特許第6969923号(P6969923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969923
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】基材コーティング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   C23C14/50 E
   C23C14/50 H
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-147094(P2017-147094)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-40051(P2018-40051A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2020年4月6日
(31)【優先権主張番号】16182561.7
(32)【優先日】2016年8月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507065913
【氏名又は名称】アイエッチアイ ハウザー テクノ コーティング ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】IHI Hauzer Techno Coating B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】ドン デルクス
(72)【発明者】
【氏名】デイブ ドエルワルト
(72)【発明者】
【氏名】ルート ヤーコプス
(72)【発明者】
【氏名】マレイン ゲルテン
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−153779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(12)をコーティングする装置(10)であって、
それを通して基材(12)を収容することができる開口(44)と、前記開口(44)を密閉するように構成されたドア(18)とを有する真空チャンバ(14)と、
前記真空チャンバ(14)内に配置された1つ又は複数のターゲット材(22)と、
前記基材(12)を冷却するように構成された冷却ユニット(20,34,36)及び/又は前記基材(12)を加熱するように構成された加熱ユニット(26)と、
前記1つ又は複数のターゲット材(22)と、前記冷却ユニット(20,34,36)及び/又は前記加熱ユニット(26)とに対して基材(12)を回転させるように構成された回転手段と、
前記真空チャンバ(14)の内部に連通し、前記冷却ユニット(20,34,36)及び/又は前記加熱ユニット(26)を収容するように構成されたリフティングチャンバ(40)とを有し、
前記真空チャンバ(14)は、前記冷却ユニット(20,34,36)及び/又は前記加熱ユニット(26)と、前記リフティングチャンバ(40)とが、それに沿って配置されるリフティング軸(X)を画定し、
前記装置(10)は、前記冷却ユニット(20,34,36)及び/又は前記加熱ユニット(26)を、前記真空チャンバ(14)と前記リフティングチャンバとの間で前記リフティング軸に沿って変位させるように構成された変位手段(42,66,68)をさらに有する
基材コーティング装置(10)。
【請求項2】
前記変位手段(42,66,68)は、前記冷却ユニット(20,34,36)及び/又は前記加熱ユニット(26)を、前記リフティング軸(X)の周りを回転させないように前記リフティング軸(X)に沿って変位させるように構成されている
請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記冷却ユニット(20,34,36)と、前記加熱ユニット(26)とを有し、
前記変位手段(42,66,68)は、前記冷却ユニット(20,34,36)及び前記加熱ユニット(26)の両方を変位させるように構成されている
請求項1又は2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記変位手段(42,66,68)は、前記冷却ユニット(20,34,36)および前記加熱ユニット(26)の一方を他方から独立して変位させるように構成されている
請求項3に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記冷却ユニット(20)は、前記加熱ユニット(26)を囲むように構成された中空体を画定する
請求項3又は4に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記冷却ユニット(20,36)は、冷媒が通過するように構成された少なくとも1つの冷却通路を有する
請求項1ないし5の何れかに記載の装置(10)。
【請求項7】
前記冷却ユニット(20,36)は、水冷ドラムを含む
請求項6に記載の装置(10)。
【請求項8】
前記真空チャンバ(14)の内壁に配置された1つ又は複数の補助加熱体(28)及び/又は前記真空チャンバ(14)の内壁に配置された1つ又は複数の補助冷却体(28)、特に、冷却パネルをさらに有する
請求項1ないし7の何れかに記載の装置(10)。
【請求項9】
前記基材(12)の温度を検出するように構成され、前記加熱ユニット(26)及び前記冷却ユニット(20,34,36)のうちの少なくとも1つの動作を制御するように構成された温度制御モジュール(32)に接続された温度センサ(30)をさらに有する
請求項1ないし8の何れかに記載の装置(10)。
【請求項10】
前記変位手段(42)は、前記真空チャンバ(14)の前記リフティング軸(X)に平行に配置された1つ又は複数のリニアアクチュエータを含む
請求項1ないし9の何れかに記載の装置(10)。
【請求項11】
前記変位手段は、前記真空チャンバ(14)の前記リフティング軸(X)に平行に配置され、前記冷却ユニット(20,34,36)又は前記加熱ユニット(26)に接続された1つ又は複数のレール(68)と、前記リフティングチャンバ(40)内に配置された1つ又は複数のガイド体(66)とを含み、前記ガイド体(66)は、前記レール(68)と協働するように構成され、モータ(67)によって駆動される
請求項1ないし10の何れかに記載の装置(10)。
【請求項12】
前記変位手段(42,66,68)は、前記リフティングチャンバ(40)及び/又は前記真空チャンバ(14)の内部に配置されている
請求項1ないし11の何れかに記載の装置(10)。
【請求項13】
前記加熱ユニット(26)及び/又は前記冷却ユニット(20,34,36)を前記変位手段(42)に接続するように構成された1つ又は複数の接続部材(62)をさらに有し、前記変位手段(42)は、前記真空チャンバ(14)及び前記リフティングチャンバ(14)の外側に配置されている
請求項1ないし11の何れかに記載の装置(10)。
【請求項14】
前記回転手段は、個々の基材(12)がロッド(50)上にそれぞれ支持され、個々の基材(12)が前記真空チャンバ(14)のリフティング軸(X)及びロッド(50)の両方の周りを回転可能な遊星歯車配列を含む
請求項1ないし13の何れかに記載の装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材コーティング装置、特に物理蒸着の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物理蒸着は、真空チャンバ内に配置された1つまたは複数の基材上に気化した原料物質の薄層を堆積させる方法である。既知のタイプの物理蒸着プロセスには、陰極アーク堆積法およびマグネトロンまたはスパッタ堆積法、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングまたはHIPMSまたはプラズマ支援化学蒸着法(PACVD)が含まれる。
【0003】
物理蒸着に使用される装置は、真空チャンバを含み、真空チャンバは、開口及びドアを有し、開口を通じて基材を収容することができ、ドアは、開口を封止するように構成されている。取り外し可能なテーブルまたは支持構造は、真空チャンバの開口を通過するように構成され、真空チャンバ内で基材を支持するように構成される。コーティング工程開始時に、真空ポンプ、例えば粗引きポンプ及び/又はターボ分子ポンプが真空チャンバを排気するために使用される。次いで、金属イオンエッチング、アーク蒸発またはスパッタリングなどの物理的プロセスを用いて、真空チャンバ内に配置された1つまたは複数のターゲット材から原料物質の蒸気を生成する。原料物質が蒸気の形態でターゲット材から放出されると、それを基材上に堆積させてコーティング薄膜を形成することができる。PACVDまたはArイオンエッチングのような他のタイプの物理的プロセスでは、原料物質としてガスのみが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーティングプロセスの間、基材は熱を吸収し、冷却を必要とする。同様に、基材は、コーティングプロセスの一部として加熱される必要があり得る。コーティングプロセスは真空チャンバ内で行われるので、信頼性が高くかつシンプルな加熱及び/又は冷却システムを設計することは困難である。例えば、冷媒を使用する冷却システムは、漏れが生じやすいかもしれない。さらに、コーティングプロセス中に基材へのおよび基材からの十分な熱伝達を可能にし、かつコーティングプロセスの前後において基材を容易に着脱することができる加熱及び/又は冷却システムを設計することは困難であることが判明している。したがって、広範囲のプロセス温度において確実に動作可能なコーティング装置が未だ必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材をコーティングする装置であって、開口及び前記開口を密閉するように構成されたドアを有し、前記開口を通じて基材を収容することができる真空チャンバと、前記真空チャンバ内に配置された1つ又は複数のターゲット材と、前記基材を冷却するように構成された冷却ユニット及び/又は前記基材を加熱するように構成された加熱ユニットと、前記1つ又は複数のターゲット材と、前記冷却ユニット及び/又は前記加熱ユニットとに対して基材を回転させるように構成された回転手段と、前記真空チャンバの内部に連通し、前記冷却ユニット及び前記加熱ユニットを収容するように構成されたリフティングチャンバとを有する。前記真空チャンバは、リフティング軸を画定し、前記冷却ユニット及び/又は前記加熱ユニットと、前記リフティングチャンバとは、前記リフティング軸に沿って配置され、当該装置は、前記冷却ユニット及び/又は前記加熱ユニットを、前記真空チャンバと前記リフティングチャンバとの間で前記リフティング軸に沿って変位させるように構成された変位手段をさらに有する。
【0006】
冷却ユニット及び/又は加熱ユニットが真空チャンバのリフティング軸に沿って変位可能に構成されていることにより、冷却ユニット及び/又は加熱ユニットを、コーティングプロセスの間、取り外し可能なテーブルの中心、そして複数の基材の間に配置することができ、テーブルを真空チャンバの開口を通じて容易に移動させて素早く基材を着脱することができるように、冷却ユニット及び/又は加熱ユニットをリフティングチャンバ内へと持ち上げることができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、変位手段は、冷却ユニット及び/又は加熱ユニットがリフティング軸の周りを回転しないように、冷却ユニット及び/又は加熱ユニットをリフティング軸に沿って変位させるように構成される。しばしば、冷却ユニットは、水が一連のチューブ及び/又は冷却通路を介して真空チャンバの内外を移動する冷却水システムを含む。水の代わりに、オイル又は液体窒素などの他のタイプの冷媒を使用することもできる。冷却ユニットがリフティング軸を中心に回転しないように構成されている場合、冷却通路の設計を単純化することができる。回転しない冷却ユニット及び加熱ユニットはまた、より簡単なリフティング機構に役立つ。
【0008】
さらなる実施形態では、コーティング装置は、リフティングチャンバを真空チャンバから気密に密閉するように構成されたシーリングアセンブリ、例えばシーリングバルブをさらに備える。この態様によれば、真空チャンバが依然として真空下に置かれている間に、冷却ユニット及び/又は加熱ユニットを、変位手段によりリフティングチャンバ内に持ち上げることができる。その後、真空チャンバの開口が開けられて、基材が取り外され、次のセットの基材が取付けられる間、リフティングチャンバ内の真空を維持するために、シーリングバルブを閉じることができる。これにより、真空チャンバ内を再び真空にするための真空ポンプの労力が軽減される。
【0009】
他の実施形態では、装置は冷却ユニット及び加熱ユニットの両方を有し、変位手段は冷却ユニット及び加熱ユニットの両方を変位させるように構成される。変位手段は、冷却ユニットと加熱ユニットの一方を他方から独立して変位させるように構成することも可能である。後者の場合、冷却ユニット及び加熱ユニットのどちらか使用されていない方を持ち上げることができ、加熱または冷却ユニットが気化した原料物質に不必要に曝露されるのを低減する。曝露が低減される結果として、加熱及び冷却ユニット上に堆積する原料物質がより少なくなり、積み重なった膜を除去するメンテナンスの必要性が低減される。
【0010】
さらなる態様において、冷却ユニットは、加熱ユニットを囲むように構成された中空体を画定し、これにより、コンパクトな設計がもたらされる。冷却ユニットは、冷媒が通過するように構成された少なくとも1つの冷却通路を含んでもよい。例えば、冷却ユニットは、水冷ドラムを含んでもよい。あるいは、冷却ユニットは、伸縮機構を有してもよく、当該伸縮機構では、冷却通路が、例えば、半分の長さの2本のチューブであって、伸縮機構の上部はリフティングチャンバ内に留まったまま、冷却通路を真空チャンバ内に下げることができるようになっていてもよい。加えて、前記少なくとも1つの冷却通路に加熱液体を通すことによって加熱ユニットが形成されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、装置は、真空チャンバの内壁に配置された1つ又は複数の補助加熱体を有する。それに加えて又はそれに替えて、真空チャンバの内壁に配置された1つ又は複数の補助冷却体、特に、冷却パネルを装置が有してもよい。この態様は、基材を効率的に冷却及び/又は加熱するために利用可能な壁スペースを利用し、真空チャンバのリフティング軸に沿って配置された冷却ユニット及び/又は加熱ユニットの負荷を軽減する。
【0012】
さらなる実施形態では、装置は、基材の温度を検出するように構成され、温度制御モジュールに接続された温度センサを有し、前記温度制御モジュールは、加熱及び冷却ユニットの自動制御を可能にするために、加熱ユニット及び冷却ユニットのうちの少なくとも1つの動作を制御するように構成されている。
【0013】
さらなる態様によれば、変位手段は、真空チャンバのリフティング軸に平行に配置された1つ又は複数のリニアアクチュエータ、例えば、空気圧シリンダを含む。例えば、そのようなリニアアクチュエータは、冷却ユニット及び加熱ユニットをリフティングチャンバ内に自動的に持ち上げるために、大きな空間を占有することなく、リフティングチャンバ内に配置することができる。あるいは、リニアアクチュエータをリフティングチャンバと真空チャンバとの両方の外側に配置し、接続部材を介してリニアアクチュエータを冷却ユニット及び/又は加熱ユニットに接続することが可能である。
【0014】
変位手段は、真空チャンバのリフティング軸と平行に配置された1つ又は複数のレールと、レールと協働する1つ又は複数のガイド体、例えば、ホイール、軸受け又は摺動体を有することも可能である。例えば、モータによって駆動される歯車が、リフティングチャンバ内の静止位置に据え付けられ、加熱ユニット及び冷却ユニットに固定された歯付きラックと協働するようにしてもよい。モータが歯車を回転させると、加熱ユニットおよび冷却ユニットは、真空チャンバとリフティングチャンバとの間で移動される。この構成により、機械的に簡単で容易に利用可能な部品を用いて、冷却ユニットおよび加熱ユニットをリフティングチャンバ内にスライドさせることが可能になる。あるいは、変位手段は、重力を利用して冷却ユニット及び/又は加熱ユニットを真空チャンバ内に下げるプーリーおよびスチールワイヤを有してもよい。この構成はまた、プーリーを回転させて、冷却ユニット及び/又は加熱ユニットを、スチールワイヤを介して、リフティングチャンバ内に持ち上げるためのモータまたは駆動装置を含む。
【0015】
さらなる実施形態によれば、回転手段は、個々の基材がそれぞれ真空チャンバのリフティング軸とロッドと両方の周りを回転することができるように、個々の基材がそれぞれロッド上に支持される遊星歯車配列を含む。このような遊星歯車配列は、真空チャンバの内壁に沿って配置された1つ又は複数のターゲット材と中央に配置された冷却および加熱ユニットとの両方に対して基材を均等に露出し、効率的な熱伝達および改善された堆積をもたらす。
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】複数の基材が加熱ユニットおよび冷却ユニットの周りに配置される真空チャンバの水平断面図である。
図2】別の構成の加熱、冷却ユニットを有する装置の、図1と同様の水平断面図である。
図3】さらに別の構成の加熱、冷却ユニットを有する装置の、図1および図2と同様の水平断面図である。
図4A図1の加熱ユニットおよび冷却ユニットを持ち上げるための空気圧変位手段を備えた実施形態を模式的に示す図である。
図4B図1の加熱ユニットおよび冷却ユニットを持ち上げるための空気圧変位手段を備えた実施形態を模式的に示す図である。
図4C図1の加熱ユニットおよび冷却ユニットを持ち上げるための空気圧変位手段を備えた実施形態を模式的に示す図である。
図5】変位手段がリフティングチャンバおよび真空チャンバの外側に配置されている、図4の変形例を示す図である。
図6A図1の加熱ユニットおよび冷却ユニットを持ち上げるための機械的変位手段を備えた実施形態を模式的に示す図である。
図6B図1の加熱ユニットおよび冷却ユニットを持ち上げるための機械的変位手段を備えた実施形態を模式的に示す図である。
図6C図1の加熱ユニットおよび冷却ユニットを持ち上げるための機械的変位手段を備えた実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、複数の基材12をコーティングするための装置10の水平断面である。図面では、基材12は、単純な円筒形状を有するものとして模式的に示されているが、基材12も複雑な外部形状を有してもよい。基材12は真空チャンバ14内に配置され、取り外し可能なテーブル16上に支持される(図4A参照)。真空チャンバ14は、真空チャンバ14の内壁24に配置された複数のターゲット材22を含む。図1には、それを通して真空チャンバ14の内部にアクセス可能なドア18が明確に示されている。ドア18は他の図には示されていないが、他の図の真空チャンバ14もこのようなドア18を含むことと理解される。
【0019】
装置10は、例えば水冷ドラムである冷却ドラム20からなる冷却ユニットをさらに備える。冷却ドラム20はテーブル16に配置され、基材12は冷却ドラム20の外面の周りに配置される。テーブル16は、ロッド50(図4A参照)を中心にして基材12の各々を冷却ドラム20に対して回転させるように構成された回転手段を含む。
【0020】
図1の実施形態では、冷却ドラム20は、装置10の加熱ユニットを形成する複数の加熱体26を囲む中空体を形成する。ここでは模式的に示されている加熱体26は、電気抵抗を有する管状発熱体、赤外線ヒーター、または特殊なオイルまたは他の媒体が加熱管の中を通される加熱体のいずれかとすることができる。
【0021】
図4C及び図6Cに示すように、冷却ドラム20を持ち上げて基材12を加熱体26に露出させることができる。加熱体26もテーブル16の中央に配置されているので、テーブル16の回転手段は、基材12を均一かつ効率的に加熱するために加熱体26に対して基材12を回転させることもできる。図1は、冷却ドラム20と加熱体26の両方を含む装置10を示しているが、冷却ドラム20または加熱体26の一方を有するが他方を有しない装置10(図示せず)とすることも可能である。
【0022】
テーブル16の中央に配置された冷却ドラム20および加熱体26に加えて、図1の実施形態は、真空チャンバ14の内壁24の隅に配置された複数の補助加熱または冷却パネル28も含む。
【0023】
さらに、装置10は、基材12の温度を検出するように構成され、冷却ドラム20、加熱体26及び/又は補助加熱または冷却パネル28の動作を制御するように構成された温度制御モジュール32に接続された温度センサ30を備える。図1では、真空チャンバ14の内壁24に配置された温度センサ30を示しているが、装置10内の温度センサ30の具体的な位置はこれと異なっていてもよい。例えば、温度センサ30は、テーブル16に配置されてもよい。あるいは、基材12もセンサ30の周りを回転し、センサ30が冷却ドラム20及び/又は冷却ドラム20と共に持ち上げられることができるように、温度センサ30は、冷却ドラム20及び/又は加熱体26に配置されてもよい。
【0024】
図2は、冷却ドラム20を除いては、図1の装置10と同じ構成要素を有する装置10の別の実施形態を示す。図1の装置10における冷却ドラム20の代わりに、図2には、4つの加熱体26の間に配置された十字形状の冷却パネル34が示されている。加熱パネル34は、加熱ユニットおよび冷却ユニットの全体的なコンパクト設計を可能にするために十字形状であるが、加熱体26の具体的な数及び/又はそのような冷却パネル34の断面形状は、これと異なってもよいことと理解される。
【0025】
図3は、図1の冷却ドラム20及び図2の冷却パネル34のさらなる変形例を示す。具体的には、図3の実施形態の冷却ユニットは、冷却ドラム36であり、その外面には、加熱体26を収容するための複数の凹部38が設けられている。あるいは、冷却ドラム36は、断面が円形であってもよく、すなわち、凹部38を有していなくてもよい。この場合、加熱体26は、単に冷却ドラム36の外面の周りに間隔をおいて配置されてもよい。
【0026】
図4A乃至図4Cは、図1の装置10の垂直断面図、特に真空チャンバ14の内部と連通し、冷却ドラム20および加熱体26を収容するように構成されたリフティングチャンバ40の垂直断面図を示す。具体的には、真空チャンバ14は、リフティング軸、この場合、中央に配置された中心軸Xを画定し、冷却ドラム20、加熱体26及びリフティングチャンバ40は、すべて、真空チャンバ14の中心軸Xに沿って同軸に配置されている。図4乃至図6は、真空チャンバ14およびリフティングチャンバ40が装置10の互いに接続された別個の部分として認識可能な設計を示す。しかしながら、リフティングチャンバ40が真空チャンバ14の一部として、すなわち真空チャンバ14内に形成されることも可能である。この変形例では、真空チャンバ14とリフティングチャンバ40との間に明確な境界または分離が存在する必要はない。
【0027】
装置10は、リニアアクチュエータ42の形態の変位手段をさらに備え、リニアアクチュエータ42は、例えば、空気圧リニアアクチュエータであって、それぞれ、シリンダ60内に配置されたロッド58を含む。リニアアクチュエータ42は、リフティングチャンバ40の内部に、中心軸Xと平行に配置され、冷却ドラム20および加熱体26を真空チャンバ14とリフティングチャンバ40との間で移動させるようにそれぞれ構成されている。
【0028】
図4Aは、冷却ドラム20及び加熱体26の両方が真空チャンバ14からリフティングチャンバ40内へと持ち上げられた、装填又は取り外し状態の装置10を示す。この状態において、テーブル16は、開口44から真空チャンバ14へと迅速かつ容易に移動することができ、開口44は、他の状態では、ドア18(図1参照)によって密閉される。
【0029】
図4Aは、例えば真空バルブを用いて、リフティングチャンバ40を真空チャンバ14から気密に密閉するように構成されたシーリングアセンブリ54を配置してもよい位置について、また模式的に示す。冷却ドラム20および加熱体26が持ち上げられた状態にあるとき、リフティングチャンバ40内部の真空を維持するために、加熱体26及び/又は冷却ドラム20が、リフティングチャンバ40の壁、リフティングチャンバ40の蓋部64、及びシーリングアセンブリ54によって囲まれるように、シーリングアセンブリ54が閉じられてもよい。
【0030】
冷却ドラム20および加熱体26がリフティングチャンバ40内に位置している状態において、真空チャンバ14内で基材12を支持するためのテーブル16を含む支持構造をより明確に見ることができる。具体的には、テーブル16は、真空チャンバ14の開口44を通ってテーブル16を移動させる車輪付きベース46を含む。上部ラック48が車輪付きベース46の上方に配置され、複数のロッド50が上部ラック48とベース46との間に支持されている。各基材12は、ロッド50の周りを回転することができるように個々のロッド50によって支持されている。模式的に示されたモータ52は、テーブル16に接続され、テーブル16を駆動して、基材12を、遊星配置で、ロッド50の周りを回転させるのと同時に中心軸Xの周りを回転させる。
【0031】
テーブル16および基材12が真空チャンバ14内に装填されると、図4Bに示されるように、ドア18を閉じることができ、真空チャンバ14をポンプ56により排気することができる。真空チャンバ14が真空下に置かれると、コーティング(塗布)プロセスを開始してもよい。コーティングプロセス中、冷却ドラム20(図4B)または加熱体26(図4C)のいずれかを真空チャンバ14内に降下させて、テーブル16の中央に配置してもよい。
【0032】
図4B及び図4Cに示すように、コーティングプロセスにおける気化した原料物質への暴露を低減するために、冷却ドラム20または加熱体26のうちのプロセス中に使用されていない何れかが、リフティングチャンバ40内に留まってもよい。これにより、従来のコーティング装置のように、冷却ドラム20および加熱体26がすぐに原料物質でコーティングされてしまうことが防止され、装置10のメンテナンスの頻度が低減される。加熱体26または冷却ドラム20がリフティングチャンバ40内に引き込まれているときに、シーリングアセンブリ54を閉じることによって、加熱体26または冷却ドラム20を意図しない原料物質からさらに遮蔽してもよい。
【0033】
図4B及び図4Cに示す実施形態では、リニアアクチュエータ42のシリンダ60はリフティングチャンバ40の内壁に固定されているが、冷却ドラム20及び加熱体26はリニアアクチュエータ42のピストンロッド58にそれぞれ接続されている。冷却ドラム20および加熱体26の変位手段として、リニアアクチュエータ42の代わりに、リニア電気モータ又は任意の他のリニアアクチュエータを使用することも可能である。
【0034】
図5は、図4に示す装置10と実質的に同じ装置10を示す。しかし、図5において、リニアアクチュエータ42のシリンダ60は、真空チャンバ14及びリフティングチャンバ40の両方の外側に配置されている。リニアアクチュエータ42のピストン58は、リフティングチャンバ40の蓋部64に設けられた密閉された開口を通って延在する接続部材62を介して、冷却ドラム20及び加熱体26(不図示)に接続されている。リニアアクチュエータ42をリフティングチャンバ40および真空チャンバ14の外側に配置することにより、リニアアクチュエータ42は真空にさらされることがない。これにより、非常に低い圧力下では油圧油が漏出する危険性がある油圧式リニアアクチュエータを、容易かつ確実に使用することが可能になる。
【0035】
図6A乃至図6Cは、変位手段を除いては、図4A乃至図4Cの装置10に実質的に一致する装置10を示す。図6A乃至図6Cの実施形態では、ギヤホイール66が、リフティングチャンバ40の内壁に固定され、冷却ドラム20及び加熱体26にそれぞれ取り付けられた歯付きラック68と協働する。ギヤホイール66は、モータ67(図6Aにのみ模式的に示されている)によって駆動され、モータ67がギヤホイールを回転させると、ラック68が下方または上方に移動して、冷却ドラム20及び加熱体26を真空チャンバ14とリフティングチャンバ40との間で移動させる。
【符号の説明】
【0036】
10 装置
12 基材
14 真空チャンバ
16 テーブル
18 ドア
20 冷却ドラム
22 ターゲット材
24 真空チャンバの内壁
26 加熱体
28 加熱又は冷却パネル
30 温度センサ
32 温度制御モジュール
34 冷却パネル
36 冷却ドラム
38 凹部
40 リフティングチャンバ
42 リニアアクチュエータ
44 開口
46 ベース
48 上部ラック
50 ロッド
52 モータ
54 シャッターアセンブリ
56 真空ポンプ
58 ピストン
60 シリンダ
62 接続部材
64 蓋部
66 ギアホイール
67 モータ
68 歯付きラック
X 中心軸
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C