特許第6970084号(P6970084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970084
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】血管閉鎖デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20211111BHJP
   A61B 17/04 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   A61B17/00 500
   A61B17/04
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-515972(P2018-515972)
(86)(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公表番号】特表2018-529440(P2018-529440A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】IB2016001498
(87)【国際公開番号】WO2017055919
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年7月10日
(31)【優先権主張番号】1551238-7
(32)【優先日】2015年9月28日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】1551441-7
(32)【優先日】2015年11月6日
(33)【優先権主張国】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518098151
【氏名又は名称】エム−ベー アルテリカ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ラーソン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジー.ウィリー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル カールソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク ニーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ハンフリー
(72)【発明者】
【氏名】セシーリア ラーソン
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−511130(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0264922(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0026208(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0218568(US,A1)
【文献】 米国特許第06231561(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管に隣接した組織を通る通路を閉鎖する血管閉鎖デバイスであって、
近位端と遠位端を有し、前記遠位端は前記組織に近接するように構成される細長筐体と、
前記細長筐体に収納された第1の係合部材及び第2の係合部材と、
前記細長筐体に配置され、前記第1及び第2の係合部材を展開して前記血管の壁部には係合せずに互いに距離を置いて前記組織に係合接触させるよう構成された展開部材と、
前記細長筐体に配置され、前記通路を閉鎖するため、前記第1及び第2の係合部材の間の距離を縮めるよう構成された引き込み部材と
を備え、
独立してそれぞれ前記第1及び第2の係合部材に繋がる、縫合糸と、対応する別の縫合糸とを、更に備え、
前記引き込み部材は前記縫合糸と前記対応する別の縫合糸とを引き込んで前記第1及び第2の係合部材の間の前記距離を縮めるよう構成された、
血管閉鎖デバイス。
【請求項2】
血管に隣接した組織を通る通路を閉鎖する血管閉鎖デバイスであって、
近位端と遠位端を有し、前記遠位端は前記組織に近接するように構成される細長筐体と、
前記細長筐体に収納された第1の係合部材及び第2の係合部材と、
前記細長筐体に配置され、前記第1及び第2の係合部材を展開して前記血管の壁部には係合せずに互いに距離を置いて前記組織に係合接触させるよう構成された展開部材と、
前記細長筐体に配置され、前記通路を閉鎖するため、前記第1及び第2の係合部材の間の距離を縮めるよう構成された引き込み部材と
を備え、
前記第1及び第2の係合部材に繋がった縫合糸を更に備え、
前記引き込み部材は前記縫合糸を引き込んで前記第1及び第2の係合部材の間の前記距離を縮めるよう構成された、
血管閉鎖デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本願は、Thomas Larzonを発明者とし、「血管閉鎖デバイス」(VASCULAR CLOSURE DEVICE)の発明の名称で2015年9月28日に出願されたスウェーデン特許出願第1551238−7号及びThomas Larzonを発明者とし、「血管閉鎖デバイス」の発明の名称で2015年11月6日に出願されたスウェーデン特許出願第1551441−7号の利益を主張し、各特許出願の全文面と図面を含む全体が、参照により本願に援用される。
【0002】
本開示は、例えば経皮的介入処置後の動脈の穿刺(a puncture in the artery)の閉鎖に用いるよう構成された血管閉鎖デバイスに関する。また、本開示は、そのような血管閉鎖デバイスを用いた血管閉鎖方法に関する。
【背景技術】
【0003】
大抵の心臓血管手術では、大腿動脈などの動脈に直接又は経皮的血管アクセスによってカテーテルが挿入される。カテーテルは、通常ガイドワイヤに沿って動脈に直接挿入されるか(剥き出し(bareback)処置)、カテーテルは脈管導入器を通して挿入されることがある。処置が完了すると、医師はカテーテルを取り除き、(脈管導入器が使用された場合は)次に脈管導入器を血管から取り除く。そして、医師は、血管アクセスからの出血を防ぐか、出血量を制限しなければならない。現在、血管アクセスを閉鎖するために、局所的外部圧迫、縫合糸を用いた閉鎖デバイス、プラグ、ジェル、泡など、多くの方法が医師によって用いられている。
【0004】
しかし、このような閉鎖処置は時間がかかることがあり、手術時間の大部分が割かれることもある。加えて、既存の方法は血腫又は塞栓症などの併発症を伴うことがある。さらに、このような処置の一部、特に縫合糸を用いた閉鎖デバイスは、アテローム性動脈硬化症および石灰化などの一般的な血管疾患がある場合に不具合を起こす可能性が高いことが知られている。
【0005】
特許文献1(欧州特許第2095774(B1)号明細書)は、上述した課題を克服するために半自動閉鎖装置の導入を提案している。提案された閉鎖装置は、体腔の開口付近の組織に閉鎖要素を送達し、係合させる。この装置は、近位端から遠位端に延びる管腔(lumen)を有するシース(sheath)と、シース内に配置された位置入力部材を含み、位置入力部材はシースの遠位端より更に遠位に延びる遠位部を有する。一以上の位置決め要素が位置入力部材の遠位部に提供され、位置決め要素は、実質的に軸方向の縮小構成と実質的に横断方向の拡張構成との間で選択的に拡張可能である。
【0006】
特許文献1は血管閉鎖に要する時間を短縮することで患者の負担を幾分軽減させるが、速やかな血管閉鎖には、特にデバイスの使いやすさの面で更に改善の余地があると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2095774(B1)号明細書
【発明の概要】
【0008】
従来技術の上述した及びその他の欠点を鑑みて、本開示の第1の局面によると、血管に隣接した組織を通る通路を閉鎖する血管閉鎖デバイスが提供される。血管閉鎖デバイスは、近位端と遠位端を有し遠位端は組織に隣接するように構成される細長筐体と、細長筐体に着脱自在に配置された第1及び第2の係合部材と、細長筐体に配置され、第1及び第2の係合部材を展開して血管の壁部には係合せずに互いに距離を置いて組織に係合接触させるよう構成された展開部材と、及び、細長筐体に配置され、通路を閉鎖するため、第1及び第2の係合部材の間の距離を縮めるよう構成された引き込み部材とを備える。
【0009】
本開示によると、血管閉鎖デバイスは、診断又は治療的介入に用いられた血管アクセス部位に経皮的に使用される。一部の実施形態では、血管アクセス部位は「血管に隣接する組織を通った通路」と表現されることがある。係合部材は血管閉鎖デバイスを介して配置され、分離されて、血管の壁部に係合することなく血管に隣接する組織に取り付けられる。次に、係合部材は、展開部材、例えば、血管閉鎖デバイス中の独立した管腔内に配置された押出棒によって、血管閉鎖デバイスから分離される。ある実施形態では、押出アセンブリは、例えば、ばね荷重機構又は同様の機能によって全ての係合部材を同時に展開する共通の管腔内に配置されてもよい。係合部材は、縫合糸などの細長弾性引張要素に繋げられているのが好ましい。縫合糸は、各係合部材を順に通ってもよく、各係合部材に別々に繋げられてもよい。そして、血管に隣接する組織は係合部材に繋げられた縫合糸によってまとめて引っ張られる。まとめて引っ張られると、係合部材が組織に係合するために配置された初期位置間の距離が縮まり、例えば上述した血管アクセス部位などの通路が閉鎖される。この締め付けによって組織係止部(a tissue lock)が作られ、血管に隣接した組織にある通路を閉鎖し、血管/動脈内の通路を間接的に閉鎖する。
【0010】
本開示の利点には、処置後に大口径のアクセス部位など大口径の通路を閉鎖可能にすることと、例えば急性症例など重要性が高い閉鎖処置時の事前に、アクセス部位の経皮的閉鎖準備を要しないことがある。しかし、本開示は大口径の穴に限られず、本血管閉鎖デバイスによって小口径の経路/穴も閉鎖できる。
【0011】
上述したことに加えて、血管に直接係合しないため、血管に隣接する組織の通路を閉鎖する際に血管は含まれず、通路の閉鎖には血管に隣接する組織のみが用いられる。これによって、起こり得る内膜の切開や、それによる血栓症、又は、石灰化プラークなどの患部血管に伴う併発症を概して回避できることがあり、あるいは、動脈壁の穿刺を防ぐことがある。さらに、提案された血管閉鎖デバイスは、従来の侵襲的な手動による外科的処置を、自動化され、最小侵襲で実施でき、習得が容易な閉鎖方法で置き換える。
【0012】
本明細書中で用いられる「近位」及び「遠位」という用語は、血管閉鎖デバイスを操作する臨床医を基準にして用いられる。「近位端」という用語は臨床医に最も近い部分を意味し、「遠位端」という用語は臨床医から離れた部分を意味する。便宜性と明確性を期すため、図面に関して「垂直」、「水平」、「上」および「下」などの空間を表す用語が本明細書中で用いられることがある。しかし、血管閉鎖デバイスは、多くの向きや位置で用いられることがあり、これらの用語は制限又は絶対又はその両方であることを意図しない。
【0013】
一部の実施形態では、係合部材が、血管閉鎖デバイスの遠位端から場合によっては所定の距離で組織に機械的に係合する(又はアンカーで固定する)ように構成できる。所定の距離は、ある実施形態では、数ミリメートル程と短いことがある。
【0014】
ある実施形態では、第1及び第2の係合部材が組織の筋膜に係合するよう構成される。筋膜は、波状のパターンで方向付けられたコラーゲン線維の緊密な束を含む線維性結合組織からなる。よって、筋膜は柔軟性を持ち、線維の波状のパターンが引張力によって真っ直ぐに揃えられるまで、一方向の大きな引張力に耐えることができる。一部の実施形態では、第1及び第2の係合部材が組織の筋膜に係合するよう構成された血管閉鎖デバイスの構成によって、血管への通路の閉鎖が更に適切に改善されると考えられる。加えて、筋膜の構造は、第1及び第2の係合部材が組織から外れる/離れる危険性なく、上述した距離の短縮を可能にすることがある。
【0015】
本開示の実施形態では、血管閉鎖デバイスは血管/動脈の前壁の位置を決めるのに用いられるアンビル部材を更に備え、血管に対する基準点を提供するのに用いられる。このような実装によって、第1及び第2の係合部材がアンビル部材から所定の距離で適切に組織に係合することを可能にすることがある。可能性のある実施形態では、細長筐体の遠位端は、例えば、筋膜から数ミリメートル上部で、通常筋膜又は血管の壁部に接しない場所に配置されることがある。
【0016】
係合部材の基準点を提供することに加えて、アンビル部材は手術中の出血をコントロールするのにも用いられることがある。しかし、筋膜、血管、又はその両方の通路を通った血流を止めるよう構成された更なる止血部材を含むことも当然可能であると理解されるべきであり、止血部材は第1及び第2の係合部材の展開前に血管内に配置される。
【0017】
上述したように、アンビル部材は血管に対する方向、例えば血管に対する2次元の方向(x‐y)を提供することがある。これによって、第1及び第2の係合部材が、血管に対して所定のパターンで機械的に組織を捕捉する又は組織に固定されるのを更に容易にすることがある。
【0018】
アンビル部材は、血管閉鎖デバイスの選択された実装により、例えば、バルーン、展開可能なディスク、展開可能な位置合わせ機構又は定着板のうち一つからなることがある。当然のことながら、同様の複数のアンビル部材を用いることができる。加えて、本開示によると、血管閉鎖デバイスを用いた処置を完成させる段階で、動脈内に何も残さないように血管からアンビル部材を外すことも可能である。アンビル部材は、例えば、細長筐体の一部を形成するように配置されてもよい。
【0019】
血管に対する基準点を提供するためにアンビル部材を用いる代わりに、デバイスの近位端付近の外部ポートに延びる管腔に連通する小さなポートをデバイスの遠位端に備えるよう血管閉鎖デバイスを構成してもよい。そして、血管閉鎖デバイスの操作者は、血管閉鎖デバイスを挿入してから血液が近位ポートから出てきたのを目視する、つまり、遠位ポートを血管内部に進入させ血圧に押されて血液が血管閉鎖デバイスを通ったことを確認することで、基準点を決定することができる。
【0020】
加えて、血管閉鎖デバイスは、第1及び第2の係合部材を展開する前に、血管の長手軸方向に整列されるデバイス位置決め部材を更に備えることがある。このようなデバイス位置決め部材は、例えば、筺体の伸縮可能部を用いて実装でき、デバイス位置決め部材は通路が位置する肢(例えば、脚又は腕)に整列される。
【0021】
上述したように、縫合糸は第1及び第2の係合部材に繋げることが可能で、引き込み部材は縫合糸を引き込んで第1及び第2の係合部材の間の距離を縮めるように構成される。1本の縫合糸が全ての係合部材と繋げられてもよく、あるいは、1本の縫合糸が第1の係合部材に、それに対応する別の縫合糸が第2の係合部材に独立して繋げられてもよい。本開示の範囲で、例えば、第3や第4の(あるいは、それ以上の)係合部材を含むことが可能であり、一本又は複数本の縫合糸が上述と同様の方法で係合部材に繋がれ得ることが理解される。あるいは、各係合部材に別々の縫合糸が装着されてデバイスの遠位局面を通る管腔内部を通過してもよく、これによって、縫合糸に引張力をかけると、筋膜の付着物(fascia attachments)が血管閉鎖デバイスの方向に引っ張られ、係合部材の間の距離を縮めて通路を閉鎖する。
【0022】
一部の実施形態では、一本又は複数本の縫合糸は、生体吸収性ポリマーなど、生分解性又は生体吸収性素材から形成されるのが適していることがある。加えて、係合部材も同様な生分解性又は生体吸収性素材から形成されていてもよい。これによって、係合部材/縫合糸の除去のために更なる係合を必要とせず、閉鎖部位の後処置が簡略化される。
【0023】
本開示の実施形態では、血管閉鎖デバイスは、細長筐体に配置された縫合糸拘束部又は係止部材を備えるよう更に構成され、引き込まれた状態で縫合糸を維持するよう構成され、これによって上述した組織係止部を作る。加えて、係止部材は同様の生分解性又は生体吸収性素材から形成されることがある。別々の縫合糸を各係合部材に使用する場合、又は、1本の縫合糸で複数の係合部材のループを作る場合、係止配置は、例えば集められた縫合糸の束を縛るワイヤなどによって形成されてもよく、縫合糸の両端部が束ねられる。加えて、ある実施形態では、引き込まれた状態で、締められた縫合糸を互いに掴み固定するように配置された予荷重コイル(予め負荷がかけられたコイル、preloaded coil)によって係止部材を形成してもよい。
【0024】
したがって、各縫合糸をそれぞれの係合部材に提供する場合(又は、上述したループを作る一本の縫合糸の両端部を用いる場合)、複数本の縫合糸(又は、縫合糸の端部)は、血管閉鎖デバイスの主筺体から遠位に突出する管腔の中心を通ってもよい。このような実施形態では、縫合糸保持コイルなどの係止部材が初めにこの管腔の外径上に配置されて予荷重又は予張(事前の引き伸ばし、pre-stretched)がかけられ、コイルが管腔の遠位先端部から外れると縫合糸上で径が小さく縮まって、2本以上の縫合糸の相対的動きを防ぐよう機能してもよい。縫合糸保持コイルを適時に展開するには、縫合糸保持コイルが予荷重をかけられている管腔の外部に別の管を遠位方向に滑らせ、外側の管が内側の管からコイルを押し外してコイルが複数の縫合糸上で縮まるようにしてもよい。縫合糸保持コイルは、2層以上のコイル巻線からなることがあり、別の実施形態では、3層から4層のらせん状のコイル巻線からなることがある。可能な実施形態では、コイルを構成するワイヤ断面は円ではなく、縫合糸との摩擦を高めるためにエッジ又はかどがあってもよい。
【0025】
さらに、引き込み部材が係合部材の間の距離を縮めるのに適した接続点を提供するため、係合部材(第1及び第2、それ以上の個数の係合部材など)は、筋膜などを含む組織を機械的に捕捉するかかり(barb)、フック、針、アンカー、及びスピアのうち一つに対応する形式でもよい。
【0026】
あるいは、係合部材はアンカーからなる(又は、相当する機能を提供するように形成される)ことがあり、アンカーは可撓性構造として配置される。また、アンカーは、筋膜などを含む組織と係合接続すると、回転、旋回、又は拡張するように構成され、それによって、場合によってはこのようなアンカーの組織内における機械的な捕捉を更に向上させる。別の実施形態では、アンカーが筋膜に押し込まれた後で、拡張するよう構成できる。
【0027】
例えば、アンカーは、筋膜を通過する際には畳まれた傘のような形状で、付勢されたばね力又は縫合糸の引張力のいずれかによって、アンカーは開かれた傘のように逆円錐構成に拡張する。それによって、元の構成のアンカーよりもかなり広い表面積で筋膜に接し、筋膜内でより大きな保持強度を提供する。加えて、係合部材は、本開示の発明を実施するための形態で後述するように、斜め端部を有する皮下管断片を備えてもよい。
【0028】
本開示の更なる局面によると、血管と連通する組織の通路を閉鎖する方法が提供される。本方法は、血管閉鎖デバイスを提供するステップを含む。血管閉鎖デバイスは近位端と遠位端を有する細長筐体と、細長筐体に着脱自在に配置された第1及び第2の係合部材と、細長筐体に配置された展開部材と、及び、細長筐体に配置された引き込み部材とを備える。提供されると、血管閉鎖デバイスの遠位端が組織に近接して配置され、展開部材によって血管閉鎖デバイスから第1及び第2の係合部材が展開され、血管の壁部には係合せずに互いに距離を置いて組織に係合し、引き込み部材によって所定の引込力をかけて第1及び第2の係合部材の距離を縮め、通路を閉鎖する。本開示の局面は、本開示の先の局面に関して上述したのと同様の利点を提供する。
【0029】
一部の実施形態では、血管に隣接する組織を通る通路を閉鎖して血管の通路を治療する血管閉鎖デバイスは、近位端、遠位端、遠位部位、及び、各々が展開されると組織に固定されるよう構成された複数の係合部材を有する細長筐体を含むことがある。複数の展開部材は、前記細長筐体の前記遠位部位から遠位方向で半径方向外向きに延長するよう構成され、各展開部材は少なくとも一つの係合部材を前記血管に隣接する組織に展開するよう構成される。それによって、係合部材が血管に隣接する組織に固定され、血管の壁部には係合せずに組織と係合接触するよう互いに距離を置いて配置される。複数の細長弾性引張要素のそれぞれが少なくとも一つの係合部材に固定されることがある。引き込み部材は、引張要素と共に動作するよう接続され、引張要素に軸方向の引張力をかけて係合部材の間の距離を半径方向に引き込んだ状態に縮め、血管に隣接する組織の通路を閉鎖するよう構成される。
【0030】
本発明の更なる特徴及び利点は、付属の請求項と以下の説明を検討することで明らかになるであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の異なる特徴が組み合わされて以下に記載する以外の実施形態も作成し得ることが当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示の各種局面は、特定の特徴や利点を含めて、以下の発明を実施するための形態と付属の図面から充分に理解されるであろう。
図1】本開示のある実施形態に係わる、血管閉鎖デバイスの第1の実施形態を模式的に例示する。
図2A】血管閉鎖デバイスを用いて組織係止部を作る様子の詳細図を示す。
図2B】血管閉鎖デバイスを用いて組織係止部を作る様子の詳細図を示す。
図2C】血管壁を通る不要通路を治療する一連の閉鎖処置を示す。
図2D】血管壁を通る不要通路を治療する一連の閉鎖処置を示す。
図3A】アンカー要素として例示された係合部材の概念図を示す。
図3B】アンカー要素として例示された係合部材の概念図を示す。
図4A】展開可能な位置合わせ機構として機能するアンビル部材の操作を示す。
図4B】展開可能な位置合わせ機構として機能するアンビル部材の操作を示す。
図5A】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図5B】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図5C】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図5D】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図5E】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図5F】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図5G】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図5H】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図5I】血管閉鎖デバイスのある実施形態の一連の操作を示す。
図6A図5A図5Iに示される血管閉鎖デバイスの操作の透視図である。
図6B図5A図5Iに示される血管閉鎖デバイスの操作の透視図である。
図6C図5A図5Iに示される血管閉鎖デバイスの操作の透視図である。
図6D図5A図5Iに示される血管閉鎖デバイスの操作の透視図である。
図6E図5A図5Iに示される血管閉鎖デバイスの操作の透視図である。
図6F図5A図5Iに示される血管閉鎖デバイスの操作の透視図である。
図7A】縫合糸を掴むように配置された予荷重コイルの形式で提供された係止部材の適用を概念的に示す。
図7B】縫合糸を掴むように配置された予荷重コイルの形式で提供された係止部材の適用を概念的に示す。
図7C】縫合糸を掴むように配置された予荷重コイルの形式で提供された係止部材の適用を概念的に示す。
図8A】皮下管断片として提供された更なる係合部材の操作を示す。
図8B】皮下管断片として提供された更なる係合部材の操作を示す。
図8C】皮下管断片として提供された更なる係合部材の操作を示す。
図9A】血管閉鎖の更なる実施形態の断面を示す。
図9B】血管閉鎖の更なる実施形態の断面を示す。
図9C】血管閉鎖の更なる実施形態の断面を示す。
図10】本開示に係わる血管閉鎖デバイスを操作する方法のステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の実施形態を示す付属図面を参照しながら、以下に本開示をより充分に説明する。しかし、本開示は多くの異なる形式で実施されることがあり、本明細書中に記載の実施形態に制限されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は徹底性と完全性のために提供され、当業者に本開示の範囲を充分に伝えるものである。全図面において、同様の参照記号は同様の要素を参照する。
【0033】
特に図1を中心に図面を参照すると、血管閉鎖デバイス100はガイドワイヤ8に沿って、患者の皮膚1及び大腿筋膜2を通って血管/動脈5に経皮的に導入される。任意でアンビル部材9が血管5内に配置され、係合部材11の基準点を作る、又は、出血をコントロールする、又はその両方を行う。係合部材11は、血管閉鎖デバイス100を通って配置され、分離されて、血管5に隣接する組織に取り付けられる。係合部材11は、筋膜3(腸骨筋膜)に係合することはあるが、血管の壁部5には係合しない。例えば、血管閉鎖デバイス100内の独立した管腔に配置された押出棒12などの展開部材によって、係合部材11は血管閉鎖デバイス100から筋膜3に押し出されてもよく、例えば、共通管腔に配置された押出アセンブリがばね荷重機構などによって全ての係合部材11を同時に展開してもよい。係合部材11は、以下に詳述するように、一本又は複数本の縫合糸に繋がれているのが好ましい。図1では、更に、大腿静脈4、大腿神経6及び隣接/間質組織7が示される。
【0034】
図2A図2Bを更に参照すると、上述した縫合糸13は例えば、各係合部材11を順に通っていてもよい。特に、一本の縫合糸13が各係合部材11を順に通ってループを作ってもよく、又は、別々の縫合糸13が各係合部材11に取り付けられてもよい。筋膜3などの組織は、係合部材11に繋げられた縫合糸13と共にまとめて引っ張られる。まとめて引っ張られると、組織/筋膜3は中心方向に締められ、組織係止部を作り、間接的に動脈5を閉鎖する。つまり、係合部材11の初期位置の間の距離と、係合部材11が互いに向かって移動した後の係合部材11間の距離は縮まる。筋膜3を締める際に、アンビル部材9は動脈5から取り除かれてもよい。
【0035】
図2C図2Dを参照すると、一連の閉鎖処置の実施形態が示される。図示された血管などの管壁を通る通路に対して、血管の内部体積からの出血(図示せず)を、臨床的に容認できる程度に緩慢にする又は止めるよう処置が行われる。図2Cに見られるように、血管壁の通路、具体的には大腿動脈5などの通路は、大腿動脈5の外側表面に隣接する組織層を通る通路とほぼ整列される。この特定の好ましい実施形態では、大腿動脈5の外側にあって大腿動脈5の外側表面に隣接する組織層は、腸骨筋膜3である。総論として、通路に用いられる「ほぼ整列」という語句は、少なくとも組織3と動脈5の間で相対的な横方向の大きなずれがなく、カテーテル又はシースのような適切な寸法の細長デバイスが両通路を通過できることを意味することがある。加えて、場合によっては、組織/筋膜3の通路を閉鎖して組織係止部を形成できるように組織3の通路の周りに組織3を集めて接近させることで、図2Dに示されるように集めて閉鎖された組織/筋膜3を締めて動脈5を通る通路近くの動脈5の外側表面に対して変位できる程度に、組織層3が血管5の外側表面に充分に近接していることがある。集められた組織3が、変位、偏向して、動脈5の通路及び動脈5の通路周辺の動脈5壁に対応する位置に配置されると、臨床的に容認できる程度に動脈5の通路からの出血を緩慢にする又は止めるにはこの機械的接近は通常充分であり、通路近辺の患者の皮膚1を通過するアクセス部位の閉鎖を可能にする。場合によっては、それぞれの通路がある領域において、血管5の外側表面に隣接する組織層3の内側表面は、血管の外側表面から最大で約10mm、より具体的には約5mmの距離まで離れていることがある。
【0036】
図3A図3Bを更に参照すると、アンカー要素300として例示された係合部材を概念的に示す。図3Aに、展開地点から離れた方向に容易にスライドできるようなアンカー要素300の初期展開を示す。尚、係合を促進するため、展開地点は組織/筋膜3の方向に任意で偏っていてもよい。図3Bは、展開地点の方向に動きが逆転した後のアンカー要素300を示し、アンカー要素300は組織/筋膜3に埋め込まれている。つまり、ある実施形態では、アンカー要素300の先端302はフック状であり、外側方向には組織/筋膜3に係合せずに容易にスライドする。しかし、アンカー要素300が引き込まれると、アンカー要素300の少なくとも先端302が組織/筋膜3に機械的に係合するよう構成される。
【0037】
図4A図4Bは、展開可能な位置合わせ機構400として例示されるアンビル部材の操作を概念的に示す。図4Aでは、展開可能な位置合わせ機構400が壁402を通って大腿動脈5などの血管の内部体積に挿入される。展開可能な位置合わせ機構400は、(メッシュ材料を用いた)傘のような構造で、展開可能な位置合わせ機構400は半径方向に畳まれた形式で動脈5に挿入されることがある。さらに図4Bを参照し、動脈5内に入ると、展開可能な位置合わせ機構400は「開き」、畳まれた形式から放射状に拡張し、展開可能な位置合わせ機構400の長手軸方向に近接する全表面積が増え、動脈5の内壁方向に引き込まれることがある。これによって、血管閉鎖デバイスをその後操作するための基準点が確立される。
【0038】
図5A図5Iは、図10と併せて、本開示の第2の実施形態に係わる血管閉鎖デバイス500の使用手順をステップ毎に説明する。図5Aに示されるように、第1のステップで血管閉鎖デバイス500が提供される(S1)。展開では、血管閉鎖デバイス500の細長筐体504が有する円錐遠位先端部502(円錐状のノーズコーンが提供されることもある)が配置されるまで、血管閉鎖デバイス500を例えばすでに挿入されたガイドワイヤ8に沿って前進させる(S2)。次に、図5Bに示されるように、動脈5の壁の外側表面上部にある筋膜3に近接する筺体から押出棒を出す。任意で、血管閉鎖デバイス500の長手方向標識(図9A図9Cに関連して後述する)を患者の総大腿動脈5の長手軸方向にほぼ整列させることで血管閉鎖デバイス500の位置が合わせられてもよい。
【0039】
この実施形態では、各係合部材11に対して一本の縫合糸13がまず血管閉鎖デバイス500の中心を通って遠位先端部から出て、血管閉鎖デバイス500の外側表面に沿って上り、展開前の係合部材11を収容する細長筐体500のスロット内に通じる。そして、図5Cに示されるように係合部材11が展開されると(S3)、図5Dに示されるように、血管閉鎖デバイス500の遠位先端部502から上り、筋膜3の(既存の)穴を通って外側方向に係合部材11の位置まで通じる縫合糸13を、引き込み部材が引っ張る。
【0040】
引き込み部材によって引張力がかけられて(S4)、方向が逆になると、図5Eに示されるように係合部材11は機械的に組織/筋膜3に係合して、押出棒12(展開部材)は展開元である血管閉鎖デバイス500の細長筐体504内のスロット、穴、又は管腔内に撤退する。
【0041】
この段階で、複数の係合部材11(例えば、4又はそれ以外の個数の係合部材、係合部材の個数は奇数でもよい)が、総大腿動脈5の各側で、組織/筋膜3内で閉鎖される通路周辺の各所において組織/筋膜3に埋め込まれ固定される。場合によっては、係合部材11は総大腿動脈5の内側と外側の両側に対称的に配置されることがある。各係合部材11には縫合糸13が繋げられ、縫合糸13はアンカーから筋膜3の穴を下がって通り、血管閉鎖デバイス500の遠位先端部502内に通じる。
【0042】
次に、縫合糸に初めの引張力がかけられ、係合部材11(そして筋膜3)を血管閉鎖デバイス500の方向に引っ張る。ここで、図5Fに示されるように、血管閉鎖デバイス500は遠位先端部502が筋膜層3又は筋膜層3上部に位置するまでゆっくりと引き出され、係合部材11をまとめて血管閉鎖デバイス500の遠位先端部502方向に引っ張り続けるよう縫合糸13の引張力を維持し、これによって、全ての係合部材11を一点に向けて引っ張り、通路を閉鎖する。
【0043】
この時点で、図5Gに示されるように、各縫合糸13が通過する固定リング508やスリーブなどの係止部材が血管閉鎖デバイス500の遠位先端部502から展開される。この固定リング508は、複数の縫合糸13の束を圧縮して縫合糸を定位置に係止し、筋膜3や通路が再度開くのを防止して、間接的に動脈5を閉鎖する。さらに、期待される程度の止血が達成されると、ガイドワイヤ8が縫合糸13の引張力を保ちながら取り除かれてもよい。ガイドワイヤ8は、例えば、固定リング508内部ではなく固定リング508の側面を通っていることがある。これによって、ガイドワイヤ8を取り除かなくても、縫合糸13は完全に引き込まれ、固定リング508が展開されて、縫合糸13を定位置に係止するのを可能にすることがある。
【0044】
この固定リング508はばね状で、血管閉鎖デバイス500上では開いた状態で保持され、血管閉鎖デバイス500から展開後、縫合糸13上で自動的に閉鎖してもよい。あるいは、この係止リング機能は、予め結び目が作られた別の縫合糸ループによってなされてもよく、結び目はアンカーに繋げられたその他の縫合糸を締めて固定する。また別の実施形態では、固定リング508は、固定するために熱又は圧力又はその両方を用いて縫合糸をまとめて融着する融着機構でもよい。また別の実施形態では、固定リングは縫合糸を初めにスライド可能に通す小さな管であってもよく、この管は筐体内の機構によって圧縮されて縫合糸を閉じ込めて固定する。
【0045】
図5Hに示すように通路の閉鎖が完了しているため、この段階では血管閉鎖デバイス500の取り外しが継続することがある。必要に応じて、縫合糸13が定位置に固定されると、血管閉鎖デバイス500ハンドル内の機構が作動し、固定リング/領域のすぐ上で縫合糸を切断してもよい。あるいは、図5Iに示されるように、縫合糸13はこの段階では残され、操作者によって皮膚表面で切り落とされてもよい。このようにして血管閉鎖デバイス500は完全に取り除かれる。
【0046】
本開示の別の観点からの図が図6A図6Fに示される。なお、図6A図6Bでは、これら図面における明確性のために筋膜3が省略される。図6Aでは、展開部材(例えば、押出棒12)が動脈5上部の筋膜層に隣接した筐体から出るように先細りの遠位先端部502が配置されるまで、血管閉鎖デバイス500がガイドワイヤ8に沿って前進する。図6Bでは、係合部材11が血管閉鎖デバイス500の細長筐体504から展開され、血管閉鎖デバイス500の遠位先端部502を通る事前に繋げられた縫合糸13を一緒に引っ張る。図6Cでは、引き込み部材によって動きの方向が逆になり(詳細は後述される)、係合部材11が組織/筋膜3内に埋め込まれ、例えば、組織/筋膜3を通る通路602の周辺に所定のパターンで埋め込まれる。そして、係合部材11は展開部材から分離される。図6Dでは、係合部材11は縫合糸13が繋がれたまま定位置に配置され、展開部材(例えば、押出棒12)は所定の引込力で引き込まれる。図6Eでは、遠位先端部502が筋膜3の真上に来るまで、血管閉鎖デバイス500は一部引き出され、それによって、縫合糸に引張力がかけられて係合部材11がまとめて引っ張られ、通路602の径を小さくするように通路602を閉鎖する。図6Fでは、縫合糸13は固定され、血管閉鎖デバイス500は引き抜かれる。
【0047】
必要に応じて、止血部材(図面中には明示されない)が、血管閉鎖デバイス500の遠位先端部502に加えられてもよい。血管閉鎖デバイス500が前進して筋膜3に接する際に、この止血部材はまず動脈5内に配置され、血管閉鎖デバイス500の使用中には、止血装置が作動し動脈5からの出血を防止する。血管閉鎖デバイス500が初めに後退する際に係合部材11は引き寄せられるため、止血部材は作動を停止して引き抜かれてもよい。止血部材の一例として、膨張式の弾性バルーンがある。さらに、任意で中空管腔が細長筐体506の中心に残され、血管閉鎖デバイス500の初めの挿入を容易にするために、管腔を通って拡張器又はカニューレが配置されてもよい。この拡張器は止血維持を補助するため、縫合糸13を絞る際にゆっくりと取り除かれることがある。
【0048】
図7A図7Cは係止部材又は固定リングを適用した場合の詳細図を提供し、ここでは、縫合糸13を掴むように配置された予荷重係止コイル508の形式で提供される。図7Aでは、初期位置にある係止コイル508が示され、係止コイル508は、筐体504の一部である遠位端から延びる管腔の外側表面上に伸長している。縫合糸13はこの管腔を通過して、組織/筋膜3に係合するよう展開された各係合部材11に繋がっている。図7Bでは、縫合糸13に引張力をかけるために引き込み部材(例えば、上述した引込力をかける機構を用いて実施)が用いられ、結果として係合部材13間の距離を縮め、それによって、組織/筋膜3の通路602を閉鎖する。縫合糸保持コイル508は、上述した管腔から押出され、縮まって縫合糸13を掴んで固定化し、係合部材11を互いに隣接位置に保持する。図7Cでは、血管閉鎖デバイス500は引き抜かれ、係止コイル508は係合部材11を互いに近接した位置に保持する。これによって、縫合糸13から全ての引張力を解放することができ、血管閉鎖デバイス500の完全な取り外し、縫合糸の皮膚直下での切り取り、及び、閉鎖処置の完了に備えることができる。
【0049】
図8A図8Cは、一端部が斜め又は切断された管状要素として提供される係合部材11の操作を示す。管状要素は、例えば皮下管断片800から形成されることがある。図8Aでは、展開部材の先端に搭載された皮下管800が示される。図8Aでは、皮下管800は押出棒12に配置されており、縫合糸13は皮下管800の中央部内の位置に取り付けられている。皮下管800の鋭角/断面端部が、筋膜3に突き刺さるところである。図8Bでは、皮下管800が筋膜3を貫通し、皮下管800と皮下管800に取り付けられた縫合糸13のみを定位置に残して押出棒12が引き戻されている。縫合糸13に引張力がかけられている。縫合糸13は皮下管800の片面の中央部に取り付けられているため、皮下管800は筋膜3の下側に引っ掛かる際にほぼ90°回転している。図8Cでは、回転が完了し、縫合糸13の引張力が増すにつれて、皮下管800が皮下管800の長手軸方向に沿って筋膜3と完全に接する。これによって接触領域が広くなり、単純に引っ張られただけでは皮下管800が筋膜3を初めに貫通した際に作られた穴を通って筋膜3から引き戻され難くする。場合によっては、図8Cに示されるように、回転が完了して皮下管800が筋膜と完全に接触すると、皮下管800は筋膜3によって機械的に捕捉されているとも言える。
【0050】
図9A図9Cは、血管閉鎖器900の更なる実施形態の断面を示す。図9Aは、デバイスの初期構成を示す。押出棒12、すなわち係合部材及び縫合糸13は、デバイス内に収容されている(図9Aには明示されない)。図9Aにはまだ押下されていない親指ボタン902が示され、基部のコイルばね904は拡張位置にある。係合部材11は初期位置にあり、係合部材11の遠位端において筐体の遠位端906に収まっている。血管閉鎖デバイス900は、血管の想定方向に整列される細長ハンドル908形状のデバイス位置決め部材を更に備える。
【0051】
図9Bは、係合部材11が展開された後の血管閉鎖デバイス900を示す。親指ボタン902が押下されることによって、基部にある巻きばね904が圧縮され、上部クリップ910が係合して定位置に維持される。押出棒12は拡張位置にあり、遠位先端部には係合部材11がまだ装着されている。図9Cは完了状態の血管閉鎖デバイス900を示し、係止クリップ910が解放され、巻きばね904が初期位置方向に戻る。初期位置に戻る際、(明示されない引き込み部材によって)引込力がかけられ、縫合糸13は血管閉鎖デバイス900に「引き」戻される。上述したように、縫合糸13が血管閉鎖デバイス900に引き戻されると、係合部材11間の距離が縮まり、結果として組織/筋膜3を通る通路の径が減少して間接的に組織係止部を作る。(巻きばね904によってかけられた所定の引込力によって)縫合糸が完全に引っ込むと、固定リング508などの係止部材は、引き込み状態で縫合糸13を固定するように配置される。
【0052】
血管閉鎖デバイスの上記説明は、血管アクセスを閉鎖するという当初想定された使用法に着目したが、この当初想定された使用法が臨床的に許容可能な止血を提供しない場合、一部の実施形態では、臨床的に許容可能な水準まで止血を改善するため、本明細書中に記載された一以上の血管閉鎖デバイスを追加で使用して、追加の係合部材を導入し、組織の接近を更に補助してもよい。
【0053】
図面が順に示されていても、各ステップの順序は図示されたものとは異なることがある。特に、アンカーフックの特徴は説明のために実際よりもかなり大きく示されている。加えて、2以上のステップが同時又は部分的に同時に実施されてもよい。このような変形例は、使用される構成要素や設計者の選択による。このような変形例の全ては、本開示の範囲内にある。加えて、本開示は特定の例示的実施形態を参照して説明されたが、多くの変更、修正などは当業者には明らかであろう。加えて、本明細書中に記載された何れかの特定の血管閉鎖デバイスの実施形態に適した特徴、寸法又は素材は、本明細書中に記載された他の血管閉鎖デバイスの実施形態の何れかと一緒に又は組み合わせて使用されてもよい。
【0054】
さらに、開示された実施形態の変形例は、本開示を実施する当業者が図面、明細書、及び付属の請求項を検討することで理解され、実施できる。さらに、請求項において「備える」、「含む」という用語は他の要素又はステップを除外せず、単数(不定冠詞「a」又は「an」)は複数の場合を除外しない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10