特許第6969988号(P6969988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969988
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】回転子及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20211111BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H02K1/27 501H
   H02K1/27 501G
   H02K15/03 Z
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-223398(P2017-223398)
(22)【出願日】2017年11月21日
(65)【公開番号】特開2019-71763(P2019-71763A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2018年12月21日
【審判番号】不服2020-9720(P2020-9720/J1)
【審判請求日】2020年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-195132(P2017-195132)
(32)【優先日】2017年10月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】高野 志進
(72)【発明者】
【氏名】梶屋 貴史
(72)【発明者】
【氏名】前田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】松本 要
【合議体】
【審判長】 小川 恭司
【審判官】 柿崎 拓
【審判官】 神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−82773(JP,A)
【文献】 特表2011−529681(JP,A)
【文献】 特開2016−100974(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/315514(US,A1)
【文献】 特開2009−17708(JP,A)
【文献】 特開2012−77365(JP,A)
【文献】 特開2017−163752(JP,A)
【文献】 実開平4−71966(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3081404(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/27
H02K15/00
B32B17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、
前記回転部材の外周側に配置される複数の永久磁石と、
複数の前記永久磁石の外周面側に設けられ、一方向に配列した複数の糸状の繊維が樹脂により平らに束ねられるテープ状繊維束により形成される被覆筒と、を備え、
前記被覆筒は、軸方向における一方の端部から他方の端部まで周方向に沿って前記テープ状繊維束が螺旋状に周回していると共に、前記テープ状繊維束に含侵された樹脂が硬化している第1の層と、前記第1の層の上層に巻き付けられ、軸方向における一方の端部から他方の端部まで周方向に沿って前記テープ状繊維束が前記第1の層と同じ周方向且つ軸方向に螺旋状に周回していると共に、前記テープ状繊維束に含侵された樹脂が硬化している第2の層と、を備え、
前記第1の層を形成する前記テープ状繊維束と前記第2の層を形成する前記テープ状繊維束は、軸方向と交差する角度がそれぞれ異なり、
前記被覆筒の巻き始めと巻き終わりの部分には、それぞれ巻き始めの端面と巻き終わりの端面が形成されており、
前記テープ状繊維束の巻き始めの端面と巻き終わりの端面は、前記被覆筒の軸方向に向いている、
回転子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転子と、
前記回転子の外周側に設けられる固定子と、
を備える回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子、回転子を備える回転電機及び被覆筒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転子に永久磁石を使用した回転電機の一種として、回転部材(スリーブ、回転軸等)の外周側に永久磁石を配置したSPM(Surface Permanent Magnet)型の電動機が知られている。この種のSPM型の電動機においては、回転数を増加させた高速回転時に、遠心力により永久磁石が回転子から脱落することを抑制するため、永久磁石の外周を覆うように被覆筒が装着されている。被覆筒を形成する材料としては、強度が高く、軽量である等の理由から、繊維強化樹脂(FRP)が広く用いられており、特に炭素繊維強化樹脂(以下、「CFRP」ともいう)が多く用いられている。
【0003】
従来、CFRPの被覆筒を製造する方法としては、例えば、シート状のCFRPを芯材となる治具に巻き付けて円筒状とする方法(以下、「シート巻き」ともいう)が知られている。しかし、シート巻きでは、CFRPの巻き始めと巻き終わりの部分に段差ができるため、その部分では繊維が真っ直ぐに伸びずに蛇行が生じる。繊維に蛇行が生じた部分では、繊維に蛇行が生じていない部分よりも被覆筒の強度が低下するため、回転子が回転した際の応力を適切に受け止めることが難しくなる。そこで、テープ状のCFRP(後述するCFRP繊維束)を、治具の周方向に沿って螺旋状に巻き付けて円筒状とする方法(以下、「テープ巻き」ともいう)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−82773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたテープ巻きでは、テープ状のCFRPの巻き始めと巻き終わりの部分に段差ができるため、シート巻きの場合と同様に、その部分の強度が低下することが考えられる。また、テープ状のCFRPの巻き始めと巻き終わりの端面は、回転子の周方向に切断面が露出するため、端面の接着強度が十分でない場合には、回転子が回転した際の風圧で端面が剥離することが考えられる。
【0006】
本発明の目的は、被覆筒の強度の低下及び端面の剥離を抑制できる回転子、回転電機及び被覆筒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、回転部材(例えば、後述するスリーブ31)と、前記回転部材の外周側に配置される複数の永久磁石(例えば、後述する永久磁石32)と、複数の前記永久磁石の外周面側に設けられ、一方向に配列した複数の糸状の繊維が樹脂により平らに束ねられるテープ状繊維束(例えば、後述するCFRP繊維束133)により形成される被覆筒(例えば、後述する被覆筒33)と、を備え、前記被覆筒は、周方向(例えば、後述する周方向DR)に沿って前記テープ状繊維束が螺旋状に周回していると共に、軸方向(例えば、後述する回転軸線Sに沿う方向)に沿って前記テープ状繊維束が配列するように形成されており、前記テープ状繊維束の周回始めの端面と周回終わりの端面は、前記被覆筒の軸方向に向いている回転子(例えば、後述する回転子30)に関する。
【0008】
(2) (1)の回転子において、前記被覆筒の前記テープ状繊維束は、軸方向に沿って重ならないように間隔を空けて配列されていてもよい。
【0009】
(3) (1)又は(2)の回転子において、前記被覆筒は、軸方向における一方の端部から他方の端部まで前記テープ状繊維束が連続して螺旋状に周回している第1の層と、軸方向における他方の端部から一方の端部まで前記テープ状繊維束が連続して螺旋状に周回している第2の層と、を備え、前記第1の層及び前記第2の層は、前記被覆筒の径方向において交互に積層されていてもよい。
【0010】
(4) (3)の回転子において、前記被覆筒は、前記第1の層を形成する前記テープ状繊維束と前記第2の層を形成する前記テープ状繊維束が軸方向と交差する角度(例えば、後述する角度θ1,θ2)がそれぞれ異なっていてもよい。
【0011】
(5) (3)又は(4)の回転子において、前記被覆筒は、前記第1の層を形成する前記テープ状繊維束と前記第2の層を形成する前記テープ状繊維束の幅(例えば、後述する幅W1,W2)がそれぞれ異なっていてもよい。
【0012】
(6) (3)から(5)までのいずれかの回転子において、前記被覆筒は、前記第1の層を形成する前記テープ状繊維束と前記第2の層を形成する前記テープ状繊維束の厚さ(例えば、後述する厚さT1,T2)がそれぞれ異なっていてもよい。
【0013】
(7) (1)から(6)までのいずれかの回転子と、前記回転子の外周側に設けられる固定子(例えば、後述する固定子20)と、を備える回転電機(例えば、後述する電動機1)に関する。
【0014】
(8) 本発明は、外周側に複数の永久磁石が配置された回転子の外周面に設けられる被覆筒の製造方法であって、複数の糸状の繊維強化樹脂が平らに束ねられた繊維束を回転部材又は円筒治具(例えば、後述する治具50)の周方向に沿って螺旋状に巻き付けて、前記テープ状繊維束を前記回転部材又は前記円筒治具の軸方向に沿って配列させた際に、前記テープ状繊維束の巻き始めの端面(例えば、後述する巻き始めの端面133s)と巻き終わりの端面(例えば、後述する巻き終わりの端面133e)が、前記被覆筒の軸方向と直交するように、前記テープ状繊維束の巻き始めの端面と巻き終わりの端面を斜めに切断する工程と、前記テープ状繊維束を前記回転部材又は前記円筒治具の周方向に沿って螺旋状に巻き付けて、前記テープ状繊維束を前記回転部材又は前記円筒治具の軸方向に沿って配列させることにより、前記テープ状繊維束の巻き始めの端面と巻き終わりの端面を、前記被覆筒の軸方向に向かせる工程と、を備える被覆筒の製造方法に関する。
【0015】
(9) 本発明は、外周側に複数の永久磁石が配置された回転子の外周面に設けられる被覆筒の製造方法であって、複数の糸状の繊維強化樹脂が平らに束ねられた繊維束を回転部材又は円筒治具の周方向に沿って螺旋状に巻き付けて、前記テープ状繊維束を前記回転部材又は前記円筒治具の軸方向に沿って配列させる工程と、前記回転部材又は前記円筒治具に巻き付けられた前記テープ状繊維束の巻き始めの端部と巻き終わりの端部を、前記回転部材又は前記円筒治具の軸方向と直交する方向に切断する工程と、を備える被覆筒の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被覆筒の強度の低下及び端面の剥離を抑制できる回転子、回転電機及び被覆筒の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における電動機1の構成を示す断面図である。
図2】回転子30の分解斜視図である。
図3A】第1実施形態の被覆筒33を製造する工程を示す概念図である。
図3B】第1実施形態の被覆筒33を製造する工程を示す概念図である。
図4A】第2実施形態の被覆筒33Aを製造する工程を示す概念図である。
図4B】第2実施形態の被覆筒33Aを製造する工程を示す概念図である。
図4C】第2実施形態の被覆筒33Aを製造する工程を示す概念図である。
図5A】第3実施形態における被覆筒33Bの第1の構成を示す概念図である。
図5B】第3実施形態における被覆筒33Bの第2の構成を示す概念図である。
図6】第4実施形態における被覆筒33Cの構成を示す概念図である。
図7A】第5実施形態における被覆筒33Dの第1の構成を示す概念図である。
図7B】第5実施形態における被覆筒33Dの第2の構成を示す概念図である。
図7C】第5実施形態における被覆筒33Dの第3の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。
【0019】
本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば「平行」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ平行とみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。
本明細書等においては、後述する回転軸35の回転中心となる線を「回転軸線S」と呼称し、この回転軸線Sに沿う方向を「軸方向」ともいう。この「回転軸線S」、「軸方向」の定義は、回転軸35に限らず、後述する鉄心21、回転子30、スリーブ31、永久磁石32、被覆筒33、治具50等にも適用される。
本明細書等においては、一方向に配列した複数の糸状の炭素繊維(CF)が樹脂により平らに束ねられたテープ状繊維束を「CFRP繊維束」といい、樹脂が含浸した糸状(一本)の炭素繊維を「糸状CFRP」ともいう。また、CFRP繊維束又は糸状CFRPに含まれる炭素繊維を単に「繊維」ともいう。
【0020】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の回転子30を備えた、回転電機としての電動機1について説明する。
図1は、第1実施形態における電動機1の構成を示す断面図である。なお、図1に示す電動機1の構成は一例であり、実施形態の回転子30を適用可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0021】
図1に示すように、電動機1は、主な構成要件として、フレーム10と、固定子20と、回転子30と、回転軸35と、軸受13と、を備える。
フレーム10は、電動機1の外装部材であり、フレーム本体11と、軸穴12と、を備える。
【0022】
フレーム本体11は、固定子20を包囲すると共に保持する筐体である。フレーム本体11は、軸受13を介して回転子30を保持する。フレーム本体11は、供給口14、排出口15及び孔部16を備える。供給口14は、固定子枠22の流路23に冷媒を供給するための開口であり、冷媒の供給配管(不図示)に接続されている。排出口15は、流路23を流通した冷媒を排出させるための開口であり、冷媒の排出配管(不図示)に接続されている。孔部16は、固定子20から引き出された動力線27を貫通させるための開口である。軸穴12は、回転軸35(後述)が貫通する穴である。
【0023】
固定子20は、回転子30を回転させるための回転磁界を形成する複合部材である。固定子20は、全体として円筒形に形成され、フレーム10の内部に固定されている。固定子20は、鉄心21と、固定子枠22と、を備える。
【0024】
鉄心21は、内側に巻線26を配置可能な部材である。鉄心21は、円筒形に形成され、固定子枠22の内側に配置されている。鉄心21は、内側面に複数の溝(不図示)が形成され、この溝に巻線26が配置される。なお、巻線26の一部は、鉄心21の軸方向において、鉄心21の両端部から突出している。鉄心21は、例えば、電磁鋼板等の薄板を複数枚重ねて積層体とし、この積層体を接着、かしめ等で一体化することにより作製される。
【0025】
固定子枠22は、その内側に、鉄心21を保持する部材である。固定子枠22は、円筒形に形成され、固定子20の外側に配置されている。鉄心21は、回転子30のトルクにより生じる反力を受け止めるために、固定子枠22と強固に接合されている。図1に示すように、本実施形態の固定子枠22は、外側面に、鉄心21から伝わる熱を冷却するための流路23を備える。流路23は、固定子枠22の外側面に形成された一条又は多条の螺旋溝である。フレーム本体11(フレーム10)の供給口14から供給された冷媒(不図示)は、固定子枠22の外側面を螺旋状に沿うように流路23内を流通した後、フレーム本体11の排出口15から外部に排出される。
【0026】
固定子20の鉄心21からは、巻線26と電気的に接続された動力線27が引き出されている。この動力線27は、電動機1の外部に設置された電源装置に接続される(不図示)。電動機1の動作時に、例えば、鉄心21に三相交流電流が供給されることにより、回転子30を回転させるための回転磁界が形成される。
【0027】
回転子30は、固定子20により形成された回転磁界との磁気的な相互作用により回転する部品である。回転子30は、固定子20の内周側に設けられる。回転子30の構成については、後述する。
【0028】
回転軸35は、回転子30を支持する部材である。回転軸35は、回転子30の軸中心を貫通するように挿入され、回転子30に固定される。回転軸35には、一対の軸受13が嵌合されている。軸受13は、回転軸35を回転自在に支持する部材であり、フレーム本体11に設けられる。回転軸35は、フレーム本体11及び軸受13により、回転軸線Sを中心として回転自在に支持されている。また、回転軸35は、軸穴12を貫通し、例えば、切削工具、外部に設置された動力伝達機構、減速機構等(いずれも不図示)に接続される。
【0029】
図1に示す電動機1において、固定子20(鉄心21)に三相交流電流を供給すると、回転磁界が形成された固定子20と回転子30との間の磁気的な相互作用により回転子30に回転力が発生し、その回転力が回転軸35を介して外部に出力される。なお、本実施形態では、電動機1を前述したSPM形の同期電動機として説明するが、電動機1は、例えば、IPM(Interior Permanent Magnet)形の同期電動機であってもよい。
【0030】
次に、回転子30の構成について説明する。
図2は、回転子30の分解斜視図である。図2に示すように、回転子30は、スリーブ(回転部材)31と、永久磁石32と、被覆筒33と、を備える。
スリーブ31は、複数の永久磁石32が取り付けられる略円筒形状の部材であり、回転軸35(図1参照)と複数の永久磁石32との間に設けられている。複数の永久磁石32は、スリーブ31の周方向DRに沿って配置されている。スリーブ31は、例えば、炭素鋼等の磁性材料により形成される。内周側にスリーブ31を有する回転子30は、回転軸35の外周に、締まり嵌めにより嵌合される。なお、本明細書等において、図2に示す周方向DRの矢印は、スリーブ31だけでなく、永久磁石32、被覆筒33にも適用される。
【0031】
永久磁石32は、磁界を発生する部材であり、図2に示すように、スリーブ31の外周側において、周方向DRに沿って8列設けられている(図2では、手前側の4列のみを図示)。8列の永久磁石32は、スリーブ31の周方向DRにおいて、N極用の永久磁石32とS極用の永久磁石32とが交互に配置されている。永久磁石32は、スリーブ31の外周面に、接着層34を介して貼り付けられている。本実施形態では、各列の永久磁石32が回転子30の軸方向に沿って2分割された例を示すが、これに限らず、永久磁石32は、回転子30の長手方向に沿って3つ以上に分割されていてもよいし、分割されていなくてもよい。
【0032】
被覆筒33は、複数の永久磁石32を被覆するための円筒形状の部材である。被覆筒33は、スリーブ31に配置された永久磁石32の外周面に装着される。永久磁石32の外周面に被覆筒33を装着することにより、回転子30の回転によって生じる遠心力により、永久磁石32が回転子30から脱落することを抑制できる。
【0033】
被覆筒33は、後述するように、テープ状のCFRP繊維束を筒状の治具にテンションを付与しながら巻き付けることにより成形される。CFRP繊維束の元となる素材繊維としては、炭素繊維が好ましいが、炭素繊維のほかに、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、チタン合金繊維等の比強度の高い材料を用いることができる。
【0034】
被覆筒33を回転子30に装着するには、例えば、テーパー面を有する回転軸の外周面に、同じくテーパー面を有するスリーブを挿入することにより、スリーブの外周側に設けられた被覆筒を外側に押し広げる手法(特開2016−82773号公報等参照)を用いることができる。このような手法を用いることにより、被覆筒33を、締め代に応じた収縮力で回転子30に装着できる。それにより、被覆筒33には、回転子30が回転する際に生じる遠心力に抗して、永久磁石32を保持するのに十分な反力が半径方向の内側に向かって作用する。このように、被覆筒33において、半径方向の内側に向かって反力が作用することにより、遠心力により永久磁石32が回転子30から脱落することが抑制される。半径方向の内側とは、回転子30の外側から回転軸線Sに接近する方向である。
【0035】
なお、締め代とは、図2に示すように、拡径される前(装着される前)の被覆筒33の内径D1に対して、スリーブ31に配置された永久磁石32の外径D2がオーバーする分(D2−D1)の寸法である。この締め代が大きいほど、被覆筒33を永久磁石32の外周面に装着することが難しくなるが、装着した被覆筒33から、より大きな反力を半径方向の内側に向かって作用させることができる。
【0036】
次に、第1実施形態における被覆筒33の構成について説明する。
図3A及び図3Bは、それぞれ第1実施形態の被覆筒33を製造する工程を示す概念図である。
第1実施形態の被覆筒33は、図3Aに示すように、テープ状のCFRP繊維束133を治具(円筒治具)50の外周面に巻き付けることにより成形される。具体的には、CFRP繊維束133は、治具50の周方向DR(図2参照)に沿って螺旋状に巻き付けられ、治具50の軸方向に沿って配列している。治具50にCFRP繊維束133を巻き付け、含浸した樹脂が硬化した後、治具50を除去することにより被覆筒33が完成する。
【0037】
CFRP繊維束133を構成する糸状CFRP133aの配列方向は、CFRP繊維束133の長手方向と平行となる(他の実施形態についても同じ)。また、CFRP繊維束133の長手方向が、治具50の回転軸線Sと直交する線と交わる角度θは、0°<θ<90°の範囲となる。
【0038】
本実施形態において、CFRP繊維束133の長手方向の長さ及び幅は、被覆筒33の軸方向の長さと、CFRP繊維束133の巻き回数等に応じて設定される。また、CFRP繊維束133は、被覆筒33の軸方向に沿って側面が重ならないように且つ隙間ができないように巻き付けられている(後述する第2〜第4実施形態において共通)。
【0039】
本実施形態において、CFRP繊維束133の巻き始めと巻き終わりの部分には、巻き始めの端面133sと巻き終わりの端面133e(以下、総称して「両端面」ともいう)が形成されている。CFRP繊維束133の両端面は、CFRP繊維束133を治具50に巻き付けた際に、それぞれ回転軸線Sと直交するように、CFRP繊維束133の長手方向に対して斜めに形成された切断面である。なお、図3Aでは、巻き終わりの部分において、切断前のCFRP繊維束133の輪郭を二点鎖線で示す。
【0040】
本実施形態の被覆筒33において、CFRP繊維束133は、巻き始めと巻き終わりの部分に、それぞれ巻き始めの端面133sと巻き終わりの端面133eがあらかじめ形成されている。そのため、図3Bに示すように、CFRP繊維束133を治具50に巻き付けると、被覆筒33は、周方向DR(図2参照)に沿ってCFRP繊維束133が周回していると共に、軸方向に沿ってCFRP繊維束133が配列するように成形される。そして、被覆筒33において、CFRP繊維束133の両端面(133s、133e)は、軸方向に向いた状態となる。本実施形態における被覆筒33の製造方法は、後述する第3〜第5実施形態にも適用できる。
【0041】
上述した第1実施形態の被覆筒33において、CFRP繊維束133の両端面は、被覆筒33の軸方向に向いているため、テープ状のCFRP繊維束133の巻き始めと巻き終わりの部分に段差が生じることがない。これによれば、CFRP繊維束133の巻き始めと巻き終わりの部分では、繊維が真っ直ぐに伸びて蛇行が生じることがないため、被覆筒33の強度の低下を抑制できる。したがって、回転子30が回転した際の応力を適切に受け止めることができる。また、第1実施形態の被覆筒33において、CFRP繊維束133の両端面は、回転子30の周方向DRに切断面が露出しない。そのため、仮に端面の接着強度が十分でなかったとしても、回転子30が回転した際の風圧により端面が剥離することを抑制できる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の被覆筒33Aの構成について説明する。
第2実施形態は、被覆筒33Aの製造方法が第1実施形態と相違する。第2実施形態の被覆筒33Aにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、図4A図4Cにおいては、被覆筒33Aが適用される回転子30(図2参照)の図示を省略する。また、第2実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
図4A図4B及び図4Cは、それぞれ第2実施形態の被覆筒33Aを製造する工程を示す概念図である。
第2実施形態の被覆筒33Aは、図4Aに示すように、巻き始めと巻き終わりの端面が切断されていないCFRP繊維束133を治具50の外周面に巻き付けることにより成形される。CFRP繊維束133は、治具50の外周面にテンションを付与しながら巻き付けられる。
【0044】
治具50にCFRP繊維束133を巻き付けた後、樹脂が硬化する前に、図4Bに示すように、CFRP繊維束133の巻き始めと巻き終わりの部分を、カットラインCLに沿って切断する。カットラインCLは、回転軸線Sと直交する方向に設定された仮想的なラインである。CFRP繊維束133の巻き始めと巻き終わりの部分をカットラインCLに沿って切断すると、図4Cに示すように、CFRP繊維束133の巻き始めの部分には巻き始めの端面133sが形成され、CFRP繊維束133の巻き終わりの部分には巻き終わりの端面133eが形成される。この両端面は、図4Bに示すように、CFRP繊維束133の長手方向に対してそれぞれ斜めに形成された切断面であり、被覆筒33Aにおいては、図4Cに示すように、それぞれ回転軸線Sと直交する面となる。
【0045】
本実施形態の被覆筒33Aにおいて、CFRP繊維束133は、治具50へ巻き付けた後、巻き始めと巻き終わりの部分に、それぞれ巻き始めの端面133sと巻き終わりの端面133eが形成される。そのため、図4Cに示すように、被覆筒33Aは、周方向に沿ってCFRP繊維束133が周回していると共に、軸方向に沿ってCFRP繊維束133が配列するように成形される。そして、被覆筒33Aにおいて、CFRP繊維束133の両端面(133s、133e)は、それぞれ回転軸線Sと直交する面となり、軸方向に向いた状態となる。本実施形態における被覆筒33の製造方法は、後述する第3〜第5実施形態にも適用できる。
【0046】
上述した第2実施形態の被覆筒33Aにおいても、CFRP繊維束133の両端面は、軸方向に向いており、回転子30の周方向DR(図2参照)に切断面が露出しない。そのため、第1実施形態と同じく、被覆筒33Aの強度の低下及びCFRP繊維束133の端面が剥離することを抑制できる。
【0047】
また、第2実施形態の被覆筒33Aにおいて、CFRP繊維束133は、巻き始め部分を余らせた状態で切断される。そのため、CFRP繊維束133を治具に巻き始める前に、余らせた巻き始め部分を器具等で固定することにより、CFRP繊維束133に、より大きなテンションをかけながら治具50に巻き付けることができる。これによれば、CFRP繊維束133において、より多くの繊維が真っ直ぐに伸びた状態で治具50に巻き付けられる。したがって、被覆筒33Aにおいては、より多くの繊維で応力を受け止めることができるようになるため、被覆筒33Aの強度をより向上させることができる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の被覆筒33Bについて説明する。
第3実施形態の被覆筒33Bは、2層構造である点が第1実施形態と相違する。第3実施形態の被覆筒33Bにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、図5A及び図5Bにおいては、被覆筒33Bが適用される回転子30の図示を省略する。また、第3実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
図5Aは、第3実施形態における被覆筒33Bの第1の構成を示す概念図である。
図5Aに示すように、第1の構成の被覆筒33Bは、治具50の周方向に沿って第1のCFRP繊維束133が螺旋状に巻き付けられ、その上層に第2のCFRP繊維束134が第1のCFRP繊維束133と同じ方向に螺旋状に巻き付けられることにより成形される。第1の構成の被覆筒33Bにおいて、第1のCFRP繊維束133及び第2のCFRP繊維束134の巻き始めと巻き終わりの部分には、図示していないが、例えば、第1実施形態(図3B参照)に示すような巻き始めの端面133sと巻き終わりの端面133eが形成される(後述する第2の構成についても同じ)。
【0050】
図5Aに示すように、第1のCFRP繊維束133は、治具50の外周面において、被覆筒33Bの軸方向における一方の端部から他方の端部まで連続して螺旋状に周回している。第1のCFRP繊維束133は、治具50の外周面において、第1の層を形成する。第2のCFRP繊維束134は、第1のCFRP繊維束133の外周面において、被覆筒33Bの軸方向における一方の端部から他方の端部まで連続して螺旋状に周回している。第2のCFRP繊維束134は、第1の層(第1のCFRP繊維束133)の外周面において、第2の層を形成する。
【0051】
第1の構成の被覆筒33Bにおいて、第2のCFRP繊維束134の長手方向が治具50の回転軸線Sと交差する角度θ2は、第1のCFRP繊維束133の長手方向が治具50の回転軸線Sと交差する角度θ1よりも大きくなる(θ2>θ1)ように設定されている。例えば、第1のCFRP繊維束133の角度θ1が85°であれば、第2のCFRP繊維束134の角度θ2は87°に設定される。
【0052】
第1の構成の被覆筒33Bによれば、第1のCFRP繊維束133の角度θ1と第2のCFRP繊維束134の角度θ2とが異なるため、角度θ1と角度θ2を同じ角度とした場合に比べて、繊維により応力が受け止められる角度範囲をより広くすることができる。これによれば、被覆筒33Bの周方向及び軸方向の強度をより高めることができる。特に、被覆筒33Bの軸方向の強度が高くなることにより、被覆筒33Bを回転子30に装着する際の軸方向の強度を確保できる。また、被覆筒33Bを回転子30に装着した後は、永久磁石32の回転子30からの脱落をより効果的に抑制できる。
なお、本実施形態の構成において、第1のCFRP繊維束133の角度θ1が、第2のCFRP繊維束134の角度θ2よりも大きくなる(θ1>θ2)ように設定してもよい。
【0053】
図5Bは、第3実施形態における被覆筒33Bの第2の構成を示す概念図である。
図5Bに示すように、第2の構成の被覆筒33Bは、治具50の周方向に沿って第1のCFRP繊維束133が螺旋状に巻き付けられ、その上層に第2のCFRP繊維束134が、第1のCFRP繊維束133とは反対の方向に螺旋状に巻き付けられることにより成形される。
【0054】
第2の構成の被覆筒33Bにおいて、第1のCFRP繊維束133の長手方向が治具50の回転軸線Sと交差する角度θ1は、第2のCFRP繊維束134の長手方向が治具50の回転軸線Sと交差する角度θ2と同じ角度(θ1=θ2)となるように設定されている。
【0055】
第2の構成の被覆筒33Bによれば、第1のCFRP繊維束133の上層に、CFRP繊維束133とは反対の方向に第2のCFRP繊維束134が巻き付けられているため、第1のCFRP繊維束133の繊維と第2のCFRP繊維束134の繊維とが互いに入り込むことがない。これによれば、各層の繊維束に含まれる繊維を、より伸ばした状態で治具50に巻き付けることができるため、繊維が、より大きな力を受け止めることができる。したがって、第2の構成の被覆筒33Bにおいても、周方向及び軸方向の強度をより高めることができる。特に、被覆筒33Bの軸方向の強度が高くなることにより、被覆筒33Bを回転子30に装着する際の軸方向の強度を確保できる。また、被覆筒33Bを回転子30に装着した後は、永久磁石32の回転子30からの脱落をより効果的に抑制できる。
【0056】
なお、第2の構成の被覆筒33Bにおいて、第1のCFRP繊維束133の角度θ1が、第2のCFRP繊維束134の角度θ2よりも大きくなる(θ1>θ2)ように設定してもよいし、第2のCFRP繊維束134の角度θ2が、第1のCFRP繊維束133の角度θ1よりも大きくなる(θ2>θ1)ように設定してもよい。
【0057】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の被覆筒33Cについて説明する。
第4実施形態の被覆筒33Cは、2層構造であり且つCFRP繊維束の幅、厚みが層ごとに異なる点が第1実施形態と相違する。第4実施形態の被覆筒33Cにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、図6においては、被覆筒33Cが適用される回転子30の図示を省略する。また、第4実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
図6は、第4実施形態における被覆筒33Cの構成を示す概念図である。
図6に示すように、第4実施形態の被覆筒33Cは、治具50の周方向に沿って第1のCFRP繊維束133が螺旋状に巻き付けられ、その上層に第2のCFRP繊維束134が第1のCFRP繊維束133と同じ方向に螺旋状に巻き付けられることにより成形される。第4実施形態の被覆筒33Cにおいて、第1のCFRP繊維束133及び第2のCFRP繊維束134の巻き始めと巻き終わりの部分には、図示していないが、例えば、第1実施形態(図3B参照)に示すような巻き始めの端面133sと巻き終わりの端面133eが形成される。
【0059】
図6に示すように、第1のCFRP繊維束133は、治具50の外周面において、被覆筒33Cの軸方向における一方の端部から他方の端部まで連続して螺旋状に周回している。第1のCFRP繊維束133は、治具50の外周面において、第1の層を形成する。第2のCFRP繊維束134は、第1のCFRP繊維束133の外周面において、被覆筒33Cの軸方向における一方の端部から他方の端部まで連続して螺旋状に周回している。第2のCFRP繊維束134は、第1の層(第1のCFRP繊維束133)の外周面において、第2の層を形成する。
【0060】
第4実施形態の被覆筒33Cは、第1のCFRP繊維束133の幅W1よりも、第2のCFRP繊維束134の幅W2が広くなる(W2>W1)ように設定されている。例えば、第1のCFRP繊維束133の幅W1が4mmであれば、第2のCFRP繊維束134の幅W2は6mmに設定される。
【0061】
また、第4実施形態の被覆筒33Cは、第1のCFRP繊維束133の厚さT1よりも、第2のCFRP繊維束134の厚さT2が厚く(T2>T1)なるように設定されている。例えば、第1のCFRP繊維束133の厚さT1が0.1mmであれば、第2のCFRP繊維束134の厚さT2は0.12mmに設定される。なお、繊維束は、繊維径、繊維数を適宜に組み合わせることにより任意の厚みに設定できる。例えば、同じ繊維数であっても、繊維径を太くすれば繊維束を厚くできるし、同じ繊維径であっても、繊維数を多くすれば繊維束を厚くできる。
【0062】
第4実施形態の被覆筒33Cにおいて、第1のCFRP繊維束133と第2のCFRP繊維束134は、幅及び厚さがそれぞれ異なるため、2層構造のCFRP繊維束の幅及び厚さを同じ寸法とした場合に比べて、被覆筒33Cの強度をより最適化できる。
なお、本実施形態の構成において、第2のCFRP繊維束134の幅W2よりも、第1のCFRP繊維束133の幅W1が広くなる(W1>W2)ように設定してもよい。また、第2のCFRP繊維束134の厚さT2よりも、第1のCFRP繊維束133の厚さT1が厚くなる(T1>T2)ように設定してもよい。
【0063】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の被覆筒33Dについて説明する。
第5実施形態の被覆筒33Dは、軸方向に沿ってCFRP繊維束の側面が重なり合うように配列されたり、間隔を空けて配列されたりする点が第1実施形態と相違する。第5実施形態の被覆筒33Dにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、図7A図7Cにおいては、被覆筒33Dが適用される回転子30の図示を省略する。また、第5実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
図7Aは、第5実施形態における被覆筒33Dの第1の構成を示す概念図である。
図7Aに示すように、第1の構成の被覆筒33Dにおいて、CFRP繊維束133は、被覆筒33Dの軸方向における一方の端部から他方の端部まで連続して螺旋状に周回していると共に、軸方向に沿って側面が互いに重なり合うように配列している。CFRP繊維束133が重なり合う部分には、段差部133bが形成される。第1の構成の被覆筒33Dにおいて、CFRP繊維束133が重なり合う幅W3は、例えば、0.1〜1mmの範囲に設定される。
【0065】
第1の構成の被覆筒33Dにおいて、CFRP繊維束133の巻き始めと巻き終わりの部分には、図示していないが、例えば、第1実施形態(図3B参照)に示すような巻き始めの端面133sと巻き終わりの端面133eが形成される(後述する第2の構成及び第3の構成についても同じ)。
【0066】
上述した第1の構成の被覆筒33Dにおいても、CFRP繊維束133の両端面は、軸方向に向いており、回転子30の周方向DR(図2参照)に切断面が露出しない。そのため、第1実施形態と同じく、被覆筒33Dの強度の低下及びCFRP繊維束133の端面が剥離することを抑制できる。また、第1の構成の被覆筒33Dにおいて、第1のCFRP繊維束133は、軸方向に沿って側面が互いに重なり合うように配列しているため、被覆筒33Dの周方向における繊維の密度をより高めることができる。
【0067】
図7Bは、第5実施形態における被覆筒33Dの第2の構成を示す概念図である。
図7Bに示すように、第2の構成の被覆筒33Dにおいて、CFRP繊維束133は、被覆筒33Dの軸方向における一方の端部から他方の端部まで連続して螺旋状に周回していると共に、軸方向に沿って間隔を空けて配列している。CFRP繊維束133が重なり合わない部分には、隙間部133cが形成される。第2の構成の被覆筒33Dにおいて、CFRP繊維束133が重なり合わない隙間部133cの幅W4は、例えば、0.1〜1mmの範囲に設定される。
【0068】
上述した第2の構成の被覆筒33Dにおいても、CFRP繊維束133の両端面は、軸方向に向いており、回転子30の周方向DR(図2参照)に切断面が露出しない。そのため、第1実施形態と同じく、被覆筒33Dの強度の低下及びCFRP繊維束133の端面が剥離することを抑制できる。
【0069】
また、第2の構成の被覆筒33Dにおいて、CFRP繊維束133(以下、単に「繊維束」ともいう)は、軸方向に沿って間隔を空けて配列している。第2の構成によれば、繊維束の側面が互いに重なり合う構成のように、繊維束の重なり合った部分が凸状に突出することがないので、繊維束を複数層巻き付けた場合でも、層が増えるごとに突出した部分が徐々に大きくなることがない。そのため、第2の構成は、繊維束を複数層巻き付ける場合において、繊維束の側面が互いに重なり合う構成に比べて、より多くの繊維束を巻き付けることができる。その結果、重なり合った繊維束を被覆筒33Dの径方向の断面で見たときに、単位面積(断面積)当たりの繊維数を増やすことができる。これによれば、回転子30(永久磁石32)の外周と固定子20の内周との間の隙間を同じとした場合において、繊維束の側面が互いに重なり合う構成に比べて、被覆筒33Dにより多くの繊維束を巻き付けることができる。そのため、第2の構成によれば、被覆筒33Dの強度を増すことができる。
【0070】
また、第2の構成によれば、繊維束の重なり合った部分が凸状に突出することがなく、比較的平らな面に繊維束を巻くことができるため、繊維束を複数層巻き付けた場合に、下層の繊維束の凸状に突出した部分により上層の繊維束に弛みが生じにくくなり、概ねどの層においても繊維束を伸ばして巻くことができる。そのため、第2の構成によれば、巻き付けた繊維束の緩みを抑制できる。なお、第2の構成によれば、仮に、下層の繊維束に隙間がある場合でも、上層の繊維束は、常に下層の繊維束と交差するため、上層の繊維束が下層の繊維束の隙間に入り込むことはない。
【0071】
図7Cは、第5実施形態における被覆筒33Dの第3の構成を示す概念図である。
図7Cに示すように、第3の構成の被覆筒33Dは、治具50の周方向に沿って第1のCFRP繊維束133が螺旋状に巻き付けられ、その上層に第2のCFRP繊維束134が第1のCFRP繊維束133と同じ方向に螺旋状に巻き付けられることにより成形される。
【0072】
第3の構成の被覆筒33Dにおいて、第1のCFRP繊維束133は、被覆筒33Dの軸方向における一方の端部から他方の端部まで連続して螺旋状に周回していると共に、軸方向に沿って側面が互いに重なり合うように配列している。第1のCFRP繊維束133は、治具50の外周面において、第1の層を形成する。第1のCFRP繊維束133は、巻きピッチP1で周回している。第1のCFRP繊維束133が重なり合う部分には、段差部133bが形成される。
【0073】
また、第3の構成の被覆筒33Dにおいて、第2のCFRP繊維束134は、被覆筒33Dの軸方向における一方の端部から他方の端部まで連続して螺旋状に周回していると共に、軸方向に沿って間隔を空けて配列している。第2のCFRP繊維束134は、第1の層(第1のCFRP繊維束133)の外周面において、第2の層を形成する。第2のCFRP繊維束134は、巻きピッチP2で周回している。第2のCFRP繊維束134が重なり合わない部分には、隙間部133cが形成される。
【0074】
第3の構成において、第1のCFRP繊維束133の巻きピッチP1と第2のCFRP繊維束134の巻きピッチP2は同じ(P1=P2)となるように設定されている。そのため、第3の構成の被覆筒33Dにおいて、第1のCFRP繊維束133が重なり合う部分の段差部133bは、第2のCFRP繊維束134の隙間部133cの間に入り込むように配列される。
【0075】
第3の構成の被覆筒33Dによれば、第1のCFRP繊維束133が重なり合う部分に形成された段差部133bは、第2のCFRP繊維束134の隙間部133cの間に入り込むように配列される。そのため、第1のCFRP繊維束133に形成された段差部133bが、被覆筒33Dの外周面に突出しない形状となる。これによれば、周方向における繊維の密度をより高めるために、第1のCFRP繊維束133を、軸方向に沿って側面が互いに重なり合うように配列させた場合でも、第1のCFRP繊維束133に形成される段差部113bは、被覆筒33Dの外周面に突出しないため、被覆筒33Dの外径寸法をより均一に保つことができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0077】
(変形形態)
第5実施形態の第2の構成(図7B参照)において、隙間部133cの幅W4は、CFRP繊維束133の巻き数に応じて変更してもよいし、被覆筒33Dの軸方向において、部分的に変更してもよい。
第5実施形態の第2の構成のように、被覆筒33Dにおいて、軸方向に沿ってCFRP繊維束133の側面に間隔を空けて配列する構成は、例えば、第3実施形態(図5A図5B参照)、第4実施形態(図6参照)に示す2層構造の被覆筒にも適用できる。その場合、第1の層(第1のCFRP繊維束133)、第2の層(第2のCFRP繊維束134)において、隙間部133cの幅W4をそれぞれ異なる寸法としてもよい。
第3〜第5実施形態に示す2層構造の被覆筒において、第1のCFRP繊維束133及び第2のCFRP繊維束134を形成する炭素繊維、樹脂等の材質を変更してもよい。
【0078】
第5実施形態の第1の構成(図7A)おいて、CFRP繊維束133が重なり合わない隙間部133cを部分的に形成してもよいし、第5実施形態の第2の構成(図7B)おいて、CFRP繊維束133が重なり合う段差部133bを部分的に形成してもよい。
【0079】
実施形態では、回転子30を構成する回転部材として、スリーブ31を例として説明したが、これに限定されない。回転軸35の外周側にスリーブ31を介さずに永久磁石32を配置する構成において、回転部材は、回転軸35であってもよい。
【0080】
実施形態では、CFRP繊維束133を治具50の外周面に巻き付けることにより、被覆筒33を成形する例について説明したが、これに限定されない。CFRP繊維束133を、永久磁石32(図2参照)の外周側に直接巻き付けることにより被覆筒33を成形してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1:電動機、20:固定子、30:回転子、31:スリーブ、32:永久磁石、33,33A,33B,33C,33D:被覆筒、35:回転軸、50:治具、133:CFRP繊維束(テープ状繊維束)、133a:糸状CFRP、133b:段差部、133c:隙間部、133s:巻き始めの端面、133e:巻き終わりの端面、134:第2のCFRP繊維束
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C