(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2モータ・ジェネレータから前記車軸へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比は、前記エンジンから前記車軸へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比よりもローギヤに設定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハイブリッド車両のパワーユニット。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンとモータ・ジェネレータ(電動モータ)とを併用することで車両の燃料消費率(燃費)を効果的に向上させることができるハイブリッド自動車(HEV)が広く実用化されている。ところで、このようなハイブリッド自動車としては、従来から、例えば、モータ・ジェネレータの数、エンジンとモータ・ジェネレータとの組合せ方や切替え方などにより、シリーズHEVやパラレルHEV、ストロングHEVやマイルドHEVなど様々な形式のものが提案・開発されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、エンジンとモータ及びジェネレータとを備え、エンジン(ジェネレータ)で発電した電力でモータを駆動して走行するシリーズHEV走行機能、エンジンとモータと双方を用いて車両を駆動するパラレルHEV走行機能、エンジンを停止してモータのみで走行するEV走行機能を有するハイブリッド車両が開示されている。
【0004】
より詳細には、特許文献1に記載のハイブリッド車両は、エンジン及びモータ(電動機)の動力を個別に駆動輪側の出力軸に伝達するとともに、エンジンの動力をジェネレータ(発電機)にも伝達するトランスアクスルを備えている。このトランスアクスルには、エンジンから駆動輪への動力伝達に係る第一経路と、モータから駆動輪への動力伝達に係る第二経路と、エンジンからジェネレータへの動力伝達に係る第三経路とが設けられている。駆動輪には、トランスアクスルを介してエンジン及びモータが並列に接続される。また、エンジンには、トランスアクスルを介してジェネレータ及び駆動輪が並列に接続される。
【0005】
上述した第一経路の中途には、その動力伝達を断接する油圧クラッチが介装されている。油圧クラッチは、車両の走行速度が所定車速以上であるとき(高速走行時)に接続される。なお、エンジンはクラッチの係合時に駆動され、その駆動力が第一経路を介して駆動輪に伝達される(パラレルHEV走行)。一方、車両の走行速度が所定車速未満のとき(中・低速走行時)にはクラッチが切断され、エンジンが切離される。
【0006】
モータは、エンジンの駆動力をアシストする機能(パラレルHEV走行機能)と電力走行機能(EV走行機能)とを兼ね備えている。車両の発進時やクラッチが切断されている低速走行時には、モータの駆動力のみで車両が走行する(EV走行)。また、車両の走行速度が所定車速以上(高速走行時)になると、走行状態に応じてモータの駆動力がエンジンの駆動力に加算される(パラレルHEV走行)。なお、上述したように、第三経路は、エンジンのクランクシャフトとジェネレータの回転軸との間を繋ぐ動力伝達経路であり、エンジン始動時の動力及びエンジンによる発電時(シリーズHEV走行時)の動力伝達を担う。
【0007】
このように、特許文献1に記載のハイブリッド車両は、エンジンの機関出力を利用してジェネレータに発電させつつモータを駆動力源として走行するシリーズHEV走行機能、エンジンおよびモータの両者を駆動力源として走行するパラレルHEV走行機能、及び、エンジンを停止させた状態でモータを駆動力源として走行するEV走行機能を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1に記載のハイブリッド車両では、高速走行時にクラッチが係合されるとともにエンジンが稼働され、エンジンの駆動力とモータの駆動力とによってパラレルHEV走行を行う。しかしながら、このハイブリッド車両では、モータが車軸に直結されているため、モータを車両の駆動に利用する必要がないとき(エンジンのみで駆動するとき)に、例えば、モータのゼロトルク制御に伴う電気ロスや連れ回りによるフリクションロスが発生する。一方、このようなロス(損失)の発生を抑制するため、モータを駆動に利用する必要がないときにモータを切離すクラッチを別途設けるとすると、システムが複雑になって重量が増大し、コストも増大する。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、エンジンと2個のモータ・ジェネレータとを備え、シリーズHEV走行機能、パラレルHEV走行機能、及びEV走行機能を有するハイブリッド車両のパワーユニットにおいて、よりシンプルかつ低コストに、モータ・ジェネレータを車両の駆動に利用しないとき(エンジンのみで駆動するとき)に、当該モータ・ジェネレータに起因するロス(損失)を低減することが可能なハイブリッド車両のパワーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットは、エンジンと、第1モータ・ジェネレータと、第2モータ・ジェネレータとを備えるハイブリッド車両のパワーユニットにおいて、エンジンの出力軸、及び第1モータ・ジェネレータの回転軸とトルク伝達可能に接続された第1スプラインと、第1スプラインと同軸上に並べて配設され、車軸とトルク伝達可能に接続された第2スプラインと、第2モータ・ジェネレータの回転軸とトルク伝達可能に接続された第3スプラインと、第3スプラインと同軸上に並べて配設され、車軸とトルク伝達可能に接続された第4スプラインと、第1スプライン、第2スプラインと嵌合可能に形成されたスプラインを有し、位置に応じて、第1スプライン、第2スプラインの接続状態を切替える第1スリーブと、第3スプライン、第4スプラインと嵌合可能に形成されたスプラインを有し、位置に応じて、第3スプライン、第4スプラインの接続状態を切替える第2スリーブと、第1スリーブ及び第2スリーブを摺動させるアクチュエータと、アクチュエータの駆動を制御する制御手段とを備え、制御手段が、車両の走行状態に基づいて、第1スプラインと第2スプラインとを切離し、第3スプラインと第4スプラインとを接続する第1モードと、第1スプラインと第2スプラインとを接続し、第3スプラインと第4スプラインとを切離す第3モードとを切替えるようにアクチュエータを制御することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットによれば、車両の走行状態に基づいて、第1スプラインと第2スプラインとが切離され、第3スプラインと第4スプラインとが接続される第1モードと、第1スプラインと第2スプラインとが接続され、第3スプラインと第4スプラインとが切離される第3モードとを切替えるようにアクチュエータが制御される。そのため、第2モータ・ジェネレータによる駆動力が不要な場合に、第3モードに切替えて、第2モータ・ジェネレータを切離すことにより、第2モータ・ジェネレータに起因するロス(例えば、第2モータ・ジェネレータのゼロトルク制御に伴う電気ロスや連れ回りによるフリクションロス)を低減することができる。また、この場合、第3スプライン、第4スプライン、及び第2スリーブを有して構成されるドグクラッチを解放することによって第2モータ・ジェネレータを切離すことができる。その結果、よりシンプルかつ低コストに、第2モータ・ジェネレータを車両の駆動に利用しないときに、第2モータ・ジェネレータに起因するロス(損失)を低減することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットでは、上記制御手段が、車両の走行状態に基づいて、第1モードと、第3モードと、さらに、第1スプラインと第2スプラインとを接続し、第3スプラインと第4スプラインとを接続する第2モードとを切替えるようにアクチュエータを制御し、かつ、第1モードと第3モードとの間でモードを切替える際に、第2モードを経由するようにアクチュエータを制御することが好ましい。
【0014】
この場合、車両の走行状態に基づいて、上記第1モードと、第3モードと、さらに、第1スプラインと第2スプラインとを接続し、第3スプラインと第4スプラインとを接続する第2モードとを切替えるようにアクチュエータが制御され、かつ、第1モードと第3モードとの間でモードが切替えられる際に、第2モードを経由するようにアクチュエータが制御される。そのため、モードが切替えられる際に、第1スリーブ(エンジン、第1モータ・ジェネレータ)及び第2スリーブ(第2モータ・ジェネレータ)のうち、少なくともいずれか一方が必ず車軸と接続される。その結果、モードが切替えられる際に、イナーシャの低下(トルク抜け)による車両の空走感を防止することができる。また、第2モードでは、第1スリーブ(エンジン、第1モータ・ジェネレータ)及び第2スリーブ(第2モータ・ジェネレータ)双方が車軸に接続されるため、エンジンと第1モータ・ジェネレータと第2モータ・ジェネレータをすべて用いて車両を駆動することができる。よって、力強い走行を行うことが可能となる。
【0015】
本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットでは、上記制御手段が、第1モードから第2モード、第3モードに切替える際に、第1モータ・ジェネレータの回転数を、第1スリーブと第2スプラインとを嵌合可能な回転数に調節し、その後、アクチュエータを駆動して、第1スプラインと第2スプラインとが接続されるように第1スリーブを動かし、第3モードから第2モード、第1モードに切替える際に、第2モータ・ジェネレータの回転数を、第2スリーブと第3スプラインとを嵌合可能な回転数に調節し、その後、アクチュエータを駆動して、第4スプラインと第3スプラインとが接続されるように第2スリーブを動かすことが好ましい。
【0016】
この場合、第1モードから第2モード、第3モードに切替えられる際に、第1モータ・ジェネレータの回転数が、第1スリーブと第2スプラインとを嵌合可能な回転数に調節され、その後、アクチュエータが駆動されて、第1スプラインと第2スプラインとが接続されるように第1スリーブが動かされる。すなわち、第1スプライン(第1モータ・ジェネレータ)と第2スプライン(車軸)との回転数合わせが行われた後(すなわち回転偏差が低減された後)、第1スプラインと第2スプラインとが接続されるように第1スリーブが動かされる。同様に、第3モードから第2モード、第1モードに切替えられる際に、第2モータ・ジェネレータの回転数が、第2スリーブと第3スプラインとを嵌合可能な回転数に調節され、その後、アクチュエータが駆動されて、第4スプラインと第3スプラインとが接続されるように第2スリーブが動かされる。すなわち、第3スプライン(第2モータ・ジェネレータ)と第4スプライン(車軸)との回転数合わせが行われた後(すなわち回転偏差が低減された後)、第3スプラインと第4スプラインとが接続されるように第2スリーブが動かされる。よって、ショックを抑制しつつよりスムーズにモードを切替えることが可能となる。
【0017】
本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットでは、上記制御手段が、第1モードから第2モード、第3モードに切替える際に、第2モータ・ジェネレータの出力トルクがゼロとなるようにゼロトルク制御を行い、第3モードから第2モード、第1モードに切替える際に、第1モータ・ジェネレータの出力トルクがゼロとなるようにゼロトルク制御を行うことが好ましい。
【0018】
この場合、第1モードから第2モード、第3モードに切替えられる際に、第2モータ・ジェネレータの出力トルクがゼロとなるようにゼロトルク制御が行われ、第3モードから第2モード、第1モードに切替える際に、第1モータ・ジェネレータの出力トルクがゼロとなるようにゼロトルク制御が行われる。その結果、モードが切替えられる際に、スリーブが抜かれる側のスプラインに付与される駆動トルクが低減されるため、モードの切替えをよりスムーズに行うことが可能となる。
【0019】
本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットでは、上記制御手段が、第1モードから第2モード、第3モードに切替える際に、車軸の回転数変動が所定回転数以上であるときには、車軸の回転数変動を抑制するように第2モータ・ジェネレータを制御し、第3モードから第2モード、第1モードに切替える際に、車軸の回転数変動が所定回転数以上であるときには、車軸の回転数変動を抑制するように第1モータ・ジェネレータを制御することが好ましい。
【0020】
この場合、第1モードから第2モード、第3モードに切替えられる際に、車軸の回転数変動が所定回転数以上であるときには、車軸の回転数変動を抑制するように第2モータ・ジェネレータが制御され、第3モードから第2モード、第1モードに切替えられる際に、車軸の回転数変動が所定回転数以上であるときには、車軸の回転数変動を抑制するように第1モータ・ジェネレータが制御される。そのため、モードが切替えられる際に、ドグクラッチを構成する各要素が異なった回転数で接触・嵌合されることを防止することが可能となる。
【0021】
本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットでは、第1スリーブ及び第2スリーブが、単一のシフトフォークで把持されており、アクチュエータが、シフトフォークを駆動することにより、第1スリーブ及び第2スリーブを一体的に摺動することが好ましい。
【0022】
この場合、第1スリーブ及び第2スリーブが、単一のシフトフォークで把持されており、アクチュエータによってシフトフォークが駆動されることにより、第1スリーブ及び第2スリーブが一体的に(同時に)摺動される。そのため、第1スリーブ及び第2スリーブの駆動機構をよりシンプルな構成にすることができる。よって、システムの軽量化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0023】
本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットでは、第1スプライン乃至第4スプライン、及び、第1スリーブ、第2スリーブが、同軸上に配設されており、第1スリーブが、第1スプライン、第2スプラインの外周上を、軸方向に摺動自在に構成されており、第2スリーブが、第3スプライン、第4スプラインの外周上を、軸方向に摺動自在に構成されていることが好ましい。
【0024】
この場合、第1スプライン、第2スプライン、及び第1スリーブが同軸上に配設されており、第1スリーブが、第1スプライン、第2スプラインの外周上を、軸方向に摺動自在に構成されている。すなわち、第1スリーブに形成されたスプラインと、第1スプライン、第2スプラインとにより第1ドグクラッチが構成され、第1スリーブを軸方向に動かすことにより、第1ドグクラッチの締結・解放状態(すなわち、第1スリーブに形成されたスプラインと、第1スプライン、第2スプラインとの嵌合状態)を切替えることができる。同様に、第3スプライン、第4スプライン、及び第2スリーブが同軸上に配設されており、第2スリーブが、第3スプライン、第4スプラインの外周上を、軸方向に摺動自在に構成されている。すなわち、第2スリーブに形成されたスプラインと、第3スプライン、第4スプラインとにより第2ドグクラッチが構成され、第2スリーブを軸方向に動かすことにより、第2ドグクラッチの締結・解放状態(すなわち、第2スリーブに形成されたスプラインと、第3スプライン、第4スプラインとの嵌合状態)を切替えることができる。
【0025】
本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットでは、第1スプライン並びに第2スプライン、及び、第3スプライン並びに第4スプラインが、互いに相対回転可能な外スプラインであり、第1スリーブが、第1スプライン、第2スプラインに外嵌可能な円筒状に形成され、内周面に沿って軸方向に延びる内スプラインが形成されており、第2スリーブが、第3スプライン、第4スプラインに外嵌可能な円筒状に形成され、内周面に沿って軸方向に延びる内スプラインが形成されていることが好ましい。
【0026】
この場合、第1スプライン、第2スプラインそれぞれが、互いに相対回転可能な外スプラインであり、第1スリーブが、第1スプライン、第2スプラインに外嵌可能な円筒状に形成され、その内周面に軸方向に延びる内スプラインが形成されている。そのため、円筒状の第1スリーブに形成された内スプラインと、外スプラインからなる第1スプライン、第2スプラインとによって(すなわち比較的シンプル構成によって)第1ドグクラッチを構成することができる。同様に、第3スプライン、第4スプラインそれぞれが、互いに相対回転可能な外スプラインであり、第2スリーブが、第3スプライン、第4スプラインに外嵌可能な円筒状に形成され、その内周面に軸方向に延びる内スプラインが形成されている。そのため、円筒状の第2スリーブに形成された内スプラインと、外スプラインからなる第3スプライン、第4スプラインとによって(すなわち比較的シンプル構成によって)第2ドグクラッチを構成することができる。
【0027】
また、本発明に係るハイブリッド車両のパワーユニットでは、第2モータ・ジェネレータから車軸へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比が、エンジンから車軸へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比よりもローギヤに設定されていることが好ましい。
【0028】
一般的に、電動モータはエンジンよりも高回転で使用できる。この場合、第2モータ・ジェネレータから車軸(駆動輪)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比が、エンジンから車軸(駆動輪)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比よりもローギヤに設定されている。そのため、エンジン及び第2モータ・ジェネレータそれぞれを効率よく運転することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、エンジンと2個のモータ・ジェネレータとを備え、シリーズHEV走行機能、パラレルHEV走行機能、及びEV走行機能を有するハイブリッド車両のパワーユニットにおいて、よりシンプルかつ低コストに、モータ・ジェネレータを車両の駆動に利用しないときに、当該モータ・ジェネレータに起因するロス(損失)を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るハイブリッド車両のパワーユニット1の構成について説明する。
図1は、ハイブリッド車両のパワーユニット1の構成を示すスケルトン図、及び、その制御システムの構成を示すブロック図である。
【0033】
ハイブリッド車両は、車両の駆動力源として、エンジン10と、第1モータ・ジェネレータ21と、第2モータ・ジェネレータ22とを備えている。エンジン10は、どのような形式のものでもよいが、例えば、高膨張比サイクルによって圧縮比を高めることにより、熱効率の向上を図ったエンジンなどが好適に用いられる。エンジン10は、エンジン・コントロールユニット(以下「ECU」という)81によって制御される。
【0034】
ECU81には、クランクシャフトの回転位置(エンジン回転数)を検出するクランク角センサ96等の各種センサが接続されている。ECU81は、取得したこれらの各種情報、及び後述するハイブリッド車・コントロールユニット(以下「HEV−CU」という)80からの制御情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、並びに電子制御式スロットルバルブ等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を制御する。また、ECU81は、CAN(Controller Area Network)100を介して、エンジン回転数などの各種情報をHEV−CU80に送信する。
【0035】
エンジン10のクランクシャフト10a(特許請求の範囲に記載の出力軸に相当)には、エンジン10の回転変動を吸収するフライホイールダンパ11を介して、出力軸12が接続されている。出力軸12には、その端部(又は該端部に取り付けられたハブ)の外周面に第1スプライン31が形成されている。すなわち、エンジン10のクランクシャフト10aは、フライホイールダンパ11及び出力軸12を介して第1スプライン31とトルク伝達可能に接続されている。
【0036】
第1モータ・ジェネレータ21及び第2モータ・ジェネレータ22は、供給された電力を機械的動力に変換するモータとしての機能と、入力された機械的動力を電力に変換するジェネレータとしての機能とを兼ね備えた同期発電電動機として構成されている。すなわち、第1モータ・ジェネレータ21及び第2モータ・ジェネレータ22それぞれは、車両駆動時には駆動トルクを発生するモータとして動作し、回生時にはジェネレータとして動作する。なお、第1モータ・ジェネレータ21は、主にジェネレータとして動作し、第2モータ・ジェネレータ22は、主にモータとして動作する。
【0037】
第1モータ・ジェネレータ21の回転軸(入出力軸)21aは、一対のギヤ23(ドライブギヤ23a及びドリブンギヤ23b)を介して、出力軸12に接続されている。上述したように、出力軸12には、その端部の外周面に第1スプライン31が形成されている。すなわち、第1モータ・ジェネレータ21の回転軸21aも、ギヤ23及び出力軸12を介して第1スプライン31とトルク伝達可能に接続されている。
【0038】
第1スプライン31と同軸上に並べて、第2スプライン32が配設されている。第2スプライン32は、フロントドライブシャフト40(前輪出力軸、車軸に相当)に取り付けられた一対のギヤ26(26a,26b)を構成するドライブギヤ26a(又はそのギヤコーン)に設けられている。より具体的には、一対のギヤ26(歯車列)を構成するドリブンギヤ26bが、フロントドライブシャフト40に取り付けられており、該ドリブンギヤ26bと歯合するドライブギヤ26a(又はそのギヤコーン)に第2スプライン32が設けられている。すなわち、第2スプライン32は、フロントドライブシャフト40(車軸)とトルク伝達可能に接続されている。なお、ドライブギヤ26aは中空に形成されており、その中空部(内部空間)には、上述した出力軸12が回転可能に配設されている。
【0039】
第2モータ・ジェネレータ22の回転軸(入出力軸)22aには、プラネタリギヤ(モータ・リダクションギヤ)25が取り付けられている。プラネタリギヤ25は、サンギヤ25a、リングギヤ25b、ピニオンギヤ25c、及びプラネタリキャリア25dから構成される遊星歯車機構を有している。プラネタリギヤ25は、第2モータ・ジェネレータ22がモータとして機能するときには、第2モータ・ジェネレータ22から伝達された回転を減速して(トルクを増大して)プラネタリキャリア25dから出力する。一方、プラネタリギヤ25は、プラネタリキャリア25dに入力されたトルク(駆動力)による回転を加速して(トルクを低減させて)サンギヤ25aから出力することにより、第2モータ・ジェネレータ22をジェネレータとして機能させる。
【0040】
プラネタリギヤ25を構成するプラネタリキャリア25d(又はそのギヤコーン)には第3スプライン33が設けられている。すなわち、第3スプライン33は、第2モータ・ジェネレータ22の回転軸22aとトルク伝達可能に接続されている。なお、プラネタリギヤ25(サンギヤ25a及びプラネタリキャリア25d)は中空に形成されており、その中空部(内部空間)には、プロペラシャフト60(後輪出力軸、車軸に相当)が回転可能に配設されている。
【0041】
第3スプライン33と同軸上に並べて、第4スプライン34が配設されている。第4スプライン34は、プロペラシャフト60(又はプロペラシャフト60に取り付けられたハブ)の外周面に形成されている。すなわち、第4スプライン34は、プロペラシャフト60(車軸)とトルク伝達可能に接続されている。
【0042】
フロントドライブシャフト40(車軸)は、前輪(駆動輪)と接続されるフロントデファレンシャル(フロントデフ)42との間でトルクを伝達する。すなわち、前輪は、フロントドライブシャフト40、及びギヤ対26を介して第2スプライン32とトルク伝達可能に接続されるとともに、フロントドライブシャフト40、ギヤ対28、プロペラシャフト60を介して第4スプライン34とトルク伝達可能に接続されている。
【0043】
よって、フロントドライブシャフト40に伝達されたトルクは、フロントデファレンシャル(フロントデフ)42に伝達される。フロントデフ42は、例えば、ベベルギヤ式の差動装置である。フロントデフ42からのトルクは、左前輪ドライブシャフトを介して左前輪(図示省略)に伝達されるとともに、右前輪ドライブシャフトを介して右前輪(図示省略)に伝達される。
【0044】
また、フロントドライブシャフト40には、一対のギヤ28(ドライブギヤ28a及びドリブンギヤ28b)を介して、プロペラシャフト60が接続されている。プロペラシャフト60は、後輪(駆動輪)と接続されるリヤデファレンシャル(リヤデフ)62との間でトルクを伝達する。
【0045】
プロペラシャフト60には、後輪側に伝達されるトルクを調節するトランスファクラッチ61が介装されている。トランスファクラッチ61は、4輪の駆動状態(例えば前輪のスリップ状態等)や駆動トルクなどに応じて締結力(すなわち後輪へのトルク分配率)を制御する。よって、プロペラシャフト60に伝達されたトルクは、トランスファクラッチ61の締結力に応じて分配され、後輪側にも伝達される。
【0046】
プロペラシャフト60に伝達され、トランスファクラッチ61によって調節(分配)されたトルクは、リヤデファレンシャル(リヤデフ)62に伝達される。リヤデフ62には左後輪ドライブシャフト及び右後輪ドライブシャフト(図示省略)が接続されている。リヤデフ62からの駆動力は、左後輪ドライブシャフトを介して左後輪(図示省略)に伝達されるとともに、右後輪ドライブシャフトを介して右後輪(図示省略)に伝達される。
【0047】
上述したように、第1スプライン31、第2スプライン32それぞれは、互いに相対回転可能な軸(出力軸12又は出力軸12に取り付けられたハブ)やドライブギヤ26a(又はそのギヤコーン)の外周に形成された外スプラインである。第1スプライン31(出力軸12)、第2スプライン32(ドライブギヤ26a)は、同軸上に並べて配設されている。
【0048】
同様に、第3スプライン33、第4スプライン34それぞれは、互いに相対回転可能な軸(プロペラシャフト60又はプロペラシャフト60に取り付けられたハブ)やプラネタリキャリア25d(又はそのギヤコーン)の外周に形成された外スプラインである。第3スプライン33(プラネタリキャリア25d)、第4スプライン34(プロペラシャフト60)は、第1スプライン31、第2スプライン32と同軸上に配設されている。
【0049】
そして、第1スプライン31、第2スプライン32の外周上(外側)には、第1スプライン31、第2スプライン32と嵌合可能に形成されたスプライン371aを有し、当該スプライン371aの位置に応じて、第1スプライン31、第2スプライン32の接続状態(接続・切離し)を切替える第1スリーブ371が設けられている。第1スプライン31、第2スプライン32、及び第1スリーブ371により第1ドグクラッチ301が構成される。よって、第1ドグクラッチ301により、エンジン10及び第1モータ・ジェネレータ21と車軸(フロントドライブシャフト40)との接続状態(締結・解放)が切替えられる。
【0050】
ここで、第1スリーブ371は、第1スプライン31、第2スプライン32に外嵌可能な円筒状に形成され、内周面に沿って軸方向に延びる内スプライン371aが形成されている。すなわち、第1スリーブ371は、第1スプライン31、第2スプライン32の外周上を、軸方向に摺動自在(移動可能)に設けられている。
【0051】
同様に、第3スプライン33、第4スプライン34の外周上(外側)には、第3スプライン33、第4スプライン34と嵌合可能に形成されたスプライン372aを有し、当該スプライン372aの位置に応じて、第3スプライン33、第4スプライン34の接続状態(接続・切離し)を切替える第2スリーブ372が設けられている。第3スプライン33、第4スプライン34、及び第2スリーブ372により第2ドグクラッチ302が構成される。よって、第2ドグクラッチ302により、第2モータ・ジェネレータ22と車軸(プロペラシャフト60)との接続状態(締結・解放)が切替えられる。なお、第1ドグクラッチ301と第2ドグクラッチ302とでドグクラッチ30が構成される。
【0052】
ここで、第2スリーブ372は、第3スプライン33、第4スプライン34に外嵌可能な円筒状に形成され、内周面に沿って軸方向に延びる内スプライン372aが形成されている。すなわち、第2スリーブ372は、第3スプライン33、第4スプライン34の外周上を、軸方向に摺動自在(移動可能)に設けられている。
【0053】
第1スリーブ371及び第2スリーブ372は、アクチュエータ75によって摺動される。アクチュエータ75は、第1スリーブ371を動かして、第1スプライン31、第2スプライン32の接続状態(接続・切離し)を切替えるとともに、第2スリーブ372を動かして、第3スプライン33、第4スプライン34の接続状態(接続・切離し)を切替えることにより、第1モード(シリーズHEV走行/EV走行モード)と、第2モード(パラレルHEV走行モード)と、第3モード(パラレルHEV走行/エンジン走行モード)とを切替える。なお、第1モードと第3モードとの間でモードを切替える際には、第2モードを経由する。
【0054】
アクチュエータ75は、第1スリーブ371及び第2スリーブ372を同時に動かして、第1モード(シリーズHEV走行/EV走行モード)のときには第1スプライン31と第2スプライン32とを切離し、第3スプライン33と第4スプライン34とを接続する。また、第2モード(パラレルHEV走行モード)のときには、第1スプライン31と第2スプライン32とを接続し、第3スプライン33と第4スプライン34とを接続する。さらに、第3モード(パラレルHEV走行/エンジン走行モード)のときには第1スプライン31と第2スプライン32とを接続し、第3スプライン33と第4スプライン34とを切離す。なお、第1モード、第2モード、第3モードの詳細については後述する。
【0055】
より詳細には、第1スリーブ371及び第2スリーブ372は、それぞれの外周に形成された環状溝に、軸方向の断面がコの字状に形成された単一のシフトフォーク39が係合されており(把持されており)、シフトフォーク39の移動に伴って一体的に(連動して)軸方向に移動する。このシフトフォーク39に上記アクチュエータ75が連結されており、アクチュエータ75によってシフトフォーク39(すなわち第1スリーブ371及び第2スリーブ372)が軸方向に動かされ、上述したようにモードが切替えられる。なお、アクチュエータ75としては、例えば電動モータ(ステッピングモータなど)が好適に用いられる。アクチュエータ75は、後述するHEV−CU80によって駆動制御される。
【0056】
ここで、第2モータ・ジェネレータ22から車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比は、エンジン10から車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比よりもローギヤに設定されている。
【0057】
また、アクチュエータ75に電力を供給する電源系は、2重系とされている。より具体的には、上記電源系は、第1モータ・ジェネレータ21及び第2モータ・ジェネレータ22に電力を供給する数百V程度の高電圧バッテリ70からDC/DCコンバータ71を介して12Vに降圧された電力を供給する第1電力供給経路73と、高電圧バッテリ70よりも出力端子電圧が低い(例えば12V)低電圧バッテリ72から電力を供給する第2電力供給経路74とを有する2重系とされている。そして、第1電力供給経路73及び第2電力供給経路74のうちいずれか一方の電力供給経路(例えば第2電力供給経路74)に異常(フェイル)が発生した場合(例えば断線などが生じた場合)に、他方の電力供給経路(例えば第1電力供給経路73)から電力が供給されるように(すなわち、電力供給経路が切替えられるように)構成されている。
【0058】
車両の駆動力源であるエンジン10、第2モータ・ジェネレータ22、及び第1モータ・ジェネレータ21は、HEV−CU80によって総合的に制御される。また、HEV−CU80は、アクチュエータ75(第1スリーブ371及び第2スリーブ372)の駆動も制御する。
【0059】
HEV−CU80は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、その記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。
【0060】
HEV−CU80には、例えば、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ91、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ92、車両の前後・左右の加速度を検出するGセンサ(加速度センサ)93、車輪の速度を検出する車速センサ94、及び、フロントドライブシャフト40の回転数を検出する回転数センサ95、第1モータ・ジェネレータ21の回転位置(回転数)を検出するレゾルバ97、第2モータ・ジェネレータ22の回転位置(回転数)を検出するレゾルバ98などを含む各種センサが接続されている。また、HEV−CU80は、CAN100を介して、エンジン10を制御するECU81や、車両の横滑りなどを抑制して走行安定性を向上させるビークルダイナミック・コントロールユニット(以下「VDCU」という)85等と相互に通信可能に接続されている。HEV−CU80は、CAN100を介して、ECU81やVDCU85から、例えば、エンジン回転数やブレーキ操作量等の各種情報を受信する。
【0061】
HEV−CU80は、取得したこれらの各種情報に基づいて、エンジン10、第2モータ・ジェネレータ22、及び第1モータ・ジェネレータ21の駆動を総合的に制御するとともに、アクチュエータ75(第1スリーブ371、第2スリーブ372)を駆動して、モードを、上述した第1モード、第2モード、第3モードの間で切替える。HEV−CU80は、例えば、アクセルペダル開度(運転者の要求駆動力)、車両の運転状態、高電圧バッテリ70の充電状態(SOC)、及びエンジン10のBSFCなどに基づいて、エンジン10の要求出力、及び第2モータ・ジェネレータ22、第1モータ・ジェネレータ21のトルク指令値を求めて出力するとともに、アクチュエータ75の駆動指令値(制御目標値)を出力する。
【0062】
ECU81は、上記要求出力に基づいて、例えば、電子制御式スロットルバルブの開度を調節する。また、パワーコントロールユニット(以下「PCU」という)82は、上記トルク指令値に基づいて、インバータ82aを介して、第2モータ・ジェネレータ22、第1モータ・ジェネレータ21を駆動する。ここで、インバータ82aは、高電圧バッテリ70の直流電力を三相交流の電力に変換して第2モータ・ジェネレータ22、第1モータ・ジェネレータ21に供給する。一方、インバータ82aは、回生時などに、第2モータ・ジェネレータ22(及び/又は第1モータ・ジェネレータ21)で発電した交流電圧を直流電圧に変換して高電圧バッテリ70を充電する。
【0063】
HEV−CU80は、アクチュエータ75(第1スリーブ371及び第2スリーブ372)を駆動して、走行モードを、第1モード、第2モード、第3モードの間で切替えるために、切替制御部80aを機能的に有している。HEV−CU80では、ROMなどに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、切替制御部80aの機能が実現される。切替制御部80aは、特許請求の範囲に記載の制御手段として機能する。
【0064】
切替制御部80aは、主として要求駆動力及び車速(車両の走行状態)に基づいて、走行モードの切替え制御を行う。より具体的には、切替制御部80aは、例えば、発進時や低・中速走行時などでは、第1モード(シリーズHEV走行/EV走行モード)を選択する。また、切替制御部80aは、高負荷走行時(急加速時など)及びモード切替え時などでは、第2モード(パラレルHEV走行モード)を選択する。さらに、切替制御部80aは、高速走行時などでは、第3モード(パラレルHEV走行/エンジン走行モード)を選択する。
【0065】
切替制御部80aは、第1モード(シリーズHEV走行/EV走行モード)を選択するときには、第1スプライン31と第2スプライン32とを切離し、第3スプライン33と第4スプライン34とを接続するようにアクチュエータ75(第1スリーブ371、第2スリーブ372)を制御(駆動)する。また、切替制御部80aは、第2モード(パラレルHEV走行モード)を選択するときには、第1スプライン31と第2スプライン32とを接続し、第3スプライン33と第4スプライン34とを接続するようにアクチュエータ75(第1スリーブ371、第2スリーブ372)を制御(駆動)する。さらに、切替制御部80aは、第3モード(パラレルHEV走行/エンジン走行モード)を選択するときには、第1スプライン31と第2スプライン32とを接続し、第3スプライン33と第4スプライン34とを切離すようにアクチュエータ75(第1スリーブ371、第2スリーブ372)を制御(駆動)する。
【0066】
上述したように構成されることにより、第1モード(シリーズHEV/EV走行モード)では、エンジン10で第1モータ・ジェネレータ21を駆動して発電した電力で第2モータ・ジェネレータ22を駆動して走行するシリーズHEV走行、又は、エンジン10を停止し第2モータ・ジェネレータ22のみで走行するEV走行が行われる。なお、シリーズHEV走行とEV走行との切替えは、例えば、高電圧バッテリ70のSOCなどに基づいて行われる(例えばSOCが低下している場合にはシリーズHEV走行が選択される)。また、第2モード(パラレルHEV走行モード)では、エンジン10と第1モータ・ジェネレータ21と第2モータ・ジェネレータ22とによって車両が駆動される(パラレルHEV走行)。なお、第2モードでは、エンジン出力の一部を用いて第1モータ・ジェネレータ21で発電しつつ、エンジン出力の残りと第2モータ・ジェネレータ22の駆動力とにより車両を駆動することもできる(パラレルHEV走行)。さらに、第3モード(パラレルHEV/エンジン走行モード)では、エンジン10と第1モータ・ジェネレータ21とで車両を駆動するパラレルHEV走行、又は、エンジン10のみで車両を駆動するエンジン走行が行われる。
【0067】
すなわち、ハイブリッド車両のパワーユニット1は、エンジン10を停止して第2モータ・ジェネレータ22の駆動力で走行するEV走行機能、エンジン10を稼働させて第1モータ・ジェネレータ21で発電した電力を用いて第2モータ・ジェネレータ22を駆動して走行するシリーズHEV走行機能、第1モータ・ジェネレータ21及び/又は第2モータ・ジェネレータ22の駆動力とエンジン10の駆動力とにより走行するパラレルHEV走行機能を発揮する。
【0068】
また、切替制御部80aは、第1モードから第2モード、又は第2モードを経由して第3モードに切替える際には、第1モータ・ジェネレータ21の回転数を、第1スリーブ371と第2スプライン32とを嵌合可能な回転数に調節し、その後、アクチュエータ75を駆動して、第1スプライン31と第2スプライン32とが接続されるように第1スリーブ371(及び第2スリーブ372)を動かす。同様に、切替制御部80aは、第3モードから第2モード、又は第2モードを経由して第1モードに切替える際に、第2モータ・ジェネレータ22の回転数を、第2スリーブ372と第3スプライン33とを嵌合可能な回転数に調節し、その後、アクチュエータ75を駆動して、第4スプライン34と第3スプライン33とが接続されるように第2スリーブ372(及び第1スリーブ371)を動かす。
【0069】
さらに、切替制御部80aは、第1モードから第2モード、又は第2モードを経由して第3モードに切替える際に、第2モータ・ジェネレータ22の出力トルクがゼロとなるようにゼロトルク制御を行い、第3モードから第2モード、又は第2モードを経由して第1モードに切替える際に、第1モータ・ジェネレータ21の出力トルクがゼロとなるようにゼロトルク制御を行うことが好ましい。
【0070】
なお、切替制御部80aは、第1モードから第2モード、又は第2モードを経由して第3モードに切替える際に、車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)の回転数変動が所定回転数以上であるときには、車軸の回転数変動を抑制するように第2モータ・ジェネレータ22を制御し、第3モードから第2モード、又は第2モードを経由して第1モードに切替える際に、車軸の回転数変動が所定回転数以上であるときには、車軸の回転数変動を抑制するように第1モータ・ジェネレータ21を制御することが好ましい。
【0071】
ここで、第1モード(シリーズHEV/EV走行モード)におけるドグクラッチ30を介したトルク伝達経路(太線で表示)を
図2に示す。同様に、第2モード(パラレルHEV走行モード)におけるドグクラッチ30を介したトルク伝達経路(太線で表示)を
図3に示す。また、第3モード(パラレルHEV/エンジン走行モード)におけるドグクラッチ30を介したトルク伝達経路(太線で表示)を
図4に示す。
【0072】
図2に太線で示されるように、第1モード(シリーズHEV走行/EV走行モード)では、第1スリーブ371及び第2スリーブ372が(中央の位置から)図面右側方向に摺動される。そして、第1スプライン31と第2スプライン32とが切離され、第3スプライン33と第4スプライン34とが接続される。すなわち、エンジン10及び第1モータ・ジェネレータ21が車軸(フロントドライブシャフト40)から切離されるとともに、プラネタリギヤ25、第3スプライン33、第2スリーブ372、第4スプライン34を介して、第2モータ・ジェネレータ22と車軸(プロペラシャフト60)とが接続される。一方、エンジン10は、ギヤ23を介して第1モータ・ジェネレータ21と接続されている。よって、この第1モードでは、エンジン10で第1モータ・ジェネレータ21を駆動して発電した電力で第2モータ・ジェネレータ22を駆動して走行するシリーズHEV走行、又は、エンジン10を停止し第2モータ・ジェネレータ22のみで走行するEV走行が行われる。なお、シリーズHEV走行とEV走行との切替えは、例えば、高電圧バッテリ70のSOCなどに基づいて行われる(例えばSOCが低下している場合にはシリーズHEV走行が選択される)。なお、この場合、油圧クラッチを用いることなくエンジン10及び第1モータ・ジェネレータ21が切離されるため、クラッチの引きずりロスが発生しない。
【0073】
第2モード(パラレルHEV走行モード)では、
図3に太線で示されるように、第1スリーブ371及び第2スリーブ372が中央の位置に摺動される。そして、第1スプライン31と第2スプライン32とが接続され、第3スプライン33と第4スプライン34とが接続される。すなわち、第1スプライン31、第1スリーブ371、第2スプライン32、ギヤ対26を介して、エンジン10及び第1モータ・ジェネレータ21と車軸(フロントドライブシャフト40)とが接続されるとともに、プラネタリギヤ25、第3スプライン33、第2スリーブ372、第4スプライン34、を介して、第2モータ・ジェネレータ22と車軸(プロペラシャフト60)とが接続される。よって、エンジン10と第1モータ・ジェネレータ21と第2モータ・ジェネレータ22とによって車両が駆動される(パラレルHEV走行)。この場合、エンジン10、第1モータ・ジェネレータ21、第2モータ・ジェネレータ22をすべて用いて車両を駆動できるため、力強い走行ができる。なお、エンジン出力の一部を用いて第1モータ・ジェネレータ21で発電しつつ、エンジン出力の残りと第2モータ・ジェネレータ22の駆動力とにより車両を駆動してもよい(パラレルHEV走行)。また、第1モードと第3モードとの間でモードの切替えを行う際に、第2モードを経由することにより、車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)から第1ドグクラッチ301、第2ドグクラッチ302の双方が同時に解放されることがなくなるため、車軸上のイナーシャの急激な低下(トルク抜け)が防止され、イナーシャ低下による車両の空走感が抑制される。さらに、油圧クラッチを用いることなく第1ドグクラッチ301及び第2ドグクラッチ302を締結しているため、油圧によるロス(オイルポンプ・ロスやシーリング・フリクションなど)が発生しない。
【0074】
第3モード(パラレルHEV走行/エンジン走行モード)では、
図4に太線で示されるように、第1スリーブ371及び第2スリーブ372が(中央の位置から)図面左側方向に摺動される。そして、第1スプライン31と第2スプライン32とが接続され、第3スプライン33と第4スプライン34とが切離される。すなわち、第1スプライン31、第1スリーブ371、第2スプライン32、ギヤ対26を介して、エンジン10及び第1モータ・ジェネレータ21と車軸(フロントドライブシャフト40)とが接続され、第2モータ・ジェネレータ22が車軸(プロペラシャフト60)から切離される。よって、この第3モードでは、エンジン10と第1モータ・ジェネレータ21とで車両を駆動するパラレルHEV走行、又は、エンジン10のみで車両を駆動するエンジン走行が行われる。なお、この場合、第2モータ・ジェネレータ22が車軸(プロペラシャフト60)から切離されるため、第2モータ・ジェネレータ22のゼロトルク制御に伴う電気ロスや連れ回りによるフリクションロスが低減される。
【0075】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、車両の走行状態に基づいて、第1スプライン31と第2スプライン32とが切離され、第3スプライン33と第4スプライン34とが接続される第1モード(シリーズHEV/EV走行モード)と、第1スプライン31と第2スプライン32とが接続され、第3スプライン33と第4スプライン34とが接続される第2モード(パラレルHEV走行モード)と、第1スプライン31と第2スプライン32とが接続され、第3スプライン33と第4スプライン34とが切離される第3モード(パラレルHEV/エンジン走行モード)とを切替えるようにアクチュエータが制御される。そのため、第2モータ・ジェネレータ22による駆動力が不要な場合に、第3モードに切替えて、第2モータ・ジェネレータ22を切離すことにより、第2モータ・ジェネレータ22に起因するロス(例えば、第2モータ・ジェネレータ22のゼロトルク制御に伴う電気ロスや連れ回りによるフリクションロス)を低減することができる。また、この場合、第3スプライン33、第4スプライン34、及び第2スリーブ372を有して構成される第2ドグクラッチ302を解放することによって第2モータ・ジェネレータ22を切離すことができる。その結果、よりシンプルかつ低コストに、第2モータ・ジェネレータ22を車両の駆動に利用しないとき(すなわち、エンジン10のみ、又はエンジン10と第1モータ・ジェネレータ21で駆動するとき)に、当該第2モータ・ジェネレータ22に起因するロスを低減することが可能となる。第1ドグクラッチ301及び第2ドグクラッチ302双方が締結されるため、エンジン10と第1モータ・ジェネレータ21と第2モータ・ジェネレータ22をすべて用いて車両を駆動することができる。よって、力強い走行を行うことが可能となる。
【0076】
また、本実施形態によれば、第1モードと第3モードとの間でモードが切替えられる際に、第2モードを経由するようにアクチュエータ75が制御される。そのため、モードが切替えられる際に、第1ドグクラッチ301及び第2ドグクラッチ302のうち、少なくともいずれか一方が必ず車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)と接続される。その結果、モードが切替えられる際に、イナーシャの低下(トルク抜け)による車両の空走感を防止することができる。
【0077】
本実施形態によれば、第1モードから第2モード、又は第2モードを経由して第3モードに切替えられる際に、第1モータ・ジェネレータ21の回転数が、第1スリーブ371と第2スプライン32とを嵌合可能な回転数に調節され、その後、アクチュエータ75が駆動されて、第1スプライン31と第2スプライン32とが接続されるように第1スリーブ371が動かされる。すなわち、第1スプライン31(第1モータ・ジェネレータ21)と第2スプライン32(車軸)との回転数合わせが行われた後(すなわち回転偏差が低減された後)、第1スプライン31と第2スプライン32とが接続されるように第1スリーブ371が動かされる。同様に、第3モードから第2モード、又は第2モードを経由して第1モードに切替えられる際に、第2モータ・ジェネレータ22の回転数が、第2スリーブ372と第3スプライン33とを嵌合可能な回転数に調節され、その後、アクチュエータ75が駆動されて、第4スプライン34と第3スプライン33とが接続されるように第2スリーブ372が動かされる。すなわち、第3スプライン33(第2モータ・ジェネレータ22)と第4スプライン34(車軸)との回転数合わせが行われた後(すなわち回転偏差が低減された後)、第3スプライン33と第4スプライン34とが接続されるように第2スリーブ372が動かされる。よって、ショックを抑制しつつよりスムーズにモードを切替えることが可能となる。
【0078】
本実施形態によれば、第1モードから第2モード、又は第2モードを経由して第3モードに切替えられる際に、第2モータ・ジェネレータ22の出力トルクがゼロとなるようにゼロトルク制御が行われ、第3モードから第2モード、又は第2モードを経由して第1モードに切替える際に、第1モータ・ジェネレータ21の出力トルクがゼロとなるようにゼロトルク制御が行われる。その結果、モードが切替えられる際に、スリーブ(第1スリーブ371又は第2スリーブ372)が抜かれる側のスプライン(第1スプライン31又は第4スプライン34)に付与される駆動トルクが低減されるため、モードの切替えをよりスムーズに行うことが可能となる。
【0079】
本実施形態によれば、第1モードから第2モード、又は第2モードを経由して第3モードに切替えられる際に、車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)の回転数変動が所定回転数以上であるときには、車軸の回転数変動を抑制するように第2モータ・ジェネレータ22が制御され、第3モードから第2モード、又は第2モードを経由して第1モードに切替えられる際に、車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)の回転数変動が所定回転数以上であるときには、車軸の回転数変動を抑制するように第1モータ・ジェネレータ21が制御される。そのため、モードが切替えられる際に、第1ドグクラッチ301、第2ドグクラッチ302を構成する各要素が異なった回転数で接触・嵌合されることを防止することが可能となる。
【0080】
本実施形態によれば、第1スリーブ371及び第2スリーブ372が、単一のシフトフォーク39で把持されており、アクチュエータ75によってシフトフォーク39が駆動されることにより、第1スリーブ371及び第2スリーブ372が一体的に(同時に)摺動される。そのため、第1スリーブ371及び第2スリーブ372の駆動機構をよりシンプルな構成にすることができる。よって、システムの軽量化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0081】
本実施形態によれば、第1スプライン31、第2スプライン32、及び第1スリーブ371が同軸上に配設されており、第1スリーブ371が、第1スプライン31、第2スプライン32の外周上を、軸方向に摺動自在に構成されている。すなわち、第1スリーブ371に形成されたスプライン371aと、第1スプライン31、第2スプライン32とにより第1ドグクラッチ301が構成され、第1スリーブ371を軸方向に動かすことにより、第1ドグクラッチ301の締結・解放状態(すなわち、第1スリーブ371に形成されたスプライン371aと、第1スプライン31、第2スプライン32との嵌合状態)を切替えることができる。同様に、第3スプライン33、第4スプライン34、及び第2スリーブ372が同軸上に配設されており、第2スリーブ372が、第3スプライン33、第4スプライン34の外周上を、軸方向に摺動自在に構成されている。すなわち、第2スリーブ372に形成されたスプライン372aと、第3スプライン33、第4スプライン34とにより第2ドグクラッチ302が構成され、第2スリーブ372を軸方向に動かすことにより、第2ドグクラッチ302の締結・解放状態(すなわち、第2スリーブ372に形成されたスプライン372aと、第3スプライン33、第4スプライン34との嵌合状態)を切替えることができる。
【0082】
本実施形態によれば、第1スプライン31、第2スプライン32それぞれが、互いに相対回転可能な外スプラインであり、第1スリーブ371が、第1スプライン31、第2スプライン32に外嵌可能な円筒状に形成され、その内周面に軸方向に延びる内スプライン371aが形成されている。そのため、円筒状の第1スリーブ371に形成された内スプライン371aと、外スプラインからなる第1スプライン31、第2スプライン32とによって(すなわち比較的シンプル構成によって)第1ドグクラッチ301を構成することができる。同様に、第3スプライン33、第4スプライン34それぞれが、互いに相対回転可能な外スプラインであり、第2スリーブ372が、第3スプライン33、第4スプライン34に外嵌可能な円筒状に形成され、その内周面に軸方向に延びる内スプライン372aが形成されている。そのため、円筒状の第2スリーブ372に形成された内スプライン372aと、外スプラインからなる第3スプライン33、第4スプライン34とによって(すなわち比較的シンプル構成によって)第2ドグクラッチ302を構成することができる。
【0083】
本実施形態によれば、第2モータ・ジェネレータ22から車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比が、エンジン10から車軸(フロントドライブシャフト40/プロペラシャフト60)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比よりもローギヤに設定されている。そのため、エンジン10及び第2モータ・ジェネレータ22それぞれを効率よく運転することができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、複数のギヤやシャフトから構成される駆動系の構成は、上記実施形態には限られない。例えば、プラネタリギヤ25に代えて、ヘリカルギヤなどを用いることもできる。
【0085】
また、上述した第2モードを経由することなく、第1モードと第3モードとの間で切替えを行う構成としてもよい。すなわち、第2モードを有しない構成としてもよい。なお、その場合、第1スリーブ371、第2スリーブ372を動かすアクチュエータには、例えばオン/オフ・ソレノイドを用いることができる。
【0086】
上記実施形態では、第1スリーブ371及び第2スリーブ372を動かすアクチュエータ75として電動式のアクチュエータを用いたが、電動式のものに代えて、例えば油圧式のアクチュエータを用いてもよい。また、アクチュエータ75(第1スリーブ371、第2スリーブ372)の駆動制御を、HEV−CU80ではなく、他のECUで行う構成としてもよい。
【0087】
上記実施形態では、本発明をAWD車(全輪駆動車)に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、例えば2WD車(FF車やFR車)にも適用することもできる。
【0088】
上記実施形態では、第1スリーブ371と第2スリーブ372とが単一のシフトフォーク39によって把持され、第1スリーブ371と第2スリーブ372とが連動して(一体的に)摺動する構成としたが、第1スリーブ371と第2スリーブ372とを別々に(独立して)駆動する構成としてもよい。
【0089】
また、第1スプライン31と第2スプライン32との間に、第1スプライン31と第1スリーブ371との回転を同期させるシンクロ機構を設けてもよい。同様に、第3スプライン33と第4スプライン34との間に、第3スプライン33と第2スリーブ372との回転を同期させるシンクロ機構を設けてもよい。