(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
利用者の腰部に装着され、互いに直交する3軸方向の加速度を検出することにより、前記利用者の移動動作に伴う前記3軸方向についての動作速度の変化を計測して加速度データとして出力する加速度センサと、前記3軸の各々を中心とする回転方向の角速度を検出することにより、前記利用者の前記移動動作に伴う前記3軸方向についての動作方向の変化を計測して角速度データとして出力するジャイロセンサと、を有するセンサから前記加速度データ及び前記角速度データをセンサデータとして取得するセンサデータ取得部と、
前記利用者の身体の単位重さ分に作用している力の単位時間当たりの平均値である単位動作力と、前記利用者が単位時間当たりに単位重さ分について摂取する酸素量である酸素摂取量と、の相関関係を示し、前記利用者毎に異なる回帰線の傾き又は切片の少なくとも何れかの値を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記利用者に対応する回帰線の傾き又は切片の少なくとも何れかの値を参照することにより、前記センサデータ取得部により取得されたセンサデータから前記移動動作に伴う前記利用者の前記酸素摂取量を推定する演算処理部と、
を備え、
前記演算処理部は、
前記センサデータから得られる加速度の鉛直方向成分の時系列的変化を示す波形に基づいて、前記利用者における何れか一方の足の接地タイミングから前記一方の足の次回の接地タイミングまでにかかる平均時間を検出する第1処理と、
所定の算出式における係数に前記第1処理で検出された平均時間を代入することにより得られる前記単位動作力と、前記利用者に対応する相関テーブルと、に基づいて、前記移動動作に伴う前記利用者の前記酸素摂取量を導出する第2処理と、
を実行し、
前記第1処理は、
前記一方の足の接地タイミングから前記一方の足の次回の接地タイミングまでの期間に対応する前記波形を、前記一方の足の接地タイミングから他方の足の接地タイミングまでの第1期間に対応する第1波形と、前記他方の足の接地タイミングから前記一方の足の次回の接地タイミングまでの第2期間に対応する第2波形と、に分けて、複数回分の前記波形を適用することにより、前記第1波形と前記第2波形とを個別に平均化して前記第1期間における第1平均時間と前記第2期間における第2平均時間を導出する第1サブ処理と、
前記第1平均時間に前記第2平均時間を加えることにより前記平均時間を導出する第2サブ処理と、
を含むことを特徴とする運動支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る運動支援装置及び運動支援方法、運動支援プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。なお、以下の実施形態においては、本発明に係る運動支援装置のユーザ(被験者)がランニングを行う場合について詳しく説明するが、比較的均一な動作を長い時間、周期的に繰り返す運動であれば、ウォーキングやサイクリング等の他の運動に適用するものであってもよい。
【0014】
<第1の実施形態>
(運動支援装置)
図1は、本発明に係る運動支援装置の第1の実施形態を示す概略図である。
図2は、本実施形態に係る運動支援装置に適用される構成例を示す機能ブロック図である。
図2(a)はセンサ機器の構成例を示す機能ブロック図であり、
図2(b)は外部表示機器の構成例を示す機能ブロック図である。
図3は、本実施形態に係る運動支援装置に適用されるK値と酸素摂取量VO
2との相関関係の一例を示す検証データである。
【0015】
第1の実施形態に係る運動支援装置は、例えば
図1(a)、(b)に示すように、被験者であるユーザUSの胴体に装着されるセンサ機器100と、センサ機器100により取得されたセンサデータ等に基づいて算出又は推定される、ユーザUSの運動能力やその効率性を規定し評価するための指標(後述するK値、酸素摂取量VO
2;以下、「運動能力評価指標」と記す)を含む、運動状態に関する解析結果を表示する外部表示機器200と、を有している。
【0016】
(センサ機器100)
センサ機器100は、ランニングやウォーキング、サイクリング等の運動中の身体の周期的な動作を、モーションセンサを用いて測定し、収集したセンサデータに基づいて、運動中のユーザUSの運動能力評価指標を含む、運動状態に関する各種の解析データを算出又は推定する機能を有している。
【0017】
センサ機器100は、例えば
図1(a)、(b)に示すように、直方体形状や曲面体形状等を有する小型の電子機器であって、運動中のユーザUSの身体の動きをモーションセンサにより正確に測定するために、ユーザUSの背中側の腰部に密着して装着される。ここで、センサ機器100の装着箇所は、少なくともユーザUSの運動中、胴体の動きに対応した動きをする人体の部位に密着して装着されるものであればよく、具体的には、運動中に胴体の動きと対応することなく激しく動く四肢や頭部等の部位を除く、胴体及び頸部の付け根の任意の箇所に装着されるものであればよい。また、センサ機器100装着方法は、例えばユーザUSが着用しているウェアTWやベルトにクリップで挟み込む形態や接着テープで貼り付ける形態等を適用して着脱可能に装着するものであってもよいし、吸盤や粘着部材等を介して直接人体に着脱可能に装着されるものであってもよいし、ユーザUSが着用しているウェアの生地に組み込んだ形態を適用するものであってもよい。
【0018】
センサ機器100は、具体的には、例えば
図2(a)に示すように、センサ部110と、速度情報取得部120と、演算処理部130と、メモリ部150と、インターフェース部(以下、「I/F部」と略記する)160と、電源供給部170と、を備えている。
【0019】
センサ部110は、モーションセンサとして加速度センサ112とジャイロセンサ(角速度センサ)114とを有し、ユーザUSの運動中の身体の動きを測定する。加速度センサ112は、3軸加速度センサを有し、互いに直交する3軸方向の加速度を検出することにより、ユーザUSの運動中の動作速度の変化を計測する。ジャイロセンサ114は、3軸角速度センサを有し、上記加速度を規定する3軸の各々を中心とする回転方向の角速度を検出することにより、ユーザUSの運動中の動作方向の変化を計測する。加速度センサ112により検出された加速度データ、及び、ジャイロセンサ114により検出された角速度データは、各々、経過時間の時間データに関連付けられてメモリ部150に保存される。
【0020】
ここで、運動中の身体に働く力は、作用反作用の関係から、当該運動における身体活動によって発揮される力と同等であることから、加速度センサやジャイロセンサ等のモーションセンサにより身体に働く力を測定することは、身体活動により発揮される力(すなわち、運動能力)を測定することを意味する。なお、加速度センサ112及びジャイロセンサ114の3軸方向は、例えば
図1(a)にしたランニング中の人体の前後方向をy軸(ユーザUSの進行方向を−方向)とし、人体の左右方向をx軸(ユーザUSの左方向を+方向)とし、x−y平面に直交する人体の上下方向をz軸(ユーザUSの頭上方向を+方向)となるように設定されている。また、各軸の+方向に向かって右回り方向に生じる角速度が+方向に設定されている。
【0021】
速度情報取得部120は、移動する運動中のユーザUSの移動速度(ランニングの場合は、走行速度)に関する情報を取得する。速度情報取得部120は、例えば、全地球測位システム(GPS;Global Positioning System)のGPS衛星から送信される速度情報に関する信号を直接受信して、運動中の移動速度を取得する手法を適用することができる。この場合、速度情報取得部120は、GPS信号の受信機能を有している。
【0022】
また、速度情報取得部120は、例えば、ジャイロセンサ114により取得されたユーザUSの進行方向の変化と、予め用意されたランニングコース等の移動経路に関する地図データとを参照し、移動経路上の位置の変化から算出される移動距離と経過時間とに基づいて移動速度を算出する手法を適用することもできる。この場合、速度情報取得部120は、地図データ等の保存、参照機能を有している。
【0023】
また、速度情報取得部120は、例えば、移動経路上やその近傍に設置された、ワイファイ(WiFi;wireless fidelity(登録商標))等の無線通信のアクセスポイントやビーコン発信器、磁気発生装置等から送信される、位置を特定する信号等を受信することにより、現在位置を特定し、移動距離と経過時間とに基づいて移動速度を算出する手法を適用することもできる。ここで、位置を特定する信号等を送信するアクセスポイントやビーコン発信器、磁気発生装置は、商用目的で常設されているものであってもよいし、競技会やレースの開催期間中や特定の練習時のみ設置される仮設のものであってもよい。この場合、速度情報取得部120は、無線通信信号やビーコンの受信機能、又は、磁気センサ等の磁気の検出機能を有している。
【0024】
なお、ユーザUSの運動中の移動速度を取得する手法は、これらのいずれか一つであってもよいし、これらを任意に組み合わせて補完的に使用するものであってもよいし、これら以外の他の手法を適用するものであってもよい。速度情報取得部120により取得された速度データは、経過時間の時間データに関連付けられて、後述するメモリ部150に保存される。
【0025】
演算処理部130は、計時機能を備えたCPU(中央演算処理装置)やMPU(マイクロプロセッサ)等の演算処理装置であって、所定の制御プログラムを実行することにより、加速度センサ112やジャイロセンサ114におけるセンシング動作や、後述するメモリ部150における各種のデータ等の保存及び読出し動作、I/F部160における外部表示機器200への解析データの出力動作等の、センサ機器100全体の動作を制御する。また、演算処理部130は、所定のアルゴリズムプログラムを実行することにより、センサ部110により取得されたセンサデータ、及び、速度情報取得部120により取得された速度データに基づいて、運動中のユーザUSの運動能力評価指標を含む、運動状態に関する各種の解析データを算出又は推定する処理を実行する。
【0026】
演算処理部130は、例えば
図2(a)に示すように、地軸推定部132と、接地検出部134と、周期検出部136と、K値計算部(単位動作力計算部)138と、VO
2推定部140と、を有している。
【0027】
地軸推定部132は、上述したセンサ部110により取得されたセンサデータに基づいて、地表に垂直な重力方向を示す地軸(鉛直軸)を推定する。具体的には、地軸推定部132は、加速度センサ112により検出される3軸方向の加速度を、走行動作の数周期分又は一定期間分について平均化することにより、重力方向のベクトルを算出し、これに基づいて地軸を特定する。
【0028】
接地検出部134は、センサ部110により検出されたセンサデータに基づいて、運動中にユーザUSの左右いずれかの足が地面に接地したタイミングを検出する。具体的には、一般的な走行動作においては、地軸推定部132により推定された地軸に基づいて重力方向に検出される加速度の時間変化は、ユーザUSの左右いずれかの足が接地するタイミングに密接に関連した波形を示すので、接地検出部134は、この波形変化に基づいて接地タイミングを検出する。
【0029】
なお、接地検出部134は、上述したように、運動中にユーザUSの左右いずれかの足が地面に接地したタイミングを単に検出するだけでなく、運動中に接地した足が左右のいずれの足であるかを判定する左右接地検出機能(後述する変形例の左右接地検出部144参照)を備えるものであってもよい。
【0030】
周期検出部136は、接地検出部134により検出されたユーザUSの左右いずれかの足の一歩ごとの接地タイミング、及び、走行動作は左右の足が交互に接地するという前提に基づいて、右→左→右、又は、左→右→左の足の運びからなる走行動作の1周期分の時間を算出する。なお、走行動作における周期を算出する手法は、上記の手法に限定されるものではなく、他の手法を適用するものであってもよい。
【0031】
K値計算部138は、センサ部110により取得されたセンサデータ、及び、上記の周期検出部136により算出された走行動作の1周期の時間に基づいて、ユーザUSにより、1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力、すなわち、ユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力の1分間当たりの平均値を算出する。本実施形態においては、走行動作の1分間あたりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力(単位動作力)を「K値」と称し、運動能力評価指標の一つとして規定する。
【0032】
具体的には、走行動作における1周期の期間に人体に作用している力の累積値は、次の式(11)に示すように、時間関数であるF(人体に働く力)を1周期に亘って積分することにより算出される。したがって、1周期にユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力の累積値Wは、式(11)に示すFの積分値をユーザUSの体重mで除することにより算出される。ここで、時間関数で表される力Fは、加速度aと質量(体重m)とを乗じた値であるので、ユーザUSの身体の体重1kg分に働く力の累積値Wは、加速度aを1周期に亘って積分することにより算出される。この力の累積値Wの単位は、(N/kg/周期)となる。また、加速度センサ112に適用される3軸加速度センサにおいては、直交するx、y、zの各軸方向の加速度が検出されるので、これらの二乗平均値を求めることにより加速度の大きさ(上記の加速度a)が算出される。
【0034】
そして、次の式(12)に示すように、上記の力の累積値Wを周期検出部136により算出された走行動作の1周期分の時間T(単位は秒;sec)で除し、60を乗じて分単位に換算することにより、1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力K、すなわち、1周期の期間において、ユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力の1分間当たりの平均値、が算出される。この力Kの単位は、(N/kg/min)となる。
【0036】
なお、走行動作における1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力Kを算出する手法は、上記の手法に限定されるものではない。例えば、センサ機器100のセンサ部110により取得されたセンサデータに基づいて、走行動作の運動状態に関する解析データとして一般に良く使われているピッチP(1分間の歩数;単位はstep/min)が算出されている場合には、走行動作における1周期は左右2歩分の接地タイミングの間隔の合計であることから、次の式(13)に示すように、加速度aを1周期(時間T)に亘って積分した値(力の累積値W;上式(11)参照)にピッチP/2を乗じることにより、上述した1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力Kを算出することができる。
【0038】
VO
2推定部140は、K値計算部138により算出された、1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力Kに基づいて、予め取得されたユーザUS固有のK値と酸素摂取量VO
2との相関関係を参照することにより、ユーザUSの今回の走行動作における、ユーザUSが、1分間当たりに体重1kg当たりに摂取する酸素量(酸素摂取量VO
2)を推定する。この酸素摂取量VO
2の単位は、(ml/kg/min)となる。本実施形態においては、VO
2推定部140により推定される酸素摂取量VO
2を、上記K値とともに、運動能力評価指標の一つとして規定する。
【0039】
ここで、K値と酸素摂取量VO
2との相関関係について、本願発明者らが各種実験により検証したところ、ユーザUSの体格や性別、心肺機能、走行時のフォーム等の生理的能力の違いにより、ユーザUS毎に個別の特性を有していることが判明した。
【0040】
具体的には、例えば
図3(a)〜(f)に示すように、生理的能力が異なる6人のユーザUSがトレッドミル上で走行した場合に測定されたK値と酸素摂取量VO
2との関係は、相関係数が0.97〜0.99であり、いずれも酸素摂取量VO
2が増加するとK値が一次関数的に上昇するという比較的高い線形性を有している。一方、K値と酸素摂取量VO
2との相関関係を示す回帰線の傾き及び切片の値は、各個人の生理的能力に起因して個人毎に互いに異なる値を有している。具体的には、
図3(a)では、傾き4.26、切片584.69、
図3(b)では、傾き4.33、切片628.84、
図3(c)では、傾き5.51、切片644.15、
図3(d)では、傾き9.49、切片396.66、
図3(e)では、傾き6.90、切片548.70、
図3(f)では、傾き7.58、切片535.61となっている。
【0041】
このような検証結果によれば、ユーザUSごとに生理的能力が異なるため、他のユーザUSとの間でK値を比較することによりユーザUS間の走行時の酸素摂取量VO
2の値を比較することはできないものの、例えば、同一のユーザUS個人の中では、予め取得したK値と酸素摂取量VO
2との相関関係を参照することにより、K値の変化から、走行時のフォームの影響等による酸素摂取量VO
2の変化について、高い精度で推定することができることが判明した。なお、上記の各個人の回帰線の傾き及び切片の値は、各個人に対応させてメモリ部150の所定の記憶領域に保存されている。
【0042】
メモリ部150は、センサ部110により取得されたセンサデータ(加速度データ、角速度データ)、及び、速度情報取得部120により取得された速度データを、経過時間の時間データに関連付けて所定の記憶領域に順次保存する。また、メモリ部150は、上述した演算処理部130において、所定の制御プログラムやアルゴリズムプログラムを実行することにより、運動中に取得されたセンサデータに基づいて算出又は推定される運動能力評価指標を含む、運動状態に関する各種の解析データ等を所定の記憶領域に保存する。なお、メモリ部150は、その一部または全部がリムーバブル記憶媒体としての形態を有し、センサ機器100に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。
【0043】
I/F部160は、後述する外部表示機器200に対して、センサ機器100において取得された各種の解析データ等を所定の方法や方式で出力する。具体的には、I/F部160は、例えばブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))やワイファイ(WiFi(登録商標))等の各種の無線通信方式を使用してセンサ機器100から外部表示機器200に、各種の解析データ等を出力する手法を適用することができる。また、I/F部160は、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格の通信ケーブル(USBケーブル)等や、メモリカード等のリムーバブル記憶媒体を介して、外部表示機器200に解析データ等を出力する手法を適用することもできる。
【0044】
電源供給部170は、センサ機器100内部の各構成に駆動用電力を供給するバッテリであって、周知のボタン型電池等の一次電池や、リチウムイオン電池等の二次電池のほか、振動や光、熱、電磁波等のエネルギーにより発電する環境発電技術による電源等を、単独で、又は、適宜組み合わせて適用することができる。
【0045】
(外部表示機器200)
外部表示機器200は、上述したセンサ機器100によりユーザUSの運動中に取得したセンサデータ等に基づいて算出又は推定された運動能力評価指標(K値、酸素摂取量)を含む、運動状態に関する解析結果を、ユーザUSが指定した任意の表示形態、又は、予め設定された表示形態で表示する機能を有している。
【0046】
外部表示機器200は、例えば
図1(a)に示すように、表示機能を備えた電子機器であって、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット機器、腕時計型又はリストバンド型のリスト機器、専用端末等を適用することができる。すなわち、外部表示機器200は、ユーザUSが運動中に携帯又は装着しているものであってもよいし、ユーザが携帯することなく、別個に設置されているものであってもよい。
【0047】
外部表示機器200は、具体的には、例えば
図2(b)に示すように、操作部210と、I/F部220と、制御部230と、メモリ部240と、表示部250と、報知部260と、電源供給部270と、を有している。
【0048】
操作部210は、外部表示機器200に付設されるキーボードやマウス、タッチパッド、後述する表示部250の前面に設けられたタッチパネル、機器筐体の前面や側面に設けられた押しボタン等の入力手段を有している。操作部210は、センサ機器100から出力された運動能力評価指標を含む、運動状態に関する解析結果を表示部250に所定の表示形態で表示させる際の入力操作に用いられる。また、I/F部220は、無線や有線による所定の通信方式や、リムーバブル記憶媒体を介する方法により、センサ機器100において取得された各種の解析データ等を取り込む。
【0049】
制御部230は、CPUやMPU等の演算処理装置であって、所定の制御プログラムを実行することにより、表示部250における各種データや情報の表示動作や、報知部260における報知動作、メモリ部240における各種データ等の保存及び読出し動作、I/F部220におけるセンサ機器100からの解析データ等の取り込み動作等の、外部表示機器200全体の動作を制御する。メモリ部240は、I/F部220を介してセンサ機器100から出力された各種の解析データ等を所定の記憶領域に保存する。
【0050】
表示部250は、例えば液晶方式や発光素子方式等の表示パネルを有し、少なくとも操作部210を用いた入力操作に関するアイコンやメニュー、センサ機器100から出力された各種の解析データ等を、ユーザUSが操作部210を用いて指定した任意の表示形態、又は、予め設定された表示形態で、解析結果として表示する。なお、表示部250において表示される解析結果の具体例については後述する。また、表示部250は、上記の情報の他に、外部表示機器200が備える各種の機能に関連した情報や、時刻情報等を表示するものであってもよい。
【0051】
報知部260は、例えば発光部や音響部、振動部、刺激部等の報知手段を有している。報知部260は、例えば表示部250に表示される解析結果に連動して、当該解析結果が所定の基準値や許容範囲に対して逸脱している程度に応じて、一段階又は複数段階の報知情報を出力する。報知部260から出力される報知情報は、視覚や聴覚、触覚等を通してユーザUSに提供される。なお、報知部260における報知動作の具体例については後述する。
【0052】
電源供給部270は、外部表示機器200内部の各構成に駆動用電力を供給する。電源供給部270は、ノート型のパーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末、リスト機器等の携帯型の電子機器においては、リチウムイオン電池等の二次電池が適用される。また、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ等の据置型の電子機器においては、商用交流電源が適用される。
【0053】
なお、本実施形態においては、外部表示機器200がセンサ機器100から出力された各種の解析データ等を、所定の表示形態の解析結果として表示するための機能を備える場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、外部表示機器200として、ユーザUSが運動中に携帯又は装着するスマートフォンやリスト機器等を適用する場合には、当該外部表示機器200の操作部210をユーザUSが操作することにより、I/F部220を介して操作信号を送信して、センサ機器100におけるセンシング動作の開始や終了、運動能力評価指標を含む各種の解析データの算出又は推定処理の進行状況等を制御する機能等を有しているものであってもよい。
【0054】
(運動支援方法)
次に、本実施形態に係る運動支援装置における制御方法(運動支援方法)について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す運動支援方法は、センサ機器100の演算処理部130、及び、外部表示機器200の制御部230において、所定のプログラムを実行することにより実現される。
図4は、本実施形態に係る運動支援方法の一例を示すフローチャートである。
【0055】
本実施形態に係る運動支援方法においては、
図4のフローチャートに示すように、まず、ユーザUSがセンサ機器100を腰部に装着した状態で、ランニング等の走行動作を開始することにより、センサ機器100の演算処理部130は、センサ部110の加速度センサ112及びジャイロセンサ114によりユーザUSの身体の動きに対応したセンサデータ(加速度データ、角速度データ)を検出させるとともに、速度情報取得部120により速度データを取得させて、時間データに関連付けてメモリ部150の所定の記憶領域に保存させる(ステップS102)。このようなセンサデータ等の検出処理は、ユーザUSが走行動作を終了するまでの間、所定のサンプリング周期で定期的に継続して実行されて、センサデータ及び速度データがサンプリングの時間データに関連付けられてメモリ部150の所定の記憶領域に順次保存される。
【0056】
次いで、演算処理部130は、ユーザUSが走行動作を終了した後、あるいは、上記のセンサデータ及び速度データが所定の時間(少なくとも走行動作の1周期分の時間)分以上、収集された時点で、運動中のユーザUSの運動能力評価指標(K値、酸素摂取量VO
2)を含む、運動状態に関する各種の解析データを算出又は推定する一連の処理動作を実行する。
【0057】
具体的には、演算処理部130は、まず、地軸推定部132において、加速度センサ112により検出された3軸方向の加速度データに基づいて、重力方向のベクトルを算出し、地軸を特定する地軸推定処理を実行する(ステップS104)。次いで、演算処理部130は、接地検出部134において、加速度センサ112により検出された加速度データのうち、地軸推定処理により推定された地軸に基づいて重力方向に検出される加速度成分の時間変化を示す波形に基づいて、ユーザUSの左右いずれかの足が地面に接地したタイミングを検出する接地検出処理を実行する(ステップS106)。
【0058】
次いで、演算処理部130は、周期検出部136において、接地検出処理により検出された接地タイミングに基づいて、走行動作の1周期分の時間を算出する運動周期検出処理を実行する(ステップS108)。次いで、演算処理部130は、K値計算部138において、加速度センサ112により取得された加速度データ、及び、運動周期検出処理により算出された走行動作の1周期の時間に基づいて、走行動作の1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力であるK値を算出するK値算出処理を実行する(ステップS110)。
【0059】
次いで、演算処理部130は、VO
2推定部140において、K値算出処理より算出された力Kに基づいて、予め取得されたユーザUS固有のK値と酸素摂取量VO
2との相関関係を参照することにより、ユーザUSの今回、又は、直近の走行動作における酸素摂取量VO
2を推定するVO
2推定処理を実行する(ステップS112)。なお、上記のステップS104〜S112の一連の処理動作において、算出又は推定される各データや運動能力評価指標を含む各種の解析データは、時間データに関連付けられてメモリ部150の所定の記憶領域に保存される。
【0060】
次いで、演算処理部130は、I/F部160を介して、センサ機器100と外部表示機器200とが無線や有線による通信方式により接続されることにより、又は、メモリカード等のリムーバブル記憶媒体が接続されることにより、メモリ部150に保存されている各種の解析データ等を出力する(ステップS114)。ここで、センサ機器100から無線や有線による通信方式により、又は、リムーバブル記憶媒体を介して外部表示機器200に出力される各種の解析データ等は、上記のステップS104〜S112の一連の処理動作により算出又は推定された運動能力評価指標(K値、酸素摂取量VO
2)や速度データ等をそのまま出力するものであってもよいし、後述する解析結果の表示例に対応した関連付けがされた状態で出力されるものであってもよい。
【0061】
次いで、外部表示機器200の制御部230は、I/F部220を介して、センサ機器100から出力された各種の解析データ等を取り込んで、メモリ部240の所定の記憶領域に保存する。そして、ユーザUSが外部表示機器200の操作部210を操作して、表示部250に任意の解析結果を表示する入力操作が行われると、制御部230は、メモリ部240に保存された各種の解析データ等の中から、指示された解析結果に関連するデータを抽出して解析結果として表示部250に所定の表示形態で表示する(ステップS116)。ここで、制御部230は、表示部250に表示された解析結果について、例えば走行速度に対する酸素摂取量VO
2が、予め設定された所定の基準値や許容範囲に対して、超過する等の逸脱が生じた場合には、表示部250や報知部260において、表示色や発光色を段階的に変化させたり(緑→黄→赤)、アラーム音の音量や音色を変化させたりしてもよい。また、外部表示機器200として、ユーザUSが運動中に携帯又は装着するスマートフォンやリスト機器等を適用する場合には、振動の強度やパターンを変化させたり、人体に軽度の電気ショックを与えたりしてもよい。なお、人体に軽度の電気ショックを与える報知方法を利用する場合には、外部表示機器200の筐体の人体に接触する箇所に、微量の電流を流すための電極が露出した構造が適用される。
【0062】
このように、本実施形態においては、身体に密着させて装着したセンサ機器100のモーションセンサにより検出されるセンサデータに基づいて運動中の身体に働く力を算出し、その力が身体活動によって発揮される力と同等であることを利用して、1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用する力(K値)を算出することで、ユーザUSが、1分間当たりに体重1kg当たりに摂取する酸素量(酸素摂取量VO
2)を推定する。
【0063】
本実施形態においては、上記の酸素摂取量VO
2を求める際に、予め取得されたユーザUS固有のK値と酸素摂取量VO
2との相関関係を参照することにより、走行時のフォームに起因する酸素摂取量VO
2の変化を高い精度で推定することができ、ユーザUSの運動能力やその効率性を適切に評価することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、モーションセンサを備えた小型のセンサ機器100を身体に密着して装着させた簡易な測定環境で、走行時の酸素摂取量VO
2を高い精度で推定することができるので、日常の練習や実際のレース等、場所や時間、費用を選ぶことなく必要なときにいつでも酸素摂取量VO
2を推定して、運動能力やその効率性を適切に評価することができる。
【0065】
<変形例>
次に、上述した第1の実施形態における変形例について図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る運動支援装置の変形例を示す機能ブロック図である。ここで、上述した実施形態と同等の構成については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
図6、
図7は、本変形例に適用される平均波形検出処理の説明図である。
【0066】
上述した第1の実施形態においては、運動中にセンサ部110により取得されたセンサデータ(加速度データ、角速度データ)に基づいて、演算処理部130により地軸検出、接地検出を行い、走行動作の1周期分の時間を算出する場合について説明した。ここで、一般的な走行動作において、予期しない静止や躓き、ふらつき等の、本来の周期的な動作以外の突発的な動作が発生して、センサ部110により取得されるセンサデータのなまりや、走行動作の1周期にばらつきが生じると、上述した式(11)〜式(13)に関連するK値計算部138やVO
2推定部140において運動能力評価指標(K値、酸素摂取量VO
2)が正確に算出又は推定されなくなる場合がある。
【0067】
そこで、本変形例においては、例えば
図5に示すように、上述した第1の実施形態に示した構成に加え、運動中に接地した足が左右のいずれの足であるかを判定する左右接地検出部144と、運動中の走行動作の突発的な変化による周期のばらつきを抑制する平均化処理を行う平均波形検出部146と、を有している。
【0068】
左右接地検出部144は、一般的な走行動作において、運動中に人体の前後方向に設定されたy軸について検出される角速度の時間変化は、左右の各足の運びに密接に関連した波形を示すので、この波形変化に基づいて、上述した接地検出部134と同等の機能により検出された接地タイミングについて左右のいずれの足が接地したかを判定する。なお、左右の各足の接地タイミングを判定する手法としては、y軸の角速度データを用いる手法の他に、x軸の加速度データを用いる手法や、z軸の角速度データを用いる手法を適用するものであってもよい。
【0069】
平均波形検出部146は、まず、
図6(a)〜(c)に示すように、周期検出部136により算出された走行動作の各周期のセンサデータ(3軸方向の加速度データ)を、各周期の時間を同じ時間にするように正規化し、この1周期の期間を例えば0〜400のサンプルポイントに分割し、各周期の同一サンプルポイントのセンサデータを平均した波形を求め、0〜399の各サンプルポイントについて各周期の検出波形と平均波形との差分を算出する。平均波形検出部146は、このような検出波形と平均波形との差分の算出処理を、センサ部110に設定されたx、y、zの各軸について実行し、
図6(d)に示すように、これらの3軸の二乗平均値を求めて、0〜399の各サンプルポイントにおける二乗平均値を合算することにより、各周期における平均波形との差分を求める。これは、各サンプルポイントにおける加速度の平均ベクトルと個別ベクトルの差分ベクトルを求め、差分ベクトルの大きさを1周期に亘って合算することに相当する。
【0070】
次いで、平均波形検出部146は、各周期の順番を上記の差分の小さい順にソートして、センサデータの検出波形の平均に必要な数の周期を抽出して、平均化処理に利用する。例えば、10波形の平均を求める場合には、ソートされた各周期の波形の先頭から10波形分を選択し、20波形の平均を求める場合には、先頭から20波形分を選択して次の平均化処理を行う。
【0071】
ここで、平均波形検出部146は、センサデータの検出波形について、左足と右足を別々に正規化して平均する。これは、例えば、左足の接地から次の左足の着地までの時間をそろえる場合、右足の接地時間にばらつきが生じると、右足の接地タイミングの近辺の波形になまりが発生するため、このような波形のなまりの影響を抑制するためである。
【0072】
センサデータの検出波形の平均化処理においては、平均波形検出部146は、まず、平均化のために選択された各検出波形の周期を求めて、これらの周期の平均値(cyc)を算出する。次いで、各周期において左足の接地から右足の接地までの時間を求めて、これらの時間の平均値(cyc_L)を算出する。次いで、各周期において右足の接地から左足の接地までの時間を求めて、上記と同様にこれらの時間の平均値(cyc_R)を算出する。
【0073】
次いで、これらの平均値に基づいて、正規化の対象となるサンプルポイントの数を次式のように求める。
左足ポイント数=round(400×cyc_L/cyc)
右足ポイント数=round(400×cyc_R/cyc)
【0074】
そして、これらのサンプルポイントを連続するように繋ぎ合わせることにより、0〜400のサンプルポイントに分割された1周期分のデータとする。例えば
図7(a)においては、左足のポイント数が197である場合の補完データの波形を示し、
図7(b)においては、右足のポイント数が203である場合の補完データの波形を示し、これらの左足と右足の補完データを連続するように繋ぎ合わせることにより、
図7(c)に示すように、0〜400のサンプルポイントからなる1周期分の平均波形が得られる。
【0075】
このように、本変形例においては、各周期のセンサデータについて右足区間と左足区間とを別々に求めた補完データを平均化することにより、接地時の検出波形の大きな変化をなまらせることなく、かつ、ノイズが除去された滑らかな波形(平均波形)を得ることができる。
【0076】
ここで、平均化処理により得られた平均波形は、周期の時間Tが既知であり、その周期を400サンプルポイントのセンサデータ(加速度データ)で表した波形である。
1サンプルポイント当たりの時間は、T/400(sec)となるので、400サンプルポイントの加速度の大きさをすべて合計したものにT/400を乗じることにより、1周期にユーザUSの身体の体重1kg分に働く力の累積値Wが求められる。
【0077】
ここで、1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力Kを求めるためには、時間Tの単位が秒(sec)であるので、上記の式(12)に示したように、力の累積値Wに60/Tを乗じることになる。したがって、力Kの値は、400サンプルポイントの加速度の大きさを足し合わせたものに、60/400を乗じることにより求めることができる。そして、上述した第1の実施形態と同様に、VO
2推定部140において、力Kに基づいて、予め取得されたユーザUS固有のK値と酸素摂取量VO
2との相関関係を参照することにより、ユーザUSの今回の走行動作における酸素摂取量VO
2を推定することができる。
【0078】
このように、本変形例においては、走行動作における1分間当たりにユーザUSの身体の体重1kg分に作用している力Kを求める際に、ランニング等の運動の特徴である動作の周期性に着目して、平均波形を利用することにより、予期しない静止や躓き、ふらつき等の、本来の周期的な動作以外の突発的な動作に影響されることなく、定常的に走行した場合と同等のフォームに起因する酸素摂取量VO
2を推定することができる。
【0079】
また、上記実施形態においては、K値と酸素摂取量VO
2との相関関係を示す回帰線の傾き及び切片の個人毎の値がメモリ部150に保存されていて、回帰線の傾き及び切片の値に基づいてK値より酸素摂取量VO
2の値を推定するとした。ここで、この回帰線の傾き及び切片の値が求められていない場合には、酸素摂取量VO
2の正確な値を推定することは困難である。しかしながら、各個人においては、体重や体型等に大きな変化がなければ、K値と酸素摂取量VO
2との間には一定の相関関係が存在していると考えることができる。そのため、K値の変動は酸素摂取量VO
2の変動に対応していると考えることができる。すなわち、K値がある割合で増加した場合は酸素摂取量VO
2も同じ割合で増加したと考えることができ、K値がある割合で減少した場合は酸素摂取量VO
2も同じ割合で減少したと考えることができる。これにより、K値の変動を求めることにより、各個人における酸素摂取量VO
2の変動を推定して、各個人の運動能力やその効率性の変動を評価することができる。
【0080】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る運動支援装置の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
図8は、第2の実施形態に係る運動支援装置に適用される構成例を示す機能ブロック図である。
図8(a)はセンサ機器の構成例を示す機能ブロック図であり、
図8(b)は外部表示機器の構成例を示す機能ブロック図である。ここで、上述した第1の実施形態と同等の構成については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0081】
上述した第1の実施形態においては、センサ機器100により、運動中のセンサデータを取得し、当該センサデータに基づいてK値及び酸素摂取量VO
2等の運動能力評価指標を算出し、外部表示機器200により、当該運動能力評価指標を含む解析結果を表示する場合について説明した。第2の実施形態においては、センサ機器100は、運動中のセンサデータを取得する機能のみを有し、外部表示機器200は当該運動中、又は、当該運動の終了後に、センサ機器100から取得したセンサデータに基づいて運動能力評価指標を算出して、解析結果を表示する機能を有している。
【0082】
本実施形態に係る運動支援装置に適用されるセンサ機器100は、例えば
図8(a)に示すように、センサ部110と、速度情報取得部120と、制御部330と、メモリ部150と、I/F部160と、電源供給部170と、を有している。ここで、センサ部110、速度情報取得部120、メモリ部150、I/F部160、電源供給部170は、上述した第1の実施形態と同等の構成及び機能を有している。
【0083】
制御部330は、所定の制御プログラムを実行することにより、センサ部110や速度情報取得部120、メモリ部150、I/F部160における各種の動作を制御する。これにより、センサ機器100は、上述した第1の実施形態に示した構成(
図2(a)参照)において、少なくとも、ランニング等の運動中に取得されたセンサデータや速度データを時間データに関連付けてメモリ部150に順次保存する機能と、I/F部160により、運動中に取得したセンサデータや速度データを外部表示機器200にそのまま出力する機能と、を有している。
【0084】
外部表示機器200は、例えば
図8(b)に示すように、操作部210と、I/F部220と、演算処理部430と、メモリ部240と、表示部250と、報知部260と、電源供給部270と、を有している。ここで、操作部210、I/F部220、メモリ部240、表示部250、報知部260及び電源供給部270は、上述した第1の実施形態と同等の構成及び機能を有している。また、演算処理部430は、上述した第1の実施形態に示した演算処理部130と同等の機能を有する、地軸推定部432と、接地検出部434と、周期検出部436と、K値計算部438と、VO
2推定部440と、を有している。
【0085】
演算処理部430は、所定の制御プログラムを実行することにより、上述した第1の実施形態と同様に、表示部250における表示動作や、報知部260における報知動作、メモリ部240における各種データ等の保存及び読出し動作、I/F部220におけるセンサ機器100からのセンサデータや速度データ等の取り込み動作等の、外部表示機器200全体の動作を制御する。また、演算処理部430は、所定のアルゴリズムプログラムを実行することにより、センサ部110から出力されたセンサデータや速度データに基づいて、運動中のユーザUSの運動能力評価指標(K値、酸素摂取量VO
2)を含む、運動状態に関する各種の解析データを算出又は推定する処理を実行する。
【0086】
すなわち、本実施形態においては、センサ機器100は、データロガーとしての機能を有し、外部表示機器200は、センサ機器100から出力されたセンサデータに基づいて、K値や酸素摂取量VO
2等の運動能力評価指標を算出して、解析結果を表示部250に表示する機能を有している。
【0087】
これにより、本実施形態によれば、センサ機器100における処理負担が大幅に軽減されるので、装置を小型化したりバッテリによる駆動時間を長くしたりすることができる。また、センサ機器100に比較して処理能力の高い演算処理装置を備えた外部表示機器200により運動能力評価指標の算出処理や解析結果の表示動作を行うことができるので、演算処理を高速化することができる。
【0088】
なお、本実施形態においては、外部表示機器200がセンサ機器100から出力されたセンサデータ等に基づいて、運動能力評価指標を算出し、解析結果を表示する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、外部表示機器200として、運動中にユーザが携帯又は装着するスマートフォンやリスト機器等を適用する場合には、外部表示機器200は、例えばI/F部220を介してセンサ機器100との間で双方向の無線通信を行うことにより、操作部210における操作に応じて、センサ機器100における各種の動作(センシング動作の開始又は終了、センサデータ等の出力又は停止等)を制御する機能を有しているものであってもよい。
【0089】
また、本実施形態においては、外部表示機器200の演算処理部430が、上述した第1の実施形態に示した、センサ機器100の演算処理部130に対応した構成(
図2(a)参照)を有する場合について説明したが、上述した第1の実施形態の変形例に示した、センサ機器100の演算処理部130に対応した構成(
図5参照)を有するものであってもよい。
【0090】
(解析結果の表示例)
次に、上述した各実施形態に示した運動支援装置において、外部表示機器200の表示部250に表示される解析結果の例について、図面を参照して具体的に説明する。
図9〜
図17は、本発明に係る運動支援装置における解析結果の表示例を示す図である。
【0091】
図9、
図10は、実際のレースにおいて取得されたセンサデータ及び速度データに基づいて算出又は推定された、走行速度に対するK値及び酸素摂取量VO
2、ピッチ、上下動、スライド身長比の変化を示す解析結果である。ここで、
図9、
図10中の「Standard protocol」は、事前の練習において走行速度を変えて7本走行した際に取得したセンサデータに基づいて算出された運動能力評価指標(K値、酸素摂取量VO
2)の速度変化を示す特性線である。また、
図11〜
図13は、実際のレースにおいて取得されたセンサデータ及び速度データに基づいて算出又は推定された、走行距離に対する走行速度、ピッチ、上下動の変化を示す解析結果である。
【0092】
これらの解析結果の表示例によれば、今回のレースでは走行時のフォームが悪く、
図9に示すように、酸素摂取量VO
2(又はK値)が、練習時(Standard protocol)に比較して大きくなっていたことが分かる。
【0093】
そこで、このような結果となった原因を探るために、関連指標として、ピッチ、上下動、スライド身長比の走行速度に対する変化を具体的に見ると、
図10(a)〜(c)に示すように、どの解析結果も練習時(Standard protocol)と異なった傾向を示しているが、
図10(a)に示す走行速度に対するピッチの変化が、走行速度に対する酸素摂取量VO
2(又はK値)の変化と比較的似ていることがわかる。
【0094】
また、
図11〜
図13に示すように、酸素摂取量VO
2(又はK値)は、レース時の走行速度、上下動の変化とは相関が低いが、一方、ピッチに対しては同じような変化傾向を示している(相関が高い)ことがわかる。
したがって、今回のレースでの結果は、普段よりピッチが大きくなったことが主要因と推測される。
【0095】
図14〜
図16は、月日の異なる練習において取得されたセンサデータ及び速度データに基づいて算出又は推定された、走行速度に対するK値及び酸素摂取量VO
2の変化を示す解析結果である。ここで、
図14〜
図16に示された解析結果は、上述した
図3(a)に示したK値と酸素摂取量VO
2との相関関係が得られたユーザUSと同一人物によるものである。ここで、
図3(a)に示された回帰線の式は、次式のように表される。
Y=4.26X+584.69
Y:K(N/kg/min)
X:VO
2(ml/kg/min)
【0096】
これに基づいて、YからXを求める計算は、次式のように表される。
X=0.23Y−137.34
この式のYに
図14のグラフのK値を当てはめることにより、
図15のグラフに示す走行速度に対する酸素摂取量VO
2の変化を示す解析結果に換算される。
【0097】
これらの解析結果の表示例によれば、
図14、
図15に示すように、2015年10月31日の練習時に比較して、2015年12月19日の練習時のK値及び酸素摂取量VO
2が低くなっていることがわかる。また、2016年5月5日の練習時のK値及び酸素摂取量VO
2は2015年12月19日の練習時に比較して、低速域では変化が無いものの、高速域で低くなっていることがわかる。このことから、練習の成果によりフォームが良くなっているものと推測される。
【0098】
さらに、
図16に示すように、実際のレース時に使用する、5.4m/s〜6.2m/sの速度を一定に保持して比較した場合においても、2015年10月31日の練習時に比較して、2015年12月19日の練習時の酸素摂取量VO
2が低くなっていることがわかる。また、2016年5月5日の練習時の酸素摂取量VO
2は低速域では変化が無いものの、高速域で低くなっていることがわかる。このことからも、練習の成果によりフォームが良くなっているものと推測される。
【0099】
図17は、外部表示機器として、リスト機器を適用した場合のアラーム通知の表示例である。この表示例においては、例えば
図17(a)に示すように、例えば実際のレース中に取得されたセンサデータ及び速度データに基づいて算出又は推定された、スプリットや走行距離、酸素摂取量VO
2等の解析結果が、外部表示機器200であるリスト機器の表示部250に数値情報254として随時表示される。ここで、
図17(a)に示すように、数値情報254として表示される解析結果が、予め設定された基準値や許容範囲内にある場合には、数値情報254の文字サイズや背景252の発光色は初期状態(基準色は例えば緑色)に設定される。一方、
図17(b)、(c)に示すように、数値情報254として表示される解析結果が、基準値や許容範囲を逸脱した場合には、その程度に応じて数値情報254の文字サイズを大きくしたり、背景252の発光色を危険色(例えば赤色)や警告色(例えば黄色)に変更したりして、運動状態の変化や異常をユーザUSに通知する。ここで、ユーザUSへの通知方法は、表示部250における表示に加え、報知部260によりアラーム音の音量や音色を変化させたり、振動の強度やパターンを変化させたり、人体に軽度の電気ショックを与えたりしてもよい。
【0100】
なお、上述したような表示例は、一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。また、外部表示機器200への解析結果の表示は、ユーザUSが走行動作を終了した後に、取得した全てのセンサデータについて所定の演算処理を行って、解析結果を一括して表示するものであってもよいし、ユーザUSの走行動作中に、センサデータが所定の時間(例えば1周期)分以上、収集された時点で所定の演算処理を行って、ユーザが携帯又は装着しているスマートフォンやリスト機器に解析結果を随時表示するものであってもよい。
【0101】
このように、本実施形態によれば、日常の練習や実際のレースの場において取得したセンサデータ等に基づいて、走行距離や時間の経過によるK値や酸素摂取量VO
2等の運動能力評価指標を含む各種の解析データの変化を、解析結果として表示部250に表示することができるので、ユーザはその変化の傾向や特性を適切に把握して評価することができ、運動状態やフォームの改善等に役立てることができる。
また、本実施形態によれば、表示された解析結果が、所定の基準値や許容範囲に対して逸脱している程度に応じて報知情報を出力することができるので、解析結果の変化や異常を迅速かつ確実に把握して、運動状態やフォームの改善等に役立てることができる。
【0102】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0103】
(付記)
[1]
移動動作中の利用者の身体の動作状態に対応するセンサデータを出力するセンサ部と、
前記センサデータに基づいて前記利用者の単位時間当たりの酸素摂取量を推定する演算処理部と、
を備え、
演算処理部は、
前記センサデータに基づいて、前記利用者の身体の単位重さ分に作用している力の前記単位時間当たりの平均値を単位動作力として算出し、
前記単位動作力と前記酸素摂取量との前記利用者に固有の相関関係に基づいて、前記酸素摂取量を推定することを特徴とする運動支援装置。
【0104】
[2]
演算処理部は、
前記センサデータに基づいて、前記利用者の前記移動動作の周期を検出し、
前記利用者の身体の単位重さ分に作用している力の前記周期の期間に亘る累積値を算出し、
前記累積値に基づいて前記単位動作力を算出することを特徴とする[1]に記載の運動支援装置。
【0105】
[3]
前記演算処理部において、前記酸素摂取量は前記単位動作力の一次関数とされ、複数の利用者における前記一次関数の係数が互いに異なっており、
前記演算処理部は、特定の前記利用者における前記一次関数の特定の係数を記憶しており、前記特定の利用者の前記酸素摂取量を推定するときに、前記特定の係数を用いて前記特定の利用者の前記酸素摂取量を推定することを特徴とする[1]又は[2]に記載の運動支援装置。
【0106】
[4]
前記センサ部は、前記移動動作において前記身体に加わる加速度を検出して加速度データとして出力する加速度センサと、前記移動動作において前記身体に加わる角速度を検出して角速度データとして出力するジャイロセンサと、を有し、
前記演算処理部は、前記加速度データ及び前記角速度データのいずれかに基づいて、前記移動動作の周期を検出することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の運動支援装置。
【0107】
[5]
前記センサ部は、前記利用者の前記移動動作に対して、前記利用者の胴体の動きに対応した動きをする人体の部位に密着して装着されることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の運動支援装置。
【0108】
[6]
前記演算処理部は、
前記移動動作における前記利用者の一方の足の接地タイミングの間隔を一周期とし、複数の周期における前記センサデータの波形を平均した平均波形を算出し、
前記一方の足の接地タイミングから他方の足の接地タイミングまでの期間について、複数の前記センサデータの波形を平均した第1の波形を算出し、
前記他方の足の接地タイミングから前記一方の足の接地タイミングまでの期間について、複数のセンサデータの波形を平均した第2の波形を算出し、
前記平均波形に基づいて前記第1の波形及び前記第2の波形を正規化して、前記正規化された前記第1の波形及び前記第2の波形を、時間が連続するように繋ぎ合わせることにより、前記移動動作における正規化された一周期の平均波形を生成して、前記周期を検出し、
前記正規化された平均波形の周期に基づいて、前記動作力を算出することを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の運動支援装置。
【0109】
[7]
前記酸素摂取量を運動能力評価指標として含む解析結果を、所定の表示形態で表示する表示部を、さらに備えることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の運動支援装置。
【0110】
[8]
移動動作中の利用者の身体の動作状態に対応するセンサデータを出力するセンサ部と、
前記センサデータに基づいて前記利用者の単位時間当たりの酸素摂取量の変動を推定する演算処理部と、
を備え、
演算処理部は、
前記センサデータに基づいて、前記利用者の身体の単位重さ分に作用している力の前記単位時間当たりの平均値を単位動作力として算出し、
前記単位動作力の変動に応じて前記酸素摂取量の変動を推定することを特徴とする運動支援装置。
【0111】
[9]
移動動作中の利用者の身体の動作状態に対応するセンサデータを出力するセンサ部より前記センサデータを取得するステップと、
前記センサデータに基づいて、前記利用者の身体の単位重さ分に作用している力の単位時間当たりの平均値を単位動作力として算出するステップと、
前記単位動作力と前記利用者の前記利用者の前記単位時間当たりの酸素摂取量との前記利用者に固有の相関関係に基づいて、前記利用者の前記酸素摂取量を推定するステップと、
を含むことを特徴とする運動支援方法。
【0112】
[10]
運動支援装置における運動支援プログラムであって、
前記運動支援装置は、移動動作中の利用者の身体の動作状態に対応するセンサデータを出力するセンサ部を有し、
コンピュータに、
前記センサ部より前記センサデータを取得させ、
前記センサデータに基づいて、前記利用者の身体の単位重さ分に作用している力の単位時間当たりの平均値を単位動作力として算出させ、
前記単位動作力と前記利用者の前記利用者の前記単位時間あたりの酸素摂取量との前記利用者に固有の相関関係に基づいて前記利用者の前記酸素摂取量を推定させることを特徴とする運動支援プログラム。