK:Evonik Industries社製)を、ワックスとしてフィッシャートロプシュワックス(SasolwaxH1)を更に加えて表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例3と同様にして、実施例28のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0098】
<実施例29>
実施例5の組成物において、助樹脂として、Tgが85℃のアクリル樹脂(DEGALAN LP 67/11:Evonik Industries社製)を、ワックスとしてポリプロピレンワックス(ハイワックスNP055:三井化学(株)社製)を更に加えて表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例5と同様にして、実施例29のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0099】
<実施例30>
実施例2の組成物において、助樹脂としてTgが68℃の塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂(ソルバインC5R:日信化学工業株式会社社製)を、ワックスとしてアマイドワックス(エチレンビスオレイン酸アマイド)を加え、更に溶剤としてメチルシクロヘキサンに変えてトルエンを使用して表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例2と同様にして、実施例30のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0100】
<実施例31>
実施例6の組成物において、助樹脂としてTgが50℃のケトン樹脂(TEGO VariPlus AP:Evonik Industries社製)を、ワックスとしてアポリエチレンワックス(ハイワックス200P:三井化学(株)社製)を加え、更に溶剤としてメチルシクロヘキサン及びn−プロピルアセテートに変えてトルエン及び酢酸エチルを使用して表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例6と同様にして、実施例31のプライマー組成物、印刷物及び積層体を作製した。
【0101】
<比較例1>
実施例1において、基材(OPPフィルム)に印刷インキ層を形成したOPPフィルム印刷物を得た後、プライマー層を設けずに印刷インキ層の上に直接押出し樹脂層を設けると同時に、該押出し樹脂層に無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、CPPフィルム)を貼り付けた以外は実施例1と同様にして、OPPフィルム/印刷インキ層/押出し樹脂層/CPPフィルムの比較例1の積層体を作製した。
【0102】
<比較例2>
実施例1において、プライマー組成物としてポリウレタン尿素樹脂溶液Pを用い、表3に記載の配合比率で混合した以外は実施例1と同様にして、比較例2の印刷物及び積層体を作製した。
【0103】
以上のように作製したプライマー組成物および積層体について、以下の評価を行った。
【0104】
[ラミネート適性]
実施例1〜31、比較例1〜2の積層体を15mm幅に切り出し、引っ張り速度300mm/分で90度の剥離試験を行った。
【0105】
(評価基準)
◎:ラミネート強度が1.5N/15mm以上である。
〇:ラミネート強度が1.5N/15mm未満〜1.0N/15mm以上である。
△:ラミネート強度が1.0N/15mm未満〜0.5N/15mm以上である。
×:ラミネート強度が0.5N/15mm未満である。
【0106】
[耐ブロッキング性]
実施例1〜31、比較例1〜2の積層体の製造方法において、押出樹脂層を設ける前のプライマー層を形成したOPPフィルム印刷物(OPPフィルム/印刷インキ層/プライマー層)を、プライマー層とOPPフィルムが接触するようにOPPフィルム印刷物を重ね合わせ、10kgf/cmの加重をかけ、40℃の環境下に12時間経時させ、取り出し後、非印刷面へのインキの転移の状態を目視評価した。なお、△以上は実用上問題無く使用可能である。
【0107】
(評価基準)
◎:剥離抵抗が無く、全くブロッキングが見られない。
〇:剥離抵抗はあるが、ブロッキングは見られない。
△:剥離抵抗があり、部分的に僅かにブロッキングが見られる。
×:剥離抵抗が強く、全面に渡ってブロッキングが見られる。
【0108】
[透明性・安定性]
実施例1〜31、比較例2の組成物を作成後の溶液の外観、透明性および、25℃、24時間後の溶液の外観、透明性を目視評価した。なお、△以上は実用上問題無く使用可能である。
◎:溶液は濁りが無く透明で、凝集物、分離は見られない。
〇:溶液は僅かに濁りがあるが、凝集物、分離は見られない。
△:溶液は濁りがあるが、凝集物、分離は見られない。
×:溶液は濁りがあり、凝集物もしくは分離が見られる。
結果を以下の表に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
表1〜4の結果より、本発明のプライマー層を設けることによって、ポリプロピレン押出し樹脂層との密着性が向上して、優れたラミネート適性が得られることがわかった。プライマー層を設けても、耐ブロッキング性はプライマー層が無い場合と同等程度の性能を保持している。
<実施例32>
実施例1において、押出し樹脂層に、直鎖状中密度ポリエチレン〔密度:0.930g/cm3、融点125℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)〕を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例32の印刷物及び積層体を作製した。
<実施例33〜57、比較例3>
実施例32と同様に、実施例2〜31及び比較例1において押出し樹脂層に直鎖状中密度ポリエチレンを用いた以外は実施例2〜31及び比較例1とそれぞれ同様にして、実施例33〜57及び比較例3の印刷物及び積層体を作製した。
【0114】
以上のように作製した積層体について、上記の評価を行った。
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
表5〜7の結果より、本発明のプライマー層を設けることによって、ポリエチレン押出し樹脂層との密着性が向上して、優れたラミネート適性が得られることがわかった。比較例1〜3の結果より、プライマー層を設けない場合には、押出し樹脂層にポリプロピレンよりもポリエチレンを用いる方がラミネート適性が優れていることがわかる。しかしながら、本発明のプライマー層を用いた場合には、押出し樹脂層にポリプロピレンを用いた場合に、より優れたラミネート適性の効果が得られることがわかった。
【0119】
<実施例58>
実施例15の積層体において、印刷インキ層のインキを以下の「ウレタン・ポリビニルブチラール系」の印刷インキに代えた以外は実施例15と同様にして、実施例58の印刷物及び積層体を作製した。
【0120】
(ウレタン・ポリビニルブチラール系インキの調整)
ポリウレタン樹脂溶液Pを30部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製 エスレックBL−1)を5部、フタロシアニン系青色顔料10部(DIC(株)製FASTGEN Blue LA5380)、酢酸エチル30部、IPA25部の混合物をダイノーミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を使用して練肉し、ウレタン・ポリビニルブチラール系の青色印刷インキを作成した。得られた印刷インキの粘度を酢酸エチル/IPA=70/30でザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整した。
【0121】
<実施例59>
実施例16の積層体において、印刷インキ層のインキを「ウレタン・ポリビニルブチラール系」の印刷インキに代えた以外は実施例16と同様にして、実施例59の印刷物及び積層体を作製した。
【0122】
<実施例60>
実施例17の積層体において、印刷インキ層のインキを以下の「塩酢ビ系」の印刷インキに代えた以外は実施例17と同様にして、実施例60の印刷物及び積層体を作製した。
(塩酢ビ系インキの調整)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂溶液Kを60部、フタロシアニン系青色顔料10部(DIC(株)製FASTGEN Blue LA5380)、酢酸エチル30部の混合物をダイノーミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を使用して練肉し、塩酢ビ系の青色印刷インキを作成した。得られた印刷インキの粘度を酢酸エチルでザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整した。
【0123】
<実施例61>
実施例18の積層体において、印刷インキ層のインキを「塩酢ビ系」の印刷インキに代えた以外は実施例18と同様にして、実施例61の印刷物及び積層体を作製した。
【0124】
<実施例62>
実施例19の積層体において、印刷インキ層のインキを「ウレタン・ポリビニルブチラール系」の印刷インキに代えた以外は実施例19と同様にして、実施例62の印刷物及び積層体を作製した。
【0125】
<実施例63>
実施例20の積層体において、印刷インキ層のインキを「ウレタン・ポリビニルブチラール系」の印刷インキに代えた以外は実施例20と同様にして、実施例63の印刷物及び積層体を作製した。
【0126】
<実施例64>
実施例21の積層体において、印刷インキ層のインキを「塩酢ビ系」の印刷インキに代えた以外は実施例21と同様にして、実施例64の印刷物及び積層体を作製した。
【0127】
<実施例65>
実施例22の積層体において、印刷インキ層のインキを「塩酢ビ系」の印刷インキに代えた以外は実施例22と同様にして、実施例65の印刷物及び積層体を作製した。
【0128】
<実施例66>
実施例23の積層体において、印刷インキ層のインキを「ウレタン・ポリビニルブチラール系」の印刷インキに代えた以外は実施例23と同様にして、実施例66の印刷物及び積層体を作製した。
【0129】
<実施例67>
実施例24の積層体において、印刷インキ層のインキを「ウレタン・ポリビニルブチラール系」の印刷インキに代えた以外は実施例24と同様にして、実施例67の印刷物及び積層体を作製した。
【0130】
<実施例68>
実施例25の積層体において、印刷インキ層のインキを「塩酢ビ系」の印刷インキに代えた以外は実施例25と同様にして、実施例68の印刷物及び積層体を作製した。
【0131】
<実施例69>
実施例26の積層体において、印刷インキ層のインキを「塩酢ビ系」の印刷インキに代えた以外は実施例26と同様にして、実施例69の印刷物及び積層体を作製した。
【0132】
<実施例70>
実施例27の積層体において、印刷インキ層のインキを「ウレタン・ポリビニルブチラール系」の印刷インキに代えた以外は実施例27と同様にして、実施例70の印刷物及び積層体を作製した。
【0133】
<実施例71>
実施例28の積層体において、印刷インキ層のインキを「ウレタン・ポリビニルブチラール系」の印刷インキに代えた以外は実施例28と同様にして、実施例71の印刷物及び積層体を作製した。
【0134】
<実施例72>
実施例29の積層体において、印刷インキ層のインキを「塩酢ビ系」の印刷インキに代えた以外は実施例29と同様にして、実施例72の印刷物及び積層体を作製した。
【0135】
以上のように作製した積層体について、上記のラミネート適性と耐ブロッキング性の評価を行った。
【0136】
【表8】
【0137】
【表9】
【0138】
実施例58〜72の結果より、印刷インキ層のインキの種類を問わず優れたラミネート適性が得られることが分かった。
【0139】
実施例58〜72の結果より、印刷インキ層のインキの種類を問わず優れたラミネート適性が得られることが分かった。
【0140】
<実施例73>
実施例15のプライマー組成物において、ブロッキング防止剤(C)としてシリカ(富士シリシア株式会社製、サイリシア(登録商標)430)を用いて表10に記載の配合比率で混合した以外は実施例15と同様にして、実施例73の印刷物及び積層体を作製した。
【0141】
<実施例74>
実施例29のプライマー組成物において、助樹脂としてTgが90℃のケトン樹脂(TEGO VariPlus SK:Evonik Industries社製)を用い、ブロッキング防止剤(C)としてシリカ(富士シリシア株式会社製、サイリシア(登録商標)430)を用いて表10に記載の配合比率で混合した以外は実施例29と同様にして、実施例74の印刷物及び積層体を作製した。
【0142】
<実施例75>
実施例42において、ブロッキング防止剤(C)としてシリカ(富士シリシア株式会社製、サイリシア(登録商標)430)を用いて表10に記載の配合比率で混合した以外は実施例46と同様にして、実施例75の印刷物及び積層体を作製した。
【0143】
<実施例76>
実施例55において、ブロッキング防止剤(C)としてシリカ(富士シリシア株式会社製、サイリシア(登録商標)430)を用いて表10に記載の配合比率で混合した以外は実施例60と同様にして、実施例76の印刷物及び積層体を作製した。
【0144】
<実施例77>
実施例72において、助樹脂としてTgが68℃の塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂(ソルバインC5R:日信化学工業株式会社社製)を用い、ブロッキング防止剤(C)としてシリカ(富士シリシア株式会社製、サイリシア(登録商標)430)を用いて表10に記載の配合比率で混合した以外は実施例72と同様にして、実施例77の印刷物及び積層体を作製した。
【0145】
【表10】
【0146】
実施例73〜77の結果より、ブロッキング防止剤(C)の種類を問わず優れたラミネート適性が得られることが分かった。
【要約】
本発明は、スチレン系重合体ブロック(a)と、ブタジエン系重合体ブロック、イソプレン系重合体ブロックまたはこれらの水素添加物ブロックの少なくともいずれか一つ(b)からなるブロック共重合体(A)を含有するプライマー組成物であり、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の質量比(a)/(b)が5/95〜70/30であるプライマー組成物である。本発明により、押出しラミネーションの積層体の密着性、ラミネート強度を向上させることができ、特に、汎用のインキを使用した印刷層を有する場合にも、ポリプロピレン押出し樹脂層が剥離することなく、高い密着性、ラミネード強度を実現できる。