特許第6969721号(P6969721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6969721変圧冷却回路中でのセンサ利用のためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969721
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】変圧冷却回路中でのセンサ利用のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/12 20060101AFI20211111BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20211111BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20211111BHJP
   H01F 27/40 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01F27/12 Z
   H01F27/02 150
   H05K7/20 M
   H01F27/40 120
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-536558(P2020-536558)
(86)(22)【出願日】2018年12月31日
(65)【公表番号】特表2021-508952(P2021-508952A)
(43)【公表日】2021年3月11日
(86)【国際出願番号】US2018068143
(87)【国際公開番号】WO2019133972
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2020年7月22日
(31)【優先権主張番号】62/612,377
(32)【優先日】2017年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイム,ルイズ
(72)【発明者】
【氏名】ロリン,ピエール
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−506863(JP,A)
【文献】 実開平03−069211(JP,U)
【文献】 特開平11−142079(JP,A)
【文献】 特開平03−101112(JP,A)
【文献】 特表2006−505760(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0168034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/12
H01F 27/02
H05K 7/20
H01F 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、少なくとも1つのコイル巻き線、および絶縁流体を収容するタンクと、
前記タンクから前記絶縁流体を受け取るためのラジエータとを備え、
前記ラジエータは、前記絶縁流体を冷却するためのフィンと、前記ラジエータから冷却された前記絶縁流体を受け取るための導管およびヘッダのうち少なくとも1つとを含み、
前記導管および前記ヘッダのうち前記少なくとも1つから出た前記絶縁流体を受け取るために垂直ヘッダが設けられ、前記垂直ヘッダは、前記垂直ヘッダの上流端および下流端のそれぞれに第1の弁および第2の弁を備え、
前記垂直ヘッダは、その中の前記絶縁流体への測定アクセスのためのポートを含み、
前記垂直ヘッダの少なくとも一部は、垂直に方向付けられて前記ラジエータから下方に向かって延在しており、前記ポートは、垂直に方向付けられた前記一部に位置づけられ、
さらに、
前記ポートを通じて前記絶縁流体の特性を測定するためのセンサを備える、変圧器。
【請求項2】
前記センサは、湿度センサ、溶解ガスセンサ、抵抗温度検知器、光音響センサ、圧力センサ、マルチガス検知センサ、油量センサ、および前述のセンサの何らかの組合せからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の変圧器。
【請求項3】
前記絶縁流体の測定された前記特性は、前記絶縁流体中の少なくとも1つの成分の存在、前記絶縁流体中の少なくとも1つの成分の成分濃度、前記絶縁流体の圧力、絶縁流体の温度、絶縁流体のレベル、界面張力、力率、誘電強度、含水率、酸化防止剤率、酸性度、色、および前述のものの何らかの組合せからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の変圧器。
【請求項4】
前記センサは、前記絶縁流体の少なくとも1つの測定値を通信するために動作可能である、請求項1に記載の変圧器。
【請求項5】
前記センサは、前記垂直ヘッダの前記ポートに実装されている、請求項に記載の変圧器。
【請求項6】
前記ヘッダと前記センサとの間に第3の弁をさらに備える、請求項に記載の変圧器。
【請求項7】
タンクを備え、前記タンクは、コア、少なくとも1つのコイル巻き線、および前記タンク内に配置された絶縁流体を収容し、
さらに、
前記タンクから前記絶縁流体を受け取るためのラジエータを備え、
前記ラジエータは、前記絶縁流体を冷却するためのフィンと、前記タンクから絶縁流体を受け取るための第1のヘッダと、冷却された絶縁流体を前記フィンから受け取るための第2のヘッダとを含み、
前記第2のヘッダから出た前記絶縁流体を受け取るために垂直ヘッダが設けられ、
前記垂直ヘッダは、その中の前記絶縁流体への測定アクセスのためのポートを含み、
前記垂直ヘッダの少なくとも一部は、垂直に方向付けられて前記ラジエータから下方に向かって延在しており、前記ポートは、垂直に方向付けられた前記一部に位置づけられ、
さらに、
前記ポートを通じて前記絶縁流体の特性を測定するためのセンサを備える、変圧器。
【請求項8】
センサハウジングは、前記センサによる測定のための絶縁流体を集めるための前記垂直ヘッダに取り付けられており、前記ポートは、前記センサハウジング上に設けられており、前記センサは、前記ポートに取り付けられている、請求項に記載の変圧器。
【請求項9】
前記垂直ヘッダは、前記ラジエータの底部の下に配置されている、請求項に記載の変圧器。
【請求項10】
第1の導管は、前記第1のヘッダを前記タンクに接続し、第2の導管は、前記第2のヘッダを前記タンクに接続する、請求項に記載の変圧器。
【請求項11】
第1の導管は、前記第1のヘッダを前記タンクに接続し、第2および第3の導管は、前記第2のヘッダを前記ラジエータの出口に接続する、請求項に記載の変圧器。
【請求項12】
前記垂直ヘッダは、センサとの接続のための複数のポートを含む、請求項に記載の変圧器。
【請求項13】
タンクを備え、前記タンクは、コア、少なくとも1つのコイル巻き線、および前記タンク内に配置された絶縁流体を収容し、
さらに、
前記タンクから前記絶縁流体を受け取るためのラジエータを備え、
前記ラジエータは、前記絶縁流体を冷却するためのフィンと、前記タンクから絶縁流体を受け取るための第1のヘッダと、冷却された絶縁流体を受け取るための第2のヘッダとを含み、
さらに、
前記絶縁流体が冷却される前に前記絶縁流体を受け取る第1の導管を以て前記ラジエータに接続された補助ラジエータを備え、
前記補助ラジエータは、前記絶縁流体を冷却するためのフィンと、前記補助ラジエータからの冷却された絶縁流体を受け取るための第2の導管とを含み
前記第2の導管から出た前記絶縁流体を受け取るために垂直ヘッダが設けられ、前記垂直ヘッダは、その中の前記絶縁流体への測定アクセスのための少なくとも1つのポートを含み、
前記垂直ヘッダの少なくとも一部は、垂直に方向付けられて前記補助ラジエータから下方に向かって延在しており、前記ポートは、垂直に方向付けられた前記一部に位置づけられ、
さらに、
前記ポートを通じて前記絶縁流体の特性を測定するためのセンサを備える、変圧器。
【請求項14】
前記第2の導管と前記センサとの間に弁を備える、請求項13に記載の変圧器。
【請求項15】
前記垂直ヘッダは、センサとの接続のための複数のポートを含む、請求項13に記載の変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、運転中の変圧冷却回路の絶縁流体のさまざまな特性のモニタリングを可能にするセンサに向けられている。
【背景技術】
【0002】
変圧ガスおよび湿度センサは、典型的には、(誘電性流体のような)絶縁流体を内部に流通させ、その流体を読取りのためのセンサに供給するポンプシステムを要求する。ポンプシステムは、新たな絶縁流体がセンサと接触するために連続的に循環することを確実にする。これらおよびその他の問題は、他の特徴の中でも、流体を流通させるポンプを要求すること無しに絶縁流体の特性を測定することができるシステムのための技術の必要性を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ある実施の形態では、変圧器は、コアと、少なくとも1つのコイル巻き線と、タンクの内部に配置された絶縁流体とを含む。冷却フィンを有するラジエータと、変圧タンクとラジエータとの間で絶縁流体を移動させるための第1の導管および第2の導管とが設けられる。第1および第2の導管の少なくとも1つは、その中の絶縁流体への測定アクセスのためのポートと、ポートを通る絶縁流体の特性の測定のためのセンサとを有する。
【0004】
もうひとつの実施の形態では、変圧器は、コアと、少なくとも1つのコイル巻き線と、タンクの内部に配置された絶縁流体とを含む。冷却フィンを有するラジエータと、タンクとラジエータとの間で絶縁流体を移動させるための第1のヘッダおよび第2のヘッダとが設けられる。第1および第2のヘッダの少なくとも1つは、その中の絶縁流体への測定アクセスのためのポートと、ポートを通る絶縁流体の特性の測定のためのセンサとを有する。
【0005】
本願の実施の形態は、変圧器絶縁流体の特性を測定するための方法、システム、および装置を含む。本願の実施の形態は、変圧器流体特性のセンシングのための方法、システム、および装置を含む。他の実施の形態は、変圧器流体センサのための、装置、システム、デバイス、ハードウェア、方法、および組合せを含む。本願のさらなる実施の形態、形式、特徴、局面、利益、および優位性は、ここにもたらされる記述と図面から明らかになるであろう。
【0006】
添付する図面において、構造的な実施の形態が図示されており、この実施の形態は、以下に提供される詳細な説明と共に、変圧器冷却システムと一体化されたセンサの典型的な実施の形態を説明する。当業者は、1つの構成要素が複数の構成要素として設計されてもよいこと、または、複数の構成要素が単一の構成要素として設計されてもよいことを、正しく理解するだろう。
【0007】
さらに、添付する図面および以下に続く記述において、類似のパーツは、図面および記載された説明を通じて同じ参照符号でそれぞれ示される。図面は、縮尺どおりに描かれておらず、いくつかのパーツの比率は説明の便宜のために誇張されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】変圧器タンクと連通する先行技術の変圧器冷却システムを描く図である。
図2】センサのための代替の絶縁流体フロー経路と、そのポートに設置されたセンサとを有する変圧器冷却システムを描く図である。
図3A】弁を通って方向付けられた絶縁流体フロー経路、および、ヘッダを通る絶縁流体フローに直接接触するように設置されたセンサを伴う水平指向のヘッダを有する変圧器冷却システムを描く図である。
図3B】ラジエータと変圧器タンクとの間にモニタリング接触するように設置されたセンサを伴う垂直指向のヘッダを通って方向付けられた絶縁流体フローを有する変圧器冷却システムを描く図である。
図3C】ラジエータと、センサを有する変圧器タンクとの間のもうひとつの実施の形態の垂直指向のヘッダを描く図である。
図3D】ラジエータと、センサを有する変圧器タンクとの間のもうひとつの実施の形態の垂直指向のヘッダを描く図である。
図4】弁とラジエータとの間のヘッダの中に設置されたセンサを有するラジエータを描く図である。
図5】フランジで終わっており、フランジ付きのセンサハウジングまたはフランジ付きのセンサポートと接合することが可能な、上端および/または下端のヘッダを有するラジエータを描く図である。
図6】ポートが設けられた上端および/または下端のヘッダを有するラジエータを描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照して、第1および第2の導管21,22を有する典型的なラジエータ20を有する変圧器1が示されており、第1および第2の導管21,22は、ラジエータ20を変圧器10のタンクに接続する。変圧器1はコア11と、少なくとも1つのコイル巻き線12と、タンク10の内部の絶縁流体13とを有する。典型的なラジエータ20は、フィン26と、絶縁流体を、変圧器タンク10へ、および、変圧器タンク10から移動させるための第1および第2の導管とを有する。あるいは、ラジエータ20は、チューブ状の形状に形成されたフィンを有するが、または、強制的絶縁流体冷却システムにおけるような、冷却器が変圧器に設けられている。「ラジエータ」という用語の本開示および使用は、前述のアレンジのいずれも予期するものと理解されるべきである。
【0010】
ラジエータ20は、典型的には、フィン26を有し、タンク10の上端から来る熱い絶縁流体がフィン26を通って自然循環(ONAN)または強制循環(ONAF/OFAF/ODAF)を通じて冷却される。いくつかの実施の形態では、冷却プロセスは、フィンまたは/およびポンプ上へ空気を吹き付けて誘電性流体の速度を増して冷却を容易にするファンの使用によって助けられる。
【0011】
よく知られているように、誘電性流体のような絶縁流体は、変圧器10のタンクとラジエータ20との間で移動させられ、熱は放散され、フィン26を通じて周囲環境に移され、その結果、ラジエータ20を出て、第2の導管22を通じて変圧器タンク10に入る冷却流体は、第1の導管21に入る絶縁流体よりも低い温度となる。
【0012】
たとえば図2に示されるように、本開示によるセンサ30の配置が示される。センサ30は、ラジエータ20の低い部分または下端の近傍に配置され、センサ30は循環する絶縁流体に、ラジエータ20の上端における絶縁流体の温度に比べて低い温度で、直接接触することが可能となる。
【0013】
第1および第2のヘッダ23,24は、それぞれ対応する第1および第2の導管21,22および、冷却システムと変圧器タンク10との間で絶縁流体を移動させるためのラジエータ20に関連して設けられてもよい。絶縁流体は、第1の導管21を通って第1のヘッダ23へと流れ、弁25のうちの第1の弁を通って、ラジエータ20を通って、熱が放散して絶縁流体が冷却された後で、第2のヘッダ24またはセンサ担持コンパートメントへと流れる。第2のヘッダ24を通って流れる絶縁流体は、第2のヘッダ24の中でのポート40を通じてのセンサ30による測定にアクセス可能である。絶縁流体は、センサ30の下流で第2の導管22へと戻ってもよい。絶縁流体の特性は、間接的手段またはセンサ30を通じての絶縁流体との直接接触によって測定されてもよい。他の弁25は、第2のヘッダ24の下流端に設けられていてもよく、図2に示されるように、センサ30の設置およびメンテナンスを容易にするように、センサ30と第2のヘッダ24との間にも設けられてもよい。
【0014】
非限定的な例として、センサ30には、絶縁流体に直接接触するプローブが設けられてもよい。ある実施の形態では、センサ30は、光の異なる波長で音を測定するための光音響センサ、またはFTIR(フーリエ変換赤外線)分光センサ、または金属板のような固体センサにおけるような光学的検出器である。さらに、導管21,22および/またはヘッダ23,24,34に設けられたポート40を通る絶縁流体の特性を測定することができる、膜タイプのセンサまたはその他の何らかのタイプの技術は、本開示によって予期される。あるいは、センサ30は、弁25または他のフィッティングに、または、その近くに設置されるか、または、ヘッダ24またはラジエータ20の他の回路の一部として、設置されてもよい。センサ30には、電子機器、電源および絶縁流体の1以上の特性を測定するためのその他の部品が設けられてもよい。
【0015】
ある実施の形態においては、センサ30は、抵抗温度検知器である。このような抵抗温度検知器は、応用に依存して2−ワイヤ、3−ワイヤ、または4−ワイヤの配列を有する。センサ30は、温度が上昇するにつれて抵抗の線形増加をもたらす。センサ30のさらに他のタイプは、絶縁流体の特性を測定するために予期される。そのようなセンサの例は、圧力、油量、およびマルチガス検知のセンサである。もうひとつの実施の形態では、センサ30は、ABB Inc.から入手可能で、変圧器絶縁流体の中の、水素および湿度を含むガスの連続的なオンライン・モニタリングを提供するCoreSense(登録商標)である。
【0016】
引き続き図2を参照して、絶縁流体温度はその場所では低いので、センサ30は、ラジエータ20の下端もしくはベース29の近傍または下方にあるヘッダ24に設置される。測定場所での絶縁流体温度は、センサ30の電子機器の動作に影響を与えないだろう。
【0017】
センサ30は、絶縁流体の温度、分解されたガスおよび/または湿度特性を測定する。測定値は、絶縁流体中のさまざまな分解されたガスおよび/または湿度および水の、存在および濃度を含むがこれらに限定されない。非限定的な例として、分解されたガスのセンサは、変圧器絶縁流体の中で分解された水素ガスの検出のために設けられるが、一酸化炭素、二酸化炭素、アセチレン、エチレン、メタン、および変圧器絶縁流体の中で分解されたさまざまな他のガスをも検出してもよい。あるいは、湿度センサは、変圧器絶縁流体の中の水を検出するためにポート40と関連して設けられてもよい。電子機器および通信モジュール60は、分解されたガス、湿度、およびその他の測定のためのセンサ機能を動作させるために設けられてもよい。
【0018】
センサ30は、変圧器絶縁流体のための多くの知られたセンサおよび測定システムによって必要とされていたように、新たな、または、連続的な絶縁流体に接触してモニターするためにポンプを必要としない。絶縁流体は、変圧器タンク10から第1の導管21を通ってラジエータ20の中へと連続的に移動し、ラジエータ20を出て第2の導管22を通ってヘッダ24を通過する間に変圧器タンク10へと戻る。それゆえ本開示は、絶縁流体の特性を連続的に測定することを可能とする。そのような特性は、絶縁流体の構成成分の存在および濃度、誘電損失、抵抗率、および絶縁流体中の粒子を含む。測定されてもよい絶縁流体の他の化学的および物理的な特性は、界面張力、力率、誘電強度、含水率、酸化防止剤率、酸性度、色、および絶縁流体のさまざまな他の特性であってよい。
【0019】
その上、第1および第2の導管21,22は、その外周に沿って配置された1以上のポート40を有してもよく、これらのポート40は、絶縁流体が、センサ30のプローブを通じてのように直接的にセンサ30によって測定され、または、ポート40を通じて光学的に音響的に、もしくは、ポート40との接触を通じてのように間接的に測定されることを可能にする。
【0020】
図3Aを参照して、ラジエータ20は、弁28を通じて、水平方向に設けられて絶縁流体の流れがインラインであるヘッダ24の上流端48へと接続された第2の導管22を有するものとして示される。第1および第2のベンド27は、ラジエータ20のフィン26の周りで絶縁流体の流れを方向付け、かつ、ラジエータ20をバイパスして直接タンク10に戻るためにヘッダ24の中に設けられる。ラジエータフィン26は、ベンド27のエリアでサイズを縮小されてもよい。しかしながら、フィン26の表面積の減少による冷却システムへの影響は、2〜3枚のフィン26のみの表面積の減少により最小限に維持される。ヘッダ24の形状は、自由な絶縁流体流れを可能とするように設計される。1以上のポート40は、絶縁流体の直接的または間接的な測定のための1以上のセンサ30による測定アクセスを可能とするためにヘッダ24の中に設けられる。
【0021】
図3Bを参照して、ラジエータ20は、変圧器タンク10のサイドに垂直方向に実装されたヘッダ34へと接続された第2の導管を有するものとして示される。センサ30は、ポート40を通じてアクセス可能な絶縁流体の流れにインラインに設けられる。絶縁流体は、ラジエータ20を出て、垂直ヘッダ34を形成するチューブまたはパイプを通って通過して、変圧器タンク10の下端近傍の開口42に入る。センサ30の場所は、変圧器1の絶縁流体の流れの最も冷えた領域において絶縁流体へのアクセスを提供しており、センサ30の電子機器を妨げない。図3Bの実施の形態では、追加的なガスケット接続および機械加工されたフランジは必要とされず、絶縁流体の漏れが起こりうる箇所を最小化する。
【0022】
図3Cおよび3Dを参照して、ラジエータ20は、第1の隔離弁44、第2の導管22、ヘッダ34、および第2の隔離弁46を通じて変圧器タンクに接続したものとして示される。ヘッダ34が取り外されうるように、第1および第2の隔離弁44,46は、絶縁流体の流れを、ラジエータ20の第2の導管22との接続、および、変圧器タンク10への接続においてオフに切り換えることを可能とする。センサ30は、プローブを用いる絶縁流体への測定アクセスを有するか、または、ヘッダ34のポート40を通じて光学的もしくは音響的に、もしくは、ヘッダ34を通じて直接的に、特性を測定する。第1および第2の隔離弁44,46は、絶縁流体を隔離して、ヘッダ34をラジエータ20と変圧器タンク10との間の接続から取り外すために、用いられうる。
【0023】
ポート40は、図3Cおよび3Dの例におけるセンサ30による測定アクセスのために、第1の導管21、第2の導管22、およびヘッダ34の少なくとも1つの中に設けられうる。センサ30は、前述したいずれのタイプのものであってもよい。ラジエータ20における、もしくはラジエータ20のベースの下方におけるヘッダ34の場所、および、ラジエータ20から変圧器タンク10への絶縁流体の移動のための隔離弁44の近くの下方入り口ポイントは、絶縁流体の冷却に寄与する。このような配列は、絶縁流体の流れにインラインなセンサ30の追加を可能とする。
【0024】
図4を参照して、予備のラジエータとして使用可能な補助ラジエータ20′が示される。ラジエータ20′は、必要とされた絶縁流体の流れを生み出し、絶縁流体をサンプリングまたは測定するために求められた温度範囲を達成するために、既存の変圧器ラジエータ20または新たな変圧器ラジエータ20に第1の導管21で接続されうる。ポート40は、絶縁流体の特性を感知するために、補助ラジエータ20′の下端において第2の導管22の中に設けられうる。補助ラジエータ20′のサイズに起因して、センサ30は、ラジエータ20′またはラジエータ20′が接続される変圧器タンク10の設置面積に影響を与えることなく、弁25とラジエータ20′の第2の導管22との間に設けられてもよい。
【0025】
図5を参照して、ラジエータ20は、第1および第2のフランジ付きセンサハウジング52,54と、センサ30を受け入れるための1以上のポート40とを有するものとして示される。第1のフランジ付きセンサハウジング52は、絶縁流体の上端油温を測定するために用いられてもよい。下方または下端のフランジ付きセンサハウジング54は、ポート40において1以上のセンサ30に接続されうる。センサハウジング53,54は、絶縁流体を受け入れて貯蔵する容器を形成し、複合ポート40から流体の中へと延在するためのセンサ要素のための追加的なスペースを提供する箱形状を含んでよい。
【0026】
図6を参照して、ラジエータ20は、センサ30を絶縁流体に直接結合する、または、接続するための複合ポート40が設けられた第1および第2のヘッダ23,24を含む。第1および第2のヘッダ23,24内での絶縁流体への直接的測定アクセスは、それによって、1以上のセンサ30に提供される。ポート40は、ここに記載した、第1および第2の導管21,22、第1および第2の水平ヘッダ23,24、垂直ヘッダ34、および/または第1および第2のフランジ付きセンサハウジング52,54のいずれかまたは全てに設けられうるものと理解されるべきである。さらに、弁は、センサ30の取外しおよび取付けを容易にするために、ここに開示されたポート40のいずれかにおいて接続されうる。
【0027】
センサ30は、用途に依存して垂直または水平に実装される。センサ30は、アナログまたはデジタルな方法でのセンサ30または何らかのシステムの読み出しのための有線または無線の通信を提供する。センサ30と処理ユニットとの間の有線の通信の例は、油中に溶解した1つまたは複数のガスを表す4〜20mAのアナログ出力をもたらす。溶解したガスの測定値を表すデジタル信号は、センサ30から、有線通信を介して、または金属対、光ファイバ、または他の媒体を用いた無線でもたらされうる。変圧器のモニタリングのための他のシステムへの通信は、MODBUS、DNP 3.0およびIEC61850プロトコルを用いて可能である。通信のこの同じタイプは、ここで言及したセンサ・タイプの全てに適用される。
【0028】
本開示のさまざまな局面が予期される。ある1つの局面によれば、変圧器はタンクを含み、タンクは、コアと、少なくとも1つのコイル巻き線と、絶縁流体と、絶縁流体をタンクから受け取るためのラジエータとを収容する。ラジエータは、絶縁流体を冷却するためのフィンと、冷却された絶縁流体をラジエータから受け取るための導管およびヘッダのうち少なくとも一方とを含む。導管およびヘッダのうち少なくとも一方は、その中の絶縁流体への測定アクセスのためのポートを含む。センサは、ポートを通じて絶縁流体の特性を測定するために設けられる。
【0029】
ある1つの実施の形態では、センサは、湿度センサ、溶解ガスセンサ、抵抗温度検知器、光音響センサ、圧力センサ、マルチガス検知センサ、油量センサ、および前述のセンサの何らかの組合せからなる群から選択される。もうひとつの実施の形態では、センサは、絶縁流体の少なくとも1つの測定値を通信するために動作可能である。
【0030】
さらにもうひとつの実施の形態では、絶縁流体の測定された特性は、絶縁流体中の少なくとも1つの成分の存在、絶縁流体中の少なくとも1つの成分の成分濃度、絶縁流体の圧力、絶縁流体の温度、絶縁流体のレベル、界面張力、力率、誘電強度、含水率、酸化防止剤率、酸性度、色、および前述のものの何らかの組合せからなる群から選択される。
【0031】
さらなる実施の形態では、ヘッダは、冷却された絶縁流体を受け取るために設けられ、さらにヘッダの上流側の端および下流側の端のそれぞれに第1および第2の弁を備える。この実施の形態の改良では、センサがヘッダの中のポートへと実装される。さらなる改良においては、ヘッダとセンサとの間に第3の弁が設けられる。この実施の形態のもうひとつの改良では、ヘッダの少なくとも一部は、ラジエータに沿って水平に方向付けられ、ポートは、水平に方向付けられた当該一部に位置する。この実施の形態のさらにもうひとつの改良では、ヘッダの少なくとも一部が垂直に方向付けられ、ラジエータから下方に向かって延在し、ポートは、垂直に方向付けられた当該一部に位置する。
【0032】
もうひとつの局面によれば、変圧器はタンクを含み、タンクは、コアと、少なくとも1つのコイル巻き線と、タンクの内部に配置された絶縁流体と、タンクから絶縁流体を受け取るためのラジエータとを収容する。ラジエータは、絶縁流体を冷却するためのフィンと、タンクから絶縁流体を受け取るための第1のヘッダと、フィンから冷却された絶縁流体を受け取るための第2のヘッダとを含む。第2のヘッダは、その中の絶縁流体への測定アクセスのためのポートを含み、センサは、ポートを通じて絶縁流体の特性を測定するために設けられる。
【0033】
ある1つの実施の形態では、センサハウジングは、センサによる測定のための絶縁流体を集めるための第2のヘッダに取り付けられており、ポートは、センサハウジングに設けられており、そして、センサはポートに取り付けられている。もうひとつの実施の形態では、第2のヘッダの少なくとも一部は、垂直に方向付けられてラジエータから下方に向かって延在しており、ポートは、垂直に方向付けられた一部に位置付けられている。
【0034】
さらにもうひとつの実施の形態では、第2のヘッダの少なくとも一部は、ラジエータに沿って水平に方向付けられており、ポートは、水平に方向付けられた一部に位置づけられている。この実施の形態の改良では、第2のヘッダは、ラジエータの底部の下に配置されている。
【0035】
さらになおもう1つの実施の形態では、第1の導管は、第1のヘッダをタンクに接続し、第2の導管は、第2のヘッダをタンクに接続する。もうひとつの実施の形態では、第1の導管は、第1のヘッダをタンクに接続し、第2および第3の導管は、第2のヘッダをラジエータの出口に接続する。さらになおもう1つの実施の形態では、第2のヘッダは、センサとの接続のための複数のポートを含む。
【0036】
もうひとつの局面によれば、変圧器はタンクを含み、タンクは、コアと、少なくとも1つのコイル巻き線と、タンクの内側に配置された絶縁流体と、タンクからの絶縁流体を受け取るためのラジエータとを収納する。ラジエータは、絶縁流体を冷却するためのフィンと、タンクからの絶縁流体を受け取るための第1のヘッダと、冷却された絶縁流体を受け取るための第2のヘッダとを含む。補助ラジエータは、絶縁流体が冷却される前に絶縁流体を受け取る第1の導管を以て第1のラジエータに接続される。補助ラジエータは、絶縁流体を冷却するためのフィンと、冷却された絶縁流体を補助ラジエータから受け取る第2の導管とを含む。第2の導管は、その中にある絶縁流体への測定アクセスのための少なくとも1つのポートを含み、センサは、ポートを通じて絶縁流体の特性を測定するために設けられる。
【0037】
ある1つの実施の形態では、弁は、第2の導管とセンサとの間に設けられる。もう1つの実施の形態では、第1および第2の導管の各々は、センサとの接続のための複数のポートを含む。
【0038】
明細書またはクレームにおいて「含む」または「含んでいる」という語が用いられる範囲では、「備える」という語がクレームにおける移行句として採用されるときに解釈されるのと同様の方法で、包括的であることが意図される。さらに「または」という語が採用される範囲(たとえば、AまたはB)では、「AまたはBまたは両方」を意味することが意図される。出願人が「両方ではなくAまたはBの一方のみ」を指し示すことを意図するときには、「両方ではなくAまたはBの一方のみ」という語が採用されるだろう。このように、ここでの「または」という語の使用は包括的であり、排他的使用ではない。Bryan A. GarnerによるA Dictionary of Modern Legal Usage 624(第2版、1995年)を参照されたい。明細書またはクレームにおいて「の中」または「の中へ」という語が用いられる範囲では、「の上」または「の上へ」を追加的に意味することが意図される。さらに、明細書またはクレームにおいて「接続する」という語が用いられる範囲では、「直接…に接続される」ということのみでなく、もうひとつの要素または複数の要素を通じて接続されるように「間接的に…に接続される」ということも意味することが意図される。
【0039】
本出願は、さまざまな実施の形態を解説しつつ、これらの実施の形態はいくらか詳細に記述されてきたが、添付されたクレームの範囲をそのような詳細に限定することまたはいかなる制限をすることも、出願人の意図ではない。追加的な有利性および変形例は、当業者にとって容易に見受けられるだろう。それゆえ、発明は、その広い局面において、特定の詳細、代表的実施の形態、および示され記載された解説的な例に制限されない。その結果、そのような詳細からの発展は、出願人の一般的な発明の概念の精神または範囲から外れることなく、なされうる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
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図6