特許第6970036号(P6970036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6970036-ファイバレーザ発振器用の電源回路 図000002
  • 特許6970036-ファイバレーザ発振器用の電源回路 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970036
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ファイバレーザ発振器用の電源回路
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20211111BHJP
   H01S 3/02 20060101ALI20211111BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20211111BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01S3/067
   H01S3/02
   H02M3/155 A
   H02M7/12 Q
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-27923(P2018-27923)
(22)【出願日】2018年2月20日
(65)【公開番号】特開2019-145650(P2019-145650A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年7月10日
【審判番号】不服2020-16771(P2020-16771/J1)
【審判請求日】2020年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】貫井 亨
【合議体】
【審判長】 山村 浩
【審判官】 清水 督史
【審判官】 松川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−103413(JP,A)
【文献】 特表2013−504285(JP,A)
【文献】 特開2016−152686(JP,A)
【文献】 特表2018−503966(JP,A)
【文献】 特開平11−163444(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0103804(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の整流回路ユニットと、電源ユニットと、レーザダイオードモジュールとを有するファイバレーザ発振器用の電源回路であって、
前記複数の整流回路ユニットは、前記電源ユニットと分離して設置され、互いに異なる複数の特定の値の電圧が入力可能で、前記電圧に基づいて直流電圧を前記電源ユニットに供給し、
前記電源ユニットは、前記複数の整流回路ユニットのうち1つのみが選択され接続され、
前記レーザダイオードモジュールは、レーザ光を生成し、レーザ加工ヘッドにレーザ光を提供するように設置され、レーザキャビティに接続され、
前記電源回路は、前記ファイバレーザ発振器内に複数並列に配置され、それぞれ、レーザキャビティに接続され、各レーザキャビティから発振されるレーザがビームコンバイナにより合成された後、レーザ加工ヘッドから出力される、ファイバレーザ発振器用の電源回路。
【請求項2】
前記整流回路ユニットは、力率を1に調整する力率改善回路を有する、請求項1に記載のファイバレーザ発振器用の電源回路。
【請求項3】
前記整流回路ユニットは、複数のダイオードを含み、
前記力率改善回路は、前記複数のダイオードと前記整流回路ユニットの出力端子との間に接続されている、請求項2に記載のファイバレーザ発振器用の電源回路。
【請求項4】
前記整流回路ユニットは、複数のダイオードと、前記複数のダイオードと並列に接続された容量素子と、を含む、請求項1に記載のファイバレーザ発振器用の電源回路。
【請求項5】
前記電源ユニットは、スイッチング回路と、前記スイッチング回路のスイッチングを制御するように構成された制御回路と、を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のファイバレーザ発振器用の電源回路。
【請求項6】
前記制御回路は、前記整流回路ユニットに接続されている、請求項5に記載のファイバレーザ発振器用の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバレーザ発振器用の電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファイバレーザ発振器が備える電源回路は、整流回路と、スイッチング回路と、平滑回路と、制御回路と、を有するスイッチングレギュレータが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−103413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなスイッチングレギュレータでは、整流回路の損失により電源の力率が低下するので、ファイバレーザ発振器に必要なブレーカ等の電気部品の容量が大型化する。また、日本国内ではAC200Vで、欧米ではAC380〜480Vである等、世界各国で電源電圧が異なると共に、結線方式がスター結線とデルタ結線で異なる。そのため、ケーブルの線径や絶縁距離、部品の耐圧といった電源の設計が電圧に応じて異なったものとなるため、これに対応するべく電圧変換トランスが用いられる。
【0005】
しかしながら、電圧変換トランスはレーザ発振器内に内蔵されるか、あるいは別置されるが、いずれにしても大出力のファイバレーザ発振器では電圧変換トランスの容量が大きくなるため、大きな設置スペースが必要となり、ファイバレーザ発振器が大型化するという課題があった。
【0006】
本発明は、ファイバレーザ発振器の小型化を実現できるファイバレーザ発振器用の電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るファイバレーザ発振器用の電源回路(例えば、後述するファイバレーザ発振器用の電源回路1)は、特定の値の電圧が入力可能な整流回路ユニット(例えば、後述する整流回路ユニット2)と、入力可能な電圧の値が互いに異なる複数の前記整流回路ユニットのうち1つが選択可能に接続される電源ユニット(例えば、後述する電源ユニット3)と、を備える。
【0008】
(2) (1)のファイバレーザ発振器用の電源回路において、前記整流回路ユニットの各々は、力率を1に調整する力率改善回路(例えば、後述する力率改善回路23)を有していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファイバレーザ発振器の小型化を実現できるファイバレーザ発振器用の電源回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るファイバレーザ発振器用の電源回路を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るファイバレーザ発振器用の電源回路における整流回路ユニットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るファイバレーザ発振器用の電源回路1を示す概略図である。図2は、本発明の一実施形態に係るファイバレーザ発振器用の電源回路における整流回路ユニット2を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、ファイバレーザ発振器用の電源回路1は、加工ヘッドが接続されてレーザ加工装置として使用されるファイバレーザ発振器に搭載される。具体的に、ファイバレーザ発振器用の電源回路1は、整流回路ユニット2と、電源ユニット3と、レーザダイオードモジュール4と、を備える。
【0014】
図2に示すように、整流回路ユニット2は、特定の値の交流電圧が入力可能で、且つ内部で昇圧又は降圧して直流電圧を出力する。例えば、整流回路ユニット2は、6個のダイオード21と、容量素子22と、力率改善回路(PFC(Power Factor Correction))23と、等を有する。力率改善回路23は、力率を1に調整する回路、すなわち、力率を1に近付ける回路である。なお、整流回路ユニット2における力率改善回路23以外の構成は、一般的な整流回路の構成であって周知であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0015】
図1に戻って説明する。電源ユニット3は、入力可能な電圧の値が互いに異なる複数の整流回路ユニット2、例えばAC200Vの整流回路ユニット2とAC400Vの整流回路ユニット2とのうち1つの整流回路ユニット2が選択可能に接続される。具体的に、電源ユニット3は、スイッチング回路31と、平滑回路32と、制御回路33と、等を有する。
【0016】
スイッチング回路31は、スイッチング用トランジスタ及びダイオードを有する。このスイッチング回路31は、制御回路33からの制御信号に応じてスイッチング用トランジスタがオンオフし、ダイオードと協働して充電電流を生成する。
【0017】
平滑回路32は、インダクタンス素子及び容量素子を有する。この平滑回路は、充電電流から容量素子の両端に直流電圧を生成し、レーザダイオードモジュール4に出力する。
【0018】
なお、本実施形態に係るファイバレーザ発振器用の電源回路1は、例えばファイバレーザ発振器内に複数並列に配置される。各電源回路1は、それぞれ、レーザキャビティに接続され、各レーザキャビティから発振されるレーザはビームコンバイナにより合成された後、レーザ加工ヘッドから出力されるようになっている。
【0019】
以上の構成を備える本実施形態に係るファイバレーザ発振器用の電源回路1によれば、整流回路ユニット2を電源ユニット3から分離してユニット化しているので、各国の電源事情に応じて、電源回路1に接続する整流回路ユニット2を使い分けることができる。このため、電圧変換トランスを使用せず省スペースで各国の電源事情に柔軟に対応することができ、また、整流回路ユニット2は水冷できるため電圧変換トランスよりも小型であり、ひいては、ファイバレーザ発振器の小型化を実現できる。
【0020】
なお、整流回路ユニット2を電源ユニット3から分離してユニット化することは、レーザダイオードモジュールの制御性に影響を及ぼさない。また、一般的な整流回路のみでは力率が悪化するので、動力入力部や配電盤の電気部品の容量が大きくなるが、本実施形態では、整流回路ユニット2が力率改善回路23を有しているので、ファイバレーザ発振器の更なる小型化を実現できる。
【0021】
例えば、日本国内向けの製品を設計する場合には、AC200Vの電圧が入力可能で、且つ内部で昇圧してDC380Vを出力する整流回路ユニット2を選択して、DC380Vの電圧が入力可能な電源ユニット3に接続する。欧米向けの製品を設計する場合には、AC380V〜AC480Vにおける特定の値の電圧が入力可能で、且つ内部で降圧してDC380Vを出力する整流回路ユニット2を選択して、DC380Vの電圧が入力可能な電源ユニット3に接続する。このように、電源ユニット3の設計をDC380Vの電圧が入力可能なものに共通化でき、整流回路ユニット2の変更のみで世界中各国の製品に対応できる。
【0022】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0023】
例えば、前述した実施形態では、整流回路ユニット2として図2に示すような整流回路ユニットを用いたが、これに限定されず、電源ユニット3に接続可能な各種の整流回路を用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 電源回路
2 整流回路ユニット
21 ダイオード
22 容量素子
23 力率改善回路
3 電源ユニット
31 スイッチング回路
32 平滑回路
33 制御回路
4 レーザダイオードモジュール
図1
図2