特許第6969895号(P6969895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969895
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/04 20060101AFI20211111BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20211111BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F16K3/04 A
   F16K31/04 Z
   F16K31/44 F
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-92849(P2017-92849)
(22)【出願日】2017年5月9日
(65)【公開番号】特開2018-189175(P2018-189175A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】横江 悟
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−141093(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/147897(WO,A1)
【文献】 特表2001−516861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/04
F16K 31/04
F16K 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が供給されるバルブ室と、前記バルブ室の内側に設けられた弁座面と、前記弁座面に設けられた開口部と重なる位置に載置される弁体と、前記弁体を前記弁座面に沿って移動させる弁体駆動部材と、前記弁体駆動部材を駆動する駆動源と、を有し、
前記弁体は、前記弁座面に当接する当接面に設けられた凹部と、前記凹部の底面に開口する貫通孔を備え、
前記凹部は、前記弁体駆動部材による弁体の移動方向である第1方向の幅が、前記第1方向と直交する第2方向の幅より小さく、
前記弁体には複数の前記貫通孔が形成され、前記複数の前記貫通孔は、少なくとも一部の穴径が異なっており、
前記当接面には、前記複数の前記貫通孔に対応する複数の前記凹部が互いに離間した位置に形成されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記凹部の縁は、前記貫通孔の前記第1方向の両側に位置する直線部を備えることを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記弁体駆動部材は、前記弁座面に対して垂直な回転軸線を中心として前記弁体を回転させ、前記回転軸線を中心として前記弁体が回転したときの前記貫通孔の移動軌跡上に前記開口部が位置し、
前記第1方向は、前記回転軸線を中心とした周方向であり、
前記第2方向は、前記回転軸線を中心とした径方向であり、
前記凹部は、前記周方向の幅が前記径方向の幅より小さい長穴形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記弁体の外形は前記回転軸線を中心とする円形であり、前記貫通孔は円形であることを特徴とする請求項3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記凹部の前記径方向の中央は、前記弁体の外周縁より前記弁体の回転中心に近いことを特徴とする請求項4に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記複数の前記貫通孔は、前記回転軸線を中心として周方向に配列され、
前記当接面には、前記複数の前記凹部が前記周方向に互いに離間した位置に形成されていることを特徴とする請求項3から5の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記弁体は、前記当接面の反対側を向く反対面に形成された流路溝を備え、前記流路溝の底面に前記貫通孔が開口することを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記反対面は前記弁体駆動部材と対向しており、
前記反対面は、前記弁体駆動部材と当接する支持面を備えることを特徴とする請求項に記載のバルブ装置。
【請求項9】
前記弁体には、前記弁体駆動部材と嵌合する嵌合凹部が形成され、
前記嵌合凹部は、前記流路溝と繋がっていることを特徴とする請求項7または8に記載のバルブ装置。
【請求項10】
前記凹部の深さは、前記貫通孔の穴径より深いことを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項11】
前記当接面には、前記凹部と離間した位置に切欠部が形成され、
前記切欠部は、前記第1方向の幅が前記開口部の前記第1方向の幅より大きく、且つ、前記弁体の外周面に開口することを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項12】
前記駆動源はステッピングモータであり、
前記弁体駆動部材は、その外周面に歯部が形成された歯車部材であり、
前記駆動源の駆動力は、前記弁体駆動部材に減速されて伝達されることを特徴とする請求項1から11の何れか一項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を調節するためのバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷蔵庫の庫内冷却用の冷媒の供給量を調節するための冷媒バルブ装置が記載されている。特許文献1の冷媒バルブ装置は、冷媒入口および冷媒出口が開口する弁座面を備える基台と、基台に被せられたカバーとの間にバルブ室が形成されている。バルブ室には、冷媒出口に重なるように弁体が配置されている。弁体は、ステッピングモータによって回転する出力歯車の回転に基づき、弁座面と直交する軸線回りに回転する。弁体には、貫通孔(オリフィス)が形成されている。オリフィスは、流体が通過する細管部を備える。弁座面に形成された冷媒出口とオリフィスとが重なる回転位置に弁体を位置決めすると、オリフィスを経由して流体が流れる。また、冷媒出口とオリフィスとが重ならない回転位置に弁体を位置決めして、弁体に形成された流路溝を経由する経路で流体が流れるようにすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5615993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷媒バルブ装置は、ステッピングモータの駆動ステップ数により弁体の回転位置を制御する。このため、弁体の回転位置には、部品公差に起因するばらつきが生じる。例えば、ステッピングモータのマグネットの着磁ばらつき等に起因して、弁体の回転位置のばらつきが生じる。そこで、弁体の回転位置にばらつきがあってもオリフィスの穴径に応じた流量で流体を流すことができるようにするため、弁体には、オリフィスを中心とする円形の凹部が形成されている。凹部の内径はオリフィスよりも大径である。従って、弁体の回転位置のばらつきが生じ、その結果、オリフィスの位置が冷媒出口とずれてしまっても、凹部と冷媒出口との重なりがオリフィスの断面積以上であれば、オリフィスの細管径に応じた流量で流体を流通させることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、弁体に貫通孔(オリフィス)を中心とする真円形の凹部を形成する場合、弁体に貫通孔の位置を中心とした円形のスペースを確保しなければならない。従って、貫通孔を形成する位置の自由度が低いという問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、弁体の位置にばらつきがあっても弁体に形成した貫通孔の穴径に応じた流量で流体を流すことができ、且つ、貫通孔の位置の自由度が高いバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のバルブ装置は、流体が供給されるバルブ室と、前記バルブ室の内側に設けられた弁座面と、前記弁座面に設けられた開口部と重なる位置に載置される弁体と、前記弁体を前記弁座面に沿って移動させる弁体駆動部材と、前記弁体駆動部材を駆動する駆動源と、を有し、前記弁体は、前記弁座面に当接する当接面に設けられた凹部と、前記凹部の底面に開口する貫通孔を備え、前記凹部は、前記弁体駆動部材による弁体の移動方向である第1方向の幅が、前記第1方向と直交する第2方向の幅より小さく、前記弁体には複数の前記貫通孔が形成され、前記複数の前記貫通孔は、少なくとも一部の穴径が異なっており、前記当接面には、前記複数の前記貫通孔に対応する複数の前記凹部が互いに離間した位置に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、弁体を移動させることにより、弁体に形成された貫通孔と弁座面に形成した開口部とを連通させることができる。弁体には貫通孔の穴径より大きい凹部が形成され、貫通孔は凹部の底面に開口する。従って、弁体の位置にばらつきがあっても、凹部の大きさがばらつきに対応する大きさであれば、貫通孔の穴径に応じた流量で流体を流すことができる。また、凹部の形状は、弁体の移動方向である第1方向の幅が、第1方向と直交する第2方向の幅より小さい形状である。このように、凹部を真円形でなく弁体の移動方向と直交する方向に長い形状にすれば、第1方向の幅が小さい形状でありながら、弁座側の開口部と重なる部分の面積を確保することができる。従って、真円形の凹部を設ける場合よりも第1方向の幅を小さくすることができる。よって、弁体は、第1方向のスペースに余裕を大きく取れるので、凹部の位置の自由度を高めることができ、凹部内に形成される貫通孔の位置の自由度を高めることができる。
【0009】
本発明において、前記凹部の縁は、前記貫通孔の前記第1方向の両側に位置する直線部を備えることが望ましい。このようにすると、弁座側の開口部と凹部とが部分的に重なるとき、重なり部分は、直線によって切り取られる形状となる。これに対し、凹部が円形である場合の重なり部分は円弧によって切り取られる形状となるので、直線部を備える形状の凹部の方が、大きな重なり面積を確保できる。つまり、凹部の第1方向の幅を小さくしても大きな重なり面積を確保することができる。従って、凹部および貫通孔の位置の自由度を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記弁体駆動部材は、前記弁座面に対して垂直な回転軸線を中心として前記弁体を回転させ、前記回転軸線を中心として前記弁体が回転したときの前記貫通孔の移動軌跡上に前記開口部が位置する。従って、弁体の回転によって開口部と貫通孔とが連通する状態と連通しない状態を切り換えることができる。このような構成において、前記第1方向は、前記回転軸線を中心とした周方向であり、前記第2方向は、前記回転軸線を中心とした径方向であり、前記凹部は、前記周方向の幅が前記径方向の幅より小さい長穴形状であることが望ましい。これにより、弁体の回転位置にばらつきがあっても貫通孔の穴径に応じた流量で流体を流すことができる。また、凹部の周方向の幅が小さい形状でありながら、弁座側の開口部と重なる部分の面積を確保することができる。よって、凹部の位置の自由度を高めることができ、凹部内に形成される貫通孔の位置の自由度を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記弁体の外形は前記回転軸線を中心とする円形であり、前記貫通孔は円形であることが望ましい。弁体が円形で、貫通孔が円形である場合、貫通孔は弁体の周方向のどの位置に設けてもよい。従って、貫通孔の位置の自由度が高い。
【0012】
本発明において、前記凹部の前記径方向の中央は、前記弁体の外周縁より前記弁体の回転中心に近いことが望ましい。このように、凹部を弁体の回転中心寄りの位置に形成することにより、弁体の中心側のスペースを有効活用することができる。また、本発明は凹部の周方向の幅を小さくすることができるので、弁体の中心側のスペースに凹部を配置することができる。
【0013】
本発明において、前記弁体が前記弁座面に対して垂直な回転軸線を中心として回転する場合には、前記複数の前記貫通孔は、前記回転軸線を中心として周方向に配列され、前記当接面には、前記複数の前記凹部が前記周方向に互いに離間した位置に形成されている。このようにすると、弁体を移動(回転)させることにより、弁座側の開口部と連通する貫通孔の穴径を切り換えることができる。従って、流体の流量を調節できる。また、弁体には貫通孔の穴径に応じた凹部が設けられているので、弁体の回転位置がずれたとしても、貫通孔の穴径に応じた流量の流体を流すことができる。従って、流量調節の精度を高めることができる。
【0014】
本発明において、前記弁体は、前記当接面の反対側を向く反対面に形成された流路溝を備え、前記流路溝の底面に前記貫通孔が開口することが望ましい。このようにすると、バルブ室側流路溝を経由して貫通孔とバルブ室とを連通させることができ、貫通孔を弁体の厚さ方向に短くすることができる。
【0015】
本発明において、前記反対面は前記弁体駆動部材と対向しており、前記反対面は、前記弁体駆動部材と当接する支持面が設けられていることが望ましい。このようにすると、支持面によって弁体の傾きを規制できるため、弁体の封止性能を高めることができる。
【0016】
本発明において、前記弁体には、前記弁体駆動部材と嵌合する嵌合凹部が形成され、前記嵌合凹部は、前記流路溝と繋がっている。このように、嵌合凹部と流路溝とが連続して形成されていれば、嵌合凹部と流路溝を形成する際のスペース効率が良い。従って、嵌合凹部と流路溝を形成する位置の自由度を高めることができ、流路溝の底面に開口する貫通部の位置の自由度を高めることができる。
【0017】
本発明において、前記凹部の深さは、前記貫通孔の穴径より深いことが望ましい。このようにすると、凹部内の流路の深さを確保できるため、凹部を通過する際に流量が制限されることを回避できる。従って、貫通孔の穴径に応じた流量で流体を流通させることができる。
【0018】
本発明において、前記当接面には、前記凹部と離間した位置に切欠部が形成され、前記切欠部は、前記第1方向の幅が前記開口部の前記第1方向の幅より大きく、且つ、前記弁体の外周面に開口することが望ましい。このようにすると、弁座側の開口部の開口径によって決まる流量で流体を流通させることができる。
【0019】
本発明において、前記駆動源はステッピングモータであり、前記弁体駆動部材は、その外周面に歯部が形成された歯車部材であり、前記駆動源の駆動力は、前記弁体駆動部材に減速されて伝達されることが望ましい。このようにすると、ステッピングモータの制御では解消できない弁体の位置のばらつきがあっても貫通孔の穴径に応じた流量で流体を流すことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、弁体を移動させることにより、弁体に形成された貫通孔と弁座面に形成した開口部とを連通させることができる。弁体には貫通孔の穴径より大きい凹部が形成され、貫通孔は凹部の底面に開口しているので、弁体の位置にばらつきがあっても貫通孔の穴径に応じた流量で流体を流すことができる。また、凹部の形状は、弁体の移動方向である第1方向の幅が、第1方向と直交する第2方向の幅より小さい形状である。これにより、第1方向の幅が小さい形状でありながら、弁座側の開口部と重なる部分の面積を確保することができる。従って、真円形の凹部を設ける場合よりも第1方向の幅を小さくすることができる。よって、弁体は、第1方向のスペースに余裕を大きく取れるので、凹部の位置の自由度を高めることができ、凹部内に形成される貫通孔の位置の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用したバルブ装置の斜視図である。
図2図1のバルブ装置の底面図である。
図3図1のバルブ装置の断面図(図2のX−X断面図)である。
図4】流量調節機構の要部を示す斜視図である。
図5】弁体駆動部材、弁体、および弁座の分解斜視図である。
図6】弁体の上面図および底面図である。
図7】貫通部および流路確保溝の説明図である。
図8】流路確保溝と流出口との重なりを示す説明図である。
図9】流量調節機構の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したバルブ装置の実施形態を説明する。本形態のバルブ装置は、本発明を冷蔵庫内の冷媒流路における圧縮器と冷却器の間に設けられ、冷媒の流量を調節するために用いられる冷媒バルブ装置である。なお、本発明のバルブ装置の用途は冷媒流量の調節には限られず、他の用途のバルブ装置にも適用可能である。
【0023】
(全体構成)
図1は本発明を適用したバルブ装置の斜視図である。図1(a)はバルブ本体の側から見た斜視図であり、図1(b)は流入管および流出管の側から見た斜視図である。図2図1のバルブ装置の底面図である。バルブ装置1は、バルブ本体2と、バルブ本体2から平行に延びる流入管3および流出管4を有する。バルブ本体2は、外部の制御装置と電気的に接続するためのコネクタ5と、バルブ装置1を冷蔵庫内に取り付けるための取付プレート6を備える。なお、以下の説明では、便宜上、流入管3および流出管4の延設方向を上下方向とし、バルブ本体2を上側、流入管3および流出管4を下側として説明する。
【0024】
図3はバルブ装置1の断面図(図2のA−A線で切断した断面図)である。バルブ本体2は、取付プレート6の上側に被せられる外装ケース9を備える。外装ケース9の内側には、円盤形状の基台10に上方から被せられたカップ状の密閉カバー11が配置される。密閉カバー11は、取付プレート6に形成された円形の開口部7に下側から嵌め込まれている。基台10はバルブ装置1の底面に露出している。
【0025】
基台10の中心には、後述するステッピングモータ60のロータ支軸62を回転可能に支持する軸孔13が形成されている。また、基台10の外周寄りの位置には、流入管3を接続するための冷媒入口12が形成されており、軸孔13を挟んで冷媒入口12と反対側には、円形の開口部である弁座装着孔14が形成されている。弁座装着孔14には、円形の弁座40が嵌合されている。弁座40はバルブ装置1の底面に露出しており、流出管4は、弁座40に形成された冷媒出口43に接続される。また、基台10の外周縁には、基台10の中央部より板厚が薄い基台側フランジ16(図3参照)が形成されている。
【0026】
密閉カバー11は、非磁性のステンレスの板材をプレス加工して形成されている。図3に示すように、密閉カバー11は、上方から下方に向かって、円形の底部111と、底部111の外周縁から下方に延びる小径筒部112と、小径筒部112よりも大径の大径筒部113と、大径筒部113の下端縁(開口縁)から径方向外側に広がるカバー側フランジ114とを備える。小径筒部112と大径筒部113は、基台10の中心を通る軸線L0に対して垂直な環状部115を介して繋がっている。密閉カバー11は、カバー側フランジ114を基台側フランジ16に当接させた状態で基台10と固定されている。密閉カバー11と基台10との間には、冷媒が貯留される流路であるバルブ室30が形成されている。
【0027】
バルブ装置1は、バルブ室30から流出管4へ流れる流体(冷媒)の流量を調節する流量調節機構8を備える。流量調節機構8は、駆動源であるステッピングモータ60を備え
る。ステッピングモータ60は、密閉カバー11の内側に配置されるロータ61と、密閉カバー11と外装ケース9の間に構成されるステータ64を備える。ロータ61はその外周面に配置される永久磁石63を備えており、ロータ支軸62に回転可能に支持される。ロータ支軸62は、上端が密閉カバー11の底部111に固定されており、下端が基台10の中心に固定されている。ロータ支軸62の軸線は、基台10の中心を通る軸線L0と一致しており、後述する弁体駆動部材50および弁体20を回転可能に支持する支軸29の軸線Lと平行に延びている。ロータ61の下端にはロータ61と一体に回転するピニオン66が形成されている。ピニオン66はバルブ室30に配置されている。
【0028】
ステータ64は、密閉カバー11の環状部115に下側から支持され、密閉カバー11の小径筒部112の外周側に配置されている。ステータ64はコイル65を備えており、コイル65は密閉カバー11の小径筒部112を介してロータ61の永久磁石63と対向する。コイル65はコネクタ5と電気的に接続されている。ステッピングモータ60は、コネクタ5を介して接続された外部の制御装置によってその動作が制御される。
【0029】
(流量調節機構)
図4は流量調節機構8の要部を示す斜視図である。図5は弁体駆動部材50、弁体20、および弁座40の分解斜視図であり、図5(a)は上側から見た斜視図であり、図5(b)は下側から見た斜視図である。流量調節機構8は、駆動源であるステッピングモータ60、弁体駆動部材50、弁体20、および弁座40を備える。弁体駆動部材50、弁体20、および弁座40は、ステッピングモータ60の軸線L0と平行な軸線Lに沿って上下方向に延びる支軸29を中心として、上から下へこの順に並べて配置されている。弁座40は円形であり、弁座40の中心には、支軸29が固定される軸孔41が形成されている。弁体駆動部材50および弁体20は、支軸29に回転可能に支持される。
【0030】
弁体駆動部材50は、外周面に歯部51が形成された歯車部材であり、歯部51はステッピングモータ60のピニオン66と噛合している。ステッピングモータ60の回転は、ピニオン66と歯部51を介して減速されて弁体駆動部材50に伝達される。本実施形態の弁体駆動部材50は、それ自体が歯部51を備えた歯車部材である。従って、減速機構を構成するための部品を設ける必要がないので、流量調節機構の部品点数が抑えられている。そのため、バルブ装置1の小型化に有利である。
【0031】
図5(a)に示すように、弁体駆動部材50には、弁体駆動部材50の周方向の一部から、その径方向外側に突出した腕部52が形成されている。腕部52は、弁体駆動部材50が回転して所定の角度位置に達したときに、ロータ61が備える回転規制部(図示省略)に対して軸線L回りの一方側あるいは他方側から当接して、弁体駆動部材50および弁体20の回転角度を所定の範囲に制限する。
【0032】
図5(b)に示すように、弁体駆動部材50は、支軸29の軸線Lと直交する平坦な下端面501を備える。下端面501は弁体20と対向する。下端面501には、弁体20側に突出した嵌合部である凸部551、552、553が形成されている。凸部551、552、553は、弁体駆動部材50の周方向に沿って不等間隔に配置される。以下、これら3つの凸部を総称して「凸部55」という。弁体20の端面のうち、弁体駆動部材50と対向する上端面202には、弁体駆動部材50の凸部55と対応する位置に、これら凸部55が嵌入される嵌合部である凹部251、252、253が形成されている。以下、これら3つの凹部を総称して「凹部25」という。これら複数組の嵌合部(凸部55と凹部25)が嵌合することで、弁体20は弁体駆動部材50と一体になって周方向に回転する。また、これら複数組の嵌合部が、弁体駆動部材50および弁体20の周方向に沿って不等間隔に配置されていることにより、弁体駆動部材50および弁体20の誤組み付けが防止される。なお、凸部55と凹部25の凹凸を逆にしてもよい。すなわち、弁体駆動
部材50に凹部を形成し、弁体20に弁体駆動部材50の凹部と嵌合する凸部を形成してもよい。
【0033】
弁体20の外形は軸線Lを中心とする円形である。弁体20は、支軸29の軸線Lと直交する平坦な下端面201を備える。下端面201は弁座40と対向する。下端面201には、弁体20の外周面から径方向内側に切り欠かれた切欠部22が形成されている。切欠部22は、後述する流路確保溝27と周方向に離間した位置に形成されている。弁体20に形成された凹部25のうち、凹部251は切欠部22側に貫通した貫通穴である。そして、凹部251に嵌合された凸部551は、その先端部が切欠部22側に露出しており、凸部551の先端部は切欠部22側でかしめられている。これにより、弁体20は、弁体駆動部材50の下端面501にガタつきなく固定される。従って、弁体駆動部材50が弁体20の角度位置を高い精度で制御することができる。
【0034】
弁座40は弁体20の下方に配置されており、基台10に形成された弁座装着孔14に嵌合されている。弁座40は、略円柱形状の部材であり、その上面には弁座面42が設けられている。弁座面42は軸線Lと直交する円形の平面である。弁座40には、軸線Lから径方向外側に外れた位置で弁座40を貫通する冷媒出口43が形成されている。冷媒出口43の上端は、弁座面42に設けられた開口部である流出口44となっている。
【0035】
弁体20は円板形状の部材であり、弁座40に載置されている。弁体20の下端面201は、弁座面42と当接する当接面である。また、弁体20の上端面202は、当接面である下端面201の反対側を向く反対面である。弁体駆動部材50がステッピングモータ60の駆動力により回転すると、弁体20は弁体駆動部材50と一体に回転し、弁体20の下端面201(当接面)は、弁座面42と摺動しながら弁座面42に対して相対回転する。これにより、弁座面42に形成された流出口44が弁体20の下端面201の平面部によって閉塞された状態と、流出口44がバルブ室30と連通された状態とが切り換えられる。
【0036】
弁体20の下端面201および弁座40の弁座面42は平坦に研磨加工されている。これにより、弁体20の下端面201と弁座面42の封止性能が高められ、弁体20と弁座面42との接触面の隙間から冷媒が漏出することが防止される。さらに、弁体駆動部材50と弁体20とを固定するにあたり、凸部551の先端部は切欠部22でかしめられているため、研磨加工された弁体20の下端面201にかしめ作業による擦傷や変形が生じることが防止される。なお、本形態においては、弁体20の下端面201および弁座40の弁座面42の両方が研磨加工されているが、いずれか一方のみを研磨加工しても相応の漏出防止効果は認められる。
【0037】
(弁体)
図6(a)は弁体20の上面図であり、図6(a)は弁体20の底面図である。弁体20には、弁体20を軸線L方向に貫通する5つの貫通孔211、212、213、214、215が形成されている。以下、これら5つの貫通孔を総称して「貫通孔21」という(図6(b)参照)。貫通孔21は、弁座面42に形成された流出口44より小径である。5つの貫通孔21の穴径は、貫通孔211の穴径が最も小さく、貫通孔215の穴径が最も大きくなるように、段階的に穴径が増大している。本形態の弁体20は、穴径の異なる複数の貫通孔21を備えている。従って、弁体20を回転させることにより、弁座面42に形成された流出口44と連通する貫通孔21を切り換えて流量の調節を行うことができる。なお、貫通孔211、212、213、214、215の穴径は、バルブ装置1の使用方法に応じて適宜変更することができる。例えば、貫通孔211、212、213、214、215の穴径の順番を上記と異なる順番に入れ替えても良い。
【0038】
弁体20の下端面201には、上方に窪む切欠部22が形成されている。切欠部22は、冷媒が流れる冷媒流路である。切欠部22は、弁体20が所定の角度位置になったときに、弁座面42の流出口44の全体を露出可能な大きさである。すなわち、切欠部22は、流出口44より周方向の幅が大きく、弁体20が所定の角度位置になったときに、弁体20の下端面201が流出口44と接触しないように構成されている。流出口44の全体が切欠部22内に露出したとき、冷媒の流量が最大流量となる。
【0039】
弁体20の上端面202(反対面)には、弁体20の外周面から径方向内側に切り欠かれた流路溝241、242、243、244、245が形成されている。以下、これら5つの溝部を総称して「流路溝24」という。流路溝24は、貫通孔21につながる冷媒の流路である。弁体20の上端面202において、凹部252は、流路溝241と流路溝242との間に形成されており、流路溝241および流路溝242と周方向に連通している。同様に、凹部253は、流路溝244と流路溝244との間に形成されており、流路溝244および流路溝245と周方向に連通している。このように、凹部252、253がその両側の流路溝と周方向に連続していることにより、貫通孔21を設置するスペースが広く確保される。
【0040】
弁体20の上端面202において、凹部252、253の径方向外側には、弁体駆動部材50の下端面501と当接する支持面262、263が設けられている。支持面262、263は、弁体20の中心から最も離れた外周部に設けられている。支持面262、263は、弁体20の上端面202の他の部分と同一面上に位置する。支持面262、263は、弁体駆動部材50の下端面501と当接して弁体20の傾きを規制する。
【0041】
5つの貫通孔21は、弁体20の径方向の中心を基準とする同一径の円弧上に配置される。弁体20が軸線Lを中心として回転したときの貫通孔21の移動軌跡C(図6(b)参照)は、弁座面42に形成された流出口44の中心を通る。また、5つの貫通孔21は、弁体20の径方向の中心と弁体20の外周縁との略中間に位置する。従って、貫通孔21の径方向外側および径方向内側のスペースに余裕があるので、貫通孔21の径方向の両側で弁体20と弁座面42との間の封止性能を高めることができる。また、弁体20と弁体駆動部材50との間では、凹部252、253の径方向外側のスペースに余裕があるので、凹部252、253の径方向外側に支持面262、263を設けることができる。従って、弁体20の傾きを防止でき、封止性能を高めることができる。
【0042】
弁体20はポリフェニレンサルファイド樹脂により形成され、弁体駆動部材50はナイロン樹脂により形成されている。ポリフェニレンサルファイド樹脂は、成形性が高く耐摩耗性にも優れている。弁体駆動部材50は弁体20ほどの成形精度は要求されないため、安価なナイロン樹脂を用いることにより、コストの増大を抑制することができる。
【0043】
(流路確保溝)
弁体20は、弁体駆動部材50の回転に基づき、支軸29を中心として回転する。すなわち、支軸29の中心を通る軸線Lは、弁体20の回転軸線である。また、軸線Lを中心とする周方向は、弁座面42に対する弁体20の移動方向(回転方向)である。以下、軸線Lを中心とする周方向を第1方向Xと呼ぶ。また、軸線Lを中心とする径方向を第2方向Yと呼ぶ。本形態では、バルブ室30の冷媒を流出管4へ流出させるために、基台10に嵌合した弁座40には弁座40を軸線L方向に貫通する冷媒出口43が形成され、冷媒出口43の下端には流出管4が接続される。弁座40の上端面である弁座面42は軸線Lと直交する平面であり、バルブ室30の内側に露出する。弁座面42には、冷媒出口43の上端に設けられた開口部である流出口44が形成されている。なお、本形態のバルブ装置1は、流入管3と流出管4のうち、流出管4が接続される箇所に弁座40が取り付けられているが、流入側と流出側を逆転させてもよい。すなわち、流入管3が接続される箇所
に弁座40を取り付けて、流出口44を流入口として用いてもよい。
【0044】
流量調節機構8は、弁体駆動部材50を駆動して弁体20の回転位置を制御することにより、流出口44と連通する貫通孔21を切り換えて流体(冷媒)の流量を調節する。また、弁体20の回転位置を制御することにより、流出口44が貫通孔21のいずれかと連通する流量調節モードと、貫通孔21を経由せずにバルブ室30と流出口44とが連通する最大流量モードと、流出口44が弁体20によって閉塞される供給停止モードとを切り換える。
【0045】
弁体20の下端面201は、流出口44が形成された弁座面42と軸線L方向に当接する当接面である。下端面201には、上述した5箇所の貫通孔21の下端が開口する。本形態では、弁体20の回転位置にばらつきがあっても貫通孔21と流出口44とを連通させることができるように、弁体20の下端面201に貫通孔21の穴径より大きい凹部である流路確保溝271、272、273、274、275が形成されている。流路確保溝271、272、273、274、275は、下端面201から上方に窪んだ凹部である。流路確保溝271、272、273、274、275の底面には、1箇所ずつ貫通孔21が開口する。以下、これら5つの流路確保溝を総称して「流路確保溝27」という(図6(b)参照)。
【0046】
図7は貫通孔21および流路確保溝27の説明図である。図7に示すように、貫通孔21は、流路確保溝27の第1方向X(周方向)の中央に配置され、且つ、流路確保溝27の第2方向(径方向)の中央に配置されている。流路確保溝27は、第1方向Xの幅X1および第2方向Yの幅Y1が貫通孔21の穴径より大きい。また、流路確保溝27は、弁体20の移動方向である第1方向Xの幅X1が、第1方向Xと直交する第2方向Yの幅Y1よりも小さい。すなわち、流路確保溝27は、弁体20の移動方向と直交する方向(径方向)に細長く伸びた長穴形状である。
【0047】
流路確保溝27の縁は、貫通孔21の第1方向Xの両側(すなわち、貫通孔21の周方向の両側)に位置する直線部27Aを備える。直線部27Aは第2方向Yに延在する。このため、流路確保溝27は、径方向外側に向かうに従って周方向の幅が増大する形状となっている。また、流路確保溝27の径方向外側の縁、および径方向内側の縁は、弁体20の回転中心に位置する軸線Lを中心とする円弧状である。
【0048】
このように、貫通孔21を貫通孔21の穴径より大きい流路確保溝27の底部に形成したことにより、弁体20の回転位置のずれに起因する流量の減少が抑制される。すなわち、弁体20の回転位置が部品公差等により設計上の位置からずれてしまい、貫通孔21が流出口44と部分的に重なっているか、あるいは、流出口44と全く重なっていないとしても、貫通孔21と連通する流路確保溝27と流出口44との重なり面積が貫通孔21の断面積より大きければ、貫通孔21の穴径に応じた流量の冷媒を流すことができる。従って、貫通孔21による流量調節の精度を高めることができる。
【0049】
流路確保溝27の深さは、対応する貫通孔21の穴径よりも深い。従って、流路確保溝27を通過する流量が貫通孔21を通過する流量より少なくなることはないので、流路確保溝27によって貫通孔21の流量が制限されることはない。なお、本形態では、流路確保溝27の穴径が一定であるが、穴径は一定でなくてもよい。流路確保溝27の内周面は貫通孔21から離れるに従って穴径が拡大する形状であってもよい。例えば、流路確保溝27の内周面をテーパ状にすることができる。
【0050】
図8(a)、図8(b)は流路確保溝27と流出口44との重なりを示す説明図である。図8(a)、図8(b)には、本形態の流路確保溝27の形状と、第1方向Xの幅が流
路確保溝27と同一である円形の流路確保溝276の形状を模式的に図示している。本形態の流路確保溝27は、第1方向Xと直交する第2方向Yの幅が第1方向Xの寸法より長い長穴形状であるため、第1方向Xの両側の縁が直線状となっている。なお、流路確保溝27の第1方向Xの両側の縁は、直線状でなくてもよい。例えば、円形の流路確保溝276の縁よりも直線に近い形状であればよく、曲線であってもよい。例えば、流路確保溝27は第2方向Yに長い楕円形であってもよい。このように、第1方向Xの縁が直線状あるいは円弧より直線に近い場合、流路確保溝27と流出口44との重なり領域は、図8(a)においてハッチングで図示した重なり領域277を含む。一方、円形の流路確保溝276と流出口44との重なり面積は、図8においてハッチングで図示した重なり領域277を含まない。つまり、本形態の流路確保溝27は、流出口44との回転位置のずれが同一である場合に、円形の流路確保溝276よりも流出口44との重なり領域が大きい。
【0051】
このように、本形態の流路確保溝27は、貫通孔21の断面積と同じ重なり面積を確保できる形状でありながら、円形の流路確保溝276よりも第1方向X(周方向)の幅が小さい。従って、円形の流路確保溝276を形成する場合よりも、弁体20の下端面201のスペースを有効利用でき、流路確保溝27および貫通孔21の配置の自由度を高めることができる。よって、弁体20の下端面201に形成可能な流路確保溝27および貫通孔21の数を最大化することができる。具体的には、周方向に余裕を持って流路確保溝27を配置することができるので、周方向に配列可能な流路確保溝27および貫通孔21の数を最大化することができる。また、流路確保溝27を周方向に離して配置することもできる。従って、隣り合う流路確保溝27間の封止性能を向上させることもできる。
【0052】
図8(b)に示す円弧276A、276Bは、軸線Lを中心として弁体20が回転した場合の円形の流路確保溝276の移動軌跡である。本発明を適用した流路確保溝は、軸線Lを中心とする径方向の直線(直線部27Aと重なる直線)と、円形の流路確保溝276の外形と、円形の流路確保溝276の移動軌跡を示す円弧276A、276Bによって区画される領域299(図8(b)においてハッチングで示した領域)の一部を、流出口44との重なり領域として含み、且つ、第2方向Yの幅が第1方向Xの幅よりも大きい形状であればよい。このような形状であれば、流出口44との回転位置のずれが同一である場合に、流出口44との重なりを円形の流路確保溝276よりも大きくすることができる。従って、本形態の流路確保溝27と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
本形態の場合、部品公差等による弁体20の回転位置のずれは、ステッピングモータ60の駆動ステップ数に換算するとおおむね8ステップ程度におさまる。そこで、直径が8mmの弁体20を想定し、弁体20の回転位置が8ステップずれた場合の流路確保溝27と流出口44との重なり面積をシミュレーションした結果、円形の流路確保溝276では、流路確保溝276の第1方向Xの幅を0.36mmにした場合に、流出口44と流路確保溝276との重なり面積を貫通孔21の断面積と同一にすることができた。これに対し、本形態の流路確保溝27の形状を採用した場合、流路確保溝27の第1方向Xの幅を0.26mmにした場合に、流出口44と流路確保溝276との重なり面積を貫通孔21の断面積と同一にすることができた。つまり、本形態の流路確保溝27の方が、第1方向X(周方向)の幅を小さくできるという結果が得られた。
【0054】
なお、本形態では、5つの流路確保溝27の第1方向X(周方向)の幅を全て同一にしている。具体的には、最大の穴径の流路確保溝27に合わせて流路確保溝27の形状を決定した。ここで、流路確保溝27の第1方向X(周方向)の幅を、対応する貫通孔21の穴径に応じた幅にすることもできる。つまり、穴径の小さな貫通孔21を周方向の幅が小さい流路確保溝27に形成し、穴径の大きな貫通孔21を周方向の幅が大きい流路確保溝27に形成することができる。このようにすると、弁体20の下端面201のスペースを有効利用でき、下端面201に形成可能な流路確保溝27の数を最大化することができる
【0055】
また、本形態では、流路確保溝27の第2方向Yの中央は、弁体20の径方向の中央付近に位置するが、流路確保溝27の第2方向Yの中央が弁体20の外周縁より弁体20の中心に近い位置に流路確保溝27を形成してもよい。流路確保溝27を弁体20の中心寄りに配置した場合、弁体20の中心寄りのスペースを有効活用することができる。
【0056】
本形態では、5つの貫通孔21が設けられているが、貫通孔21の数は1以上の任意の数とすることができる。また、複数の貫通孔21を設ける場合、それらの穴径は全て異なっていてもよいし、一部のみ穴径が異なっていてもよい。
【0057】
(バルブ装置の動作)
図9は流量調節機構8の動作を示す断面図である。図9(a)は貫通孔21を通って冷媒が流れる流量調節モードの状態を示す。また、図9(b)は貫通孔21を通らずに最大流量の冷媒が流れる最大流量モードの状態を示す。外部の制御装置によりステッピングモータ60が駆動されると、その駆動力がピニオン66と弁体駆動部材50の歯部51を介して弁体駆動部材50に伝達される。そして、弁体駆動部材50が周方向へ回転すると、弁体20は、弁座面42上で弁体駆動部材50と同方向に回転する。
【0058】
流量調節機構8は、弁体20の切欠部22が弁座面42の流出口44と軸線L方向に重なる回転位置、および、弁体20の貫通孔21が流出口44と軸線L方向に重なる回転位置に弁体20を回転させる。本形態では、貫通孔21が5箇所に設けられているため、貫通孔21が流出口44と軸線L方向に重なる回転位置は5つ存在する。
【0059】
図9(a)に示す流量調節モードでは、弁体20の下端面201に形成された流路確保溝27および貫通孔21が流出口44と軸線L方向に重なっている。従って、バルブ室30から順に、流路溝24、貫通孔21、そして流路確保溝27を経由して流出口44に連通する第1流路A1が形成される。流量調節モードでは、貫通孔21の穴径に応じて冷媒の流量が決定される。従って、流量調節モードのモード数は、貫通孔21の穴数に応じたモード数となる。本形態では5つの貫通孔21が形成されているため、流量調節機構8は、5段階の流量調節モードを備えており、5段階に流量を調節することができる。
【0060】
図9(b)に示す最大流量モードでは、弁体20の切欠部22と流出口44とが軸線L方向に重なると、バルブ室30から切欠部22を経て流出口44に至る第2流路A2が形成される。本形態の切欠部22は流出口44の全体をバルブ室30内に露出させるため、第2流路A2は、バルブ装置1による最大流量で冷媒を流出させる。
【0061】
バルブ装置1は、ステッピングモータ60の駆動ステップ数を制御することにより、弁体20の回転位置を制御する。弁体20の原点位置は、弁体駆動部材50の腕部52がロータ61の回転規制部に当接する位置である。このため、原点位置にある弁体20は、回転規制部側への回転が規制されている。弁体20が原点位置にあるとき、弁体20の下端面201における切欠部22や流路確保溝27が形成されていない領域である平面部が、弁座面42に形成された流出口44を閉塞している。つまり、冷媒の供給が停止された供給停止モードとなっている。
【0062】
弁体20が原点位置にある状態から、ステッピングモータ60が正回転方向に所定ステップ駆動されると、弁体20は、貫通孔211が流出口44と軸線L方向に重なる位置に移動する。これにより、図9(a)に示す流量調節モードとなり、第1流路A1が形成される。本形態では、弁体20が備える貫通孔21のうち、貫通孔211は穴径の最も小さな貫通部である。従って、流量は最小流量となる。
【0063】
流量調節モードでは、ステッピングモータ60が正回転方向に所定ステップ駆動される毎に、貫通孔211、212、213、214、215が順次、流出口44と軸線L方向に重なる角度に移動する。これにより、流量調節モードが切り換わる。貫通孔211、212、213、214、215はこの順で穴径が大きくなってゆくので、流量が多いモードに順次切り換わってゆく。
【0064】
最も径が大きい貫通孔215が流出口44と軸線L方向に重なる状態から、ステッピングモータ60が正回転方向にさらに規定ステップ駆動されると、弁体20は、切欠部22が流出口44と軸線L方向に重なる位置に移動する。これにより、図9(b)に示す最大流量モードとなり、第2流路A2が形成される。この状態から、更にステッピングモータ60を駆動すると、弁体駆動部材50の腕部52がロータ61の回転規制部に原点位置とは逆の側から当接し、弁体20はそれ以上の回転が規制される。この位置においても、流出口44には弁体20の切欠部22が軸線L方向に重なっている。従って、流量は最大流量である。
【0065】
(他の実施形態)
上記形態は、弁体20の移動方向は軸線Lを中心とする回転方向であったが、弁体20を所定の方向にスライドさせて流量を調節する構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1…バルブ装置、2…バルブ本体、3…流入管、4…流出管、5…コネクタ、6…取付プレート、7…開口部、8…流量調節機構、9…外装ケース、10…基台、11…密閉カバー、12…冷媒入口、13…軸孔、14…弁座装着孔、16…基台側フランジ、20…弁体、21、211、212、213、214、215…貫通孔、22…切欠部、24、241、242、243、244、245…流路溝、25、251、252、253…凹部(嵌合凹部)、27、271、272、273、274,275…流路確保溝(凹部)、27A…直線部、29…支軸、30…バルブ室、40…弁座、41…軸孔、42…弁座面、43…冷媒出口、44…流出口(開口部)、50…弁体駆動部材、51…歯部、52…腕部、55、551、552、553…凸部、60…ステッピングモータ(駆動源)、61…ロータ、62…ロータ支軸、63…永久磁石、64…ステータ、65…コイル、66…ピニオン、111…底部、112…小径筒部、113…大径筒部、114…カバー側フランジ、115…環状部、201…弁体の下端面(当接面)、202…弁体の上端面(反対面)、262、263…支持面、276…円形の流路確保溝、276A、276B…円形の流路確保溝の移動軌跡、277…重なり領域、279…領域、501…弁体駆動部材の下端面、A1…第1流路、A2…第2流路、C…移動軌跡、L…軸線、L0…軸線、X…第1方向、Y…第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9