特許第6969939号(P6969939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6969939クリーニングブレードおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969939
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】クリーニングブレードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20211111BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20211111BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G03G21/00 318
   C08F2/44 C
   C08F2/48
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-170863(P2017-170863)
(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-45774(P2019-45774A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】深町 良太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 博之
【審査官】 市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−345637(JP,A)
【文献】 特開2016−017979(JP,A)
【文献】 特開2015−158654(JP,A)
【文献】 特開2005−091835(JP,A)
【文献】 特開2012−212059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
C08F 2/44
C08F 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードであって、
前記ポリウレタン弾性体は、構成成分がジイソシアネート化合物(平均分子量Ma、重量比a)、ラクトン系ポリオール(重量比b)、トリメチロールプロパン(平均分子量Mc、重量比c)、及び1,4−ブタンジオール(重量比d)からなり、式(1)で定義されるハードセグメント量Hs(重量%)35〜40重量% 、架橋間分子量が6000〜15000であって、かつ先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を含むことを特徴とするクリーニングブレード。
Hs=100[a−1.5Ma(c/Mc)+d]/(a+b+c+d) (1)
【請求項2】
静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードの製造方法であって、
構成成分がジイソシアネート化合物(平均分子量Ma、重量比a)、ラクトン系ポリオール(重量比b)、トリメチロールプロパン(平均分子量Mc、重量比c)、及び1,4−ブタンジオール(重量比d)からなり、式(1)で定義されるハードセグメント量Hs(重量%)35〜40重量% 、架橋間分子量が6000〜15000であるポリウレタン基材を形成する工程Iと、
前記基材の先端稜線部を含む部分に、(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物を含浸させる工程IIと、
前記基材の少なくとも含浸部分を洗浄し、前記基材の含浸部分の表面に残留した前記硬化性組成物を除去する工程IIIと、
前記基材に含浸した前記硬化性組成物を硬化させ、先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を含むポリウレタン弾性体を形成する工程IVとを含むことを特徴とするクリーニングブレードの製造方法。
Hs=100[a−1.5Ma(c/Mc)+d]/(a+b+c+d) (1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ、レーザービームプリンターなどの静電転写プロセスを利用した画像形成装置において、感光体表面の残存トナーを除去するクリーニングブレードおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静電転写プロセスを利用した画像形成装置では、転写紙や中間転写体へトナー像を転写した後の表面に付着した不必要な残トナーを、クリーニング手段たるクリーニング装置によって除去している。かかるクリーニング手段に使用するクリーニング部材として、一般的には短冊形状のクリーニングブレードを用いたものがよく知られている。このクリーニングブレードは、ポリウレタン弾性体などで構成され、クリーニングブレードの基端を支持部材で支持し、先端稜線部を像担持体の周面に押し当て、像担持体上に残留するトナーをせき止めて掻き落とし除去する。
【0003】
近年、画像形成装置において画像の鮮明化のために微粒子トナーである重合トナーが使用され、重合トナーを使用した場合に、クリーニングブレードのわずかな摩耗によりクリーニング不良が発生するため、クリーニングブレードにおいては、従来よりもはるかに厳しいクリーニング性が要求されている。
【0004】
下記特許文献1では、ポリウレタン弾性体の一部に(メタ)アクリレート化合物を含浸・硬化させることにより弾性ブレードを形成するクリーニングブレードの製造方法において、(メタ)アクリレート化合物をポリウレタン弾性体に含浸させた後、ポリウレタン弾性体表面に残留する(メタ)アクリレート化合物を洗浄除去するための溶剤を最適化することにより、得られる弾性ブレードの硬度差や表面凹凸形状の発生を抑制する技術が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、ポリウレタン弾性体の一部に(メタ)アクリレート化合物を含浸・硬化させることにより形成された弾性ブレードを有するクリーニングブレードにおいて、シクロヘキサノンに浸漬させた際の平行膨潤率が200%以上のポリウレタン弾性体を使用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−158654号公報
【特許文献1】特開2016−148791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記いずれの特許文献でも、(メタ)アクリレート化合物を含浸させるポリウレタン弾性体のポリマー特性の最適化検討が十分に行えておらず、その結果、先端稜線部以外のポリウレタン弾性体の高硬度化と、先端稜線部でのポリウレタン弾性体の十分な高硬度化とをバランス良く行うことが困難であることが判明した。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、先端稜線部を含む部分を(メタ)アクリレート樹脂により均一に高硬度化しつつ、全体でも高硬度化されたポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち本発明は、静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードであって、前記ポリウレタン弾性体は、ハードセグメント量が31〜50重量%、架橋間分子量が4000〜16000であって、かつ先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を含むことを特徴とするクリーニングブレードに関する。
【0010】
本発明に係るクリーニングブレードは、ハードセグメント量が31〜50重量%、架橋間分子量が4000〜16000であるポリウレタン基材を使用し、この先端稜線部を含む部分に、(メタ)アクリレート化合物を含浸し、これを重合させて樹脂化することで、端稜線部を含む部分が(メタ)アクリル樹脂により改質されたポリウレタン弾性体を備える。その結果、先端稜線部を含む部分だけでなく、ポリウレタン弾性体全体が高硬度化されているため、クリーニング作業時のクリーニングブレードの捲れなどの変形を特に抑制することができる。このため、本発明に係るクリーニングブレードはクリーニング性能に特に優れる。
【0011】
また本発明は、静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードの製造方法であって、ハードセグメント量が31〜50重量%、架橋間分子量が4000〜16000であるポリウレタン基材を形成する工程Iと、前記基材の先端稜線部を含む部分に、(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物を含浸させる工程IIと、前記基材の少なくとも含浸部分を洗浄し、前記基材の含浸部分の表面に残留した前記硬化性組成物を除去する工程IIIと、前記基材に含浸した前記硬化性組成物を硬化させ、先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を含むポリウレタン弾性体を形成する工程IVとを含むことを特徴とするクリーニングブレードの製造方法に関する。かかる製造方法によれば、先端稜線部を含む部分だけでなく、全体が高硬度化されたポリウレタン弾性体を製造することができるため、最終的に、クリーニング性能が特に優れたクリーニングブレードを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るクリーニングブレードは、金属板からなる支持体と、ポリウレタン弾性体と、支持体およびポリウレタン弾性体を接着する接着剤層とを備える。
【0013】
ポリウレタン弾性体の材料となるポリウレタン基材は、ジイソシアネート化合物、2官能ポリオール、3官能アルコールからなる架橋剤、およびグリコールからなる鎖延長剤を重合することにより製造可能である。
【0014】
ジイソシアネート化合物としては、公知の化合物が使用可能であり、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)などの芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加MDIなどの脂肪族または脂環族ジイソシアネート化合物などが例示可能である。これらの中でも、クリーニングブレードのクリーニング特性、特に耐エッジ欠け性を考慮した場合、MDIを使用することが好ましい。
【0015】
2官能ポリオールとして、例えばポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなどが例示可能であるが、本発明においては特に2官能ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。2官能ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の低分子量グリコールの1種または2種以上とグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸あるいはその他のジカルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体、低分子量グリコールを開始剤としてプロピオラクトン、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどの環状エステル類を開環付加させた開環重合体などが挙げられる。
【0016】
上記例示の2官能ポリエステルポリオールの中でも、ε−カプロラクトンの開環重合体であるポリカプロラクトンポリオールの使用が特に好ましい。ポリカプロラクトンポリオールは、触媒の存在下に低分子量グリコールを開始剤としてε−カプロラクトンを開環付加させることにより製造されるが、特に触媒としてハロゲン化第1錫、より好ましくは塩化第1錫を触媒として使用したポリカプロラクトンポリオールは、分子量分布が狭く、優れた耐エッジ欠け性能を有するクリーニングブレードが得られるので好ましい。分子量分布の狭いポリカプロラクトンポリオールとしては、市販品としてプラクセル−Nシリーズ(プラクセル220Nなど)がある。2官能ポリエステルポリオールの数平均分子量は、1000〜4000であることが好ましく、2000〜4000であることがより好ましい。
【0017】
本発明では、ジイソシアネート化合物、2官能ポリオール、3官能アルコールからなる架橋剤、およびグリコールからなる鎖延長剤を1段階で反応させることにより、ポリウレタン基材を製造しても良いが、ジイソシアネート化合物と2官能ポリオールとを予め反応させるプレポリマー法により製造することが好ましい。かかるプレポリマー法については後述する。
【0018】
3官能アルコールは架橋剤として作用し、ポリウレタンの技術分野において公知の化合物が限定なく使用可能である。具体的にはグリセリンやトリメチロールプロパンなどのトリメチロールアルカンが例示される。これらの中でも、3個の水酸基が同等の反応性を有し、安定した架橋構造を有するポリウレタン弾性体が形成できることから、トリメチロールプロパンの使用が特に好ましい。
【0019】
鎖延長剤としては、ポリウレタンの技術分野における公知の化合物が限定なく使用可能であり、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどの低分子量グリコールが挙げられる。これらの中でも、1,4−ブタンジオールの使用が特に好ましい。
【0020】
本発明においては、クリーニングブレードを構成するポリウレタン弾性体として、ハードセグメント量が31〜50重量%、架橋間分子量が4000〜16000であるポリウレタン弾性体を使用する。ハードセグメント量Hs(重量%)は、ジイソシアネート化合物の平均分子量および重量比をそれぞれMaおよびa、2官能ポリオールの数平均分子量および重量比をそれぞれMbおよびb、3官能アルコールからなる架橋剤の平均分子量および重量比をそれぞれMcおよびc、ならびにグリコールの平均分子量および重量比をそれぞれMdおよびdとしたとき、下記式(1)により表すことができる。
Hs(重量%)=100[a−1.5Ma(c/Mc)+d]/(a+b+c+d) (1)
【0021】
本発明においては、ポリウレタン弾性体のハードセグメント量Hsを31〜50重量%に設定することが好ましく、31.5〜48重量%にすることが好ましい。
【0022】
ポリウレタン弾性体の架橋間分子量Mcは、同様にジイソシアネート化合物の平均分子量および重量比をそれぞれMaおよびa、2官能ポリオールの数平均分子量および重量比をそれぞれMbおよびb、3官能アルコールからなる架橋剤の平均分子量および重量比をそれぞれMcおよびc、およびグリコールの平均分子量および重量比をそれぞれMdおよびdとしたとき、下記式(2)により表すことができる。
Mc=(a+b+c+d)/(c/Mc) (2)
【0023】
本発明においては、ポリウレタン弾性体の架橋間分子量を4000〜16000に設定することが好ましく、4000〜15000にすることが好ましい。
【0024】
ポリウレタン弾性体の材料となるポリウレタン基材を製造する際、ポリウレタン重合触媒を使用してもよい。かかる重合触媒としては、ジブチル錫ジラウレートやオクチル酸錫などの有機錫系触媒、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルなどの第3級アミン系触媒、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカルボン酸金属塩触媒、イミダゾール系触媒などが例示される。これらの中でも、第3級アミン触媒の使用が好ましい。
【0025】
本発明に係るクリーニングブレードの製造方法は、ハードセグメント量が31〜50重量%、架橋間分子量が4000〜16000であるポリウレタン基材を形成する工程Iと、前記基材の先端稜線部を含む部分に、(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物を含浸させる工程IIと、前記基材の少なくとも含浸部分を洗浄し、前記基材の含浸部分の表面に残留した前記硬化性組成物を除去する工程IIIと、前記基材に含浸した前記硬化性組成物を硬化させ、先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を含むポリウレタン弾性体を形成する工程IVとを含むことを特徴とする。以下に、各工程について説明する。
【0026】
ポリウレタン基材の製造は、公知の方法で行うこと可能であり、例えば、2官能ポリオールとジイソシアネート化合物を反応させてイソシアネートプレポリマーまたはイソシアネート擬似プレポリマーを製造するプレポリマー製造工程、イソシアネートプレポリマーまたはイソシアネート擬似プレポリマーと架橋剤および鎖延長剤を含む成分と混合して反応性組成物とする混合工程、金型などを使用して反応性組成物を所定形状の成形体に成形する成形工程、成形体がシート状である場合には、該シートを所定のブレード形状に裁断する裁断工程を含む製造工程(工程I)により製造可能である。ポリウレタン基材(および先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を形成したポリウレタン弾性体)は、ブレード形状に成型されており、本発明では、像担持体などの被清掃部材と対向する面を下面といい、先端稜線部を含む先端の面を先端面という。
【0027】
工程IIでは、基材の先端稜線部を含む部分に、(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物を含浸させる。(メタ)アクリレート化合物としては、好適には官能基数が2のジ(メタ)アクリレートが使用可能であり、例えばトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの脂環族ジ(メタ)アクリレート化合物が使用可能である。必要に応じて、(メタ)アクリレート化合物に光ラジカル重合開始剤や溶剤を適宜混合することで、硬化性組成物を調製する。硬化性組成物を基材に含浸させる方法としては、例えば硬化性組成物を入れた液浴に、先端稜線部から基材を浸漬させるディッピング方法が使用可能である。なお、混合層を形成するために、硬化性組成物を入れた液浴に基材をどの程度浸漬させるかは、製品形状および要求特性によって適宜変更可能であるが、例えば基材の先端部稜線を含む先端面の全面と、下面のうち先端稜線部から3mm±1mmの部分を硬化性組成物中に浸漬させ、かかる浸漬部を混合層としてもよい。
【0028】
工程IIIでは、基材の少なくとも含浸部分を洗浄し、基材の表面に残留した硬化性組成物を除去する。基材の表面に残留した硬化性組成物の除去方法としては、例えばシクロヘキサンなどの有機溶剤を洗浄液として入れた液浴に、基材の少なくとも含浸部分を浸漬させるディッピング方法が使用可能である。浸漬後、必要に応じて風乾工程、あるいはスポンジなどによるふき取り工程を実施してもよい。
【0029】
工程IVでは、基材に含浸した硬化性組成物を硬化させ、先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を含むポリウレタン弾性体を形成する。硬化性組成物の硬化方法として、例えば紫外線を照射することにより、硬化性組成物中の(メタ)アクリレート化合物を光重合させる方法が挙げられる。工程IVの後、必要に応じてオーブンを用いた加熱養生・加熱乾燥を実施してもよい。
【0030】
上記方法により、先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を含むポリウレタン弾性体が製造可能である。得られたポリウレタン弾性体は、接着剤などを使用して金具などの支持体に接着され、クリーニングブレードユニットとして複写機などの組み立てに供される。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0032】
(1)マルテンス硬度
下記にて製造した厚み2mmのポリウレタン基材およびポリウレタン弾性体に対し、マルテンス硬度計(フィッシャー・インストルメンツ社製 微小硬さ試験機 FISCHERSCOPE HM2000)を使用し、マルテンス硬度を測定した。具体的には、マルテンス硬度計のビッカーズ四角錐圧子をシート表面から1.0mN/10sの負荷で垂直方向に押し当てることにより、マルテンス硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
(2)数平均分子量
数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
GPC装置:島津製作所製、LC−10A
カラム:Polymer Laboratories社製、(PLgel、5μm、500Å)、(PLgel、5μm、100Å)、及び(PLgel、5μm、50Å)の3つのカラムを連結して使用
流量:1.0ml/min
濃度:1.0g/l
注入量:40μl
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
【0034】
(3)硬度
ポリウレタン弾性体の硬度は、JIS−K 6253に準拠し、23℃にて測定した。
【0035】
実施例1〜3、比較例1
4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(p−MDI)(分子量250.25)と2官能ポリオールであるラクトン系ポリオールPCL220N(数平均分子量2000、ダイセル化学社製)とを、重量比で43.12:56.98の割合で反応させることにより、イソシアネート基含有擬似プレポリマーを製造した。かかるイソシアネート基含有擬似プレポリマーの全量を100重量部とし、表1に記載の混合比で2官能ポリオールであるラクトン系ポリオールPCL240CP(数平均分子量4000、ダイセル化学社製)、トリメチロールプロパン(分子量134.17)、1,4−ブタンジオール(分子量90.12)を表1に記載の割合で混合・反応させることにより、ポリウレタン基材(厚み2mm、長さ317.6mm、幅11.5mm)を製造した(工程I)。表1にポリウレタン基材(=最終的に製造されるポリウレタン弾性体)のハードセグメント量Hsおよび架橋間分子量Mcを示す。
【0036】
(メタ)アクリレート化合物としてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名「A−DCP」、新中村化学工業社製)を80重量%、光ラジカル重合開始剤としてイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を5重量%、溶剤としてシクロヘキサノンを15重量%含有する硬化性組成物中に、工程Iで得られたポリウレタン基材の先端稜線部を含む部分を浸漬し、ポリウレタン基材の先端稜線部を含む部分に硬化性組成物を含浸させた(工程II)。ポリウレタン基材の硬化性組成物中への浸漬時間(含浸時間)は、15min、30min、60minとした。
【0037】
つぎに、ポリウレタン基材の含浸部分を洗浄し、基材表面に残留した(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物を除去した(工程III)。さらに、ポリウレタン基材の先端稜線部を含む含浸部分に、アイグラフィックス社製1.5KW ミニグランデージECS−1511Uを使用して、波長365nmの紫外線を照射し、ポリウレタン基材中に含浸された(メタ)アクリレート化合物を硬化させることにより、先端稜線部を含む部分に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を含むポリウレタン弾性体を形成した(工程IV)。
【0038】
工程Iで得られたポリウレタン基材のマルテンス硬度(含浸前マルテンス硬度)、ポリウレタン基材中に硬化性組成物を15min、30min、60min含浸させて製造したポリウレタン弾性体のマルテンス硬度、および含浸前と比べたポリウレタン弾性体のマルテンス硬度の上昇率を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から、ハードセグメント量が31〜50重量%、架橋間分子量が4000〜16000であるポリウレタン基材に(メタ)アクリレート樹脂との混合層を形成したポリウレタン弾性体(実施例1〜3)は、先端稜線部を含む部分だけでなく、ポリウレタン弾性体全体が高硬度化されている。このため、クリーニング性能に優れることが分かる。