(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969822
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】窓構造
(51)【国際特許分類】
E06B 7/14 20060101AFI20211111BHJP
E06B 1/36 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
E06B7/14
E06B1/36 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-168149(P2020-168149)
(22)【出願日】2020年10月5日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3214094号
【原出願日】2017年10月6日
(65)【公開番号】特開2020-204266(P2020-204266A)
(43)【公開日】2020年12月24日
【審査請求日】2020年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】505016609
【氏名又は名称】株式会社東京組
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】中野渡 利八郎
【審査官】
野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07367164(US,B2)
【文献】
米国特許第01368444(US,A)
【文献】
米国特許第01945816(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0212962(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/14
E06B 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の柱の間に配置される窓枠と、
前記窓枠を支持する窓台と、を備えた窓構造であって、
前記窓台は、
前記窓枠を支える支持板と、
前記支持板の上面に設けられ、窓の奥行き方向に延在する上面溝部と、を有し、
前記窓台によって前記窓枠を支持した状態で、前記窓枠の縦枠における外側面の下方延長上および前記柱における内側面の下方延長上の少なくともいずれかに前記上面溝部が配置され、
前記支持板の下面における出先部分には、窓の幅方向に延在する下面溝部が設けられた、窓構造。
【請求項2】
前記支持板の前記上面には、複数本の前記上面溝部が互いに平行に設けられた、請求項1記載の窓構造。
【請求項3】
前記支持板の前記上面には、前記複数本の上面溝部を互いに連通させる連通溝部が設けられた、請求項2記載の窓構造。
【請求項4】
前記支持板は、前記一対の柱に設けられた切り欠き部分に挿入される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の窓構造。
【請求項5】
前記支持板の上面および下面のそれぞれは、屋内側から屋外側に向けて下がるよう傾斜して設けられた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の窓構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓枠および窓枠を支持する窓台を備えた窓構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の躯体に窓を取り付ける場合、管柱、まぐさおよび窓台で構成される開口に窓枠を取り付けるようにしている。窓枠の取り付けにおいては、躯体と窓枠との間の防水性、気密性を保つことが重要である。この防水性、気密性を保つため、窓枠と躯体との間にシリコーン樹脂などのシール材を充填している。
【0003】
特許文献1には、建物の外壁における開口周縁部にサッシ枠を取り付けたときのサッシ枠の外壁面に対する傾きを抑えつつ、開口周縁部にサッシ枠を取り付ける作業に対する強度を確保することができるサッシ用防水部材が開示される。
【0004】
特許文献2には、木造住宅の長寿命化に対応したサッシ窓が開示される。このサッシ窓では、サッシ枠が容易に取り替え可能であるとともに、水密性がよくて外観の意匠性もよく、また施工性にも優れている。
【0005】
特許文献3には、住宅等の建築物における窓や扉の開口部において、窓枠やドア枠等の枠体周辺で生じる結露を確実に排水し、まぐさや窓台等の窓枠周辺で、木材が腐敗したり、カビが発生したりするのを防止する窓枠取り付け構造が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−234543号公報
【特許文献2】特開2010−248765号公報
【特許文献3】特開2006−322246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
窓枠に結露や水滴など(以下、「水滴等」とも言う。)が付着した場合、水滴等は窓枠の縦枠における外側面に沿って下に垂れやすい。この水滴等は窓枠を支える窓台に達し、窓台の縁から外壁に沿って垂れると水垢によるシミの原因となる。
【0008】
本発明の目的は、水滴等が窓台の縁から壁に沿って垂れることを抑制して水垢によるシミの発生を抑制できる窓構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、一対の柱の間に配置される窓枠と、窓枠を支持する窓台と、を備えた窓構造である。この窓構造における窓台は、窓枠を支える支持板と、支持板の上面に設けられ、窓の奥行き方向に延在する上面溝部と、を有し、窓台によって窓枠を支持した状態で、窓枠の縦枠における外側面の下方延長上および前記柱における内側面の下方延長上の少なくともいずれかに上面溝部が配置される。
【0010】
このような構成によれば、窓枠の縦枠における外側面または管柱等の柱における内側面に沿って水滴等が垂れた場合、その水滴等は下方の窓台の上面溝部に入り、上面溝部を伝って出先部分(屋外)の方向へ流れていく。これにより、水滴等が窓台の横から壁に伝わり垂れることを抑制することができる。
【0011】
上記窓構造において、支持板の上面には、複数本の上面溝部が互いに平行に設けられていてもよい。複数本の上面溝部が窓枠の左右に対応して設けられている場合には、窓枠の左右側において垂れる水滴等を上面溝部で捕獲することができる。また、複数本の上面溝部が窓枠の左右一方側に設けられている場合には、複数本の上面溝部によってより確実に水滴等を捕獲することができる。
【0012】
上記窓構造において、支持板の上面には、複数本の上面溝部を互いに連通させる連通溝部が設けられていてもよい。これにより、複数本の上面溝部が連通溝部によって連通するため、それぞれの上面溝部で捕獲した水滴等を連通溝部によって複数本の上面溝部へ分散させながら流すことができる。
【0013】
上記窓構造において、支持板の下面における出先部分には、窓の幅方向に延在する下面溝部が設けられていてもよい。これにより、支持板の下面に沿って流れる水滴等が下面溝部で捕獲されるため、水滴等が窓台の下面に回り込み、壁に伝わることを抑制することができる。
【0014】
上記窓構造において、支持板の上面および下面のそれぞれは、屋内側から屋外側に向けて下がるよう傾斜して設けられていてもよい。これにより、支持板の上面溝部で捕獲された水滴等や、支持板の上下面に付着した水滴等を積極的に屋外へ流すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水滴等が窓台の縁から壁に沿って垂れることを抑制して水垢によるシミの発生を抑制できる窓構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る窓構造を例示する模式斜視図である。
【
図2】(a)および(b)は、窓台を例示する斜視図である。
【
図3】(a)および(b)は、本実施形態に係る窓構造を例示する模式図である。
【
図4】窓枠および柱と上面溝部との位置関係を例示する部分斜視図である。
【
図5】窓枠および柱と上面溝部との位置関係を例示する部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る窓構造を例示する模式斜視図である。
なお、説明の都合上、建物の外壁、断熱材、内装材などは図示を省略している。
図1に示すように、本実施形態に係る窓構造1は、一対の柱2の間に配置される窓枠10と、窓枠10を支持する窓台20とを備える。一対の柱2は例えば管柱である。一対の柱2の間には横方向にまぐさ3が渡され、下方に窓台20が渡されている。
【0019】
窓枠10は縦枠11および横枠12によって矩形状に組まれている。窓枠10には、アルミニウム、木材、樹脂、またはこれらの複合材が用いられる。窓枠10は、一対の柱2、まぐさ3および窓台20によって構成される矩形状の開口に嵌め込まれる。例えば、窓枠10は窓台20の上に載せられた状態で、縦枠11が柱2に固定され、上側の横枠12がまぐさ3に固定される。
【0020】
窓台20は、窓枠10の下側を支える板状の支持板21を備える。支持板21は窓枠10の幅よりもわずかに広い幅と、窓枠10の奥行きよりも長い奥行きとを有する。支持板21には、玄晶石や御影石などの石材や、杉などの木材を板状物にしたものが用いられる。本実施形態では、支持板21は一対の柱2に設けられた切り欠き部分に挿入され、柱2の所定の高さに配置されている。支持板21は屋外側に突出する出先部分201を有する。出先部分201は、柱2よりも屋外側に出っ張る部分である。
【0021】
支持板21の上面21aには、窓の奥行き方向に延在する上面溝部210が設けられる。上面溝部210は、支持板21の上面21aにおける屋内側の途中から屋外側の端部まで直線的に設けられた溝である。上面21aには複数本の上面溝部210が互いに平行に設けられていてもよい。本実施形態では、左右にそれぞれ3本(計6本)の上面溝部210が設けられる。上面溝部210の幅は約5mm、深さは約5mm、隣り合う上面溝部210との間は約8mmである。なお、上記寸法はこれ以外の場合もあり得る。
【0022】
複数の上面溝部210が設けられている場合、これらの上面溝部210を互いに連通させる連通溝部220を設けてもよい。連通溝部220は、支持板21の上面21aにおける窓の幅方向に延在し、各上面溝部210の屋内側の端部を繋げるように設けられる。連通溝部220の幅は約5mm〜10mm、深さは約5mmである。なお、上記寸法はこれ以外の場合もあり得る。
【0023】
本実施形態にかかる窓構造1において、窓台20によって窓枠10を支持した状態で、窓枠10の縦枠11における外側面11sの下方延長上および柱2における内側面2sの下方延長上の少なくともいずれかに上面溝部210が配置されるようになっている。本実施形態では、縦枠11の外側面11sおよび柱2の内側面2sのいずれについてもその下方延長上に上面溝部210が配置されている。言い換えると、上面溝部210の上に窓枠10の縦枠11の外側面11sが位置し、上面溝部210の上に柱2の内側面2sが位置するようになっている。
【0024】
複数本の上面溝部210が設けられている場合、同じ(1本)の上面溝部210の上に縦枠11の外側面11sと柱2の内側面2sとが位置していてもよいし、異なる上面溝部210のそれぞれの上に縦枠11の外側面11sと柱2の内側面2sとが位置していてもよい。また、左右の縦枠11の外側面11sおよび左右の柱2の内側面2sのそれぞれについて上面溝部210の上に配置されていてもよい。
【0025】
このように、上面溝部210の上に縦枠11の外側面11sや柱2の内側面2sが位置していることで、窓枠10の縦枠11や柱2の内側面2sに沿って水滴等が垂れた場合、その水滴等が下方の窓台20の上面溝部210に入り、上面溝部210を伝って出先部分201(屋外)の方向へ流れていく。これにより、水滴等が窓台20の横から壁に伝わることを抑制することができる。
【0026】
建物において、窓枠10や柱2に結露や水滴などの水分が付着すると、水滴等は窓枠10の縦枠11における外側面11sや、柱2の内側面2sに沿って下方に垂れていく。この水滴等が窓台20に達した場合、通常では窓台20の縁から外壁に沿って垂れることになる。これが外壁に付着して水垢によるシミの原因となる。
【0027】
本実施形態に係る窓台20を用いることで、窓枠10に付着した水滴等は窓台20の上面溝部210に沿って出先部分201から屋外へ排出され、窓台20の縁から壁に沿って垂れることを抑制できる。これにより、水垢によるシミの発生を抑制することができる。
【0028】
図2(a)および(b)は、窓台を例示する斜視図である。
図2(a)には上面21a側からみた斜視図が示され、
図2(b)には下面21b側からみた斜視図が示される。
図2(a)に示すように、本実施形態で適用される窓台20の支持板21の上面21aには、左右それぞれに3本の上面溝部210が設けられている。また、これらの上面溝部210が連通溝部220によって連通される。窓枠10の縦枠11に沿って垂れる水滴等は上面溝部210に入り込み、出先部分201から屋外に排出される。また、窓枠10に沿って連通溝部220に入った水滴等も連通溝部220からいずれかの上面溝部210に分散しながら入り込み、出先部分201から屋外に排出される。
【0029】
さらに、出先部分201が屋外に出っ張っており、ここに雨水等がかかった場合でも、雨水等が上面溝部210に捕獲され出先部分201の方向へ流れていく。これにより、雨水等がかかっても、窓台20の横(脇の部分)へ流れることを抑制でき、窓台20の横(脇の部分)から壁に沿って垂れることを抑制できる。
【0030】
また、
図2(b)に示すように、支持板21の下面21bには、窓の幅方向に延在する下面溝部230が設けられていてもよい。下面溝部230は支持板21の幅方向に渡り直線状に設けられた溝である。下面溝部230は出先部分201に設けられる。これにより、支持板21の下面21bに沿って流れる水滴等が下面溝部230で捕獲される。例えば、上面溝部210の屋外側から排出される水滴等が支持板21の下面21bに回り込んだ場合でも、下面溝部230で捕獲されて壁側まで達しない。これにより、水滴等が下面21bに回り込んで壁に伝わることを抑制することができる。
【0031】
図3(a)および(b)は、本実施形態に係る窓構造を例示する模式図である。
図3(a)には正面図が示され、
図3(b)には
図3(a)のA−A線断面図が示される。
図3(a)に示すように、本実施形態に係る窓構造1においては、窓枠10の縦枠11における外側面11sの下方延長上に上面溝部210が配置される。また、柱2の内側面2sの下方延長上にも上面溝部210が配置される。
【0032】
複数本の上面溝部210が設けられていることで、施工の際に窓台20と窓枠10との相対的な位置が多少ずれたり、相対的な位置関係の調整が必要になったりした場合でも、いずれかの上面溝部210の上に外側面11sや内側面2sを配置することができる。また、複数本の上面溝部210が設けられることで、縦枠11の正面11fの下方延長上や柱2の正面2fの下方延長上にも上面溝部210が配置されることになる。これにより、縦枠11の正面11fや柱2の正面2fに沿って垂れる水滴等があっても、上面溝部210で受けて屋外へ排出できるようになる。
【0033】
図4は、窓枠および柱と上面溝部との位置関係を例示する部分斜視図である。
図5は、窓枠および柱と上面溝部との位置関係を例示する部分平面図である。
図6は、窓台部分の模式断面図である。
図6には、
図5のB−B線断面図が示される。
図4〜
図6に示す窓構造1の例では、左右の片側に3本の上面溝部210が設けられ、このうち中央の上面溝部210の上に、窓枠10の縦枠11における外側面11sおよび柱2の内側面2sが位置している。
【0034】
また、窓枠10の下側の横枠12の下方に連通溝部220が位置している。
図6に示すように、窓台20の支持板21における上面21aおよび下面21bのそれぞれは、屋内側から屋外側に向けて下がるように傾斜していることが望ましい。本実施形態では、上面21aおよび下面21bのそれぞれに角度θの傾斜が設けられている。この傾斜により、支持板21の上面溝部210で捕獲された水滴等や、支持板21の上下面(上面溝部210以外)に付着した水滴等を積極的に屋外へ流すことができる。また、下面21bに付着した水滴等は出先部分201に積極的に流れていき、下面溝部230で捕獲されることになる。
【0035】
ここで、支持板21の上面21aの全体に角度θの傾斜が設けられている場合、窓枠10の下面と支持板21の上面21aとの間に隙間が生じやすい。ここには図示しないシール材が埋め込まれているが、隙間から水滴等が染み込む可能性がある。しかし、本実施形態のように窓枠10の下方に連通溝部220が配置されていることによって、隙間から水滴等が染み込んだとしても連通溝部220で捕獲され、室内側に入り込むことを効果的に抑制することができる。連通溝部220で捕獲された水滴等は、上面溝部210に伝わり、傾斜によって積極的に出先部分201へ流れていき、出先部分201から屋外へと排出される。
【0036】
以上説明したように、実施形態に係る窓構造1によれば、水滴等が窓台20の縁から壁に沿って垂れることを抑制して、水垢によるシミの発生を抑制することができる。
【0037】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0038】
1…窓構造
2…柱
2f…正面
2s…内側面
10…窓枠
11…縦枠
11f…正面
11s…外側面
12…横枠
20…窓台
21…支持板
21a…上面
21b…下面
201…出先部分
210…上面溝部
220…連通溝部
230…下面溝部
θ…角度