特許第6969909号(P6969909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6969909-鋼合成桁の補強方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969909
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】鋼合成桁の補強方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   E01D22/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-112453(P2017-112453)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-204356(P2018-204356A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 茂男
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−033958(JP,A)
【文献】 特開2018−197476(JP,A)
【文献】 米国特許第06857156(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼合成桁を備える橋梁の既設床版を新設床版に取り替えて前記鋼桁を補強する鋼合成桁の補強方法であって、
前記既設床版を撤去する際に既設のずれ止めを切断した上、
前記鋼桁の上面を補強する補強鋼板を平面上に載置して応力が作用しない状態でスタッドジベルや馬蹄形ジベルなどのずれ止めを溶接し、
その後、応力が作用しない状態でずれ止めが溶接された前記補強鋼板を、前記既設床版が撤去された前記鋼桁の前記上面にボルト接合すること
を特徴とする鋼合成桁の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設鋼桁の補強方法に関し、詳しくは、経年劣化した既設床版を新設床版に取り替える床版取替時において、補強が必要になった既設鋼桁を補強する鋼桁の補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路橋などの橋梁では、経年劣化(老朽化)した既設床版を新設床版に取り替えることが行われている。しかし、橋梁建造時と現在とでは、設計荷重(設計上の輪荷重などの活荷重)の基準が変わっており、床版取替時に橋梁を支える鋼桁を補強しなければならない場合がある。このため、従来、床版取替時に床版に取り替えに加えて、既設の鋼桁に大型のブラケットやビームを取り付けて補強することが行われていた。
【0003】
また、床版と桁との合成やずれ止めとして、主桁となる鋼桁の上フランジには、スタッドジベル(頭付きスタッド)や馬蹄形ジベルなどのずれ止めをスタッド溶接などで溶接する必要があった。しかし、鋼桁に自重などの荷重が作用して曲げ応力などの応力が作用している状態で溶接を行うと、熱収縮で上フランジに圧縮の残留応力が作用してしまい、主桁である鋼桁に想定していない撓みが生じる結果となっていた。
【0004】
特に、合成桁は、床版と一体となって外力に対抗するため、鋼桁の断面積(特に上フランジの厚さ)が小さくなっている。その上、合成桁では、床版と鋼桁との合成効果を期待するため、スタッドジベル等の多数のずれ止めを現場溶接しなければならず、溶接に伴って鋼桁に想定していない撓みが生じてしまうという問題が顕著であった。このため、現場溶接による熱収縮の影響で鋼桁が撓むのを抑制する鋼桁の補強方法が切望されていた。
【0005】
例えば、特許文献1には、I断面鋼桁の上フランジ近傍の腹板側面に、鋼桁長手方向に圧縮杆材を添設し、鋼桁腹板に固着したブラケットに反力を支持させて該圧縮杆材に圧縮力を加え、鋼桁の図心位置より上側に引張応力を導入する既設鋼桁の補強方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0009]〜[0013]、図面の図1図2等参照)。
【0006】
特許文献1に記載の既設鋼桁の補強方法は、鋼コンクリート合成桁の床版取替時に仮支柱を設けたりすることなく鋼桁の上フランジに生ずる圧縮応力を緩和し、鋼桁の座屈を防止するとされている。
【0007】
また、特許文献2には、既設主桁の下方に反力架台を設置し、前記反力架台の下方に支持桁を配置し、前記支持桁を接合手段によって既設主桁に接合し、接合された前記支持桁と既設主桁の間にジャッキを配置し、前記ジャッキをジャッキアップすることによって既設主桁を仮受けする合成桁の床版取替工法における主桁仮受け方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0020]〜[0030]、図面の図1図8等参照)。
【0008】
特許文献2に記載の床版取替工法における主桁仮受け方法は、ベントを使用することなく、安全かつ確実に施工でき、工期を短縮でき、曲線桁にも対応可能で、キャンバー調整が容易で、経済性に優れるとされている。
【0009】
しかし、特許文献1に記載の既設鋼桁の補強方法、及び特許文献2に記載の床版取替工法における主桁仮受け方法は、既設の鋼桁に大型のブラケットやビームを取り付ける必要があり、施設が大掛かりで費用が嵩むという問題があった。また、特許文献1に記載の既設鋼桁の補強方法や特許文献2に記載の主桁仮受け方法でも、鋼桁の上フランジには、床版との合成のため、スタッドを現場溶接する必要があり、熱収縮で上フランジに圧縮の残留応力が作用してしまい、鋼桁に想定していない撓みが生じるという問題を解決することはできていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−256322号公報
【特許文献2】特開2016−8406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、前記問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、橋梁の床版取替時において熱収縮による残留応力が発生せず、鋼桁に想定していない撓みが生じないとともに、同時に鋼桁の補強が可能な鋼桁の補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の鋼合成桁の補強方法は、鋼合成桁を備える橋梁の既設床版を新設床版に取り替えて前記鋼桁を補強する鋼合成桁の補強方法であって、前記既設床版を撤去する際に既設のずれ止めを切断した上、前記鋼桁の上面を補強する補強鋼板を平面上に載置して応力が作用しない状態でスタッドジベルや馬蹄形ジベルなどのずれ止めを溶接し、その後、応力が作用しない状態でずれ止めが溶接された前記補強鋼板を、前記既設床版が撤去された前記鋼桁の前記上面にボルト接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の鋼合成桁の補強方法によれば、現場溶接ではなく補強鋼板を平面上に載置して応力が作用しない状態でずれ止めを溶接して、その補強鋼板を鋼桁の上面に接合するので、床版取替時のずれ止め溶接時において熱収縮による残留応力が発生せず、鋼桁に想定していない撓みが生じない。
【0015】
また、請求項1に記載の鋼合成桁の補強方法によれば、ずれ止めの溶接を現場溶接ではなく、別途工場等の現場外で予め行い、床版取替の現場では乾式接合だけで済むため、現場作業を短縮して通行止めの期間を短縮することができる。このため、床版取替の労務コストも低減することができる。
【0016】
さらに、請求項1に記載の鋼合成桁の補強方法によれば、床版取替時において新設床版と既存鋼桁とを一体化するためのずれ止めの設置と、必要な鋼桁の補強を同時に行うことができる。このため、さらに床版取替の工期を短縮してコストも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法を適用する橋梁1の上部構造を橋軸方向と直交する鉛直面で切断した状態を示す鉛直断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法の既設床版撤去工程を示す工程説明図である。
図3】同上の鋼桁の補強方法のボルト孔削孔工程を鋼桁の上フランジ付近を拡大して示す工程説明図である。
図4】同上の鋼桁の補強方法の補強鋼板接合工程を示す工程説明図であり、(a)が接合前、(b)が接合後を示し、(c)は補強鋼板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
先ず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法を適用する既設の橋梁について簡単に説明する。橋梁としてI形鋼からなる鋼桁と鉄筋コンクリート床版を一体化した鋼コンクリート合成桁を例示して説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法を適用する橋梁1の上部構造を、橋軸方向と直交する鉛直面で切断した状態を示す鉛直断面図である。図1に示すように、図示形態に係る橋梁1の上部構造は、I形鋼からなる複数の鋼桁2と、これらの既設の鋼桁2の上に載置された鉄筋コンクリート製の既設床版3など、から構成されている。この橋梁1の上部構造は、鋼桁2の上フランジ20に突設されたずれ止め(図示せず)で既設床版3と鋼桁2とが一体化されている合成桁である。
【0021】
また、この橋梁1の上部構造は、既設床版3の幅方向の端部には、鉄筋コンクリート製の高欄4が形成され、既設床版3の上には、アスファルト舗装5が敷設されている。本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法は、このような橋梁1の既設床版3を新設床版に取り替える際に、構造設計上の活荷重増加に伴って補強する場合に好適に適用される。
【0022】
(既設床版撤去工程)
先ず、本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法では、図示しない合成桁のずれ止めを切断して既設床版3と鋼桁2とを分離し、図2に示すように、既設床版3を揚重可能な所定の大きさに切断して撤去する既設床版撤去工程を行う。図2は、本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法の既設床版撤去工程を示す工程説明図である。
【0023】
具体的には、本工程では、ダイヤモンドカッターやワイヤソーを用いて、既設床版3を揚重機で揚重可能な所定の大きさに切断する。次に、ジャッキ等で床版と鋼桁の縁切りを行う。そして、橋梁1上や橋梁1下の道路上に設置した揚重機であるラフタークレーンのなどの移動式クレーンを用いて、所定の大きさに切断した既設床版3を吊り上げてトラック等の輸送車両で搬出して撤去する。最後に主桁上面のずれ止めをガス等で10mm程度残して切断し、砥石などを装着したグラインダー等で鋼桁上面を平滑に仕上げる。
【0024】
(ボルト孔削孔工程)
次に、本実施形態に係る鋼桁の補強方法では、図3に示すように、前工程で既設床版3を撤去して露出した鋼桁2の上フランジ20に、補強鋼板6をボルト接合するためのボルト孔21を削孔機で削孔するボルト孔削孔工程を行う。図3は、本実施形態に係る鋼桁の補強方法のボルト孔削孔工程を鋼桁2の上フランジ20付近を拡大して示す工程説明図である。
【0025】
具体的には、本工程では、後述のスタッドジベルSJと干渉しない上フランジ20の所定の位置に図示しない電動ドリルなどの削孔機を用いてハイテンションボルト(高力ボルト)用のボルト孔21を削孔する。
【0026】
(補強鋼板接合工程)
次に、本実施形態に係る鋼桁の補強方法では、図4に示すように、前工程で削孔した上フランジ20のボルト孔21にハイテンションボルトHBを挿通して、工場等で予めずれ止めが溶接された補強鋼板6を上フランジ20にボルト接合する補強鋼板接合工程を行う。図4は、本実施形態に係る鋼桁の補強方法の補強鋼板接合工程を示す工程説明図である。
【0027】
本工程で用いる補強鋼板6は、既設の鋼桁2の上フランジ20に応じた幅で、設計荷重増加分の補強に適した所定の厚さの構造用鋼板であり、一般的には、厚さ8mm以上の鋼板が用いられる。勿論、本発明に係る補強鋼板の幅や厚さは、構造設計に応じて適宜変更可能なことは云うまでもない。
【0028】
また、図4(a)(c)に示すように、補強鋼板6には、予め補強鋼板6に曲げ応力などの横応力が作用しない状態でずれ止めであるスタッドジベルSJが溶植されている。具体的には、工場等の風雨を避けられる屋内施設等において、補強鋼板6を凹凸のない平面上に載置して自重等により曲げ応力等が作用しない状態でスタッドガンを用いてスタッドジベルSJ(例えば、φ19〜22程度)を補強鋼板6の上面に押し当ててスタッド溶接する。
【0029】
勿論、補強鋼板6を溶接する場所は、工場等の屋内施設に限られず、補強鋼板6を載置した際に補強鋼板6に応力が作用しない状態で溶接可能な場所であれば屋外であっても構わない。但し、屋内施設で溶接を行った方が、風雨が避けられて溶接の品質が安定するため好ましい。
【0030】
また、補強鋼板6に予め溶接する本発明に係るずれ止めは、スタッドジベルSJに限られず、馬蹄形ジベルなどの他の形態のずれ止めであってもよいことは云うまでもない。
【0031】
このように、本実施形態に係る鋼桁の補強方法では、補強鋼板6に曲げ応力などの応力が作用しない状態でスタッド溶接するため、熱収縮で主桁である鋼桁2が撓むのを抑制することができる。これに対して、従来の床版取替工事では、床版が撤去された既存鋼桁上にスタッドジベルなどのずれ止めが直接現場溶接されていた。つまり、橋梁の床版取替工事が行われる現場において、鋼桁の自重や撤去した部分以外の床版の重みが鋼桁に作用した状態で新たなずれ止めの溶接がなされていた。このため、熱収縮で上フランジに圧縮の残留応力が作用してしまい、鋼桁に想定していない撓みが生じる結果となっていた。
【0032】
その上、従来の床版取替工事では、既存鋼桁の上面に直接スタッド溶接を現場溶接で行うため、コンクリート片などが付着した既存鋼桁の上面をスタッド溶接ができる程度に綺麗に清掃して磨き上げなければならず、非常に手間と作業時間を要していた。
【0033】
これに対して、本実施形態に係る鋼桁の補強方法では、鋼桁2の上面の清掃が、既設の鋼桁2に補強鋼板6をハイテンションボルトHBで摩擦接合できる程度の清掃で済み、磨き上げる必要がない。このため、清掃に掛かる作業時間を短縮することができ、スタッド溶接等に掛かる労務コストも低減することができる。
【0034】
また、従来の床版取替工事では、既設の鋼桁の上面に直接スタッド溶接するため、既設の鋼桁のフランジに外ケーブルを定着させて桁が中央付近で山なりに反る力を与えたり、鋼桁に当て板補強したりすることで補強するしかなかった。このため、床版取替と同時に鋼桁の補強を行うことが困難であり、作業時間が掛かり、労務コストが増大する要因となっていた。
【0035】
これに対して、本実施形態に係る鋼桁の補強方法では、新たな床版と鋼桁2とを一体化させるためのスタッドジベルSJ(ずれ止め)の設置と、鋼桁2の補強を同時に行うことができる。このため、さらに床版取替の作業時間を短縮することができ、労務コストも低減することができる。
【0036】
そして、図4(b)(c)に示すように、本工程では、インパクトレンチなどの締付け工具を用いて、ボルト孔21に挿通されたハイテンションボルトHBで、前述のスタッドジベルSJが溶接された補強鋼板6を上フランジ20にボルト接合する。本工程の終了により本実施形態に係る鋼桁の補強方法自体は終了する。
【0037】
そして、その後、プレキャスト製のPC床版などの新設床版を載置して、合成部分となるスタッドジベルSJの周りのコッターに無収縮モルタル等の充填材を充填して一体化して橋梁1の床版取替工事が終了する。勿論、新設床版は、プレキャスト製のPC床版に限られず、プレキャスト製の鋼コンクリート合成床版や、従来通り、型枠、配筋等を行ってコンクリートを打設した新設のRC床版であっても構わないことは云うまでもない。
【0038】
本実施形態に係る鋼桁の補強方法によれば、応力が作用しない状態でスタッドジベルSJを補強鋼板6に溶接した上、現場で鋼桁2の上フランジ20の上面にボルト接合するので、床版取替時において熱収縮による残留応力が発生せず、鋼桁に想定していない撓みが生じない。
【0039】
また、本実施形態に係る鋼桁の補強方法によれば、現場溶接ではなくスタッドジベルSJを予め工場等の現場外で溶接して、その補強鋼板6を上フランジ20に乾式接合するので、現場作業を短縮して橋梁1の通行止めの期間を短縮することができる。このため、床版取替の労務コストも低減することができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る鋼桁の補強方法によれば、床版取替時において新設床版と鋼桁2とを一体化するスタッドジベルSJの設置と、必要な鋼桁2の補強を同時に行うことができる。このため、さらに床版取替の工期を短縮してコストも低減することができる。また、構造設計に応じて鋼桁2の上フランジ20が増厚されるため、発生応力を低減することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態に係る鋼桁の補強方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明に係る技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0042】
1 :橋梁
2 :鋼桁
20 :上フランジ
21 :ボルト孔
3 :既設床版
4 :高欄
5 :アスファルト舗装(舗装)
6 :補強鋼板
SJ : スタッドジベル(頭付きスタッド)
HB :ハイテンションボルト(高力ボルト)
図1
図2
図3
図4