【実施例1】
【0017】
本発明が適用される密閉型スクロール圧縮機の構成を、
図1を用いて説明する。
図1は冷媒としてヘリウムガス(以下、作動ガス、作動冷媒、或いは冷媒ガスともいう)を用いたヘリウム用の密閉型スクロール圧縮機を示す縦断面図である。
【0018】
図1において、1は圧縮機構部、2は前記圧縮機構部1を駆動する電動機、3は前記圧縮機構部1や前記電動機2を内蔵する密閉容器である。前記密閉容器3は、上蓋3a、中空の円筒状に形成された胴部3b、及び底蓋3cで構成されている。
【0019】
前記圧縮機構部1は、鏡板部4aに渦巻き状の旋回ラップ4bを有する旋回スクロール4と、鏡板部5aに渦巻き状の固定ラップ5bを有する固定スクロール5を、互いにラップを内側にして噛み合わせ、圧縮室6や吸入室(圧縮室が形成される前の前記両ラップで形成される吸入空間)を形成している。前記旋回スクロール4の背面には、前記圧縮機構部1を構成するフレーム7により背圧室8が形成されている。この
図1に示す例では、前記旋回スクロール4の鏡板部4aには、前記圧縮室6と前記背圧室8を連通する連通孔9、排油通路27及び油排出孔28が設けられている。前記連通孔9は、前記背圧室8を吸入圧力と吐出圧力の中間の圧力に保持するものであり、これにより前記旋回スクロール4を前記固定スクロール5に押付けて軸方向の密封を行うものである。また、前記背圧室8と前記吸入室或いは前記圧縮室6を連通する前記排油通路27及び前記油排出孔28が別に設けられている。
【0020】
10は前記電動機により回転されるクランク軸で、このクランク軸10の偏心軸部10aに、前記旋回スクロール4の鏡板部4a背面に形成されている旋回ボス部4cが旋回軸受11を介して係合され、前記クランク軸10が回転すると前記旋回スクロール4が旋回運動するように構成されている。なお、前記クランク軸10は前記フレーム7に設けられた主軸受12及び補助軸受13によって回転支持されている。前記各軸受11〜13への潤滑は、前記密閉容器3底部の油溜り部15の油が、前記クランク軸10の中心に設けられた給油通路14を介して差圧により給油されることにより行われる。前記各軸受11〜13に供給された油の少なくとも一部は前記背圧室8に流入するように構成されている。
【0021】
また、前記密閉容器3の底蓋3cには、密閉容器3の外部に前記油溜り部15の油を取出すための油出口管16が設けられている。この油出口管16から取り出された油は、油冷却器19で冷却された後、油ストレーナ20及び油流量調整弁21を通り、前記密閉容器3の上蓋3aに設けられた油注入管17を介して、固定スクロール5の鏡板部5aに形成されている油注入孔18に送られ、ここから前記圧縮室6に注入される。このように冷却油注入回路が構成されている。
【0022】
前記密閉容器3の上蓋3aには、前記固定スクロール5の吸入口5cに連通する吸入管22が貫通して設けられており、冷凍サイクルの冷媒ガスは、前記吸入管22を通り、固定スクロール5の前記吸入口5cから前記旋回スクロール4と前記固定スクロール5により形成される吸入空間を通って前記圧縮室6に取り込まれる。この圧縮室6に取り込まれた冷媒ガスは、圧縮室6での圧縮行程を経て高温・高圧の冷媒ガスとなり、吐出口23から密閉容器3内の上部に形成された吐出室24に吐出される。このとき、前記圧縮室6には、前記背圧室8からの油や前記油注入孔18から注入された油が流入しているので、前記圧縮された冷媒ガスと共に、前記吐出口23から前記吐出室24に吐出される。
【0023】
前記吐出室24に吐出された冷媒ガスや油は、前記固定スクロール5及び前記フレーム7の外周部に形成されている吐出通路(図示せず)を介して、前記密閉容器3内の前記電動機2側の空間25に流入する。前記吐出通路は、前記密閉容器3の胴部3bに設けられた吐出管26の対角となる位置に形成されており、前記冷媒ガスにより電動機2を冷却した後、前記吐出管26から密閉容器3の外へ吐出され、冷凍サイクルに供給されるように構成されている。
【0024】
上述したヘリウム用密閉型スクロール圧縮機では、旋回軸受11、主軸受12及び補助軸受13等を潤滑した油と、前記油注入孔18から注入されて冷媒ガス冷却用に使用された油の一部が、前記背圧室8に排出される構成となっている。作動冷媒であるヘリウムガスは比熱比が高く、断熱圧縮時のガス温度上昇が著しいので、多量の冷却油を前記油注入孔18から注入する必要がある。このため、前記背圧室8への油の排出量も多くなり、過剰な油が前記背圧室8に溜まりやすく、旋回スクロールが旋回運動する際の攪拌抵抗(攪拌損失)が大きくなり、圧縮機の消費電力が増加する課題がある。
【0025】
また、前記背圧室8に溜まった油の排出通路となる前記油排出孔28を、前記背圧室8に近い旋回スクロール4の鏡板部4aに形成しているが、旋回スクロール4に油の排出通路を設けると、クランク軸10の回転と伴に、旋回スクロールに形成されている油の排出通路(油排出孔28)が旋回運動して移動する。このため、前記背圧室8と前記圧縮室6とが連通する区間が長くなり、軸受潤滑後の高温の油と前記油冷却器19で冷却された注入油とが圧縮室の同一空間内で混合するため、冷却油によるガス冷却効果が低下する課題もある。
【0026】
更に、油の排出通路(油排出孔28)の前記圧縮室6への連通区間が長くなることにより、油が排出される空間(圧縮室6)内の圧縮が進んで圧力が上昇するため、背圧室8と油が排出される空間(圧縮室6)の圧力が逆転する区間が発生し、油の排出に問題が生じるという課題もあることがわかった。
【0027】
次に、従来のヘリウム用の密閉型スクロール圧縮機と、上述した課題を解決する本実施例1におけるヘリウム用の密閉型スクロール圧縮機の具体的実施例を、
図2〜
図5を用いて説明する。
図2は従来のヘリウム用の密閉型スクロール圧縮機における油排出孔付近の構造を示す要部断面図、
図3は本発明の実施例1を示すヘリウム用の密閉型スクロール圧縮機を示す図で、油排出孔付近の構造を示す要部断面図、
図4は
図2に示す従来の密閉型スクロール圧縮機におけるクランク軸回転角と内線室(旋回ラップ内線側に形成される圧縮室または吸入室)内圧力との関係を説明する線図、
図5は
図3に示す本実施例1の密閉型スクロール圧縮機におけるクランク軸回転角と内線室内圧力との関係を説明する線図である。
【0028】
まず、
図2を用いて従来のヘリウム用密閉型スクロール圧縮機の構成を
図1も参照しつつ説明する。この
図2に示すように、固定スクロール5の鏡板部5aには圧縮室6に連通する油注入孔18が形成されている。また、旋回スクロール4の鏡板部4aには、中間圧力に保たれた背圧室8に過剰に溜まった油を圧縮室6に排出するために、背圧室8側に開口する径方向の排油通路27と、この排油通路27に連通すると共に前記圧縮室6に開口する油排出孔28が形成されている。
【0029】
クランク軸10(
図1参照)が回転すると、該クランク軸10に係合されている旋回スクロール4が旋回運動し、これに伴い渦巻き状のラップ4b,5bの中心に向かって前記圧縮室6が移動し、圧縮室6内の閉じられた空間が縮小していくことにより圧縮が進み、高温・高圧の冷媒ガスとなって吐出口23から吐出室24に吐出される。
【0030】
図4は、
図2に示す従来の密閉型スクロール圧縮機の内線室おけるクランク軸回転角と前記内線室内圧力との関係を説明する線図である。この
図4においては、前記内線室における冷媒ガスの吸入工程が完了し、旋回ラップ内線側の圧縮室6が形成されたタイミングでのクランク軸回転角を0°と定義する。冷却油の油注入孔18は、前記内線室側の閉じ込みが完了し、旋回ラップ内線側の圧縮室6が形成された直後に、該圧縮室6に開口して連通する位置に形成されている。また、前記油注入孔18は、前記クランク軸10の回転が一定量進むと、旋回ラップ内線側の前記圧縮室6への連通が閉じられるように構成されている。前記油注入孔18が旋回ラップ内線側の前記圧縮室6に開口して連通している間は、該圧縮室6の圧縮が進み圧力が上昇する。
【0031】
また、前記油排出孔28は、旋回スクロール4の鏡板部4aに形成されているため、旋回ラップ内線側の圧縮室6が形成される前の冷媒ガス吸入工程中の吸入室に連通する位置に開口するように形成されている。この油排出孔28も前記クランク軸10の回転が一定量進むと前記固定スクロール5の固定ラップ5bにより閉止されるが、前記油排出孔28は前記旋回スクロール4に形成されているため、旋回スクロール4の旋回運動と共に移動する。このため油排出孔28の連通区間は
図4に示すように長くなるので、前記吸入室だけでなく、旋回ラップ内線側の圧縮室6の形成後も該圧縮室6に連通することになる。従って、前記油排出孔28が開口する油排出空間は圧縮が進行するため、前記油排出空間(圧縮室6)内の圧力が、背圧室8の中間圧力以上になる区間が発生し、背圧室8の圧力変動も大きくなる。
また、前記油冷却器19で冷却された油が注入されている旋回ラップ内線側の圧縮室6に、軸受潤滑後の高温の排出油が流入して、前記注入油と前記排出油が同一空間内で混合するため、冷却された前記注入油によるガス冷却効果も低下する。
【0032】
次に、これらの課題を解決するようにした、本発明の具体的実施例を、
図3及び
図5を用いて説明する。
図3は、本発明の実施例1におけるヘリウム用の密閉型スクロール圧縮機の構成を示すもので、
図3に図示はしていないが、
図2に示すものと同様に、固定スクロール5の鏡板部5aには圧縮室6に連通する油注入孔18が形成されている。
【0033】
また、本実施例では、固定スクロール5の鏡板部5aに、中間圧力に保たれた背圧室8側に連通する軸方向の排油路29aと、この排油路29aに連通する径方向の排油路29bを有する排油通路29、及びこの排油通路29に連通すると共に吸入空間31に開口する油排出孔30が形成されている。なお、前記径方向の排油路29bは、固定スクロール5の外周側からドリル等で穴加工されるが、この形成された穴の外周側の開口部を塞ぐために閉止部材(栓)32が設けられている。
【0034】
前記排油通路29及び前記油排出孔30は、前記背圧室8に過剰に溜まった油を固定スクロール5に形成される前記吸入空間31にのみ排出し、旋回ラップ内線側及び外線側の両方の圧縮室6の何れにも排出されないように、前記油排出孔30の位置が形成されている。これにより、中間圧力に保たれた背圧室8に過剰に溜まった油を、前記排油通路29及び前記油排出孔30を介して前記吸入空間31にのみ排出することができる。
【0035】
図5は、
図3に示す本実施例1の密閉型スクロール圧縮機におけるクランク軸回転角と内線室内圧力との関係を説明する線図である。この
図5においても、
図4と同様に、冷媒ガスの吸入工程が完了し、旋回ラップ内線側の圧縮室6が形成されたタイミングでのクランク軸回転角を0°と定義する。
【0036】
冷却油の油注入孔18は、従来のものと同様に、前記内線室側の閉じ込みが完了し、旋回ラップ内線側の圧縮室6が形成された直後に、該圧縮室6に開口して連通する位置(この例では9°の位置)に形成され、前記クランク軸10の回転が一定量進むと閉止するように構成されている。この例では、クランク軸の回転角が233°の位置になると、前記油注入孔18は前記圧縮室6への連通が閉止されるように構成されている。また、前記油注入孔18が旋回ラップ内線側の圧縮室6に開口して連通している間は、該圧縮室6の圧縮が進み圧力が上昇する。
【0037】
本実施例では、前記油排出孔30が前記固定スクロール5に形成されているため、その開口位置は常に一定の位置で静止した状態となっている。このため前記油排出孔30の連通区間を、
図5に示すように、短く調整することが可能となり、また前記吸入空間31のみに連通し、圧縮室6には連通しない位置に形成することができる。
【0038】
即ち、前記油排出孔30は、前記背圧室8の油を前記吸入空間31にのみ排出し、旋回ラップ4aの内線側及び外線側に形成される何れの圧縮室6にも排出されない位置に形成されている。つまり、前記油排出孔30の開口位置は、旋回ラップ内線側及び外線側に形成される何れの圧縮室6にも開口せず、前記吸入空間31にのみ開口する位置に形成されている。
【0039】
また、前記油排出孔30は、旋回ラップ内線側に形成される最も外周側の前記内線室の閉じ込み完了時に開口し、クランク軸の回転角が一定量進み、最も外周側の前記内線室が閉じ込み開始するより手前で、前記油排出孔30は前記旋回ラップにより閉止されるように構成されている。即ち、開口後前記クランク軸10の回転が一定量進むと、前記旋回スクロール4の旋回ラップ4bにより閉止されるように構成されている。
【0040】
この
図5に示す例では、クランク軸回転角が−93°の位置(内線室の閉じ込み開始より93°手前)で、前記油排出孔30が旋回ラップ4aにより閉止されるように構成されている。なお、前記油排出孔30が開口されるタイミングは、例えばクランク軸回転角が−360°の位置(内線室の閉じ込み開始より360°手前、即ち1つ前に形成される内線室の閉じ込み完了時であって、具体的には後述する
図6に示す状態)とすることができる。
【0041】
ここで、
図6〜
図10を用いて、本実施例における油注入孔18の位置と油排出孔30の位置との関係、及び従来例における油排出孔28の位置との関係を説明する。
図6はクランク軸回転角が0°での固定スクロールと旋回スクロールの噛み合い状態を示す図、
図7はクランク軸回転角が9°での固定スクロールと旋回スクロールの噛み合い状態を示す図、
図8はクランク軸回転角が233°での固定スクロールと旋回スクロールの噛み合い状態を示す図、
図9はクランク軸回転角が267°での固定スクロールと旋回スクロールの噛み合い状態を示す図、
図10はクランク軸回転角が307°での固定スクロールと旋回スクロールの噛み合い状態を示す図である。これらの図は、固定スクロール5を旋回スクロール4側から見た図であり、旋回スクロール4については旋回ラップ4bのみ断面で示し、また、
図2に示す排油通路27と油排出孔28については想像線(一点鎖線)で図示している。
【0042】
図6に示すクランク軸回転角が0°の状態では、油注入孔18は旋回ラップ外線側の圧縮室6に開口し、本実施例の油排出孔30は旋回ラップ4bによる閉止から吸入空間31に開口開始される状態となっている。なお、従来の油排出孔28は、クランク軸回転角が0°の状態では、旋回ラップ内線側の圧縮室6に開口するように構成されていた。
【0043】
図7に示すクランク軸回転角が9°の状態では、油注入孔18は旋回ラップ外線側の圧縮室6に開口し、且つ旋回ラップ内線側の圧縮室6にも開口開始される状態となっている。本実施例の油排出孔30は吸入空間31に開口した状態となっており、従来の油排出孔28は旋回ラップ内線側の圧縮室6に開口した状態が継続している。
【0044】
従って、従来のものでは、クランク軸回転角が9°の状態から旋回ラップ内線側の圧縮室6において、油注入孔18からの冷却された注入油と背圧室8からの高温の排出油が同一の圧縮室内で混合されるため、ヘリウムガスの冷却効果が低下する。これに対し、本実施例では、背圧室8からの高温の排出油は吸入空間31にのみ排出され、圧縮室6には排出されないので、冷却された注入油によるヘリウムガスの冷却効果を向上できる。
【0045】
図8に示すクランク軸回転角が233°の状態では、油注入孔18は、旋回ラップ外線側の吸入室6Aにのみ開口し、旋回ラップ内線側の圧縮室6への連通は閉止された状態となる。本実施例の油排出孔30は前記吸入空間31にのみ開口した状態が継続している。なお、従来の油排出孔28は旋回ラップ内線側の圧縮室6への連通が閉止される直前の状態を示している。従って、従来のものでは、クランク軸回転角が9°〜233°の区間で、旋回ラップ内線側の圧縮室6において、油注入孔18からの冷却された注入油と背圧室8からの高温の排出油が同一の圧縮室内で混合されるので、冷却効果が低下する。
【0046】
図9に示すクランク軸回転角が267°の状態では、油注入孔18は、旋回ラップ外線側の吸入室6Aにのみ開口している。本実施例の油排出孔30は、旋回ラップ4bにより閉止され、前記吸入空間31への連通が閉止された状態を示している。
【0047】
なお、
図9に示すクランク軸回転角が267°の状態は、これから閉じ込まれて圧縮室が形成される旋回ラップ4b内線室(吸入室6A)から見ると、閉じ込み完了前93°(クランク軸回転角−93°)である。同様に、前述した
図6はクランク軸回転角−360°の位置にも相当する。
【0048】
従って、本実施例では、前記油排出孔30は、クランク軸回転角が−360°から−93°の位置で吸入空間31にのみ連通し、−93°から0°(内線室の閉じ込み完了時)では閉止されるように構成されている。なお、本実施例では前記油排出孔30の閉止区間を−93°〜0°としたが、その閉止を開始するタイミングを、旋回ラップ内線側に形成される内線室が吸入工程を完了し圧縮室が形成されるタイミングよりも手前であって、−80°から−100°、好ましくは−90°から−95°の範囲内にすれば、背圧室8からの油の排出を十分に行うことができ、且つ吸入ガスの加熱も抑制することができる。
なお、従来の油排出孔28は旋回ラップ内線側の圧縮室6への連通が閉止された状態を示すと共に、旋回内線側の吸入室6Aにこれから連通開始する直前の状態を示している。
【0049】
図10に示すクランク軸回転角が307°の状態は、油注入孔18は旋回ラップ外線側の吸入室6Aに開口し、本実施例の油排出孔30は旋回ラップ4bによって閉止されている状態を示す。なお、従来の油排出孔28は旋回ラップ内線側の吸入室6Aに開口している。
図10の状態から更に進み、クランク軸回転角が360°になると、上述した
図6に示す図(クランク軸回転角が0°)と同じ状態となり、以下同様に、クランク軸の回転と共に、
図6〜
図10の状態を繰り返す。
【0050】
以上説明したように、本実施例では、固定スクロールに、排油通路29及び油排出孔30を形成し、且つ前記油排出孔30を吸入空間31にのみ連通し、旋回ラップ内線側及び外線側の両方の圧縮室6には連通しない位置に形成しているので、背圧室に過剰な油が溜まって油の攪拌損失が増加するのを抑制し、且つ簡単な構成で作動ガスの冷却効果を向上できるヘリウム用の密閉型スクロール圧縮機を得ることができる。
【0051】
つまり、ヘリウムガスの冷却用に使用される注入油を注入する空間と、高温の排出油を排出する空間を分けることができるから、冷媒ガスの冷却性を向上でき、圧縮機内部の温度上昇を抑制して大幅な信頼性向上を図ることができる。また、背圧室に過剰の油が溜まらないようにして油の攪拌損失を低減できるため、省エネルギー性の向上も図ることができる。
【0052】
更に、固定スクロールに油排出孔30を形成したことにより、油を排出する空間への連通区間を短く調整することができ、前記油排出孔30を吸入空間31にのみ開口させることができるので、前記油排出孔30から油が排出される空間は常に吸入圧力となり、圧力変動が少ない。従って、油排出効率を向上でき、背圧室8の圧力変動も抑制できる。
【0053】
また、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記固定スクロールに形成した油排出孔30と背圧室8をパイプ等により連通させるようにしても良い。
更に、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。