特許第6969788号(P6969788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969788
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】防水機能を有するカシメ構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   H02K5/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-241600(P2017-241600)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-110657(P2019-110657A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】小林 和樹
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−006089(JP,A)
【文献】 特開2017−123752(JP,A)
【文献】 米国特許第05164625(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前蓋(62)とモータケース(5)の間にコネクタ板(61)を設け、前記前蓋(62)に設けられた二又状のカシメツメ(70)を、前記コネクタ板(61)の係合突起(81)に跨いだ状態で係合させた後、前記カシメツメ(70)の端部を前記モータケース(5)の下面に沿ってL字型に曲折してカシメ処理するようにした防水機能を有するカシメ構造において、
前記前蓋(62)と前記コネクタ板(61)間には第1シール材(101)が設けられ、前記コネクタ板(61)と前記モータケース(5)間には第2シール材(102)が設けられていることにより、前記前蓋(62)と前記コネクタ板(61)と前記モータケース(5)とは、前記第1シール材(101)及び前記第2シール材(102)を介して積層され、前記カシメ処理により、前記第1シール材(101)及び前記第2シール材(102)が圧縮された状態で、前記前蓋(62)と前記コネクタ板(61)と前記モータケース(5)とが一体状となるように結合され、前記第1シール材(101)及び前記第2シール材(102)によって構成された二重冗長系の防水構造を有している構成としたことを特徴とする防水機能を有するカシメ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水機能を有するカシメ構造に関し、特に、前蓋とモータケースとの間にコネクタ板を介して、少なくとも一対のシール材を設けることにより、前蓋とモータケース間の防水を冗長系として完全に行うことである。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の防水機能を有するカシメ構造としては、例えば、特許文献1のモータの構造を挙げることができる。
すなわち、図7において符号1で示されるものはモータであり、このモータ1のモータケース5は、ハウジング3のモータ取付面3aにボルト6を介して取付けられている。
【0003】
前記モータケース5の第1軸受10と前記ハウジング3内の第2軸受12,13間にはコイル巻線15及びアーマチュア16を有するロータ8と一体の回転軸14が回転自在に設けられている。
前記モータケース5の内面には、マグネット9が配設され、図8で示されるように、前記モータケース5に当接されたホルダ4は、カシメ部45により強固に接続されている。
【0004】
また、文献名等は開示していないが、従来、用いられていたモータの他の構成の概略図を図9図11に開示することができる。
図9において、符号1で示されるものはモータであり、このモータ1のモータケース5のケースフランジ5a上には、コネクタ60を有するコネクタ板61が積層され、このコネクタ板61上には、前蓋62が積層されている。
【0005】
また、図11で示される前記前蓋62には、全周のうち四ヶ所に二又状のカシメツメ70が一体に下方に向けて突出形成されている。
【0006】
次に、図11のように、前蓋62とコネクタ板61とモータケース5のケースフランジ5aが積層され、図9のようにモータ1が組立てられた状態で、前記前蓋62の各カシメツメ70が前記コネクタ板61から水平方向に突出している係合突起81を跨いだ状態となる。
【0007】
前述の状態下で、図示しない治具を用いてカシメツメ70をL字型に曲折させてカシメ処理を行うと、カシメツメ70は図11の(A)の状態から(B)の状態となり、カシメツメ70の外面70aがモータケース5の下面5bに係合することによって、前述の前蓋62とコネクタ板61とモータケース5が一体状に積層されて、図9のように、モータ1が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−136898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のカシメ構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図7及び図8に示されている従来構成においては、モータケース5とホルダ4をカシメ部45によってカシメ処理し、ハウジング3とモータケース5とがボルト6によってシール材50を介して結合されていたため、ボルト止の部分に外部から液体等が入りやすく、モータとしての機能を維持することが極めて困難であった。
【0010】
また、図9から図11で示される従来構成においては、前蓋62とコネクタ板61とモータケース5を、前蓋62に設けたカシメツメを用いて、積層させているが、シール材が設けられていないため、金属部材間に0.1〜0.5mmの隙間が形成され、カシメツメを強力にカシメたとしても限界があった。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、前蓋とモータケースとの間に、コネクタ板を介して、少なくとも一対のシール材を設けることにより、前蓋とモータケース間の防水を完全にするようにした防水機能を有するカシメ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による防水機能を有するカシメ構造は、前蓋とモータケースの間にコネクタ板を設け、前記前蓋に設けられた二又状のカシメツメを、前記コネクタ板の係合突起に跨いだ状態で係合させた後、前記カシメツメの端部を前記モータケースの下面に沿ってL字型に曲折してカシメ処理するようにした防水機能を有するカシメ構造において、前記前蓋と前記コネクタ板間には第1シール材が設けられ、前記コネクタ板と前記モータケース間には第2シール材が設けられていることにより、前記前蓋と前記コネクタ板と前記モータケースとは、前記第1シール材及び前記第2シール材を介して積層され、前記カシメ処理により、前記第1シール材及び前記第2シール材が圧縮された状態で、前記前蓋と前記コネクタ板と前記モータケースとが一体状となるように結合され、前記第1シール材及び前記第2シール材によって構成された二重冗長系の防水構造を有している構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による防水機能を有するカシメ構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、前蓋とモータケースの間にコネクタ板を設け、前記前蓋に設けられた二又状のカシメツメを、前記コネクタ板の係合突起に跨いだ状態で係合させた後、前記カシメツメの端部を前記モータケースの下面に沿ってL字型に曲折してカシメ処理するようにした防水機能を有するカシメ構造において、前記前蓋と前記コネクタ板間には第1シール材が設けられ、前記コネクタ板と前記モータケース間には第2シール材が設けられていることにより、前記前蓋と前記コネクタ板と前記モータケースとは、前記第1シール材及び前記第2シール材を介して積層され、前記カシメ処理により、前記第1シール材及び前記第2シール材が圧縮された状態で、前記前蓋と前記コネクタ板と前記モータケースとが一体状となるように結合され、前記第1シール材及び前記第2シール材によって構成された二重冗長系の防水構造を有している構成であり、前蓋とコネクタ板間に第1シール材が設けられ、コネクタ板とモータケース間に第2シール材が設けられているため、カシメツメによるカシメ構造のみによる防水機能だけではなく、一対のシール材によるさらなる防水機能が追加されているため、防水機能の冗長系を構成することができ、モータ等の防水機能を大幅に向上させることができる。
また、従来と同一のカシメ構造の中に、一対のシール材を設けるだけで、防水機能が向上できるため、ライン装着だけではなく、現在、使用中のモータ等に対する後付けも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による防水機能を有するカシメ構造を説明するためのモータの要部の分解斜視図である。
図2図1のモータの前蓋とロータを示す分解斜視図である。
図3図1のモータ全体の分解斜視図である。
図4図2の前蓋の断面図である。
図5図1のコネクタ板を示す平面図である。
図6】本発明におけるカシメ構造を示すカシメの説明図である。
図7】従来のカシメ構造を示す断面図である。
図8図7の要部の拡大断面図である。
図9】従来のモータを示す正面図である。
図10図9のA部の拡大図である。
図11図10の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による防水機能を有するカシメ構造は、特に、前蓋とモータケースとの間にコネクタ板を介して、少なくとも一対のシール材を設けることにより、前蓋とモータケース間の防水を冗長系として完全とすることである。
【実施例】
【0016】
以下、図面と共に本発明による防水機能を有するカシメ構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1及び図2において、符号5で示されるものはモータケースであり、このモータケース5には、コネクタ60を有するコネクタ板61が設けられている。
前記モータケース5の内面には、ステータ巻線5Aを有するステータ5Bが内設されている。
【0017】
前記モータケース5の前記コネクタ板61の上部には、カシメツメ70を有する前蓋62が設けられ、この前蓋62の軸孔62Aを回転可能に貫通する回転軸62Cには、ロータ62Dが設けられている。
前記ロータ62Dは、前記ステータ5Bのステータ巻線5Aの内側に回転自在に挿入されている。
【0018】
図3の構成は、前述の図1及び図2で示したモータケース5に対して、前記コネクタ板61を介して前記前蓋62を装着させ、前記ロータ62Dが前記モータケース5内に挿入され、前記回転軸62Cが前記前蓋62から回転可能に突出している。
【0019】
図4に示されるように、前記前蓋62の四個の二又状の前記カシメツメ70は、図5のコネクタ板61の四個の係合突起と各々対応して係合できるように構成されている。
前記コネクタ板61には、前記係合突起81が形成されていない外周部100において、合計四個の舌片80eが突出形成され、各舌片80eには各貫通孔80a〜80dが形成されている。
尚、前述の各貫通孔80a〜80dは、前述の図9に示されるモータ1の完成品を装着等に取り付ける際に用いられる。
【0020】
図6の(A),(B)は、まず、(A)において、前述の図1から図3で示した前蓋62とコネクタ板61とモータケース5とを、第1シール材101及び第2シール材102を介して積層させ、各カシメツメ70が係合突起81を跨いだ状態となる。
前記第1シール材101は前蓋62とコネクタ板61の間に位置し、前記第2シール材102はコネクタ板61とモータケース5との間に位置している。
【0021】
前述の(A)の状態で、前記カシメツメ70を、図11の(A)及び(B)と同様に、カシメ治具(図示せず)によってカシメ処理を行うと、カシメツメ70がL字型に曲折され、各シール材101,102が圧縮された状態で、前蓋62とコネクタ板61とモータケース5が一体状となるように結合される。
尚、前述の前蓋62とコネクタ板61とモータケース5とは、従来の図11(A)と(B)の状態のようにシール材を用いない場合でもある程度の第1防水性を保つことができるが、本発明による各シール材101,102を用いた図6の構成により、防水性がより一層向上して完璧な第2防水性を得ることとなり、冗長系として考えると、二重冗長系の防水構造を有していると云うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明による防水機能を有するカシメ構造は、前蓋とコネクタ板とモータケースを一対のシール材を介して一体にカシメをするため、防水性が従来よりも大幅に向上し、モータを用いた装置の信頼性を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0023】
5 モータケース
5A ステータ巻線
5B ステータ
60 コネクタ
61 コネクタ板
62 前蓋
62a 前蓋フランジ
62A 軸孔
62C 回転軸
62D ロータ
70 カシメツメ
80a〜80d 貫通孔
80e 舌片
81 係合突起
100 外周部
101 第1シール材
102 第2シール材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11