【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る薄膜形成装置は、基材の表面に薄膜を形成する装置であって、内部に減圧空間を形成する減圧容器と、高周波電極と、成膜用電極と、搬送機構と、高周波電源と、パルス電源と、を備えている。高周波電極は、減圧容器内に配置されている。成膜用電極は、減圧容器内における高周波電極に対向する位置に配置されており、高周波電極に対向する側にR面を有する。搬送機構は、減圧容器内における高周波電極と成膜用電極のR面との間において、R面に接触させながら基材を搬送する。高周波電源は、高周波電極に高周波電力を供給し、誘導結合型プラズマを発生させる。パルス電源は、成膜用電極に負パルス電圧を印加する。
【0009】
ここでは、減圧容器の内部において成膜用電極に対して対向配置された高周波電極に高周波電力を供給して誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma; ICP)を発生させ、成膜用電極に負パルス電圧を印加する。そして、成膜用電極と高周波電極との間に搬送される基材の表面に薄膜を形成する薄膜形成装置において、高周波電極に対向配置された成膜用電極の面をR面としている。
【0010】
ここで、一対の高周波電極および成膜用電極が配置される減圧容器は、例えば、内部に真空空間を形成する真空容器等を用いることができる。
【0011】
また、基材の表面に形成される薄膜には、例えば、DLC(Diamond-Like-Carbon)を含む薄膜やSiO
2等のシリコン系の薄膜等が含まれる。
【0012】
また、成膜用電極のR面に対向配置される高周波電極は、基材の幅に応じて、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0013】
さらに、搬送機構は、例えば、フィルム状の長尺の基材を、成膜用電極のR面の周方向に沿って、高周波電極と成膜用電極との間に搬送する。
【0014】
なお、表面に薄膜が形成される基材としては、例えば、樹脂フィルム、ガラスフィルム等を用いることができる。そして、基材には、薄膜等が形成された多層構造の基材も含まれる。
【0015】
これにより、高周波電極に高周波電力を供給し、かつ成膜用電極に負パルス電圧を印加することで、高周波電極に高周波電力を供給して生じた誘導結合型プラズマを、さらに高密度化してイオンを大量に発生させ、高速で基材の表面へ衝突させることができるため、基材と薄膜との密着性を確保しつつ、高速での成膜が可能になる。
【0016】
また、成膜用電極のR面に接触させながら基材を搬送することで、搬送中における成膜用電極からの基材の浮きを防止することができる。
【0017】
この結果、通常のプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)による薄膜形成と比較して、成膜された薄膜と基材との密着性を向上させることができ、薄膜のプラズマ密度を増大させて生産性を向上させることができる。
【0018】
第2の発明に係る薄膜形成装置は、第1の発明に係る薄膜形成装置であって、成膜用電極は、R面が略鉛直方向に沿って配置されている。
【0019】
ここでは、R面が略鉛直方向に沿って配置されるように、成膜用電極を縦向きに設置している。
【0020】
これにより、基材がR面に沿って略鉛直方向に搬送されながら薄膜が形成されるため、製膜中に減圧容器の壁面等に形成された膜の一部が剥がれても基材の表面に落下してしまうことを防止することができる。
【0021】
よって、減圧容器内の清掃作業等を定期的に実施することなく、基材の表面に対する薄膜の形成を長時間行うことができるため、歩留まりが向上してコストを低減し、安定的に基材の表面へ薄膜を形成することができる。
【0022】
第3の発明に係る薄膜形成装置は、第1または第2の発明に係る薄膜形成装置であって、R面は、半径300mm以上の曲率を有する。
【0023】
ここでは、成膜用電極のR面を、半径300mm以上の曲率を有する曲面としている。
これにより、比較的緩やかな曲面に沿って基材を密着させながら搬送することで、成膜用電極に対して基材を均一に密着させることができる。
【0024】
この結果、成膜用電極からの基材の浮きを防止して、基材の表面に均一な薄膜を形成することができる。
【0025】
第4の発明に係る薄膜形成装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る薄膜形成装置であって、高周波電極は、成膜用電極のR面に対向配置された対向面を有している。R面は、対向面よりも面積が大きい。
【0026】
ここでは、互いに対向する高周波電極高周波電極側のR面と、成膜用電極側の対向面とを比較して、R面の方が対向面よりも大きい。
【0027】
これにより、高周波電極から放射状にプラズマ化された原料ガスが移動して、対向配置された成膜用電極側のR面の方へ移動することで、効率よく、成膜用電極に沿って搬送される基材の表面に薄膜を形成することができる。
【0028】
第5の発明に係る薄膜形成装置は、第4の発明に係る薄膜形成装置であって、R面の幅に対する対向面の幅の比は、0.3〜0.4である。
【0029】
ここでは、互いに対向する高周波電極側のR面の幅と、成膜用電極側の対向面の幅との比が、0.3〜0.4の範囲になるように、高周波電極および成膜用電極が形成されている。
【0030】
これにより、高周波電極から放射状にプラズマ化された原料ガスが移動して、対向配置され幅の広い成膜用電極側の対向面へと移動することで、効率よく、成膜用電極に沿って搬送される基材の表面に薄膜を形成することができる。
【0031】
第6の発明に係る薄膜形成装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る薄膜形成装置であって、薄膜は、DLC(Diamond-Like-Carbon)膜である。
【0032】
ここでは、高周波電源から高周波電極に所定の高周波電力が供給されて発生させた誘導結合型プラズマによって、基材の表面にDLC膜が形成される。
【0033】
これにより、例えば、PET等の樹脂フィルムの表面に、DLC膜を形成することで、耐候性に優れた樹脂フィルムを得ることができる。
【0034】
第7の発明に係る薄膜形成装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る薄膜形成装置であって、成膜用電極は、板状の形状を有している。
【0035】
ここでは、板状の成膜用電極を用いている。
これにより、板状の成膜用電極を加工して、所定の曲率のR面を持つ成膜用電極を容易に成形することができる。
【0036】
第8の発明に係る薄膜形成装置は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る薄膜形成装置であって、成膜用電極は、固定配置されている。
【0037】
ここでは、減圧空間内に固定配置された成膜用電極を用いている。
これにより、対向配置された高周波電極と成膜用電極との間において、安定的に基材の表面に薄膜を形成することができる。
【0038】
第9の発明に係る薄膜形成装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る薄膜形成装置であって、搬送機構は、成膜用電極のR面に対して基材を均一に接触させながら搬送する。
【0039】
ここでは、フィルム等の基材を、成膜用電極のR面に対して均一に接触させた状態で搬送する。
【0040】
これにより、高周波電極に高周波電力を供給することで生じるプラズマによって、高周波電極側の基材の表面に薄膜を形成することができる。
【0041】
第10の発明に係る薄膜形成装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る薄膜形成装置であって、高周波電極は、基材の搬送方向に直交する方向に沿って複数設けられている。
【0042】
ここでは、成膜用電極に対向配置された複数の高周波電極を、基材の搬送方向に直交する方向に沿って配置している。
【0043】
これにより、例えば、高周波電極から放射状に放出されるプラズマ化された原料ガスのイオンを、搬送方向に直交する方向、すなわち基材の幅方向において広く薄膜を形成することができる。
【0044】
第11の発明に係る薄膜形成装置は、第10の発明に係る薄膜形成装置であって、複数の高周波電極は、基材の搬送方向に直交する方向に沿って一直線上に設けられている。
【0045】
ここでは、成膜用電極に対向配置された複数の高周波電極を、基材の搬送方向に直交する方向に沿って一直線上に配置している。
【0046】
これにより、例えば、高周波電極から放射状に放出されるプラズマ化された原料ガスのイオンを、搬送方向に直交する方向、すなわち基材の幅方向において広く薄膜を形成することができる。
【0047】
第12の発明に係る薄膜形成装置は、第10または第11の発明に係る薄膜形成装置であって、複数の高周波電極は、基材の搬送方向に直交する方向に沿ってほぼ等間隔で設けられている。
【0048】
ここでは、成膜用電極に対向配置された複数の高周波電極を、基材の搬送方向に直交する方向に沿ってほぼ等間隔で配置している。
【0049】
これにより、例えば、高周波電極から放射状に放出されるプラズマ化された原料ガスのイオンを、基材の表面にほぼ均一に打ち付けることができる。よって、基材の表面上にほぼ均一に薄膜を形成することができる。
【0050】
第13の発明に係る薄膜形成装置は、第1から第12の発明のいずれか1つに係る薄膜形成装置であって、基材は、樹脂フィルムである。
【0051】
ここでは、表面に薄膜を形成する基材として、例えば、PET(Polyethylene terephthalate)フィルムや、ポリエチレン等のオレフィン系の樹脂フィルムを用いている。
【0052】
これにより、樹脂フィルムを基材として用いた場合でも、基材の表面に形成された薄膜と基材の表面との密着性を向上させることができる。
【0053】
第14の発明に係る薄膜形成装置は、第1から第13の発明のいずれか1つに係る薄膜形成装置であって、搬送機構は、ロール・ツー・ロール方式で基材を搬送する。
【0054】
ここでは、搬送機構として、フレキシブルなフィルム等の基材を送出しロールから搬出して、薄膜形成等の処理を行い、巻取りロールによって巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール方式を採用している。
これにより、長尺の基材に対して効率よく薄膜を形成することができる。
【0055】
第15の発明に係る薄膜形成方法は、減圧容器の内部の空間を減圧するステップと、減圧容器内に互いに対向するように配置された一対の高周波電極および成膜用電極のうち、高周波電極に高周波電力を供給し、成膜用電極に負パルス電圧を印加するステップと、減圧容器内において高周波電極と高周波電極に対向する成膜用電極のR面との間において、R面に接触させながら基材を搬送するステップと、高周波電極に供給された高周波電力によって誘導結合型プラズマを発生させて基材の表面に薄膜を形成するステップと、を備えている。
【0056】
ここでは、減圧容器の内部において成膜用電極に対して対向配置された高周波電極に高周波電力を供給して誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma; ICP)を発生させ、成膜用電極と高周波電極との間に搬送される基材の表面に薄膜を形成する薄膜形成方法において、成膜用電極に負パルス電圧を印加し、かつ高周波電極に対向配置された成膜用電極の面をR面としている。
【0057】
ここで、一対の高周波電極および成膜用電極が配置される減圧容器は、例えば、内部に真空空間を形成する真空容器等を用いることができる。
【0058】
また、基材の表面に形成される薄膜には、例えば、DLC(Diamond-Like-Carbon)を含む薄膜やSiO
2等のシリコン系の薄膜等が含まれる。
【0059】
また、成膜用電極のR面に対向配置される高周波電極は、基材の幅に応じて、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0060】
さらに、基材の搬送を行う搬送機構は、例えば、フィルム状の長尺の基材を、成膜用電極のR面の周方向に沿って、高周波電極と成膜用電極との間に搬送する。
【0061】
なお、表面に薄膜が形成される基材としては、例えば、樹脂フィルム、ガラスフィルム等を用いることができる。そして、基材には、薄膜等が形成された多層構造の基材も含まれる。
【0062】
これにより、高周波電極に高周波電力を供給し、成膜用電極に負パルス電圧を印加することで、高周波電極に高周波電力を供給して生じた誘導結合型プラズマを、さらに高密度化してイオンを大量に発生させ、高速で基材の表面へ衝突させることができるため、基材と薄膜との密着性を確保しつつ、高速での成膜が可能となる。
【0063】
また、基材が電極から浮いてしまうと、基材表面にパルス電圧を印加することができず、均一な成膜を行うことが困難となるため、成膜用電極のR面に接触させながら基材を搬送することで、搬送中における成膜用電極からの基材の浮きを防止することができる。
【0064】
この結果、通常のプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)による薄膜形成と比較して、成膜された薄膜と基材との密着性を向上させることができ、プラズマ密度を増大させて生産性を向上させることができる。