(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トンネル内に配設され前記トンネルの周方向および長さ方向に沿って間隔をおいて前記トンネルの内壁面にコンクリートを打設する複数の打設管が設けられたコンクリート打設型枠と、
外部から供給されたコンクリートを圧送可能なコンクリート供給部と、
前記コンクリート供給部を前記複数の打設管に個別に接続可能なコンクリート分流機と、
を備えるトンネル内の覆工コンクリート打設装置であって、
前記打設管から打設されたコンクリートの前記トンネルの周方向および長さ方向に沿った位置を示す位置情報を検出する検出部と、
前記位置情報に基づいて前記コンクリート供給部および前記コンクリート分流機を制御し予め定められた順番で前記コンクリート供給部を前記コンクリート分流機を介して次の前記打設管に順次接続していく制御部と、
前記位置情報に基づいて前記トンネルの長さ方向に沿った前記コンクリートの高さの偏りが第1の許容範囲を超過したか否かを判定する判定部と、
前記コンクリートの高さの偏りが前記第1の許容範囲を超過したと判定された場合に、前記位置情報に基づいて次に前記コンクリートを打設すべき前記打設管を特定する特定部とを備え、
前記制御部は、前記第1の許容範囲を超過したと判定された場合に、前記順番を無視し前記特定部で特定された打設管に前記コンクリート供給部を接続する、
ことを特徴とする覆工コンクリート打設装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、覆工コンクリート打設装置20は、一次覆工がなされたトンネル10の内壁面12にコンクリートを打設するものである。
ここで一次覆工がなされたトンネル10の内壁面12とは、掘削された地山の壁面1202に防水シート1204を当て付け、その上にコンクリート1206を吹き付けることで形成された面である。
なお、図中符号13はトンネル10の床版を示す。
覆工コンクリート打設装置20は、コンクリート打設型枠22と、複数の打設管24と、コンクリート供給部26と、コンクリート分流機28と、検出部30と、コンピュータ32とを含んで構成されている。
【0009】
コンクリート打設型枠22は、型枠本体34と、支持部材36と、走行部38とを含んで構成されている。
型枠本体34は、複数の型枠部材が組み立てられることによりトンネル10の断面形状に対応した断面形状を構成し、本実施の形態では、鋼製である。
型枠本体34は、床版13から起立し幅方向両側に位置する一対の側部3402と、それら一対の側部3402の上端を接続する上部3404とを有している。
支持部材36は、型枠本体34を支持するものであり、複数の形鋼によって門型に形成され、支持部材36の上部は足場39となっている。
走行部38は、支持部材36を介して型枠本体34をトンネル10の長さ方向に沿って移動させるものであり、走行部38は支持部材36の下部に設けられている。
走行部38は、トンネル10の長さ方向に沿って床版13に敷設されたレール14上を走行する車輪3802を含んで構成されている。
支持部材36と型枠本体34との間には、例えば油圧シリンダーからなる不図示の複数の伸縮部材が設けられ、それら複数の伸縮部材の伸縮により型枠本体34がトンネル10の径方向に拡縮される。
【0010】
図1、
図2に示すように、型枠本体34には、コンクリートを打設するための複数の打設孔40が設けられている。
本実施の形態では、打設孔40は、トンネル10の周方向に間隔をおいて9個、トンネル10の長さ方向に間隔をおいて5個、合計45個の打設孔40が設けられている。
各打設孔40には、閉鎖板42が設けられている。
コンクリートの打設時には、コンピュータ32からの制御信号によって動作が制御されるアクチュエータ43により閉鎖板42が打設孔40を開放する開放位置に移動され、コンクリートの打設後には、アクチュエータ43により閉鎖板42が打設孔40を閉塞する閉塞位置に移動される。
足場39は、支持部材36の上部にトンネル10の幅方向および長さ方向にわたって設けられ、作業者の足場として、また、コンクリート分流機28の設置場所として使用される。
【0011】
コンクリート供給部26は、コンクリートミキサー車から供給されるコンクリートをコンクリート分流機28を介して各打設管24に圧送するものであり、例えば電動式のコンクリートポンプを含んで構成され、コンピュータ32からの制御信号によって動作が制御される。
コンクリート分流機28は、コンクリート供給部26を複数の打設管24に個別に接続するものであり、コンピュータ32からの制御信号によって動作が制御される。
本実施の形態では、コンクリート分流機28は、コンクリート供給部26は複数の打設管24から選択された1つの打設管24とを接続する。
このようなコンクリート分流機28として、従来公知の様々なコンクリート分流機が使用可能である。
複数の打設管24は、コンクリートが吐出される打設管先部2402を有し、打設管先部2402は、各打設孔40に連通するように型枠本体34の内周面側で固定されている。
なお、不図示ではあるが、バイブレータが型枠本体34の内周面の複数箇所に設けられ、バイブレータが振動することにより打設管24から打設されたコンクリートが適宜締め固められる。
【0012】
検出部30は、打設孔40から型枠本体34の外周面(型枠面)とトンネル10の内壁面12との間に打設されたコンクリートのトンネル10の周方向および長さ方向に沿った位置を検出するものである。
本実施の形態では、検出部30は、複数の線状のレベルセンサー44と、検出回路46と、後述する位置算出部32Aと、位置情報生成部32Bとを備えている。
レベルセンサー44は、
図4に示すように、型枠本体34の外周面に取着され、第1〜第3レベルセンサー44A、44B、44Cを備えている。なお、
図4において打設孔40は省略されている。
本実施の形態では、型枠本体34の天端から型枠本体34の幅方向の一方の半部において型枠本体34の周方向に沿って延在する第1レベルセンサー44Aが型枠本体34の長さ方向に等間隔をおいて5つ設けられている。
また、型枠本体34の天端から型枠本体34の幅方向の他方の半部において型枠本体34の周方向に沿って延在する第2レベルセンサー44Bが型枠本体34の長さ方向に等間隔をおいて5つ設けられている。
また、型枠本体34の長さ方向に延在する第3レベルセンサー44Cが、型枠本体34の天端を通るように、また、天端の両側箇所を通るように3つ設けられている。
【0013】
図5に示すように、レベルセンサー44は、互いに平行して線状に延在する一対の電極線4402と、この一対の電極線4402を被覆する絶縁材4404とから構成され、コンクリートに接触することによりコンクリートの比誘電率に応じて一対の電極線4402間に生じる静電容量が変化するものである。
検出回路46は、入力端子4602と、直流電源4604と、固定抵抗4606と、出力端子4608とから構成されている。
入力端子4602は、一対の電極線4402の一端に接続されている。
直流電源4604は、入力端子4602に接続され、両電極線4402間に一定の直流電圧Vinを印加する。
固定抵抗4606は、一対の電極線4402の一端に並列に接続され、打設されるコンクリートの比誘電率と打設コンクリートによって覆われる一対の電極線4402の長さに比例して一対の電極線4402間に生じる静電容量の変化に応じた充電電圧Etを取り出すものである。
出力端子4608は、固定抵抗4606の両端に接続して設けられている。
【0014】
コンクリート打設型枠22に打設されたコンクリート、すなわちフレッシュコンクリート(モルタル)中には多数のイオンが存在しているため、絶縁被覆された一対の電極線4402の間及びその周囲にコンクリートが介在されると、コンクリートを電解質とし、かつその比誘電率に応じたコンデンサC1が形成される。
このコンデンサC1はレベルセンサー44の長さ方向に沿って並列に接続されたものとなる。そして、コンクリートで覆われるレベルセンサー44の長さLが長くなるにしたがい、並列接続されるコンデンサC1の数が増加し、静電容量が大きくなる。
ここで、空気中に晒されている電極線4402間にも空気の誘電率に応じた静電容量のコンデンサC2が並列に形成される。したがって、一対の電極線4402の間に生じる静電容量は、並列接続されるコンデンサC1と並列接続されるコンデンサC2とを加算した値となる。この静電容量は、コンクリートで覆われるレベルセンサー44の長さL、すなわち、打設されたコンクリートの位置にしたがって変化する。
なお、コンクリートを電解質とする電極線4402間の静電容量は、空気の場合の静電容量の約10倍程度である。
【0015】
そこで、入力端子4602から両電極線4402間に一定の直流電圧Vinを印加し、両電極線4402に電荷を与え、両電極線4402間の電圧を検出回路46で測定する。
この場合、検出回路46では、出力電圧Vout=Et/(R+2r)の関係が成立することになる。ただし、Rは固定抵抗4606の抵抗値、rは電極線4402の固有抵抗である。
【0016】
検出回路46による出力電圧Voutの測定結果は、コンクリートの比誘電率に応じて両電極線4402間に生じる静電容量に比例した出力電圧Voutとコンクリートで覆われるレベルセンサー44の長さLとが、ほぼ比例関係に近い関係となる。
予め、実験により出力電圧Voutとコンクリートで覆われるレベルセンサー44の長さLとの相関関係を示す相関式を決定しておく。
これにより、相関式に基づいて、出力電圧Voutからコンクリートで覆われるレベルセンサー44の長さL、すなわち、レベルセンサー44の長さ方向に沿ったコンクリートの位置を算出することができる。
【0017】
図1に示すように、パーソナルコンピュータ32は、トンネル10構内の適宜箇所、例えば、足場39に設置され、コンクリート供給部26、コンクリート分流機28、各検出回路46と不図示のケーブルを介して接続されている。
図6に示すように、コンピュータ32は、CPU3202と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM3204、RAM3206、ハードディスク装置3208、キーボード3210、マウス3212、ディスプレイ3214、インターフェース3216などを有している。
ROM3204は制御プログラムなどを格納し、RAM3206はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置3208は、後述する位置算出部32A、位置情報生成部32B、制御部32C、判定部32D、特定部32Eを実現するための制御プログラムなどを格納している。
キーボード3210およびマウス3212は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ3214はデータを表示出力するものである。
インターフェース3216は、外部機器とデータ、信号の授受を行うためのものであり、本実施の形態では、インターフェース3216は、各検出回路46から出力電圧Voutを受け付け、また、コンクリート供給部26、コンクリート分流機28、各アクチュエータ43に制御信号を与える。
【0018】
CPU3202が、ハードディスク装置3208に格納されている制御プログラムを実行することによりコンピュータ32によって、
図1に示すように、位置算出部32A、位置情報生成部32B、制御部32C、判定部32D、特定部32Eが実現される。
位置算出部32Aは、インターフェース3216を介して入力された各検出回路46からの出力電圧Voutに基づいて、レベルセンサー44の長さ方向に沿ったコンクリートの位置を算出するものである。
言い換えると、位置算出部32Aは、レベルセンサー44の静電容量の変化に基づいてレベルセンサー44の長さ方向に沿ったコンクリートの位置を算出するものである。
具体的に説明すると、位置算出部32Aは、9つのレベルセンサー44のそれぞれに対応する検出回路46の出力電圧Voutから相関式に基づいて各コンクリートのレベルセンサー44の長さ方向に沿ったコンクリートの位置を算出する。
【0019】
位置情報生成部32Bは、位置算出部32Aで算出された各レベルセンサー44に対応するコンクリートの位置に基づいて、型枠本体34に対するコンクリートの位置を2次元座標上に表す位置情報を生成するものである。
2次元座標は、トンネルの長さ方向をX軸とし、トンネルの高さ方向をY軸としてもよく、あるいは、トンネルの長さ方向をX軸とし、前記トンネルの幅方向をY軸とするものであってもよい。
【0020】
制御部32Cは、検出部30の検出結果に基づいて、すなわち、コンクリートの位置情報に基づいてコンクリート供給部26およびコンクリート分流機28を制御し、予め定められた順番でコンクリート供給部26を次の打設管24に順次接続していくものである。
前述したように、本実施の形態では、選択された1つの打設管24がコンクリート供給部26に接続される。
制御部32Cによるコンクリート分流機28の制御は以下のように行なわれる。
制御部32Cは、予め定められた順番にしたがって特定された打設孔40からコンクリートが打設されるように打設管24の接続を行なう。
次いで、制御部32Cは、コンクリート供給部26の動作を開始させ、位置情報生成部32Bで生成されたコンクリートの位置情報に基づいてコンクリートの打設量が規定量に到達したと判断すると、コンクリート供給部26の動作を停止させる。
コンクリートの打設量が規定量に到達したことは、コンクリートの位置情報に基づいて、コンクリートを打設している打設孔40の近傍までコンクリートが到達したことをもって判定される。
【0021】
また、打設管24の接続の順番、すなわち、コンクリートを打設する打設孔40の順番は、トンネルの形状や地山の状態など施工現場の状態によって異なるものであり、予め定められている。
本実施の形態では、
図2に示すように、型枠本体34の幅方向の一方の半部において長さ方向に間隔をおいた2つの打設孔40A、40Cと、型枠本体34の幅方向の他方の半部において長さ方向に間隔をおいた2つの打設孔40B、40Dとの合計4つの打設孔40A〜40Dを順番に使ってコンクリートを打設する場合について説明する。この際、4つの打設孔40A〜40Dの高さ方向の位置はほぼ同じである。
そして、4つの打設孔40A〜40Dからのコンクリートの打設が完了すると、順次、打設する4つの打設孔40A〜40Dの位置を下方から上方に移動させ同様の順番でコンクリートを打設していく。
例えば、以下のような手順でコンクリートを打設する打設孔40を切り替えていく。
(1)トンネル10の長さ方向の一方寄りでかつトンネル10の幅方向の一方の半部に位置する打設孔40A。
(2)トンネル10の長さ方向の一方寄りでかつトンネル10の幅方向の他方の半部に位置する打設孔40B。
(3)トンネル10の長さ方向の他方寄りでかつトンネル10の幅方向の一方の半部に位置する打設孔40C。
(4)トンネル10の長さ方向の他方寄りでかつトンネル10の幅方向の他方の半部に位置する打設孔40D。
【0022】
図3(A)は打設前の状態を示しており、上述した(1)〜(4)の4つの打設孔40からの打設が完了すると、
図3(B)に示すように、1層目のコンクリート16Aが打設される。
次いで、コンクリートを打設する40A〜40Dの位置を1つずつ上方に移動させ、上記(1)〜(4)と同様の順番で40A〜40Dを選択してコンクリートを打設していく。
すなわち、
図3(C)に示す2層目のコンクリート16B、
図3(D)に示す3層目のコンクリート16C、
図3(E)に示す4層目のコンクリート16Dといった順番でコンクリートが打設される。
最後は、
図3(F)に示すように、天端に位置する打設孔40から5層目のコンクリート16Eが打設される。
なお、
図2に示すように、天端に位置する打設孔40は型枠本体34の長さ方向に沿って間隔をおいて5つ設けられており、この5つの打設孔40のうち、長さ方向の位置が打設孔40A(40B)に一致する1つの打設孔40Eと、長さ方向の位置が打設孔40C(40D)に一致する1つの打設孔40Fとが5層目のコンクリート16Eの打設に使用される。
【0023】
判定部32Dは、検出部30の検出結果に基づいて、すなわち、コンクリート16の位置情報に基づいてトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りが第1の許容範囲を超過したか否かを判定するものである。
図7(A)は、型枠本体の側方から見た型枠本体と打設されたコンクリート16の位置関係を示す説明図であり、トンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りは、位置情報で示されるコンクリート16の打設位置の最高値と最低値との差分Δhによって決定される。
判定部32Dは、この差分Δhが予め定められた第1の許容範囲を超過したか否かを判定する。
なお、型枠本体34に設けた複数のバイブレータが作動することにより、打設されたコンクリート16は、トンネル10の長さ方向に沿って流動して広がるため、時間経過と共にコンクリート16の高さの偏りは打設直後に比較して減少していく。
しかしながら、バイブレータが作動してもコンクリート16の性状や施工現場の状況によってはトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りが十分には解消されない場合があり、差分Δhが予め定められた第1の許容範囲を超過すると、コンクリート16を均一に打設する上で不利となるため、このようなコンクリート16の高さの偏りを解消する必要がある。
【0024】
また、制御部32Cは、判定部32Eにより差分Δhが予め定められた第1の許容範囲を超過しないと判定された場合は、予め定められた順番でコンクリート供給部26を次の打設管24に順次接続していくが、判定部32Eにより差分Δhが予め定められた第1の許容範囲を超過したと判定された場合は、順番を無視し特定部32Eで特定された打設管24にコンクリート供給部26を接続する。
【0025】
特定部32Eは、コンクリート16の高さの偏りが第1の許容範囲を超過したと判定された場合に、コンクリート16の位置情報に基づいてトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りを修正するために、次にコンクリート16を打設すべき打設管24を特定するものである。
例えば、
図7(A)に示すように、型枠本体34の幅方向の一方の側方から見て、打設孔40A、40Cから打設されたコンクリート16のトンネル10の長さ方向(型枠本体34の長さ方向)の中間部と長さ方向の両端部が他の部分よりも低くなる形状となり、判定部32Dによりトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りである差分Δhが第1の許容範囲を超過したと判定されたものとする。
この場合、特定部32Eは、次にコンクリート16を打設すべき打設管24として、型枠本体34の一方の半部で、トンネル10の長さ方向の中間部に位置する打設孔40−1、長さ方向の両端の2つの打設孔40−2、40−3にそれぞれ連通する3つの打設管24を特定する。
3つの打設孔40−1、40−2、40−3からコンクリート16が順次打設されると、
図7(B)に示すように、高さが低い部分にコンクリート16が追加して打設されることにより、コンクリート16の高さの偏りが解消される。
【0026】
また、
図8(A)に示すように、打設孔40A、40Cから打設されたコンクリート16のトンネル10の長さ方向の両端が中間部よりも低くなる形状となり、判定部32Dによりトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りである差分Δhが第1の許容範囲を超過したと判定されたものとする。
この場合、特定部32Eは、次にコンクリート16を打設すべき打設管24として、型枠本体34の一方の半部で、トンネル10の長さ方向の両端に位置する2つの打設孔40−2、40−3にそれぞれ連通する2つの打設管24を特定する。
2つの打設孔40−2、40−3からコンクリート16が順次打設されると、
図8(B)に示すように、高さが低い部分にコンクリート16が追加して打設されることにより、コンクリート16の高さの偏りが解消される。
なお、
図7、
図8に示すように、型枠本体34(コンクリート打設型枠22)の側部3402においてコンクリート16の位置情報は、トンネル10の長さ方向をX軸とし、トンネル10の高さ方向をY軸とした2次元座標上に示される。
【0027】
また、
図9(A)に示すように、型枠本体34の上方から見て、打設孔40A、40Cから打設されたコンクリート16のトンネル10の長さ方向の中間部と長さ方向の両端部が他の部分よりも低くなる形状となり、判定部32Dによりトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りである差分Δhが第1の許容範囲を超過したと判定されたものとする。
この場合には、特定部32Eは、次にコンクリート16を打設すべき打設管24として、型枠本体34の一方の半部で、トンネル10の長さ方向の中間部に位置する打設孔40−1、長さ方向の両端の2つの打設孔40−2、40−3にそれぞれ連通する3つの打設管24を特定する。
3つの打設孔40−1、40−2、40−3からコンクリート16が順次打設されると、
図9(B)に示すように、高さが低い部分にコンクリート16が追加して打設されることにより、コンクリート16の高さの偏りが解消される。
【0028】
また、
図10(A)に示すように、打設孔40A、40Cから打設されたコンクリート16のトンネル10の長さ方向の両端が中間部よりも低くなる形状となり、判定部32Dによりトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りである差分Δhが第1の許容範囲を超過したと判定されたものとする。
この場合、特定部32Eは、次にコンクリート16を打設すべき打設管24として、型枠本体34の一方の半部で、トンネル10の長さ方向の両端に位置する2つの打設孔40−2、40−3にそれぞれ連通する2つの打設管24を特定する。
この場合、2つの打設孔40−2、40−3からコンクリート16が順次打設されると、
図10(B)に示すように、高さが低い部分にコンクリート16が追加して打設されることにより、コンクリート16の高さの偏りが解消される。
なお、
図9、
図10に示すように、型枠本体34(コンクリート打設型枠22)の上部3404においてコンクリート16の位置情報は、トンネル10の長さ方向をX軸とし、トンネル10の幅方向をY軸とした2次元座標上に示される。
【0029】
次に覆工コンクリート打設装置20の動作について
図11のフローチャートを参照して説明する。
まず、二次覆工を行なうトンネル10の内壁面12に対向する位置にコンクリート打設型枠22を設置する(ステップS10)。
なお、二次覆工はトンネル入口から切羽側に向かって行なわれることから、二次覆工に際しては、トンネル10の内壁面12とコンクリート打設型枠22の切羽側の端部との間に不図示の閉鎖板が配置され、トンネル10の内壁面12とコンクリート打設型枠22の外周面との間に半円弧状の空間が仕切られる。
【0030】
制御部32Cは、予め定められた順番にしたがって打設孔40を選択し、その打設孔40からコンクリート16が打設されるようにコンクリート分流機28を制御してコンクリート供給部26を打設管24に接続する(ステップS12)。この際、制御部32Cは、打設管24が接続された打設孔40のアクチュエータ43を制御して閉鎖板42を開く。
制御部32Cは、コンクリート供給部26を動作させ、打設管24が接続された打設孔40からコンクリート16を打設させる(ステップS14)。
次いで、制御部32Cは、検出部30で検出されたコンクリート16の位置情報に基づいて規定量のコンクリート16が打設されたか否かを判定する(ステップS16)。
規定量のコンクリート16が打設されていなければ、ステップS14に戻る。
規定量のコンクリート16が打設されたと判断したならば、コンクリート供給部26を停止させ、打設管24が接続された打設孔40のアクチュエータ43を制御して閉鎖板42を閉じる(ステップS18)。
【0031】
制御部32Cは、N(Nは1以上の自然数)層目のコンクリート16の打設が完了したか否かを判定する(ステップS20)。
完了していなければ、ステップS12に戻り次の打設孔40からのコンクリート16の打設を行なう。
完了していれば、制御部32Cは、コンクリート打設型枠22の全域に対するコンクリート16の打設が完了したか否かを判定する(ステップS22)。すなわち、
図3(F)に示すように、5層のコンクリート16Eの打設が完了したか否かを判定する。
完了していなければ、判定部32Dは、検出部30の検出結果に基づいてトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りが第1の許容範囲を超過したか否かを判定する(ステップS24)。
第1の許容範囲を超過していないと判定された場合は、制御部32CはステップS12に戻り、次の層に対するコンクリート16の打設を行なう。
第1の許容範囲を超過したと判定された場合は、特定部32Eにより次にコンクリート16を打設すべき打設管24が特定される(ステップS26)。
【0032】
そして、制御部32Cは、予め定められていた順番を無視し、コンクリート分流機28を制御して特定部32Eで特定された打設管24にコンクリート供給部26を接続する(ステップS28)。この際、制御部32Cは、打設管24が接続された打設孔40のアクチュエータ43を制御して閉鎖板42を開く。
制御部32Cは、コンクリート供給部26を動作させ、打設管24が接続された打設孔40からコンクリート16を打設させる(ステップS30)。
次いで、制御部32Cは、検出部30で検出されたコンクリート16の位置情報に基づいて規定量のコンクリート16が打設されたか否かを判定する(ステップS32)。
規定量のコンクリート16が打設されていなければ、ステップS30に戻る。
規定量のコンクリート16が打設されたと判断したならば、コンクリート供給部26を停止させ、打設管24が接続された打設孔40のアクチュエータ43を制御して閉鎖板42を閉じる(ステップS34)。
【0033】
次いで、制御部32Cは、特定部32Eによって特定された打設管24が残っているか否かを判定する(ステップS36)。
打設管24が残っていれば、ステップS28に移行して同様の処理を行なう。
残っている打設管24が無ければ、制御部32CはステップS12に戻り、次の層に対するコンクリート16の打設を行なう。
【0034】
また、ステップS22でコンクリート打設型枠22の全域に対するコンクリート16の打設が完了したと判定されたならば、打設されたコンクリート16を養生硬化させ(ステップS38)、次いで、伸縮部材を縮小させることにより型枠本体34をトンネル10の径方向内側に縮小させ、コンクリート打設型枠22を脱枠させ(ステップS40)、一連の作業が終了する。
【0035】
本実施の形態によれば、打設されたコンクリート16のトンネル10の周方向および長さ方向に沿った位置を示す位置情報に基づいてトンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りが第1の許容範囲を超過したと判定された場合に、位置情報に基づいて次にコンクリート16を打設すべき打設管24を特定し、特定された打設管24を用いてコンクリート16を打設するようにした。
したがって、従来のように打設されたコンクリート16の位置を監視し、トンネル10の長さ方向に沿ったコンクリート16の高さの偏りが発生した場合に、コンクリート16の高さの偏りを解消するように打設管24の切り替え操作などを手作業で行なう必要がなく自動化を図れるので、省人化を図る上で有利となり、また、コンクリート16の高さの偏りを抑制しつつ均一にコンクリート16を打設できるので、トンネル施工の効率化を図る上で有利となる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、コンクリート打設型枠22の側部3402においてコンクリート16の位置情報は、トンネル10の長さ方向をX軸とし、トンネル10の高さ方向をY軸とした2次元座標上に示されるので、制御部32C、判定部32D、特定部32Eが位置情報に基づいて実行する制御処理を簡単かつ迅速に行なう上で有利となる。
また、本実施の形態によれば、コンクリート打設型枠22の上部3404においてコンクリート16の位置情報は、トンネル10の長さ方向をX軸とし、トンネル10の幅方向をY軸とした2次元座標上に示されるので、制御部32C、判定部32D、特定部32Eが位置情報に基づいて実行する制御処理を簡単かつ迅速に行なう上で有利となる。
【0037】
また、本実施の形態では、線状のレベルセンサー44を用いてコンクリート16の位置を検出する場合について説明したが、コンクリート16の位置を検出するセンサーは、コンクリート16の位置を検出できればよく、打設されたコンクリート16の温度を検出する温度センサー、打設されたコンクリート16が接触する際の振動を検出する振動センサーなど従来公知の様々なセンサーなどが使用可能である。
しかしながら、これらのセンサーは、コンクリート16の位置をごく狭い範囲で検出するものであるため、トンネル10の周方向および長さ方向に沿った位置を満遍なく検出するためには多数のセンサーを設けなくてはならず、センサーの設置作業が面倒で部品コストが多大なものとなりやすい。
これに対して本実施の形態では、コンクリート16に接触することによりコンクリート16の比誘電率に応じて一対の電極線4402間に生じる静電容量が変化する線状のレベルセンサー44を用い、このレベルセンサー44を、トンネル10の内壁面12に対向するコンクリート打設型枠22の外周面にトンネル10の長さ方向および周方向に沿って延在して設けた。
したがって、少ない数の線状のレベルセンサー44をトンネル10の周方向、長さ方向に沿って設置すれば、トンネル10の周方向および長さ方向に沿ったコンクリート16の位置を満遍なく検出できるため、センサーの設置作業を軽減でき、また、部品コストを抑制する上で有利となる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、検出部30は、トンネル10の長さ方向および周方向に沿って延在して設けられたレベルセンサー44の静電容量の変化に基づいてレベルセンサー44の長さ方向に沿ったコンクリート16の位置を算出し、算出されたコンクリート16の位置に基づいて位置情報を生成する。
したがって、トンネル10の長さ方向および周方向に沿ったコンクリート16の位置情報を正確に得ることができ、制御部32C、判定部32D、特定部32Eが位置情報に基づいて制御処理を的確に行なう上で有利となる。
【0039】
なお、本実施の形態では、複数の打設管24の打設管先部2402が各打設孔40に連通するように型枠本体34の内周面側で固定されている場合について説明したが、打設孔40に代えて開閉可能な窓部を型枠本体34に設けると共に、各打設管24の打設管先部2402が窓部を介して型枠本体34から出没するように構成してもよい。
この場合、制御部32Cは、窓部を開閉するアクチュエータ、打設管先部2402を出没させるアクチュエータを制御すればよい。
【0040】
また、本実施の形態では、位置情報生成部32Bが、位置算出部32Aで算出された各レベルセンサー44に対応するコンクリート16の位置に基づいて、型枠本体34に対するコンクリート16の位置を2次元座標上に表す位置情報を生成する場合について説明した。
しかしながら、位置情報生成部32Bが、位置算出部32Aで算出された各レベルセンサー44に対応するコンクリート16の位置に基づいて、型枠本体34に対するコンクリート16の位置を3次元座標上に表す位置情報を生成するものであってもよい。
この場合、コンクリート打設型枠22の側部3402、あるいは、上部3404において、位置情報は、トンネル10の長さ方向をX軸とし、トンネル10の幅方向をY軸とし、トンネル10の高さ方向をZ軸とした3次元座標上に示される。
このように型枠本体34に対するコンクリート16の位置を示す位置情報を3次元座標上に示すと、制御部32C、判定部32D、特定部32Eが位置情報に基づいて実行する制御処理を簡単かつ迅速に行なう上で有利となることは無論のこと、例えば、型枠本体34に対するコンクリート16の位置をディスプレイ3214などに3次元画像として表示する場合に、型枠本体34に対するコンクリート16の位置を直感的に把握することができ、コンクリート16の打設位置の管理を行なう上でより有利となる。
【0041】
また、本実施の形態では、レベルセンサー44を、トンネル10の内壁面12に対向するコンクリート打設型枠22の外周面にトンネル10の長さ方向および周方向に沿って延在して設けた場合について説明した。
しかしながら、レベルセンサー44は、コンクリート16に接触することによりコンクリート16の比誘電率に応じて一対の電極線4402間に生じる静電容量が変化すればよく、レベルセンサー44を設ける箇所はコンクリート打設型枠22の外周面に限定されない。
したがって、レベルセンサー44を、トンネル10の内壁面12の半径方向外側で掘削された地山の壁面に当て付けられた防水シート1204にトンネル10の長さ方向および周方向に沿って延在して設けてもよい。
すなわち、レベルセンサー44がコンクリート16に接触するとは、レベルセンサー44がコンクリート16に直接接触する場合に加え、レベルセンサー44が他の部材を介して接触する場合を含み、例えば、防水シート1204、あるいは、一次覆工コンクリート16を介してコンクリート16に接近する場合を含む。
したがって、レベルセンサー44を配置する箇所は、一次覆工がなされる防水シート1204の表面(地山の壁面と反対側の面)でもよく、また、レベルセンサー44を防水シート1204の内部に取り付けても良い。
これらの場合は、レベルセンサー44が一次覆工あるいは防水シート1204で保護されるため、打設されたコンクリート16によるレベルセンサー44の位置ずれを抑制する上でより有利となる。
【0042】
また、トンネル10の内壁面12とコンクリート打設型枠22との間に補強用の鉄筋が設けられる場合は、それら鉄筋にレベルセンサー44をトンネル10の長さ方向および周方向に沿って延在して設けてもよい。
補強用の鉄筋は、例えば、地山が薄い箇所や地山の強度が足りない箇所に配設される。
例えば、トンネル10の入口や出口の近傍の箇所に部分的に鉄筋が配設される。あるいは、河川の下方の地山の箇所に部分的に鉄筋が配設される。あるいは、都市部のように地山の強度が弱い場合はトンネル10の全長にわたって鉄筋が配設される。
これらの場合は、レベルセンサー44が鉄筋に設けられるため、打設されたコンクリート16によるレベルセンサー44の位置ずれを抑制する上でより有利となる。