特許第6969827号(P6969827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969827
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】水素ガス生成装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/06 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   C01B3/06
【請求項の数】24
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-507976(P2020-507976)
(86)(22)【出願日】2017年4月22日
(65)【公表番号】特表2020-517577(P2020-517577A)
(43)【公表日】2020年6月18日
(86)【国際出願番号】MY2017050019
(87)【国際公開番号】WO2018194442
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2020年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】519373578
【氏名又は名称】ハイドロジェン テック センディリアン ベルハッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チア,チン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】イー,ヨーク キーン
(72)【発明者】
【氏名】ウン,アルバート,コック フー
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/023535(WO,A2)
【文献】 特開2009−099534(JP,A)
【文献】 特開2009−023857(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/025591(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0175868(US,A1)
【文献】 米国特許第05702491(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0110974(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0027668(US,A1)
【文献】 特表2005−521626(JP,A)
【文献】 特開2013−010687(JP,A)
【文献】 特開2011−121856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス生成装置であって、
反応室(10)と、
固体水素化物である第1の反応物を収容する第1の反応物貯蔵部(20)と、
第2の反応物を収容する第2の反応物貯蔵部(30)と、
前記第1の反応物を前記反応室(10)内に注入する第1の反応物注入手段(25)と、
前記第2の反応物を前記反応室(10)内に注入する第2の反応物注入手段(35)と、
生成された水素ガスを貯蔵するバッファタンク(80)であって、該バッファタンク(80)の内圧を測定する圧力センサ(81)を備えるバッファタンク(80)と、を備え、
前記第1の反応物および第2の反応物が前記反応室(10)に注入されて化学反応が開始されることにより、水素ガスが生成され、
前記反応室(10)内への前記第1の反応物の前記注入、および前記反応室(10)内への前記第2の反応物の前記注入の最適な速度の算出に用いられる、前記反応室(10)内の温度および圧力を測定する手段と、
前記反応室(10)内への前記第1の反応物の前記注入、および前記反応室(10)内への前記第2の反応物の前記注入の最適な速度を、前記測定されたバッファタンク(80)の内圧に基づいて算出する手段と、
前記第1の反応物および前記第2の反応物が前記反応室(10)内に注入される速度を制御する手段と、
を備え、
第1の反応物および第2の反応物の注入の前記最適な速度により、水素ガスの生成が最適となる、水素ガス生成装置。
【請求項2】
前記第1の反応物は化学的水素化物である、請求項1に記載の水素ガス生成装置。
【請求項3】
前記第1の反応物は化学的水素化物と触媒との混合物を含む予混合化学物質である、請求項1に記載の水素ガス生成装置。
【請求項4】
前記反応室(10)に対する前記第1の反応物注入手段(25)はポンプ型インジェクタである、請求項2に記載の水素ガス生成装置。
【請求項5】
前記反応室(10)に対する前記第1の反応物注入手段(25)はスクリュー型フィーダである、請求項2に記載の水素ガス生成装置。
【請求項6】
前記反応室(10)に対する前記第1の反応物注入手段(25)は機械的アクチュエータである、請求項2に記載の水素ガス生成装置。
【請求項7】
前記第2の反応物は水である、請求項1に記載の水素ガス生成装置。
【請求項8】
前記第2の反応物が水蒸気である、請求項7に記載の水素ガス生成装置。
【請求項9】
前記第2の反応物注入手段はノズル付きポンプである、請求項に記載の水素ガス生成装置。
【請求項10】
水素ガス生成装置であって、
反応室(10)と、
固体水素化物である第1の反応物を収容する第1の反応物貯蔵部(20)と、
第2の反応物を収容する第2の反応物貯蔵部(30)と、
第3の反応物を収容する第3の反応物貯蔵部(40)と、
前記第1の反応物を前記反応室(10)内に注入する第1の反応物注入手段(25)と、
前記第2の反応物を前記反応室(10)内に注入する第2の反応物注入手段(35)と、
前記第3の反応物を前記反応室(10)内に注入する第3の反応物注入手段(45)と、を備え、
前記第1の反応物、第2の反応物、および第3の反応物が前記反応室(10)に注入されて化学反応が開始されることにより、水素ガスが生成され、
前記反応室(10)内への前記第1の反応物の前記注入、前記反応室(10)内への前記第2の反応物の前記注入、および前記反応室(10)内への前記第3の反応物の前記注入の最適な速度の算出に用いられる、前記反応室(10)内の温度および圧力を測定する手段と、
生成された水素ガスを貯蔵するバッファタンク(80)であって、該バッファタンク(80)の内圧を測定する圧力センサ(81)を備えるバッファタンク(80)と、
前記反応室(10)内への前記第1の反応物の注入、前記反応室(10)内への前記第2の反応物の注入、および前記反応室(10)内への前記第3の反応物の注入の最適な速度を、前記測定されたバッファタンク(80)の内圧に基づいて算出する手段と、
前記第1の反応物、前記第2の反応物および前記第3の反応物が前記反応室(10)内に注入される速度を制御する手段と、
を備え、
第1の反応物、第2の反応物、および第3の反応物の注入の前記最適な速度により、水素ガスの生成が最適となる、水素ガス生成装置。
【請求項11】
前記第1の反応物は化学的水素化物である、請求項10に記載の水素ガス生成装置。
【請求項12】
前記反応室(10)に対する前記第1の反応物注入手段(25)はポンプ型インジェクタである、請求項10に記載の水素ガス生成装置。
【請求項13】
前記反応室(10)に対する前記第1の反応物注入手段(25)はスクリュー型フィーダである、請求項11に記載の水素ガス生成装置。
【請求項14】
前記反応室(10)に対する前記第1の反応物注入手段(25)は機械的アクチュエータである、請求項11に記載の水素ガス生成装置。
【請求項15】
前記第2の反応物は触媒である、請求項10に記載の水素ガス生成装置。
【請求項16】
前記第3の反応物は水である、請求項10に記載の水素ガス生成装置。
【請求項17】
前記第3の反応物は水蒸気である、請求項16に記載の水素ガス生成装置。
【請求項18】
前記水蒸気を前記反応室(10)内に注入する前記手段はノズル付きポンプである、請求項17に記載の水素ガス生成装置。
【請求項19】
水素ガス生成装置であって、
反応室(10)と、
固体水素化物である第1の反応物を収容する第1の反応物貯蔵部(20)と、
第2の反応物を収容する第2の反応物貯蔵部(30)と、
第3の反応物を収容する第3の反応物貯蔵部(40)と、
前記第1の反応物と前記第2の反応物とを混合する混合ユニット(250)と、
前記第3の反応物を前記反応室(10)内に注入する第3の反応物注入手段(45)と、を備え、
前記第1の反応物、第2の反応物、および第3の反応物が前記反応室(10)に注入されて化学反応が開始されることにより、水素ガスが生成され、
前記第1の反応物と前記第2の反応物との最適な混合速度の算出に用いられる、前記反応室(10)内の温度および圧力を測定する手段と、
生成された水素ガスを貯蔵するバッファタンク(80)であって、該バッファタンク(80)の内圧を測定する圧力センサ(81)を備えるバッファタンク(80)と、
第1の反応物と第2の反応物との前記混合、および前記反応室(10)内への前記第3の反応物の前記注入の最適な速度を、前記測定されたバッファタンク(80)の内圧に基づいて算出する手段と、
前記第1の反応物と前記第2の反応物とが混合される速度、および、前記第3の反応物が前記反応室(10)内に注入される速度を制御する手段と、
を備え、
前記第1の反応物と前記第2の反応物との前記最適な混合速度、および、前記第3の反応物の注入速度により、水素ガスの生成が最適となる、水素ガス生成装置。
【請求項20】
前記第1の反応物は化学的水素化物である、請求項19に記載の水素ガス生成装置。
【請求項21】
前記第2の反応物は触媒である、請求項19に記載の水素ガス生成装置。
【請求項22】
前記第3の反応物は水である、請求項19に記載の水素ガス生成装置。
【請求項23】
前記第3の反応物は水蒸気である、請求項22に記載の水素ガス生成装置。
【請求項24】
前記第3の反応物を前記反応室(10)内に注入する前記手段はノズル付きポンプである、請求項22に記載の水素ガス生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に水素ガス生成装置および水素ガス生成方法に関し、より具体的には、反応室内への反応物の注入を制御して水素ガスを生成させる装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電システムは、水素と空気との反応により発電を行い、安定した電力供給を必要とする車両、機械、その他の装置等に電力を供給することができる。一般的に、原料水素は使用現場で貯蔵されることになるが、それには煩雑且つ高価な加圧タンクが必要となる。また、加圧タンクを車両またはその他の移動機械へ利用する場合、貯蔵タンクの余分な重量および貯蔵タンクに必要な空間の確保が問題となる。この問題に対する1つの解決策は、燃料電池近傍のその場で水素ガスを生成して、水素ガスの貯蔵を最小限しか必要としない、あるいはまったく必要としないようにすることである。
【0003】
水素ガスは、化学的水素化物などの原料物質から水素ガスを分離する化学反応により生成することができる。化学的水素化物は、水素ガスに比べて遥かに安全に貯蔵できる。水素化物から水素ガスを生成する様々な解決策が存在するが、これら解決策の大部分は一定量の化学的水素化物を含む何らかの反応室を使用している。そして水などの液体をこの反応室内に注入し、その後の化学反応により水素ガスを生成する。
【0004】
しかし、これらの水素ガス生成システムでは、化学的水素化物の燃料を使い果たした後、ほとんどの場合、反応室を除去しなければならない問題がある。その後、反応室は化学的水素化物が再充填され、再利用される場合がある。しかしながら、高価な反応室を再利用することができず、廃棄される場合もある。いずれの場合においても、空の反応室を満杯の反応室と交換することは手間で退屈であり得る。
【0005】
別の公知の解決策では、反応室を取り外さず、その場で反応物を充填する。しかし、これにも固有の諸問題があり、そのうち最大の問題は、反応室に反応物を充填する困難さおよび充填の所要時間である。時間という要素は、乗用車のような用途に特に関係している。再充填ステーションで数分より長く待つようでは、一般的にそうした用途は不可能である。
【0006】
また、上記の全ての解決策に共通する問題は、化学反応を細かく制御することが難しいということである。反応室の幾何学的形状によっては、化学的水素化物はその枯渇につれて嵩が変化するため、反応速度の制御が困難になり、それにより水素ガス生成量の制御が困難になる。また、反応速度の正確な制御は、最適な化学反応および効率的な水素ガス生成を達成する上で重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2つ以上の反応物間の化学反応を利用する水素ガス生成装置では、反応室に反応物を連続的に補充する必要がある。
【0008】
2つ以上の反応物間の化学反応を利用する水素ガス生成装置では、反応室は反応物を貯蔵するための体積が制限される。
【0009】
2つ以上の反応物間の化学反応を利用する水素ガス生成装置では、予充填された反応室は、水素を効率的に生成するための容積および幾何的形状が制限される。
【0010】
2つ以上の反応物間の化学反応を利用する水素ガス生成装置では、高価な反応室を維持する必要がある。
【0011】
2つ以上の反応物間の化学反応を利用する水素ガス生成装置では、水素ガスが効率的に生成されるように反応速度を細くかつ正確に制御する必要がある。
【0012】
モバイル燃料電池用途では、水素ガスの貯蔵は、容量が限られるために嵩張りやすく、危険となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した欠点を克服するために、本発明は、反応物またはその混合物がそれぞれ格納される2つ以上の貯蔵部を有する水素ガス生成装置であって、各貯蔵部は、水素ガスを効率的に生成する化学反応が反応室内で起こるよう、前記貯蔵された反応物またはその混合物を制御された方法にて最適な速度で反応室内に注入する手段と連結されている、水素ガス生成装置を提供する。
【0014】
したがって、本発明は、水素ガスを生成する化学反応に必要な様々な原料反応物を反応室の外部に貯蔵し、水素ガスが効率的に生成されるように制御下でこれらの材料を最適な速度で反応室内に注入する構成に関する。
【0015】
また、本発明は、水素ガス生成装置であって、反応室と、第1の反応物を含有する第1の反応物貯蔵部と、第2の反応物を含有する第2の反応物貯蔵部と、前記第1の反応物を前記反応室に注入する手段と、前記第2の反応物を前記反応室に注入する手段と、前記生成された水素ガスを貯蔵するバッファタンクであって、該バッファタンクの内圧を測定する圧力センサを備えるバッファタンクと、前記反応室内への前記第1の反応物の前記注入、および前記反応室内への前記第2の反応物の前記注入の最適な速度であって、前記水素ガスが最も多く生成される速度である該最適な速度を、前記測定されたバッファタンクの内圧に基づいて算出する手段と、前記第1の反応物および前記第2の反応物が前記反応室に注入される速度を制御する手段と、を備える水素ガス生成装置に関する。
【0016】
本発明の一態様では、第1の反応物は化学的水素化物である。第1の反応物を反応室に注入する手段は、ポンプ型インジェクタ、スクリュー型フィーダ、または機械的アクチュエータのようなインジェクタである。第2の反応物は水または水蒸気である。前記蒸気を前記反応室に注入する手段は、ノズル付きポンプである。
【0017】
本発明の別の態様では、前記反応室内の温度および圧力を測定する手段を備える。測定された反応室内の温度および圧力は、前記反応室内への第1の反応物の前記注入、および前記反応室内への第2の反応物の前記注入の最適な速度を算出するため、または、前記測定された反応室内の温度および圧力が所定のレベルに達した場合に反応を停止させるために使用してもよい。
【0018】
本発明はさらに、水素ガス生成装置であって、反応室と、第1の反応物を含有する第1の反応物貯蔵部と、第2の反応物を含有する第2の反応物貯蔵部と、第3の反応物を含有する第3の反応物貯蔵部と、前記第1の反応物を前記反応室に注入する手段と、前記第2の反応物を前記反応室に注入する手段と、前記第3の反応物を前記反応室に注入する手段と、前記生成された水素ガスを貯蔵するバッファタンクであって、該バッファタンクの内圧を測定する圧力センサを備えるバッファタンクと、前記反応室内への前記第1の反応物の前記注入、前記反応室内への前記第2の反応物の前記注入、および前記反応室内への前記第3の反応物の前記注入の最適な速度であって、前記水素ガスが最も多く生成される速度である該最適な速度を、前記測定されたバッファタンクの内圧に基づいて算出する手段と、前記第1の反応物、前記第2の反応物および前記第3の反応物が前記反応室に注入される速度を制御する手段と、を備える水素ガス生成装置に関する。
【0019】
本発明の一態様では、第1の反応物は化学的水素化物である。第1の反応物を反応室に注入する手段は、ポンプ型インジェクタ、スクリュー型フィーダ、または機械的アクチュエータのようなインジェクタである。第2の反応物は、金属ベース触媒、液体触媒、または有機触媒などの触媒である。第3の反応物は水または水蒸気である。前記蒸気を前記反応室に注入する手段は、ノズル付きポンプである。
【0020】
本発明の別の態様では、前記反応室内の温度および圧力を測定する手段を備える。測定された反応室内の温度および圧力は、前記反応室内への第1の反応物の前記注入、前記反応室内への第2の反応物の前記注入、および前記反応室内への第3の反応物の前記注入の最適な速度を算出するため、または、前記測定された反応室内の温度および圧力が所定のレベルに達した場合に反応を停止させるために使用してもよい。
【0021】
本発明はさらに、水素ガス生成装置であって、反応室と、第1の反応物を含有する第1の反応物貯蔵部と、第2の反応物を含有する第2の反応物貯蔵部と、第3の反応物を含有する第3の反応物貯蔵部と、前記第1の反応物と前記第2の反応物とを混合する混合ユニットと、前記第3の反応物を前記反応室に注入する第3の反応物注入手段と、前記生成された水素ガスを貯蔵するバッファタンクであって、該バッファタンクの内圧を測定する圧力センサを備えるバッファタンクと、前記第1の反応物と第2の反応物との前記混合の最適な速度、および、前記反応室内への前記第3の反応物の前記注入の最適な速度であって、前記水素ガスが最も多く生成される速度である該最適な速度を、前記測定されたバッファタンクの内圧に基づいて算出する手段と、前記第1の反応物と第2の反応物とが混合される速度、および、前記第3の反応物が前記反応室に注入される速度を制御する手段と、を備える水素ガス生成装置に関する。
【0022】
本発明の一態様では、第1の反応物は化学的水素化物である。第1の反応物を反応室に注入する手段は、ポンプ型インジェクタ、スクリュー型フィーダ、または機械的アクチュエータのようなインジェクタである。第2の反応物は、金属ベース触媒、液体触媒、または有機触媒などの触媒である。第3の反応物は水または水蒸気である。前記蒸気を前記反応室に注入する手段は、ノズル付きポンプである。
【0023】
本発明の別の態様では、前記反応室内の温度および圧力を測定する手段を備える。測定された反応室内の温度および圧力は、前記反応室内への第1の反応物の前記注入、前記反応室内への第2の反応物の前記注入、および前記反応室内への第3の反応物の前記注入の最適な速度を算出するため、または、前記測定された反応室内の温度および圧力が所定のレベルに達した場合に反応を停止させるために使用してもよい。
【0024】
本発明の別の態様では、前記反応室の後に配置されたフィルタであって、生成された水素ガス由来の望ましくない副生成物の濾過に適したフィルタをさらに備える。
【0025】
本発明はさらに、
(a)水素ガスを生成する化学反応に必要な少なくとも2つの反応物をそれぞれ反応物貯蔵部に貯蔵するステップと、
(b)各反応物を反応室内に注入して、水素ガスを生成するステップと、
(c)バッファタンク内の圧力値を測定するステップと、
(d)前記測定された圧力値を用い、前記反応室内への各反応物の前記注入の最適な速度を算出するステップと、を含む水素ガス生成方法に関する。
【0026】
本発明はさらに、反応物がそれぞれ貯蔵される少なくとも2つの貯蔵部を備え、各貯蔵部は、水素ガスを生成する化学反応が反応室内で起こるよう、前記貯蔵された反応物を、制御された方法にて最適な速度で前記反応室内に注入する手段と連結されている、水素ガス生成装置に関する。また、前記反応室内への各反応物の前記注入に関する最適な速度を算出するために使用される、バッファタンク内の圧力値を測定する手段を備える。
【0027】
他の目的および利点は、以下の開示および添付の特許請求の範囲により、更に明らかになる。
【発明の効果】
【0028】
反応物を反応室の外部に貯蔵し、必要な場合のみに反応室に注入することによって、高価な反応室の交換および補充が不要となる。
【0029】
測定された反応室内の温度および圧力に基づき、反応室内への各反応物の注入速度を制御することによって、反応性および反応効率が最大化するため、水素ガスが効率的に生成される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態を示す概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態を示す概略図である。
図3】本発明の第3の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
第1の実施形態における水素ガス生成装置の概略図が示されている図1を参照すると、水素ガス生成装置は、複数の前駆体反応物から水素ガスを生成する化学反応が包含されるように設計された反応室(10)を備える。反応室(10)は、反応室(10)内の圧力および温度をそれぞれ測定するように設計された圧力センサ(52)および温度センサ(54)を備える。また、該装置は、第1の反応物を貯蔵するように設計された第1の反応物貯蔵部(20)と、第2の反応物を貯蔵するように設計された第2の反応物貯蔵部(30)とをさらに備える。これら2つの反応物の各々は、最終的に水素ガスを生成する化学反応に供される前駆体である。これら反応物が組み合わされると、化学反応が進行し水素ガスが生成される。
【0032】
第1の反応物貯蔵部(20)は第1の反応物注入手段(25)と連結されている。この第1の反応物注入手段(25)は、第1の反応物を反応室(10)内に注入するように設計されている。この第1の実施形態では、第1の反応物は、化学的水素化物と、金属ベース触媒、液体触媒、または有機触媒などの触媒との混合物を含む予混合化学物質である。第1の反応物注入手段(25)は、ポンプ型インジェクタ、スクリュー型フィーダ、または機械的アクチュエータのような注入手段である。こうして、第1の反応物注入手段(25)は、第1の注入口(26)を介して反応室(10)内に予混合化学物質を注入する。
【0033】
第2の反応物貯蔵部(30)は第2の反応物注入手段(35)と連結されている。この第2の反応物注入手段(35)は、第2の反応物を反応室(10)内に注入するように設計されている。この第1の実施形態では、第2の反応物は水または水蒸気であり、第2の反応物注入手段(35)はノズル付きポンプを備える。こうして、第2の反応物注入手段(35)は、第2の注入口(36)を介して反応室(10)内に水または水蒸気を注入する。本実施形態のさらなる変形例としては、水素ガスの生成を増大させるために、酸またはその他の添加剤を水または水蒸気に添加する。
【0034】
このようにして、2つの反応物が反応室(10)内に注入されて化学反応が開始され、その結果、水素ガスおよびいくつかの廃棄物が生成される。水素ガスはフィルタ(60)において廃棄物から分離され、廃棄物は廃棄物処理部(65)を介して除去される。次いで、水素ガスは、ポンプ(70)を介してバッファタンク(80)内にポンプ輸送され、そこで一時的に貯蔵されてから、燃料電池(90)に用いられる。バッファタンク(80)は、バッファタンク(80)の内圧の測定に適した圧力センサ(81)を備える。
【0035】
また、前記バッファタンクの圧力センサ(81)から、前記バッファタンク内の圧力測定値が提供されるマイクロプロセッサ(50)がさらに備えられている。そして、マイクロプロセッサ(50)は、バッファタンク内の圧力値に基づき、各反応物についての最適な注入速度(率)を算出する。反応物の注入速度を最適にすれば、水素ガスの生成が最適となる。マイクロプロセッサー(50)は、算出した最適な注入速度を、第1の反応物注入制御部(28)を介して第1の反応物注入手段(25)に送信し、第2の反応物注入制御部(38)を介して第2の反応物注入手段(35)に送信する。このようにして、2つの反応物注入手段(25、35)は、算出された最適な注入速度にて動作する。
【0036】
また、前記反応室の圧力センサ(52)および温度センサ(54)による測定値は、安全要素として用いられる。これにより、反応室内の温度または圧力が所定のレベルに達したとき、水素生成反応は停止(中断)される。反応室の所定上限圧力は、反応室(10)の構造上の完全性に基づいて適切な安全マージンを以って算出される。検出された反応室(10)内の圧力が前記所定上限圧力に達すると、水素ガスの生成反応は停止される。
【0037】
この第1の実施形態の変形例では、反応室内の前記圧力及び温度の測定値も、前記マイクロプロセッサ(50)へ提供され、各反応物についての最適な注入速度の算出に用いられる。
【0038】
第2の実施形態における水素ガス生成装置の概略図が示されている図2を参照すると、水素ガス生成装置は、前駆体反応物から水素ガスを生成する化学反応が包含されるように設計された反応室(10)を備える。反応室(10)は、反応室(10)内の圧力および温度をそれぞれ測定するように設計された圧力センサ(52)および温度センサ(54)を備える。また、該装置は、第1の反応物を貯蔵するように設計された第1の反応物貯蔵部(20)と、第2の反応物を貯蔵するように設計された第2の反応物貯蔵部(30)と、第3の反応物を貯蔵するように設計された第3の反応物貯蔵部(40)とをさらに備える。これら3つの反応物の各々は、最終的に水素ガスを生成する化学反応に供される前駆体である。これら反応物が組み合わされると、化学反応が進行し、水素ガスが生成される。
【0039】
第1の反応物貯蔵部(20)は第1の反応物注入手段(25)と連結されている。この第1の反応物注入手段(25)は、第1の反応物を反応室(10)内に注入するように設計されている。この第2の実施形態では、第1の反応物は、粉末またはペレット状の化学的水素化物であり、第1の反応物注入手段(25)は、ポンプ型インジェクタ、スクリュー型フィーダ、または機械的アクチュエータなどの注入手段である。そして、第1の反応物注入手段(25)は、第1の注入口(26)を介して反応室(10)内に化学的水素化物を反応物として注入する。
【0040】
第2の反応物貯蔵部(30)は第2の反応物注入手段(35)と連結されている。この第2の反応物注入手段(35)は、第2の反応物を反応室(10)内に注入するように設計されている。この第2の実施形態では、第2の反応物は、金属ベース触媒、液体触媒、または有機触媒などの触媒であり、第2の反応物注入手段(35)は、スクリュー型フィーダなどの機械的注入手段である。こうして、第2の反応物注入手段(35)は、第2の注入口(36)を介して反応室(10)内に触媒を注入する。
【0041】
第3の反応物貯蔵部(40)は第3の反応物注入手段(45)と連結されている。この第3の反応物注入手段(45)は、第3の反応物を反応室(10)内に注入するように設計されている。この第2の実施形態では、第3の反応物は水または水蒸気であり、第3の反応物注入手段(45)はノズル付きポンプを備える。こうして、第3の反応物注入手段(45)は、第3の注入口(46)を介して反応室(10)内に水または水蒸気を注入する。本実施形態のさらなる変形例としては、水素ガスの生成を増大させるために、酸またはその他の添加剤を水または水蒸気に添加する。
【0042】
このようにして、3つの反応物が反応室(10)内に注入されて化学反応が開始され、その結果、水素ガスおよびいくつかの廃棄物が生成される。水素ガスはフィルタ(60)において廃棄物から分離され、廃棄物は廃棄物処理部(65)を介して除去される。次いで、水素ガスは、ポンプ(70)を介してバッファタンク(80)内にポンプ輸送され、そこで一時的に貯蔵されてから、燃料電池(90)に用いられる。バッファタンク(80)は、バッファタンク(80)の内圧の測定に適した圧力センサ(81)を備える。
【0043】
また、前記バッファタンクの圧力センサ(81)から、前記バッファタンク内の圧力測定値が提供されるマイクロプロセッサ(50)がさらに備えられている。そして、マイクロプロセッサ(50)は、バッファタンク内の圧力値に基づき、各反応物についての最適な注入速度を算出する。反応物の注入速度を最適にすれば、水素ガスの生成が最適となる。マイクロプロセッサ(50)は、算出した最適な注入速度を、第1の反応物注入制御部(28)を介して第1の反応物注入手段(25)に送信し、第2の反応物注入制御部(38)を介して第2の反応物注入手段(35)に送信し、第3の反応物注入制御部(48)を介して第3の反応物注入手段(45)に送信する。このようにして、算出された最適な注入速度は、3つの反応物注入手段(25、35、45)により達成される。
【0044】
また、前記反応室の圧力センサ(52)および温度センサ(54)による測定値は、安全要素として用いられる。それにより、反応室内の温度または圧力が所定のレベルに達したとき、水素生成反応は停止(中断)される。反応室の所定上限圧力は、反応室(10)の構造上の完全性に基づいて適切な安全マージンを以って算出される。検出された反応室(10)内の圧力が前記所定上限圧力に達すると、水素ガスの生成反応は停止される。
【0045】
この第1の実施形態の変形例では、反応室内の前記圧力及び温度の測定値も、前記マイクロプロセッサ(50)に提供され、各反応物についての最適な注入速度の算出に用いられる。
【0046】
第3の実施形態における水素ガス生成装置の概略図が示されている図3を参照すると、水素ガス生成装置は、前駆体反応物から水素ガスを生成する化学反応が包含されるように設計された反応室(10)を備える。反応室(10)は、反応室(10)内の圧力および温度をそれぞれ測定するように設計された圧力センサ(52)および温度センサ(54)を備える。また、該装置は、第1の反応物を貯蔵するように設計された第1の反応物貯蔵部(20)と、第2の反応物を貯蔵するように設計された第2の反応物貯蔵部(30)と、第3の反応物を貯蔵するように設計された第3の反応物貯蔵部(40)とをさらに備える。これら3つの反応物の各々は、最終的に水素ガスを生成する化学反応に供される前駆体である。これら反応物が組み合わされると、化学反応が進行し、水素ガスが生成される。
【0047】
この第3の実施形態において、第1の反応物貯蔵部(20)および第2の反応物貯蔵部(30)は、混合ユニット(250)と連結されている。この実施形態では、第1の反応物は、粉末またはペレット状の化学的水素化物であり、第2の反応物は、金属ベース触媒、液体触媒、または有機触媒などの触媒である。化学的水素化物および触媒は、混合ユニット(250)に供給され、そこで混合されて予混合化学物質となる。この予混合化学物質は、水素ガスを生成する化学反応に供される前駆体である。混合ユニット(250)も、予混合化学物質を反応室(10)内に注入するように設計されている。この実施形態において、注入は、ポンプ型インジェクタ、スクリュー型フィーダ、または機械的アクチュエータなどの注入手段によって行われる。そして、混合ユニット(250)は、第1の注入口(26)を介して反応室(10)内に予混合化学物質を注入する。
【0048】
第3の反応物貯蔵部(40)は第3の反応物注入手段(45)と連結されている。この第3の反応物注入手段(45)は、第3の反応物を反応室(10)内に注入するように設計されている。この第3の実施形態では、第3の反応物は水または水蒸気であり、第3の反応物注入手段(45)はノズル付きポンプを備える。こうして、第3の反応物注入手段(45)は、第3の注入口(46)を介して反応室(10)内に水または水蒸気を注入する。この実施形態のさらなる変形例としては、水素ガス生成を増大させるために、酸またはその他の添加剤を水または水蒸気に添加する。
【0049】
このようにして、3つの反応物が反応室(10)内に注入されて化学反応が開始され、その結果、水素ガスおよびいくつかの廃棄物が生成される。水素ガスは、フィルタ(60)において廃棄物から分離され、廃棄物は廃棄物処理部(65)を介して除去される。次いで、水素ガスは、ポンプ(70)を介してバッファタンク(80)内にポンプ輸送され、そこで一時的に貯蔵されてから、燃料電池(90)に用いられる。バッファタンク(80)は、バッファタンク(80)の内圧の測定に適した圧力センサ(81)を備える。
【0050】
また、前記バッファタンク圧力センサ(81)から、前記バッファタンクの圧力測定値が提供されるマイクロプロセッサ(50)がさらに備えられている。本実施形態におけるマイクロプロセッサ(50)は、バッファタンク内の圧力値に基づき、混合ユニット(250)内での第1の反応物と第2の反応物との最適な混合速度(率)を算出し、算出した混合速度を、混合ユニット制御部(280)を介して混合ユニットに送信する。また、本実施形態におけるマイクロプロセッサ(50)は、バッファタンク内の圧力値に基づき、反応室(10)内への第3の反応物の最適な注入速度を算出し、算出した最適な注入速度を、第3の反応物注入制御部(48)を介して第3の反応物注入手段(45)に送信する。反応物の混合速度および注入速度を最適にすることで、水素ガスの生成が最適となる。
【0051】
また、前記反応室の圧力センサ(52)および温度センサ(54)による測定値は、安全要素として用いられる。それにより、反応室内の温度または圧力が所定のレベルに達したとき、水素生成反応は停止(中断)される。反応室の所定上限圧力は、反応室(10)の構造上の完全性に基づいて適切な安全マージンを以って算出される。検出された反応室(10)内の圧力が前記所定上限圧力に達すると、水素ガスの生成反応は停止される。
【0052】
この第1の実施形態の変形例では、反応室内の前記圧力及び温度の測定値も、前記マイクロプロセッサ(50)へ提供され、各反応物についての最適な注入速度の算出に用いられる。
【0053】
上記のすべての実施形態において、化学的水素化物としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素、水素化窒素、水素化炭素、化学的水素化物、水素化窒素ホウ素、水素化ホウ素炭素、水素化窒素炭素、金属ホウ素水素化物、金属窒素水素化物、金属炭素水素化物、金属窒素ホウ素水素化物、金属炭素ホウ素水素化物、金属窒素炭素水素化物、水素化炭素ホウ素窒素、金属炭素ホウ素窒素水素化物、NaH、LiBH4、LiH、CaH2、Ca(BH4)2、MgBH4、KBH4、Al(BH3)3、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
また、上記のすべての実施形態において、触媒としては、コバルトベース酸化物、ホウ化物、固体酸、塩、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。前記塩は、ルテニウム(Ru)イオン、コバルト(Co)イオン、ニッケル(Ni)イオン、銅(Cu)イオン、鉄(Fe)イオンまたはこれらイオンの組み合わせによる化合物であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 反応室
20 第1の反応物貯蔵部
25 第1の反応物注入手段
250 混合ユニット
26 第1の注入口
28 第1の反応物注入制御部
280 混合ユニット制御部
30 第2の反応物貯蔵部
35 第2の反応物注入手段
36 第2の注入口
38 第2の反応物注入制御部
40 第3の反応物貯蔵部
45 第3の反応物注入手段
46 第3の注入口
48 第3の反応物注入制御部
50 マイクロプロセッサ
52 圧力センサ
54 温度センサ
60 フィルタ
65 廃棄物処理部
70 ポンプ
80 バッファタンク
81 バッファタンクの圧力センサ
90 燃料電池

図1
図2
図3