(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969978
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】伝熱装置
(51)【国際特許分類】
F28F 9/26 20060101AFI20211111BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20211111BHJP
F28D 1/04 20060101ALI20211111BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20211111BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20211111BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20211111BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20211111BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20211111BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20211111BHJP
【FI】
F28F9/26
F28F1/02 B
F28D1/04 Z
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/625
H01M10/647
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-213034(P2017-213034)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-86183(P2019-86183A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
【審査官】
長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−161158(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/033412(WO,A1)
【文献】
特表2015−505142(JP,A)
【文献】
特表2013−538416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/26
F28F 1/02
F28D 1/04
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/6568
H01M 10/6556
H01M 10/625
H01M 10/647
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第1流路、ならびに一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第2流路を有する伝熱媒体流通体と、両流路の流入部に通じるように伝熱媒体流通体に設けられた入口部材と、両流路の流出部に通じるように伝熱媒体流通体に設けられた出口部材とを備えており、伝熱媒体流通体が一定の長さを有するとともに、両流路のターン部が伝熱媒体流通体の長手方向の両端部に位置しており、
伝熱媒体流通体が、仕切壁を介して並列状に形成されかつ両端が開口した複数の通路を有するアルミニウム押出形材製扁平管と、扁平管の両端部に設けられかつ全通路を通じさせる連通部とからなり、扁平管の全通路が、連続して並んだ複数の通路からなる2つの通路群に分けられ、扁平管の厚み方向に対向する2つの平坦壁のうちいずれか一方の平坦壁における長手方向の中間部に、一方の通路群の全通路に通じる入り側貫通穴と、他方の通路群の全通路に通じる出側貫通穴とが形成され、入り側貫通穴に通じる一方の通路群により第1流路および第2流路の第1直線部が構成され、出側貫通穴に通じる他方の通路群により第1流路および第2流路の第2直線部が構成され、一方の連通部により第1流路のターン部が構成されるとともに、他方の連通部により第2流路のターン部が構成され、前記一方の平坦壁の外面に前記入口部材が入り側貫通穴に通じるように固定され、前記一方の平坦壁の外面に前記出口部材が出側貫通穴に通じるように固定されている伝熱装置。
【請求項2】
前記連通部が、扁平管の端部に内部が連通用空間となった中空状ヘッダ部材を接合することによって形成されている請求項1記載の伝熱装置。
【請求項3】
前記連通部が、扁平管の仕切壁の両端寄りの一定長さ部分を切除するとともに、扁平管の両端開口を閉鎖部材により閉鎖することによって形成されている請求項1記載の伝熱装置。
【請求項4】
一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第1流路、ならびに一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第2流路を有する伝熱媒体流通体と、両流路の流入部に通じるように伝熱媒体流通体に設けられた入口部材と、両流路の流出部に通じるように伝熱媒体流通体に設けられた出口部材とを備えており、伝熱媒体流通体が一定の長さを有するとともに、両流路のターン部が伝熱媒体流通体の長手方向の両端部に位置しており、
伝熱媒体流通体が、真っ直ぐな扁平管状で、かつ管長手方向、管幅方向および管高さ方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で管幅方向に間隔をおいて配置された第1および第2流通管部と、両流通管部に一体に設けられ、かつ両流通管部内での伝熱媒体の流れ方向が逆向きとなるように両流通管部の端部どうしを一体に連結するUターン管部とよりなる2つの略U形の管状部材からなり、両管状部材の第1および第2流通管部におけるUターン管部とは反対側の端部どうしが向き合うように配置され、両管状部材の第1流通管部のUターン管部とは反対側の開口が流入部となるとともに同第2流通管部のUターン管部とは反対側の開口が流出部となり、両管状部材の第1流通管部により第1流路および第2流路の第1直線部が構成され、両管状部材の第2流通管部により第1流路および第2流路の第2直線部が構成され、両管状部材のUターン管部により第1流路および第2流路のターン部が構成され、両管状部材の第1流通管部のUターン管部とは反対側の端部が入口部材に接合され、同第2流通管部のUターン管部とは反対側の端部が出口部材に接合されており、
複数の伝熱媒体流通体が、管状部材の第1および第2流通管部の幅方向に間隔をおいてかつ第1および第2流通管部が交互に配列した状態に配置されており、すべての伝熱媒体流通体の管状部材の第1流通管部のUターン管部とは反対側の端部が1つの入口部材に接合され、すべての伝熱媒体流通体の管状部材の第2通管部のUターン管部とは反対側の端部が1つの出口部材に接合されている伝熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温の物体から熱を奪って当該物体を冷却したり、低温の物体に熱を伝えて当該物体を加熱したりする伝熱装置に関する。
【0002】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえばハイブリッド自動車、電気自動車等の電動機駆動用バッテリー装置として、たとえばリチウムイオン二次電池などの各種の二次電池からなる複数個の小型単電池を直列または並列に接続して組電池の形態としたものが用いられている。特に、電気自動車においては航続距離の延長のニーズから組電池の大容量化が求められるので、複数の組電池が直列または並列に接続されるように組み合わされている。
【0004】
ところで、二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要がある。しかしながら、上述した組電池においては、各単電池間に比較的大きな温度差が生じ、その結果単電池が劣化して寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
そこで、組電池における各単電池間に生じる温度差をできるだけ小さくすることを目的として、本出願人は、先に、仕切壁を介して並列状に形成されかつ両端が開口した複数の通路を有する扁平板状のアルミニウム押出形材製冷却液流通体と、冷却液流通体における通路の長手方向の一端に、通路の並び方向に並んで設けられたアルミニウム製入口ヘッダおよび出口ヘッダと、冷却液流通体における通路の長手方向の他端に設けられたアルミニウム製中間ヘッダと、入口ヘッダに冷却液を流入させるアルミニウム製入口部材と、出口ヘッダから冷却液を流出させるアルミニウム製出口部材とを備えており、冷却液流通体の平坦な片面が発熱体取付面となり、全通路のうち冷却液流通体の片側に連続して並んで形成された複数の通路が流入側通路となるとともに、冷却液流通体の他側に連続して並んで形成された複数の残りの通路が流出側通路となり、入口ヘッダが流入側通路に通じるとともに、出口ヘッダが流出側通路に通じ、中間ヘッダが流入側通路および流出側通路に通じて両者を連通させており、入口ヘッダ、出口ヘッダおよび中間ヘッダが冷却液流通体にろう付され、入口部材が入口ヘッダにろう付され、出口部材が出口ヘッダにろう付されている液冷式冷却装置を提案した(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1記載の液冷式冷却装置の場合、冷却液流通体における通路の長手方向の一端に入口ヘッダおよび出口ヘッダが設けられているので、入口部材に冷却液を流入させる流入パイプ、および出口部材から冷却液を流出させる流出パイプを、組電池における単電池の並び方向の中間部に配置する必要がある場合、配管接続が複雑になる。したがって、種々の配管レイアウトに柔軟に対応することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−161158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記実情に鑑み、種々の配管レイアウトに柔軟に対応しうる伝熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第1流路、ならびに一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第2流路を有する伝熱媒体流通体と、両流路の流入部に通じるように伝熱媒体流通体に設けられた入口部材と、両流路の流出部に通じるように伝熱媒体流通体に設けられた出口部材とを備えており、伝熱媒体流通体が一定の長さを有するとともに、両流路のターン部が伝熱媒体流通体の長手方向の両端部に位置している伝熱装置。
【0011】
2)伝熱媒体流通体が、仕切壁を介して並列状に形成されかつ両端が開口した複数の通路を有するアルミニウム押出形材製扁平管と、扁平管の両端部に設けられかつ全通路を通じさせる連通部とからなり、扁平管の全通路が、連続して並んだ複数の通路からなる2つの通路群に分けられ、扁平管の厚み方向に対向する2つの平坦壁のうちいずれか一方の平坦壁における長手方向の中間部に、一方の通路群の全通路に通じる入り側貫通穴と、他方の通路群の全通路に通じる出側貫通穴とが形成され、入り側貫通穴に通じる一方の通路群により第1流路および第2流路の第1直線部が構成され、出側貫通穴に通じる他方の通路群により第1流路および第2流路の第2直線部が構成され、一方の連通部により第1流路のターン部が構成されるとともに、他方の連通部により第2流路のターン部が構成され、前記一方の平坦壁の外面に前記入口部材が入り側貫通穴に通じるように固定され、前記一方の平坦壁の外面に前記出口部材が出側貫通穴に通じるように固定されている上記1)記載の伝熱装置。
【0012】
3)前記連通部が、扁平管の端部に内部が連通用空間となった中空状ヘッダ部材を接合することによって形成されている上記2)記載の伝熱装置。
【0013】
4)前記連通部が、扁平管の仕切壁の両端寄りの一定長さ部分を切除するとともに、扁平管の両端開口を閉鎖部材により閉鎖することによって形成されている上記2)記載の伝熱装置。
【0014】
5)伝熱媒体流通体が、真っ直ぐな扁平管状で、かつ管長手方向、管幅方向および管高さ方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で管幅方向に間隔をおいて配置された第1および第2流通管部と、両流通管部に一体に設けられ、かつ両流通管部内での伝熱媒体の流れ方向が逆向きとなるように両流通管部の端部どうしを一体に連結するUターン管部とよりなる2つの略U形の管状部材からなり、両管状部材の第1および第2流通管部におけるUターン管部とは反対側の端部どうしが向き合うように配置され、両管状部材の第1流通管部のUターン管部とは反対側の開口が流入部となるとともに同第2流通管部のUターン管部とは反対側の開口が流出部となり、両管状部材の第1流通管部により第1流路および第2流路の第1直線部が構成され、両管状部材の第2流通管部により第1流路および第2流路の第2直線部が構成され、両管状部材のUターン管部により第1流路および第2流路のターン部が構成され、両管状部材の第1流通管部のUターン管部とは反対側の端部が入口部材に接合され、同第2通管部のUターン管部とは反対側の端部が出口部材に接合されている上記1)記載の伝熱装置。
【0015】
6)複数の伝熱媒体流通体が、管状部材の第1および第2流通管部の幅方向に間隔をおいて配置されており、すべての伝熱媒体流通体の管状部材の第1流通管部のUターン管部とは反対側の端部が1つの入口部材に接合され、すべての伝熱媒体流通体の管状部材の第2通管部のUターン管部とは反対側の端部が1つの出口部材に接合されている上記5)記載の伝熱装置。
【発明の効果】
【0016】
上記1)〜6)の伝熱装置によれば、一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第1流路、ならびに一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第2流路を有する伝熱媒体流通体と、両流路の流入部に通じるように伝熱媒体流通体に設けられた入口部材と、両流路の流出部に通じるように伝熱媒体流通体に設けられた出口部材とを備えており、伝熱媒体流通体が一定の長さを有するとともに、両流路のターン部が伝熱媒体流通体の長手方向の両端部に位置しているので、入口部材および出口部材を、伝熱媒体流通体の長手方向の両端部間の任意の位置に配置することができる。したがって、入口部材に伝熱媒体を流入させる流入パイプ、および出口部材から伝熱媒体を流出させる流出パイプを、冷熱または温熱を与えるべき物体、たとえば組電池における単電池の並び方向の中間部に配置する必要がある場合であっても配管接続が簡単になり、種々の配管レイアウトに柔軟に対応することが可能になる。
【0017】
また、伝熱媒体流通体の高さ方向の少なくとも一側面に物体を熱的に接触させておくと、当該物体と少なくともいずれか一方の流路内を流れる伝熱媒体との間で熱が伝達される。したがって、第1流路および第2流路に低温の伝熱媒体を流すことによって、複数の高温物体から熱を奪って当該物体を同時に冷却することが可能となり、これとは逆に高温の伝熱媒体を流すことによって複数の低温物体に熱を与えて当該物体を同時に加熱することが可能になる。
【0018】
上記2)の伝熱装置によれば、第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第1流路、ならびに一端が流入部となった第1直線部、当該流入部と同一端が流出部となった第2直線部および両直線部の他端どうしを通じさせるターン部を有する略U字状の第2流路を備えた伝熱媒体流通体を比較的簡単につくることができる。
【0019】
上記3)および4)の伝熱装置によれば、上記2)の伝熱媒体流通体の両流路のターン部を比較的簡単に形成することができる。
【0020】
上記5)の伝熱装置によれば、伝熱媒体流通体が、真っ直ぐな扁平管状で、かつ管長手方向、管幅方向および管高さ方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で管幅方向に間隔をおいて配置された第1および第2流通管部と、両流通管部に一体に設けられ、かつ両流通管部内での伝熱媒体の流れ方向が逆向きとなるように両流通管部の端部どうしを一体に連結するUターン管部とよりなる2つの略U形の管状部材からなるので、伝熱媒体流通体を、1つの扁平管を曲げることによりつくられた2つの管状部材を用いて形成することが可能となり、部品点数を低減しうるとともに製造作業が容易になる。たとえば、管状部材の製造方法の一例が、特許第5133771号公報に記載されている。
【0021】
上記6)の伝熱装置によれば、複数の伝熱媒体流通体が、管状部材の第1および第2流通管部の幅方向に間隔をおいて配置されており、すべての伝熱媒体流通体の管状部材の第1流通管部のUターン管部とは反対側の端部が1つの入口部材に接合され、すべての伝熱媒体流通体の管状部材の第2通管部のUターン管部とは反対側の端部が1つの出口部材に接合されているので、流入パイプから入口部材に流入した伝熱媒体は、すべての伝熱媒体流通体の第1流路および第2流路を流れた後に出口部材に流出し、出口部材から流出パイプにされる。したがって、多くの物体、たとえば組電池に、同時に冷熱または温熱を与えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明による伝熱装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の伝熱装置の伝熱媒体流通体を示す各通路群の隣接する通路間の仕切壁を省略した水平断面図である。
【
図4】
図1の伝熱装置に用いられる伝熱媒体流通体の連通部の変形例を示す部分拡大垂直断面図である。
【
図5】この発明による伝熱装置の他の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【
図6】
図5の伝熱装置の伝熱媒体流通体を示す各流通管部の隣接する通路間の仕切壁を省略した一部切り欠き平面図である。
【
図7】
図5の伝熱装置に用いられる伝熱媒体流通体の管状部材の一方の流通管部を示す横断面図である。
【
図8】
図5の伝熱装置に用いられる伝熱媒体流通体の管状部材の一部分を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による伝熱装置を、複数の直方体状の角形単電池からなる組電池に冷熱を伝えたり、温熱を伝えたりするために用いられるものである。
【0024】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0025】
図1はこの発明による伝熱装置の全体構成を示し、
図2および
図3はその一部分の構成を示す。
【0026】
図1〜
図3において、伝熱装置(1)は、アルミニウム製伝熱媒体流通体(2)と、伝熱媒体流通体(2)に設けられかつ伝熱媒体を伝熱媒体流通体(2)に供給するアルミニウム製入口部材(3)と、伝熱媒体流通体(2)に設けられかつ伝熱媒体を伝熱媒体流通体(2)から排出するアルミニウム製出口部材(4)とを備えており、伝熱媒体流通体(2)が、一端が流入部(7a)となった第1直線部(7)、流入部(7a)と同一端が流出部(8a)となった第2直線部(8)および両直線部(7)(8)の他端どうしを通じさせるターン部(9)を有する略U字状の第1流路(5)と、一端が流入部(11a)となった第1直線部(11)、流入部(11a)と同一端が流出部(12a)となった第2直線部(12)および両直線部(11)(12)の他端どうしを通じさせるターン部(13)を有する略U字状の第2流路(10)を有する。
【0027】
伝熱媒体流通体(2)は、仕切壁(14)(15)を介して並列状に形成されかつ両端が開口した複数の通路(16)を有するアルミニウム押出形材製扁平管(17)と、扁平管(17)の両端部に設けられて全通路(16)を通じさせる連通部(18)とよりなる。なお、
図2においては仕切壁(14)(15)および通路(16)の図示は省略されている。
【0028】
伝熱媒体流通体(2)を形成する扁平管(17)の全通路(16)は、連続して並んだ複数の通路(16)からなる2つの通路群(19)(20)に分けられており、両通路群(19)(20)どうしが伝熱媒体流通体(2)の長手方向両端部において連通部(18)を介して通じさせられている。各通路群(19)(20)は、扁平管(17)の幅方向の略半分の部分に設けられており、両通路群(19)(20)間の仕切壁(15)の肉厚は、各通路群(19)(20)の隣り合う2つの通路(16)間の仕切壁(14)の肉厚よりも厚くなっている。扁平管(17)の厚み方向に対向する2つの平坦壁(21)(22)のうちいずれか一方の平坦壁、ここでは上側の平坦壁(21)における長手方向の中間部に、一方の通路群(19)の全通路(16)に通じる入り側貫通穴(23)と、他方の通路群(20)の全通路(16)に通じる出側貫通穴(24)とが形成されている。
【0029】
伝熱媒体流通体(2)の連通部(18)は、扁平管(17)の端部に内部が両通路群(19)(20)の全通路(16)に通じる連通用空間(25a)となった中空状ヘッダ部材(25)を接合することによって形成されている。
【0030】
そして、扁平管(17)の入り側貫通穴(23)に通じる一方の通路群(19)により第1流路(5)および第2流路(10)の第1直線部(7)(11)が構成されるとともに、両第1直線部(7)(11)の入り側貫通穴(23)に臨んだ部分が流入部(7a)(11a)となっている。扁平管(17)の出側貫通穴(24)に通じる他方の通路群(20)により第1流路(5)および第2流路(10)の第2直線部(8)(12)が構成されるとともに、両第2直線部(8)(12)の出側貫通穴(24)に臨んだ部分が流出部(8a)(12a)となっている。また、両通路群(19)(20)どうしを通じさせる一方の連通部(18)により第1流路(5)のターン部(9)が構成されるとともに、同他方の連通部(18)により第2流路(10)のターン部(13)が構成されている。
【0031】
入口部材(3)は、上側平坦壁(21)の外面に入り側貫通穴(23)に通じるように、たとえばろう材による接合により固定され、出口部材(4)は上側平坦壁(21)の外面に出側貫通穴(24)に通じるように、たとえばろう材による接合により固定されている。入口部材(3)は、入り側貫通穴(23)を介して一方の通路群(19)の全通路(16)に通じるヘッダ部(3a)と、ヘッダ部(3a)に一体に設けられた短管部(3b)とよりなる。出口部材(4)は、出側貫通穴(24)を介して他方の通路群(20)の全通路(16)に通じるヘッダ部(4a)と、ヘッダ部(4a)に一体に設けられた短管部(4b)とよりなる。
【0032】
なお、図示は省略したが、複数の伝熱媒体流通体(2)が、扁平管(17)の幅方向に間隔をおいて配置され、すべての入口部材(3)が入口部材(3)に伝熱媒体を流入させる流入パイプに接続され、すべての出口部材(4)が出口部材から伝熱媒体を流出させる流出パイプに接続されていてもよい。
【0033】
上述した伝熱装置(1)は、たとえば複数の角形リチウムイオン二次電池の扁平状角形単電池(26)からなる組電池(27)を、次のようにして複数同時に冷却するのに用いられる。
【0034】
すなわち、組電池(27)は、伝熱装置(1)の伝熱媒体流通体(2)の扁平管(17)の上面における入口部材(3)および出口部材(4)よりも両連通部(18)側の部分に、それぞれ第1流路(5)の両直線部(7)(8)および第2流路(10)の両直線部(11)(12)に跨るように配置される。なお、図示は省略したが組電池(27)と扁平管(17)との間には電気絶縁部材が介在させられる。
【0035】
この状態で、入口部材(3)に伝熱媒体である冷却液を供給すると、冷却液が伝熱媒体流通体(2)の両流路(5)(10)内を、第1直線部(7)(11)、ターン部(9)(13)および第2直線部(8)(12)の順に流れた後、出口部材(4)を通って排出され、冷却液が伝熱媒体流通体(2)内を流れる間に組電池(27)のすべての単電池(26)が冷却される。したがって、組電池(27)のすべての単電池(16)間に大きな温度差が生じることが抑制される。
【0036】
寒冷地において、使用開始前に単電池(26)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、入口部材(3)に温熱を供給しうる伝熱媒体である高温の加熱液を供給する。すると、加熱液が伝熱媒体流通体(2)の両流路(5)(10)内を、第1直線部(7)(11)、ターン部(9)(13)および第2直線部(8)(12)の順に流れた後、出口部材(4)を通って排出され、加熱液が伝熱媒体流通体(2)内を流れる間に組電池(27)のすべての単電池(26)が適正温度に加熱される。
【0037】
図4は伝熱媒体流通体(2)の扁平管(17)の両端部に設けられる連通部の変形例を示す。
【0038】
図4に示す連通部(30)は、扁平管(17)の全仕切壁(14)(15)における扁平管(17)の長手方向両端寄りの一定長さ部分を切除するとともに、扁平管(17)の両端開口を平板状のアルミニウム製閉鎖部材(31)により閉鎖することによって形成されている。
【0039】
図5〜
図8はこの発明による伝熱装置の他の実施形態を示す。
【0040】
図5はこの発明による伝熱装置の全体構成を示し、
図6〜
図8はその一部分の構成を示す。
【0041】
図5〜
図8において、伝熱装置(40)は、アルミニウム製伝熱媒体流通体(41)と、伝熱媒体流通体(41)に設けられかつ伝熱媒体を伝熱媒体流通体(41)に供給するアルミニウム製入口部材(42)と、伝熱媒体流通体(41)に設けられかつ伝熱媒体を伝熱媒体流通体(41)から排出するアルミニウム製出口部材(43)とを備えており、伝熱媒体流通体(41)が、一端が流入部(45a)となった第1直線部(45)、流入部(45a)と同一端が流出部(46a)となった第2直線部(46)および両直線部(45)(46)の他端どうしを通じさせるターン部(47)を有する略U字状の第1流路(44)と、一端が流入部(49a)となった第1直線部(49)、流入部(49a)と同一端が流出部(50a)となった第2直線部(50)および両直線部(49)(50)の他端どうしを通じさせるターン部(51)を有する略U字状の第2流路(48)を有する。
【0042】
伝熱媒体流通体(41)は、真っ直ぐな扁平管状で、かつ管長手方向、管幅方向および管高さ方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で管幅方向に間隔をおいて配置された第1および第2流通管部(53)(54)と、両流通管部(53)(54)に一体に設けられ、かつ両流通管部(53)(54)内での伝熱媒体の流れ方向が逆向きとなるように両流通管部(53)(54)の端部どうしを一体に連結するUターン管部(55)とよりなる2つの略U形の管状部材(52)からなり、両管状部材(52)の第1および第2流通管部(53)(54)におけるUターン管部(55)とは反対側の端部どうしが向き合うように配置されたものである。
【0043】
各管状部材(52)の第1および第2流通管部(53)(54)およびUターン管部(55)には、複数の通路(56)が仕切壁(57)を介して幅方向に並んで形成されている。なお、
図6においては,通路(56)および仕切壁(57)の図示は省略されている。すべての伝熱媒体流通体(41)は、第1および第2流通管部(53)(54)の管幅方向に間隔をおいて
かつ第1および第2流通管部(53)(54)が交互に配列した状態に配置されている。
【0044】
両管状部材(52)は、アルミニウム押出形材製の真っ直ぐな扁平管を曲げることにより形成されており、第1および第2流通管部(53)(54)は、管厚み方向の両側面が同一平面内に位置しているする。また、Uターン管部(55)は、第1および第2流通管部(53)(54)の傾斜端縁どうしを一体に連結する扁平連結部により構成されている。
【0045】
伝熱媒体流通体(41)の両管状部材(52)の第1流通管部(53)内が第1流路(44)および第2流路(48)の第1直線部(45)(49)となるとともに、第1流通管部(53)のUターン管部(55)とは反対側の開口が流入部(45a)(49a)となり、第2流通管部(54)内が第1流路(44)および第2流路(48)の第2直線部(46)(50)となるとともに、第2流通管部(54)のUターン管部(55)とは反対側の開口が流出部(46a)(50a)となっている。また、両管状部材(52)のUターン管部(55)内が第1流路(44)および第2流路(48)のターン部(47)(51)となっている。
【0046】
伝熱媒体流通体(41)の両管状部材(52)における第1流通管部(53)の流入部(45a)(49a)側の端部が1つの管状の入口部材(42)に接続され、同第2流通管部(54)の流出部(46a)(50a)側の端部が1つの管状の出口部材(43)に接続されている。入口部材(42)および出口部材(43)は、長手方向を両管状部材(52)の第1および第2流通管部(53)(54)の長手方向と直交する方向に向けるとともに、いずれか一方の部材、ここでは出口部材(43)が上方に位置するように配置されており、両管状部材(52)の第1および第2流通管部(53)(54)のうち上方に位置する出口部材(43)に接続される第2流通管部(54)が、出口部材(43)側端部の近傍で斜め上方に曲げられている。すべての伝熱媒体流通体(41)の第1および第2流通管部(53)(54)は、管高さ方向を鉛直方向に向けており、両流通管部(53)(54)の上面および下面(管厚み方向の両側面)はそれぞれ同一水平面上に位置している。
【0047】
上述した伝熱装置(40)は、たとえば複数の角形リチウムイオン二次電池の扁平状角形単電池(26)からなる組電池(27)を、次のようにして複数同時に冷却するのに用いられる。
【0048】
すなわち、組電池(27)は、伝熱装置(40)のすべての伝熱媒体流通体(41)の各管状部材(52)の上面に、各管状部材(52)の両流通管部(53)(54)に跨るように配置される。なお、図示は省略したが組電池(27)と両流通管部(53)(54)との間には電気絶縁部材が介在させられる。
【0049】
この状態で、入口部材(42)に伝熱媒体である冷却液を供給すると、冷却液が伝熱媒体流通体(41)の両流路(44)(48)内を、第1直線部(45)(49)、ターン部(47)(51)および第2直線部(46)(50)の順に流れた後、出口部材(43)を通って排出され、冷却液が伝熱媒体流通体(41)内を流れる間に組電池(27)のすべての単電池(26)が冷却される。したがって、組電池(27)のすべての単電池(
26)間に大きな温度差が生じることが抑制される。
【0050】
寒冷地において、使用開始前に単電池(26)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、入口部材(42)に温熱を供給しうる伝熱媒体である高温の加熱液を供給する。すると、加熱液が伝熱媒体流通体(41)の両流路(44)(48)内を、第1直線部(45)(49)、ターン部(47)(51)および第2直線部(46)(50)の順に流れた後、出口部材(43)を通って排出され、加熱液が伝熱媒体流通体(41)内を流れる間に組電池(27)のすべての単電池(26)が適正温度に加熱される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明による伝熱装置は、たとえば複数のLiイオン二次電池の単電池からなる組電池を備えた電気自動車において、単電池の冷却や適正温度への加熱に用いられる。
【符号の説明】
【0052】
(1)(40):伝熱装置
(2)(41):伝熱媒体流通体
(3)(42):入口部材
(4)(43):出口部材
(5)(44):第1流路
(7)(11)(45)(49):第1直線部
(7a)(11a)(45a)(49a):流入部
(8)(12)(46)(50):第2直線部
(8a)(12a)(46a)(50a):流出部
(9)(13)(47)(51):ターン部
(10)(48):第2流路
(14)(15):仕切壁
(16):通路
(17):扁平管
(18)(30):連通部
(19)(20):通路群
(21)(22):平坦壁
(23):入り側貫通穴
(24):出側貫通穴
(25):ヘッダ部材
(25a):連通用空間
(31):閉鎖部材
(52):管状部材
(53):第1流通管部
(54):第2流通管部
(55):Uターン管部