(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969891
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20211111BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20211111BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
H05K3/28 D
H05K1/02 Q
H01L23/12 J
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-89115(P2017-89115)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-190752(P2018-190752A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228833
【氏名又は名称】日本シイエムケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀和
【審査官】
黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−015209(JP,A)
【文献】
特許第3174393(JP,B2)
【文献】
特開2013−115103(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0019242(KR,A)
【文献】
特開2015−185671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H05K 1/02
H01L 23/12
H05K 3/00
H05K 7/20
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品からの熱を放熱するプリント配線板の製造方法であって、両面銅張積層板を写真法にて回路形成したコア基板の上下に半硬化状態のプリプレグと銅箔を積層した絶縁基材に貫通穴を形成し、前記貫通穴に、無電解・電解銅めっきを施す工程と、次いで、回路形成を施し、選択的に貫通めっきスルーホールと貫通孔を形成する工程と、次いで、ソルダーレジストを形成する工程と、次いで、一方の面に、剥離可能な絶縁樹脂フィルムを貼り合せる工程と、次いで、選択的に金属片を貫通孔又は貫通めっきスルーホールに挿入する工程と、次いで、前記金属片が露出した開口側から金属片と貫通孔又は貫通めっきスルーホールの隙間に、インクジェット工法によりインクを塗布し、前記金属片を固定する絶縁膜を形成する工程と、次いで、前記絶縁樹脂フィルムを剥離する工程と、次いで、前記金属片上に発熱部品をはんだ実装し、その反対面に熱伝導性の絶縁樹脂を介して放熱フィンを形成する工程とを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記インクジェット工法で、前記金属片を固定する絶縁膜と同時に文字も形成することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記インクジェット工法で用いられるインクの粘度が0.15dPa・s以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記金属片を固定する絶縁膜を、UV硬化、UV硬化及び熱硬化、又はプリント配線板のソルダーレジストの硬化温度より低い硬化温度で硬化せしめることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装部品から発熱される熱をプリント配線板のスルーホールを介して、他方面のヒートシンクに放熱するプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、部品そのものがモジュール化して、小さくなる傾向にある。そんな中、放熱要求は変わらず、通常の貫通めっきスルーホールをヒートシンクに接続しても効果的に放熱することは難しかった。
【0003】
一般的に銅ピンを機械的に圧入することでプリント配線板のスルーホールに当該銅ピンを圧入するプリント配線板がある(所謂「銅インレイ」と呼ばれている)。
当該銅インレイは、銅ピンを基板の板厚より厚く作成し、該当するスルーホールに銅ピンを挿入して、機械的に圧力を掛け、銅ピンが機械的な圧力に押され押し潰されることで、スルーホールの内壁と銅ピンが接触するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下
図6及び
図7を用いて、斯かる銅ピンを機械的に圧入する銅インレイを説明する。
【0005】
プリント配線板Tは、絶縁基板50の表裏に導体回路51を備え、導体回路51は、銅箔51aとパネルめっき51bからなる。パネルめっき51bは、無電解銅めっき・電解銅めっきからなり、銅ピン52が圧入装置53の機械的圧力により貫通めっきスルーホール51cに圧入されている。
【0006】
当該圧入により、
図7に示すように、銅ピン52が、貫通めっきスルーホール51c内において機械的圧力により押し潰された状態となっている。しかし、銅ピン52を機械的に圧入するため、プリント配線板にも機械的なストレスが掛かり、絶縁基板50のガラス繊維と樹脂に剥離部54が生じる問題があった。
【0007】
そこで、ガラス繊維と樹脂との剥離を改善すべく、機械的な圧入方式から銅ピンを絶縁膜で固定する方式が求められるようになってきた。
しかしながら、絶縁膜で固定する方式でガラス繊維と樹脂の密着性は改善されるものの、以下に示す新たな問題が発生するようになった。
すなわち、まず、プリント配線板に形成されたスルーホールに基板の板厚より高さの低い銅ピンを挿入する。次いで、絶縁膜形成用の樹脂を充填するが、その際、スルーホールの内壁と銅ピンとの隙間が少ないため、当該樹脂をうまく充填しないと充填した樹脂が盛り上がり、後工程での部品の実装に障害の恐れがあった。また、銅ピンを固定する絶縁膜は少なくとも後工程での部品実装まで銅ピンを固定する接着力が必要であるが、当該隙間に少量しか充填されないため、接着力が弱いと云う問題があった。
而して、それらは何れも部品実装の障害となっており、安定的な部品実装は困難なのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−263003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたもので、部品実装に障害のない放熱性に優れたプリント配線板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、貫通穴に金属片を挿入し、インクジェット工法によるインクで固定すれば、極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、発熱部品からの熱を放熱するプリント配線板の製造方法であって、
両面銅張積層板を写真法にて回路形成したコア基板の上下に半硬化状態のプリプレグと銅箔を積層した絶縁基材に貫通穴を形成し、前記貫通穴に、無電解・電解銅めっきを施す工程と、次いで、回路形成を施し、選択的に貫通めっきスルーホールと貫通孔を形成する工程と、次いで、ソルダーレジストを形成する工程と、次いで、一方の面に、剥離可能な絶縁樹脂フィルムを貼り合せる工程と、次いで選択的に金属片を貫通孔又は貫通めっきスルーホールに挿入する工程と、次いで、前記金属片が露出した開口側から
金属片と貫通孔又は貫通めっきスルーホールの隙間に、インクジェット工法によりインクを塗布し、前記金属片を固定する絶縁膜を形成する工程と、次いで、前記絶縁樹脂フィルムを剥離する工程と、次いで、前記金属片上に発熱部品をはんだ実装し、その反対面に熱伝導性の絶縁樹脂を介して放熱フィンを形成する工程とを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明で得られたプリント配線板は、インクジェット工法によるインク塗布により形成された絶縁膜で金属片とプリント配線板の貫通孔が固定されているので、安定した金属片と貫通孔の固定作用が得られる結果、部品実装に障害が生じず、安定的な実装が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のプリント配線板の製造例を示す断面工程図である。
【
図2】
図1に引き続く、本発明のプリント配線板の製造例を示す断面工程図である。
【
図3】本発明のプリント配線板の製造例を示す断面工程図である。
【
図4】
図3に引き続く、本発明のプリント配線板の製造例を示す断面工程図である。
【
図5】本発明で得られたプリント配線板に発熱部品を実装した放熱構造部の断面図である。
【
図6】従来のプリント配線板の製造例を示す断面図である。
【
図7】
図6で得られた従来のプリント配線板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、
図1から
図4を用いて説明する。
【0015】
まず、両面銅張積層板を写真法にて回路形成したコア基板11の上下に半硬化状態のプリプレグ12と銅箔13を積層する(
図1(a))。次に、
図1(a)で積層された積層基板に、貫通穴14をドリル加工やレーザ加工を用いて形成する(
図1(b))。
【0016】
続いて、当該貫通穴14を形成した積層基板全面に無電解・電解銅めっき15を施す(
図2(c))。
次いで、写真法にて回路形成を施し、選択的に貫通めっきスルーホール16と貫通孔17を形成し、次いで、最外層に写真法にてソルダーレジスト18を形成する工程(
図2(d))。
次いで、ソルダーレジスト18を形成したプリント配線板の一方の面(下方の面)に、剥離可能な絶縁樹脂フィルム19を貼り合わせる(
図3(e))。当該絶縁樹脂フィルム19は、貫通孔17に挿入した金属片20を支える支持体の役割を果たす。
【0017】
次いで、貫通孔17に金属片20を挿入する。然る後、インクジェット塗布装置を使用して、当該金属片20が露出した上部開口側から金属片20と貫通孔17の隙間にインクジェット用のインキを塗布し、絶縁膜21を形成して金属片20を貫通孔17に固定する(
図3(f))。尚、当該絶縁膜21を形成するのと同時に文字もインクジェットを使用して形成することも出来る。この場合、通常の文字印刷と同時に当該絶縁膜21を形成することができるため、余分な工程を追加することなく金属片20を固定することができ、生産効率が向上する。
【0018】
当該インクで形成された、金属片20固定用の絶縁膜21の硬化は、UV硬化温度、UV・熱硬化併用タイプの硬化温度又はプリント配線板のソルダーレジストの硬化温度より低い温度で行なうのが好ましい。
ちなみに、ソルダーレジスト18の硬化温度は、180度前後である。そのため、当該絶縁膜21は、温度180℃以下、特に、100℃〜150℃の間で硬化せしめるのがプリント配線板に熱的負荷を加えることなく加工することが出来るため好ましい。
【0019】
また、当該金属片20と貫通孔17との隙間が貫通孔17径に対して、片側50μm程度で設計されている。そのため、絶縁膜21となるインクをインクジェットで形成する際も、当該隙間にインクが浸透し易いように、インクの粘度を0.15dPa・s以下に調整することが好ましい。
インクの粘度が0.15dPa・sよりも低ければ、金属片20と貫通孔17の隙間が狭くてもスムーズにインクが隙間に浸透し、インクにより形成された絶縁膜21で金属片20を貫通孔17により確実に固定することが出来る。しかも、インクが金属片20と貫通孔17の隙間にスムーズに浸透するため、絶縁膜21が極端に突出することがないので、突出した絶縁膜21を研磨作用等で平らにする工程を省くことが出来る。
【0020】
次いで、絶縁膜21で金属片20を固定した後に、金属片20を支える支持体として使用していたフィルム19を剥離してプリント配線板Pを得た(
図4(g))。
次いで、前工程でフィルム19を剥離した面の金属片21と貫通孔17の隙間にも絶縁膜21を形成してプリント配線板Qを得た(
図4(h))。ただし、
図4(h)に示されるように、必ずしも両面に金属片20を固定する絶縁膜21を形成する必要は無く、片面、両面のどちらの仕様を選択しても構わないことは言うまでもない。
【0021】
続いて、
図5を用いて、本発明で得られたプリント配線板に発熱部品22をはんだ23実装し、その反対面に熱伝導性の絶縁樹脂24を介して放熱フィン25を形成したプリント配線板の放熱構造部について説明する。
斯かる放熱構造部Rにおける放熱の仕組みとしては、発熱部品22からの熱は貫通孔に配置された金属片20を介して、放熱フィン25から外部に効率良く放熱される。尚、金属片20が、金属の塊からなるため、放熱性能がより要求されれば、貫通孔の孔径を大きくして、当該貫通孔に挿入する金属片20も貫通孔の孔径に合わせて大きくすることにより放熱性能を高めることが出来る。
【符号の説明】
【0022】
11:コア基板
12:半硬化状態のプリプレグ
13:銅箔
14:貫通穴
15:無電解・電解銅めっき
16:貫通めっきスルーホール
17:貫通孔
18:ソルダーレジスト
19:絶縁樹脂フィルム
20:金属片
21:絶縁膜
22:発熱部品
23:はんだ
24:伝導性絶縁樹脂
25:放熱フィン
P:本発明で得られたプリント配線板
Q:本発明で得られたプリント配線板
R:本発明で得られたプリント配線板の放熱構造部
51c:貫通めっきスルーホール
52:銅ピン
53:圧入装置
54:ガラス繊維と樹脂との剥離部
T:従来のプリント配線板