(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969998
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】水素電力貯蔵システムおよび水素電力貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0662 20160101AFI20211111BHJP
H01M 8/04492 20160101ALI20211111BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20211111BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20211111BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20211111BHJP
C25B 5/00 20060101ALI20211111BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20211111BHJP
【FI】
H01M8/0662
H01M8/04492
H01M8/0432
H01M8/0656
C25B15/08 302
C25B5/00
C25B15/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-237907(P2017-237907)
(22)【出願日】2017年12月12日
(65)【公開番号】特開2019-106288(P2019-106288A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年2月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素利用等先導研究開発事業/高効率水素製造技術の研究/高温水蒸気電解システムの研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】坂上 英一
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕規
(72)【発明者】
【氏名】藤原 斉二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 功一
【審査官】
西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−176939(JP,A)
【文献】
特表2018−517233(JP,A)
【文献】
特開2014−072119(JP,A)
【文献】
特開昭61−135063(JP,A)
【文献】
特開2009−230926(JP,A)
【文献】
特開平04−115468(JP,A)
【文献】
特開平09−180743(JP,A)
【文献】
特開2005−129312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 − 8/0668
C25B 15/08
C25B 5/00
C25B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素が投入される水素極と、酸素が投入される酸素極とを有し、水蒸気と未反応水素とを含む排気を排出する燃料電池と、
前記排気中の前記水蒸気の一部を凝縮させ、前記水蒸気が残留する前記排気を排出する凝縮器と、
前記凝縮器から排出され、前記水蒸気と前記未反応水素とを含む前記排気を前記燃料電池に供給する排気供給部と、
前記凝縮器からの前記排気の温度を計測する計測部と、
前記計測部により計測された温度に基づいて、前記凝縮器からの前記排気に含まれる前記水蒸気の量を判定する判定部と、
前記判定部により判定された前記水蒸気の量に基づいて、前記凝縮器からの前記排気に含まれる前記水蒸気の量を調節する調節部と、
を備える水素電力貯蔵システム。
【請求項2】
前記水素極に前記水素を供給する水素供給部をさらに備え、
前記排気供給部からの前記排気は、前記水素供給部からの前記水素と混合されて前記水素極に供給される、請求項1に記載の水素電力貯蔵システム。
【請求項3】
前記凝縮器は、前記燃料電池の発電時に前記排気中の前記水蒸気の一部を凝縮させ、
前記排気供給部は、前記燃料電池の発電時に前記排気を前記燃料電池に供給する、
請求項1または2に記載の水素電力貯蔵システム。
【請求項4】
前記凝縮器からの前記排気に含まれる前記水蒸気のモル量は、前記燃料電池の発電時に反応する前記水素のモル量の30%以上かつ70%以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の水素電力貯蔵システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記計測部により計測された温度と、前記燃料電池の電池電流と、前記水素極に投入された前記水素の量とに基づいて、前記水蒸気の量を判定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の水素電力貯蔵システム。
【請求項6】
前記調節部は、前記判定部により判定された前記水蒸気の量に基づいて、前記燃料電池または前記凝縮器を制御して、前記凝縮器からの前記排気に含まれる前記水蒸気のモル量を、前記燃料電池の発電時に反応する前記水素のモル量の30%以上かつ70%以下に調節する、請求項1から5のいずれか1項に記載の水素電力貯蔵システム。
【請求項7】
水素が投入される水素極と、酸素が投入される酸素極とを有する燃料電池から、水蒸気と未反応水素とを含む排気を排出し、
前記排気中の前記水蒸気の一部を凝縮させる凝縮器から、前記水蒸気が残留する前記排気を排出し、
前記凝縮器から排出され、前記水蒸気と前記未反応水素とを含む前記排気を排気供給部により前記燃料電池に供給し、
前記凝縮器からの前記排気の温度を計測部により計測し、
前記計測部により計測された温度に基づいて、前記凝縮器からの前記排気に含まれる前記水蒸気の量を判定部により判定し、
前記判定部により判定された前記水蒸気の量に基づいて、前記凝縮器からの前記排気に含まれる前記水蒸気の量を調節部により調節する、
ことを含む水素電力貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素電力貯蔵システムおよび水素電力貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電所などの再生可能エネルギー発電所では、風況などの自然条件により発電能力が変化し、生成電力に余剰や不足が生じる。また、原子力発電所や火力発電所でも、消費電力に昼夜で恒常的な差異があることで、生成電力に余剰や不足が生じる。このように、生成電力や消費電力には時間帯によって変動があるため、電力に余剰があるときに発電所の余剰電力を貯蔵し、電力が不足するときに発電所に放電する電力貯蔵システムが必要とされている。
【0003】
そこで、電力の余剰時には水を電気分解して水素を生成し、電力の不足時にはこの水素を酸化して電力を取り出す水素電力貯蔵システムが提案されている。例えば、水素電力貯蔵システムの動作モードには、電気分解モードと発電モードとがある。電気分解モードでは、燃料電池の水素極に水を投入して電気分解を行い、水素極からは水素を、酸素極からは酸素を得る。一方、発電モードでは、水素極に水素を、酸素極に酸素を投入し、水素極から水(水蒸気)を排出すると同時に電力を得る。
【0004】
例えば、電気分解モードで動作する部品と、発電モードで動作する部品との間で熱を授受することで、効率を高める方法が知られている。また、発電モードで得られた水蒸気を凝縮して、電気分解モードで水素極に投入するために蓄える方法も知られている。また、燃料電池において、水素極からの排気から水を凝縮させて回収・再利用する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−176939号公報
【特許文献2】特開2010−232165号公報
【特許文献3】特開昭61−135063号公報
【特許文献4】特開平11−214021号公報
【特許文献5】特開2006−156015号公報
【特許文献6】特開2007−251216号公報
【特許文献7】特開2014−32913号公報
【特許文献8】特開2014−95118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発電モードの際には、反応に必要な量の水素が水素極に投入される。この際、燃料電池の特性によっては、反応に必要な量よりも多くの水素を水素極に投入した方が、高い電力を得られる場合がある。この場合、水素極からの排気は、水蒸気だけでなく未反応の水素も含むことになる。この水素は、水素極に再投入して再利用することがエネルギーの有効利用上望ましい。
【0007】
そこで、水素と水蒸気とを分離することが考えられる。一般には、水蒸気を凝縮させて水素と水とを気液分離することが行われている。しかし、水素が混入した水蒸気は、水素が混入していない水蒸気に比べて水蒸気の圧力(水蒸気分圧)が低いため、より低い温度でないと凝縮しない。そのため、製造コストの高いより低温の低熱源が凝縮器に必要になり、さらには低熱源との熱交換に必要な面積が凝縮器に必要になり、凝縮器が大型化してしまう。
【0008】
そこで、本発明の実施形態が解決しようとする課題は、燃料電池からの排気を効果的に利用可能な水素電力貯蔵システムおよび水素電力貯蔵方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一の実施形態によれば、水素電力貯蔵システムは、水素が投入される水素極と、酸素が投入される酸素極とを有し、水蒸気と未反応水素とを含む排気を排出する燃料電池を備える。前記システムはさらに、前記排気中の前記水蒸気の一部を凝縮させ、前記水蒸気が残留する前記排気を排出する凝縮器を備える。前記システムはさらに、前記凝縮器から排出され、前記水蒸気と前記未反応水素とを含む前記排気を前記燃料電池に供給する排気供給部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の水素電力貯蔵システムの構成を示す模式図(1/2)である。
【
図2】第1実施形態の水素電力貯蔵システムの構成を示す模式図(2/2)である。
【
図3】水の飽和温度と圧力との関係を示すテーブルである。
【
図4】水の飽和温度と圧力との関係を示すグラフである。
【
図5】水の飽和温度と水蒸気戻し割合との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1と
図2は、第1実施形態の水素電力貯蔵システム1の構成を示す模式図である。具体的には、
図1と
図2はそれぞれ、発電モードと電気分解モードにおける水素電力貯蔵システム1の動作を説明するための図である。
【0013】
最初に、
図1を参照して、発電モードにおける水素電力貯蔵システム1の動作について説明する。
【0014】
水素電力貯蔵システム1は、燃料電池(セルスタック)2と、空気ポンプ3と、水素タンク4と、凝縮器5と、冷却源6と、水素ポンプ7と、水タンク8と、水ポンプ9と、制御装置10とを備えている。水素タンク4は水素供給部の一例であり、水素ポンプ7は排気供給部の一例である。
【0015】
セルスタック2は、電解質2aと、酸素極2bと、水素極2cとを備えている。電解質2aは、酸素極2bと水素極2cとの間に設けられている。制御装置10は、計測部10aと、判定部10bと、調節部10cとを備えている。制御装置10は例えば、プロセッサや電気回路などの情報処理装置と、温度計などの計測機器により構成されている。
【0016】
空気ポンプ3は、空気11を圧縮し、高圧空気12として酸素極2bに供給する。水素タンク4は、内部に高圧の水素14を有する。水素14は、自身の持つ圧力により水素タンク4から運ばれ、後述する凝縮残留ガス17と合流し、水素と水蒸気との混合ガス15となる。混合ガス15は、水素極2cに供給される。
【0017】
セルスタック2では、高圧空気12内の酸素と、混合ガス15内の水素が反応し、水素極2cに水(水蒸気)が生成される。酸素極2bからの排気13は、酸素が減少した高圧空気12を含んでいる。一方、水素極2cからの排気16は、水素が減少した混合ガス15と、水素極2cに生成された水蒸気とを含んでいる。この排気16は、混合ガス15に含まれていた水蒸気と、水素極2cに生成された水蒸気とを含むだけでなく、混合ガス15に含まれていた未反応の水素も含んでいる。
【0018】
凝縮器5は、冷熱源6から冷却媒体18によって運ばれた冷熱により、水素極2cからの排気16を冷却する。その結果、排気16内の水蒸気が凝縮水19として凝縮する。凝縮水19は、水タンク8に送られて貯蔵される。
【0019】
本実施形態の凝縮器5は、排気16内の水蒸気の全部を凝縮させず、排気16内の水蒸気の一部を凝縮させる。よって、凝縮器5から排出される凝縮残留ガス17は、上述の未反応水素と、凝縮器5で凝縮しなかった水蒸気とを含んでいる。凝縮残留ガス17は、水素ポンプ7で運ばれ、水素タンク4からの水素14に混合される。その結果、凝縮残留ガス17内の未反応水素は、混合ガス15の形で水素極2cに再供給される。
【0020】
計測部10aは、凝縮器5から排出された凝縮残留ガス17の温度を計測する。判定部10bは、計測部10aにより計測された温度に基づいて、凝縮残留ガス17に含まれる水蒸気の量を判定する。調節部10cは、判定部10bにより判定された水蒸気の量に基づいて、セルスタック2または凝縮器5を制御して、凝縮残留ガス17に含まれる水蒸気の量を調節する。これにより、凝縮残留ガス17内の水蒸気の量を所望の量に調節することができる。制御装置10の詳細については、後述する。
【0021】
次に、
図2を参照して、電気分解モードにおける水素電力貯蔵システム1の動作について説明する。
【0022】
電気分解モードでは、酸素極2bへのガス供給は必要ないが、セルスタック2の特性によっては酸素極2bに何らかの物質を供給した方が望ましい場合もある。酸素極2bからの排気22は、水21を電気分解して生成された酸素を含んでいる。
【0023】
水素極2cには、水タンク8内の水21が水ポンプ9の作用により供給される。水素極2cからの排気23は、水21を電気分解して生成された水素を含んでいる。この排気23は、水素ポンプ7により加圧され、圧縮水素24として水素タンク4に貯蔵される。
【0024】
ここで、電気分解モードにおける水21の電気分解は、2H
2O→2H
2+O
2の化学式で表されるため、水21から生成された水素のモル量と、水素の生成に使われた水21のモル量は等しい。一方、発電モードにおける水素と酸素の反応は、2H
2+O
2→2H
2Oの化学式で表されるため、水素から生成された水のモル量と、水の生成に使われた水素のモル量は等しい。
【0025】
よって、水素電力貯蔵システム1の外部からの水や水素の供給なしに電気分解モードと発電モードとを交互に繰り返す場合には、発電モードでは、電気分解モードで使用予定の水素のモル量に等しいモル量の凝縮水19を生成する必要がある。
【0026】
図3と
図4はそれぞれ、水の飽和温度と圧力との関係を示すテーブルとグラフである。
図4のグラフは、
図3のテーブルに基づいて作成したものである。
【0027】
これらの図によれば、水(水蒸気)の圧力が低いほど、飽和温度が低くなる。水蒸気が飽和温度以下となれば凝縮が起こることから、圧力が低いほど凝縮温度が低くなり、圧力が低いほど凝縮に必要な冷熱源6の温度が低くなる。一般に、常温より温度の低い冷熱源6ほど、用意するためのコストが高くなることから、水蒸気の圧力が低いほど凝縮コストが高くなる。
【0028】
図1の水素極2cからの排気16には、水蒸気と水素が混在している。この場合、排気16内の水蒸気の圧力は、排気16全体の圧力に、排気16内における水蒸気のモル分率をかけたものである。これは、水蒸気の分圧と呼ばれる。
【0029】
例えば、排気16の圧力がほぼ大気圧に等しい100kPaで、水蒸気のモル分率が30%の場合、水蒸気の分圧は30kPaとなる。
図3から、この場合の水蒸気の飽和温度は69℃となる。よって、水蒸気を30%含む排気16を凝縮するのに必要な冷熱源6の温度は、69℃より低い温度となる。もし、排気16が水蒸気を100%含んでいれば、水蒸気の分圧は100kPaとなるため、冷熱源6の温度は99.9℃で十分である。このように、水蒸気のモル分率が高くなるほど、排気16を凝縮するのに必要な冷熱源6の温度が高くなり、凝縮コストが安くなる。
【0030】
ここで、セルスタック2の反応量を発電モードでも電気分解モードでもX[A/cm
2]とし、この反応に必要な水素量をY[mol/s]とする。また、
図1の混合ガス15は、Yの150%の水素、すなわち、1.5Y[mol/s]の水素を含むと仮定する。この場合、水素極2cからの排気16は、Yの50%の未反応水素、すなわち、0.5Y[mol/s]の未反応水素を含んでいる。
【0031】
反応で生成される水のモル量は、反応で消費される水素のモル量と同等である。そのため、混合ガス15が水蒸気をまったく含まない場合には、排気16はY[mol/s]の水を含むことになる。この場合、混合ガス15が1.5Y[mol/s]の水素を含む場合には、排気16は0.5Y[mol/s]の水素を含むことになる。よって、排気16内の水素と水蒸気のモル比は0.5Y[mol/s]:Y[mol/s]となるから、排気16内における水蒸気のモル分率は66.7%となる。
【0032】
この場合、排気16の全圧が100kPaだとすると、水蒸気の分圧は100kPa×66.7%=66.7kPaとなる。よって、この水蒸気の飽和温度は約88℃となり、その凝縮に88℃より低温の冷熱源6が必要となる。
【0033】
さらに、この排気16内のY[mol/s]の水蒸気をすべて凝縮させようとすると、凝縮の完了直前に排気16内の水蒸気量はほぼ0[mol/s]になり、水蒸気の分圧がほぼゼロになる。この場合、
図3と
図4によれば0℃に近い冷熱源6が必要になる。このような低温の冷熱源6は、用意するためのコストが高いことから、凝縮コストが高くなってしまう。
【0034】
次に、
図1の混合ガス15が、1.5Y[mol/s]の水素と、0.3Y[mol/s]の水蒸気とを含む場合を想定する。この場合、排気16は、0.5Y[mol/s]の水素と、1.3Y[mol/s]の水蒸気とを含むことになる。よって、排気16内の水素と水蒸気のモル比は0.5Y[mol/s]:1.3Y[mol/s]となるから、排気16内における水蒸気のモル分率は72.1%となる(1.3/(0.5+1.3)×100=72.1%)。
【0035】
この場合、排気16の全圧が100kPaだとすると、水蒸気の分圧は100kPa×72.1%=72.1kPaとなる。よって、この水蒸気の飽和温度は約91℃となり、その凝縮に91℃より低温の冷熱源6が必要となる。
【0036】
また、この場合の凝縮器5は、排気16内の水蒸気の全部を凝縮させず、排気16内の水蒸気の一部を凝縮させる。具体的には、凝縮残留ガス17から1.5Y[mol/s]の水素と0.3Y[mol/s]の水蒸気とを含む混合ガス15を生成するために、排気16内のY[mol/s]の水蒸気のみを凝縮させる。よって、凝縮の完了直前に排気16内の水蒸気量は0.3Y[mol/s]になり、水蒸気の分圧は37.5kPaになる(100kPa×0.3/(0.5+0.3)=37.5kPa)。この場合、
図3と
図4によれば約73℃の冷熱源6で凝縮を完了することができる。このような高温の冷熱源6は、用意するためのコストが安く済むことから、凝縮コストが安くすることができる。よって、本実施形態の水素電力貯蔵システム1は、このような凝縮方法を採用している。
【0037】
この場合の凝縮残留ガス17は、0.5Y[mol/s]の水素と、0.3Y[mol/s]の水蒸気とを含むこととなる。一方、水素タンク4は、Y[mol/s]の水素14を供給する。その結果、1.5Y[mol/s]の水素と、0.3Y[mol/s]の水蒸気とを含む混合ガス15が水素極2cに供給される。このようにして、混合ガス15、排気16、および凝縮残留ガス17が水素電力貯蔵システム1内を循環する。
【0038】
図5は、水の飽和温度と水蒸気戻し割合との関係を示すグラフである。
【0039】
図5の数値Z(水蒸気戻し割合)は、混合ガス15内の水蒸気量の、Y[mol/s]に対するパーセンテージを示している。よって、混合ガス15は、0.01ZY[mol/s]の水蒸気を含んでいると表現される。上述の例では、混合ガス15が0.3Y[mol/s]の水蒸気を含んでいるため、Z=30%となる。
【0040】
図5は、混合ガス15が0.01ZY[mol/s]の水蒸気を含む場合において、凝縮器5の凝縮完了時における水蒸気の飽和温度を示している。例えば、混合ガス15が0.3Y[mol/s]の水蒸気を含む場合、凝縮器5の凝縮完了時における水蒸気の飽和温度は73℃であり、73℃の冷熱源6で凝縮を完了することができる。また、混合ガス15が0.5Y[mol/s]の水蒸気を含む場合、凝縮器5の凝縮完了時における水蒸気の飽和温度は80℃であり、80℃の冷熱源6で凝縮を完了することができる。
【0041】
ここで、Zの値が低いと、冷熱源6に要求される温度が低くなることから、凝縮コストが高くなってしまう。そのため、Zの値は、ある程度高くした方が望ましい。よって、本実施形態では、Zの値を30%以上に設定する。
【0042】
一方、Zの値が高いと、セルスタック2の運転にとって望ましくない可能性がある。そのため、Zの値は、ある程度低くした方が望ましい。よって、本実施形態では、Zの値を70%以下に設定する。
【0043】
図1の計測部10aは、凝縮器5から排出された凝縮残留ガス17の温度を計測する。判定部10bは、計測部10aにより計測された温度に基づいて、凝縮残留ガス17に含まれる水蒸気の量を判定する。具体的には、Zの値を判定する。調節部10cは、このZの値に基づいて、セルスタック2または凝縮器5を制御する。具体的には、調節部10cは、セルスタック2または凝縮器5を制御することで、Zの値を30%以上かつ70%以下に調節する。これにより、凝縮コストを低減し、かつセルスタック2の好適な運転を実現することが可能となる。
【0044】
本実施形態では、判定部10bは、凝縮残留ガス17の温度と、セルスタック2の電池電流(電池反応量)と、水素極2cに投入された水素の量とに基づいて、水蒸気の量を判定する。凝縮残留ガス17の温度は、計測部10aが計測する。セルスタック2の電池電流は、計測器10aが計測してもよいし、他の方法で取得して判定部10bに提供してもよい。水素極2cに投入された水素の量は、混合ガス15内の水素の量であり、計測器10aが計測してもよいし、他の方法で取得して判定部10bに提供してもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態の水素電力貯蔵システム1は、水蒸気と未反応水素とを含む排気16を凝縮器5に供給し、排気16内の水蒸気の一部を凝縮器5で凝縮させ、水蒸気と未反応水素とを含む凝縮残留ガス17を水素極2cに再供給する。すなわち、本実施形態では、凝縮器5で水と水素との気液分離を行う際に、水蒸気を完全には凝縮させず、未反応水素を水蒸気と共に水素極2cに再供給する。
【0046】
よって、冷熱源6に要求される温度を高くすることが可能となり、凝縮コストを低減することが可能となる。また、排気16内の水蒸気の一部を凝縮器5で凝縮させることで、電気分解モードで使用する水21を確保することが可能となる。また、以上のような効果により、凝縮器5のサイズを小型化することが可能となり、凝縮器5を用意するコストを低減することが可能となる。
【0047】
よって、本実施形態によれば、セルスタック2の水素極2cからの排気16を効果的に利用可能な水素電力貯蔵システム1を実現することが可能となる。
【0048】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0049】
1:水素電力貯蔵システム、2:燃料電池(セルスタック)、
2a:電解質、2b:酸素極、2c:水素極、3:空気ポンプ、4:水素タンク、
5:凝縮器、6:冷却源、7:水素ポンプ、8:水タンク、9:水ポンプ、
10:制御装置、10a:計測部、10b:判定部、10c:調節部、
11:空気、12:高圧空気、13:排気、14:水素、15:混合ガス、
16:排気、17:凝縮残留ガス、18:冷却媒体、19:凝縮水、
21:水、22:排気、23:排気、24:圧縮水素