【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の範囲内で、オブジェクトが分散される領域の概観画像を用いて、複数の分散オブジェクトを検査するための方法が開発されてきている。
【0007】
領域は、例えば、その上にオブジェクトを当てられる
基材の上に配置することができる。オブジェクトは、例えば、生体細胞、特に、真核細胞とすることができ、生体細胞は、例えば、溶液の中の、又は、溶媒の中の浮遊として、
基材に当てられる。そのようにすることにおいて、細胞は、
基材に付着することができ、すなわち、
基材に結合することができ、又は、
基材からの分離群のままでいることができ、分離群は、弱い物理的力によってのみ、基材の上に適所に保たれる。選択的に、細胞を
基材に接着する方法は、また、
基材にコーティングを施すことにより、調整することができる。例えば、ポリ-L-リシン又はポリ-D-リシンのコーティングは、細胞に
基材を接着させないようにすることができ、及び/又は、細胞を
基材に接着させないけれども、細胞に
基材上の特定の位置にとどまらせることができる。
【0008】
他方、オブジェクトは、必ずしも、生体的性質を有するわけではない。オブジェクトは、例えば、フィルタで収集したちり粒子、又は、例えば、接着フィルムとすることもできる。
【0009】
概観画像は、有利なことに、オブジェクトが分散される全領域が、並行して、撮像され表示される、画像である。特に、概観画像は、領域の顕微鏡の明視野画像とすることができる。そのような画像は、直ちに使用でき、撮像は、オブジェクト自体、又は、領域内のその位置に影響しない。原則として、しかしながら、概観画像は、例えば、蛍光顕微鏡検査法又は走査プローブ顕微鏡検査法による任意の他の方法によっても得ることができる。動作パラメータは、次いで、オブジェクトが、本質的に変化しないままで、領域内のその位置が変化しないように、当然選択される。
【0010】
特に、概観画像は、各ピクセルが正確に1つの強度値を割り当てられるグレースケール画像とすることができる。概観画像は、しかしながら、例えば、カラー画像ともすることができる。カラー画像は、多数のチャンネルの集合として理解することができ、各チャンネルにおいて、グレースケール画像に類似して、特有の性質がピクセルからピクセルへ変化する。例えば、カラー画像は、RGBカラー画像の赤、緑及び青、又は、CMYKカラー画像のシアン、マゼンタ、イエロー及びブラック、などのベースカラーに各々が関連する複数の副画像のオーバレイとすることができる。HSV色空間に3つの副画像があり、3つの副画像は、グレースケール画像に類似して、色相、彩度及び明度の3つの特性の空間分布を表す。さらなる検査のために、これらの副画像の内の単一の副画像は、又は、いくつか若しくは全ての副画像のグレースケール画像への計算は、各ケースにおいて、今や、用いることができる。一般性を失うことなく、以下、グレースケール画像であると仮定する。
【0011】
オブジェクトは、任意の集中度の領域に分散することができる。意味をなす集中度は、特定のアプリケーションに依存する。生体細胞における可能な病理学的変化の検査において、例えば、細胞を個々に検査することは重要である。細胞の集中度は、領域の少なくとも細胞の大部分が、互いに、なお明確に区別できるほどに大きいだけである場合、意味をなす。他方、例えば、アスベストをサーチするために、チリ粒子を検査する場合、粒子の集合が生じる場合、重要性はより少ない。
【0012】
特に、オブジェクトの分布は、統計的になり得る。しかしながら、分布は自己組織化することもでき、例えば、すなわち、前に
基材の上に応じて組み立てられた
基材の上の規定の位置に、例えば、全体的に又は部分的に、オブジェクトを配置することもできる。
【0013】
本発明により、前記概観画像のピクセルの強度値を、該強度値が所定の閾値を超えない側にあるか、又は、所定の閾値を超える側にあるかどうか、に関して、分類することにより、前記概観画像を二値画像に最初に変換する。二値画像は、したがって、ピクセルが属する2つのクラス「超えない側」又は「超える側」のどちらかに依存して、2つの可能な各値0又は1を各ピクセルに割り当てる。例えば、一般性を制限することなく、「超えない側」は「閾値以下である」を意味することができ、値0を割り当てることができ、「超える側」は「閾値より大きい」を意味することができ、値1を割り当てることができる。
【0014】
二値画像は、オブジェクトがどこにあるかについて、最初の手掛かりである。例えば、オブジェクトの輪郭、及び、したがって、例えば、関連する中心を決定するために、二値画像は十分ではない。したがって、2つのクラスのみへの離散化により、二値画像から直接とられる輪郭は、通常、ギャップを有する。これらのギャップは、「閉じる」と呼ばれる、形態的に閉じる数学的動作で閉じる。これにより、二値オブジェクトマスクを創生し、該二値オブジェクトマスクは、前記概観画像に描かれた前記領域のどの位置がオブジェクトに属するかを示し、前記領域のどの位置がどのオブジェクトにも属していないかを示すが、代わりに、空の
基材の表面を割り当てることができる。
【0015】
しかしながら、実際の概観画像は、通常、例えば、ノイズに基づくエラー又はアーチファクトがなくならない。そのようなエラー及びアーチファクトは、オブジェクトより小さい構造を創生する。形態的に閉じることをこれらの構造に適用する場合、それらは、求めるオブジェクトのサイズに匹敵するサイズに成長することができる。二値オブジェクトマスクのエラー及びアーチファクトは、もはや、実際のオブジェクトから区別することができない。
【0016】
これを避けるために、本発明により、二値画像は、オブジェクトより小さい構造をクリーンアップし、それ故に、クリーンアップ画像となる。このクリーンアップ画像のみが、さらに処理されて二値オブジェクトマスクになる。したがって、二値画像の生成後に、これらのオブジェクトをエラー及びアーチファクトから区別するために、求めるオブジェクトは、少なくとも、どのサイズを有するかについての追加の情報を利用する。プロセスにおける現時点でのそのような追加の情報の考慮は、最も効果的であり、特に信頼できる区別を可能にする。結果として、得られた二値オブジェクトマスクは、概観画像においてマッピングされた領域のどの位置がオブジェクトに属するかの、特に信頼できるインジケーターである。
【0017】
例えば、ラマンスペクトルをどの位置でとるかを決定するために、二値オブジェクトマスクを用いるときに、クリーニングは特に重要である。クリーンアップ前の擾乱及びアーチファクトの数は、通常、検査すべきオブジェクトの数より、多数である。これらの擾乱及びアーチファクトがオブジェクトとして誤って認識される場合、複数の関係のないラマンスペクトルが記録され得る。これは、不必要な時間がかかるだけでなく、スペクトルの統計的分析も複雑にし、この分析を不可能にさえする。
【0018】
すでに二値オブジェクトマスクから、オブジェクトについての多くの情報を導くことができる。例えば、オブジェクトの正確なサイズ及び形状は、二値オブジェクトマスクから見ることができる。また、オブジェクトに属する位置(ピクセル)の割合から、領域内のオブジェクトの集中度は明らかになる。しかしながら、二値オブジェクトマスクは、さらなる検査が実施されるそれらの位置を決定するための、予備のプロダクトとしても、用いることができる。
【0019】
所定の閾値を画定するために、発明者の実験において、3つの方法が、特に有益で信頼できることが見出された。全ての3つの方法は、概観画像のピクセルの強度値に対するヒストグラムの評価に基づく。これらの強度値は、例えば、8ビットの解像度で0から255の整数値、及び、16ビットの解像度で0から65535の整数値である、可能な特定の数値に、典型的に離散化される。
【0020】
第1の方法により、前記閾値は、前記閾値より下の前記概観画像のピクセル(201a)の全ての強度値の第1の平均値m
0と、前記閾値より上の前記概観画像のピクセルの全ての強度値の第2の平均値m
1との間の中央にあるように、前記閾値を設定する。平均値m
0及びm
1は、次々に、閾値に依存するため、これは、閾値のための自己矛盾のない条件として、理解することができる。照明条件は、最終的に得られる二値オブジェクトマスクに対して、特に低いインパクトを有する点において、この方法概観画像としての顕微鏡の明視野画像のコンテキストにある。
【0021】
例えば、閾値の全ての可能な離散値に対して、どのように良く自己矛盾のない条件を満たすかをテストすることにより、正しい閾値を決定することができる。その条件を最も良く満たす閾値を選択する。可能な強度値があるだけの数の閾値が可能であるため、これに必要な計算時間は、概観画像の強度値が、いかに細かく離散化されているかに依存する。強度値が、非常に細かく離散化されている場合、品質の評価基準として自己矛盾のない条件の達成を用いる最適化アルゴリズムは、全ての可能な値をテストするための代替としても用いることができる。
【0022】
第2の方法により、前記強度値の数で重み付けられた、前記閾値より下の前記概観画像のピクセルの全ての強度値の第1の分散と、前記強度値の数で重み付けられた、前記閾値より上の前記概観画像のピクセルの全ての強度値の第2の分散との和を最小にするように、前記閾値を設定する。
【数1】
が、ピクセルの強度値がクラス0又は1に属し、閾値sに依存する確率であり、
【数2】
が、また、閾値sに依存し、これらのクラ内のピクセルの分散である場合、重み付きの和である
【数3】
の式で与えられる。
【0023】
どの強度値が閾値より上か、又は、下かは、各ケースにおいて、再び、閾値に依存するため、この重み付きの和を最小にすることでさえ、自己矛盾のない条件である。この条件において、実験的に決定される概観画像の典型的な形状により動機付けをされる、以下の仮定は、概観画像において、一方のオブジェクトと他方のオブジェクトのない領域との間で最大のコントラストを確立することであり、一方、各々が別個にとられる、測定されるオブジェクトだけでなく、オブジェクトのない領域も、比較的、均質であることに対しては測定される。したがって、クラス間の分散を最小にすることは、概観画像のピクセルにより表される、概観画像の位置が、有用に、「オブジェクト」と「オブジェクトなし」の2つのクラスに分割されることの、もっともらしいインジケーターである。
【0024】
一方では、前記閾値より下の前記強度値と、他方では、前記閾値より上の前記強度値との間のクラス間の分散を最大にするという事実に対して、大津(Otsu)の研究により、この条件は等しい。クラス間の分散
【数4】
の式で与えられる。ここで、第1の方法に類似して、m
0(s)及びm
1(s)は、再び、閾値sに依存するクラスの平均値である。クラス間の分散は、両方のクラス間の分散の和よりも少ない計算量で決定することができる。
【0025】
第3の方法により、前記二値画像の少なくとも1つの統計学的モーメントが、前記概観画像の対応する統計学的モーメントに最大限に一致するように、前記閾値を設定する。例えば、この統計学的モーメントは平均又は分散とすることができる。第2の方法に類似して、この方法は、オブジェクトとオブジェクトのない領域との間で概観画像のコントラストは、本来、見えるべきであり、一方、オブジェクトのない領域だけでなく、オブジェクト自体も、それぞれ、相対的に均質であるべきである、という基本的仮定に基づく。最良の概観画像は、したがって、二値オブジェクトマスクとして直接、用いることができる、ほぼ二値画像であるべきである。実際の概観画像は、画像処理により、ぼやかされた(不鮮明にされた)この最良の二値概観画像であると考えられ、ぼやかしは、統計学的モーメントには影響がない。したがって、保存量として、統計学的モーメントを選択することにより、オブジェクトとオブジェクトのない領域との間の区別に対する情報内容は、変えられず、より明確にされるだけである。それ故に、第3の方法は、概観画像が低コントラストのみを有する場合、特に、有利である。
【0026】
すべての3つの方法は組み合わせて用いることもでき、及び/又は、閾値用の決定値sは、二値画像に適用される1つの全体の値に、互いに対して、オフセットするために、用いることができる。
【0027】
本発明の特に有利な実施形態において、背景の評価は、本質的にオブジェクトを除去する、強度をぼやかすことにより、前記概観画像から得られ、前記概観画像は、前記二値画像に変換する前に、前記背景の評価に対する差異により、置き換えられる。このように、最終的に得られた二値オブジェクトマスクへの一様でない照明の影響は、さらに抑制される。したがって、差異の画像が形成された後に、全てのさらなる動作は、次いで、もはや、元の概観画像からではなく、この差異の画像からのみ、進める。
代替的に、又は、組み合わせて、背景の評価は、オブジェクトのない第2の概観画像を記録することにより、得ることができる。前記背景の評価は、次いで、背景画像として利用できる。この背景画像の各ピクセルは、次いで、例えば、背景画像の最大強度に正規化することができる。前記概観画像は、次いで、正規化した背景の評価により、前記二値画像に変換する前に、点ごとに分割することができる。
【0028】
本発明のさらに特に有利な実施形態において、前記二値オブジェクトマスクにおいて、隣接するオブジェクトの少なくとも1つの共通の境界は、第1のオブジェクトの第1の境界、及び、第2のオブジェクトの第2の境界に分割される。このように、たとえ、概観画像において画像化された領域のオブジェクトの集中度が非常に高いので、オブジェクトが塊になる場合でさえ、オブジェクトは、分離して認識し、調査することができる。このために、例えば、流域変換を用いることができ、流域変換は、二値オブジェクトマスクのピクセル値0及び1を高さの情報として解釈し、連続する「フラッディング」において、隣接するオブジェクト間の流域を詳しく述べる。
【0029】
有利なことに、少なくとも1つのオブジェクトの中心点は、前記二値オブジェクトマスクから評価される。この点は、オブジェクトの多くの更なる検査のために、重要である。
【0030】
本発明のさらに特に有利な実施形態において、前記二値オブジェクトマスクにより、オブジェクトが配置される領域の中の少なくとも1つの位置が、光ビームに照射され、照射に対する前記オブジェクトの応答が評価される。この場合、光ビームは、特に、レーザビームであってもよい。光ビームを用いての検査は、非侵襲性であり、用いる光ビームの回折限界に至るまで高空間解像度で実施することができる。必要であれば、回折限界は、近視野の光の使用により、避けることができる。
【0031】
逆に、全体のオブジェクトが照明されるように、光ビームも広げることができる。ここで、オブジェクトの中心を光ビームの位置の中心として選択する場合は、特に、有利である。エッジ効果を防ぐために、光ビームの強度分布は、例えば、いくつかのモードを重ね合わせる(「モードスクランブリング」)ことにより、均質にすることができる。代替的に、又は、組み合わせて、オブジェクトを照明するビームプロファイルのその部分が、ほぼ、均質になるように、光ビームをさらに広げることができる。これは、次に、強度を犠牲にすることになる。
【0032】
本発明のさらに特に有利な実施形態において、前記二値オブジェクトマスクにより、前記オブジェクトに対して前記光ビームでスキャンする。スキャニングは、レーザビームをオブジェクトに対して動かすことにより、オブジェクトをレーザビームに対して動かすことにより、又は、レーザビーム及びオブジェクトの両方を動かすことにより、実施することができる。
【0033】
前記光ビームの空間強度分布を考慮して、スキャニングのタイミングプログラムは、全受光線量の空間分布が、前記オブジェクトに対して、均質化されるように、選択される。例えば、レーザビームは、第1近似において、ビームの断面を横切るガウス分布のビームプロファイルを有する。このビームがオブジェクトの中心にある場合、オブジェクトは、不均質な強度で照明される。オブジェクトが均質に構成されていないが、例えば、エッジにおいてより、中心において、異なる材料の組成を有する場合、オブジェクトにより受ける照明に対する応答において、この材料のコントラストは、不均質な照明の強度による、アーチファクトで重ね合わせられる。これは、核が細胞の残りの部分とは異なる材料から成るオブジェクトとしての、真核生体細胞において、特に、生じる。そのようなアーチファクトは、オブジェクトが受けた光線量を均質にするタイミングプログラムにより、有利に最小化される。
【0034】
本発明の特に有利な実施形態において、前記オブジェクトの少なくとも1つのラマンスペクトルは、前記照射に対する前記応答から評価される。ラマン散乱において、光子は分子の上で非弾性的に散乱され、したがって、エネルギーは、光子と分子の励起状態との間で交換される。これらの励起状態は、各分子の特性であるため、ラマン散乱は、照明された領域の分子特有の「指紋」を提供する。ここで、がんにより引き起こされ得るものなどの、特に、生体サンプルの細胞において、病理学的変化を見せることができる。
【0035】
ラマン分光法の二値オブジェクトマスクの抽出との組合せにより、生体サンプルの様々な細胞の上へのラマンスクリーニングを自動化することを可能にする。これまで、次の興味のある細胞において、次のラマンスペクトルが記録される前に、ラマンスペクトルが記録されなければならず、次いで、サンプルが励起レーザの焦点に対して手動で動かされねばならないことが、繰り返されるので、そのような検査は、わずかなサンプルの細胞にのみ、実施することができただけである。典型的に、そのような調査において、100個の細胞より、はるかに少なく検査されていた。概観画像において見ることができる全ての細胞を連続して検査することを実施できるようにさせることにより、検査は、100,000以上の細胞を実施することができる。
【0036】
検査の結果は、ひいては、統計的に、もっと良く弾力的であり、検査は、低減したスタッフの数のため、より安価である。いくつかの検査は、このように増大したスループットで、可能でさえある。例えば、細胞が、統計的方法を用いて、異なるクラスに分割される場合、多くの細胞を検査することができればできるほど、分類はもっと信頼できるようになる。特に、統計的分類方法の信頼性は、方法の訓練段階において、いかに多くの細胞が検査されたかに、大きく依存する。例えば、細胞のタイプ、又は、健康な細胞か、もしくは、腫瘍の細胞かどうかにより、細胞を分類することができる。例えば、白血細胞のヘモグラムも作ることができる。
【0037】
例えば、1,000個又は10,000個の細胞につき、1つの細胞でのみ生じる稀な変化を検出すべき場合、生体サンプルにおいて具体的な変化があるかどうかの信頼できる発表をするために、本発明により増大したスループットも必須である。
【0038】
さらに、タンパク質の相対的含有量、核酸及び脂質、又は、細胞周期の現在の状態でさえ、などの他の情報を細胞から得ることができる。
【0039】
同時に、1つの細胞から次の細胞への変化率は、人間の応答時間により制限されないため、迅速な臨床試験が可能である。本方法を実施するために配置される本発明による分析装置は、手作業による画像の検査又はパラメータの設定をせずに、完全に自動で作業し続けることができ、したがって、予備知識のないスタッフにより、臨床分野において、動作させることができる。細胞のみを適切なスライドの上に置かねばならず、スライドは装置へ運ばなければならない。
【0040】
基材としてのスライド自体は、以前の検査から変更する必要はない。例えば、スライドはガラス、石英又はCaF
2から作ることができる。
【0041】
もちろん、一旦、二値オブジェクトマスクで同定された全てのオブジェクトが検査されたならば、プロセスは、新しい領域で、自動的に繰り返すことができる。例えば、概観画像用の空間対象領域のサイズに対応する、より大きい生体サンプルの上の領域を、連続して検査することができる。概観画像から、二値オブジェクトマスクは、上記の方法で、各ケースにおいて、得ることができ、この二値オブジェクトマスクで同定される全てのオブジェクト(細胞)は、励起レーザの焦点の中へ自動的に導くことができ、順次、検査することができる。
【0042】
ラマンスペクトルを受けるために、代替的に、又は、組み合わせて、例えば、材料サンプルは、レーザビームにより、オブジェクトから蒸発することもでき、質量分光計へ送ることができる。このように、オブジェクトの材料は、要素に特定して分析することができる。さらに特に有利な本発明の実施形態において、
基材の上の細胞は、影響にさらされ、光ビームに繰り返し照明される。各ケースにおいて、細胞の照明に対する応答が評価される。
【0043】
例えば、化学物質の影響下の細胞の発達、分子振動モードへの影響を有する同位体又は他の物質の組み込み、しかし、電離放射線又は栄養物の低減、又は、
基材の上にある様々な細胞のタイプ間の相互作用を調査することができる。しかしながら、例えば、成長及び増殖プロセスなどの自然な過程は、細胞の培養基、周囲温度又は高培養温度の影響下で調査することができる。さらに、培養ガスの組成により誘導される、細胞の変化を調査することができる。
【0044】
基材の上に分散された細胞を自動方法で分析するために、本発明により供給された機能により、測定の不確かさを非常に低減するため、照射に対する応答からの細胞への影響の効果を、十分な統計的有意性を持って、決定することができる。従来の技術において、分散した細胞は、各測定に対して、手作業で配置しなければならず、次いで、局所の照射は各細胞に対して、手作業で動作させなければならなかった。他方、これは、非常にたくさんの人手を要し、したがって、検査の統計的基礎に含まれる細胞の数は、手始めから、制限されていた。今では、常に、統計的に有意な数の細胞を検査すること、例えば、白血細胞、又は、非常に多くの数の集団の他の細胞の中の少数の細胞の検査における、存在する細胞の集団の検出などの様々な検査が、初めて、可能になっている。さらに、上述のアプローチは、プロセスが非常に迅速に行われる細胞処理の迅速分析を可能にし、したがって、測定に対して、非常に短時間のウィンドウのみが使用できる。他方、手作業で実施する検査が繰り返しできることには制限がある。比較的ゆっくりとも進む多くの生体プロセスがあるので、異なる線量の影響にさらされた後に、
基材の上で実施された2つの検査の間に、数時間又は数日があり得る。従来技術においては、手作業で実施された測定の実験の変動は、通常、細胞への影響による照射に対する応答の変化より大きい。シフト稼働で作業し、オペレータが個々の測定間で変わるとき、変動は、より大きくさえなる。他方、これまで、ユーザが、手作業で、そのような長期間にわたって多くの数の細胞を追跡し、そのような長期間にわたって同じ細胞を視察することは不可能であるため、数日又は数週間でさえ、などの非常に長時間スケールにわたって、何の実験も実施することができない。
【0045】
今では、細胞を自動的に再配置し検査することができるので、例えば、常に同じ実験条件下で、所定の時間間隔で絶え間なく検査を繰り返すことができる。
【0046】
本発明のさらに特に有利な実施形態において、同様に適用され、複数の
基材の上の細胞は、光ビームに照射され、前記細胞の前記照射に対する応答は、
基材間で結合される。ここで、例えば、新しい
基材の取り付け後の、毎回、顕微鏡を少し異なってクリーンアップするため、テスト手続きを手作業で実施するとき、さらなる不確実さが加わる。
【0047】
本発明のさらに特に有利な実施形態において、作用する影響の下で、及び/又は、1つの
基材から別の
基材へ、統計的に有意な方法で、細胞のどの特性が変化するかについて、多変数解析を用いて、応答の全体を評価する。特に、ハイパースペクトルの大きさをここで決定することができ、すなわち、細胞のどの特性が相関方法で変わるかを自動的に決定することができる。多変数解析を、特に先験的な前提なしで(「監視なしで」)、実施することができる。
【0048】
多変数解析において、最終的に部分的結果を融合するために、部分的結果は、各
基材の上で個々に、決して決定されない。むしろ、全ての
基材の上の細胞から得られた全ての応答の1つの動作において、解析が実施される。解析の結果が希釈されないために、全ての解答が同じ実験条件下で得られたことが重要である。したがって、本発明により可能にした様々な細胞の検査の機械化は、まず、第一に、多変数解析を有意義にさせる。
【0049】
そのような解析の結果は、例えば、細胞が、薬理的物質の継続作用下で、特定の測定可能な変化を受けたことであり得て、これらの変化は時間と共に線形に又は非線形に進むが、速ければ速いほど、薬理的物質の濃度は高くなる。逆に、次いで、例えば、そのような相関方法で変わる細胞の特徴は、アポトーシス又はネクローシスの開始のための早期のマーカーとして、認識することができる。しかしながら、異なる濃度にある物質を細胞に組み入れることを考慮し、これらの物質の力学的特性及び細胞動態についての結論を出すこともできる。これらは、同位体で標識された分子、又は、脂肪酸及びタンパク質などの他の生化学物質であり得る。変化は、細胞の取り込み速度についての結論に導くことができる。
【0050】
有利なことに、主成分分析(PCA)が多変数解析として選択される。ここで、例えば、切除モデルにおける照明に対する応答において得られたラマンスペクトルは、各々が異なる寄与(「ローディング」)に起因する、いくつかの部分スペクトルの重み付きの重ね合わせと見なすことができる。PCAは、最後に、元のデータを、その次元が線形に独立な主要コンポーネントへ低減される座標系に変換する。代替的に、又は、これと組み合わせて、純粋成分のスペクトルは、最小二乗適合を用いて、測定したスペクトルに適合することができる。
【0051】
. 本発明のさらに特に有利な実施形態において、さらなる
基材の上の細胞で受けた照射に対する応答を、前記
基材に適用する少なくとも1つの特性の値に割り当てる、分類器を多変数解析から評価する。
【0052】
例えば、細胞の除去後に患者がどれだけ長く生きたかの情報と共に、異なるがん患者からの細胞が付いた様々な
基材を検査することにより、この生存時間は、病気の重症度の指標として見ることができる。多変数解析から、次いで、例えば、最初に、がんがあるか又はないかどうかの属性を、特定の確率で、さらなる
基材上の細胞に割り当てる分類器を評価することができ、恐らく、例えば、1から5のスケールのクラスの重症度を割り当てる。しかしながら、血における細胞のタイプの比率の変化だけでなく、血の組成も、この方法で解析することができる。さらに、異なる薬理的物質の患者の細胞への影響を決定するために、例えば、患者のオーダーメード医療という意味の、正しい治療を決定するために、この方法を用いることができる。薬理的物質の細胞への影響の解析に関しては、それより上では、物質が細胞に有毒作用を有する濃度を決定することもできる。このように、物質の有効性のための閾値を特定することができる。しかしながら、アプローチ案は、また、外部から加えた物質、又は、行われる生体プロセスで生じる物質、の蓄積を解析することを、可能にする。方法案は、さらに、温度、細胞の培養基の組成等などの異なる影響因子下の細胞における物質の蓄積を検出することを可能にする。
【0053】
前記分類器は、例えば、線形判別分析(LDA)又はサポートベクターマシン(SVM)により、評価することができる。多変数回帰研究も実施することができる。さらに、以前に明確に画定した1つ以上の物質の存在又は変更も、最小二乗適合を用いて、
基材の上に決定することができる。
【0054】
各ケースにおいて、有機的な方法で、結果を、細胞に作用された影響と相関することができる。
【0055】
本発明はコンピュータ可読プログラムを有するコンピュータプログラムプロダクトにも関する。コンピュータ可読プログラムがコンピュータにより実施されるときに、前記コンピュータ及び前記コンピュータに接続された任意の測定装置に、本発明による方法を実施させる。以前は、測定ステーションの上で、概観画像が手作業で評価され、個々の細胞のラマンスペクトルの記録が、その後、手作業で動作させられていたが、本コンピュータプログラムプロダクトは、既存の測定ステーションを自動化するために、特に、用いることができる。それにより、この測定ステーションのスループットは、手作業の処理では幻影の、数桁に増大することができる。
【0056】
本発明の主題を図面を参照して以下に説明するが、それにより、本発明の主題は限定されない。