(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969902
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20211111BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20211111BHJP
【FI】
B60L1/00 G
H02M7/48 M
H02M7/48 P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-105493(P2017-105493)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-201310(P2018-201310A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恒俊
(72)【発明者】
【氏名】河村 恒毅
【審査官】
今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−174450(JP,A)
【文献】
特開2014−233121(JP,A)
【文献】
特開2013−153620(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/109618(WO,A1)
【文献】
特開2006−158042(JP,A)
【文献】
特開2017−070047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線から車両に供給される直流電力を交流電力に変換するスイッチング部と、当該スイッチング部におけるスイッチングの損失を軽減する共振回路と、を有する共振インバータと、
前記共振インバータから交流電力が供給される一次巻線と、当該一次巻線と絶縁されかつ変圧した交流電力を出力する二次巻線と、当該一次巻線と絶縁されかつ変圧した交流電力を出力する三次巻線と、を有するトランスと、
前記二次巻線から出力される交流電力を直流電力に変換する第1整流器と、
前記車両内に設けられ、前記第1整流器から出力される直流電力によって駆動する第1負荷部と、
前記第1負荷部に対して並列接続されかつ前記第1負荷部より抵抗値が大きい第1抵抗と、
前記三次巻線から出力される交流電力を直流電力に変換する第2整流器と、
前記車両内に設けられ、前記第2整流器から出力される直流電力によって駆動する第2負荷部と、
前記第2負荷部に対して並列接続されかつ前記第2負荷部より抵抗値が大きい第2抵抗と、
を備える車両用電源装置。
【請求項2】
前記第1負荷部に異常が発生していない場合に、前記第1負荷部に対する前記第1抵抗の並列接続を切断可能な第1スイッチと、
前記第2負荷部に異常が発生していない場合に、前記第2負荷部に対する前記第2抵抗の並列接続を切断可能な第2スイッチと、を備える請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記第1整流器および前記第2整流器は、SiCを用いたショットキーバリヤダイオードである請求項1または2に記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両内には、電動機に交流電力を供給するための主変換装置と、鉄道車両内の照明や空調装置に交流電力を供給するための車両用電源装置と、が搭載されている。車両用電源装置は、60Hzの交流電力を出力する絶縁トランスを有するため、その重量や体積が大きくなる。そのため、車両用電源装置の小型化および高効率化を目的として、架線から供給される直流電力を高周波の交流電力に変換する共振インバータと、当該共振インバータから出力される交流電力を変圧する絶縁トランスと、当該絶縁トランスによって変圧された交流電力を直流電力に変換する整流器と、を備える車両用電源装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−25591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用電源装置が備える共振インバータは、損失を低減するために、ソフトスイッチングになるように共振周波数が調整されている。しかしながら、車両用電源装置が備える絶縁トランスが、三次巻線式のトランスである場合、二次巻線に接続される負荷部、または三次巻線に接続される負荷部が停止すると、絶縁トランスのインダクタンス成分が変化するため、共振インバータの共振周波数がずれて、ハードスイッチングになり、共振インバータにおける損失が悪化することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の車両用電源装置は、共振インバータと、トランスと、第1整流器と、第1負荷部と、第1抵抗と、第2整流器と、第2負荷部と、第2抵抗と、を有する。共振インバータは、架線から車両に供給される直流電力を交流電力に変換するスイッチング部と、当該スイッチング部におけるスイッチングの損失を軽減する共振回路と、を有する。トランスは、共振インバータから交流電力が供給される一次巻線と、当該一次巻線と絶縁されかつ変圧した交流電力を出力する二次巻線と、当該一次巻線と絶縁されかつ変圧した交流電力を出力する三次巻線と、を有する。第1整流器は、二次巻線から出力される交流電力を直流電力に変換する。第1負荷部は、車両内に設けられ、第1整流器から出力される直流電力によって駆動する。第1抵抗は、第1負荷部に対して並列接続され
かつ第1負荷部より抵抗値が大きい。第2整流器は、三次巻線から出力される交流電力を直流電力に変換する。第2負荷部は、車両内に設けられ、第2整流器から出力される直流電力によって駆動する。第2抵抗は、第2負荷部に対して並列接続され
かつ第2負荷部より抵抗値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる車両用電源装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかる車両用電源装置について説明する。
【0008】
図1は、本実施形態にかかる車両用電源装置の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる車両用電源装置2は、昇圧チョッパユニット3と、フィルタコンデンサ4と、共振インバータ5と、高周波絶縁トランス6と、第1整流器7と、フィルタコンデンサ8と、三相インバータ9と、三相負荷部10と、第2整流器11と、直流負荷部12と、二次出力側抵抗13と、三次出力側抵抗14と、を有する。
【0009】
昇圧チョッパユニット3は、パンタグラフ1を介して架線から鉄道車両(車両の一例)に供給される直流電力の電圧を、予め設定された電圧に昇圧する。そして、昇圧チョッパユニット3は、昇圧した直流電力をフィルタコンデンサ4に出力する。架線から供給される直流電力には、変電所に起因する特定の周波数(例えば、300Hz)のリップルが含まれるが、昇圧チョッパユニット3が、直流電力に含まれるリップルを取り除きかつ架線から供給される直流電力の電圧変動を吸収して、安定した直流電力をフィルタコンデンサ4に供給する。
【0010】
本実施形態では、昇圧チョッパユニット3は、昇圧リアクトル31と、スイッチング素子32と、逆流防止ダイオード33と、を有する。昇圧リアクトル31は、コイル等で構成され、架線から供給される電力を蓄える。スイッチング素子32は、半導体スイッチ等で構成され、図示しない制御部によってチョッパ制御されてオンオフを繰り返して、昇圧リアクトル31に蓄えられた電力をGND側または負荷部側(三相負荷部10および直流負荷部12)側に放電する。逆流防止ダイオード33は、上述の負荷部側から架線への電流の逆流を防止するダイオードである。
【0011】
フィルタコンデンサ4は、昇圧チョッパユニット3から出力される直流電力から高周波成分を除去して出力する。
【0012】
共振インバータ5は、フィルタコンデンサ4から出力される直流電力を交流電力(例えば、5KHzの交流電力)に変換し、当該交流電力を高周波絶縁トランス6に出力する。また、共振インバータ5は、ソフトスイッチングになるように共振周波数が調整されている。本実施形態では、共振インバータ5は、スイッチング部と、共振回路と、を有する。スイッチング部は、オンオフを繰り返すことによって、直流電力を交流電力に変換する。共振回路は、スイッチング部におけるスイッチングの損失を低減する。具体的には、共振回路は、スイッチング部におけるスイッチングの周波数に近い共振周波数で振動する電力を蓄える。
【0013】
本実施形態では、共振インバータ5は、昇圧チョッパユニット3により昇圧されかつフィルタコンデンサ4により高周波成分が除去された直流電力が供給されているが、架線から供給される直流電力を昇圧する必要が無くかつ当該直流電力に含まれる高周波成分が少ない場合には、昇圧チョッパユニット3およびフィルタコンデンサ4を介さずに、架線から直流電力の供給を受け、当該直流電力を交流電力に変換しても良い。
【0014】
高周波絶縁トランス6は、三次巻線式のトランスである。具体的には、高周波絶縁トランス6は、共振インバータ5から交流電力が供給される一次巻線61と、当該一次巻線61と絶縁されかつ変圧した交流電力を出力する二次巻線62と、当該一次巻線61と絶縁されかつ変圧した交流電力を出力する三次巻線63と、を有する。高周波絶縁トランス6は、一次巻線61と、二次巻線62および三次巻線63との間が絶縁されているので、絶縁型のAC/ACコンバータとして機能する。
【0015】
第1整流器7は、高周波絶縁トランス6の二次巻線62から出力される交流電力を、再び、直流電力に変換して出力する。フィルタコンデンサ8は、第1整流器7から出力される直流電力の高周波成分を除去して出力する。本実施形態では、車両用電源装置2は、フィルタコンデンサ8を有しているが、第1整流器7から出力される直流電力に含まれる高周波成分が少ない場合には、フィルタコンデンサ8を有していなくても良い。
【0016】
三相インバータ9は、鉄道車両等の車両内に設けられ、第1整流器7から出力される直流電力によって駆動する負荷部(第1負荷部の一例)である。具体的には、三相インバータ9は、フィルタコンデンサ8から出力される直流電力を、予め設定された電圧の交流電力に変換して三相負荷部10に出力する。三相負荷部10(第1負荷部の一例)は、鉄道車両等の車両の照明や空調機器等であり、三相インバータ9から出力される交流電力によって駆動する負荷部である。二次出力側抵抗13(第1抵抗の一例)は、三相インバータ9および三相負荷部10に対して並列接続される。
【0017】
第2整流器11は、高周波絶縁トランス6の三次巻線63から出力される交流電力を、再び、直流電力に変換して出力する。直流負荷部12(第2負荷部の一例)は、車両全体を制御する制御部等であり、鉄道車両等の車両内に設けられ、第2整流器11から出力される直流電力によって駆動する負荷部である。三次出力側抵抗14(第2抵抗の一例)は、直流負荷部12に対して並列接続される。
【0018】
次に、
図1を用いて、本実施形態にかかる車両用電源装置2の負荷部において異常が発生した場合の動作について説明する。
【0019】
例えば、三相インバータ9および三相負荷部10の少なくとも一方に故障等の異常が発生して、第1整流器7からの直流電力の出力先が無負荷な状態になると、高周波絶縁トランス6のインダクタンス成分が変化する。これにより、共振インバータ5の共振周波数が予め設定された周波数からずれて、ハードスイッチングになり共振インバータ5における損失が大きくなる。
【0020】
そこで、本実施形態では、車両用電源装置2は、上述したように、三相インバータ9および三相負荷部10に対して並列接続される二次出力側抵抗13を有する。これにより、三相インバータ9および三相負荷部10の少なくとも一方に異常が発生した場合でも、第1整流器7から出力される交流電力が二次出力側抵抗13に供給されて、高周波絶縁トランス6のインダクタンス成分の変化を抑制できるので、ソフトスイッチングを維持して共振インバータ5における損失を少なくできる。
【0021】
また、直流負荷部12に故障等の異常が発生して、第2整流器11からの直流電力の出力先が無負荷な状態になった場合も、高周波絶縁トランス6のインダクタンス成分が変化する。これにより、共振インバータ5の共振周波数が予め設定された周波数からずれて、ハードスイッチングになり損失が大きくなる。
【0022】
そこで、本実施形態では、上述したように、直流負荷部12に対して三次出力側抵抗14を並列接続する。これにより、直流負荷部12に異常が発生した場合でも、第2整流器11から出力される直流電力が三次出力側抵抗14に供給されて、高周波絶縁トランス6のインダクタンス成分の変化を抑制できるので、ソフトスイッチングを維持して共振インバータ5における損失を少なくできる。
【0023】
また、本実施形態では、二次出力側抵抗13の抵抗値を、三相負荷部10の抵抗値より大きくする。これにより、三相インバータ9および三相負荷部10に異常が発生していない場合に、第1整流器7から二次出力側抵抗13への電力の供給量が増えることによって二次出力側抵抗13が発する熱を抑制できる。さらに、本実施形態では、三次出力側抵抗14の抵抗値を、直流負荷部12の抵抗値より大きくする。これにより、直流負荷部12に異常が発生していない場合に、第2整流器11から三次出力側抵抗14への電力の供給量が増えることによって三次出力側抵抗14が発する熱を抑制できる。
【0024】
また、本実施形態では、車両用電源装置2は、三相インバータ9および三相負荷部10の少なくとも一方に異常が発生していない場合に、三相インバータ9および三相負荷部10に対する二次出力側抵抗13の並列接続を切断可能なスイッチを設けても良い。これにより、三相インバータ9および三相負荷部10に異常が発生していない場合に、第1整流器7から二次出力側抵抗13へ電力が供給されることを防止できるので、二次出力側抵抗13が発する熱を抑制できる。
【0025】
具体的には、車両用電源装置2が有する図示しない制御部が、三相インバータ9および三相負荷部10の少なくとも一方の異常を検出していない場合に、スイッチを制御して、三相インバータ9および三相負荷部10に対する二次出力側抵抗13の並列接続を切断する。一方、当該制御部は、三相インバータ9および三相負荷部10の少なくとも一方の異常を検出した場合に、スイッチを制御して、二次出力側抵抗13を、三相インバータ9および三相負荷部10に対して並列接続する。
【0026】
または、三相インバータ9および三相負荷部10の少なくとも一方の異常を検出していない場合に、車両用電源装置2の管理者が、スイッチを操作して、三相インバータ9および三相負荷部10に対する二次出力側抵抗13の並列接続を切断する。一方、三相インバータ9および三相負荷部10の少なくとも一方の異常を検出した場合に、当該管理者が、スイッチを操作して、二次出力側抵抗13を、三相インバータ9および三相負荷部10に対して並列接続する。
【0027】
また、本実施形態では、車両用電源装置2は、直流負荷部12に異常が発生していない場合に、直流負荷部12に対する三次出力側抵抗14の並列接続を切断可能なスイッチを設けても良い。これにより、直流負荷部12に異常が発生していない場合に、第2整流器11から三次出力側抵抗14へ電力が供給されることを防止できるので、三次出力側抵抗14が発する熱をより抑制できる。
【0028】
具体的には、車両用電源装置2が有する図示しない制御部が、直流負荷部12の異常を検出していない場合に、スイッチを制御して、直流負荷部12に対する三次出力側抵抗14の並列接続を切断する。一方、当該制御部は、直流負荷部12の異常を検出した場合、スイッチを制御して、直流負荷部12に対して三次出力側抵抗14を並列接続する。
【0029】
または、直流負荷部12の異常を検出していない場合に、車両用電源装置2の管理者が、スイッチを操作して、直流負荷部12に対する三次出力側抵抗14の並列接続を切断する。一方、直流負荷部12の異常を検出した場合に、当該管理者が、スイッチを操作して、三次出力側抵抗14を、直流負荷部12に対して並列接続する。
【0030】
さらに、本実施形態では、第1整流器7および第2整流器11を、SiCを用いたショットキーバリヤダイオードとする。これにより、三相インバータ9および三相負荷部10の少なくとも一方、または直流負荷部12に異常が発生して、共振インバータ5がハードスイッチングになった場合でも、共振インバータ5における損失を小さくすることができる。
【0031】
このように、本実施形態にかかる車両用電源装置2によれば、三相インバータ9、三相負荷部10、および直流負荷部12の少なくとも一つに異常が発生した場合に、高周波絶縁トランス6のインダクタンス成分の変化を抑制できるので、ソフトスイッチングを維持して共振インバータ5における損失を少なくできる。
【0032】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 パンタグラフ
2 車両用電源装置
5 共振インバータ
6 高周波絶縁トランス
7 第1整流器
9 三相インバータ
10 三相負荷部
11 第2整流器
12 直流負荷部
13 二次出力側抵抗
14 三次出力側抵抗
61 一次巻線
62 二次巻線
63 三次巻線