【文献】
三牧 敏太郎,油井管の曲げ圧潰強度のFEM解析と計算式,日本機械学会論文集(A編),1996年01月,62巻593号論文No.95-0049,pp.212-218
【文献】
OKATSU Mitsuhiro,Development of a High-Deformability Linepipe with Resistance to Strain-aged Hardening by HOP(R) (Hea, JFE TECHNICAL REPORT,2008年10月,No. 12,pp.8-14
【文献】
津留 英司 Eiji Tsuru,創形創質工学 Processing for Quality Products,Current Advances in Materials and Processes,Vol.18,社団法人日本鉄鋼協会 内仲 康夫,2005年,pp.356-359
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみを含む過去の鋼管製造特性を入力データとし、この入力データに対する過去の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測する鋼管圧潰強度予測モデルを生成することを特徴とする鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法。
前記機械学習の手法はニューラルネットワークであり、前記鋼管圧潰強度予測モデルは、ニューラルネットワークにより構築された予測モデルであることを特徴とする請求項1に記載の鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法。
請求項1又は2に記載の鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法により生成された鋼管圧潰強度予測モデルに、予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみを含む鋼管製造特性を入力して鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測することを特徴とする鋼管の圧潰強度予測方法。
請求項3に記載された鋼管の圧潰強度予測方法により予測された塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度が、要求される目標の塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に漸近するように、鋼管製造特性に含まれる鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみのうちの少なくとも一つを逐次変更し、鋼管製造特性を決定することを特徴とする鋼管の製造特性決定方法。
鋼管を成形し、成形された鋼管に塗装して塗装鋼管を形成する塗装鋼管形成工程と、請求項3に記載の鋼管の圧潰強度予測方法により、前記塗装鋼管形成工程で形成された塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測する圧潰強度予測工程と、該圧潰強度予測工程により予測された塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を前記塗装鋼管形成工程で形成された塗装鋼管に紐付ける性能予測値付与工程とを備えることを特徴とする鋼管の製造方法。
請求項4に記載の鋼管の製造特性決定方法により決定された鋼管製造特性に基づいて塗装鋼管の製造条件を決定し、その決定された塗装鋼管の製造条件で塗装鋼管を製造することを特徴とする鋼管の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0016】
図1には、本発明の一実施形態に係る鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法、鋼管の圧潰強度予測方法、及び鋼管の製造特性決定方法が適用される鋼管製造特性決定装置の概略構成の機能ブロック図が示されている。
図1に示す鋼管製造特性決定装置1は、鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の鋼管圧潰強度予測モデルの生成、生成された鋼管圧潰強度予測モデルを用いた鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測、予測された塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度が要求される目標の塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に漸近するような鋼管製造特性の決定を行う。
【0017】
図1に示す鋼管製造特性決定装置1は、演算装置2と、入力装置8と、記憶装置9と、出力装置10とを備えたコンピュータシステムである。演算装置2は、後述するが、RAM3、ROM4、及び演算処理部5を備え、これらRAM3、ROM4、及び演算処理部5と、入力装置8、記憶装置9、及び出力装置10とがバス11によって接続されている。演算装置2と、入力装置8、記憶装置9、及び出力装置10とは、この接続の態様に限らず、無線により接続されてもよく、あるいは有線と無線とを組み合わせた態様で接続されてもよい。
【0018】
入力装置8は、例えば、キーボード、ペンタブレット、タッチパッド、マウス等、本システムのオペレータによって種々の情報が入力される入力ポートとして機能する。入力装置8には、例えば、鋼管圧潰強度予測モデルの生成指令、鋼管製造特性の演算指令、外圧曲げ時の圧潰強度の予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性、目標の塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度、及び鋼管製造特性決定モード情報が入力される。
ここで、鋼管は、一般的に、板状の鋼板を円管形状に曲げ加工して成形し製造され、その後、表面に塗装され塗装鋼管を形成する。
【0019】
入力装置8に入力される鋼管製造特性のうちの鋼管成形後の鋼管形状は、鋼板を円管形状に成形した後の鋼管の形状を意味する。当該鋼管成形後の鋼管形状は、ここでは具体的には、鋼管の最大外径Dmax(mm)、鋼管の最小外径Dmin(mm)、鋼管の平均外径Dave(mm)、鋼管の平均管板厚t(mm)、及び鋼管の外径形状の真円度(Ovality)fO(%)である。鋼管成形後の鋼管形状は、実測されたものが入力装置8に入力される。この鋼管成形後の鋼管形状は、予測する塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に大きく影響を及ぼすため、入力するようにした。
なお、塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度とは、塗装鋼管が圧潰するときの負荷応力(MPa)を意味し、ここでいう「圧潰」とは、負荷応力が最大値を示しこれ以上に外圧に対し形状を保てなくなるまで変形した状態をいうものとする。
【0020】
また、鋼管成形後の鋼管強度特性は、鋼板を管形状に成形した後の鋼管の強度特性を意味する。当該鋼管成形後の鋼管強度特性は、ここでは具体的には、鋼管のヤング率E(GPa)、鋼管のポアソン比μ(−)、鋼管の引張強度YS(MPa)、鋼管の圧縮強度0.23%YS(0.23%歪に対応する応力)、及び鋼管の圧縮強度0.5%YS(0.5%歪に対応する応力)である。この鋼管成形後の鋼管強度特性は、予測する塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に大きく影響を及ぼすため、入力するようにした。鋼管成形後の鋼管強度特性は、鋼管成形前の鋼板の強度特性から有限要素解析によってシミュレーションして得られたものや、実測したものが入力される。
【0021】
また、鋼管成形時の造管ひずみは、鋼管成形時における引張ひずみ(%)あるいは圧縮ひずみ(%)である。この鋼管成形時の造管ひずみは、鋼管成形後の鋼管形状及び鋼管成形後の鋼管強度特性に大きく影響を大きく影響を及ぼし、その結果、予測する塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に大きく影響を及ぼすため、入力するようにした。鋼管成形時の造管ひずみは、鋼管成形前の鋼板の強度特性から有限要素解析によって成形シミュレーションして得られたものや実測したものが入力される。
また、塗装条件は、ここでは塗装時の最高温度(℃)及び保持時間(min)である。この塗装条件は、実測したものが入力される。
【0022】
成形した鋼管に塗装を施すのは、防食のためであり、特に海底パイプラインで使用する鋼管は耐食性を優れたものとするため、成形後に塗装を施すのが一般的である。この塗装における塗装条件(最高温度(℃)及び保持時間(min))は、鋼管成形後の鋼管強度特性に影響し、塗装鋼管の圧潰性能に直接影響するため、入力装置8に入力するようにした。塗装のコーティング加熱の影響により、鋼管の材質が変化(転位の堆積・回復・ひずみ時効など)することで、鋼管成形後の鋼管の圧潰強度(塗装前の圧潰性能)からその圧潰強度が増加又は低下する。
また、敷設時の曲げひずみは、塗装鋼管を例えば海底に塗装鋼管を敷設した際の引張ひずみ(%)あるいは圧縮ひずみ(%)である。圧潰の発生は、海底パイプラインの敷設時に内圧がかかっていない状況下で敷設による曲げひずみが重畳した場合が最も危険である。
【0023】
また、記憶装置9は、例えば、ハードディスクドライブ、半導体ドライブ、光学ドライブ等で構成され、本システムにおいて必要な情報(後述する鋼管圧潰強度予測モデル生成部6及び鋼管製造特性演算部7による機能の実現に必要な情報)を記憶する装置である。鋼管圧潰強度予測モデル生成部6による機能の実現に必要な情報としては、鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる過去の鋼管製造特性を入力データとし、この入力データに対する過去の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の圧潰強度を出力データとした複数の学習用データが挙げられる。
【0024】
また、鋼管製造特性演算部7による機能の実現に必要な情報としては、鋼管圧潰強度予測モデル生成部6によって生成された鋼管圧潰強度予測モデルが挙げられる。また、当該機能の実現に必要な情報としては、鋼管圧潰強度予測モデルに入力される入力装置8に入力された加圧曲げ時の圧潰強度の予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性、目標の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度が挙げられる。また、当該機能の実現に必要な情報として、鋼管製造特性決定モード情報(最適な鋼管製造特性を決定するモードか否かの情報)も挙げられる。
【0025】
また、出力装置10は、演算装置2からの出力データ、例えば、圧潰強度予測部72で予測された鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(予測値)の情報や鋼管製造特性決定部73で決定された鋼管製造特性の情報を出力する出力ポートとして機能する。出力装置10は、例えば、液晶ディスプレイや有機ディスプレイ等の任意のディスプレイを備えることで、出力データに基づく画面を表示可能である。
【0026】
次に、演算装置2は、
図1に示すように、RAM3と、ROM4と、演算処理部5とを備えている。ROM4は、鋼管圧潰強度予測モデル生成プログラム41と、鋼管製造特性演算プログラム42とを記憶している。演算処理部5は、演算処理機能を有し、RAM3及びROM4とバス11により接続されている。また、RAM3、ROM4、及び演算処理部5は、バス11を介して入力装置8、記憶装置9、及び出力装置10に接続されている。
演算処理部5は、機能ブロックとして、鋼管圧潰強度予測モデル生成部6と、鋼管製造特性演算部7とを備えている。
【0027】
演算処理部5の鋼管圧潰強度予測モデル生成部6は、記憶装置9に記憶された、鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる過去の鋼管製造特性を入力データとし、この入力データに対する過去の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、鋼管圧潰強度予測モデルを生成する。機械学習の手法は、ここではニューラルネットワークであり、鋼管圧潰強度予測モデルは、ニューラルネットワークにより構築された予測モデルである。
【0028】
ここで、鋼管圧潰強度予測モデル生成部6は、機能ブロックとして、学習用データ取得部61と、前処理部62と、モデル生成部63と、結果保存部64とを備えている。そして、鋼管圧潰強度予測モデル生成部6は、入力装置8に鋼管圧潰強度予測モデルの生成指令が入力され、鋼管圧潰強度予測モデルの生成指令を受けた際に、ROM4に記憶されている鋼管圧潰強度予測モデル生成プログラム41を実行し、学習用データ取得部61、前処理部62、モデル生成部63、及び結果保存部64の各機能を実行する。鋼管圧潰強度予測モデル生成部6が各機能を実行する度に、鋼管圧潰強度予測モデルは更新される。
【0029】
鋼管圧潰強度予測モデル生成部6による学習用データ取得部61、前処理部62、モデル生成部63、及び結果保存部64の各機能の実行処理が本発明の一実施形態に係る鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法に対応する。この鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法は、鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件及び敷設時の曲げひずみを含む過去の鋼管製造特性を入力データとし、この入力データに対する過去の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を予測する鋼管圧潰強度予測モデルを生成する。
【0030】
ここで、学習用データ取得部61は、記憶装置9に記憶された、鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる過去の鋼管製造特性を入力データとし、この入力データに対する過去の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の圧潰強度を出力データとした複数の学習用データを取得する処理を行う。各学習用データは、入力データと出力データの組からなる。
【0031】
また、前処理部62は、学習用データ取得部61が取得した複数の学習用データを、鋼管圧潰強度予測モデル生成用に加工する。具体的には、前処理部62は、学習用データを構成する鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる過去の鋼管製造特性の実績情報と、過去の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度の実績情報とを、ニューラルネットワークモデルに読み込ませるために、0〜1の間で標準化(正規化)を行う。
【0032】
また、モデル生成部63は、前処理部62で前処理した複数の学習用データを機械学習させて、鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる過去の鋼管製造特性を入力データとして含み、過去の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を出力データとする鋼管圧潰強度予測モデルを生成する処理を行う。本実施形態では、機械学習の手法としてここではニューラルネットワークを採用するため、鋼管圧潰強度予測モデルとしてニューラルネットワークモデルを生成する。すなわち、モデル生成部63は、鋼管圧潰強度予測モデル生成用に加工された学習用データにおける入力実績データ(鋼管製造特性の過去の実績データ)と出力実績データ(鋼管成形後の塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度の過去の実績データ)とを結び付ける鋼管圧潰強度予測モデルとしてのニューラルネットワークモデルを作成する。ニューラルネットワークモデルは、例えば、関数式で表現される。
【0033】
具体的には、モデル生成部63は、ニューラルネットワークモデルに用いられるハイパーパラメータの設定を行うと共に、それらハイパーパラメータを用いたニューラルネットワークモデルによる学習を行う。ハイパーパラメータとして通常、隠れ層の数、各々の隠れ層におけるニューロン数、各々の隠れ層におけるドロップアウト率、各々の隠れ層における活性化関数が設定されるが、これに限定されない。
【0034】
図2には、本発明の一実施形態に係る鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法で生成されるニューラルネットワークモデルである鋼管圧潰強度予測モデルの処理フローが示されている。
ニューラルネットワークモデルである鋼管圧潰強度予測モデルは、入力側から順に入力層101、中間層102、及び出力層103を含んでいる。
モデル生成部63が、ハイパーパラメータを用いたニューラルネットワークモデルによる学習を行うに際し、入力層101には、前処理部62で加工された学習用データを構成する鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる過去の鋼管製造特性の実績情報、即ち、0〜1の間で標準化された過去の鋼管製造特性の実績情報が格納される。
【0035】
中間層102は、複数の隠れ層で構成され、各々の隠れ層には複数のニューロンが配置されている。
出力層103は、中間層102により伝達されたニューロンの情報が結合され、最終的な鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度として出力される。この出力した結果と、読み込まれた過去の塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度の実績とに基づき、ニューラルネットワークモデル内の重み係数が徐々に最適化されることで学習が行われる。
結果保存部64は、学習用データ、ニューラルネットワークモデルのパラメータ(重み係数)、及び学習用データに対するニューラルネットワークモデルの出力結果を、記憶装置9に記憶させる。
【0036】
演算処理部5の鋼管製造特性演算部7は、鋼管圧潰強度予測モデル生成部6で生成された鋼管圧潰強度予測モデルに、予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみを含む鋼管製造特性を入力して鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測する処理を行う。そして、鋼管製造特性演算部7は、鋼管製造特性決定モード情報が鋼管製造特性決定モードであるときに、予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度が、要求される目標の塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度に漸近するように、鋼管製造特性をなす鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみのうちの少なくとも一つを逐次変更し、鋼管製造特性を決定する処理を行う。
【0037】
この処理を行うため、鋼管製造特性演算部7は、
図1に示すように、機能ブロックとして、情報読取部71、圧潰強度予測部72、鋼管製造特性決定部73、及び結果出力部74を備えている。
情報読取部71は、鋼管圧潰強度予測モデル生成部6によって生成された鋼管圧潰強度予測モデル、鋼管圧潰強度予測モデルに入力される圧潰強度の予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性の情報、目標の塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度の情報、及び鋼管製造特性決定モード情報を読み込む処理を行う。
【0038】
また、圧潰強度予測部72は、情報読取部71で読み込んだ圧潰強度の予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性を、情報読取部71で読み込んだ鋼管圧潰強度予測モデルに入力して、鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を予測する処理を行う。
【0039】
また、鋼管製造特性決定部73及び圧潰強度予測部72は、情報読取部71で読み込んだ鋼管製造特性決定モード情報が鋼管製造特性決定モードであるときに、予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度が、要求される目標の塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度に漸近するように、鋼管製造特性をなす鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみのうちの少なくとも一つを逐次変更して鋼管製造特性を決定し、結果出力部74に決定された鋼管製造特性の情報を出力する処理を行う。また、鋼管製造特性決定部73は、情報読取部71で読み込んだ鋼管製造特性決定モード情報が鋼管製造特性決定モードでないときに、圧潰強度予測部72で予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度の情報(予測値)を結果出力部74に出力する処理を行う。
また、結果出力部74は、決定された鋼管製造特性の情報あるいは予測された塗装鋼管の圧潰強度の情報(予測値)を出力装置10に出力する処理を行うとともに、これらの情報を記憶装置9に記憶させる処理を行う。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に適用される鋼管製造特性決定装置1における演算処理部5の鋼管製造特性演算部7の処理の流れを
図3を参照して説明する。
鋼管製造特性演算部7は、入力装置8に鋼管製造特性の演算指令が入力され、鋼管製造特性の演算指令を受けると、ROM4に記憶されている鋼管製造特性演算プログラム42を実行し、情報読取部71、圧潰強度予測部72、鋼管製造特性決定部73、及び結果出力部74の各機能を実行する。
【0041】
先ず、鋼管製造特性演算部7の情報読取部71は、ステップS1において、記憶装置9に記憶されている、鋼管圧潰強度予測モデル生成部6によって生成された鋼管圧潰強度予測モデルを読み込む。
次いで、情報読取部71は、ステップS2において、図示しない上位計算機から入力され、記憶装置9に記憶されている、要求される目標の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度の情報を読み込む。
次いで、情報読取部71は、ステップS3において、オペレータによって入力装置8に入力され、記憶装置9に記憶されている鋼管圧潰強度予測モデルに入力される予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性の情報を読み込む。
【0042】
次いで、情報読取部71は、ステップS4において、オペレータによって入力装置8に入力され、記憶装置9に記憶されている鋼管製造特性決定モード情報(鋼管製造特性を決定するモードか否かの情報)を読み込む。
その後、圧潰強度予測部72は、ステップS5において、ステップS1で読み込まれた鋼管圧潰強度予測モデルに、ステップS3で読み込まれた予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性を入力して、塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を予測する。
【0043】
このステップS1〜ステップS5は、本発明の一実施形態に係る、鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法により生成された鋼管圧潰強度予測モデルに、予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性を入力して塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を予測する鋼管の圧潰強度予測方法に対応する。
続いて、鋼管製造特性決定部73は、ステップS6において、ステップS4で読み込んだ鋼管製造特性決定モード情報(鋼管製造特性を決定するモードか否かの情報)が鋼管製造特性決定モード(鋼管製造特性を決定するモード)か否かを判定する。
【0044】
そして、ステップS6における判定結果がYESのとき(鋼管製造特性決定モードのとき)は、ステップS7に移行し、ステップS6における判定結果がNOのとき(鋼管製造特性決定モードでないとき)は、ステップS9に移行する。
ステップS7では、鋼管製造特性決定部73は、ステップS5で予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(予測値)と、ステップS2で読み込まれた、要求される目標の塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(目標値)との差異が所定の閾値以内か否かを判定する。
ここで、この所定の閾値は、おおむね0.5%〜1%に設定される。
【0045】
そして、ステップS7における判定結果がYESのとき(予測値と目標値との差異が所定の閾値以内と判定した場合)は、ステップS8に移行し、ステップS7における判定結果がNOのとき(予測値と目標値との差異が所定の閾値より大きいと判定した場合)は、ステップS10に移行する。
ステップS10では、鋼管製造特性決定部73は、ステップS3で読み込まれた圧潰強度の予測対象となる塗装鋼管の鋼管製造特性における鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみのうちの少なくとも1つを変更し、ステップS5に戻す。
【0046】
ステップS5に戻ってくると、圧潰強度予測部72は、ステップS10で鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみのうちの少なくとも1つが変更された鋼管製造特性を、ステップS1で読み込まれた鋼管圧潰強度予測モデルに入力して、塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を再度予測する。そして、鋼管製造特性決定部73は、ステップS6を経た後、ステップS7において、ステップS5で再度予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(予測値)と、ステップS2で読み込まれた、要求される目標の塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(目標値)との差異が所定の閾値以内か否かを判定する。そして、その判定結果がYESになるまでステップS10、ステップS5、ステップS6、及びステップS7の一連のステップを繰り返し実行する。
【0047】
一方、ステップS7における判定結果がYESのとき(予測値と目標値との差異が所定の閾値以内と判定した場合)は、ステップS8に移行する。ステップS8では、鋼管製造特性決定部73は、予測値と目標値との差異が所定の閾値以内と判定したときの鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性を鋼管製造特性として決定する。
【0048】
このステップS6、ステップS7、ステップS10、ステップS5、ステップS6、ステップS7及びステップS8は、本発明の一実施形態に係る鋼管の製造特性決定方法に対応する。この鋼管の製造特性決定方法は、予測された鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度が、要求される目標の塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度に漸近するように、鋼管製造特性に含まれる鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみのうちの少なくとも一つを逐次変更し、鋼管製造特性を決定する。
【0049】
そして、ステップS9において、鋼管製造特性演算部7の結果出力部74は、ステップS6における判定結果がYESのとき(鋼管製造特性決定モードのとき)は、ステップS8で決定された鋼管製造特性の情報を出力装置10に出力する。一方、結果出力部74は、ステップS6における判定結果がNOのとき(鋼管製造特性決定モードでないとき)は、ステップS5で予測された鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度の情報(予測値)を出力装置10に出力する。
これにより、鋼管製造特性演算部7の処理が終了する。
【0050】
このように、本発明の一実施形態に係る鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法は、鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみを含む過去の鋼管製造特性を入力データとし、この入力データに対する過去の鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を出力データとした複数の学習用データを機械学習させて、鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測する(鋼管圧潰強度予測モデル生成部6)。
これにより、敷設時の曲げひずみに加えて、鋼管成形時の造管ひずみ、及び塗装条件を考慮して鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を精度高く予測するに際しての、鋼管圧潰強度予測モデルを適切に生成することができる。
【0051】
また、塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測する鋼管圧潰強度予測モデルの生成に際し、塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に大きな影響を与える塗装条件も考慮しているから、鋼管圧潰強度予測モデルの精度もより高くすることができる。
また、塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測する鋼管圧潰強度予測モデルの生成に際し、塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に大きな影響を与える敷設時の曲げひずみを考慮しているから、鋼管圧潰強度予測モデルの精度もより高くすることができる。
【0052】
また、本発明の一実施形態に係る鋼管の圧潰強度予測方法は、鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法により生成された鋼管圧潰強度予測モデルに、予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみを含む鋼管製造特性を入力して鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を予測する(ステップS1〜ステップS5)。
これにより、敷設時の曲げひずみに加えて、鋼管成形時の造管ひずみ、及び塗装条件を考慮して鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を精度高く予測する。
【0053】
また、本発明の一実施形態に係る鋼管の製造特性決定方法は、予測された塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度が、要求される目標の塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に漸近するように、鋼管製造特性に含まれる鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみのうちの少なくとも一つを逐次変更し、鋼管製造特性を決定する(ステップS6、ステップS7、ステップS10、ステップS5、ステップS6、ステップS7及びステップS8)。
これにより、予測された塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度が、要求される目標の塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度に漸近するときの、鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみからなる鋼管製造特性を決定することができる。
【0054】
また、塗装鋼管を製造するに際して、出力装置10で出力されたステップS5で予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度の情報(予測値)を成形工程で成形された塗装鋼管に紐付けることができる。
つまり、本発明の一実施形態に係る鋼管の製造方法は、鋼管を成形し、成形された鋼管に塗装して塗装鋼管を形成する塗装鋼管形成工程と、鋼管の圧潰強度予測方法(ステップS1〜ステップS5)により、塗装鋼管形成工程で形成された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を予測する圧潰強度予測工程と、圧潰強度予測工程により予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を塗装鋼管形成工程で形成された塗装鋼管に紐付ける性能予測値付与工程とを備えていてもよい。
【0055】
ここで、性能予測値付与工程における予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度の塗装鋼管への紐付けは、例えば、塗装鋼管に予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(予測値)をマーキングによって付与したり、塗装鋼管に予測された塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(予測値)を記載した札を貼り付けることなどによって達成される。
これにより、塗装鋼管を取り扱う者は、当該塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(予測値)を把握することができる。
【0056】
また、塗装鋼管を製造するに際して、出力装置10で出力されたステップS8で決定された最適な鋼管製造特性の情報に基づいて塗装鋼管の製造条件(造管方法の選択、造管時の曲げ率、造管時のひずみ量、塗装時の昇温速度、塗装時の最高到達温度、塗装時の最高到達温度保持時間、塗装時の最高到達温度保持時間経過後の冷却速度など)を決定し、その決定された塗装鋼管の製造条件で塗装鋼管を製造するようにしてもよい。
つまり、本発明の一実施形態に係る鋼管の製造方法は、塗装鋼管の製造特性決定方法(ステップS6、ステップS7、ステップS10、ステップS5、ステップS6、ステップS7及びステップS8)により決定された最適な鋼管製造特性に基づいて塗装鋼管の製造条件を決定し、その決定された塗装鋼管の製造条件で塗装鋼管を製造するようにしてもよい。
【0057】
これにより、製造された塗装鋼管が、決定された最適な鋼管製造特性を満足し、その結果、予測される塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度(予測値)が要求される目標の塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度に漸近したものとなり、耐圧潰性能に優れた塗装鋼管となり、構造物の損傷や損壊事故を回避することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法おいて、鋼管圧潰強度予測モデルを生成する際に、入力データとなる過去の鋼管製造特性は、過去の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみを含めばよく、それら以外の過去の鋼管製造特性、例えば、過去の鋼管成形前の鋼板の強度特性を含んでいても良い。
【0059】
また、鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法において、鋼管圧潰強度予測モデルを生成する際に、入力データとなる過去の鋼管成形後の鋼管形状は、鋼管の最大外径Dmax(mm)、鋼管の最小外径Dmin(mm)、鋼管の平均外径Dave(mm)、鋼管の平均管板厚t(mm)、及び鋼管の外径形状の真円度(Ovality)fO(%)に限られない。
また、鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法おいて、鋼管圧潰強度予測モデルを生成する際に、入力データとなる鋼管成形後の鋼管強度特性は、鋼管のヤング率E(GPa)、鋼管のポアソン比μ(−)、鋼管の引張強度YS(MPa)、鋼管の圧縮強度0.23%YS(0.23%歪に対応する応力)、及び鋼管の圧縮強度0.5%YS(0.5%歪に対応する応力)に限られない。
【0060】
また、鋼管の圧潰強度予測方法において、鋼管圧潰強度予測モデルに、予測対象の塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみを入力するようにしてある。しかし、鋼管製造特性は、鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件、及び敷設時の曲げひずみを含めばよく、それら以外の鋼管製造特性、例えば、鋼管成形前の鋼板の強度特性を入力するようにしてもよい。
また、鋼管の圧潰強度予測方法において、鋼管圧潰強度予測モデルに入力される鋼管成形後の鋼管形状は、鋼管の最大外径Dmax(mm)、鋼管の最小外径Dmin(mm)、鋼管の平均外径Dave(mm)、鋼管の平均管板厚t(mm)、及び鋼管の外径形状の真円度(Ovality)fO(%)に限られない。
【0061】
また、鋼管の圧潰強度予測方法において、鋼管圧潰強度予測モデルに入力される鋼管成形後の鋼管強度特性は、鋼管のヤング率E(GPa)、鋼管のポアソン比μ(−)、鋼管の引張強度YS(MPa)、鋼管の圧縮強度0.23%YS(0.23%歪に対応する応力)、及び鋼管の圧縮強度0.5%YS(0.5%歪に対応する応力)に限られない。
また、機械学習の手法はニューラルネットワークとしてあるが、ニューラルネットワークによる学習に限らず、決定木学習、ロジスティック回帰、K近似法、サポートベクターマシン回帰、Q学習、SARSA法など各種教師有り学習、教師無し学習、強化学習など適用可能である。
【実施例】
【0062】
本発明の効果を検証すべく、表2に示す条件で塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を予測した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
実施例1〜2では、次の複数の学習用データを機械学習させて鋼管圧潰強度予測モデルを生成した。各学習用データは、過去の鋼管成形後の鋼管形状(鋼管の最大外径Dmax(mm)、鋼管の最小外径Dmin(mm)、鋼管の平均外径Dave(mm)、鋼管の平均管板厚t(mm)、及び鋼管の外径形状の真円度(Ovality)fO(%))、過去の鋼管成形後の鋼管強度特性(鋼管のヤング率E(GPa)、鋼管のポアソン比μ(−)、鋼管の引張強度YS(MPa)、鋼管の圧縮強度0.23%YS(0.23%歪に対応する応力)、及び鋼管の圧縮強度0.5%YS(0.5%歪に対応する応力))、鋼管成形時の造管ひずみ(鋼管成形時における引張ひずみ(%))、塗装条件(最高温度(℃)及び保持時間(min))及び敷設時の曲げひずみ(%)を入力データとし、この入力データに対する過去の鋼管成形後に塗装して成る塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度(MPa)を出力データとしたものである。
【0066】
そして、実施例1では、生成された鋼管圧潰強度予測モデルに、表1に示す供試材1の鋼管成形後の鋼管形状(鋼管の最大外径Dmax(mm)、鋼管の最小外径Dmin(mm)、鋼管の平均外径Dave(mm)、鋼管の平均管板厚t(mm)、及び鋼管の外径形状の真円度(Ovality)fO(%))、鋼管成形後の鋼管強度特性(鋼管のヤング率E(GPa)、鋼管のポアソン比μ(−)、鋼管の引張強度YS(MPa)、鋼管の圧縮強度0.23%YS(0.23%歪に対応する応力)、及び鋼管の圧縮強度0.5%YS(0.5%歪に対応する応力))、鋼管成形時の造管ひずみ(鋼管成形時における引張ひずみ(%))、塗装条件(最高温度(℃)及び保持時間(min))、及び敷設時の曲げひずみ(%)を入力して、鋼管成形後の外圧曲げ時の圧潰強度を予測した。
【0067】
また、実施例2では、生成された鋼管圧潰強度予測モデルに、表1に示す供試材2の鋼管成形後の鋼管形状(鋼管の最大外径Dmax(mm)、鋼管の最小外径Dmin(mm)、鋼管の平均外径Dave(mm)、鋼管の平均管板厚t(mm)、及び鋼管の外径形状の真円度(Ovality)fO(%))、鋼管成形後の鋼管強度特性(鋼管のヤング率E(GPa)、鋼管のポアソン比μ(−)、鋼管の引張強度YS(MPa)、鋼管の圧縮強度0.23%YS(0.23%歪に対応する応力)、及び鋼管の圧縮強度0.5%YS(0.5%歪に対応する応力))、鋼管成形時の造管ひずみ(鋼管成形時における引張ひずみ(%))、塗装条件(最高温度(℃)及び保持時間(min))、及び敷設時の曲げひずみ(%)を入力して、鋼管成形後の外圧曲げ時の圧潰強度を予測した。
また、実施例1では、表1に示す供試材1の実際の外圧曲げ時の圧潰強度を実測した(実管試験結果)。
また、実施例2では、表1に示す供試材2の実際の外圧曲げ時の圧潰強度を実測した(実管試験結果)。
【0068】
また、比較例1では、非特許文献1で示された予測式に、表1に示す供試材1の鋼管成形後の鋼管形状(鋼管の最大外径Dmax(mm)、鋼管の最小外径Dmin(mm)、鋼管の平均外径Dave(mm)、鋼管の平均管板厚t(mm)、及び鋼管の外径形状の真円度(Ovality)fO(%))、鋼管成形後の鋼管強度特性(鋼管のヤング率E(GPa)、鋼管のポアソン比μ(−)、及び鋼管の引張強度YS(MPa))、及び敷設時の曲げひずみ(%)を入力して、塗装鋼管の鋼管成形後の曲げ加工時における圧潰強度を予測した。
【0069】
また、比較例2では、非特許文献1で示された予測式に、表1に示す供試材2の鋼管成形後の鋼管形状(鋼管の最大外径Dmax(mm)、鋼管の最小外径Dmin(mm)、鋼管の平均外径Dave(mm)、鋼管の平均管板厚t(mm)、及び鋼管の外径形状の真円度(Ovality)fO(%))、及び鋼管成形後の鋼管強度特性(鋼管のヤング率E(GPa)、鋼管のポアソン比μ(−)、及び鋼管の引張強度YS(MPa))、及び敷設時の曲げひずみ(%)を入力して、塗装鋼管の鋼管成形後の曲げ加工時における圧潰強度を予測した。
また、比較例1では、表1に示す供試材1の実際の外圧曲げ時の圧潰強度を実測した(実管試験結果)。
また、比較例2では、表1に示す供試材2の実際の外圧曲げ時の圧潰強度を実測した(実管試験結果)。
【0070】
実施例1〜2及び比較例1〜2における実管試験結果の判定基準は同様であり、実験で得られた実際の圧潰強度と規格基準値との差異を評価し、実際の圧潰強度が規格基準値を下回ったものをNG、実際の圧潰強度が規格基準値よりも10%未満の範囲で上回ったものをC、実際の圧潰強度が規格基準値よりも10%以上かつ20%未満の範囲で上回ったものをB、実際の圧潰強度が規格基準値よりも20%以上上回ったものをAとした。
その結果、実施例1では、塗装鋼管の実際の外圧曲げ時の圧潰強度(実管試験結果)が規格基準値(所定規格値)を20%以上上回り判定結果はAであり、また、鋼管圧潰強度予測モデルを用いた塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度の予測値も規格基準値(所定規格値)を20%以上上回り判定結果はAで、実験評価と予測結果が一致した。
【0071】
また、実施例2では、塗装鋼管の実際の外圧曲げ時の圧潰強度(実管試験結果)が規格基準値(所定規格値)を10%以上かつ20%未満の範囲で上回り判定結果はBであり、鋼管圧潰強度予測モデルを用いた塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度の予測値も規格基準値(所定規格値)を10%以上かつ20%未満の範囲で上回判定結果はBで、実験評価と予測結果が一致した。
一方、比較例1では、塗装鋼管の実際の外圧曲げ時の圧潰強度(実管試験結果)が規格基準値(所定規格値)を20%以上上回り判定結果はAであったが、非特許文献1で示された予測式を用いた塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度の予測値は規格基準値(所定規格値)を10%未満の範囲で上回り判定結果はCで、実験評価と予測結果が不一致であった。
【0072】
また、比較例2では、塗装鋼管の実際の外圧曲げ時の圧潰強度(実管試験結果)が規格基準値(所定規格値)を10%以上かつ20%未満の範囲で上回り判定結果はBであったが、非特許文献1で示された予測式を用いた塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度の予測値は規格基準値(所定規格値)を10%未満の範囲で上回り判定結果はCで、実験評価と予測結果が不一致であった。
これにより、実施例1〜2で説明したように、本発明では、塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度の予測値とも実験結果と一致し、予測精度が高いことが確認された。
敷設時の曲げひずみに加えて、鋼管成形時の造管ひずみ、及び塗装条件を考慮して鋼管成形後に塗装してなる塗装鋼管の外圧曲げ時の圧潰強度を精度高く予測することができる、鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法、鋼管の圧潰強度予測方法、鋼管の製造特性決定方法、及び鋼管の製造方法を提供する。鋼管圧潰強度予測モデルの生成方法により生成された鋼管圧潰強度予測モデルに、予測対象となる塗装鋼管の鋼管成形後の鋼管形状、鋼管成形後の鋼管強度特性、鋼管成形時の造管ひずみ、塗装条件及び敷設時の曲げひずみを含む鋼管製造特性を入力して塗装鋼管の加圧曲げ時の圧潰強度を予測する(ステップS1〜ステップS5)。