特許第6969858号(P6969858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6969858
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】荷役システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   B66F9/24 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-108992(P2020-108992)
(22)【出願日】2020年6月24日
【審査請求日】2020年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 絢介
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−511739(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/049490(WO,A1)
【文献】 特開2017−218015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内でオペレータの操作によって走行および荷役作業を行うフォークリフトを備えた荷役システムであって、
前記フォークリフトは、フォークを用いて、荷物が載置されたパレットを昇降するよう構成され、
前記荷役システムは、
前記施設の床面に対する前記フォークリフトのスリップ度合に関するスリップ度合データと、前記フォークリフトのバランス度合に関するバランス度合データと、前記フォークリフトが横転する可能性を示す横転可能性スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集部と、
前記収集部に収集された前記教師データから機械学習を行い、前記機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成部と、
現時点の前記スリップ度合データ及び前記バランス度合データを所定時間ごとに取得する取得部と、
前記学習モデル生成部で生成された前記学習モデルに、前記取得部から取得される前記現時点の前記スリップ度合データ及び前記バランス度合データを入力することで、前記横転可能性スコアを前記学習モデルから取得する予測部と、
前記予測部によって取得される前記横転可能性スコアに基づいて、所定制御を実行する制御部と、を備える
ことを特徴とする荷役システム。
【請求項2】
前記取得部は、
前記フォークリフトの駆動輪の回転速度を検出する駆動輪検出部と、
前記フォークリフトの従動輪の回転速度を検出する従動輪検出部と、
前記フォークの位置を検出するフォーク位置検出部と、
前記フォークで昇降される前記荷物の重量を検出する重量検出部と、を備え、
前記スリップ度合データは、前記駆動輪検出部及び前記従動輪検出部で検出された前記駆動輪と前記従動輪との間の回転速度の差を含み、
前記バランス度合データは、
前記フォークリフトの種類と、
前記フォークリフトの重量と、
前記フォーク位置検出部で検出された前記フォークの位置と、
前記重量検出部で検出された前記荷物の重量と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の荷役システム。
【請求項3】
前記フォークリフトは、前記フォークリフトに搭乗するオペレータが視認可能な表示部を備え、
前記制御部は、前記表示部に警告画面を表示する制御を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の荷役システム。
【請求項4】
前記フォークリフトは、駆動輪を旋回する駆動輪旋回機構と、駆動輪を回転駆動する駆動輪駆動機構と、を備え、
前記制御部は、前記駆動輪旋回機構及び前記駆動輪駆動機構の駆動速度低下又は停止する制限を行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の荷役システム。
【請求項5】
施設内でオペレータの操作によって走行および荷役作業を行うフォークリフトを備えた荷役システムの制御方法であって、
前記フォークリフトは、フォークを用いて、荷物が載置されたパレットを昇降するよう構成され、
前記制御方法は、
前記施設の床面に対する前記フォークリフトのスリップ度合に関するスリップ度合データと、前記フォークリフトのバランス度合に関するバランス度合データと、前記フォークリフトが横転する可能性を示す横転可能性スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集ステップと、
前記収集ステップで収集された前記教師データから機械学習を行い、前記機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成ステップと、
現時点の前記スリップ度合データ及び前記バランス度合データを所定時間ごとに取得する取得ステップと、
前記学習モデル生成ステップで生成された前記学習モデルに、前記取得ステップで取得される前記現時点の前記スリップ度合データ及び前記バランス度合データを入力することで、前記横転可能性スコアを前記学習モデルから取得する予測ステップと、
前記予測ステップによって取得される前記横転可能性スコアに基づいて、所定制御を実行する制御ステップと、を備える
ことを特徴とする荷役システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、フォークリフトは、オペレータによって走行運転及びフォーク操作が行われる(特許文献1等参照)。フォークリフトは、車体から前後に延設される一対のストラドルレッグと、ストラドルレッグに沿って前後にスライドするマストと、マストに沿って昇降する一対のフォークと、車体の後部に設けられた駆動輪と、ストラドルレッグの前部に設けられた一対の従動輪と、を備える。
【0003】
また、車体は、オペレータが搭乗する運転スペースを備える。運転スペースには、アクセルレバーおよびブレーキ、さらに、フォーク操作を行うためのフォーク操作レバー、走行運転を行うためのハンドルが設けられる。フォークリフトは、フォーク操作レバーの動作に応じて、フォークの昇降及び前後進の制御を行うための制御部を備える。オペレータがフォークリフトを走行運転及びフォーク操作することで、工場や倉庫などの施設内に設置された棚の収納部に対して荷物を出し入れする荷役作業が行われる。
【0004】
ところで、施設の床面と駆動輪とに関するスリップ度合や、車体重量と荷物重量とに関するバランス度合によっては、オペレータが車両の走行速度や旋回角に十分な注意をしなければ、車体が横転することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−354394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、車体が横転する可能性がある場合に、オペレータが慎重な運転を行うようにできる荷役システムおよび制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る荷役システムは、
施設内でオペレータの操作によって走行および荷役作業を行うフォークリフトを備えた荷役システムであって、
フォークリフトは、フォークを用いて、荷物が載置されたパレットを昇降するよう構成され、
荷役システムは、
施設の床面に対するフォークリフトのスリップ度合に関するスリップ度合データと、フォークリフトのバランス度合に関するバランス度合データと、フォークリフトが横転する可能性を示す横転可能性スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集部と、
収集部に収集された教師データから機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成部と、
現時点のスリップ度合データ及びバランス度合データを所定時間ごとに取得する取得部と、
学習モデル生成部で生成された学習モデルに、取得部から取得される現時点のスリップ度合データ及びバランス度合データを入力することで、横転可能性スコアを学習モデルから取得する予測部と、
予測部によって取得される横転可能性スコアに基づいて、所定制御を実行する制御部と、を備える。
【0008】
好ましくは、
取得部は、
フォークリフトの駆動輪の回転速度を検出する駆動輪検出部と、
フォークリフトの従動輪の回転速度を検出する従動輪検出部と、
フォークの位置を検出するフォーク位置検出部と、
フォークで昇降される荷物の重量を検出する重量検出部と、を備え、
スリップ度合データは、駆動輪検出部及び従動輪検出部で検出された駆動輪と従動輪との間の回転速度の差を含み、
バランス度合データは、
フォークリフトの種類と、
フォークリフトの重量と、
フォーク位置検出部で検出されたフォークの位置と、
重量検出部で検出された荷物の重量と、を含む。
【0009】
好ましくは、
フォークリフトは、フォークリフトに搭乗するオペレータが視認可能な表示部を備え、
制御部は、表示部に警告画面を表示する制御を行う。
【0010】
好ましくは、
フォークリフトは、駆動輪を旋回する駆動輪旋回機構と、駆動輪を回転駆動する駆動輪駆動機構と、を備え、
制御部は、駆動輪旋回機構及び駆動輪駆動機構の駆動速度低下又は停止する制限を行う。
【0011】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係る荷役システムの制御方法は、
施設内でオペレータの操作によって走行および荷役作業を行うフォークリフトを備えた荷役システムの制御方法であって、
フォークリフトは、フォークを用いて、荷物が載置されたパレットを昇降するよう構成され、
制御方法は、
施設の床面に対するフォークリフトのスリップ度合に関するスリップ度合データと、フォークリフトのバランス度合に関するバランス度合データと、フォークリフトが横転する可能性を示す横転可能性スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集ステップと、
収集ステップで収集された教師データから機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成ステップと、
現時点のスリップ度合データ及びバランス度合データを所定時間ごとに取得する取得ステップと、
学習モデル生成ステップで生成された学習モデルに、取得ステップで取得される現時点のスリップ度合データ及びバランス度合データを入力することで、横転可能性スコアを学習モデルから取得する予測ステップと、
予測ステップによって取得される横転可能性スコアに基づいて、所定制御を実行する制御ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る荷役システムおよび制御方法は、上記構成を備えることによって、車体が横転する可能性がある場合に、オペレータが慎重な運転を行うようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】フォークリフトを示し、(A)は平面図、(B)は側面図。
図2】フォークリフトの油圧回路を説明するための図。
図3】車体重心及び荷物重心を説明するための図。
図4】荷役システムを説明するためのブロック図。
図5】入力データID及び出力データODを示すグラフ図。
図6】荷役システムの制御方法を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明に係る荷役システム及び制御方法について説明する。
【0015】
荷役システムは、オペレータが搭乗して走行及び荷役作業を行うフォークリフト1を備える。また、車体の前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zは、それぞれに対して直角である。
【0016】
図1の通り、フォークリフト1は、車体2の前方に一対のマスト50が立設される。各マスト50は、車体の左右方向Yに間隔を置いて配置される。リフトブラケット51は、マスト50に沿って、車体の上下方向Zに昇降するように支持される。
【0017】
フォークリフト1は、荷役作業を行うための一対のフォーク52を備える。フォーク52は、リフトブラケット51の左右に取り付けられており、車体の左右方向Yに間隔を置いて配置される。そのため、フォーク52は、リフトブラケット51とともに昇降する。
【0018】
フォークリフト1は、車体2の前部に一対のストラドルレッグ53を備える。各ストラドルレッグ53は、車体の前後方向Xに延設されると共に、車体の左右方向Yに間隔を置いて配置される。ストラドルレッグ53は、マスト50が車体の前後方向Xに進退するようにガイドする。
【0019】
フォークリフト1は、車体2の後部に運転スペース55が設けられる。運転スペース55の下部にはブレーキペダル54が設けられており、オペレータが足でブレーキペダル54を操作することで、ブレーキを作用・解除する。フォークリフト1は、運転スペース55の上方を覆って落下物からオペレータを保護するためのヘッドガード57を備える。
【0020】
フォークリフト1は、ストラドルレッグ53の前部に設けられた一対の従動輪(前輪)20,20’を備える。フォークリフト1は、車体2の後部に設けられた駆動輪21を備える。フォークリフト1は、駆動輪21を旋回するための駆動輪旋回機構23と、駆動輪21を回転駆動するための駆動輪駆動機構(走行モータ)24と、を備える。駆動輪旋回機構23は、駆動輪21を車体の前後方向X及び左右方向Yに対して所定角度に旋回する。駆動輪駆動機構24は、駆動輪21を正方向及び逆方向に回転することで、車体2を前後進する。
【0021】
図2の通り、フォークリフト1の油圧回路7は、作動油を貯留する作動油タンク80と、作動油タンク80からの作動油を吐出する作動油ポンプ81と、作動油ポンプ81を回転駆動するシリンダ用モータ82とを備える。油圧回路7は、フォークシリンダ70,71,72を制御するための制御弁73,74,75を備える。
【0022】
リフト用制御弁73は、リフトシリンダ70への作動油の給排を制御する。ティルト用制御弁74は、ティルトシリンダ71への作動油の給排を制御する。リーチ用制御弁75は、リーチシリンダ72への作動油の給排を制御する。油圧回路7は、制御弁73,74,75を介して作動油をフォークシリンダ70,71,72へ供給するための管路83を備える。油圧回路7は、作動油をフォークシリンダ70,71,72から制御弁73,74,75を介して排出するための管路84を備える。
【0023】
図1の通り、運転スペース55は、運転スペース55の前側及び左右側のサイドフレームに囲まれており、運転スペース55の後側に乗降口が形成される。フォークリフト1は、運転スペース55の前方に操作部56を備える。
【0024】
操作部56は、車体2の進行方向を操作するためのハンドル3及びアクセルレバー(操作レバー)10を備える。ハンドル3は、旋回可能に構成される。フォークリフト1は、ハンドル3の旋回角度αを検知するための旋回ポテンショメータ30を備える。
【0025】
アクセルレバー10は、車体の上下方向Zに対して傾動可能に構成される。フォークリフト1は、アクセルレバー10の傾き角度θ1を検知するための第1傾きポテンショメータ12を備える。
【0026】
操作部56は、複数の操作レバー58を備えており、オペレータが各操作レバー58を操作することで、フォーク52を昇降・傾動・前後進できる。フォークリフト1は、各操作レバー58の傾き角度θ2を検知するための第2傾きポテンショメータ13を備える。
【0027】
フォークリフト1は、駆動輪旋回機構23及び駆動輪駆動機構24を制御するための制御システム4を備える。制御システム4は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とし、各種プログラムを実行する。
【0028】
制御システム4は、アクセルレバー10の傾き角度θ1に基づいて、駆動輪駆動機構24を制御する。また、制御システム4は、ハンドル3の旋回角度αに基づいて、駆動輪旋回機構23を制御する。また、制御システム4は、各操作レバー58の傾き角度θ2に基づいて、制御弁73,74,75及びシリンダ用モータ82を制御する。
【0029】
フォークリフト1は、駆動輪21の回転速度を検出する駆動輪検出部31と、従動輪20の回転速度を検出する従動輪検出部32と、を備える。駆動輪検出部31及び従動輪検出部32は、ロータリーエンコーダー等からなり、その回転数信号に基づいて、駆動輪21及び従動輪20の回転の速度及び方向(前進または後進)を検出する。
【0030】
フォークリフト1は、フォーク52に接続されたフォーク位置検出部580を備える。フォーク位置検出部580は、フォーク52の前後方向X及び上下方向Zの位置を測定する。フォーク位置検出部580は、例えば、制御弁73,74,75における開閉弁の位置を検知し、フォーク用モータ82の回転角を測定して、フォーク52の前後方向X及び上下方向Zの位置を測定する。
【0031】
フォークリフト1は、フォーク52に取り付けられた重量検出部581を備える。重量検出部581は、例えば、フォーク52の上面に取り付けられた圧力センサーからなり、フォーク52で持ち上げられた荷物Mの圧力に基づいて荷物Mの重量を測定する。
【0032】
図1の通り、フォークリフト1は、操作部56に設けられた表示部59を備える。表示部59は、ハンドル3、アクセルレバー10、操作レバー58を操作するオペレータが視認できるよう、オペレータが見えやすい位置に配置される。
【0033】
図4の通り、荷役システムは、教師データ46を収集する収集部40を備える。教師データ46は、スリップ度合Sに関するスリップ度合データD1と、バランス度合Bに関するバランス度合データD2とを含む。
【0034】
スリップ度合Sに関するスリップ度合データD1は、例えば、(1)駆動輪検出部31及び従動輪検出部32で検出された駆動輪21の回転速度V1と従動輪20の回転速度V2との間の回転速度の差dVである。
【0035】
バランス度合Bに関するバランス度合データD2は、例えば、図3の通り、(2)フォークリフト1の種類、(3)フォークリフト1の重量W1、(4)フォーク位置検出部580で検出されたフォーク52の前後方向Xの位置P及び上下方向Zの位置H、(5)荷物Mの重量W2である。なお、上記(2)フォークリフト1の種類は、リーチ型フォークリフトや、カウンタバランス型フォークリフト等のバランス度合等に応じて、予め数値パラメータが設定される。
【0036】
荷役システムは、収集部40に収集された教師データ46(上記(1)〜(5))から機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成部41を備える。本実施の形態の学習モデル生成部41は、教師あり学習を実施する。教師あり学習では、教師データ46、すなわち、入力データIDと出力データODとの組を大量に学習モデル生成部41に入力する。
【0037】
入力データIDは、(1)回転速度の差dV、(2)フォークリフト1の種類、(3)フォークリフト1の重量W1、(4)フォーク52の位置P,H、(5)荷物Mの重量W2を含む。出力データODは、横転可能性スコアである。フォークリフト1が横転するか否かの可能性を示す横転可能性スコアとして、入力データIDを評価し、0から10までの数値パラメータが設定される。
【0038】
例えば、横転可能性スコアの数値パラメータが高い、すなわち、フォークリフト1が横転する可能性が高いと判断される場合として、(1)回転速度の差dVが大きい場合、(2)フォークリフト1がカウンタバランス型である場合、(3)フォークリフト1の重量W1が小さい場合、(4)フォーク52の位置P,Hが車体2から離れている場合、(5)荷物Mの重量W2が大きい場合、フォークリフト1が不安定になるので、フォークリフト1が横転することが多い。
【0039】
一方、横転可能性スコアの数値パラメータが低い、すなわち、フォークリフト1が横転する可能性が低いと判断される場合として、(1)回転速度の差dVが小さい場合、(2)フォークリフト1がリーチ型である場合、(3)フォークリフト1の重量W1が大きい場合、(4)フォーク52の位置P,Hが車体2に近い場合、(5)荷物Mの重量W2が小さい場合、フォークリフト1が安定しているので、フォークリフト1が横転することが少ない。
【0040】
横転可能性スコアは、(1)回転速度の差dV、(2)フォークリフト1の種類、(3)フォークリフト1の重量W1、(4)フォーク52の位置P,H、(5)荷物Mの重量W2のいずれかの数値パラメータで設定されてもよいし、重み付け係数により加重平均された数値パラメータで設定されてもよい。
【0041】
なお、実際に、オペレータがフォークリフト1を運転するとき、施設の床面に対するスリップ度合、フォークリフトの種類・重量、フォークの位置、荷物の重量等によって、フォークリフト1が横転することが多い。そのため、(1)回転速度の差dV、(2)フォークリフト1の種類、(3)フォークリフト1の重量W1、(4)フォーク52の位置P,H、(5)荷物Mの重量W2と、フォークリフト1が横転することとの間に相関関係等の一定の関係が存在することは推認できる。
【0042】
学習モデル生成部41は、一般的なニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いる。学習モデル生成部41は、相関関係を有する入力データIDと出力データODを教師データ46として機械学習を行うことにより、入力から出力を推定するモデル(学習モデル)、すなわち、入力データID(上記(1)〜(5))を入力すると、横転可能性スコアを出力するモデルを生成する。
【0043】
荷役システムは、現時点の入力データIDを所定時間ごとに取得する取得部45を備える。本実施形態では、取得部45は、駆動輪検出部31、従動輪検出部32、フォーク位置検出部580、重量検出部581である。上記の通り、入力データIDは、(1)回転速度の差dV、(2)フォークリフト1の種類、(3)フォークリフト1の重量W1、(4)フォーク52の位置P,H、(5)荷物Mの重量W2である。入力データIDのうち(1)回転速度の差dV、(4)フォーク52の位置P,H、(5)荷物Mの重量W2は、所定時間(例えば1分)ごとに取得される。入力データIDのうち(2)フォークリフト1の種類、(3)フォークリフト1の重量W1は、一度取得されると、フォークリフト1が変更されるまで再取得されない。
【0044】
荷役システムは、学習モデル生成部41で生成された学習モデルを、取得部45から取得される現時点の入力データIDに適用することで、フォークリフト1が横転するか否かを予測する予測部42を備える。
【0045】
図5の通り、所定時間ごとに予測部42に現時点の入力データIDが入力されたときに、(1)回転速度の差dV、(4)フォーク52の位置P,H、(5)荷物Mの重量W2を解析して横転可能性スコアが取得される。なお、上記の通り、入力データIDのうち(2)フォークリフト1の種類、(3)フォークリフト1の重量W1は、一度取得されると、フォークリフト1が変更されるまで再取得されない。取得された横転可能性スコアが予め設定された所定の数値パラメータ以上という条件を満たせば、フォークリフト1が横転する可能性が高いと予測される。
【0046】
荷役システムは、横転可能性が高いときに、フォークリフト1に設けられた表示部59に対して所定の警告画面を表示する。警告画面は、例えば、「横転に注意!」「運転に注意!」等の大きな文字が表示されて、オペレータに対して注意を促す。
【0047】
図6の通り、上記の荷役システムは、以下の制御方法を実行する。なお、重複説明を避けるため、既に説明した部分は省略する。
【0048】
収集部40によって、教師データ46を収集する(収集ステップ:S1)。そして、学習モデル生成部41によって、収集ステップS1で収集部40に収集された教師データ46から機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成および記憶する(学習モデル生成ステップ:S2)。取得部45によって、現時点の入力データIDを所定時間ごとに取得する(取得ステップ:S3)。
【0049】
予測部42によって、学習モデル生成ステップS2で生成された学習モデルを、取得ステップS3で取得される現時点の入力データIDに適用することで、横転可能性を予測する(予測ステップ:S4)。制御部43によって、予測ステップS4によって予測された出力データODに基づいて、表示部59に警告画面を表示する制御を行う(制御ステップ:S5)。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されない。
【0051】
他の実施形態では、バランス度合Bに関するバランス度合データD2は、上記に加えて、従動輪20の回転速度V2、ハンドル3の旋回角度αを含むことができる。従動輪20の回転速度V2(フォークリフト1の走行速度)が速い場合、ハンドル3の旋回角度αが大きい場合、フォークリフト1が横転することが多い。
【0052】
他の実施形態では、制御部43は、駆動輪21を旋回する駆動輪旋回機構23と、駆動輪21を回転駆動する駆動輪駆動機構(走行モータ)24との駆動速度低下や停止などの制限を行うことができる。フォークリフトの走行が不安定な場合、駆動輪旋回機構23及び駆動輪駆動機構24の駆動の制限によって、フォークリフト1の走行及び旋回動作を制限して、フォークリフト1が横転しないようにできる。なお、制御部43は、駆動輪旋回機構23及び駆動輪駆動機構24の駆動の制限を行うと共に、上記の通り、表示部59に警告画面を表示できる。
【0053】
本発明の効果を説明する。
フォークリフトの走行が不安定な場合、フォークリフトが横転することがあるが、所定の制御を行うことで、オペレータは慎重な運転を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 フォークリフト
20 従動輪
21 駆動輪
52 フォーク
31 駆動輪検出部
32 従動輪検出部
580 フォーク位置検出部
581 重量検出部
40 収集部
41 学習モデル生成部
42 予測部
43 制御部
45 取得部
46 教師データ
81 作動油ポンプ
82 モータ
【要約】
【課題】車体が横転する可能性がある場合に、オペレータが慎重な運転を行うようにする。
【解決手段】スリップ度合データと、バランス度合データと、横転可能性スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集部46と、収集部46に収集された教師データから機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成部41と、現時点のスリップ度合データ及びバランス度合データを所定時間ごとに取得する取得部45と、学習モデル生成部41で生成された学習モデルに、取得部45から取得される現時点のスリップ度合データ及びバランス度合データを入力することで、横転可能性スコアを学習モデルから取得する予測部42と、予測部42によって取得される横転可能性スコアに基づいて、所定制御を実行する制御部43と、を備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6