特許第6970109号(P6970109)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6970109半導体ウェハ成形のための音響促進の亀裂伝播
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970109
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】半導体ウェハ成形のための音響促進の亀裂伝播
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20211111BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20211111BHJP
   B26F 3/00 20060101ALI20211111BHJP
   C03B 33/033 20060101ALI20211111BHJP
   C03B 33/037 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01L21/304 611Z
   B28D5/04 B
   B28D5/04 Z
   B26F3/00 E
   C03B33/033
   C03B33/037
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-547922(P2018-547922)
(86)(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公表番号】特表2019-516233(P2019-516233A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】US2017021418
(87)【国際公開番号】WO2017156163
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2020年3月5日
(31)【優先権主張番号】62/305,399
(32)【優先日】2016年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507243142
【氏名又は名称】アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・アリゾナ・ステイト・ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Arizona Board of Regents on behalf of Arizona State University
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ベルトーニ,マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】コル,パブロ・ギマラー
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−295973(JP,A)
【文献】 特開2010−103488(JP,A)
【文献】 特開平02−024100(JP,A)
【文献】 特開平08−039500(JP,A)
【文献】 特開平10−190032(JP,A)
【文献】 特表2010−503239(JP,A)
【文献】 特表2008−540325(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0155422(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/087354(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0052105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B28D 5/04
B26F 3/00
C03B 33/033
C03B 33/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された亀裂伝播を用いて材料をウェハ成形する方法であって、
該材料に第一の応力を加えること、このとき、該第一の応力は該材料の臨界応力点未満であり、また該材料の亀裂形成を開始させるには不十分なものである、
制御された超音波を該材料に適用すること、それにより、該材料における亀裂の先端において加えられた全体の応力が該臨界応力点を超えるようにする、および
実質的に一定の亀裂速度を維持するために該制御された超音波の少なくとも一つのパラメータを調節すること、このとき該少なくとも一つのパラメータは該制御された超音波の周波数および該制御された超音波の振幅からなる群から選択される、
を含む上記の方法。
【請求項2】
該材料の臨界応力強さKICよりもわずかに上の応力強さKを維持するために、該制御された超音波を調節することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
制御された超音波を適用することは、
第一の周波数で第一の超音波を適用すること、このとき、該第一の超音波だけでは、該材料の亀裂を伝播させるのに十分な応力は該亀裂の先端において加えられない、および
第二の周波数で第二の超音波を適用すること、このとき、該第二の超音波だけでは、該材料の亀裂を伝播させるのに十分な応力は該亀裂の先端において加えられない、
を含み、
該第一の超音波と該第二の超音波が周期的に調和して該亀裂の先端に同調して適用されるときに、生じた応力は該材料の亀裂を伝播させるのに十分なものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該材料の亀裂形成によって発生する音波を吸収するために、該材料の外面に減衰材料を付与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第一の応力を加えることは、適用された超音波の方向に垂直な方向で該材料に機械的な応力を加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該材料に機械的な応力を加えることは、該材料に重量を加えることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
該材料に機械的な応力を加えることは、適用された超音波の方向に垂直な方向に該材料を引っ張ることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
該第一の応力を加えることは、該材料において熱的なスポーリングを生じさせるために該材料の温度を調節することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第一の応力を加えることは、高周波数の超音波を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
制御された亀裂伝播を用いて材料をウェハ成形する方法であって、
該材料に第一の応力を加えること、このとき、該第一の応力は該材料の臨界応力点よりも上であり、また該材料の亀裂形成を開始させるものである、
制御された超音波を該材料に適用し、それにより、該材料における亀裂の先端において加えられた全体の応力を該臨界応力点よりもわずかに上に維持すること、および
実質的に一定の亀裂速度を維持するために該制御された超音波の少なくとも一つのパラメータを調節すること、このとき該少なくとも一つのパラメータは該制御された超音波の周波数および該制御された超音波の振幅からなる群から選択される、
を含む上記の方法。
【請求項11】
該材料の臨界応力強さKICよりもわずかに上の応力強さKを維持するために、該制御された超音波を調節することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
制御された超音波を適用することは、
第一の周波数で第一の超音波を適用すること、および
第二の周波数で第二の超音波を適用すること、
を含み、
前記第一の超音波と該第二の超音波が周期的に調和して該亀裂の先端に同調して適用される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
該材料の亀裂形成によって発生する音波を吸収するために、該材料の外面に減衰材料を付与することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
第一の応力を加えることは、適用された超音波の方向に垂直な方向で該材料に機械的な応力を加えることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
該材料に機械的な応力を加えることは、該材料に重量を加えることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該材料に機械的な応力を加えることは、適用された超音波の方向に垂直な方向に該材料を引っ張ることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
該第一の応力を加えることは、該材料において熱的なスポーリングを生じさせるために該材料の温度を調節することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
第一の応力を加えることは、高周波数の超音波を適用することを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本出願は、「半導体ウェハ成形のための音響促進の亀裂伝播」と題する米国仮出願62/305399号(2016年3月8日提出)の利益を権利請求するものであり、この出願の全ての内容が参考文献として本明細書に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は電子装置、光電池、またはその他の用途のためのシリコン(ケイ素)またはガラスなどの材料を「ウェハ成形する」または切断するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]光電装置において、シリコンモジュールのコストの35パーセントはウェハの製造から生じていて、そしてそれらのコストの3分の2はウェハ成形のプロセスとシリコン供給原料の収量に直接関連している。ウェハの切断のための標準的な技術においては、ワイヤの下のシリコンを摩滅させる研磨材料を伴うワイヤソーのセットを用いる。典型的な製造には160〜180μmのウェハと120μmのワイヤを伴い、従って、材料損失(これはカーフ・ロス(切屑、廃シリコン)としても知られる)は、ウェハの厚さに及ぶ場合がある。この方法によって、材料の損失以外に、厚さの変動、ゆがみ、あるいはのこぎりの跡といった、その他の望ましくないウェハ特性が得られる。
【0004】
[0004]のこ引きの技術に対する代替として、様々な「カーフ・レス(切屑無)」技術が提案されてきた。それらの提案された解決策のうちの幾つかには、ウェハの形で直接に結晶成長を行わせることが含まれる。この技術に伴う主な不利益は、結晶構造または欠陥の制御の欠如およびバルクの結晶成長において存在する不純物の偏析という本来的な利点の欠如である。
【0005】
[0005]スポーリング(層状剥離)はシリコンにおける別の代替のカーフ・レス技術であり、これはシリコンの結晶的および機械的な性質を利用するものであるが、何故ならば、シリコンは十分に明確な結晶面を有するとともに、その結晶面を通して亀裂が容易に伝播することができる理想的な脆性固体だからである。しかし、この技術は工業的に適用するためには幾つかの困難を伴う。サファイアのような幾つかの硬い材料の場合、その構造的および機械的な性質は、スポーリングをウェハ成形技術として困難な選択肢とする。半導体のウェハ成形のためには、スポーリングによって製造されるウェハの品質と効率に関する幾つかの厳しい問題が存在する。
【0006】
[0006]このプロセスにおける別の不利益は、劈開されたウェハを製造するために用いられる高温である。幾つかの実験において、冷却した直後にスポーリングの機構を活性化することを可能にするためには、基板を600℃ないし800℃まで加熱する必要がある。この範囲の温度は、シリコンのバルクの内部での欠陥と化学種の拡散によって基板の特性を劣化させる。
【0007】
[0007]低温において行われる実験においては、スポーリングされたウェハの中のキャリアの寿命は最初の基板と比較してずっと短い。また、製造されたウェハの表面は一定ではなく、ウェハの厚さに関して総厚変化が100%になる場合がある。劈開されたウェハと元の基板の両者が粗い表面を示す場合、これらの不規則さは最終的な電池の性能における低い効率をもたらし得るだろう。
【発明の概要】
【0008】
[0008]スラリーとワイヤを排除する一方でシリコンインゴットの歩留りを二倍にするシリコンを切断するための画期的なプロセスは破壊的な技術になり得て、そして太陽エネルギーを他の化石燃料の技術とよりいっそう競合力のあるものにする。光電装置に加えて、この技術は、現行のスラリー技術またはワイヤソー技術を用いてウェハまたは薄膜を製造する技術に対して新たな市場を開くだろう。
【0009】
[0009]しかし、現行ののこ引き技術に対する幾つかの代替のものは、あらゆる種類の材料を低コストでウェハにし得る破壊的な技術になるにはあまりにも多くの困難を伴う。特に、スポーリングの技術においては、主要な問題は亀裂の伝播の制御を全く欠いていることにあり、この問題は低品質の表面とサファイアのような硬い材料をウェハにすることについての無能さをもたらす。
【0010】
[0010]これらのカーフ・レスのウェハ成形技術の成功は、材料を通しての亀裂伝播の制御を拠りどころとしている。以下に記述する装置と方法は、予め形成された亀裂の伝播を制御するために超音波を用いることによって、基板からのウェハのカーフ・レスの劈開をもたらす。
【0011】
[0011]一つの態様において、本発明は制御された亀裂伝播を用いて材料をウェハ成形する方法を提供する。材料に第一の応力が加えられ、このとき、第一の応力は材料の臨界点未満であり、また材料の亀裂形成を開始させるには不十分なものである。次いで、制御された超音波が材料に適用され、それにより、材料における亀裂の先端において加えられた全体の応力が臨界点を超えるようにする。
【0012】
[0012]幾つかの態様において、制御された超音波の周波数および/または振幅が調整されて、実質的に一定で比較的低い亀裂速度が維持されるようにする。他の態様において、制御された超音波を適用することには、第一の周波数で第一の超音波を適用することと、第二の周波数で第二の超音波を適用することが含まれる。材料の亀裂を伝播させるのに十分な亀裂の先端における応力を、いずれの波も単独では発生させない。しかし、二つの波が制御されて、それにより、それらが周期的に調和して材料の亀裂の先端に同調して適用されるときに、生じた応力が材料の亀裂を伝播させるのに十分なものであるようにする。
【0013】
[0013]本発明のその他の側面は、詳細な説明と添付図面を考察することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】[0014]図1は、一つの態様に従う超音波誘起の亀裂伝播のための装置の概略図である。
図2】[0015]図2は、図1の装置を使用する超音波誘起の亀裂伝播のための方法の流れ図である。
図3】[0016]図3は、図1の装置において図2の方法を実施するための制御システムのブロック線図である。
図4】[0017]図4Aは、図1の装置の概略側面図であり、基板は少なくとも部分的に吸音材で覆われている。[0018]図4Bは、図4Aの装置の概略上面図である。
図5】[0019]図5は、亀裂伝播を制御するためのスタートストップ法を使用する超音波誘起の亀裂伝播のための方法の流れ図である。
図6】[0020]図6は、連続亀裂伝播制御法を使用する超音波誘起の亀裂伝播のための方法の流れ図である。
図7】[0021]図7は、材料を通して亀裂が伝播するときの応力の強さのグラフであり、亀裂の伝播が開始した後の応力の強さを調節するために超音波が適用されている。
図8】[0022]図8は、材料を通して亀裂が伝播するときの応力の強さのグラフであり、亀裂の伝播を開始させ、そして亀裂の伝播が開始した後の応力の強さを調節するために超音波が適用されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0023]本発明の幾つかの態様を詳しく説明する前に、本発明はその適用において、以下の説明で示されか、あるいは以下の図面で例示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されない、ということを理解すべきである。本発明は他の態様のものとすることができるし、また様々なやり方で実行または実施することができる。
【0016】
[0024]図1は、超音波源103を用いる材料101(例えば、ガラス片またはガラスシート)の中での制御された亀裂伝播のための装置を示す。ガラス片またはガラスシート101(1m×1m×0.7m;E=65GPa;y−0.2J/m)を所定の位置に保持するために、クランプ105が配置されている。亀裂の先端107において応力を誘起させることによってガラスシートを通して亀裂を伝播させるために、超音波源103が配置されている。ガラスシートには、超音波源103の方向に垂直な方向に荷重Lも加えられる。
【0017】
[0025]図2は、図1の例においてガラスを通しての亀裂の伝播を制御するための方法を示す。高速であると亀裂は不安定になるので、ゆっくりした速度で伝播する亀裂が望ましい。この不安定さは亀裂の軌跡の偏向と、その結果としての分岐および表面のしわをもたらす場合がある。「緩慢な亀裂」を伝播させるために、亀裂の先端107において生じる応力が亀裂の伝播を開始させるであろう臨界値のすぐ下であるように、最初の荷重Lがガラス101に加えられる(工程201)。次いで、超音波源103によって超音波が亀裂の先端107に適用され、それにより臨界値に打ち勝つのに十分な応力が与えられる(工程203)。その結果、材料101を通して亀裂が伝播する(工程205)。加えられる全応力は臨界値のすぐ上であるから、運動エネルギーに関しては少量のエネルギーを用いることができて、亀裂は比較的低い速度で伝播するだろう。
【0018】
[0026](図1に示すような)最初の荷重Lを、様々な形または様々なやり方で加えることができる。例えば、幾つかの実施において、亀裂の先端における応力条件を満足させるために、重量を用いるか、あるいは適当な力で機械的に引っ張ることによって、亀裂伝播面を横断する機械的な荷重として荷重Lが加えられる。他の実施において、熱的なスポーリングを用いて適当な応力を加えることができて、この場合、冷却したときに、二つの材料の間の収縮の差が亀裂の伝播を生み出す。さらに他の実施においては、亀裂の先端に向けられた高周波超音波源を用いることによって、最初の荷重Lが加えられる。この追加の超音波源が、材料を臨界点のすぐ下にもちきたすための亀裂の先端における適当な応力条件を生み出す。
【0019】
[0027]あるいは、材料101についての臨界値のすぐ上となる応力を得るために最初の荷重を加えることができる。この最初の応力は材料101の中で自発的な亀裂伝播を生じさせる。次いで、臨界値のすぐ上の値のままでいるように亀裂の先端における応力を調整するように、超音波源103が制御される。
【0020】
[0028]図3は、図1の装置において図2の方法を用いて超音波誘起の亀裂伝播を実施するための制御システムの一例を示す。制御システムは電子プロセッサのような制御器301を含む。制御器301は、システムの操作を制御するために、メモリー303に記憶された命令を呼び出し、そして実行する。制御器301はまた、超音波源305に通信可能に結合されていて、それにより、発生した超音波の周波数と振幅が調節される。幾つかの実施において、超音波源305は圧電要素または変換器要素を作動させるように構成されていて、ひいては、接触または非接触の操作モードを用いて材料(例えば、シリコン基板)の中に超音波を送る。幾つかの実施において、制御器301はまた、第二の荷重源307(例えば、最初の荷重を制御可能な形で与えるように構成された第二の超音波源または機械的な応力機構)に通信可能に結合されている。
【0021】
[0029]幾つかの実施において、図1に示すように、最初の亀裂が材料の中に作られる。この最初の亀裂は、劈開が行われるべき高さで基板の側面上に作られる。伝播を開始するのに必要な応力を低くするために、刻み目は鋭角である。亀裂において十分かつ適切なレベルの鋭角を達成するために、ダイヤモンドペンまたはナノインデンターを用いて最初の亀裂を作ることができる。他の実施において、また特定のタイプの材料については、インデンターとしてレーザーを用いることができる。幾つかの実施においては、最初の亀裂は作られない。しかし、そのような実施においては、亀裂の伝播を開始するのに必要な応力は一般に高く、また亀裂はサンプルの中心部に近い位置で開始するかもしれず、亀裂はサンプルの端に達するまで外に向かって伝播する。
【0022】
[0030]亀裂の伝播が開始した後、亀裂伝播の速度と方向は、超音波の振幅と周波数を制御することによって調節することができ、また幾つかの実施においては、超音波源の位置によって調節することができる。亀裂の先端において引張り応力が引き起こされて、それにより音の周波数が亀裂面の結合を振動および伸張させるようにするために、周波数が制御される。亀裂の先端で集中した応力中心が作り出されて、これが結局は亀裂伝播の速度を制御するように、振幅が設定される。
【0023】
[0031]装置は材料を通る亀裂の伝播を制御することができるけれども、幾つかの実施においては、反射波と亀裂の先端との相互作用が望ましくない結果あるいは一様でない結果を引き起こす場合がある。これを防ぐために、亀裂の先端および超音波源によって発せられる波が試料の端部に達したときに反射して材料の中に戻ることを防ぐための軽減手段が適用される。幾つかの実施においては、これは、適当な音響インピーダンスの減衰材料または吸収材料で固体を裏打ちすることによって達成される。従って、波が固体の端部に達すると、それらは吸収材料の中に伝えられ、そして完全に弱められる。その結果、波が反射して材料に戻ることはなく、このことが亀裂の伝播を滑らかなものにする。反射した波の周波数は亀裂の速度と固体の特性(例えば、弾性率)に依存するであろうから、減衰材料のタイプは様々なタイプの固体に対して変わるかもしれない。
【0024】
[0032]図4Aおよび図4Bは、反射した波を弱めるために、亀裂が形成されるべき材料を覆う吸収材料のコーティングを用いる装置の例を示す。上で論じた例と同様に、材料401に超音波を与えるために超音波源403が操作される。クランプ405が材料401を所定の位置に保持し、そして最初の亀裂407が材料に刻み込まれている。しかし、図1の例と異なって、材料401は吸収材料409で部分的に被覆されている。材料を臨界点に近づけるために荷重Lが加えられ、次いで、図4Aに示す方向に材料を通して亀裂を伝播させるために超音波源403が制御可能なように用いられる。図4Aに示すように、亀裂が形成されるべき材料401は吸収材料409によって部分的にしか被覆されておらず、このとき、亀裂が形成されるべき材料401は亀裂の面において完全に覆われているようにする。図4Bの上面図に示すように、吸収材料409は、亀裂の面内で亀裂が形成されるべき材料401の周囲を完全に囲んでいる。しかし、幾つかの他の実施においては、材料401を吸収材料409で完全に被覆してもよく、あるいは、亀裂が形成されるべき材料401に、被覆材料409のその他の形態のものや配置が付与されてもよい。
【0025】
[0033]亀裂の伝播は、超音波源を用いる多くの異なるやり方で調節することができる。図5は、亀裂の形成をストップスタート法で調節するために、それぞれが異なる周波数で作動する二つの異なる超音波源を用いる一つの方法を示す。第一の超音波が第一の周波数で亀裂の先端に適用され(工程501)、そして第二の超音波が第二の周波数で亀裂の先端に適用される(工程503)。これら二つの超音波の振幅と周波数は、それらの超音波が亀裂の先端に同調して達するときに亀裂の成長が促進されるように制御される。二つの超音波が同調していない間は(工程505)、亀裂は助長されずに緩慢になるか、あるいは停止するだろう(工程507)。しかし、二つの超音波が亀裂の先端に「同調して」適用されるとき(工程505)、亀裂はさらに伝播する(工程509)。超音波は異なる周波数で適用されるのであるから、それらは時たま「同調する」に過ぎない。従って、先端におけるエネルギーは開始後に急速に低下し、そして制御できない亀裂の動きが始まる前に亀裂は減速するか、あるいは停止さえもする。この手順の繰り返しにより、材料の全体を通して亀裂を制御可能なように伝播させることができる。
【0026】
[0034]図5に示された流れ図は、亀裂形成のプロセスの間に装置を操作するために制御器によって実行される命令についての表示では必ずしもない、ということに留意されたい。そうではなく、図5は、二つの超音波の制御れた適用に対して材料はどのように応答するかを示すために、流れ図の形式を用いている。制御器は、二つの異なる制御された周波数で二つの異なる超音波を適用するための超音波源に作用する。周波数の波が偶然に整列した場合(すなわち、亀裂の先端に「同調して」達した場合)、材料は断続する「ストップスタート」方式で亀裂を形成することによって反応するだろう。
【0027】
[0035]図6は、より一様な連続した亀裂の伝播を達成する別の方法を示す。第一の超音波が亀裂の先端に高い周波数で適用される(工程601)。この高周波により亀裂の先端に応力が加えられるが、しかしそれは亀裂を伝播させるには不十分である。次いで、第二の超音波源が低い周波数で適用され、これが亀裂の伝播を開始するのに十分な応力を与える(工程603)。しかし、亀裂が伝播するとき、一定の亀裂速度を維持するために、周波数およびその他のパラメータが調節される(工程605)。この方法では、低い速度で亀裂を開始させるのに超音波源を用いることができ、次いでそれらは、亀裂の動きと(後述する)K値を特定の定められた限度内に維持するために変えられる。幾つかの実施において、連続法は、臨界値のすぐ上の応力を得るために最初の超音波または荷重を利用する。次いで、亀裂の伝播が始まった後、別の超音波源が適用され、そしてこれが調節されて、亀裂が伝播するときの周波数およびその他のパラメータを調節することによって一定の亀裂速度を維持する。
【0028】
[0036]最後に、下の表は、ガラス、シリコン、またはサファイアなどの様々な材料について測定された値の例を示す。これらの例において、亀裂の伝播が開始するのに必要な臨界応力について、下の式(1)を用いることができる:
【0029】
【化1】
【0030】
ここで、E=ヤング率;γ=表面エネルギー;a=最初の亀裂の長さ。
【0031】
【表1】
【0032】
[0037]幾つかの実施において、伝播した亀裂の位置における材料の表面の粗さは、伝播する亀裂の速度のみならず、応力強さ係数(応力拡大係数)Kの値にも依存する。応力強さ係数は伝播する亀裂の先端の周囲の応力場の状態を示し、それは有限要素解析FEAを用いてモデル化することができる。亀裂が伝播するとき、Kの値は臨界値KICよりも小さくなることができ、そして亀裂の最前線を阻止する。材料の表面上に粗さの小さな領域が生成し、そこではK値は臨界値KICよりもほんの少しだけ大きい。従って、幾つかの実施において、K値とKICの差をできるだけ小さく維持するように超音波源を操作することによって、実質的に一様で粗さの小さな表面を作り出すことができる。
【0033】
[0038]図7および図8は、粗さの小さな表面を作り出すために超音波源を制御するための方法の二つの例を示す。両者の例において、異なる溶液についてシリコンにおけるスポーリングのプロセスを制御するために、有限要素解析FEAが用いられる。図7の例において、亀裂の伝播を開始させるために最初の応力が加えられ、そして亀裂がすでに開始した後にK値を臨界値よりも上に維持するために超音波源が制御される。図8の例において、応力をKIC値よりもすぐ下に設定するために最初の応力が加えられ、そしてK値をKICよりもすぐ上にするために超音波源が制御される。従って、超音波源の適用と調整によって亀裂の伝播を開始させ、また劈開のプロセスの全体についての亀裂の伝播を制御する。
【0034】
[0039]亀裂が伝播し始めた後、亀裂の速度は、それが一定の値に達するか減速する(これは自然に起こるか、あるいは超音波源によって適用される調整によって起こる)まで加速する。幾つかの実施において、この加速は望ましくないものであり、何故ならば、上で論じたように、一定の速度が亀裂におけるより滑らかな表面をもたらすからである。従って、幾つかの実施において、亀裂の速度が一定の定められた限度内に維持されるとともにKICよりもわずかに上のK値が維持されるように超音波源が動作するように、制御器が設定される。より高い周波数を有する超音波を適用することは、低い周波数での超音波よりも伝播について高い影響を与えるだろう。また、亀裂の伝播に及ぼすであろう超音波の影響は、亀裂の先端に対する超音波源の位置に依存して変化し得る。従って、幾つかのそのような実施においては、例えば、周波数、振幅、形状、および出力を含めた超音波のパラメータを制御可能なように調節することによって、速度、応力の強さ、および亀裂伝播の軌跡を調節することができる。
【0035】
[0040]従って、本発明は特に、音波を適用することによって制御された亀裂伝播を用いて(ガラス、シリコン、またはサファイアのような)材料をウェハ成形するための装置と方法を提供する。本発明の様々な特徴と利点は以下の特許請求の範囲において示される。
[発明の態様]
[1]
制御された亀裂伝播を用いて材料をウェハ成形する方法であって、
該材料に第一の応力を加えること、このとき、該第一の応力は該材料の臨界応力点未満であり、また該材料の亀裂形成を開始させるには不十分なものである、および
制御された超音波を該材料に適用すること、それにより、該材料における亀裂の先端において加えられた全体の応力が該臨界応力点を超えるようにする、
を含む上記の方法。
[2]
実質的に一定の亀裂速度を維持するために該制御された超音波の少なくとも一つのパラメータを調節することをさらに含み、該少なくとも一つのパラメータは該制御された超音波の周波数および該制御された超音波の振幅からなる群から選択される、1に記載
の方法。
[3]
該材料の臨界応力強さKICよりもわずかに上の応力強さKを維持するために、該制御された超音波を調節することをさらに含む、1に記載の方法。
[4]
制御された超音波を適用することは、
第一の周波数で第一の超音波を適用すること、このとき、該第一の超音波だけでは、該材料の亀裂を伝播させるのに十分な応力は該亀裂の先端において加えられない、および
第二の周波数で第二の超音波を適用すること、このとき、該第二の超音波だけでは、該材料の亀裂を伝播させるのに十分な応力は該亀裂の先端において加えられない、
を含み、
該第一の超音波と該第二の超音波が周期的に調和して該亀裂の先端に同調して適用されるときに、生じた応力は該材料の亀裂を伝播させるのに十分なものである、1に記
載の方法。
[5]
該材料の亀裂形成によって発生する音波を吸収するために、該材料の外面に減衰材料を付与することをさらに含む、1に記載の方法。
[6]
第一の応力を加えることは、適用された超音波の方向に垂直な方向で該材料に機械的な応力を加えることを含む、1に記載の方法。
[7]
該材料に機械的な応力を加えることは、該材料に重量を加えることを含む、6に記載の方法。
[8]
該材料に機械的な応力を加えることは、適用された超音波の方向に垂直な方向に該材料を引っ張ることを含む、6に記載の方法。
[9]
該第一の応力を加えることは、該材料において熱的なスポーリングを生じさせるために該材料の温度を調節することを含む、1に記載の方法。
[10]
第一の応力を加えることは、高周波数の超音波を適用することを含む、1に記載の方法。
[11]
制御された亀裂伝播を用いて材料をウェハ成形する方法であって、
該材料に第一の応力を加えること、このとき、該第一の応力は該材料の臨界応力点よりも上であり、また該材料の亀裂形成を開始させるものである、および
制御された超音波を該材料に適用し、それにより、該材料における亀裂の先端において加えられた全体の応力を該臨界応力点よりもわずかに上に維持すること、
を含む上記の方法。
[12]
実質的に一定の亀裂速度を維持するために該制御された超音波の少なくとも一つのパラメータを調節することをさらに含み、該少なくとも一つのパラメータは該制御された超音波の周波数および該制御された超音波の振幅からなる群から選択される、11に記載の方法。
[13]
該材料の臨界応力強さKICよりもわずかに上の応力強さKを維持するために、該制御された超音波を調節することをさらに含む、11に記載の方法。
[14]
制御された超音波を適用することは、
第一の周波数で第一の超音波を適用すること、および
第二の周波数で第二の超音波を適用すること、
を含み、
前記第一の超音波と該第二の超音波が周期的に調和して該亀裂の先端に同調して適用される、11に記載の方法。
[15]
該材料の亀裂形成によって発生する音波を吸収するために、該材料の外面に減衰材料を付与することをさらに含む、11に記載の方法。
[16]
第一の応力を加えることは、適用された超音波の方向に垂直な方向で該材料に機械的な応力を加えることを含む、11に記載の方法。
[17]
該材料に機械的な応力を加えることは、該材料に重量を加えることを含む、16に記載の方法。
[18]
該材料に機械的な応力を加えることは、適用された超音波の方向に垂直な方向に該材料を引っ張ることを含む、16に記載の方法。
[19]
該第一の応力を加えることは、該材料において熱的なスポーリングを生じさせるために該材料の温度を調節することを含む、11に記載の方法。
[20]
第一の応力を加えることは、高周波数の超音波を適用することを含む、11に記載の方法。
【符号の説明】
【0036】
101 材料、 103 超音波源、 105 クランプ、 107 亀裂の先端、 301 制御器、 303 メモリー、 305 超音波源、 307 第二の荷重源、 401 材料、 403 超音波源、 405 クランプ、 407 最初の亀裂、 409 吸収材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8