(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970002
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】質量体付き排気系部品
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20211111BHJP
【FI】
F01N13/08 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-241767(P2017-241767)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-108833(P2019-108833A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 義彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将典
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正也
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 忠正
【審査官】
菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−153277(JP,A)
【文献】
特開2012−055927(JP,A)
【文献】
特開2010−155275(JP,A)
【文献】
特開2013−092120(JP,A)
【文献】
特開2015−189322(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0261594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用内燃機関の排気系を構成する排気系部品と、
前記排気系部品の質量調整用の質量体とを備え、
前記排気系部品に前記質量体が取り付けられた質量体付き排気系部品であって、
前記排気系部品の筐体と前記質量体との間に設けられるブラケットを備え、
前記ブラケットの厚みは、前記質量体の厚みよりも小さくされるとともに、前記排気系部品の筐体の厚みよりも大きくされており、
前記排気系部品の筐体と前記ブラケットとが溶接され、前記ブラケットと前記質量体とが溶接され、
前記質量体は、板状であり、円弧状に湾曲されていることを特徴とする質量体付き排気系部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量体付き排気系部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用内燃機関の排気系を構成する排気系部品が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、排気系部品の質量調整用の質量体を、排気系部品に取り付けることが記載されている。このように、排気系部品の質量を調整することにより、排気系部品と車体との共振を抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−145624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、排気系部品の筐体の厚みと質量体の厚みとの差が大きい場合には、筐体と質量体とを溶接することが困難になる。たとえば、厚みが1mmの筐体と、厚みが8mmの質量体とを溶接しようとする場合には、厚みの小さい筐体が溶け落ちるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、排気系部品の筐体の厚みと質量体の厚みとの差が大きい場合であっても、排気系部品に対して質量体を溶接によって取り付けることが可能な質量体付き排気系部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による質量体付き排気系部品は、車両用内燃機関の排気系を構成する排気系部品と、排気系部品の質量調整用の質量体とを備え、排気系部品に質量体が取り付けられている。質量体付き排気系部品は、排気系部品の筐体と質量体との間に設けられるブラケットを備える。ブラケットの厚みは、質量体の厚みよりも小さくされるとともに、排気系部品の筐体の厚みよりも大きくされている。排気系部品の筐体とブラケットとが溶接され、ブラケットと質量体とが溶接されている。
質量体は、板状であり、円弧状に湾曲されている。
【0008】
このように構成することによって、排気系部品の筐体と質量体との間にブラケットを介在させることにより、筐体とブラケットとを溶接するとともに、ブラケットとマスとを溶接することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の質量体付き排気系部品によれば、排気系部品の筐体の厚みと質量体の厚みとの差が大きい場合であっても、排気系部品に対して質量体を溶接によって取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】内燃機関の排気系の一例を示した概略構成図である。
【
図2】本実施形態によるマス付きサブマフラを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下では、車両に搭載される内燃機関の排気系を構成するマス付きサブマフラに本発明を適用した場合について説明する。
【0012】
−内燃機関の排気系−
まず、
図1を参照して、排気系150の一例について説明する。
【0013】
排気系150は、
図1に示すように、車両前後方向(X方向)に延びるように設けられ、内燃機関200からの排気を浄化および消音して大気に放出するように構成されている。この排気系150は、排気中の有害成分を浄化するための触媒コンバータ151と、排気音を低減するためのマス付きサブマフラ152およびメインマフラ153と、それらを接続する排気管154とを備えている。
【0014】
−マス付きサブマフラ−
次に、
図2を参照して、マス付きサブマフラ152について説明する。
【0015】
マス付きサブマフラ152は、
図2に示すように、排気系150を構成するサブマフラ1と、サブマフラ1の質量調整用のマス2と、サブマフラ1とマス2との間に設けられるブラケット3とを備えている。なお、マス付きサブマフラ152は、本発明の「質量体付き排気系部品」の一例である。また、サブマフラ1は、本発明の「排気系部品」の一例であり、マス2は、本発明の「質量体」の一例である。
【0016】
サブマフラ1は、たとえば、排気音の高周波成分を取り除くために設けられている。このサブマフラ1は、車両前後方向(
図2の紙面に対する垂直方向)に延びるように形成され、図示省略した車両のフロアパネルに形成されたトンネル部に配置されている。具体的には、サブマフラ1は、ケース11と、ケース11内に収容された消音構造(図示省略)とを備えている。なお、ケース11は、本発明の「筐体」の一例である。
【0017】
ケース11は、金属製であり、円筒状に形成されている。このケース11は、一方端部(排気の流れ方向における上流側の端部)が内燃機関200側の排気管154に接続され、他方端部(排気の流れ方向における下流側の端部)が大気側の排気管154に接続されている。なお、ケース11は、図示省略したサポートゴムを介して車体に支持されている。
【0018】
マス2は、サブマフラ1と車体とが共振するのを抑制するために設けられている。このマス2は、金属製であり、板状に形成されている。マス2は、車両前後方向から見て、ケース11の外周面11aに沿うように円弧状に湾曲されている。また、マス2は、車両前後方向に延びるように形成されるとともに、車幅方向(Y方向)の一方側に配置されている。マス2の内面2bはケース11の外周面11aと離間されており、その内面2bと外周面11aとの間に隙間Cが形成されている。
【0019】
ブラケット3は、マス2をサブマフラ1に取り付けるために設けられており、マス2に対して上下方向(Z方向)の両端部にそれぞれ配置されている。ブラケット3は、金属製であり、2つの屈曲部を有する板状に形成されている。ブラケット3は、たとえば、マス2の車両前後方向における全長にわたって設けられている。
【0020】
また、ブラケット3は、ほぼZ字状であり、フランジ部31とアーム部32とフランジ部33とを有する。フランジ部31は、車両前後方向から見て、ケース11の外周面11aに沿うように円弧状に湾曲されている。フランジ部33は、車両前後方向から見て、マス2の外面2aに沿うように円弧状に湾曲されている。アーム部32は、径方向(サブマフラ1の軸方向と直交する方向)に延びるように形成され、フランジ部31および33を連結するように構成されている。アーム部32の径方向の内側端部にフランジ部31が設けられるとともに、アーム部32の径方向の外側端部にフランジ部33が設けられており、フランジ部31および33がアーム部32に対して逆方向に延びるように形成されている。フランジ部31は、ケース11の外周面11aに接合され、フランジ部33は、マス2の端部21の外面2aに接合されている。すなわち、マス2は、フランジ部33の内面に接合されている。
【0021】
ここで、ブラケット3の厚みt1は、マス2の厚みt2よりも小さくされるとともに、サブマフラ1のケース11の厚みt3よりも大きくされている。すなわち、ブラケット3の厚みt1は、マス2の厚みt2とケース11の厚みt3との間に設定されている。このため、ケース11とブラケット3との厚み差、および、ブラケット3とマス2との厚み差が、ケース11とマス2との厚み差に比べて小さくなっている。
【0022】
そして、ケース11およびブラケット3の厚み差は、ケース11およびブラケット3を適切に溶接可能な値に設定され、ブラケット3およびマス2の厚み差は、ブラケット3およびマス2を適切に溶接可能な値に設定されている。たとえば、ブラケット3の厚みt1が1.5mmであり、マス2の厚みt2が8mmであり、ケース11の厚みt3が1mmである。そして、ブラケット3のフランジ部31とサブマフラ1のケース11とが溶接されるとともに、ブラケット3のフランジ部33とマス2とが溶接されている。
【0023】
−効果−
本実施形態では、上記のように、サブマフラ1のケース11とマス2との間にブラケット3が設けられている。ブラケット3の厚みt1が、マス2の厚みt2よりも小さくされるとともに、サブマフラ1のケース11の厚みt3よりも大きくされている。このように構成することによって、サブマフラ1のケース11とマス2との間にブラケット3を介在させることにより、ケース11とブラケット3とを溶接するとともに、ブラケット3とマス2とを溶接することができる。したがって、サブマフラ1のケース11の厚みt3とマス2の厚みt2との差が大きい場合であっても、サブマフラ1に対してマス2を溶接によって取り付けることができる。
【0024】
また、本実施形態では、ケース11の外周面11aとマス2の内面2bとが離間されていることによって、ケース11の外周面11aとマス2の内面2bとの間で隙間腐食が発生しないようにすることができる。
【0025】
−他の実施形態−
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0026】
たとえば、上記実施形態では、マス付きサブマフラ152に本発明を適用する例を示したが、これに限らず、マス付き排気管に本発明を適用してもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、マス2の車両前後方向における全長にわたってブラケット3が設けられる例を示したが、これに限らず、マスの車両前後方向における一部にブラケットが設けられていてもよい。また、マスの車両前後方向においてブラケットが間隔を隔てて複数設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、車両用内燃機関の排気系を構成する排気系部品と、排気系部品の質量調整用の質量体とを備え、排気系部品に質量体が取り付けられた質量体付き排気系部品に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 サブマフラ(排気系部品)
2 マス(質量体)
3 ブラケット
11 ケース(筐体)
150 排気系
152 マス付きサブマフラ(質量体付き排気系部品)
200 内燃機関(車両用内燃機関)