特許第6969849号(P6969849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6969849偏波制御器を内蔵するスイッチマトリクス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969849
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】偏波制御器を内蔵するスイッチマトリクス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/313 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   G02F1/313
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-548877(P2018-548877)
(86)(22)【出願日】2016年4月18日
(65)【公表番号】特表2019-511008(P2019-511008A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】CN2016079578
(87)【国際公開番号】WO2017177472
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2018年10月22日
(31)【優先権主張番号】15/095,746
(32)【優先日】2016年4月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、チュンス
(72)【発明者】
【氏名】グッドウィル、ドミニク ジョン
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−219276(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0257706(US,A1)
【文献】 特開2007−003708(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0002971(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/176311(WO,A1)
【文献】 EARNSHAW, M.P. et al.,8×8 Optical Switch Matrix Using Generalized Mach-Zehnder Interferometers,IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,2003年06月,VOL. 15, NO. 6,pp.810-812
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/313
G02B 6/12
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の1×2入力スイッチであって、各1×2入力スイッチは、
光ビームを受光するための入力ポートと、
前記光ビームを予め定められた偏波状態で出力するための第1出力ポートおよび第2出力ポートと、
前記入力ポートに連結された、前記光ビームの前記予め画定された偏波状態を提供するための偏波制御器であって、前記光ビームの2つの偏波成分に関連付けられた2つの光路を含む少なくとも1つの偏波制御段を含む、偏波制御器と、
前記少なくとも1つの偏波制御段の前記2つの光路に連結された、前記予め画定された偏波状態の前記光ビームを前記第1出力ポート又は前記第2出力ポートに向けるべく、前記2つの光路において光を混合するための光ミキサ段と
を有する、複数の1×2入力スイッチと、
複数の出力スイッチと、
前記複数の1×2入力スイッチおよび前記複数の出力スイッチに連結された複数の光路を前記複数の1×2入力スイッチと前記複数の出力スイッチとの間に選択的に確立するための複数の中間スイッチと
を備え、
前記複数の光路のそれぞれにおいて、前記偏波制御器の最後の段および前記光ミキサ段が同一の部品によって提供され、かつ、前記最後の段が前記光ミキサ段を構成し、
前記少なくとも1つの偏波制御段のそれぞれが、マッハツェンダー干渉計(MZI)構造を有し、前記MZI構造のアームに配置された少なくとも1つの移相器はカプラで接続された状態であり、
前記最後の段における前記カプラが、マルチモード干渉(MMI)カプラであり、前記予め画定された偏波状態の前記光ビームを前記第1出力ポート又は前記第2出力ポートに向け、これにより第1入力スイッチ段としての機能を果たす、光スイッチマトリクス。
【請求項2】
前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つは更に、
入力された光ビームを複数の直交偏波成分に分離するための入力要素
を有する、請求項1に記載の光スイッチマトリクス。
【請求項3】
前記入力要素は、
偏波ローテータ・スプリッタ、および
偏波分離表面グレーティングカプラ
のうちの1つを有する、請求項2に記載の光スイッチマトリクス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの偏波制御段のうちの1つ又は複数は、
対称方向性カプラ、
断熱カプラ、および
マルチモード干渉(MMI)カプラ
のうちの1つを有する、請求項1から3の何れか一項に記載の光スイッチマトリクス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの偏波制御段、および前記光ミキサ段の前記移相器のうちの1つ又は複数は、
熱光学移相器、および
キャリア注入移相器
のうちの1つを有する、請求項1からの何れか一項に記載の光スイッチマトリクス。
【請求項6】
前記偏波制御器および前記光ミキサ段の組み合わせは2段偏波制御器を提供し、前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの前記偏波制御器および前記光ミキサ段は、
第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された移相器であって、前記第1MZI構造の前記2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた前記光路に連結されている移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第1MZI構造の前記2つのアームに接続された第1光カプラと、
第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第2MZI構造の前記2つのアームは前記第1光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第2MZI構造の前記2つのアームに接続している第2光カプラと
を有
前記第2光カプラは、前記MMIカプラである、請求項1から3のいずれか一項に記載の光スイッチマトリクス。
【請求項7】
前記偏波制御器および前記光ミキサ段の組み合わせは3段偏波制御器を提供し、前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの前記偏波制御器および前記光ミキサ段は、
第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第1MZI構造の前記2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた前記光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第1MZI構造の前記2つのアームに接続された第1光カプラと、
第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第2MZI構造の前記2つのアームは前記第1光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第2MZI構造の前記2つのアームに接続された第2光カプラと、
第3MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第3MZI構造の前記2つのアームは前記第2光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第3MZI構造の前記2つのアームに接続された第3光カプラと
を有
前記第3光カプラは、前記MMIカプラである、請求項1から3のいずれか一項に記載の光スイッチマトリクス。
【請求項8】
前記偏波制御器および前記光ミキサ段の組み合わせは4段偏波制御器を提供し、前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの前記偏波制御器および前記光ミキサ段は、
第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の前記2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第1MZI構造の前記2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた前記光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第1MZI構造の前記2つのアームに接続された第1光カプラと、
第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第2MZI構造の前記2つのアームは前記第1光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第2MZI構造の前記2つのアームに接続された第2光カプラと、
第3MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第3MZI構造の前記2つのアームは前記第2光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第3MZI構造の前記2つのアームに接続された第3光カプラと、
第4MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第4MZI構造の前記2つのアームは前記第3光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第4MZI構造の前記2つのアームに接続された第4光カプラと
を備え、
前記第4光カプラは、前記MMIカプラである、請求項1から3のいずれか一項に記載の光スイッチマトリクス。
【請求項9】
複数の1×2入力スイッチであって、各1×2入力スイッチは、
光ビームを受光するための入力ポートと、
前記光ビームを予め定められた偏波状態で出力するための第1出力ポートおよび第2出力ポートと、
前記入力ポートに連結された、前記光ビームの前記予め画定された偏波状態を提供するための偏波制御器であって、前記光ビームの2つの偏波成分に関連付けられた2つの光路を含む少なくとも1つの偏波制御段を含む、偏波制御器と、
前記少なくとも1つの偏波制御段の前記2つの光路に連結されている、前記予め画定された偏波状態の前記光ビームを前記第1出力ポート又は前記第2出力ポートに向けるべく、前記2つの光路において光を混合するための光ミキサ段と、
を含む、複数の1×2入力スイッチと、
複数の出力スイッチと、
前記複数の1×2入力スイッチおよび前記複数の出力スイッチに連結された複数の光路を前記複数の1×2入力スイッチと前記複数の出力スイッチとの間に選択的に確立するための複数の中間スイッチと
を有する、光スイッチマトリクスと、
前記複数の1×2入力スイッチのそれぞれに関連付けられた入力された前記光ビームの偏波を制御するための、および前記光スイッチマトリクスを介して光路をルーティングするための制御器と
を備え、
前記複数の光路のそれぞれにおいて、前記偏波制御器の最後の段および前記光ミキサ段が同一の部品によって提供され、かつ、前記最後の段が前記光ミキサ段を構成し、
各偏波制御段が、マッハツェンダー干渉計(MZI)構造を有し、前記MZI構造のアームに配置された少なくとも1つの移相器はカプラで接続された状態であり、
前記最後の段における前記カプラが、マルチモード干渉(MMI)カプラであり、前記予め画定された偏波状態の前記光ビームを前記第1出力ポート又は前記第2出力ポートに向け、これにより第1入力スイッチ段としての機能を果たす、光スイッチ。
【請求項10】
前記制御器および前記光スイッチマトリクスは、単一のシリコンオンインシュレータ(SOI)チップ上に実装される、請求項に記載の光スイッチ。
【請求項11】
前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つは更に、
入力された前記光ビームを複数の直交偏波成分に分離するための入力要素
を有する、請求項又は10に記載の光スイッチ。
【請求項12】
前記入力要素は、
偏波ローテータ・スプリッタ、および
偏波分離表面グレーティングカプラ
のうちの1つを有する、請求項11に記載の光スイッチ。
【請求項13】
前記光スイッチマトリクスからオフチップに配置された複数の偏波ローテータおよびスプリッタ(PRS)要素であって、前記複数のPRS要素のうちのそれぞれ1つは前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つに関連付けられている複数のPRS要素を更に備える、請求項から12のいずれか一項に記載の光スイッチ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの偏波制御段の1つ又は複数は、
対称方向性カプラ、
断熱カプラ、および
マルチモード干渉(MMI)カプラ
のうちの1つを有する、請求項9から13の何れか一項に記載の光スイッチ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの偏波制御段、および前記光ミキサ段の前記移相器のうちの1つ又は複数は、
熱光学移相器、および
キャリア注入移相器
のうちの1つを有する、請求項9から14の何れか一項に記載の光スイッチ。
【請求項16】
前記偏波制御器および前記光ミキサ段の組み合わせは2段偏波制御器を提供し、前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの前記偏波制御器および前記光ミキサ段は、
第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第1MZI構造の前記2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた前記光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第1MZI構造の前記2つのアームに接続された第1光カプラと、
第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第2MZI構造の前記2つのアームは前記第1光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第2MZI構造の前記2つのアームに接続された第2光カプラと
を有
前記第2光カプラは、前記MMIカプラである、請求項から13のいずれか一項に記載の光スイッチ。
【請求項17】
前記偏波制御器および前記光ミキサ段の組み合わせは3段偏波制御器を提供し、前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの前記偏波制御器および前記光ミキサ段は、
第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第1MZI構造の前記2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた前記光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第1MZI構造の前記2つのアームに接続された第1光カプラと、
第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第2MZI構造の前記2つのアームは前記第1光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第2MZI構造の前記2つのアームに接続された第2光カプラと、
第3MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第3MZI構造の前記2つのアームは前記第2光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第3MZI構造の前記2つのアームに接続された第3光カプラと
を有
前記第3光カプラは、前記MMIカプラである、請求項から13のいずれか一項に記載の光スイッチ。
【請求項18】
前記偏波制御器および前記光ミキサ段の組み合わせは4段偏波制御器を提供し、前記複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの前記偏波制御器および前記光ミキサ段は、
第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第1MZI構造の前記2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた前記光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第1MZI構造の前記2つのアームに接続された第1光カプラと、
第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第2MZI構造の前記2つのアームは前記第1光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第2MZI構造の前記2つのアームに接続された第2光カプラと、
第3MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第3MZI構造の前記2つのアームは前記第2光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第3MZI構造の前記2つのアームに接続された第3光カプラと、
第4MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、前記第4MZI構造の前記2つのアームは前記第3光カプラの前記2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、
2つの出力光路を提供する前記第4MZI構造の前記2つのアームに接続された第4光カプラと
を有
前記第4光カプラは、前記MMIカプラである、請求項から13のいずれか一項に記載の光スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年4月11日に出願された米国特許出願第15/095,746号明細書に基づく優先権を主張するものであり、参照によって完全に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は光集積回路、特に光スイッチに関する。
【背景技術】
【0003】
複数の入力と出力との間に光路を確立することが可能な光スイッチを実装するためにシリコンオンインシュレータ(SOI)回路が用いられ得る。SOI回路は、コンパクトな光回路を提供し得る。しかしながら、回路は、光信号が予め画定された偏波状態(例えば、横電界(TE)偏波)であることを要求し得る。このように、光集積回路は、入力信号の光偏波がTE偏波になるように調整するための偏波制御器を要求し得る。このような偏波制御器が別個の部品として提供されてよく、同一の光チップ上に、又はオフチップでのいずれかで実装され得る。追加の部品である偏波制御器は、挿入損失およびパワー消費を増加させる。
【0004】
偏波状態を制御することが可能な、改善されたスイッチを持つことが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示によれば、複数の1×2入力スイッチであって、複数の1×2入力スイッチのそれぞれは、光ビームを受信するための入力ポートと、光ビームを予め定められた偏波状態で出力するための第1出力ポートおよび第2出力ポートと、入力ポートに連結された、光ビームの予め画定された偏波状態を提供するための偏波制御器であって、偏波制御器は光ビームの2つの偏波成分に関連付けられた2つの光路を含む少なくとも1つの偏波制御段を含む、偏波制御器と、少なくとも1つの偏波制御段の2つの光路に連結された、予め画定された偏波状態の光ビームを第1出力ポート又は第2出力ポートに向けるべく、2つの光路において光を混合するための光ミキサ段とを有する、複数の1×2入力スイッチと、複数の出力スイッチと、複数の1×2入力スイッチおよび複数の出力スイッチに連結された、光路を複数の1×2入力スイッチと複数の出力スイッチとの間に選択的に確立するための複数の中間スイッチとを備える、光スイッチマトリクスが提供される。
【0006】
光スイッチマトリクスの更なる実施形態において、複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つは更に、入力されたビームを複数の直交偏波成分に分離するための入力要素を有する。
【0007】
光スイッチマトリクスの更なる実施形態において、入力要素は、偏波ローテータ・スプリッタ、および偏波分離表面グレーティングカプラ(polarization splitting surface grating coupler)のうちの1つを有する。
【0008】
光スイッチマトリクスの更なる実施形態において、少なくとも1つの偏波制御段のそれぞれ、および光ミキサ段は、マッハツェンダー干渉計(MZI)構造を有し、MZI構造のアームに配置された少なくとも1つの移相器はカプラで接続された状態である。
【0009】
光スイッチマトリクスの更なる実施形態において、少なくとも1つの偏波制御段、および光ミキサ段のカプラのうちの1つ又は複数は、対称方向性カプラ、断熱カプラ、およびマルチモード干渉(MMI)カプラのうちの1つを有する。
【0010】
光スイッチマトリクスの更なる実施形態において、少なくとも1つの偏波制御段、および光ミキサ段の移相器のうちの1つ又は複数は、熱光学移相器、およびキャリア注入移相器のうちの1つを有する。
【0011】
光スイッチマトリクスの更なる実施形態において、偏波制御器および光ミキサ段の組み合わせは、2段偏波制御器を提供し、複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの偏波制御器および光ミキサ段は、第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された移相器であって、第1MZI構造の2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた光路に連結されている移相器と、2つの出力光路を提供する第1MZI構造の2つのアームに接続された第1光カプラと、第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第2MZI構造の2つのアームは第1光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第2MZI構造の2つのアームに接続している第2光カプラとを有する。
【0012】
光スイッチマトリクスの更なる実施形態において、偏波制御器および光ミキサ段の組み合わせは、3段偏波制御器を提供し、複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの偏波制御器および光ミキサ段は、第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第1MZI構造の2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第1MZI構造の2つのアームに接続された第1光カプラと、第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第2MZI構造の2つのアームは第1光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第2MZI構造の2つのアームに接続された第2光カプラと、第3MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第3MZI構造の2つのアームは第2光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第3MZI構造の2つのアームに接続された第3光カプラとを有する。
【0013】
光スイッチマトリクスの更なる実施形態において、偏波制御器および光ミキサ段の組み合わせは、4段偏波制御器を提供し、複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの偏波制御器および光ミキサ段は、第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第1MZI構造の2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第1MZI構造の2つのアームに接続された第1光カプラと、第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第2MZI構造の2つのアームは第1光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第2MZI構造の2つのアームに接続された第2光カプラと、第3MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第3MZI構造の2つのアームは第2光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第3MZI構造の2つのアームに接続された第3光カプラと、第4MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第4MZI構造の2つのアームは第3光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第4MZI構造の2つのアームに接続された第4光カプラとを備える。
【0014】
本開示によれば、複数の1×2入力スイッチであって、複数の1×2入力スイッチのそれぞれは、光ビームを受光するための入力ポートと、光ビームを予め定められた偏波状態で出力するための第1出力ポートおよび第2出力ポートと、入力ポートに連結された、光ビームの予め画定された偏波状態を提供するための偏波制御器であって、偏波制御器は光ビームの2つの偏波成分に関連付けられた2つの光路を含む少なくとも1つの偏波制御段を含む、偏波制御器と、少なくとも1つの偏波制御段の2つの光路に連結されている、予め画定された偏波状態の光ビームを第1出力ポート又は第2出力ポートに向けるべく、2つの光路において光を混合するための光ミキサ段と、複数の出力スイッチと、複数の1×2入力スイッチおよび複数の出力スイッチに連結された、光路を複数の1×2入力スイッチと複数の出力スイッチとの間に選択的に確立するための複数の中間スイッチとを含む複数の1×2入力スイッチを有する光スイッチマトリクスと、複数の1×2入力スイッチのそれぞれに関連付けられた入力ビームの偏波を制御するため、およびスイッチマトリクスを介して光路をルーティングするための制御器とを備える、光スイッチが更に提供される。
【0015】
光スイッチの更なる実施形態において、制御器および光スイッチマトリクスは、単一のシリコンオンインシュレータ(SOI)チップ上に実装される。
【0016】
光スイッチの更なる実施形態において、複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つは更に、入力されたビームを複数の直交偏波成分に分離するための入力要素を備える。
【0017】
光スイッチの更なる実施形態において、入力要素は、偏波ローテータ・スプリッタ、および偏波分離表面グレーティングカプラのうちの1つを有する。
【0018】
更なる実施形態において、光スイッチは更に、スイッチマトリクスからオフチップに配置された複数の偏波ローテータおよびスプリッタ(PRS)要素であって、複数のPRS要素のうちのそれぞれ1つは1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つに関連付けられているPRS要素を備える。
【0019】
光スイッチの更なる実施形態において、各偏波制御段および光ミキサ段は、マッハツェンダー干渉計(MZI)構造を有し、MZI構造のアームに配置された少なくとも1つの移相器がカプラで接続された状態である。
【0020】
光スイッチの更なる実施形態において、少なくとも1つの偏波制御段、および光ミキサ段のカプラのうちの1つ又は複数は、対称方向性カプラ、断熱カプラ、およびマルチモード干渉(MMI)カプラのうちの1つを有する。
【0021】
光スイッチの更なる実施形態において、少なくとも1つの偏波制御段、および光ミキサ段の移相器のうちの1つ又は複数は、熱光学移相器、およびキャリア注入移相器のうちの1つを有する。
【0022】
光スイッチの更なる実施形態において、偏波制御器および光ミキサ段の組み合わせは、2段偏波制御器を提供し、複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの偏波制御器および光ミキサ段は、第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第1MZI構造の2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第1MZI構造の2つのアームに接続された第1光カプラと、第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第2MZI構造の2つのアームは第1光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第2MZI構造の2つのアームに接続された第2光カプラとを有する。
【0023】
光スイッチの更なる実施形態において、偏波制御器および光ミキサ段の組み合わせは、3段偏波制御器を提供し、複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの偏波制御器および光ミキサ段は、第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第1MZI構造の2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第1MZI構造の2つのアームに接続された第1光カプラと、第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第2MZI構造の2つのアームは第1光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第2MZI構造の2つのアームに接続された第2光カプラと、第3MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第3MZI構造の2つのアームは第2光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第3MZI構造の2つのアームに接続された第3光カプラとを有する。
【0024】
光スイッチの更なる実施形態において、偏波制御器および光ミキサ段の組み合わせは、4段偏波制御器を提供し、複数の1×2入力スイッチのうちのそれぞれ1つの偏波制御器および光ミキサ段は、第1マッハツェンダー干渉計(MZI)構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第1MZI構造の2つのアームは直交偏波成分に関連付けられた光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第1MZI構造の2つのアームに接続された第1光カプラと、第2MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第2MZI構造の2つのアームは第1光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第2MZI構造の2つのアームに接続された第2光カプラと、第3MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第3MZI構造の2つのアームは第2光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第3MZI構造の2つのアームに接続された第3光カプラと、第4MZI構造の2つのアームのうちの1つに配置された少なくとも1つの移相器であって、第4MZI構造の2つのアームは第3光カプラの2つの出力光路に連結されている、少なくとも1つの移相器と、2つの出力光路を提供する第4MZI構造の2つのアームに接続された第4光カプラとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付された以下の図面を参照して、本明細書において実施形態が説明される。
図1】先行技術の光スイッチおよび偏波制御器を示す。
図2】偏波制御器を内蔵する光スイッチを示す。
図3】偏波制御器を内蔵する1×Nスイッチングセルを示す。
図4】入力スイッチングセルに内蔵され得るN段偏波制御器を示す。
図5】別個のビームスプリッタを有する2段偏波制御器を示す。
図6】偏波制御器を内蔵する光スイッチのマトリクスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
光集積回路に基づく光スイッチは、速さ、コンパクトさ、および低パワー消費等の望ましい特性を提供し得る。以下に更に説明されるように、光スイッチへの光入力は、入力信号の偏波をシリコンフォトニクスによる処理に対して予め決められた偏波に変えるために、偏波制御器を内蔵し得る。偏波制御器は、制御器の最後の段が第1入力スイッチ段と重なる状態で、複数の縦続接続段によって提供され得る。即ち、偏波制御器の最後の段および第1入力スイッチ段は、同一の部品によって提供される。光路上の光学部品の数がより少なくなることに起因して、スイッチ入力の第1段に重なる偏波制御器が、より低い挿入損失とパワー消費とを光スイッチにもたらし得る。
図1は、光スイッチ102および複数の偏波制御器104を含む光スイッチ構造100を示す。光スイッチ102は、複数の出力にスイッチされ得る複数の入力を備える。光スイッチ102は、適切なスイッチングプレーン(switching plane)114a、114b、又は単一のスイッチングプレーンの部分に、入力信号をスイッチすることが出来る複数の入力スイッチングセル112を備え、適切なスイッチングプレーン114a、114b、又は単一のスイッチングプレーンの部分は次に、所望の接続を確立するために適切な出力スイッチングセル116への接続を確立する。図1では、8入力と8出力との間の接続を確立するための特定の8×8スイッチアーキテクチャが示されているが、異なるスイッチアーキテクチャが可能である。用いられる特定のスイッチアーキテクチャに関わらず、スイッチは複数の個々のスイッチングセルから概して形成される。個々のスイッチングセルは、2つの移相器アームによって接続された一対のマルチモード干渉(MMI)カプラを有するマッハツェンダー干渉計(MZI)構造によって提供され得る。
【0027】
MZI構造は、特定の光の偏波の状態において最も良く機能し得る。特に、個々のスイッチングセルは、横電界(TE)偏波の状態において主に機能し得る。このように、横磁界(TM)偏波において存在する光パワーが効果的に消費される。従って、TM偏波成分(106)およびTE偏波成分(108)の両方を有する光信号を、TE偏波成分(110)等の単一偏波成分を有する信号に変換する偏波制御器104に、スイッチ102への入力が関連付けられ得る。偏波制御器104は、挿入損失を増やし、部品数を増加させ、また、光スイッチ構造100の複雑さを増大させる別個の部品である。エンドレス又はリセットフリー制御等の要件、および任意の入射偏波を任意の出力偏波に調整する能力によって、複数の偏波制御器アーキテクチャが可能である。概して、偏波制御器は複数の縦続接続段として設けられ得る。一緒に縦続接続された段の数によって、偏波制御器の異なる度合いの柔軟性がもたらされ得る。図1は、リセットを要求することなく任意の入力偏波から特定の偏波を生成することが可能な、即ち本明細書において「エンドレス偏波制御」と称される能力を持つ3段偏波制御器104aを示す。図示されるように、偏波制御器104aは、入射ビームを複数の直交偏波成分に分離し、その偏波成分のうちの1つを回転させる偏波ビームスプリッタおよびローテータ118を有する。連続する縦続接続された移相器アーム120a、120b、124a、124b、128a、128bおよび3dB MMIカプラ/スプリッタ122、126、130により、未知の偏波を、TE偏波等の特定の偏波に変えることが可能となる。
【0028】
図2は、偏波制御器を内蔵する光スイッチを示す。光スイッチ200は、複数の出力段206のうちの1つに連結される光信号を受信するための光入力をそれぞれ有する、複数の入力段202を備える。複数の中間スイッチング段204を介して、入力段202と出力段206との間に光路が確立される。入力段202、中間スイッチング段204、および出力段206の特定の配置は、スイッチアーキテクチャに依存するだろう。しかしながら、入力段202は、中間スイッチングセルのうちの特定の1つに入力光信号を選択的に連結するためのマッハツェンダー干渉計(MZI)構造によって提供される1つ又は複数の光スイッチを、通常含むだろう。中間スイッチングセルは、1つ又は複数の類似するスイッチングプレーン204a、204b内に配置されてよい。スイッチ200は、ブロッキング8×8スイッチングプレーンによってそれぞれ提供される2つのスイッチングプレーンを備える、8×8のノンブロッキングスイッチとして図示される。それは、スイッチ200の特定のアーキテクチャに関わらず、特定の偏波状態で動作する、相互接続した複数のシリコンフォトニックコンポーネントによって提供される。従って、効率的な光信号のスイッチングを提供するために、入力光信号は、TE偏波等の特定の光偏波であるべきである。スイッチ200は、スイッチの入力段202に偏波制御器を内蔵して、ランダムに偏波された光信号を受信し、シリコンフォトニックコンポーネントに対して適切な偏波に入力信号を変換することが可能なコンパクトかつ効率的なスイッチを提供する。図示されるように、入力段202のそれぞれは、スイッチングセルの第1入力段210に重なる偏波状態(SOP)制御器208を有する。即ち、第1入力スイッチ段202はまた、偏波制御器208の最後の段を提供する。スイッチ入力210の第1段に偏波制御器208を重ねることによって、より低い挿入損失およびパワー消費が可能である。
【0029】
図2は、スイッチの入力段202aに内蔵された偏波制御器208の詳細を示す。偏波制御器208は、偏波制御器がリセットされることを要求することなく入射光の未知の偏波を特定の偏波に変換し得る3段偏波制御器を有する。偏波制御器208は、入射偏波を複数の直交偏波成分に分離する偏波ローテータ・スプリッタ(PRS)212を有する。PRS212はまた、ビームを複数の直交偏波成分に分離することに加えて、その成分のうちの1つの偏波を、その他の偏波成分の偏波と平行になるように90°回転させてよい。偏波制御器208は、3dBマルチモード干渉計(MMI)カプラ216、220、224に連結された3つの移相段214a、214b、218a、218b、222a、222bを有する。移相段214a、214b、218a、218b、222a、222bは、MMIカプラ216、220、224に接続された2つの異なるアームのそれぞれに配置されたPRS212部品に一緒に縦続接続されるとして図示される。偏波制御器の最終の段はまた、スイッチマトリクスの第1段としての機能を果たす。即ち、偏波制御器の最終の段は、第1スイッチング段も提供する光ミキサ段によって提供されてよい。最終の3dB MMIカプラ224の出力は、スイッチによって必要とされる特定のルーティングに応じて、入力信号の光パワーの全てがカプラの2つの出力のうちの1つにだけ伝達されるように制御されてよい。図2に示されるように、偏波制御器の最後の段はスイッチマトリクスの第1段を内蔵する。MZI構造において異なるアームに配置され、かつ、その2つのアームにおいて移相された信号を組み合わせるためのMMIカプラ224に接続された一対の移相器222a、22bから構成されるMZI構造によって、組み合わされたスイッチの最後の段は提供される。
【0030】
図2に示される光スイッチ200は、マルチプレーン・アーキテクチャを有する。しかしながら、入力段に内蔵された偏波制御器が、異なるスイッチアーキテクチャと共に用いられてよい。異なるスイッチアーキテクチャは、例えば、クロスバーアーキテクチャ、Benesアーキテクチャ、拡張Banyanアーキテクチャ等に基づいていてよい。更に、光スイッチ200は、複数の入力と複数の出力との間に光路を選択的に確立し得る空間スイッチとして図示されている。光スイッチは、代替的に、可変フィルタスイッチであってよい。このような可変フィルタスイッチが、再構成可能な挿入/分岐(add/drop)光学ネットワークスイッチ等のアプリケーションにおいて用いられてよく、また、シングルサイドバンド信号を生成するようサイドバンド等の望まない信号成分をフィルタで除去するのに用いられる、光学フィルタにおいて用いられてもよい。
【0031】
図3は、偏波制御器を内蔵する1×Nスイッチングセルを示す。図2を参照して上述された入力段202は、3段偏波制御器を内蔵する1×2スイッチを有しており、偏波制御器の最後の段は1×2スイッチによって提供されていた。図3に示されるように、1×Nスイッチ300が偏波制御器を内蔵してよい。1×Nスイッチ300は、入力302を、複数の出力304のうちの1つにスイッチする。スイッチングは、一緒に配置される複数の個々のスイッチングセルによって達成される。特に、1×Nスイッチは、偏波制御器を内蔵する入力段306を備えており、その偏波制御器は2段偏波制御器によって提供されるとして図示されている。入力段はまた、入力の偏波を制御することに加えて、入力信号、又はむしろ偏波調整された入力信号を、2つの更なる個々のスイッチングセル308a、308bのうちの1つにスイッチする。理解されるように、1×Nスイッチにおいて必要とされる個々のスイッチングセルの数は、出力の数Nと用いられるスイッチアーキテクチャの数とに依存する。1×Nスイッチが1×2個々のスイッチングセルによって提供されると仮定すると、特定のスイッチアーキテクチャに応じて、log(N)段のスイッチングセルがあり得る。
【0032】
1×Nスイッチの入力段306は、入射ビームを複数の直交偏波成分に分離し、その分離されたビームのうちの1つの偏波を90°回転させる偏波ローテータ・スプリッタ310を有する。その2つの分離されたビームは、MZI構造においてそれぞれ異なるアームに提供されてよい。図2を参照して上述されたように、偏波制御器は、MZI構造のそれぞれのアームに移相器を有し得る。しかしながら、図3に示されるように、入力段306の偏波制御器は、MZI構造の1つのアームだけに移相器312、316を含み得る。MZI構造において異なるアームは、3dB MMIカプラ314、318に連結される。複数の移相器312、316およびカプラ314、318は、一緒に縦続接続された複数段をPRS入力要素310に提供する。偏波制御器の最終の段は、1×Nスイッチの第1スイッチング段を内蔵する。即ち、偏波制御器の最終の段は偏波補正された信号を2つの光路のうちの1つに向けることが可能であり、その2つの路は光スイッチングセル308a、308bに連結される。
【0033】
図4は、N段偏波制御器を内蔵するスイッチングセルの入力段を示す。上述の図では、スイッチングセル入力段に内蔵された3段偏波制御器および2段偏波制御器について説明した。入力段400は、N段偏波制御器を内蔵する。入力段400は、光スイッチマトリクスの第1段として用いられ得る。図示されるように、偏波ローテータおよびスプリッタ(PRS)402として示され、入射ビームを複数の直交偏波成分に分離する入力要素を含むN段偏波制御器を、入力段400は内蔵する。複数Nの偏波制御段404、406、408が、PRS入力要素402から出力される偏波成分に一緒に縦続接続される。図示されるように、N段偏波制御器は、PRS入力要素402に接続された第1段404と、第1偏波制御段404に一緒に縦続接続された任意の1つ又は複数の追加の偏波制御段406と、追加の偏波制御段406に縦続接続された又は偏波制御器が2つの段のみを有する場合には第1段404に直接接続された、最後の偏波制御段408とを有する。最後の偏波制御段408は、最後の偏波制御段408の2つの出力のうちの1つに、偏波調整された出力ビームを選択的に向けることが出来る。従って、最後の偏波段408はまた、入力段400が一部を成すスイッチマトリクスの第1入力スイッチ段も内蔵する。即ち、最後の偏波段408はまた、スイッチマトリクスの第1入力スイッチ段として機能し、スイッチマトリクスの挿入損失および光パワー消費を低減し得る。
【0034】
個々の偏波制御段は、3dB MMIカプラ412、416が対向するアームにおける移相された信号を組み合わせ、また、段404、406、408を一緒に結合する状態で、MZI構造の対向するアームに配置された移相器410a、410b、414a、414bを有する。移相器410a、410b、414a、414bは、入力段400の対向するアームにおける光信号間の相対的な位相シフトを調整することが可能である。図4に示されるように、相対的な位相シフトは、2つ又は所望ならばそれ以上の移相器を用いて実現し得る。代替的に、第1段および最後の段404、408の移相器410a、414a等の2つのアームのうちの1つにおいて、単一の移相器が用いられ得る。
【0035】
図5は、別個のビームスプリッタを有する2段偏波制御器を内蔵する、スイッチマトリクスの入力段を示す。図2から4を参照して説明された偏波制御を内蔵する上述の入力段では、偏波ローテータおよびスプリッタ(PRS)要素を、その入力段の他のフォトニックコンポーネントと同一のチップ上に実装するとして示した。図5に示されるように、スイッチマトリクスの入力段500が、オフチップ部品502として提供される偏波ローテータおよびスプリッタを含むことが可能である。入力段500のオンチップ部品は、図2から4について上述されたものと類似している。特に、オンチップ部品504は、偏波制御器の第1段(506)と、偏波制御器の任意の追加の段(508)と、偏波制御器の最後の段とスイッチマトリクスの第1段との組み合わせ(510)とを有する。
【0036】
図6は、偏波制御器を内蔵する光スイッチのアプリケーションを内蔵するスイッチマトリクスに基づくスイッチを示す。スイッチ600は、SOI技術を用いて製造される光集積回路スイッチマトリクス602を備え得る。スイッチマトリクス602は異なるサイズのスイッチも可能であるが、4×4スイッチとして図示されている。スイッチマトリクス602は、中間スイッチング部品606を介して、入力604と出力608との間に光路を選択的に確立することが可能である。入力604は、上述されたように、偏波制御器を内蔵する。スイッチマトリクス602自体に加えて、スイッチ600はまた、スイッチマトリクス602の処理を制御するための制御器610を備え得る。制御器610は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(field programmable gate array、FPGA)、マイクロプロセッサ、又はマイクロ制御器として実装され得る。制御器610は、光集積回路スイッチマトリクス602と同一のチップ上に実装されてよく、又は、別個のチップ上に実装されてよい。特定の実装に関わらず、制御器610は、入力信号の偏波を制御するための偏波機能612、およびスイッチマトリクス602を介して所望の光路を確立するためのスイッチルーティング機能614を提供する。スイッチルーティング機能614は、スイッチマトリクスを介した信号のルーティングを決定するための様々な異なる手法を利用してよい。偏波機能とスイッチルーティング機能とは別個の機能として図示されているが、偏波制御器において組み合わされる。従って、偏波制御器はスイッチの第1段として機能し、偏波制御器の2つの出力のうちの1つにスイッチングする機能、および、偏波制御器の現在選択されている出力における偏波制御機能の両方を提供する。詳細には図示されていないが、制御器610は、偏波制御機能およびスイッチルーティングを実行するために、様々なフィードバック信号を受信し得る。例えば、制御器610は、第1入力を第4出力に接続するなど等の、確立される所望の光路の指示を受信し得る。偏波制御は、入力信号の偏波状態の指示を提供するために、偏波制御器の異なる部分からの測定又は信号を受信し得る。測定又は信号は、偏波制御入力602の偏波制御器における様々な場所で光路上にある様々な光タップを介して、提供され得る。偏波制御器に存在する段の数、偏波制御がリセットフリーか否か又は定期的なリセットを要求し得るか否か、他の要因と同様に利用可能な、光路に沿った測定、に応じて、偏波制御器に適用される制御アルゴリズムは変更されてよい。
【0037】
上述において、偏波制御器を内蔵するスイッチマトリクスの入力段の様々な実装が説明された。内蔵された偏波制御器を有するスイッチマトリクスは、信号を全光スイッチングすることを提供するシリコンオンインシュレータ(SOI)フォトニック装置として実装され得る。偏波制御器をスイッチ入力に内蔵することで、SOI光回路に偏波無依存光スイッチが提供される。偏波制御器を内蔵するスイッチマトリクスは、偏波によって情報が搬送されない光と共に機能することが理解されるだろう。集積された偏波制御器を有するスイッチマトリクスにおいて用いられる特定のフォトニックコンポーネントは、変更されてよい。例えば、入射ビームを複数の直交偏波成分に分離する入力部品は、偏波ローテータ・スプリッタ(PRS)、偏波分離表面グレーティングカプラ等のオンチップ部品によって提供されてよく、又は、偏波ビームスプリッタキューブによってオフチップで提供されてよい。MZIスイッチセル構造内の移相器は、例えば、熱光学スイッチ、又はキャリア注入スイッチによって提供されてよい。同様に、上述された3dB MMIカプラは、対称方向性カプラ、断熱カプラなど等の代替的なカプラと置き換えてよい。
【0038】
スイッチマトリクスの特定のアーキテクチャは変更されてよいが、それぞれのアーキテクチャは通常、例えば2×2スイッチとは対照的に、初期の1×N入力スイッチ段を含む。1×N入力スイッチ段は、上述された偏波制御器を内蔵する入力段と置き換えられてよい。偏波制御器は、エンドレス偏波調整を提供してよく、又はリセットを要求してよい。
【0039】
上述されたような偏波制御器の入力を内蔵するスイッチマトリクスを提供する光回路が、非コヒーレント信号、又は、非コヒーレント受信器によって検出される信号をスイッチする全光スイッチ等の様々なアプリケーションで用いられ得る。異なるアプリケーションは当業者には明らかであろうが、可能な応用の例としては、例えば、データセンターにおけるパケットスイッチングアプリケーション、および高スループット算出アプリケーションが挙げられる。上述されたような偏波制御器入力を内蔵するスイッチマトリクスに基づく光スイッチが、SOI基盤上に製造され得て、内蔵された偏波制御器のないスイッチと比べてより低い挿入損失およびパワー消費を有する光スイッチを提供し得る。
【0040】
本開示は、説明の目的のために、発明を理解してもらえるよう、複数の特定の実施形態、実装、例および詳細を提供してきた。しかしながら、実施形態は、具体的な詳細の全てがない状態で、又は、均等な配置で実施されてよいことは明らかである。他の例において、発明の実施形態を不必要に曖昧にすることを避けるために、いくつかの周知の構造およびデバイスがブロック図形式で示され、又は省略されている。説明は決して、本明細書に記載され説明される例示的な設計および実装の例を含む、記載された例示的な実装、図面、および技術に限定されるものではないが、その均等物の全範囲と共に添付の特許請求の範囲の範囲内で変更し得る。
【0041】
本開示においていくつかの実施形態が提供されてきたが、開示されたシステムおよび部品は、本開示の精神又は範囲から逸脱することなく、他の多くの具体的な形式で具現化され得ることが理解されるであろう。本例は、限定的なものではなく、例示的なものと見なされるべきであり、本明細書に提供される詳細に限定する意図は無い。例えば、様々な要素又は構成部品は組み合わされてよく、もしくは他のシステムに統合されてよく、又は、特定の特徴が省略されてよく、もしくは実装されなくてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6