(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969901
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】共下がり抑制構造及びケーソンの沈下方法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/08 20060101AFI20211111BHJP
E02D 23/04 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
E02D23/08 G
E02D23/08 Z
E02D23/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-102839(P2017-102839)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-197463(P2018-197463A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和雄
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−099308(JP,A)
【文献】
特開2009−057682(JP,A)
【文献】
特開2007−051486(JP,A)
【文献】
米国特許第07921573(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/08
E02D 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎底部上に環状体を積層して側壁部を形成しつつ地盤に沈下させるケーソン躯体と、
前記ケーソン躯体の周囲に配された土留め材と、
前記ケーソン躯体の周囲の前記地盤中に供給され、前記土留め材と前記地盤とを一体化する地盤改良体と、
前記ケーソン躯体の頂部に設置され、前記土留め材を上昇可能に支持する吊り下げ部と、
を備えていることを特徴とする共下がり抑制構造。
【請求項2】
前記吊り下げ部は、前記ケーソン躯体の頂部に設けられたジャッキと、前記ジャッキと前記土留め材とを連結する連結材と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の共下がり抑制構造。
【請求項3】
基礎底部上に環状体を積層して側壁部を形成し、ケーソン躯体を構築するケーソン構築工程と、
前記ケーソン躯体の周囲の地盤中に地盤改良材を供給する地盤改良材供給工程と、
前記地盤改良材が供給され形成された地盤改良体に土留め材を設置する土留め材設置工程と、
前記ケーソン躯体の下方の前記地盤を掘削して前記ケーソン躯体を沈下させるケーソン沈下工程と、を備え、
前記土留め材を上方から吊り下げ支持する土留め材支持工程と、
前記ケーソン躯体の沈下時又はその前後に、前記土留め材を吊り上げる土留め材吊上げ工程と、をさらに備えていることを特徴とするケーソンの沈下方法。
【請求項4】
前記土留め材支持工程では、前記ケーソン躯体の頂部にジャッキを配置し、前記土留め材を前記ジャッキにより吊り下げ支持することを特徴とする請求項3に記載のニューマチックケーソンの沈下方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共下がり
抑制構造及びケーソンの沈下方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤にケーソンを沈下させる際、周辺地盤や近接構造物の共下がりを防止するために、共下がり防止構造が種々採用されている。
例えば特許文献1では、鋼板からなるフリクションカット用治具を用い、刃口から外方向に突出させて沈下させることで、躯体の外周に細幅の間隙からなるフリクションカット部を形成し、地盤との摩擦力を低減する構成が開示されている。
また、鋼矢板などをケーソン周囲に設置し、ケーソンを沈下させる際に周辺地盤に影響を与えない対策を施していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−138409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように細幅の間隙からなるフリクションカット部を設けたり、土留め材としての鋼矢板を設置したりすることで、周辺地盤や近接構造物に対する影響を低減できるものの対策が十分ではなく、更なる改善の要望がある。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、周辺地盤や近接構造物の共下がりをより効果的に抑制することが可能な共下がり
抑制構造及びケーソンの沈下方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の共下がり
抑制構造は、基礎底部上に環状体を積層して側壁部を形成しつつ地盤に沈下させるケーソン躯体と、前記ケーソン躯体の周囲に配された土留め材と、前記ケーソン躯体の周囲の前記地盤中に供給され、前記土留め材と前記地盤とを一体化する地盤改良体と、
前記ケーソン躯体の頂部に設置され、前記土留め材を上昇可能に支持する吊り下げ部と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明の共下がり抑制構造では、ケーソン躯体の周囲の地盤中に地盤改良体が配置され、吊り下げ部により土留め材が上昇可能に支持されている。そのためケーソン躯体を沈下させる際、地盤改良された領域に設置された土留め材を上昇させることでケーソン躯体周囲の地盤に上向きの力を付与できる。これによりケーソン躯体の沈下に伴い、ケーソン躯体周囲の地盤に下向きの周面摩擦力が作用しても共下がりすることを抑制できる。
したがって、地盤にケーソン躯体を沈下させる際、周辺地盤や近接構造物の共下がりをより効果的に抑制することが可能な共下がり抑制構造を提供することが可能である。
【0008】
本発明に係る共下がり抑制構造では、前記吊り下げ部は、前記ケーソン躯体の頂部に設けられたジャッキと、前記ジャッキと前記土留め材とを連結する連結材と、を有していることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、吊り下げ部ではケーソン躯体の頂部に設けられたジャッキに、土留め材が連結材により連結されている。つまり、土留め材を支持する部位をケーソン躯体に設けることで、ケーソン躯体付近の地盤や構造物等に土留め材を支持する設備を設ける必要がない。そのため共下がり抑制構造を容易に、かつ、作業面積を増やすことなく構築することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明のケーソンの沈下方法は、基礎底部上に環状体を積層して側壁部を形成し、ケーソン躯体を構築するケーソン構築工程と、前記ケーソン躯体の周囲の地盤中に地盤改良材を供給する地盤改良材供給工程と、前記地盤改良材が供給され形成された地盤改良体に土留め材を設置する土留め材設置工程と、前記ケーソン躯体の下方の前記地盤を掘削して前記ケーソン躯体を沈下させるケーソン沈下工程と、を備え、前記土留め材を上方から吊り下げ支持する土留め材支持工程と、前記ケーソン躯体の沈下時又はその前後に、前記土留め材を吊り上げる土留め材吊上げ工程と、をさらに備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明のケーソンの沈下方法では、ケーソン躯体の沈下時又はその前後に土留め材を上昇させるため、ケーソン躯体の沈下に伴い下向きの力が負荷されたケーソン躯体周囲の地盤に上向きの力を付与できる。そのため、ケーソン躯体の沈下に伴い、ケーソン躯体周囲の地盤に下向きの周面摩擦力が作用しても周辺地盤が共下がりすることを抑制できる。
したがって、地盤にケーソン躯体を沈下させる際、周辺地盤や近接構造物の共下がりを抑制することが可能なケーソンの沈下方法を提供することが可能である。
【0012】
本発明に係るケーソンの沈下方法は、前記土留め材支持工程では、前記ケーソン躯体の頂部にジャッキを配置し、前記土留め材を前記ジャッキにより吊り下げ支持することを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、ケーソン躯体の頂部にジャッキを介して吊り下げられた土留め材を引き上げることができるため、ケーソン躯体付近の地盤や構造物等に土留め材を支持する設備を設ける必要がない。つまり、作業面積を増やすことなく施工することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周辺地盤や近接構造物の共下がりをより効果的に抑制することが可能な共下がり
抑制構造及びケーソンの沈下方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る共下がり抑制構造の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態によるニューマチックケーソン工法における共下がり抑制構造について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態で構築されるニューマチックケーソン10は、下端に設けられた基礎底部15と、基礎底部15上に設けられた側壁部12とを有している。
【0018】
基礎底部15は、下端に下向きに設けられた刃口13と、刃口13の上端に設けられて作業室16を仕切る水平方向のスラブ14と、を有している。刃口13の水平方向における外形とスラブ14の水平方向における外形とが略同一に形成されている。基礎底部15は、刃口13とスラブ14とが一体に構築されている。
側壁部12は、複数の環状体11が基礎底部15上に同軸に積層されて上下に連結されることで構築されている。複数の環状体11は互いに外形及び内形が略同一に形成されている。
【0019】
本実施形態の共下がり抑制構造は、環状体11により側壁部12を形成しつつ地盤Gに沈下させる上述のようなニューマチックケーソン10からなるケーソン躯体17と、ケーソン躯体17の周囲の地盤G中に供給された地盤改良材18と、地盤改良材18が供給され地盤改良された領域(地盤改良体25)に設置された鋼矢板(土留め材)19と、鋼矢板19を上昇可能に支持する吊り下げ部20と、を備えている。
【0020】
地盤改良材18は、一般的に使用される地盤改良材であればよく、例えば、セメント系地盤改良材、石灰系地盤改良材、高分子系地盤改良材やそれらを配合した地盤改良材であればよい。地盤改良材18は鋼矢板19が設置される箇所に供給され、地盤改良材18(地盤改良体25)によって鋼矢板19と周辺の地盤Gとを一体化している。
【0021】
鋼矢板19は、例えば側壁部12及び基礎底部15の外周、即ち、ケーソン躯体17の外周に沿って地盤Gに打込んで配置することができ、ケーソン躯体17の周方向の全周に対向するように配置されている。また、鋼矢板19は、地盤面から所定深さに到達するまで設置されるものであるが、例えばケーソン躯体17における地盤G内に配置された部位の上下方向の全長以上に設置されている。
上下に隣接する鋼矢板19,19間及び左右に隣接する鋼矢板19,19間はそれぞれ溶接などにより強固に連結されている。
【0022】
吊り下げ部20は、ケーソン躯体17の頂部17aに設置された架台21と、架台21に装着されたジャッキ22と、ジャッキ22と鋼矢板19とを連結するワイヤー等からなる連結材23と、を備えている。ジャッキ22は連結材23を引き上げる構造であればよい。
架台21やジャッキ22はケーソン躯体17の側壁部12に新たな環状体11を積層する際には、ケーソン躯体17の頂部17aから一端取外し、環状体11の積層後にケーソン躯体17の新たな頂部17aに装着するように構成されている。
【0023】
次に、このような共下がり抑制構造を用いて、ニューマチックケーソン工法の施工時におけるニューマチックケーソン10の沈下方法について説明する。
ニューマチックケーソン工法では、刃口13及びスラブ14を有する基礎底部15が地盤Gに設置されており、予め地上で作製した上述のような環状体11を同軸に順次積層して側壁部12を形成することでケーソン躯体17を構築する(ケーソン構築工程)。
【0024】
ニューマチックケーソン10を設置する場所の周辺の地盤Gの所定領域に地盤改良材18を供給し(地盤改良材供給工程)、その後、地盤改良材18を供給して形成された領域(地盤改良体25)に鋼矢板19を設置する(土留め材設置工程)。鋼矢板19が設置された後に、ニューマチックケーソン10(ケーソン躯体17)を地盤Gに沈下させていく(ケーソン沈下工程)。
【0025】
鋼矢板19およびケーソン躯体17を配置した後、ケーソン躯体17の頂部17aには、吊り下げ部20(架台21及びジャッキ22)を設置する。鋼矢板19とジャッキ22との間を連結材23で連結することで、ジャッキ22を介して鋼矢板19を吊り下げ支持する(土留め材支持工程)。
【0026】
作業室16内でケーソン躯体17の下方の地盤Gを掘削することで、ケーソン躯体17を順次沈下させる。ケーソン躯体17の沈下に伴って順次環状体11を側壁部12に積層することで、ニューマチックケーソン10を構築する。
【0027】
ケーソン躯体17に吊り下げ部20を装着した状態で、ケーソン躯体17を順次沈下させる沈下時又はその前後に、ジャッキ22により鋼矢板19を吊り上げて地盤G中で上昇させる(土留め材吊上げ工程)。これにより地盤Gに上向きの摩擦力を与えることができる。
なお、鋼矢板19はケーソン躯体17が沈下する毎に上昇させる必要はなく、例えば周辺の地盤Gや近接構造物の共下がりが確認された時点、あるいは共下がりが予測された時点で、鋼矢板19を上昇させればよい。
【0028】
このような作業を継続し、ケーソン躯体17を順次沈下させて所望の大きさ(深さ)までニューマチックケーソン10を施工することで、目的の地中構造物を構築することができる。
【0029】
本実施形態の共下がり抑制構造及びニューマチックケーソン10の沈下方法によれば、ケーソン躯体17の周囲の地盤G中に鋼矢板19が配置され、吊り下げ部20により鋼矢板19が上昇可能に支持されている。そのためケーソン躯体17を沈下させる際、地盤改良材18により地盤改良された領域(地盤改良体25)に設置された鋼矢板19を上昇させることでケーソン躯体17周囲の地盤Gに上向きの力を付与できる。これによりケーソン躯体17の沈下に伴い、ケーソン躯体17周囲の地盤Gに下向きの周面摩擦力が作用しても共下がりすることを抑制できる。したがって、地盤Gにケーソン躯体17を沈下させる際、周辺地盤や近接構造物の共下がりをより効果的に抑制することができる。
【0030】
また、吊り下げ部20ではケーソン躯体17の頂部17aに設けられたジャッキ22に、鋼矢板19が連結材23により連結されている。つまり、鋼矢板19を支持する部位をケーソン躯体17に設けることで、ケーソン躯体17付近の領域に鋼矢板19を支持する設備を別途設ける必要がない。そのため、共下がり抑制構造を容易に、かつ、作業面積を増やすことなく構築することができる。
【0031】
さらに、ケーソン躯体17の頂部17aにジャッキ22を介して吊り下げられた鋼矢板19を引き上げることで、ケーソン躯体17を沈下させる際に該ケーソン躯体17の周面近傍の地盤に下向きの力が作用しても、周辺の地盤Gに該下向きの力の影響をより効果的に抑制することができる。そのため、より確実に周辺地盤や近接構造物の共下がりを防止できる。
【0032】
以上、本発明による共下がり防止構造及びニューマチックケーソンの沈下方法について一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では平面視略円形のニューマチックケーソン10の例を用いて説明したが、ニューマチックケーソン10の形状は特に限定されず、例えば平面視で多角形形状であってもよい。
また、上記実施形態ではニューマチックケーソン10およびその工法の場合で説明をしたが、ニューマチックケーソン工法以外の工法であってもよい。
さらに、上記実施形態では土留め材として鋼矢板19を採用した場合の説明をしたが、鋼矢板19以外の土留め材を採用してもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 ニューマチックケーソン
11 環状体
12 側壁部
13 刃口
14 スラブ
15 基礎底部
17 ケーソン躯体
18 地盤改良材
19 鋼矢板(土留め材)
20 吊り下げ部
21 架台
22 ジャッキ
23 連結材
25 地盤改良体
G 地盤