特許第6969950号(P6969950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969950
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】高圧容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/00 20060101AFI20211111BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20211111BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20211111BHJP
   F17C 1/04 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   F17C1/00 B
   F16J15/10 T
   F17C13/00 301Z
   !F17C1/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-180238(P2017-180238)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-56396(P2019-56396A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 雄基
(72)【発明者】
【氏名】澤井 統
(72)【発明者】
【氏名】山下 辰佳
(72)【発明者】
【氏名】加門 祐介
【審査官】 杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−225852(JP,A)
【文献】 米国特許第04618154(US,A)
【文献】 米国特許第06386548(US,B1)
【文献】 国際公開第2015/182408(WO,A1)
【文献】 特開2007−146946(JP,A)
【文献】 米国特許第04635945(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されると共に、軸方向の少なくとも一方側の端部が開口された胴体部と、
前記胴体部に挿入されることで前記開口を閉塞する口金と、
前記胴体部の径方向において、前記胴体部と前記口金との間を閉塞するシール部材と、
前記シール部材に対して前記胴体部の前記軸方向外側に隣接して設けられたバックアップリングと、を備え、
前記バックアップリングは、
前記シール部材により押圧されていない状態で、前記胴体部及び前記口金に当接する本体部と、
前記本体部の前記径方向外側において前記軸方向内側に向けて突出して設けられ、かつ前記シール部材により押圧された場合に前記本体部よりも前記径方向外側に変位する第1突出部と、
前記本体部の前記径方向内側において前記軸方向内側に向けて突出して設けられ、かつ前記シール部材により押圧された場合に前記本体部よりも前記径方向内側に変位する第2突出部と、
を備え、
前記シール部材は、
前記本体部に当接する平坦面と、
前記平坦面の前記径方向外側に連続して設けられ、かつ前記第1突出部と当接する第1傾斜面と、
前記平坦面の前記径方向内側に連続して設けられ、かつ前記第2突出部と当接する第2傾斜面と、
を備える高圧容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧容器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、高圧水素タンクが開示されている。この高圧水素タンクは、樽型に形成されたライナと、ライナに巻き付けられかつ繊維強化樹脂により構成された補強層とを含んで構成されている。この構成により、ライナの剛性が高められているため、内部に高圧の水素を収容可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−188794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された高圧水素タンクでは、シール性能を確保するため、ライナの両端部はタンクの口金を内側から嵌め込むように構成されている。一方、高圧水素タンクにおいて、ライナを押出し等の成形方法により筒状に形成し、口金で封止した方がコストを抑制することができるが、この場合、ライナと口金との間には水素が漏れないようにシール部材を設ける必要がある。ここで、高圧水素タンク内は水素からの内圧が作用するため、ライナを複数の補強層で補強しなければライナが拡幅する場合がある。そして、ライナが拡幅するとライナと口金との隙間が広がり、シール部材が脱落するおそれが生ずる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、高圧容器の内圧の上昇に伴い容器が拡幅した場合におけるシール部材の脱落を抑制する高圧容器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る高圧容器は、筒状に形成されると共に、軸方向の少なくとも一方側の端部が開口された胴体部と、前記胴体部に挿入されることで前記開口を閉塞する口金と、前記胴体部の径方向において、前記胴体部と前記口金との間を閉塞するシール部材と、前記シール部材に対して前記胴体部の前記軸方向外側に隣接して設けられたバックアップリングと、を備え、前記バックアップリングは、前記シール部材により押圧されていない状態で、前記胴体部及び前記口金に当接する本体部と、前記本体部の前記径方向外側において前記軸方向内側に向けて突出して設けられ、かつ前記シール部材により押圧された場合に前記本体部よりも前記径方向外側に変位する第1突出部と、前記本体部の前記径方向内側において前記軸方向内側に向けて突出して設けられ、かつ前記シール部材により押圧された場合に前記本体部よりも前記径方向内側に変位する第2突出部と、を備え、前記シール部材は、前記本体部に当接する平坦面と、前記平坦面の前記径方向外側に連続して設けられ、かつ前記第1突出部と当接する第1傾斜面と、前記平坦面の前記径方向内側に連続して設けられ、かつ前記第2突出部と当接する第2傾斜面と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の発明に係る高圧容器は、容器を構成するライナとして筒状に形成された胴体部が設けられている。この胴体部の軸方向の少なくとも一方側の開口された端部には、挿入されることでこの開口を閉塞する口金が設けられている。また、胴体部の径方向における胴体部と口金との間には、シール部材が設けられており、シール部材は、胴体部と口金との間を密閉している。したがって、胴体部の内部に収容された流体が胴体部と口金との間から漏れることはない。
【0008】
また、シール部材に対して胴体部の軸方向外側にはバックアップリングが設けられている。このバックアップリングのシール部材側、すなわち、胴体部の軸方向内側には、径方向外側及び径方向外側に第突出部及び第突出部が設けられている。ここで、高圧容器の内圧が上昇して胴体部が拡幅した場合、胴体部の径方向において胴体部と口金との隙間が広がるが、本発明に係る高圧容器は、シール部材がバックアップリングに当接することにより、第突出部及び第突出部は拡幅するように変位する。すなわち、胴体部と口金との隙間の広がりに合わせてバックアップリングも広がるため、シール部材がライナに相当する胴体部と口金との隙間から脱落することが抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高圧容器の内圧の上昇に伴い容器が拡幅した場合におけるシール部材の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る高圧容器の要部を軸方向に沿って切断した状態を車両側面から見た状態を示す拡大断面図である。
図2図1におけるA−A線に沿って切断した状態を示す拡大断面図である。
図3】本実施形態に係る高圧容器であって、シール部材及びバックアップリングの拡大断面図である。
図4】本実施形態に係る高圧容器であって、バックアップリングの作用を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図4を用いて、本発明に係る高圧容器10の一実施形態について説明する。なお、これらの図において示される矢印FRは車両前方側、矢印OUTは車幅方向外側、矢印UPは車両上方側をそれぞれ示す。
【0012】
(基本構成)
図2に示されるように、タンクモジュール12は、複数の高圧容器10を組み合わせることで構成されている。このタンクモジュール12は、一例として、燃料電池車両のフロアパネル(不図示)の車両下方側に配置されている。本実施形態の高圧容器10には、一例として流体である水素が収容されている。
【0013】
図1に示されるように、高圧容器10は、一例として車両前後方向を軸方向(長手方向)とする略円柱状に形成されている。この高圧容器10は、胴体部14と、第1繊維強化樹脂部材16と、補強材としての第2繊維強化樹脂部材18と、を含んで構成されている。胴体部14は、軸方向の両端部が開口された円筒状に形成されかつ一例としてアルミニウム合金により構成されている。なお、胴体部14は、フロアパネルの車両下方側の空いているスペース内に収容可能な径寸法とされている。
【0014】
第1繊維強化樹脂部材16は、シート状のCFRP(炭素繊維強化樹脂)を胴体部14の外周面20に巻き付けることで構成されている。この第1繊維強化樹脂部材16の内部には、図示しない炭素繊維が胴体部14の周方向に沿って配列されている。換言すると、第1繊維強化樹脂部材16の繊維方向は、胴体部14の周方向とされている。
【0015】
図2に示されるように、第1繊維強化樹脂部材16が巻き付けられた高圧容器10の胴体部14は、車両幅方向に隣り合って複数配設されている。これら複数の高圧容器10の胴体部14における軸方向一方側(車両後方側)の端部は、それぞれ車両前後方向で略同一の位置となるように配置されている。この複数の胴体部14の軸方向一方側の端部の内部には、口金22が挿入されている。この口金22は、胴体部14に対して軸方向に沿って相対的に変位可能とされている。なお、図示はしないが、複数の高圧容器10の胴体部14における軸方向他方側(車両前方側)の端部は、胴体部14における軸方向一方側の端部と同様に、それぞれ車両前後方向で略同一の位置となるように配置されている。そして、胴体部14の軸方向他方側の端部の内部には、口金22が軸方向に沿って相対移動可能に挿入されている。
【0016】
以下、車両後方側における胴体部14と口金22との状態について説明する。ここで、特段の説明がない限り、「軸方向」とは、胴体部14における軸方向とし、「径方向」とは、胴体部14における径方向として説明する。また、胴体部14の車両後方側において、胴体部14の軸方向外側は車両後方側、軸方向内側は車両前方側にそれぞれ対応する。
【0017】
図1及び図2に示されるように、口金22は、車両幅方向を長手方向とし、軸方向外側に曲面を有する略半円柱状に形成されている。この口金22は、胴体部14に挿入される胴体部挿入部24と、口金22の内部に形成された連通流路26とを有している。胴体部挿入部24は、複数の高圧容器10の胴体部14のそれぞれに対応した位置に配置されており、軸方向内側へ向かって突出された略円柱状に形成されている(図2参照)。また、胴体部挿入部24の先端部には、外縁部を切り欠くことで形成されたパッキン収容部30が設けられており、このパッキン収容部30の内部にはパッキン32が収められている。なお、パッキン32の構造については後述する。
【0018】
連通流路26は、口金22の内部に形成されている。この連通流路26は、胴体部挿入部24の内部に軸方向に沿ってかつ当該軸方向内側に向かって開口された複数の第1連通流路26Aと、複数の第1連通流路26Aを車両幅方向に連結する第2連通流路26B(図2参照)とを含んで構成されている。この連通流路26により、複数の高圧容器10の胴体部14の内部は、互いに連通されている。
【0019】
第2繊維強化樹脂部材18は、第1繊維強化樹脂部材16及び口金22の外側面に設けられている。具体的には、第2繊維強化樹脂部材18は、第1繊維強化樹脂部材16と同様にシート状のCFRP(炭素繊維強化樹脂)とされており、第1繊維強化樹脂部材16及び口金22の外側面に、この第2繊維強化樹脂部材18が軸方向に沿って一体的に巻き付けられている。第2繊維強化樹脂部材18の内部には、図示しない炭素繊維が軸方向に沿って配列されている。換言すると、第2繊維強化樹脂部材18の繊維方向は、胴体部14の軸方向とされている。なお、第2繊維強化樹脂部材18の繊維量は、第1繊維強化樹脂部材16の繊維量の半分とされている。
【0020】
口金22内の連通流路26には、バルブ48(図2参照)が設けられており、これにより連通流路26内を流れる流体の量をコントロール可能とされている。そして、連通流路26は、図示しない燃料電池スタックや供給パイプ等に接続されている。
【0021】
(パッキン)
図3は、高圧容器10に流体を充填する前、又は、高圧容器10の内圧が低い場合を示す。図3に示されるように、パッキン32は、シール部材50と、Oリング34と、バックアップリング60と、を含んで構成されている。シール部材50、Oリング34及びバックアップリング60はいずれも胴体部14の軸を中心とした環状に形成されている。
【0022】
シール部材50は、周方向に直交する断面が軸方向内側に開口した略C字状の樹脂製の部材である。このシール部材50は、シール本体部52と、第1当接壁部54と、第2当接壁部56と、を含んで構成されている。このシール部材50は、胴体部14と口金22との間を閉塞するものである。なお、シール部材50の形状は、略C字状に限らず、角を有する略コ字状でも、軸方向内側に向かうにつれて開口が広がる略U字状でもよい。
【0023】
シール本体部52は、周方向に直交する断面視において、口金22のパッキン収容部30における側壁46から胴体部14の内壁42にかけて設けられている。このシール本体部52の軸方向外側には、径方向中央に胴体部14の軸と直交する平坦面52Aが設けられている。また、平坦面52Aの径方向両端側には、径方向外側又は内側に向かうにつれて軸方向内側に傾斜する傾斜面52Bが、それぞれ設けられている。
【0024】
第1当接壁部54は、シール本体部52の径方向外側(胴体部14側)において軸方向内側に向かって延設されている。また、第2当接壁部56は、第1当接壁部54と対向するように第1当接壁部54に対して径方向内側に配置されると共に、シール本体部52の径方向内側において軸方向内側に向かって延設されている。以上、シール部材50は、周方向に直交する断面において、シール本体部52と、第1当接壁部54と、第2当接壁部56により軸方向内側に向けて開口する略C字状とされている。
【0025】
なお、第1当接壁部54の径方向外側の外側面40は、胴体部14の内壁42に当接されており、第2当接壁部56の径方向内側の内側面44は、口金22のパッキン収容部30における側壁46に当接されている。ここで、シール本体部52と、第1当接壁部54と、第2当接壁部56により形成された空間(軸方向内側に開いた開口の内部)は、Oリング34が収容される収容部58とされている。
【0026】
Oリング34は、周方向に直交する断面が円形状のゴム製のリングである。ここで、Oリング34の円形状の断面の外径は、収容部58の径方向の幅よりも大きいため、Oリング34は、シール部材50の収容部58に対して圧入された状態とされている。すなわち、高圧容器10に流体を充填する前、また、高圧容器10の内圧が上昇する前は、Oリング34は、第1当接壁部54を胴体部14の内壁42側へと付勢すると共に、第2当接壁部56を口金22の側壁46側へと付勢している。つまり、高圧容器10内に収容される流体の圧力に関わらず、シール部材50における第1当接壁部54の外側面40は、胴体部14の内壁42に当接された状態が維持されている。また、シール部材50における第2当接壁部56の内側面44は、口金22のパッキン収容部30における側壁46に当接された状態が維持されている。なお、Oリング34は、シール部材50との間で適度に摩擦がある素材であればよく、例えば、ゴムに変えて樹脂により形成されていてもよい。
【0027】
バックアップリング60は、シール部材50に対して軸方向外側に隣接して設けられた樹脂製の部材である。このバックアップリング60は、リング本体部62と、突出部としての第1突出部64と、他の突出部としての第2突出部66と、を含んで構成されている。
【0028】
リング本体部62は、周方向に直交する断面が略矩形状であって、口金22のパッキン収容部30における側壁46から胴体部14の内壁42にかけて設けられている。
【0029】
第1突出部64は、周方向に直交する断面が略三角形状であって、リング本体部62の径方向外側(胴体部14側)において軸方向内側に向かって延設されている。この第1突出部64は、リング本体部62の径方向外側(胴体部14側)に変位可能に形成されている。
【0030】
第2突出部66は、第1突出部64と対向するように第1突出部64に対して径方向内側に配置されると共に、周方向に直交する断面が略三角形状であって、リング本体部62の径方向内側において軸方向内側に向かって延設されている。この第2突出部66は、リング本体部62の径方向内側に変位可能に形成されている。
【0031】
以上のように形成されたバックアップリング60は、シール部材50に当接している。詳しくは、リング本体部62が平坦面52Aに当接し、第1突出部64が径方向外側の傾斜面52Bに当接し、第2突出部66が径方向内側の傾斜面52Bに当接している。
【0032】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0033】
本実施形態では、図1に示されるように、円筒状に形成された胴体部14の軸方向の少なくとも一方側の開口された端部において、この開口を閉塞すると共に軸方向に沿って変位可能とされた口金22が設けられている。また、径方向において、口金22と胴体部14との間には、シール部材50が設けられている。ここで、本実施形態では、シール部材50の収容部58にOリング34が圧入されている。そして、図3に示されるように、シール部材50では、Oリング34により第1当接壁部54は胴体部14の内壁42に押し付けられ、第2当接壁部56は口金22の側壁46に押し付けられている。これにより、第1当接壁部54の外側面40は胴体部14の内壁42に当接した状態が維持されると共に、第2当接壁部56の内側面44は口金22の側壁46に当接した状態が維持される。
【0034】
ここで、胴体部14の内部に収容された流体の圧力が上昇すると、図4に示されるように、Oリング34は、流体によりシール本体部52に対して押し付けられる。そして、Oリング34は、シール部材50の第1当接壁部54を胴体部14の内壁42にさらに押し付けると共に、第2当接壁部56を口金22の側壁46にさらに押し付ける。
【0035】
また、本実施形態のシール部材50は、周方向に直交する断面において、シール本体部52と、第1当接壁部54と、第2当接壁部56により軸方向内側に向けて開口された略C字状とされている。ここで、胴体部14の内部に収容された流体の圧力が上昇すると、流体はシール部材50の第1当接壁部54を胴体部14の内壁42に押し付けると共に、第2当接壁部56を口金22の側壁46に押し付ける。
【0036】
以上、本実施形態では、胴体部14の内部に収容された流体の圧力が上昇すると、Oリング34及び流体自体の作用により、第1当接壁部54は内壁42に押し付けられ、第2当接壁部56は側壁46に押し付けられる。これにより、胴体部14と口金22との間から流体が漏れることが抑制される。
【0037】
ところで、本実施形態の高圧容器10では、胴体部14の内部に収容された流体の圧力が上昇すると、胴体部14が径方向に膨らむ、すなわち、拡径(拡幅)する場合がある。図4に示されるように、胴体部14が拡径した場合、胴体部14と口金22との隙間が広がる。上述のとおり、Oリング34及び流体自体の作用により、第1当接壁部54は内壁42に押し付けられ、第2当接壁部56は側壁46に押し付けられる。すなわち、第1当接壁部54及び第2当接壁部56は、胴体部14の拡径に追従して胴体部14と口金22との隙間を塞ぐため流体が漏れることは抑制される。
【0038】
一方で、胴体部14が拡径し、胴体部14と口金22との隙間が広がる場合、次の問題が生ずる。すなわち、パッキン32にバックアップリング60を含まない場合、シール部材50及びOリング34が、流体の圧力により軸方向外側に向けて強く押されると、胴体部14と口金22との隙間から通り抜けてパッキン収容部30から脱落するおそれが生ずる。
【0039】
これに対して、本実施形態では、シール部材50に対して軸方向外側に隣接してバックアップリング60が設けられている。上述のように、本実施形態では、バックアップリング60のリング本体部62がシール部材50の平坦面52Aに当接し、第1突出部64が径方向外側の傾斜面52Bに当接し、第2突出部66が径方向内側の傾斜面52Bに当接している。また、第1突出部64は、リング本体部62の径方向外側(胴体部14側)に変位可能に、第2突出部66は、リング本体部62の径方向内側に変位可能に形成されている。以上のように構成されたバックアップリング60は次の作用効果を奏する。
【0040】
図4に示されるように、胴体部14の内部に収容された流体の圧力が上昇すると、シール部材50は、流体により直接又はOリング34を介して軸方向外側に押し付けられる。そして、シール部材50は、バックアップリング60を押し付ける。これにより、バックアップリング60では、リング本体部62が圧縮変形すると共に、第1突出部64は、リング本体部62の径方向外側(胴体部14側)に変位し、第2突出部66は、リング本体部62の径方向内側に変位する。すなわち、本実施形態によれば、胴体部14と口金22との隙間の広がりに合わせてバックアップリング60が径方向に広がる。そのため、胴体部14と口金22との隙間が塞がれるため、シール部材50及びOリング34が胴体部14と口金22との隙間から通り抜けてパッキン収容部30から脱落することが抑制される。
【0041】
また、シール部材50は、胴体部14内部の圧力の変動に関わらずバックアップリング60と当接している。そのため、シール部材50は、略C字状の状態が保持される。つまり、シール部材50の形状が安定することでシール性能は確保される。
【0042】
さらに、本実施形態では、胴体部14が拡径することを許容できるため、胴体部14の径方向の補強を少なくすることができる。すなわち、胴体部14の外周面20に巻き付けられる第1繊維強化樹脂部材16を構成するCFRP(炭素繊維強化樹脂)の量を軽減することができる。これにより、胴体部14の径方向への補強に要する工数が削減でき、高圧容器10の製作時の作業工数を削減することができる。
【0043】
以上、本実施形態によれば、胴体部14内部の圧力の変動に関わらず、胴体部14と口金22との間の密閉状態を安定して維持することができる。これにより、高圧容器10内部の圧力の変動に関わらず胴体部14と口金22との間から流体が漏れることを抑制できる。
【0044】
なお、本実施形態の口金22は、胴体部14に対して軸方向に沿って相対的に変位可能に形成されている。そのため、流体の圧力の上昇に伴い胴体部14が拡径せず、又は拡径と共に口金22が軸方向外側へ変位する場合であっても胴体部14と口金22との隙間から流体が漏れることが抑制される。これにより、本実施形態の高圧容器10では、より高圧の流体を収容することができる。
【0045】
さらに、胴体部14は隣り合って複数配設されている。また、口金22は、複数の胴体部14の開口を一体に閉塞すると共に、口金22の内部には複数の胴体部14の内部をそれぞれ連通する連通流路26が形成されている。つまり、本実施形態によれば、胴体部14の内部の流体が複数の胴体部14の内部へと移動可能となることで、胴体部14の内部の流体の圧力が均一化される。これにより、複数の口金22に作用する流体の圧力の偏りを抑制することができる。
【0046】
(その他の構成及び作用・効果)
なお、本実施形態のバックアップリング60では、リング本体部62の径方向外側(胴体部14側)に突出部としての第1突出部64が設けられ、リング本体部62の径方向内側に他の突出部としての第2突出部66が設けられているが、この限りではない。すなわち、第1突出部64により、胴体部14と口金22との隙間を閉塞させることができれば、必ずしも、第2突出部66を設ける必要はない。つまり、第2突出部66を設けずに第1突出部64のみ設けたバックアップリングでも本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、胴体部14の軸方向の両端部が開口されており、この胴体部14における軸方向の一方側(車両後方側)の端部及び他方側(車両前方側)の端部の内部にそれぞれ口金22が挿入された構成とされているが、これに限らない。例えば、胴体部14の軸方向のどちらか一方の端部のみが開口されており、当該開口を有する端部に口金22が挿入された構成としてもよい。
【0048】
また、本実施形態の高圧容器10は、円筒状の胴体部14により略円柱状を呈しているがこの限りではなく、楕円形の筒状、多角形の筒状等の胴体部により高圧容器10を形成してもよい。
【0049】
また、シール部材50の収容部58にOリング34を収容させずに、パッキン32をシール部材50とバックアップリング60のみで構成してもよい。さらに、Oリング34を設けない代わりにシール部材50の内部に板状のスプリングを設けた構成としてもよい。
【0050】
さらに、第2繊維強化樹脂部材18は、CFRPで構成されているが、これに限らず、炭素繊維以外の繊維で強化された樹脂部材で構成されていてもよいし、樹脂以外の材料で構成されてもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10 高圧容器
14 胴体部
22 口金
50 シール部材
60 バックアップリング
64 第1突出部(突出部)
図1
図2
図3
図4