(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は二次元的な電極構造を説明するための概念図である。
従来、蓄電池は二次元的(平面的)な電極構造を有している。すなわち平面的な正極201と平面的な負極202とが互いに対向している。
【0005】
二次元的な電極構造において、蓄電池の体積エネルギー密度(単位体積あたりに蓄電可能な電力量)を高めるためには、電極を厚くし、かつ電極以外の構成(例えば集電体等)を相対的に薄くする必要がある。しかし電極が厚くなる程、出力が低下すると考えられる。電極の厚さ方向における電荷担体の移動速度の影響が大きくなるためと考えられる。すなわち二次元的な電極構造では体積エネルギー密度と出力とがトレードオフの関係にある。該トレードオフの関係から脱却するため、革新的技術が求められている。
【0006】
図2は三次元的な電極構造を説明するための概念図である。
Ferrariらの報告(非特許文献1)は三次元電池を開示している。Ferrariらの三次元電池は、例えば櫛歯状の正極301と、櫛歯状の負極302とが噛み合わされた構造を有する。正極および負極が立体的に隣接していることにより、単位体積あたりの反応面積(対向面積)が大きくなり、かつ電荷担体の移動経路が短縮されることが期待される。三次元電池によれば、体積エネルギー密度および出力の両立が期待される。しかしFerrariらの三次元電池はマイクロメートルスケールである。
【0007】
本開示の目的は、少なくともセンチメートルスケールを有し得る三次元電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本開示の作用メカニズムは推定を含んでいる。作用メカニズムの正否により、特許請求の範囲が限定されるべきではない。
【0009】
〔1〕本開示の蓄電池は、多孔質基材、第1電極層、イオン伝導体層および第2電極層を少なくとも含む。多孔質基材は導電性の骨格からなる。骨格は三次元網目構造を形成している。多孔質基材の内部の少なくとも一部において、骨格の表面に、第1電極層、イオン伝導体層および第2電極層がこの順序で積層されている。第1電極層および第2電極層は互いに異なる極性を有する。
【0010】
本開示の蓄電池では、電極構造の基礎である骨格が三次元網目構造を形成している。骨格の表面に、第1電極層、イオン伝導体層および第2電極層がこの順序で積層されている。したがって第1電極層、イオン伝導体層および第2電極層も、それぞれ三次元網目構造を形成していると考えられる。これにより第1電極層および第2電極層は立体的に隣接することになると考えられる。すなわち本開示の蓄電池は三次元電池であると考えられる。
【0011】
骨格は導電性である。骨格は第1電極層の集電体としても機能し得る。骨格が集電体として機能することにより、簡素な集電構造になり得る。集電構造が簡素であることは、すなわち電極以外の部品が少ないことを意味する。電極以外の部品が少ないことにより、蓄電池内において、電極を充填できる空間が大きくなることが期待される。
【0012】
第1電極層および第2電極層はイオン伝導体層によって隔てられている。イオン伝導体層は第1電極層と第2電極層との間のイオン伝導を担う層である。イオン伝導体層は例えば固体電解質を含んでもよい。イオン伝導体層は例えばゲル電解質を含んでもよい。
【0013】
後述の実施例に示されるように、上記〔1〕の構造により、少なくともセンチメートルスケールを有し得る三次元電池が提供され得る。
【0014】
なお「多孔質基材の内部」は、多孔質基材の外表面よりも多孔質基材の幾何中心に近い部分を示す。
【0015】
「三次元網目構造」は次の(i)および(ii)の条件を少なくとも満たす構造を示す。(i)三次元空間において、物体が少なくとも三方向に分岐している。(ii)すべての分岐方向が乗る平面が存在しない。
【0016】
〔2〕本開示の蓄電池は液体電解質をさらに含んでもよい。第1電極層および第2電極層はそれぞれ多孔質であってもよい。イオン伝導体層はゲル電解質を含んでもよい。液体電解質は第1電極層、ゲル電解質および第2電極層に浸透していてもよい。
【0017】
液体電解質中では電荷担体の移動速度が高いことが期待される。液体電解質が電極構造全体に行き渡っていることにより、出力の向上が期待される。
【0018】
ゲル電解質は、高分子材料(ホスト)に液体電解質(ゲスト)が浸透し、高分子材料が膨潤することにより形成され得る。ゲル電解質は柔軟性および弾力性を有し得る。第1電極層および第2電極層は充放電に伴って膨張し、収縮すると考えられる。ゲル電解質は、第1電極層および第2電極層の体積変化に応じて変形することができると考えられる。イオン伝導体層がゲル電解質を含むことにより、第1電極層、イオン伝導体層および第2電極層の接続状態が安定することが期待される。さらに第1電極層および第2電極層の体積変化によって生じる歪みを逃がすこともできると考えられる。これにより例えばサイクル耐久性等の向上が期待される。
【0019】
〔3〕第1電極層および第2電極層はそれぞれ固定層であってもよい。
【0020】
「固定層」は支持体に固定された層を示す。第1電極層は骨格(支持体)の表面に固定され得る。第2電極層はイオン伝導体層(支持体)の表面に固定され得る。第1電極層および第2電極層は、例えばそれらに含まれるバインダによって支持体に接着され得る。バインダは、第1電極層および第2電極層に含まれる構成要素同士を接着する機能も有し得る。第1電極層および第2電極層の構成要素は、例えば正極活物質(または負極活物質)、導電材、固体電解質等を示す。
【0021】
第1電極層および第2電極層が固定層であることにより、第1電極層および第2電極層が流動し得る状態に比し、第1電極層および第2電極層の充填率が高まることが期待される。すなわち体積エネルギー密度の向上が期待される。
【0022】
〔4〕骨格が第2電極層の周囲を取り囲む形状となる断面において、第1電極層およびイオン伝導体層はそれぞれ第2電極層の周囲を取り囲んでいてもよい。
【0023】
該構成によれば、多孔質基材の内部の空孔に、第1電極層、イオン伝導体層および第2電極層が隙間なく充填され得る。これにより体積エネルギー密度の向上が期待される。
【0024】
〔5〕多孔質基材の外表面の一部に第2電極層が露出していてもよい。
【0025】
露出した第2電極層に集電部材(例えば集電タブ等)を接合することにより、第2電極層全体から集電することができると考えられる。すなわち集電構造がいっそう簡素になると考えられる。
【0026】
〔6〕本開示の蓄電池はリチウムイオン蓄電池であってもよい。
【0027】
本開示によれば、三次元電池であり、かつ実用的な容量を有するリチウムイオン蓄電池が提供され得る。
【0028】
〔7〕本開示の蓄電池の製造方法は以下の(A)および(B)を少なくとも含む。
(A)導電性の骨格からなり、該骨格が三次元網目構造を形成している、多孔質基材を準備する。
(B)多孔質基材の内部の少なくとも一部において、骨格の表面に、第1電極層、イオン伝導体層および第2電極層をこの順序で積層する。
第1電極層および第2電極層は互いに異なる極性を有する。
【0029】
該製造方法によれば、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の蓄電池が製造され得る。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記される)が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。例えば以下、リチウムイオン蓄電池への適用例が説明される。しかし本実施形態の蓄電池はリチウムイオン蓄電池に限定されるべきではない。本実施形態は、例えばナトリウムイオン蓄電池、アルカリ蓄電池等にも適用され得る。
【0032】
<蓄電池>
図3は本実施形態の蓄電池の構成の一例を示す概略図である。
蓄電池100はリチウムイオン蓄電池(「リチウムイオン二次電池」とも称される)である。すなわち蓄電池100は充電が可能なリチウム電池である。
【0033】
蓄電池100は外装材20を含む。外装材20の材質、形状は特に限定されるべきではない。外装材20は、例えばアルミラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。外装材20は、例えば金属製または樹脂製の容器等であってもよい。外装材20は、例えば扁平形状、円筒形状、直方体形状等を有し得る。
【0034】
図4は本実施形態の蓄電池の構成の一例を示す断面概略図である。
外装材20は多孔質基材10を収納している。多孔質基材10には第1集電タブ21および第2集電タブ22が接続されている。第1集電タブ21および第2集電タブ22は、外装材20の外部に突出している。第1集電タブ21および第2集電タブ22は、外部端子としての機能も有し得る。第1集電タブ21および第2集電タブ22は、例えば金属製の薄板等であってもよい。
【0035】
第2電極層12(後述)が多孔質基材10の外表面の一部に露出していてもよい。露出した第2電極層12に第2集電タブ22が接合されることにより、簡素な集電構造が形成され得る。この場合、第2電極層12は、電子伝導性に優れる活物質を含むことが望ましい。電子伝導性に優れる活物質としては、例えば黒鉛等が考えられる。第2電極層12は直接、第2集電タブ22と接合されていてもよい。第2電極層12および第2集電タブ22の間に金属膜(図示されず)が形成されていてもよい。
【0036】
《多孔質基材》
多孔質基材10の外形は特に限定されるべきではない。多孔質基材10は、例えば角柱状、直方体状、円柱状、シート状、円板状等であってもよい。
【0037】
図5は骨格の一例を示す概念図である。
多孔質基材10は骨格1からなる。骨格1は電極構造の基礎である。骨格1は三次元網目構造を形成している。骨格1は多孔質基材10の全域に亘って連続していると考えられる。三次元網目構造は規則的な構造であってもよい。三次元網目構造は不規則な構造であってもよい。骨格1は繊維状であってもよい。骨格1は曲面状であってもよい。骨格1は例えばジャイロイド構造等を有してもよい。骨格1は例えば逆オパール構造等を有してもよい。
【0038】
骨格1は導電性である。「骨格が導電性である」とは、0℃以上25℃以下の温度範囲において10
-3Ω・m以下の抵抗率を有する材料により骨格1が形成されていることを示す。材料の抵抗率は例えば「化学便覧(日本化学会編、丸善出版発行)」等に記載されている文献値であってもよい。
【0039】
骨格1は例えば金属等により形成されていてもよい。多孔質基材10は例えば発泡金属等であってもよい。金属は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等であってもよい。骨格1は例えば導電性炭素により形成されていてもよい。導電性炭素は、例えば黒鉛等であってもよい。骨格1は中実であってもよい。骨格1は中空であってもよい。
【0040】
多孔質基材10において骨格1を除く部分には空孔2が形成されている。多孔質基材10は、例えば25%以上75%以下の空隙率を有してもよい。空隙率は多孔質基材10における空隙体積の比率を示す。「空隙率」は下記式:
空隙率=1−(多孔質基材の見かけ比重/多孔質基材を形成する材料の真比重)
により算出される。見かけ比重は多孔質基材10の外形寸法から算出される比重を示す。
【0041】
空孔2は多孔質基材10の全域に亘って連続していてもよい。すなわち空孔2は連続空孔であってもよい。空孔2の形状は特に限定されるべきではない。空孔2の形状はランダムであってもよい。
【0042】
空孔2は、例えば50μm以上1000μm以下の平均直径を有してもよい。空孔2の平均直径は次のように測定される。すなわち多孔質基材10の外表面において、単位長さ当たりの空孔2の個数が計数される。単位長さ当たりの空孔2の個数の逆数が、空孔2の平均直径とされる。平均直径は少なくとも3回測定される。少なくとも3回の算術平均が採用される。
【0043】
図6は電極構造の一例を示す断面概念図である。
本実施形態では、多孔質基材10の内部の少なくとも一部において、骨格1の表面に、第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12がこの順序で積層されている。第1電極層11および第2電極層12はイオン伝導体層13によって隔てられている。
【0044】
第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12は、多孔質基材10の内部の全域に亘って形成されていてもよい。電極構造が形成される領域の体積は、蓄電池100の仕様に合わせて適宜変更され得る。
【0045】
第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12は、骨格1の表面に沿って形成されていると考えられる。そのため第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12も、それぞれ三次元網目構造を形成していると考えられる。第1電極層11および第2電極層12が立体的に隣接していることにより、単位体積あたりの反応面積が大きくなり、かつ電荷担体の移動距離が短縮されることが期待される。これにより体積エネルギー密度および出力の両立が期待される。
【0046】
なお本実施形態の電荷担体はリチウムイオンである。電荷担体はイオン伝導体層13内を移動し、第1電極層11と第2電極層12との間を行き来する。
【0047】
第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12は、それぞれ全域に亘って連続していることが望ましい。すなわち第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12は、それぞれ、孤立した部分を実質的に有しないことが望ましい。ただし蓄電池100の充放電が可能である限り、第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12の一部に不連続な部分があってもよい。
【0048】
骨格1は第1電極層11の集電体として機能し得る。多孔質基材10の外表面において、骨格1の一部に第1集電タブ21が接合されることにより、第1電極層11全体から集電を行うことができると考えられる。すなわち簡素な集電構造が形成され得る。
【0049】
図6には、骨格1が第2電極層12の周囲を取り囲む形状となる断面が示されている。該断面において、第1電極層11およびイオン伝導体層13がそれぞれ第2電極層12の周囲を取り囲んでいてもよい。該構成によれば、空孔2(
図5)に、第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12が隙間なく充填され得る。これにより体積エネルギー密度の向上が期待される。
【0050】
《第1電極層および第2電極層》
第1電極層11および第2電極層12は、それぞれ、例えば2μm以上500μm以下の厚さを有してもよい。本実施形態において、第1電極層11、第2電極層12およびイオン伝導体層13の厚さは、例えば断面電子顕微鏡画像において測定される。例えば
図6の断面において、第1電極層11内の或る点から最短距離で第2電極層12に到達できる方向が厚さ方向とされる。各構成の厚さは少なくとも3箇所で測定される。少なくとも3箇所の算術平均が採用される。
【0051】
第1電極層11および第2電極層12はそれぞれ多孔質であってもよい。第1電極層11および第2電極層12がそれぞれ多孔質である場合、第1電極層11および第2電極層12の内部の空隙に、液体電解質を浸透させることができる。すなわち蓄電池100は液体電解質をさらに含んでもよい。蓄電池100が液体電解質をさらに含むことにより、出力の向上が期待される。液体電解質中では電荷担体の移動速度が高いことが期待されるためである。
【0052】
第1電極層11および第2電極層12は、それぞれ、例えば5%以上50%以下の空隙率を有してもよい。第1電極層11および第2電極層12は、それぞれ、例えば15%以上40%以下の空隙率を有してもよい。第1電極層11(または第2電極層12)の空隙率は、例えば第1電極層11(または第2電極層12)の断面電子顕微鏡画像において、画像全体の面積に対する、空孔2の合計面積の比率として算出され得る。
【0053】
イオン伝導体層13が固体電解質を含む場合、第1電極層11および第2電極層12はそれぞれ稠密であることが望ましい。すなわち第1電極層11および第2電極層12は、それぞれ、例えば5%未満の空隙率を有してもよい。
【0054】
イオン伝導体層13が固体電解質を含む場合、第1電極層11および第2電極層12はそれぞれ固体電解質をさらに含んでもよい。固体電解質は例えば粒子であり得る。固体電解質は例えば0.1μm以上30μm以下のD50を有してもよい。「D50」は、レーザ回折散乱法によって測定される体積基準の粒度分布において微粒側からの累積粒子体積が全粒子体積の50%になる粒径を示す。
【0055】
第1電極層11(または第2電極層12)における固体電解質含量は、第1電極層11(または第2電極層12)に対して、例えば1体積%以上60体積%以下であってもよい。固体電解質含量(体積比率)は、例えば第1電極層11(または第2電極層12)の断面電子顕微鏡画像において、画像全体の面積に対する、固体電解質の合計面積の比率として算出され得る。
【0056】
第1電極層11および第2電極層12はそれぞれ固定層であってもよい。第1電極層11および第2電極層12が固定層であることにより、多孔質基材10の内部における第1電極層11および第2電極層12の充填率が高まることが期待される。
【0057】
第1電極層11および第2電極層12は互いに異なる極性を有する。すなわち第1電極層11が正極である時、第2電極層12は負極である。第1電極層11が負極である時、第2電極層12は正極である。第1電極層11は正極であってもよい。第1電極層11は負極であってもよい。
【0058】
電荷担体(リチウムイオン)は、正極活物質によって蓄電池100内に持ち込まれてもよい。電荷担体は負極活物質によって蓄電池100内に持ち込まれてもよい。すなわち初回充放電前の状態において、正極活物質がリチウムイオンを含んでいてもよい。負極活物質がリチウムイオンを含んでいてもよい。
【0059】
(正極)
正極は正極活物質を少なくとも含む。正極は固体電解質、導電材およびバインダをさらに含んでもよい。正極活物質は典型的には粒子である。正極活物質は例えば1μm以上30μm以下のD50を有してもよい。
【0060】
正極活物質は特に限定されるべきではない。正極活物質は、例えばリチウム遷移金属複合酸化物等であってもよい。リチウム遷移金属複合酸化物は各種の結晶構造を有し得る。リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば層状岩塩型、スピネル型、オリビン型等の結晶構造を有し得る。リチウム遷移金属複合酸化物は、例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2、LiFePO
4等であってもよい。1種の正極活物質が単独で使用されてもよい。2種以上の正極活物質が組み合わされて使用されてもよい。
【0061】
導電材も特に限定されるべきではない。導電材は例えばカーボンブラック等であってもよい。正極の導電材含量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば1質量部以上20質量部以下であってもよい。バインダも特に限定されるべきではない。バインダは例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等であってもよい。正極のバインダ含量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば1質量部以上10質量部以下であってもよい。
【0062】
(負極)
負極は負極活物質を少なくとも含む。負極は固体電解質、導電材およびバインダをさらに含んでもよい。負極活物質は典型的には粒子である。負極活物質は例えば1μm以上30μm以下のD50を有してもよい。
【0063】
負極活物質は特に限定されるべきではない。負極活物質は、例えば黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、珪素、酸化珪素、珪素基合金、錫、酸化錫、錫基合金、Li
4Ti
5O
12等であってもよい。黒鉛は人造黒鉛であってもよい。黒鉛は天然黒鉛であってもよい。1種の負極活物質が単独で使用されてもよい。2種以上の負極活物質が組み合わされて使用されてもよい。
【0064】
導電材も特に限定されるべきではない。導電材は例えばカーボンブラック等であってもよい。負極の導電材含量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば1質量部以上10質量部以下であってもよい。電子伝導性に優れる負極活物質(例えば黒鉛等)が使用される場合、導電材が実質的に不要な場合もある。
【0065】
バインダも特に限定されるべきではない。バインダは例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等であってもよい。負極のバインダ含量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば1質量部以上10質量部以下であってもよい。イオン伝導体層13がゲル電解質を含む場合、バインダが実質的に不要な場合もある。負極活物質がゲル電解質(高分子材料)に付着することにより、固定層が形成され得るためである。バインダは抵抗率が高い傾向がある。バインダが使用されないことにより、例えば出力等の向上が期待される。
【0066】
《イオン伝導体層》
イオン伝導体層13は第1電極層11および第2電極層12の間に介在する。イオン伝導体層13は隔壁として機能する。すなわちイオン伝導体層13はセパレータとして機能する。イオン伝導体層13は例えば1μm以上50μm以下の厚さを有してもよい。
【0067】
(固体電解質)
イオン伝導体層13は例えば固体電解質を含んでもよい。イオン伝導体層13は例えば実質的に固体電解質のみからなる層であってもよい。イオン伝導体層13は例えば固体電解質に加えてバインダをさらに含んでもよい。バインダは正極および負極のバインダとして例示された材料であってもよい。
【0068】
固体電解質は特に限定されるべきではない。固体電解質は例えば酸化物系固体電解質であってもよい。固体電解質は、例えばLiNbO
3、Li
3BO
3、LiBO
2、Li
2O−B
2O
3−ZnO、LiAlO
2、Li
4SiO
4−Li
3PO
4、Li
2O−SiO
2、Li
2SiO
3、Li
3PO
4、Li
3PO
4N、Li
2SO
4、Li
0.5La
0.5TiO
3、Li
5La
3Ta
2O
12、Li
2ZrO
3、Li
7La
3Zr
2O
12、Li
2MoO
4およびLi
2WO
4等であってもよい。
【0069】
固体電解質は例えば硫化物系固体電解質であってもよい。固体電解質は、例えばLi
2S−P
2S
5、Li
2S−P
2S
5−LiI、Li
2S−P
2S
5−LiCl、Li
2S−P
2S
5−LiBr、Li
2S−P
2S
5−Li
2O、Li
2S−P
2S
5−Li
2O−LiI、Li
2S−SiS
2、Li
2S−SiS
2−LiI、Li
2S−SiS
2−LiBr、Li
2S−SiS
2−LiCl、Li
2S−SiS
2−B
2S
3−LiI、Li
2S−SiS
2−P
2S
5−LiI、Li
2S−B
2S
3、Li
2S−GeS
2、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4およびLi
10GeP
2S
12等であってもよい。
【0070】
1種の固体電解質が単独で使用されてもよい。2種以上の固体電解質が組み合わされて使用されてもよい。なおここに例示される固体電解質は、前述のように第1電極層11および第2電極層12にも含まれ得る。
【0071】
(ゲル電解質)
イオン伝導体層13はゲル電解質を含んでもよい。イオン伝導体層13は例えば実質的にゲル電解質のみからなる層であってもよい。イオン伝導体層13は例えばゲル電解質および固体電解質の両方を含んでもよい。
【0072】
ゲル電解質は高分子材料および液体電解質を含む。ゲル電解質は、高分子材料(ホスト)に液体電解質(ゲスト)が浸透し、高分子材料が膨潤することにより形成され得る。ゲル電解質は柔軟性および弾力性を有し得る。イオン伝導体層13がゲル電解質を含むことにより、第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12の接続状態が安定することが期待される。さらに第1電極層11および第2電極層12の体積変化によって生じる歪みを逃がすこともできると考えられる。これにより例えばサイクル耐久性等の向上が期待される。
【0073】
高分子材料は液体電解質を吸収することによりゲルを形成する材料である限り、特に限定されるべきではない。高分子材料は、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、PVdF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体(PVdF−HFP)等であってもよい。1種の高分子材料が単独で使用されてもよい。2種以上の高分子材料が組み合わされて使用されてもよい。
【0074】
高分子材料は架橋されていてもよい。すなわち高分子材料は高分子マトリックス材料であってもよい。高分子材料が高分子マトリックスを形成していることにより、ゲル電解質の弾力性、液体保持能力等の向上が期待される。
【0075】
(液体電解質)
蓄電池100は液体電解質をさらに含んでもよい。第1電極層11および第2電極層12が多孔質であり、イオン伝導体層13がゲル電解質を含む場合、液体電解質は第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12に浸透し得る。液体電解質が電極構造全体に行き渡ることにより、出力の向上が期待される。液体電解質は例えば電解液であってもよい。液体電解質は例えばイオン液体であってもよい。
【0076】
電解液は電解質溶液である。電解液は溶媒および支持塩を含む。溶媒は特に限定されるべきではない。溶媒は、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、アセトニトリル(AN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等であってもよい。1種の溶媒が単独で使用されてもよい。2種以上の溶媒が組み合わされて使用されてもよい。
【0077】
電解液は例えば0.5mоl/l以上5mоl/l以下の支持塩を含んでもよい。支持塩は特に限定されるべきではない。支持塩は、例えばLiPF
6、LiBF
4、LiN(SO
2F)
2等であってもよい。1種の支持塩が単独で使用されてもよい。2種以上の支持塩が組み合わされて使用されてもよい。電解液は各種の添加剤をさらに含んでもよい。
【0078】
<蓄電池の製造方法>
図7は本実施形態の蓄電池の製造方法の概略を示すフローチャートである。
本実施形態の蓄電池の製造方法は「(A)多孔質基材の準備」および「(B)積層」を少なくとも含む。
【0079】
《(A)多孔質基材の準備》
本実施形態の蓄電池の製造方法は多孔質基材10を準備することを含む。多孔質基材10の詳細は前述の通りである。すなわち多孔質基材10は導電性の骨格1からなる。骨格1は三次元網目構造を形成している。
【0080】
市販品の購入により、多孔質基材10が準備されてもよい。多孔質基材10が製造されてもよい。例えば金属を発泡させることにより、多孔質基材10が製造されてもよい。例えば、めっき処理によって多孔質樹脂に金属を付着させてもよい。金属の付着後、熱処理によって多孔質樹脂が除去されることにより、金属製の多孔質基材10が製造され得る。
【0081】
第1電極層11等の形成に先立ち、第1集電タブ21が多孔質基材10に接合されてもよい。第1集電タブ21は例えば溶接により多孔質基材10に接合され得る。
【0082】
《(B)積層》
本実施形態の蓄電池の製造方法は、多孔質基材10の内部の少なくとも一部において、骨格1の表面に、第1電極層11、イオン伝導体層13および第2電極層12をこの順序で積層することを含む。前述のように第1電極層11および第2電極層12は互いに異なる極性を有する。
【0083】
1.イオン伝導体層が固体電解質を含む場合
イオン伝導体層13が固体電解質を含む場合、例えば以下の製造方法により蓄電池100が製造され得る。
【0084】
第1電極層11およびイオン伝導体層13は、それぞれ例えばディップ法により逐次形成され得る。「ディップ法」は液状塗料にワーク(塗布対象物)を浸漬し、ワークを引き上げ、乾燥することにより、ワークの表面に塗布層を形成する方法を示す。
【0085】
例えば、正極活物質(または負極活物質)、導電材、固体電解質、バインダおよび溶媒等が混合されることにより、第1電極懸濁液が調製される。溶媒は例えば、正極活物質(または負極活物質)、固体電解質、バインダ等の種類に応じて適宜選択され得る。第1電極懸濁液は第1電極層11の前駆体である。懸濁液は「スラリー」と称されることもある。
【0086】
第1電極懸濁液に多孔質基材10が浸漬される。多孔質基材10が第1電極懸濁液から引き上げられる。多孔質基材10に付着した第1電極懸濁液が乾燥される。これにより第1電極層11が形成され得る。第1電極層11は骨格1の表面に積層されていると考えられる。
【0087】
固体電解質、バインダおよび溶媒が混合されることにより、固体電解質懸濁液が調製される。固体電解質懸濁液はイオン伝導体層13の前駆体である。第1電極層11の形成後、多孔質基材10が固体電解質懸濁液に浸漬される。多孔質基材10が固体電解質懸濁液から引き上げられる。多孔質基材10に付着した固体電解質懸濁液が乾燥される。これによりイオン伝導体層13が形成され得る。イオン伝導体層13は第1電極層11の表面に積層されていると考えられる。イオン伝導体層13は固体電解質を含む。
【0088】
イオン伝導体層13は、多孔質基材10に空孔2が残存するように形成される。この段階での空孔2は、その内壁が第1電極層11およびイオン伝導体層13によって被覆されている。イオン伝導体層13の形成後、残存する空孔2内において、第2電極層12が形成される。第1電極層11および第2電極層12はイオン伝導体層13によって隔てられることになる。
【0089】
第2電極層12は例えば濾過法によって形成され得る。例えば負極活物質(または正極活物質)、導電材、固体電解質、バインダおよび溶媒等が混合されることにより、第2電極懸濁液が調製される。第2電極懸濁液は第2電極層12の前駆体である。
【0090】
イオン伝導体層13の形成後、多孔質基材10を濾材として第2電極懸濁液が濾過される。これにより多孔質基材10に残存する空孔2に固体材料(活物質等)が充填される。これにより第2電極層12が形成され得る。第2電極層12はイオン伝導体層13の表面に積層されていると考えられる。第2電極懸濁液の溶媒は濾液として分離される。
【0091】
第2電極層12は多孔質基材10の外表面の一部に露出するように形成されてもよい。第2電極層12の形成後、多孔質基材10が乾燥される。
【0092】
多孔質基材10の乾燥後、第2集電タブ22が第2電極層12に接合されてもよい。第2集電タブ22は第2電極層12に直接接合されてもよい。第2集電タブ22および第2電極層12の間に金属膜が形成されてもよい。例えば蒸着法等により、第2電極層12の表面に金(Au)等の薄膜が形成されてもよい。薄膜に第2集電タブ22が溶接されてもよい。
【0093】
第2電極層12の形成後、多孔質基材10が外装材20に収納される。外装材20の詳細は前述の通りである。外装材20が密閉される。以上より蓄電池100が製造され得る。
【0094】
2.イオン伝導体層がゲル電解質を含む場合
イオン伝導体層13がゲル電解質を含む場合、例えば以下の製造方法により蓄電池100が製造され得る。
【0095】
例えば、正極活物質(または負極活物質)、導電材、バインダおよび溶媒等が混合されることにより、第1電極懸濁液が調製される。第1電極懸濁液に多孔質基材10が浸漬される。多孔質基材10が第1電極懸濁液から引き上げられる。多孔質基材10に付着した第1電極懸濁液が乾燥される。これにより第1電極層11が形成され得る。第1電極層11は骨格1の表面に積層されていると考えられる。第1電極層11は多孔質になり得る。粒子(正極活物質等)間に空隙が形成され得るためである。
【0096】
例えば、高分子材料が溶媒に溶解されることにより高分子溶液が調製される。第1電極層11の形成後、多孔質基材10が高分子溶液に浸漬される。多孔質基材10が高分子溶液から引き上げられる。多孔質基材10に付着した高分子溶液が乾燥される。これにより高分子層が形成され得る。高分子層はゲル電解質の前駆体である。高分子層は第1電極層11の表面に積層されていると考えられる。
【0097】
高分子層は、多孔質基材10に空孔2が残存するように形成される。この段階での空孔2は、その内壁が第1電極層11および高分子層によって被覆されている。高分子層の形成後、残存する空孔2内において、第2電極層12が形成される。第1電極層11および第2電極層12は高分子層によって隔てられることになる。高分子層は例えば1μm以上50μm以下の厚さを有するように形成されてもよい。後に高分子層が液体電解質によって膨潤することにより、厚さが増加することもあり得る。
【0098】
例えば負極活物質(または正極活物質)、導電材、バインダおよび溶媒等が混合されることにより、第2電極懸濁液が調製される。第2電極懸濁液は第2電極層12の前駆体である。
【0099】
高分子層の形成後、多孔質基材10を濾材として第2電極懸濁液が濾過される。これにより多孔質基材10に残存する空孔2に固体材料が充填される。これにより第2電極層12が形成され得る。第2電極層12は高分子層の表面に積層されていると考えられる。第2電極層12は多孔質になり得る。粒子(負極活物質等)間に空隙が形成され得るためである。第2電極懸濁液の溶媒は濾液として分離される。
【0100】
第2電極層12は多孔質基材10の外表面の一部に露出するように形成されてもよい。第2電極層12の形成後、多孔質基材10が乾燥される。多孔質基材10の乾燥後、第2集電タブ22が第2電極層12に接合されてもよい。第2集電タブ22の接合方法は前述のとおりである。
【0101】
第2電極層12の形成後、多孔質基材10が外装材20に収納される。外装材20に液体電解質が注入される。液体電解質の詳細は前述の通りである。外装材20が密閉される。液体電解質が第1電極層11、高分子層および第2電極層12に含浸される。高分子層に液体電解質が浸透することにより、高分子層が膨潤し、ゲル電解質が形成され得る。これによりイオン伝導体層13が形成され得る。すなわちイオン伝導体層13はゲル電解質を含む。以上より蓄電池100が製造され得る。
【0102】
<用途>
本実施形態の蓄電池100は少なくともセンチメートルスケールを有し得る。そのため本実施形態の蓄電池100は実用的な容量を有し得る。本実施形態の蓄電池100がリチウムイオン蓄電池である場合、例えば2Ah以上の容量を有し得る。すなわち本実施形態の蓄電池100は、18650サイズ(直径 18mm、高さ 65mm)のリチウムイオン蓄電池と同等以上の容量を有することが期待される。
【0103】
本実施形態の蓄電池100は三次元電池であるため、高エネルギー密度および出力の両立が期待される。したがって本実施形態の蓄電池100は、例えばハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等の駆動用電源に好適であると考えられる。ただし本実施形態の蓄電池100の用途は車載用途に限定されるべきではない。本実施形態の蓄電池100は、あらゆる用途に適用可能であると考えられる。
【実施例】
【0104】
以下、本開示の実施例が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0105】
<蓄電池の製造>
以下のようにして実施例に係る蓄電池100が製造された。
【0106】
《(A)多孔質基材の準備》
多孔質基材10として住友電工社製のニッケル多孔体(商品名「セルメット(登録商標)」、品番「♯4」、空孔の平均直径 900μm程度)が準備された。多孔質基材10は「0.5cm×0.5cm×3.5cm」の外形寸法を有する。
【0107】
《(B)積層》
以下の材料が準備された。
正極活物質:LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2(粉末)
導電材:カーボンブラック
バインダ:PVdF
溶媒:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)
【0108】
正極活物質、導電材、バインダおよび溶媒が混合されることにより、第1電極懸濁液が調製された。固形分の混合比は「正極活物質:導電材:バインダ=90.5:8:1.5(質量比)」である。第1電極懸濁液に多孔質基材10が浸漬された。多孔質基材10が第1電極懸濁液から引き上げられた。多孔質基材10が乾燥された。これにより第1電極層11が形成された。第1電極層11は骨格1の表面に積層されていると考えられる。多孔質基材10の内部に充填された正極合材(第1電極層11)の質量は0.85gである。
【0109】
第1電極層11は、多孔質基材10のうち「0.5cm×0.5cm×2cm」の外形寸法を有する領域に形成された。第1電極層11が形成されていない領域に、第1集電タブ21が溶接された。第1集電タブ21はNi薄板である。
【0110】
高分子溶液(PVdF−HFPの溶液)が準備された。高分子溶液の溶媒はNMPである。高分子溶液に多孔質基材10が浸漬された。多孔質基材10が高分子溶液から引き上げられた。多孔質基材10が乾燥された。これにより高分子層が形成された。高分子層の形成条件および厚さに関する予備実験の結果から、高分子層は5μm以上10μm以下の厚さを有すると考えられる。高分子層は第1電極層11の表面に積層されていると考えられる。高分子層の形成後、多孔質基材10には、200μm程度の直径を有する空孔2が残存していた。この段階での空孔2は、その内壁が第1電極層11および高分子層によって被覆されていると考えられる。
【0111】
以下の材料が準備された。
負極活物質:人造黒鉛(粉末、D50=10μm程度)
溶媒:エタノール
【0112】
負極活物質および溶媒が混合されることにより、第2電極懸濁液が調製された。高分子層の形成後、第2電極懸濁液が多孔質基材10によって濾過されることにより、第2電極層12が形成された。第2電極層12は高分子層の表面に積層されていると考えられる。第2電極層12は、その一部が多孔質基材10の外表面に露出するように形成されている。多孔質基材10が80℃で12時間真空乾燥された。外表面の一部(第2電極層12が露出している部分)にAuが蒸着されることにより、Au薄膜が形成された。Au薄膜に第2集電タブ22が溶接された。第2集電タブ22はNi薄板である。
【0113】
外装材20としてアルミラミネート製のパウチが準備された。第2電極層12の形成後、多孔質基材10が外装材20に収納された。
【0114】
液体電解質として電解液が準備された。電解液は以下の溶媒および支持塩を含む。
溶媒:[EC:DEC=3:7(体積比)]
支持塩:LiPF
6(1mоl/l)
【0115】
外装材20に電解液が注入された。熱溶着により外装材20の開口部が封止された。電解液が第1電極層11、高分子層および第2電極層12に浸透した。高分子層に電解液が浸透することにより、ゲル電解質が形成されたと考えられる。これによりゲル電解質を含むイオン伝導体層13が形成された。
【0116】
以上より蓄電池100が製造された。蓄電池100はセンチメートルスケールの三次元電池である。センチメートルスケールはマイクロメートルスケールの1万倍のスケールである。
【0117】
<充放電試験>
3〜4.3Vの電圧範囲において、0.2Cの電流レートにより、定電流充放電試験が実施された。「0.2C」は、蓄電池100の満充電容量が5時間で放電される電流レートである。初回放電容量として81.6mAhが得られた。電極が形成された領域の体積(0.5cm×0.5cm×2cm)および平均放電電圧から、蓄電池100の体積エネルギー密度が算出された。蓄電池100の体積エネルギー密度は584Wh/lである。この値は、一般的な円筒形リチウムイオン蓄電池(18650サイズ)の体積エネルギー密度と同等か、あるいは同等以上の値であると考えられる。
【0118】
以上の結果より、本開示の蓄電池は少なくともセンチメートルスケールを有し得る三次元電池であると考えられる。
【0119】
二次元的な電極構造を有するリチウムイオン蓄電池において、外装材20の内部体積に対する、外装材20の内部に充填された活物質の体積の比率(体積充填率)は、30〜45%程度であると考えられる。本開示の蓄電池では、簡素な集電構造、集電体体積の削減、および余剰空間への活物質の充填等により、50%以上の体積充填率が実現され得ると考えられる。
【0120】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。