(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱交換手段(236)が、前記低温精製器の流入口(101)と、前記低温精製器の流出口(125)におけるヒーター(121)との間の熱交換を提供するために設けられた、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
前記ベースステーション(44)を前記ウェアラブルユニット(45)に接続するためのドッキングインターフェース(43)を含み、または前記精製手段もしくは前記低温精製器が前記ウェアラブルユニット(45)に統合された、請求項7に記載の装置。
前記透析液流入口(6)が透析器(4)の流入口であり、前記透析液流出口(7)が前記透析器(4)の流出口であり、及び/または前記透析液流入口(6)が腹膜透析流入口であり、前記透析液流出口(7)が腹膜透析流出口である、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
透析のための透析液を生成するための従来技術の装置及び方法は、以下の問題に直面している。
【0003】
a)純水の利用可能性
純粋の利用可能性は、常にあるものではない。透析液、すなわち透析中に患者の血液に密に接するリンス流体は、極めて高純度の仕様を満たさなければならない。内毒素、細菌の破片及び尿毒症毒素が完全にないことは、無害な透析に不可欠である。様々な種類のイオン、重炭酸塩及びグルコースのさらなる具体的な濃度が、血液に最初に接する前に整合されなければならない。
【0004】
標準的な血液透析の方法は、1週間に3回のセッションを含み、それぞれ少なくとも300ml/分の連続的な透析液流動で4時間の持続時間である。そのため、患者一人の一週間の透析は、およそ220lの超純粋透析液を必要とする。この量の準備は、品質の良い水道水からの逆浸透ユニットを動作させるために、飲料水及び電力が十分に利用可能である国においては容易である。
【0005】
しかし、これらの資源が不足している国では、これは克服することができない障害である。透析を必要とする患者の生存さえも、これらの環境下では危険にさらされている。
【0006】
透析のために外的資源からの純水を必要としなければ、大きな利点となる。外的水資源に対するアクセスを有しないウェアラブルユニットについても同様である。
【0007】
b)尿毒症毒素の除去
尿毒症毒素は、1つのシステム内でそれらを除去するために選択される方法として多様である。
【0008】
・活性炭は、多様な種類の分子の吸着のために使用される。
【0009】
・活性炭吸着が尿素に対して低く、逆浸透は単独では尿素を十分に分離できないため、固定化ウレアーゼは、尿素に触媒作用、すなわちNH3産生を伴うアンモニア反応を及ぼすために選択される。
【0010】
・代替的に、炭酸アンモニウムが生成され、続いてリン酸ジルコニウムによって吸収される(REDY(登録商標)システム)。
【0011】
・水素化された酸化ジルコニウム及び炭素は尿素残留物を除去するが、その他の尿毒症毒素を除去しない。
【0012】
・逆浸透フィルターは適切に動作させれば、さらなる粒子及びイオンを除去する。
【0013】
・尿毒症毒素及び滞留溶質の多くは、依然として未知であるか、または公開議論の対象である。
【0014】
・130の溶質のうち98が2007年以降に尿毒症毒素として列挙されており(2016年3月時点で)、それらのうち68は遊離水溶質である。プロセスは依然として続いており、どの尿毒症毒素が将来識別されるかは不明である。
【0015】
・より小さな溶質のいくつかは、エアロゾルとして変換されるか、または100℃未満で加熱する際にフィルタリングまたは大気圧蒸留によって分離することができない(例えば、ジメチルアミンやその他のアミン、尿素)。
【0016】
・これらのいくつかは、熱により分解され(例えばグアニジン、たんぱく質/中間分子)、これらは、化合物の大きさ及び除去可能性の種類(フィルタリング、吸収など)が特定されていないため、制御することができない。
【0017】
・健康な個人に対する尿毒症毒素の血液濃度限界は、依然として科学的議論の対象である。そのため、当業者であっても、達成されるべき減少率の有効な仕様を有しない。したがって、適切な方法を選択することは困難である。
【0018】
・いくつかの成分は、逆浸透フィルター機能に適合しない量で沈殿される(尿素及び層形成たんぱく質)。
【0019】
・尿素濃度が高い場合、尿素に基づくカオトロピックたんぱく質変性は、定義されないたんぱく質分解生成物を生成する。技術的な意味において、様々な除去手法で様々な化学物質の高い変動性が存在する。具体的に、逆浸透フィルターは、その穴が尿素除去を可能にする1nm未満の大きさである場合、これらの化学物質によって妨害される傾向がある。
【0020】
・より多くの未知の特性の化学物質が所定のプロセスによって抽出されることとなれば、より多くの抽出の技術的手法が妥協案となる。
【0021】
・効果的な逆浸透または順浸透は高圧を必要とする。
【0022】
c)電源
純水へのアクセスが問題であるような国の大多数においては、利用可能なac電源へのアクセスも問題になる。電力は、尿毒症毒素を除去する様々な手法を実現するための高度な技術的自由度を可能にするエネルギーの最も多用途な形態である。駆動ポンプは蓄電池から利用可能でありえ、高圧を使用する逆浸透ユニットの駆動は電源アクセスを必要とし、蒸留の駆動は、冷却されなければならないため本質的に失われる、さらに多くの電力を必要とすることとなる。透析液精製デバイスは、低エネルギー需要で駆動可能となれば、利点となるであろう。また、システムが、太陽電池パネルから供給可能な電力の消費が低いように設計されれば、これもまた有利であろう。
【0023】
d)非固定での動作
分散動作及び第2段階においてウェアラブルであることは、単に供給電源から独立である以上に必要である。
【0024】
分散(自宅透析)動作、夜間動作を可能にし、さらには人工腎臓のウェアラブル性を維持することを可能にするために、満足されれば有利であるいくつかの本質的であり組み合わせられた必要性が存在する。
【0025】
・全重量は6から8kg未満であるべきである(第1の手法では、さらなる低減が有利である)。
【0026】
・外形は、腰のベルト、バックパックもしくはベスト内に統合可能であるか、または少なくとも小さな車両内で移動可能であるような大きさであるように設計可能であるべきである。
【0027】
・全ての既知の、及び未知の尿毒症毒素について、十分かつ等価なクリアランス、高純度の透析液であること。
【0028】
・外部電力及び水の供給から独立であること。
【0029】
・着用され、または集会内もしくは静かな環境内に配置されても十分に静かであること。
【0030】
・重力場の方向に干渉されないこと(これは、蒸留が使用される場合に問題となりうる)。
【0031】
・問題となる、または悪影響を及ぼす排気、熱または悪臭がないこと。
【0032】
・4から8時間といった合理的な期間、独立し、メンテナンス不要な動作を行うこと。
【0033】
・高い安全性の要求及び安全な終了または悪影響を及ぼす状況における警告、毎日の定期的な医療管理なく動作可能であること。
【0034】
・危険な状況を外部から特定し、治療するために望ましい、データの記録及び病院へのネットワーク接続のオプションがあること。
【0035】
・患者自身による、日常的な技術支援及び物流の必要なく、設備を必要としない単純かつ素早いメンテナンスができること。
【0036】
・患者自身によって達成できない、または低コストかつ許容可能な物流で利用できないフィルタリングのために必要な吸着剤、カートリッジまたは基板のような消耗品の交換がないこと。
【0037】
・全日透析の間、患者一人で取り扱い可能な、信頼性があり清潔な血管へのアクセスがあること。
【0038】
・触媒に対する冷却の束縛がないこと。
【0039】
・長期間の精神的アウトカム及び骨の健康における障害の働きによる、吸着剤/イオン交換器/ウレアーゼキャリアにおけるアルミニウムがないこと。
【0040】
・イオン交換器/ウレアーゼからのアンモニウムイオンへの交換において放出される陽イオンによる、追加的なナトリウムまたはpH緩衝負荷がないこと。
【0041】
・生理学的透析は、例えばナトリウム、グルコースや、体内パラメータ、例えば血中ナトリウムや血液量に従う限外ろ過を制御するような、必須の長期目標となる。長期の制御されない透析は、医師による新しい処方の期間内に大きく変動しうる患者の体質や流体の状態に緊密に従わなければならない。
【0042】
・最後に、コストは特に発展途上国において相当に低くなければならない。
【0043】
現時点で、これらの要求の数個が解決されることは許容可能でありうる。これらは目的を誤らせないような指標に過ぎず、今日の最も重要な問題に焦点を当てるものである。これらの問題は、依然として、貧困者に対してサポートされない低コストでの家庭における透析を可能にする純水の製造、電源の独立、デバイスの高いセキュリティ、及び信頼性のある血液へのアクセスであり、この意味で、ウェアラブル性は、より長い日常の透析を可能にし、そのため長期の生存及びアウトカムを支持するが、透析に対して全くアクセス手段を有しない人の一次生存に不可欠なものではない。
【0044】
従来技術
a)水を利用できないこと
様々な手法が存在する。これらは全て、フィードバックループ内での患者からの限外ろ過液の精製を含む。ほとんどの従来技術の発明は、多かれ少なかれ、異なる種類の単位の通常の透析装置内で、これらを精製し、その後透析液流入口へ戻す、患者の血液から抽出された限外ろ過液を導く閉ループ回路を含む。水自体は血液に由来し、閉ループ全体の間、液体相にとどまる。明確に区別できない組合せにおいてさえ、異なる手法が使用される。
【0045】
1.限外ろ過溶質またはイオン交換の単純な吸収及びそれに続くフィードバック(特許文献1から3)
これらの従来技術の文献は、透析装置から限外ろ過液を抽出し、これを吸着ユニットまたはフィルターユニットに導き、透析液にフィードバックすることを含む。これらの解決手段は、活性炭吸収材が適切に尿素を結合することができないこと、または限外ろ過もしくは逆浸透に必要な高圧を考慮に入れていない。それでも、これらは自己抽出された透析液を再生し、ウェアラブルな人工腎臓を実現する初期の手段の1つと考えられうる。血液透析器、限外ろ過再生及びフィードバックの回路は既に開示されている。
【0046】
2.電気吸着(特許文献4)
尿毒症毒素に対し特別な親和性を有する材料が、電極として使用される。尿毒症毒素を結合するナノ構造、多孔質または触媒特性を有する特殊な材料が使用される。これらの方法は能力に限界があり、高質量抽出の需要に対して適さない。
【0047】
3.吸収または逆浸透と組み合わせたナノろ過またはマイクロろ過(特許文献5、6)
透析液はナノろ過ユニット(例えば特殊な材料または逆浸透膜)によってろ過され、続いて、ナノろ過を通過してしまったこれらの化学物質を吸収するための接着性材料の上へ送られる。
【0048】
4.特に尿素における電気触媒分解及び電気吸着(特許文献7、8)
この手法は、透析液内に溶解した尿毒症毒素の分解及び脱ガスを含む。触媒性または活性表面を有する電極が使用され、特定の電流が供給される。電極の劣化を避けるために、電子的手段も取られる。材料は、ほとんどの場合ナノ構造を有する吸着材量、ポリマーマトリックスまたはPt、Ni、Ti、Ir、Sn、TaまたはRuなどの特定の金属、酸化物、オキシ水酸化物及び水酸化物の群からのものであり、平面、円形、管状またはフィラメント/糸状に形成される。具体的には、尿素は水の電気分解で必要とされるよりもずっと低い電圧で電気分解によって分解可能である。
【0049】
取り扱いを容易にするために、カートリッジも示唆される。この原理は、全ての溶質に対してうまく働くわけではなく、カートリッジの物流及びコストは、ウェアラブル性の家庭における透析には許容できない。
【0050】
5.バイオ人工組織工学によるオンデマンド移植(部分的に特許文献9に記載される)
脱細胞化シーディングシステムは、ろ過臓器スキャフォルド(肺または腎臓のようなその他の臓器)上に糸球体型構造を埋め込むために使用され、これらは制御された圧力環境下で培養される。輸入リンパ管及び輸出リンパ管さえも、この技術によって生成される。シーディング相の後、初期腎臓構造は、かん流バイオリアクターに送られ、全臓器培養条件を提供し、組織を成熟の次の段階にする。最後に、これはろ過のために使用可能であり、本明細書に非常に短く説明される。この手法は、長期にわたって非常に有望であるように思われるが、今日では依然として人間への応用可能性には程遠い。
【0051】
6.電気化学解毒(特許文献10)
電気分解を使用する場合、溶媒のほとんどは電気分解によって生成されたラジカルによって酸化可能であると考えられ、または水、CO2及び窒素などの有害な産生物に変換される。ファイルのいくつかは、詳細な化学反応の開示に欠けるが、尿素の場合、これはうまく働き、吸着剤を避けることができる。また電気化学アンモニア反応器も含まれる。本明細書で挙げられる化学物質は、NH、NH+、尿素、尿酸、ジギタリス配糖体、一酸化炭素、バルビツール酸塩、ケトン体、アセトアセテート、メタノール、クレアチニン、アラニン、エタノール及びこれらの混合物を含む。欠点は、ラジカル及び塩素酸化剤が生じる恐れがあり、水が血液に再び接触する前に、これらのいずれも追加的な活性炭層によって安全に減容されなければならないことである。明白な危険性が存在する。
【0052】
7.吸着剤内のウレアーゼに基づく分解及びイオン交換層(例えば特許文献11、同様なRedy(登録商標)システム及びAllient(登録商標)またはDialysorb(登録商標)などの後発の派生品)
これは最も有望な手法である。ウレアーゼは、重炭酸塩及びアンモニウムに分解する尿素に働くように固定化される(アンモニアを含むキャリアに固定されることもある)。システムは、周知の血液透析方法の1つに統合される。尿素分解後の基本的な原理は、イオン交換及び触媒変換である。透析液が血液に接触しうる前に抽出されなければならない多量のアンモニウムは、多量のイオン交換質量を強いる。ウレアーゼによって尿素から生成されたプロトンはpHを下げ、そのため重炭酸塩緩衝剤に対する負荷となる。したがって、システムは重炭酸塩透析に対して適するように議論される。
【0053】
センサによって検出するのが難しい、アンモニウムによる過負荷の際のフィルターブレークスルーの危険性が存在する。さらに、交換されるイオンは体の電解質バランス及びpH緩衝に悪影響を及ぼしうる。アンモニウムキャリアは、非常に危険であると議論されている。
【0054】
この原理は、全ての化学物質をカバーするものではないが、最も重要な廃棄透析液成分の1つ、すなわち尿素に適切に対処し、重要な発展及び確実な受容を経てきたが、依然としてコスト、物流、いくつかの長期間アウトカムへの関心、及び前述のフィルターブレークスルー/過供給の不安のために幅広く受け入れられていない。
【0055】
8.電気的透析を伴うイオン分離及び酵素による尿素分解の組合せ(特許文献12)
電気的透析は、いくつかのチャンバーを含み、それらがそれぞれ異なる極性の2つの電極を有するという原理である。チャンバーはそれ自体が電極によって離隔されており、電極はイオンに対して半透過性であり、極性によって引き付けない。したがって、異なるチャンバーを連続的に配置することができ、イオンを減少させることが可能な高スループットのシステムを構築可能である。様々な種類の膜及びキャリア分子が、特定のイオンに対応するために使用される。化学物質の全てに対応可能なわけではない。
【0056】
9.前述のシステムのその他の組合せが考えられる(特許文献13)
この従来技術文献において、次亜塩素酸塩を生成するために電気分解セルが使用される。次いで、流体が脱ガスユニット、活性炭フィルターユニットおよびウレアーゼを使用するゼオライトフィルターユニットに導かれる。この組み合わせの詳細な理由は開示されていない。
【0057】
10.電気泳動血液精製(特許文献14)
血漿または血液から、電気泳動に基づき、膜を使用して代謝成分を除去するために、電場が印加される。印加される電圧は最大200Vであり、溶血反応さえも議論される(1回の通過後、0.05%の赤血球が溶血される)。多くの様々な種類の化学物質が対応可能であるが、特異性の機構はこの先行技術文献内には開示されていない。
【0058】
11.水の蒸留を用いた尿を精製する手法が、宇宙船システムについてのみ発見された(特許文献15)
蒸留は、水及び低沸点溶液に対応する原理であるが、低沸点溶液が存在しない場合には連続流においてのみ働くことができる。さらに、尿素は完全に蒸留することができない。尿内に発見されるアミンの多くは低沸点であり、そのため蒸留は単独では全ての要求をカバーしない。さらに、重力の側面を考慮に入れる必要がある。全ての位置において水を蒸留することは、いくつかの技術的な問題を強いる可能性があり、高エネルギー消費を必要とする。固定されたウレアーゼ(顆粒化活性化炭素−ウレアーゼ)に尿素を接触させるバイオリアクターも、この従来技術文献において言及されており、生成されたアンモニアは、電気的エネルギーを提供するために後続の電気化学セルに送られる。最後に、窒素分子及び水が生成される。このシステムは、いずれの化学物質も失わないことを目的としている。
【0059】
第1段階において浸透圧によってシステムから水を抽出する順浸透は、蒸留を除けば、溶媒に対応し、溶質には対応しない唯一の原理である。これは有利であるが、浸透力が使用される場合、高い浸透圧が必要である。技術者は、必要性に適したイオンを自由に使用することができるが、高浸透溶液から水を再び抽出するためにはさらなる逆浸透ステップが必要とされる。これは逆浸透に与えられる様々な数の溶質を減少させるが、水を消費する。さらに、溶媒けん引を伴う尿素を分離することができない。
【0060】
UV照射も示唆されており、これは溶媒を抽出せず、そのため超純粋透析液の生成のための便利な解決手段ではない。
【0061】
尿毒症毒素から透析液を精製するための前述の様々な解決手段は、具体的な溶質に対する非常に特有な解決手段が存在し、様々な手法の多様性が存在することを示している。
【0062】
限外ろ過液を精製するための解決手段は多様であり、溶質に対する電場の効果、溶質の吸収、主に触媒型の化学反応を行うこと、または特定の膜上に固定化することを含む多くの様々な技術を使用する。多くの手法は消耗品及び、そのためサプライチェーンを必要とする。関連するすべての、そして依然として未知の化学物質を取り扱う技術的システムは、前述の方法の組合せからなるであろうことは確実である。これにより、デバイスは複雑になる。
【0063】
したがって、透析液を精製するための純水を必要としない透析のための透析液を生成する装置及び方法を提供することが、本発明の目的である。
【0064】
b)尿毒症毒素
従来技術において、尿毒症毒素を透析液から除去する多様な方法が存在する。透析液を尿毒症毒素から精製する前述の様々な解決手段は、特定の溶質に対して極めて特有な解決手段が存在することを示している。
【0065】
吸着、触媒反応及び限外ろ過/逆浸透/順浸透が、尿素及び中間の大きさの分子に対して使用される。
【0066】
尿素は、その名が示す通り尿毒症の主要な化学物質と考えられうるものであり、尿素は人間の尿の主要な組成物である。尿素は冷却せずに活性炭によって多量に吸着することはできない。200gの活性炭は、2から3mgの尿素を吸収することが可能である。尿素の排泄量は、体重のうち5.7mmol/d/kgであると見積もられている。これは、75kgの人間については430mmol/dまたは25g/dであるが、食事に強く依存する。この量は、合理的な量の活性炭で吸収することはできない。そのため、逆浸透(RO)が、状況を改善するために考慮される。尿素分子の半径は0.18nmの範囲であるため、ROは尿素を除去するのに好適な方法ではない。これは水に非常に類似している(水は0.31nmの直径を有し、モル体積から計算されるよりわずかに小さい)。そのため、電荷反発力を全く受けない非解離分子としての尿素は、単に穴の大きさ及び/または分子ふるいによるだけでは抽出することが困難である。
【0067】
さらに、流体の全ては十分でなければならず、圧力は膜の安定性を超過してはならないため、穴の大きさ及び/または分子ふるいは技術的な理由によりわずかに大きくさえある。
【0068】
有効な膜の穴(実際には穴は存在せず、単なるモデルである)は、0.33nmから0.44nmの計算上等価な大きさを示す。そのため、典型的な減少率は、0.2から0.3の低さである。
【0069】
1回のRO通過後、この平均70から80%の尿素は依然としてろ過液内に存在する。追加的なポンプエネルギー入力で、いくつかの等価な通過(再循環)が必要である。さらに、フィルター水もRO通過ごとに分離される。典型的には50%しか膜を通過しない。70%の尿素が膜を通過するが50から60%の水しか通過しない場合、尿素は、保持されるその他の全ての溶質とは対照的に、ろ過液内で濃縮される。これは、水が水和核を形成する能力を有することに起因する。これは、非尿素溶質に対して同時に適用される場合、ROを利用不可能にする。
【0070】
ほとんどの超低圧膜は、ポリマーの多層薄膜複合材料である。そのため輸送プロセスはストークス方程式に従う拡散特性を有し、負荷によって妨げられる傾向にある。尿素の保持率は、典型的には0.17mmol/lで測定される。透析液中に主に現れる典型的な血漿尿素濃度は、5mmol/lであり、30倍高い。フィルターが、より高い濃度で長期間十分に働くかどうかは不明である。NASAに関連する科学者Cabreraらでさえも、「尿素をそのような膜によって取り除くのは依然として難しいという結論」に至っている(特許文献15)。
【0071】
ROユニットを信頼性高く、確実に稼働させるのにさらなる高度な努力が行われている。ろ過溶質に起因する化学物質層は、膜及びその内部を詰まらせ、効率を低下させ、または付着物を増加させる。特に、膜の回転運動(これは追加的な機械的な力である)は、抗付着効果を有するようであり、宇宙船の水の再生に関して議論されている。
【0072】
逆浸透システムが患者のすぐ近傍で使用される場合、さらなる重大な欠点が存在する。
【0073】
何れの逆浸透システムも、500kPaから4000kPaまたはそれ以上の範囲の圧力を発生するポンプを必要とし、そのため完全に静かに稼働することはない。患者が日常生活においてそのデバイスを使用する場合、必要に応じて、静かな環境の中で十分に低い雑音で動作させることは、機械的構成に困難さがある。
【0074】
酵素(ウレアーゼ)による尿素分解は、尿素の断片をアンモニウム電気泳動セルや分離のような更なる処置にアクセス可能にするための方法である。NH3は窒素分子や水分子に代謝されうる高エネルギー分子である。
【0075】
その他の小さい分子及び中間分子の溶質は、除去率がはるかに低く、最適でないとしても、サイズ排除によってより容易にろ過されうる。逆浸透フィルターは、負荷が絶対質量において高すぎない限り、水よりも顕著に大きな分子半径の任意の化学物質を除去するように確立される。ROシステムは、本明細書では純度に関するすべての仕様をカバーし、残余分が残されるため水の節約、及び無雑音化に関する仕様はカバーしない。ポンプについてのエネルギー供給は電気でなければならず、1時間につき10Wの範囲である。
【0076】
接着、吸着、逆浸透及び順浸透、触媒またはその他の化学反応、並びに蒸留のような方法は静かで精巧であるが、患者の近傍または患者によって着用されるシステムについては、不便な実用性、持続性、信頼性、特異性及び機能性について依然として問題を有する可能性がある。一部は未知であるような多くの様々な化学物質を除去するという要求を満たす技術的システムを構築するのは容易ではない。数種類またはただ1つの化学物質に集中するのが有利でありうる。さらに、これらの方法(例えば吸着剤カートリッジ)を適用するコストは、水が乏しい国に住む人には高すぎる。
【0077】
したがって、本発明のもう1つの目的は、将来生じうる透析液内の尿毒症毒素から本質的に独立した透析のための透析液を生成するための装置及び方法を提供することである。
【0078】
c)電源の問題
先行技術の透析システムのいずれも、電気の形のエネルギーを必要とし、そのほとんどはACを使用する。特に、ウェアラブル人工腎臓は、着用される際に蓄電池を放電し、少なくとも一時的に主電源を再充電させる必要がある。これは、患者が安静にしている期間には許容可能でありうる。欠点は、水の不足の他に、安定した高出力な分散化電気ネットワークを維持することができない、多数の末期腎不全(ESRD)患者を有する多くの国が存在するということである。病院に関してさえ、このことは、特に危機的状況にある場合には困難である可能性があり、透析は戦争の影響後の病院の再建の間、数週間も中断することはできない。従来の血液透析デバイスは、洗浄、精製または加熱の特定の期間、少なくとも1000Wの信頼性のある、中断しないAC電源、及び通常の治療の間、数百Wの電源を必要とすることとなる。信頼性のある電源ネットワークを欠くこれらの国の多くにおいて、ソーラーパネルによって供給される電力として、外部基幹系からは独立して透析を実行できることが望ましい。
【0079】
第1の手法において家庭用透析デバイスまたはさらにウェアラブル人工腎臓を開発する場合、電力線からであっても一時的に電力を使用することが許容可能であるべきである。しかし、さらなる開発の段階は、高電流電源からの完全な独立であるべきである。太陽光パネルは、透析を行うのに合理的な妥協案でありうる。
【0080】
したがって、本発明のもう1つの目的は、エネルギー効率の良い透析のための透析液を生成するための装置及び方法を提供することである。
【0081】
d)人工腎臓としての分散化動作
電源以外の現在の問題は、利用可能な水の不足である。水は赤道近傍の国では遍在するものではないが、特に化学的形態でエネルギーを貯蔵する方法が存在するならば、太陽光エネルギーは十分でありうる。維持管理、フィルター及びカートリッジのようなその他の予備部品のための物流、またはその地方の技術的、及び医療的専門家の不足のようなその他全ての短所は、原理的には解決が困難な透析用の水の不足と比較して、発展途上国であっても解決可能である。
【0082】
この問題を解決するために、先行技術において示唆されている顕著な解決手段は、フィードバックループ内における患者自身からの再生透析液または限外ろ過液の使用及び前述の方法の1つまたはいくつかを用いてこれを再生することである。この原理は、多くの先行技術文献(特許文献16、特許文献6、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献2)において示唆されており、既にウェアラブル人工腎臓に至っている。
【0083】
おそらく、分散化またはウェアラブル透析が課す要求の全てが、前述のような第1の手法において満たされる必要があるわけではない。過去35年の間、様々な有望なデバイスが現れ、ウェアラブル人工腎臓が可能であり、何年もの期間、患者を生存させ続けることができることを示しているが、これらのシステムは今に至るまで幅広く受け入れられていない。技術的な制限だけでなく、処置の等価性、毒性、電解質及び酸性度代謝に対する欠点に関連したフィルターブレークスルー、家庭用透析血管アクセスの取り扱い及び長期間のアウトカムについての関心も、吸着剤カートリッジについてのコストと同様に理由になりうる。これらは日常的なウェアラブル透析では許容することが難しい。技術的な不便さ以外の問題が存在する場合、熟考されうるが、疑いなく依然として技術的側面は満足しない。具体的な努力は、電力、水及び吸着剤の独立性、妥協のないクリアランス等価性、静粛性、可搬性並びに、意図されるウェアラブル性の場合には軽量性のような本質的な要求に対処することが必要である。さらに、非常に静粛な内部発電は、蓄電池の容量が残り少なくなっている場合、ポンプ、制御ロジック及び外部接続動作のような本質的な要素を少なくとも維持することが有利である。
【0084】
継続的な医療管理に代金を支払うことができない困窮した患者のニーズに対処するシステムはさらに、治療コストについて非常に抑制的でなければならず、そのようなシステムの継続的な医療サポートなく治療取り扱いを行うことは、単純、本質的に安全かつ取り扱いが容易でなければならない。訓練を受けた患者が、自分でより長い期間(数か月)医療管理なしに(死に対する代替として)透析を行うことを想像することは、病院の透析よりもはるかにずっと重大なクリアランス及び血液パラメータの観察を暗示する。システムはさらに、再使用フィルターを純水で洗浄および精製することが可能であるべきである。限外ろ過液で働くすべての既存の技術の残りの欠点の1つは、既知の溶質についてのみ適切に働くことができることである。未知の溶質は、透析液から効率的に除去されるかもしれないし、されないかもしれず、技術的な改善を強いる可能性がある。既知の尿毒症毒素の全部ではない溶質除去の他に、これは治療品質が通常の純水及び逆浸透が供給された血液透析システムと等価であることを保証することができない理由である。全ての要求に合わせることは、依然として大きな試みであり、またそれらの大部分に成功裏に対処することは大きな飛躍であろうことは明らかである。本発明は、それらの全てではなくいくつかを改善することを目的とする。いくつかの態様において、既存の技術よりも少し進歩する。
【0085】
蒸留、吸着のような方法または高圧ポンプを使う方法(逆浸透)は、電気エネルギーまたは水及び消耗品の供給の十分な独立性、可搬性、治療等価性並びにコストのような本質的な要求に完全に整合するものではない。カートリッジから放出される化学物質からの毒性及び感染は、さらなる関心事である。依然として未解決の問題が存在する。
【0086】
したがって、本発明のもう1つの目的は、外部の水及びエネルギー供給から独立して透析のための透析液を生成するための装置及び方法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0088】
本発明の前述の目的の1つまたは複数は、独立請求項に記載の装置及び方法によって解決される。本発明の好適な実施形態は、従属請求項に特定される。
【0089】
本発明によれば、透析のための透析液を生成するための装置であって、透析液流出口と、透析液流入口と、透析液精製手段と、を含み、精製手段が純水を生成するために低温精製器を含み、低温精製器の流入口が透析液流出口に接続され、低温精製器の流出口が透析液流入口に接続された、装置が提供される。
【0090】
本発明によれば、低温精製器は、凍結濃縮器と同様であるが、純水が、使用される生成物であり、濃縮液が廃棄される点で異なる。したがって、本発明に適した当業者に周知の任意の凍結濃縮器が使用可能であり、透析器として適合可能である。
【0091】
本発明によれば、低温精製器が氷結晶成長容器及び洗浄カラムを含むことができる。
【0092】
本発明によれば、低温精製器の流出口が、透析液流入口に接続された純水流出口であることができる。
【0093】
本発明によれば、低温精製器は、本発明に従う装置を提供する標準的な透析手段と組み合わせることができる。
【0094】
本発明によれば、透析液前段精製手段が、透析液流出口と低温精製器流入口との間に設けられることができる。
【0095】
本発明によれば、透析液後段精製手段が、低温精製器流出口と透析液流入口との間に設けられることができる。この実施形態は、後段精製手段、例えば逆浸透精製手段の寿命を増加させることができるという利点をもたらす。さらに、その他の患者で使用される水を提供し、並びに/または装置及びその他の医療デバイスの消毒の目的のために提供することが可能でありうる。
【0096】
本発明によれば、熱交換手段が、低温精製器流入口と、低温精製器流出口におけるヒーターとの間の熱交換を提供するために設けられることができる。
【0097】
本発明によれば、熱交換手段は、低温精製器流入口と、洗浄カラム流出口におけるヒーターとの間の熱交換を提供するために設けられることができる。
【0098】
本発明によれば、本装置は、ベースステーションとウェアラブルユニットとに分離されることができる。
【0099】
本発明によれば、本装置は、ベースステーションをウェアラブルユニットに接続するためのドッキングインターフェースを含むことができる。
【0100】
本発明によれば、精製手段及び/または低温精製器がウェアラブルユニットに統合されることができる。
【0101】
本発明によれば、透析液流入口は血液透析器の流入口であることができ、透析液流出口は血液透析器の流出口であることができる。
【0102】
本発明によれば、透析液流入口が透析器の流入口であり、透析液流出口が透析器の流出口であることができる。
【0103】
本発明によれば、透析液流入口が腹膜透析流入口であり、透析液流出口が腹膜透析流出口であることができる。
【0104】
本発明によれば、透析患者から抽出された限外ろ過液及び廃棄透析液から新鮮な透析液を再使用する方法であって、
(a)透析液から氷のスラリーを準備する段階であって、氷のスラリーが氷の結晶及び、溶質を含む液体を含む、段階と、
(b)氷の結晶を、溶質を含む液体から分離する段階と、
を含む、方法も提供される。
【0105】
本発明によれば、透析器に再供給される純水の量が、患者が脱水状態にも水分過剰状態にもならないように調節可能であり、調節されるべきである。
【0106】
本発明によれば、段階(a)において、温度が0℃と、0℃より低い共晶点温度との間であることができる。
【0107】
本発明によれば、段階(a)において、種結晶が使用可能である。
【0108】
本発明によれば、結晶成長活性剤が段階(a)において適用可能である。本発明によれば、結晶成長活性剤がグルコースであることができる。
【0109】
本発明によれば、段階(a)において、過冷却が適用可能である。
【0110】
本発明によれば、段階(a)において、氷の結晶化が赤外及び/またはラマン分光分析によって制御可能である。
【0111】
本発明によれば、液体から氷の結晶を分離する段階が、低温精製及び/または凍結濃縮によって得ることができる。
【0112】
換言すれば、凍結濃縮は、0℃未満の温度で氷の結晶の形態で純水を得るために使用可能である。好適には、1つの結晶成長装置及び1つの洗浄カラムが使用可能である。結晶成長装置は冷却ジャケットを有する容器であることができる。容器の内壁はスクレイプされることができる。外壁は循環する冷却材によって冷却可能である。氷の製造及び結晶成長は、結晶成長装置内部で行うことができる。氷の結晶が成長する滞留時間を変化させることによって、効果的な分離のための最適な結晶の大きさの分布の形成が達成可能である。洗浄カラム内で、濃縮された液体は氷の結晶から効果的に分離可能である。圧縮された氷の結晶床は濃縮された液体の全ての痕跡を除去するために、融解した氷で洗浄可能である。
【0113】
本発明によれば、装置は複数の可搬ユニットをベースステーションに接続するための複数のドッキングインターフェースを含むことができる。
【0114】
本発明によれば、ドッキングインターフェースは、ベースステーション及びウェアラブルユニット内に設けられたリザーバーを接続するためのインターフェースを含むことができる。
【0115】
本発明によれば、装置の構成要素は、そのウェアラブル性を向上させるために、固定構成要素および可搬構成要素に分離可能である。
【0116】
本発明によれば、装置は1つのベースユニット(またはベースステーション)及び1つもしくは複数のウェアラブルユニットに分離可能である。ウェアラブルユニットがより多い場合において、ベースユニットが適切な大きさを有する場合、これらのウェアラブルユニットは同時に使用されうる。
【0117】
ウェアラブルユニットは、新鮮な、及び使用された透析液のための小さなリザーバーと、血液及び透析液をポンプするためのポンプデバイスと、反流で動作される透析フィルタリングユニットと、新鮮な透析液を得るために、新鮮な水に添加物を追加するための計量ユニットと、制御ユニットと、小さな水素リザーバーと、数時間の間、デバイスを動作させるための十分なエネルギーを提供する蓄電池と、を含みうる。代替的にまたは追加的に、(ウェアラブルユニットを数時間動作させるための)水素燃料電池及び/または、燃料電池が動作していないときにウェアラブルユニットを起動させるために使用される小さな蓄電池が設けられうる。さらに、ウェアラブルユニットは、透析液が排出され、ウェアラブルユニットおよびその燃料電池を動作させるために水、電解質、添加物、水素が再充填可能であるように、ベースユニットのインターフェースに整合するインターフェースを含みうる。構成要素は、ウェアラブルデバイスのニーズに合致するように設計されるべきである。即ち、物質を含む全重量は6から8kgを超過すべきでない。患者は、ウェアラブル人工腎臓を持ち運ぶ場合に、その個人的な重量のニーズに合致するように、摂取される水の量と、再充填されるまでの透析動作時間との間のトレードオフを選択することができる。
【0118】
本発明の実施形態によれば、ウェアラブルユニットは完全な低温精製器を含んでもよく、完全な透析液精製システムが、透析液を凍結濃縮することによって透析液を精製し、凍結濃縮液から透析液流出口に再循環されることとなる透析液として純水を取得するために含めることが可能である。
【0119】
次第に増大する識別された尿毒症毒素の数を考慮し、水が常に透析のために用いられるという事実に基づいて、所定の量の消費された透析液または限外ろ過液から水及び非尿毒症毒素を分離することが有用である。外形及び分子形状、別の水分子への水素結合の長さ及び強さ、電荷分布及び極性、原子構成、分子弾性及び伸張性、分子エネルギーレベル、プロトン交換などの電気化学的特性並びにその他などのため、水はその分子特性によって識別可能である。
【0120】
前述の特性のいくつかは、凍結時に氷の結晶格子を構成するために重要である。はるかに、ほとんどの化学物質とともに、水は水単独よりも低い凝固点を有する共晶系を構築することとなる。氷の結晶が成長する際に、それらはその他の分子を確実に排除し、それらは液相に残される。さらに温度を低下させるが前述の共晶融点より高くすると、外部液相は共晶点濃度に到達することとなる。これは専門家に知られており、精製に使用可能である。
【0121】
氷形成に関する当業者の知識のいくつかは以下のウェブサイトで見ることができ、その内容は参照により本発明の本開示に組み込まれる。
http://wwwl.lsbu.ac.uk/water/hexagonal_ice.html
【0122】
0℃未満の温度で、大気圧下では、水は複数の六量体ボックスでIh氷と呼ばれる六方晶に結晶化する。Ih氷内の全ての水分子は、ほぼ1/3の穏やかな充填率で同一の分子環境を受け、そのため格子内には多くの内部空間が存在する。0.7356nm(250Kにおける)のc格子定数(底面の距離)は、分子伸張性及びH−O水素結合の強さのために、0.7378nmの理想的な六方対称性cとはわずかに異なる。a定数(水平方向格子間隔)は0.45181nmである。
【0123】
格子距離は、所定の温度(250K)及び大気圧では氷について典型的である。Ih氷の分子幾何形状に関する高解像度中性子回折の研究は、以下の文献に示されている。
“The Structure of Ice Ih by Neutron Diffraction”, Kuhs WF, Lehmann MS, J. Phys. Chem. 1983, 87, 4312 − 4313
【0124】
そのようなIh氷の格子に挿入される分子適正は、その大きさ、原子組成、結合長さ、隣り合う分子と確立可能な水素結合の数、方向及び強さに強く依存する。前述の内容から、固有プロトン輸送特性も、Ih氷の安定性に関連していると結論付けることもできる(Grotthussメカニズム)。Ih氷の形成に加わる分子について、これらの整合は必須であるが十分ではない。これは、氷の凍結のプロセスが格子内に挿入されて開始される場合、分子は高温でこれらの条件を満たさなければならないことを意味する。しかし、これは氷の形成のプロセスの開始を強制するものでは全くない。純水は、−40℃まで凍結せずに過冷却可能であることはよく知られている。
【0125】
満たすべき別の条件が存在する。球状の氷の結晶という単純化した状態を考えると、ギブスの自由エネルギー(ΔG)が、氷の粒または球が成長するか否かの決定に関連する。ΔGは、分子が液体から氷の相に遷移する際に必要なエネルギーの量を記述する。ΔGが正である限り遷移は生じず、ΔGが負であれば、エネルギーが解放されるため氷の球体への遷移が許される。またその逆も成立する。
【0126】
結晶内の水分子について、外側の液体相への表面の通過後の自由エネルギーが、内側で持っていた自由エネルギーより低い場合にはいつでも、結晶を離れることとなる。これは特に、強い表面張力を有する非常に小さい球体の場合である。これらは収縮する傾向にある。そのため、ΔGは次のように記述される。
【0127】
【数1】
【0128】
ここで、rは球体の半径であり、σは表面張力であり、Sは共晶相図における液相線及び温度に従う、界面近傍の水の過飽和比であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、V
molは1モルの水の体積である。結晶が成長も収縮もしない場合の臨界サイズr
crit、すなわち粒子の最小サイズは、次のように定義される。
【0129】
【数2】
【0130】
G2はギブス−トムソン方程式として知られる。ほぼ平衡の条件を仮定すると、過飽和比S=濃度/平衡濃度はほぼ1であるべきであり、粒子の形成が開始されるとすぐに、わずかに高くなり、そのため以下の考察において不確定性が残る。
【0131】
さらに、σは界面におけるパートナー物質、球体の大きさ及び温度に強く依存する。特に、小さな球体ではσは成長する。σの値は、平面については文献から得ることができる。r
critの下限の非常に粗い推定値を得るために、実際の表面は平坦ではないが、水でない分子に対して、氷の無極性(リフシッツ−ファンデルワールス)表面張力を仮定し、これは273.15Kにおいてほぼ30mN/mである。この値を使用すると、r
critとして0.68nmを得る。この大きさの球体は、約50個の水分子からなる。球体がより小さい限り、球体は成長せず、そのためそれ自体の物質を犠牲にして、近傍のより大きな球体に物質を供給する(オストワルド熟成)。これは下限であるため、氷の結晶は、それらが顕著に大きい場合にのみ成長することが予測できる。
【0132】
ある表面条件がさらに満たされれば、その大きさの水以外の分子の凝集が種結晶として働きうる。種結晶プロセスははるかに複雑であり、依然として科学的な議論の対象であるが、少なくとも種結晶がどの程度の大きさでなければならないかは非常に粗い推定がある。これは、実験結果とも粗く合致している。液体の水の20面体クラスタは典型的には3nmの直径で280個の水分子を含む。その内側の核では、結晶化が275±25分子で開始すると報告されている。成長する氷は、大気圧においてほとんどすべての溶質を排除するものと考えられる。この規則からのただ1つの例外が存在しており、それは、分子特性が水と非常に類似しているフッ化アンモニウムである。NH4Fはその構造の類似性のために最大で7.4mol%含有可能であり、氷と固溶体を形成することができるただ1つの物質であると考えられている。それでも、氷の外に粒子及び不純物を維持する、または氷の粒子を移動させる規制力の力、いわゆるピン止め効果が、文献に示されている。
【0133】
【数3】
【0134】
これは、r
critの粒子について65pNの範囲である。そのような粒子は10
−23Nの重力を受けるため、非常に小さい不純物は、これらが成長する結晶から表面張力によって排除されるのに十分軽量である。F
restrainは、rについて1乗で大きくなり、重力は3乗で大きくなるため、この原理は、約5μmよりも小さな不純物についてのみ信頼性良く働くこととなる。この大きさは、高い流速であっても容易にろ過可能である。
【0135】
環境からの、または患者からのフッ化アンモニウムが絶対的に予測不能である限り、限外ろ過液または、低温精製を用いた透析液を排除することが安全である。
【0136】
水または、汚染物質から結晶を生成するその他の溶媒を精製するこの原理は、食品飲料産業で周知であり、多くの製造工場で幅広く使用されている。驚くべきことに、これは例えば、透析液の例示的な低温精製を示す
図1に示されるようなセットアップで透析に適用可能である。
【0137】
本発明によれば、尿のような溶質を含む液体が分析可能である。
【0138】
尿は、透析の対象である患者からは、通常は利用可能ではない。これらの患者は、末期腎不全のために、自分自身の本来の利尿作用を有さない。しかし、本発明に従う方法及び/または装置によって得られた溶質を含む液体は、実験室設備の検出限界以上に十分に濃縮可能であるため、すなわち透析液が精製され、溶質を含む液体が濃縮されるため、一種の人工尿として使用可能である。この濃縮液、すなわち溶質を含む液体は、本方法が透析を実行するという目的に最適化されているため、本来の尿とは同一ではない。それでも、臨床的パラメータが実際の尿から得られるのと同様に、本発明に従って得られた人工尿(溶質を含む液体)から臨床パラメータを得ることが可能でありうる。本来の尿の分析に使用される設備にとって十分な溶質の濃度が達成されるため、例えば代謝性疾病(糖尿病、肝機能障害など)に関する標準的な分析が行われうる。全ての成分は同じ因子で濃縮されるため、較正の目的のために、様々な溶質の濃度の比が、絶対濃度の値の代わりに使用可能である。人工尿の分析はまた、本発明に従う方法を実行するために使用されることとなる設備及びパラメータを最適化するためにも使用可能である。溶質の濃度を監視することで、本方法の効率に関する情報を提供することとなる。それによって、許容可能な及び/またはより良い結果を得るために、適切なフィルターの種類及びクリアランスパラメータが定義されうる。透析液の品質及び/または純度は、それによって改善可能である。これは、濃縮が通常使用される実験室の設備の検出限界よりも低いため溶質の濃度を決定できない周知の透析に対して有利である。
【0139】
本発明は、本発明の実施形態を示す図面を参照して説明される。後述する符号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0141】
図1は、透析器が透析液流入口101及び純水流出口(または透析液流出口)125に接続されることとなる、本発明の1つの実施形態を示している。
【0142】
図1は、本発明の実施形態の低温精製器130の概略図である。低温精製器130は結晶成長装置、すなわち氷の結晶成長のための容器105を含む。容器105の内容物を冷却するための冷却ジャケット106が存在する。透析液流入口101は、透析器4(
図2を参照)からの透析液を提供し、これは容器内に透析液流入ノズル102を介してスプレーされる。
【0143】
容器105内部の氷のスラリー107は、撹拌機108によって撹拌され、任意選択的なシード調製のためのフィードバックライン109及び洗浄カラム112へのスラリーフィードライン110に排出される。フィードバックライン109は、氷のスラリー107の一部を結晶成長装置の加熱器冷却器ユニット103に供給し、次いで種結晶流入ノズル104に供給する。
【0144】
当業者の知識に従って調整される流量制御のためのいくつかのバルブ114が存在する。
【0145】
容器105からの氷のスラリー107は、洗浄カラム112にスラリー流入口111を介して供給される。
【0146】
油圧ピストン113は、洗浄カラム112を通して、すなわち液相フィルター115を通してスラリーを押し流すために使用可能である。洗浄カラム112の底部に、濃縮液を排出するための流出口116が存在する。洗浄カラムの上部の左側には、固体及び液体が純水流出口125の方向へポンプされて通る純水スラリーパイプ122が存在する。純水の一部は、洗浄カラムの上部右側へ接続された純水フィードバックループ124に供給される。
【0147】
ポンプ123の圧力のために、純水は洗浄カラム112へ供給され、洗浄フロント118を横切って洗浄コラム内の氷のスラリーを通ってすすぐ。それによって、濃縮液は氷から洗浄され、濃縮液流出口116を通って排出できるように洗浄カラム112の底部において濃縮される。
【0148】
洗浄フロント118のために、洗浄カラム112の上部に本質的に純粋な氷及び純粋な液体119が存在する。上部において、ポンプ123の吸引を介して純粋スラリーライン122に供給される純粋なスラリー126が得られるように、洗浄フロントの上部層を削り落とす回転するアイススクレイパー120が存在する。ヒーター121は、純粋スラリーから純水を生成するために使用可能である。
【0149】
透析液を事前精製するための任意選択的な手段218が提供可能である。例えば、蒸留器、逆浸透システム及び/または脂肪分離器が、
図2に示されるように透析液流入口101の前に透析液供給ライン内に提供可能である。
【0150】
任意選択的に、
図2に示されるように、透析液流入口101とヒーター121との間に熱交換器136が提供される。
【0151】
図2は、本発明に従う実施形態を示している。カテーテル8は、患者の静脈42に挿入される。カテーテルはy字型であり、Yカテーテル8の一方の脚部は血液流入口1に接続され、yカテーテル8のもう一方の脚部は血液流出口2に接続される。カテーテル8は、シングルニードル(SN)またはダブルニードル(DN)カテーテルでありうる。血液ポンプ3は、患者の血液を静脈42から透析器4にポンプするために提供される。透析器4内では、限外ろ過液輸送5が行われる。透析液流入口6及び透析液流出口7を有する透析液4を通って反対方向に流れる透析液回路が存在する。透析液回路内では、プライミングシャント10及びプライミングポンプ11が提供される。これは、透析が最初に開始されたときに、最初に患者からの限外ろ過液で機械を完全に満たすことを可能にする。さらに、透析液回路を淡水回路と結合する体積平衡ユニット9が存在する。透析器、平衡システム及び前述の構成要素の具体的な設計は、当業者には周知である。
【0152】
限外ろ過液投与ポンプ12は、透析液を、消費された透析液のリザーバー13にポンプしている。任意選択的に、他の源からの水も、任意選択的なライン35を介して、消費された透析液のリザーバー13に供給可能である。しかし、透析器のみから得られた透析液を使用することが好ましい。
【0153】
次いで、透析液は低温精製器内に供給される。低温精製器は、氷の結晶成長容器105及び洗浄カラム112を含むことができる。その詳細は
図1に示されている。同じ参照符号は
図2でも使用されており、
図1の実施形態の説明が参照される。
【0154】
材料を適切な温度レベルに維持するために使用されるいくつかの加熱手段17が存在する。加熱手段は当業者には周知であり、本明細書でより詳細に説明する必要はない。
【0155】
低温精製器の最適な稼働温度は0℃未満であり、共晶温度よりも高い。
【0156】
低温精製器によって得られた純水は、純水リザーバー22に供給される。新鮮かつ個別の透析液がさらなる使用のために得られるように、NaCl、Bic及び抗凝血剤などを、貯蔵手段25及び31から適切な量だけ投与ライン41を介して純水に提供する投与/混合ユニット32が存在する。ポンプ30は、この新鮮な透析液を体積平衡ユニット9に駆動する。
【0157】
エネルギーは、太陽電池パネル23によって供給される。その他の電源手段も、追加的に及び/または代替的に使用可能である。電源供給ラインは、電源を様々な構成要素に供給するために提供される。それらのいくつかが図に示されている。さらに、図内に示された装置を駆動するための電力及び制御ユニット24が存在する。
【0158】
図2に示された装置は、左側のベースステーション44と右側のウェアラブルユニット45とに分離される。ウェアラブルユニットは、患者が腎臓の機能に類似した連続的な透析の選択肢を有することができるように、ウェアラブルユニットを人のところに維持可能であるように設計される。ウェアラブルユニットは、ベースステーションで周期的に充電可能である。ベースステーションの大きさ及び容量に応じて、1つのベースステーションについて1つまたは複数の可搬部分を有することが可能になる。異なるベースステーションで可搬部分を充電し、点検を行うことも可能になる。しかし、異なる患者が同じベースステーションを使用するような設備ほど、洗浄の要求が必要でないため、1人の患者について1つのベースステーションを有することが好ましい。
【0159】
図2に示されたデバイスは、ドッキングインターフェース34を有する。
図2に示されるように、
図1のいくつかのリザーバーは、ベースステーションについての大きなリザーバーと、ウェアラブルユニットについてのより小さなリザーバーとに分離される。
【0160】
したがって、ウェアラブルユニット45は、ベースステーション44の透析液リザーバー13に接続されることとなる小さな透析液リザーバー13と、ベースステーション44の透析液リザーバー20に接続されることとなる小さな水素リザーバー27と、ベースステーション44の水リザーバー22に接続されることとなる小さな水リザーバー29と、ベースステーション44の貯蔵手段25に接続されることとなる小さな貯蔵手段31と、を含む。ドッキングインターフェースは、材料が数分またはそれ以下で、洗面所に行くのと同等程度で、排出(44から13)及び再充填(20から27、26から29及び25から31)が可能であるように設計される。任意選択的に、エネルギーは、必要があればウェアラブルユニット内に充電可能である。
【0161】
さらに、ウェアラブルユニット45は、ウェアラブルユニット45の電源として使用されることとなる、ローカル水素燃料電池28を含みうる。重量を削減するために、ローカル水素燃料電池28は、大気からの酸素39を使用する。任意選択的な、当業者に周知の追加的または代替的な電源が提供可能である。
【0162】
ウェアラブルユニット45は、ローカルの電力及び制御ユニット33を含みうる。
【0163】
図1のセットアップは、透析液の低温精製のために使用可能である。これは結晶成長システム及び洗浄カラムを含む。両要素は、シンボル的な実施形態を示しており、透析における水精製手段として氷の結晶を生成する可能な実現例として理解されなければならない。
【0164】
本発明の実施形態によれば、ウェアラブルユニット45及びベースユニット44の構成要素は、ウェアラブルユニットのみと組み合わせることが可能である。代替的に、これらはベースユニットのみと組み合わせることも可能である。
【0165】
透析以外の技術的内容において、精製だけでなく、熱劣化を生じない穏やかな濃縮も興味深い。フルーツジュースの濃縮は、純水(
図1の25)ではなく、濃縮液(
図1の16)がさらに処理されるような例である。しかし、発明者の知る限り、この原理は
図2に示されるようなウェアラブル人工腎臓(WAK)の透析液調製システムに適用されたことはない。患者の限外ろ過液または消費された透析液からのみ供給される超純水へのアクセスを可能にする独立した透析システムのベースステーションにこの原理を適用することは、2つの良好に確立された技術の予期されない組合せであり、この組み合わせにおいて、病院での独立した透析を可能にする。これはこれまで考慮されていなかったことである。
【0166】
具体的には、透析液の低温精製と組み合わせたベースステーション及びウェアラブル部分の分離は、システムを非常に多用途化する。これは、
図2の実施形態に示されている。
【0167】
図2の実施形態は、透析器に関する本発明を示している。前述のように、また特許請求の範囲に示されるように、腹膜透析についても本態様を使用することが可能である。
【0168】
図2は、低温精製システムの、ベースステーション及びウェアラブル人工腎臓(WAK)からなる透析システムへの統合を示している。太陽エネルギーを使用して、この動作は基幹電力からの供給または患者の限外ろ過液以外の水の外部供給なく自動化することが可能である。システムは軽量であり、自動車の中でさえも動作可能であるように、必要な電力が低い。ベースステーションはコストのかかる構成要素を有しないため、患者は1人でも異なる場所にそれぞれ位置するいくつかのベースステーションを動作させることができ、透析患者に対し、以前は知られていなかった拡張された独立性が実現可能である。ウェアラブル部分の動作時間は3時間の範囲であり、その後45秒の再充填が行われなければならない。水素及び燃料電池を使用した条件的な燃料補給は、軽量エネルギーパッキング及び高速再充電性になる場合、蓄電池よりも優れている。
【0169】
前述の原理の安全かつ本質的な氷の純度の考察によれば、精製のために必要なエネルギーは、蒸留と比較して少なく(2257kJ/kgに対して334kJ/kg)、これはおよそ1/7である。これにより、約25ml/分の透析液の流量で1日当たり18時間の低流量透析が非常に費用効果があるようになり、1時間当たりの透析として1.5lまたは83.3モルの水が必要となる。プロセスを実行するのに必要な電力は熱再利用を使用しないで140Wである。これは、自動車の発電機またはソーラーパネルによって駆動する場合でさえも十分低い。代替的に、または追加的に、エネルギー供給はプロパンガスボトルでもなされうる。プロパンは燃料電池内で直接燃焼可能であるという利点を有する。
【0170】
これにより、電力供給または純水資源から離れたベースステーションの分散動作が可能になる。具体的に、これは、発展途上国の数百万人の透析患者の緊急の必要性を満たしつつある。システムは、サイドボードまたは車両内に配置される程度に十分小さく構築することができる。
【0171】
ベースステーション及びウェアラブル部分による分離は、患者の負担を、頻繁かつ定期的な洗面所への付き添いを健康な人に課すという制限を超えない制限にまで低減する。重要な点は、30から45秒以内に専用の接続インターフェースを介して全ての化学物質及びエネルギーを輸送することである。3時間の処置について、4.5lの純水がウェアラブル部分に流されなければならず、前述の期間に同じ量がそこから排出されなければならない。さらに、電解質、抗凝血剤、グルコース及び新鮮に調製された透析液のその他の含有物が輸送されなければならない。問題は、透析液の加熱及びポンプに対するエネルギー輸送でありうる。蓄電池が使用される限り、これらはコードレスドリルなどで知られているクリックシステムを使用して交換されなければならない。電力が加熱に必要とされるため、ウェアラブル部分のいくつかのポンプ及び制御は、少なくともSOWの範囲内であり、安全な3時間の動作は12V、12Ahの蓄電池を必要とすることとなる。そのような蓄電池の大きさ及び重さは、将来的にさらに低減されうるが、依然として使用時の蓄電池の状態に依存して2から3kgの追加的な重量負荷となる。これらの蓄電池の再充電及びエージングは、さらなる問題となる。蓄電池でウェアラブル部分にエネルギーを供給することが可能であるが、重量及び急速充電の理由により、小さな燃料電池及び水素タンクによってエネルギーを供給することが有利である。この技術は、水素の重量当たりの高エネルギーを利用する。20MPa(200bar)で圧縮された270mlの量の水素は、わずかSgの重量を有するのみであり、30秒で流すことが可能であり、さらにウェアラブルデバイスに3時間エネルギーを供給することができる。クワドロコプターでさえも、今日は蓄電池よりもこの技術を使用している。
【0172】
低温精製、水素燃料供給並びに透析装置の異なる場所における1つまたは複数のベースステーション及びベスト内に着用可能なわずか数キログラムの重量の急速再充電可能なウェアラブル部分への分離の技術的な組み合わせは、患者だけでなく本技術分野の専門家でさえも予測できなかった有利な効果を明らかにし、コスト低減並びに、患者が社会的生活および仕事に参加する能力の増進について高い可能性を有する。さらに、この原理は、1日当たり18時間の透析または一晩中の透析さえ可能にする。技術的な態様から、透析は維持管理のためだけに停止されなければならず、これは患者によって選択された時間において、1日当たり30分以上であるべきではない。これは顕著に死亡率を低減し、個人的な健康及び患者の長期間のアウトカムを改善する。
【0173】
システムについて、様々な技術的実施形態が存在する。氷の結晶化の制御は、3200cm−1の波数で赤外線分光分析を用いて実行可能である。洗浄カラムはピストンを使用して、ねじボルト回転を使用して、重力または電気的駆動を使用して動作可能である。結晶生成器は、主に結晶の大きさに影響を与え、そのため氷の結晶の表面/体積比を制御するため、統合され、または省略されることができる。結晶シード比及び過冷却は適合されてもよく、適合されなくてもよい。これは結晶の大きさ及び洗浄後の純度に影響を与えるが、この原理自体には不可欠ではない。
【0174】
透析液の注入は、ノズルまたは単なる単純な流入口を用いて実行可能であり、冷却表面の幾何形状構成も改良可能である。
【0175】
結晶成長装置内の透析液の在留時間または動作の種類(バッチまたは連続的)は、必要なスループットに従って変更されうる。これは、オストワルド熟成のプロセスに影響を与えるが、原理自体の利用を禁止するものではない。外部熱交換器(
図2の236)さえも適用可能であり、または適用可能でない。過冷却の程度は変更されまたは変更されず、氷の熟成時間及び洗浄後の純度に影響を与えることとなる。
【0176】
グルコースなどの追加的な結晶成長活性剤は、洗浄カラム内で洗浄、除去されるため、使用されてもよく、使用されなくてもよい。
【0177】
本発明に従う方法において、透析液は再利用される。透析液は、血液から化学物質を除去するために血液透析で使用される水溶液である。透析液は血清と類似する組成で電解質、グルコース及び緩衝化学物質を含むことができる。腎臓によって排泄され、血液内にのみ含まれる偏性化学物質は、透析液内に拡散し、または流動から抽出される。腎臓によって排泄される偏性化学物質は、代謝の分子末端生成物(異化生成物)であり、尿とともに連続的に排泄されなければならない。以下、本明細書ではこれらの化学物質は、本発明の方法の段階(a)に関連して尿毒症毒素または溶質とも称される。本方法の結果として、透析に再使用可能な新鮮な透析液が得られる。低温精製ユニットも、血液透析ろ過または腹膜透析のためにオンライン流体置換を発生させるために使用可能である。
【0178】
本方法の段階(a)において、氷のスラリーが透析液から形成され、氷のスラリーは純粋な氷の結晶及び残留溶質を含む液体を含み、溶質は腎臓によって排出された前述の偏性化学物質を含む。氷のスラリーは透析液を凍結することによって準備することができる。以下に詳細に説明されるように、氷のスラリーに含まれる氷の結晶は高純度であり、前述の不要な化学物質(溶質)は液体内に維持される。
【0179】
段階(b)において分離により、氷の結晶は溶質を含む液体から除去され、結果として氷の結晶を溶質から分離することが可能である。氷の結晶が融解すると、再び透析液として使用可能な高純度の水が得られる。
【0180】
本方法は、限外ろ過液及び血液透析または腹膜透析患者から抽出された廃棄透析液からの新鮮な透析液を、特に、外部の水の混合または透析フィルター自体以外にカートリッジ、フィルターもしくは半透過膜などの水再利用のための治療/患者に関連する消耗品の必要なく、再利用するのに適している。限外ろ過液または洗浄された透析液が得られる同じ患者について、再利用された新鮮な透析液を使用することができる。本方法において、一次限外ろ過液または洗浄された透析液の体積量の月平均の少なくとも約80%が、1人または数人の患者から再利用のために抽出可能であり、その後同じ患者の透析器または腹膜に再供給可能であり、廃棄されるのはその約20%を超えない。
【0181】
段階(a)の温度は0℃から共晶点温度の間でありうる。
【0182】
本方法の段階(a)において、氷の結晶のような種結晶が使用されうる。種結晶が段階(a)において使用される場合、均一な大きさの分布のより均一な氷の単結晶を得ることが可能になる。単結晶は、通常500μmを超えない。さらに、不純物を閉じ込めるような内部格子損傷が少ないため、高純度の氷の結晶が得られる。
【0183】
本方法の段階(a)において、結晶成長活性剤を使用することが可能である。そのような結晶成長活性剤は、結晶化の開始点として機能する。結晶成長活性剤を使用することによって、均一の大きさの分布のより均一な単結晶を得ることができる。単結晶は、通常500μmを超えない。さらに、高純度の氷の結晶が得られる。例えば、結晶成長活性剤はグルコースであり、これを使用することによって上記の効果が特に有利に達成され、さらに、これは生理学的に発生する化学物質である。
【0184】
本方法の段階(a)は過冷却によって実行することができる。過冷却は過冷としても知られ、固体になることなく、液体または気体の温度を凝固点よりも下げるプロセスである。特に、これはいわゆる組成的過冷却を指す。本明細書では、共晶(液相線)近傍の融点の局所的な変化がこの領域にわたる温度変化よりも大きいため、所定のデルタVがどの程度高速に冷却されるかについての役割を果たす。そのため、共晶が十分高速に液体−氷の相境界の形成の境界を離れることができるか否か、またはエネルギーの観点から結晶損傷が形成されるか否かについて影響を与えることができる。過冷却は結晶化が開始する温度を低下させるが、プロセスを(相境界のdx/dtとして)加速する。そのため、結晶内への挿入及び熟成時間を制御することはよいパラメータである。しかし、共晶自体の存在は、種結晶として働く可能性があり、そのため過冷却が生じうるエネルギー状態を取り除くのが早すぎるため、過冷却のプロセスに対するエネルギー障壁である。
【0185】
氷の結晶化の制御は3200cm−1の波数の赤外分光分析を使用して実行可能である。具体的には、結晶化が制御され、調整され、結果的に良好な均一性及び適切な大きさの分布を有する氷の結晶を得ることが可能になるように、結晶化の開始を監視可能である。
【0186】
本方法の段階(b)において、氷の結晶は液体から分離可能である。この段階は、当業者には周知の固体から液体を分離する任意の方法によって実行可能である。例えば低温精製は、水から固体を分離するために使用されうる。凍結濃縮も、水から固体を分離するために使用されうる。凍結濃縮は、通常ゼロ度未満の温度で氷の結晶の形態で純水を取り除くために使用される。ジュースの濃縮液を得るために使用され、濃縮された産生物が得られることとなる。本発明によれば、反対に、すなわち純水が得られ、患者のために透析液として再使用されることとなる。凍結濃縮について、結晶生成器、冷却ジャケットを有する容器及び洗浄カラムが使用される。
【0187】
本方法によれば、水の氷の結晶を液相から、同時に不純物から表面をリンスしつつ分離するための洗浄カラムまたは等価な方法が採用される。
【0188】
氷hは圧力点において融解する特性を有し、そのため形状を変化させるため、氷のスラリーをフィルターでろ過することは適切ではない。結晶の不均一な形態のため、フィルターの穴にそのような圧力点を生じ、そこで結晶が融解する。そのため、形状の適応的な変化によってフィルターの穴を貫通し、フィルターろ過の効果がなくなることとなる。
【0189】
したがって、氷の結晶を液相から、同時に不純物から表面をリンスしつつ分離するための洗浄カラムまたは等価な方法が使用される。
【0190】
洗浄カラムの使用は、
図1に示されている。固体純粋相と、不純物を有する液相との混合物は例えば下から洗浄カラムの円筒内に押し込まれる。この押し込みのために、ある力が印加されうる。反対側の端部、例えばカラムの上部では、薄い純粋層を分離するナイフまたは刃のようなアイススクレイパーが存在する。この削り取られた純粋な氷は融かされる。そのため精製された水のわずかな量が上から洗浄カラム内に押し戻される。
【0191】
純粋な水は0℃で凍結するが、純粋でない水は、混入が最大となる共晶点温度以下で凍結する。したがって、融点は、混入量が多いほど融点が低くなるという点で、混入の程度に依存する。削り取られる最上層の氷は、正確に0℃の温度を有する(純水及び氷は0℃で共存できる)。したがって、最上層の純粋な氷は純水に漬けられる。氷の表面に不純物が付着するため、これらは純粋な氷から融解された還流水に送られ、そのため融点が低くなる。したがって、液体状態を保つ。底部では温度が低下するため、水は氷の結晶の亀裂内に侵入しようとし、下からくる周囲の氷が洗浄水の融点に到達するまで、それらを洗浄する。このとき、再び純粋な氷に凍結し、不純物を解放する。次いで、純粋な氷はスクレイパーの方へ押し出され、そこでは常に純粋な氷が存在し、それから純粋な洗浄水が準備可能である。再び還流洗浄水の凍結時に、不純物は液相に残り、表面を洗浄する。これらの段階によって、液相は次第に濃縮される。所定の不純度の水の状態で液体を残す点において、洗浄フロントが形成される。この領域の下では、液相の濃度が、後続の氷の温度(共晶温度よりも高い)でこれ以上凍結しないほど高い。したがって、液相として下方に除去可能である。
【0192】
もちろん、本発明は図面に示された実施形態に限定されない。したがって、前述の説明は限定的なものではなく説明的なものとして考えられるべきである。以下の特許請求の範囲は、言及される特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に存在するように理解されるべきである。これは、さらなる特徴の存在を排除するものではない。特許請求の範囲及び前述の説明は「第1」及び「第2」の特徴を定義するが、この指定は、順序を決定することなく2つの類似する特徴を区別するものである。