(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような非接触電力伝送システムでは、受電装置が送電装置から受電した電力によって、バッテリ等を充電する場合がある。このような場合において、バッテリが満充電状態となると、これ以上バッテリに電力を供給する必要がなくなるため、バッテリへの電力の供給を停止すべく、例えばスイッチを用いて受電装置とバッテリとの間の電気的接続を遮断することがある。この時、送信アンテナ以降のインピーダンスが急激に大きく変動するため、電源回路の出力インピーダンスと送信アンテナ以降のインピーダンスが整合しなくなる。このように、インピーダンスの不整合が生じると、送信アンテナから送信されるべき高周波電力の大部分又は全部が反射され、反射波となって電源回路側に戻り得る。
【0005】
このように、反射波が電源回路側に戻る状況において、上記特許文献1に開示された電源回路を用いると、戻ってきた反射波が電源回路内部のパワー素子に流れ込み、当該パワー素子に定格電圧を超える電圧が印加されたり、定格電流を超える電流が流れてしまうといった問題がある。もっとも、充電の停止に伴って電源回路による高周波の生成を停止する構成も考えられる。しかし、充電の停止から高周波の生成の停止までにタイムラグが生じるため、その間に生成された高周波の反射波がやはり電源回路側に戻るおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、反射波が生じても高周波電源装置内部の素子にかかる過負荷を抑制することができる高周波電源装置及び送電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る高周波電源装置は、第1高周波を出力する第1インバータ回路と、第1高周波との位相差が略90度である第2高周波を出力する第2インバータ回路と、第1端子に供給される第1高周波及び第2端子に供給される第2高周波を合成した合成波を第3端子から出力する90度ハイブリッド回路と、を備え、90度ハイブリッド回路は、出力された合成波の反射波が第3端子に入力された場合に、反射波の電力を消費する電力消費回路を備え、電力消費回路のインピーダンスは、第1インバータ回路及び第2インバータ回路の出力インピーダンスより大きい。
【0008】
この態様によれば、例えば高周波電源装置の出力端から受電装置側を見たインピーダンスが大きく変化し、インピーダンスの不整合により合成波の反射波が生じても、当該反射波は高周波電源装置に含まれる電力消費回路に出力され、当該電力消費回路において反射波の電力が消費される。従って、反射波が高周波電源装置に含まれるインバータ回路に戻ることが回避され、インバータ回路内部の素子にかかる過負荷を抑制することができる。
【0009】
上記態様において、電力消費回路は、基準電位点に接続された抵抗素子を備え、抵抗素子において、反射波の電力が消費されてもよい。
【0010】
この態様によれば、比較的簡易な構成により、反射波の電力を消費することができる。
【0011】
上記態様において、抵抗素子は、90度ハイブリッド回路の第4端子と基準電位点との間に接続され、90度ハイブリッド回路は、第1端子と第3端子との間に接続された第1インダクタと、第2端子と第4端子との間に接続された第2インダクタと、第1端子と第4端子との間に接続された第1コンデンサと、第2端子と第3端子との間に接続された第2コンデンサと、を備え、第1インダクタ及び第2インダクタは磁界結合し、第2高周波の位相は、第1高周波の位相に比べて略90度遅れていてもよい。
【0012】
この態様によれば、2つのインバータ回路においてそれぞれ生成された高周波の合成と、合成された合成波の反射波の電力の消費を兼ね備えた90度ハイブリッド回路を構成することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る送電装置は、高周波電源装置と、高周波電源装置の後段に設けられ、合成波を送電する送電ユニットと、を備える。
【0014】
この態様によれば、高周波電源装置において生成された合成波を送電ユニットから送電することができる。
【0015】
上記態様において、送電装置は、高周波電源装置と送電ユニットとの間に設けられ、反射波の電力を検出する検出部をさらに備え、高周波電源装置は、検出された電力が所定の閾値以上となった場合に、第1高周波及び第2高周波の出力を停止してもよい。
【0016】
この態様によれば、例えば非接触電力伝送システムにおいて、充電対象が満充電状態となり、受電装置による充電対象への電流の供給を停止した場合に、送電装置において高周波電源装置側に戻ってくる反射波によって、充電状態を判断することができる。従って、例えば送電装置と受電装置との間で通信等を行うことなく、充電状態に応じて高周波電源装置による高周波の出力を制御することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、反射波が生じても高周波電源装置内部の素子にかかる過負荷を抑制することができる高周波電源装置及び送電装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る高周波電源装置を含む非接触電力伝送システムの全体構成を示す図である。同図に示される非接触電力伝送システム1は、例えば、電力Eを送電する送電装置2と、電力Eを非接触で受電する受電装置3を備える。
【0021】
非接触電力伝送システム1は、例えば、送電装置2が工場内に設置され、受電装置3が工場内を自動走行する無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)に搭載され、同じく無人搬送車に搭載された充電対象4に電流を供給するためのシステムとして用いられる。
【0022】
図1に示されるように、送電装置2は、例えば、高周波電源装置10、検出部20、制御部30、インピーダンス整合回路40及び送電ユニット50を備える。また、受電装置3は、例えば、受電ユニット60、整流平滑回路70及びスイッチ回路80を備える。
【0023】
高周波電源装置10は、例えば、数kHz〜数百MHz程度の高周波を生成して出力する。当該高周波は、検出部20及びインピーダンス整合回路40を介して、送電ユニット50に供給される。高周波電源装置10が生成する高周波の周波数は特に限定されないが、例えば、6.78MHz、13.56MHz、27.12MHz等のISMバンドの周波数帯であってもよい。これらの周波数帯を用いることにより、85kHz等の周波数帯を用いる場合に比べて、コイルやコンデンサ等の素子サイズを小さくすることができる。従って、例えば充電式の電動工具等の小型装置にも非接触電力伝送システム1を適用することができる。なお、高周波電源装置10の構成の詳細については後述する。
【0024】
検出部20は、高周波電源装置10とインピーダンス整合回路40との間に設けられる。検出部20は、高周波電源装置10から送電ユニット50側に伝播される高周波(以下、「進行波」とも呼ぶ。)の電力と、当該進行波が送電ユニット50において反射し、高周波電源装置10側に戻ってくる反射波の電力を検出する。
【0025】
制御部30は、検出部20において検出された進行波及び反射波の電力に応じて、高周波電源装置10の出力を制御する。制御の詳細については後述する。
【0026】
インピーダンス整合回路40は、充電対象4の充電中に、インピーダンス整合回路40の出力インピーダンスと送電ユニット50の入力端から受電装置3側を見たインピーダンスを整合する(インピーダンス共役整合)。これにより、充電対象4の充電中に、インピーダンスの不整合による送電装置2における反射波の発生が抑制される。なお、インピーダンス整合回路40は、例えばコンデンサ及びインダクタを組み合わせたL型の回路であってもよい。
【0027】
送電ユニット50は、例えば、送電用コイルと、送電用コイルに直列接続された共振コンデンサを含む直列共振回路により構成される。送電ユニット50は、送電用コイルにおいて磁界を発生させる。
【0028】
受電ユニット60は、例えば送電用コイルと磁界結合された受電用コイルと、受電用コイルに直列接続された共振コンデンサを含む直列共振回路により構成される。受電ユニット60は、例えば、磁界共鳴方式によって送電ユニット50から送電された電力Eを非接触に受電する。なお、送電ユニット50と受電ユニット60は、直列共振回路の代わりに並列共振回路が用いられてもよい。また、送電ユニット50と受電ユニット60は、磁界結合の代わりに電界結合により電力が伝送されてもよい。
【0029】
受電ユニット60において受電された電力Eは、整流平滑回路70によって整流及び平滑化され、スイッチ回路80を介して充電対象4に供給される。なお、受電ユニット60と整流平滑回路70との間に、受電ユニット60の出力電圧と出力電流の位相を同相とする回路が設けられていてもよい。これにより、受電ユニット60の出力電圧と出力電流の位相が同相でない場合に、受電ユニット60の出力電流に含まれる無効電流分を減少させ、伝送効率を向上させることができる。
【0030】
充電対象4は、受電装置3から電力が供給され、当該電力が蓄電される。充電対象4は、例えばバッテリやコンデンサ等であり、無人搬送車の動力源となる。ここで、充電対象4が充電中であるか満充電状態であるかを判断するため、充電対象4は、例えば、受電装置3側の図示しない検出部によって電圧等が検出される。
【0031】
スイッチ回路80は、充電対象4が充電中から満充電状態に変わった場合に、受電ユニット60と充電対象4との間の電気的接続を遮断することにより、充電対象4への電流の供給を停止する。
【0032】
ここで、スイッチ回路80のオン及びオフを切り替えると、送電装置2における送電ユニット50の入力端から受電装置3側を見たインピーダンスが大きく変化する。これにより、送電装置2では、送電ユニット50において全反射又は全反射に近い状態となり、進行波の大部分又は全部が反射波となって高周波電源装置10側に戻ることとなる。この時、検出部20において検出される反射波の電力が急激に増大する。
【0033】
制御部30は、当該検出される反射波の電力が所定の条件を満たした場合、例えば、所定の期間、所定の閾値以上となった場合は、受電装置3が充電対象4への電流の供給を停止していると判断し、高周波電源装置10の高周波出力を停止する。このように、送電装置2は、検出部20及び制御部30を備えることにより、例えば送電装置2と受電装置3との間における通信等を行わずに、充電状態に応じて送電を制御することができる。
【0034】
次に、
図2及び
図3を参照しつつ、高周波電源装置10の構成について詳細に説明する。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態に係る高周波電源装置の概要を示す図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係る高周波電源装置の回路図である。
【0036】
図2に示されるように、高周波電源装置10は、例えば、信号発生器11、バッファ回路12、2つのインバータ回路13,14及び結合回路15を備える。
【0037】
信号発生器11は、インバータ回路13,14が備える各スイッチング素子のオン及びオフを切り替えるための制御信号S1〜S4を生成して出力する。制御信号S1〜S4は、高周波電源装置10が生成する高周波の周波数でハイレベルとローレベルとを繰り返すパルス信号である。制御信号S1と制御信号S2、及び制御信号S3と制御信号S4は、それぞれ位相が略180度異なっており、制御信号S1と制御信号S3、及び制御信号S2と制御信号S4は、それぞれ位相が略90度異なっている。ここで、「略90度」とは、90度であるか、又は90度から若干ずれた位相を含む意である。制御信号S1〜S4は、バッファ回路12により増幅されて各インバータ回路13,14に供給される。
【0038】
インバータ回路13(第1インバータ回路)は、制御信号S1,S2に基づいて高周波Va(第1高周波)を生成して出力する。インバータ回路14(第2インバータ回路)は、制御信号S3,S4に基づいて高周波Vb(第2高周波)を生成して出力する。ここで、高周波Vaと高周波Vbの電圧振幅は略等しく、位相差は略90度である。本実施形態においては、高周波Vaの位相に比べて高周波Vbの位相が90度遅れるように、高周波Va,Vbが生成される。
【0039】
次に、インバータ回路13,14の回路構成について、インバータ回路13を例として説明する。なお、インバータ回路14についてはインバータ回路13と同様の符号を付して説明を省略する。インバータ回路13,14の回路構成は特に限定されないが、以下ではいわゆるφ級プッシュプルインバータ回路を例として説明する。
【0040】
図3に示されるように、インバータ回路13は、例えば、スイッチング素子Q1a,Q2a、インダクタL1a〜L6a、コンデンサC1a〜C10a、抵抗素子R1a,R2a及びトランスT1aを備える。インバータ回路13は、
図3に示される上段の構成(スイッチング素子Q1a、インダクタL1a〜L3a、コンデンサC1a〜C5a及び抵抗素子R1a)で生成される交流電圧と、下段の構成(スイッチング素子Q2a、インダクタL4a〜L6a、コンデンサC6a〜C10a及び抵抗素子R2a)で生成される交流電圧をトランスT1aにおいて合成し、高周波Vaを生成する。以下では、上段の構成について説明し、下段の構成については、上段の構成と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0041】
コンデンサC1aは、一端に外部電源から直流電圧が供給され、他端が接地される。コンデンサC1aは、交流成分を接地に流し、直流電圧を平滑化する。
【0042】
インダクタL1aは、一端に直流電圧が供給され、他端がスイッチング素子Q1aのドレインに接続される。インダクタL1aとコンデンサC1aは、交流成分が外部電源側に戻ることを抑制する。
【0043】
スイッチング素子Q1aは、制御信号S1に応じてオンとオフとを切り替える。本実施形態では、スイッチング素子Q1aは、例えばNチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field−Effect Transistor)である。なお、スイッチング素子Q1aはMOSFETに限られず、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他のトランジスタであってもよい。
【0044】
具体的には、スイッチング素子Q1aは、ドレインがインダクタL1aの他端に接続され、ゲートに抵抗素子R1aを介して制御信号S1が供給され、ソースが接地される。スイッチング素子Q1aは、制御信号S1がローレベルの場合にオフになり、制御信号S1がハイレベルの場合にオンになる。ここで、下段のスイッチング素子Q2aは、スイッチング素子Q1aのオン及びオフと交互になるように、制御信号S2に応じてオン及びオフを切り替える。
【0045】
コンデンサC2aは、一端がスイッチング素子Q1aのドレインに接続され、他端が接地される。スイッチング素子Q1aがオンからオフに切り替わるときにコンデンサC2aに電流が流れることにより、スイッチング素子Q1aのドレイン・ソース間電圧の急激な上昇が抑制される。
【0046】
インダクタL2aとコンデンサC3aは直列接続され、直列共振回路LC1aを構成する。直列共振回路LC1aは、スイッチング素子Q1aのドレインとトランスT1aの一次側コイルとの間に直列接続される。直列共振回路LC1aの共振周波数が高周波Vaの周波数と一致するようにインダクタL2aのインダクタンス値及びコンデンサC3aの容量値が決定されることにより、所望の高周波Vaを得ることができる。
【0047】
インダクタL3aとコンデンサC4aは直列接続され、直列共振回路LC2aを構成する。直列共振回路LC2aは、スイッチング素子Q1aのドレインと接地との間に直列接続される。直列共振回路LC2aの共振周波数が高周波Vaの高調波(例えば、2倍波)の周波数と一致するようにインダクタL3aのインダクタンス値及びコンデンサC4aの容量値が決定されることにより、高調波が直列共振回路LC2aを介して終端される。
【0048】
コンデンサC5aは、インピーダンス整合回路を構成する。コンデンサC5aは、一端がコンデンサC3aとトランスT1aの一次側コイルとの接続点に接続され、他端が接地される。
【0049】
トランスT1aは、一次側コイルにスイッチング素子Q1a,Q2aの出力電圧が交互に供給され、二次側コイルから高周波Vaを出力する。
【0050】
上述の構成により、インバータ回路13は高周波Vaを生成して出力する。また、インバータ回路14に供給される制御信号S3,S4は、それぞれ制御信号S1,S2に比べて位相が略90度遅れている。従って、インバータ回路14は、高周波Vaに比べて位相が略90度遅れた高周波Vbを生成して出力する。
【0051】
結合回路15は、各インバータ回路13,14から供給される高周波Va,Vbを合成して合成波Voutを出力する。この合成波Voutは、上記の進行波に相当するものである。結合回路15は、いわゆる90度ハイブリッド回路により構成される。具体的には、結合回路15は、例えば、端子P1(第1端子),P2(第2端子),P3(第3端子),P4(第4端子)、インダクタL7,L8、コンデンサC11,C12及び抵抗素子R3を備える。
【0052】
インダクタL7(第1インダクタ)は、端子P1と端子P3との間に接続され、インダクタL8(第2インダクタ)は、端子P2と端子P4との間に接続され、コンデンサC11(第1コンデンサ)は、端子P1と端子P4との間に接続され、コンデンサC12(第2コンデンサ)は、端子P2と端子P3との間に接続される。インダクタL7,L8及びコンデンサC11,C12の素子値は、例えば、合成波Voutの周波数においてインダクタL7,L8のインピーダンスがj50Ωとなり、コンデンサC11,C12のインピーダンスが−j100Ωとなるような値である。また、インダクタL7とインダクタL8は磁界結合されている。なお、
図3に示される90度ハイブリッド回路の構成は一例であり、特にこれに限定されない。例えば、90度ハイブリッド回路は、インダクタ及びコンデンサの組み合わせによる集中定数回路方式の代わりに、ストリップライン等による分布定数回路方式により構成されていてもよい。
【0053】
抵抗素子R3は、一端が端子P4に接続され、他端が基準電位点に接続される。当該基準電位は、例えば接地電位であってもよく、あるいは送電装置2に含まれる回路における基準電位であってもよい。抵抗素子R3のインピーダンスは、インバータ回路13,14の出力インピーダンス(例えば数Ω程度)に比べて十分大きな値であり、例えば50Ωの終端抵抗である。抵抗素子R3は、結合回路15から出力される合成波Voutの反射波Vrefの電力を消費する電力消費回路の一例である。抵抗素子R3は、上記の合成波Voutの合成に用いられるものではなく、反射波の電力を消費するために設けられている。
【0054】
結合回路15の作用について説明する。まず、合成波Voutを生成する場合は、端子P1に高周波Vaが入力され、端子P2に高周波Vaより位相が略90度遅れた高周波Vbが入力される。そして、インダクタL7,L8の電圧は高周波Vaと電圧振幅は変わらず位相が90度進み、コンデンサC11の電圧は高周波Vaと電圧振幅及び位相が変わらず、コンデンサC12の電圧は高周波Vbと電圧振幅は変わらず位相が90度遅れることとなる。これにより、端子P3では高周波Vaと高周波Vbが合成され、電圧振幅が高周波Vaの約1.41倍であり、位相が高周波Vaに比べて略45度遅れた合成波Voutが出力される。一方、端子P4では電圧はほぼゼロとなり、合成波が出力されない。
【0055】
次に、端子P3から出力された合成波Voutが、反射波Vrefとして端子P3に戻ってくる場合を考える。インバータ回路13,14は、高出力を得るために、出力インピーダンス(抵抗成分)が当該インバータ回路13,14の先に接続される負荷(例えば、50Ω)より十分小さくなるように設計される。従って、端子P3に反射波Vrefが入力されても、反射波Vrefの大部分は端子P4に出力され、端子P4に接続された抵抗素子R3において消費される。すなわち、反射波Vrefのうち、端子P1,P2に接続されたインバータ回路13,14に出力される電力は、抵抗素子R3に出力される電力よりも小さくなる。このように、結合回路15は、2つのインバータ回路13,14においてそれぞれ生成された高周波Va,Vbの合成と、合成された合成波Voutの反射波Vrefの電力の消費の機能を兼ね備える。
【0056】
図1に戻り、非接触電力伝送システム1では、上述の通り、充電対象4が充電中から満充電状態に変わった場合は、受電装置3のスイッチ回路80を切り替えるため、インピーダンス整合回路40の出力インピーダンスと送電ユニット50の入力端から受電装置3側を見たインピーダンスに不整合が生じる。これにより、送電ユニット50において反射される反射波が急激に増大するため、当該反射波の電力を検出部20が検出し、高周波電源装置10の高周波出力を停止する。しかし、上述の構成によると、受電装置3のスイッチ回路80を切り替えてから、送電装置2の高周波電源装置10が高周波出力を停止するまでの間にタイムラグが生じ得る。従って、当該タイムラグの間は、反射波が高周波電源装置10に戻ることとなる。
【0057】
ここで、仮に高周波電源装置10が結合回路15を備えず、高周波電源装置10に戻った反射波が直接インバータ回路13,14に入力されるとすると、インバータ回路13,14内部のスイッチング素子Q1a〜Q2bに定格電圧を超える電圧が印加されたり、定格電流を超える電流が流れることにより、スイッチング素子が破損するおそれがある。あるいは、スイッチング素子Q1a〜Q2bの動作領域がソフトスイッチング領域からハードスイッチング領域に移行し、当該スイッチング素子における電力損失が増大するおそれがある。具体的には、当該電力損失には、スイッチング素子のオン抵抗による損失や、オン及びオフの切り替え時に生じるスイッチング損失が含まれる。
【0058】
この点、本実施形態では、上述の通り、高周波電源装置10に反射波Vrefが戻っても、反射波Vrefは結合回路15において端子P3から端子P4を経由して抵抗素子R3に出力される。これにより、抵抗素子R3において反射波Vrefの電力が消費される。従って、反射波Vrefがインバータ回路13,14内部にまで戻ることが抑制される。
【0059】
このように、高周波電源装置10は、送電装置2における送電ユニット50の入力端から受電装置3側を見たインピーダンスが大きく変化し、インピーダンスの不整合により進行波の一部又は全部が反射しても、結合回路15において反射波の電力が消費される。従って、高周波電源装置10内部のスイッチング素子への過負荷を抑制することができる。
【0060】
また、反射波によるスイッチング素子にかかる過負荷を回避するため、例えばインバータ回路の数を増やす(例えば10個以上)ことにより、各スイッチング素子にかかる電圧や電流を分散させる方法も考えられる。しかし、当該方法によると、回路面積の増大や部品点数の増加を招き得る。この点、本発明においては、回路面積の増大及び部品点数の増加を抑制しつつ、スイッチング素子にかかる過負荷を抑制することができる。従って、高周波電源装置10の小型化を図ることができる。
【0061】
なお、結合回路15において、端子P4と基準電位点との間に接続される電力消費回路は抵抗素子R3に限られず、電力が消費される負荷であればよい。負荷として抵抗素子を用いることにより、比較的簡易な構成により反射波の電力を消費することができる。
【0062】
次に、
図3〜
図6Dを参照しつつ、比較例及び本発明に係る高周波電源装置を用いたシミュレーション結果について説明する。
図4は、本発明の比較例に係る高周波電源装置の回路図である。
図4に示されるように、本発明の比較例に係る高周波電源装置は、
図3に示される高周波電源回路に比べて、結合回路15の代わりに結合回路100を備える。なお、2つのインバータ回路の構成については、
図3に示されるインバータ回路13,14と同様であるため、同様の符号を用いて説明を省略する。
【0063】
比較例では、2つのインバータ回路13,14が、それぞれ同相の高周波Vc,Vdを出力する。高周波Vcと高周波Vdは、結合回路100において結合されて合成波Vout´として出力される。具体的には、結合回路100は、2つのインダクタL9,L10及び抵抗素子R4を備える。インダクタL9とインダクタL10は直列接続され、磁界結合している。インダクタL9の一端に高周波Vcが入力され、インダクタL10の一端に高周波Vdが入力される。抵抗素子R4は、直列接続されたインダクタL9,L10と並列接続される。そして、インダクタL9とインダクタL10との接続点から合成波Vout´が出力される。
【0064】
図5Aは、
図4に示される比較例における結合回路100に含まれる抵抗素子R4において消費される電力のシミュレーション結果を示す図である。
図5B〜
図5Dは、それぞれ、
図4に示される比較例におけるスイッチング素子Q2a,Q2bのドレイン電圧、ドレイン電流、又はドレイン損失のシミュレーション結果を示す図である。また、
図6Aは、
図3に示される結合回路15に含まれる抵抗素子R3において消費される電力のシミュレーション結果を示す図である。
図6B〜
図6Dは、それぞれ、
図3に示されるスイッチング素子Q2a,Q2bのドレイン電圧、ドレイン電流、又はドレイン損失のシミュレーション結果を示す図である。
【0065】
図5A〜
図6Dに示される円グラフは、インバータ回路13,14に供給される直流入力電圧を固定とし、結合回路の出力端子(
図3における結合回路15の端子P3、又は
図4における結合回路100のインダクタL9とインダクタL10の接続点)の先に負荷が接続されているものとし、当該負荷のインピーダンス値を変化させたときの挙動を示している。当該負荷のインピーダンスは示されていないが、
図5A〜
図6Dに示される円を反射係数円としてみた場合に、外枠の円周上(すなわち、合成波が全反射するときの負荷インピーダンス)にある。円の中心は50Ωであり、位相の数値は当該負荷の反射係数の位相角を示す。例えば、各位相角における負荷インピーダンスは、0度では∞Ωとなり、90度ではj50Ωとなり、−180度では0Ωとなり、−90度では−j50Ωとなる。また、
図3に示される計4つのスイッチング素子のうち、スイッチング素子Q1aとスイッチング素子Q2a、及びスイッチング素子Q1bとスイッチング素子Q2bのシミュレーション結果は類似するため、スイッチング素子Q2a,Q2bの結果のみを示し、スイッチング素子Q1a,Q1bの結果を省略する。また、
図5B、
図5C、
図6B及び
図6Cに示されるドレイン電圧及びドレイン電流は、いずれもピーク時の値である。
【0066】
図5Aに示されるように、比較例においては、反射波Vref´が結合回路100に戻る場合、当該反射波Vref´は結合回路100に含まれる抵抗素子R4において電力が消費されず、インバータ回路13,14側に戻ってしまう。従って、
図5B〜
図5Dに示されるように、スイッチング素子Q2a,Q2bのドレイン電圧、ドレイン電流及びドレイン損失のいずれも、特に位相角が0度付近において定格容量を超えていることが分かる。すなわち、反射波の電力が消費されずにインバータ回路に戻ると、インバータ回路内部のスイッチング素子に定格容量を超える負荷がかかり、スイッチング素子が破損し得ることを表している。
【0067】
一方、本実施形態においては、
図6Aに示されるように、反射波Vrefが結合回路15に戻る場合、当該反射波Vrefは抵抗素子R3に供給され、抵抗素子R3において電力が消費されていることが分かる。具体的には、位相角が0度、90度、−180度、−90度の場合における抵抗素子R3の消費電力は、それぞれ、約20W、約600W、約20W、約600Wとなる。これにより、
図6B〜
図6Dに示されるように、スイッチング素子Q2a,Q2bのドレイン電圧、ドレイン電流及びドレイン損失のいずれも、定格容量を超えていないことが分かる。すなわち、インバータ回路13,14が生成する高周波の位相差を90度とし、結合回路15に抵抗素子R3を備えた90度ハイブリッド回路を用いることにより、たとえ全反射状態であったとしても、反射波Vrefがインバータ回路13,14内部のスイッチング素子に与える影響を抑制することができる。
【0068】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0069】
例えば、上記の実施形態においては、インバータ回路13,14としてφ級プッシュプルインバータ回路を例として説明したが、インバータ回路の構成は特に限られず、例えばφ級のシングルインバータ回路、E級インバータ、又はハーフブリッジ回路やフルブリッジ回路構成のD級インバータ回路等であってもよい。また、インバータ回路の数はこれに限られず、3つ以上であってもよい。