(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970127
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】正弦波信号の振幅、および位相遅延を提供するためのシステム、および方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/04 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
G01R19/04 C
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-563911(P2018-563911)
(86)(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公表番号】特表2019-519776(P2019-519776A)
(43)【公表日】2019年7月11日
(86)【国際出願番号】FR2017051464
(87)【国際公開番号】WO2017212187
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年3月26日
(31)【優先権主張番号】1655330
(32)【優先日】2016年6月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517092787
【氏名又は名称】オネラ(オフィス ナシオナル デチュドゥ エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ゲラール,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェールアック,ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】ラヴニュ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ラファエル
【審査官】
島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−519762(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0320553(US,A1)
【文献】
特表2009−536335(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0078556(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0070529(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/022653(WO,A1)
【文献】
特開2001−188011(JP,A)
【文献】
特開2003−018007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間(t)とともに周波数Fの正弦状の変化を有する測定対象の信号(s(t))に関する振幅値(A)、および、位相遅延値(Φ)を提供するシステムであって、
正弦波状の時間変化を有し、前記測定対象の信号(s(t))と連続的な位相コヒーレンス状態にある基準信号(r(t))を生成するように構成された合成ユニット(1)であって、当該基準信号が、前記測定対象の信号(s(t))の前記振幅(A)よりも大きな振幅(A
ref)を有し、且つ、周波数が
【数38】
であり、P及びQが2つの固定の、0ではない自然数の変数であり、PがQよりも大きい合成ユニット(1)と、
コンパレータであって、当該コンパレータの2つの入力において、前記測定対象の信号(s(t))と前記基準信号(r(t))とを受信するように接続され、前記測定対象の信号が前記基準信号よりも小さくなる度に、または、前記測定対象の信号が前記基準信号よりも大きくなる度に、信号遷移を出力するように構成されたコンパレータ(130)と、
ラッチレジスタであって、当該
ラッチレジスタのデータ入力において、瞬間的な値を受信するように接続されるとともに、前記コンパレータ(130)によって出力される信号を当該
ラッチレジスタのイネーブル入力として受信し、前記コンパレータによって生成された信号の遷移と同時に当該
ラッチレジスタによって受信されたこれらの瞬間的な
値を選択するように構成されたラッチレジスタであって、前記コンパレータと前記
ラッチレジスタとが、前記測定対象の信号の取得チャンネル(2)を形成しているラッチレジスタ(140)と、
前記選択された値(ψ
k)を受信するように接続され、当該選択された値から、前記測定対象の信号(s(t))の前記振幅値(A)、および前記位相遅延の値(Φ)を算出するように構成された演算ユニット(3)と、を備え、
前記ラッチレジスタ(140)が、当該
ラッチレジスタのデータ入力において、基準信号(r(t))の位相(ψ(t))の瞬間的な値を受信するために接続され、
前記演算ユニット
(3
)が、基準信号(r(t))の位相(ψ(t))の前記選択された値を受信するために接続され、基準信号の位相について選択された前記値から、測定対象の信号(s(t))の振幅値(A)と、位相遅延値(Φ)と、を算出するように構成され、
また、前記演算ユニット(3)が、a・cosΦである、前記測定対象の信号(s(t))の同相成分の振幅値(X)と、a・sinΦである、前記測定対象の信号の直交振幅値(Y)と、であって、前記基準信号の位相に対して前記選択された値(ψ
k)に依存する、前記測定対象の信号(s(t))の前記同相成分の振幅(X)と、前記直交振幅(Y)とを、係数を有するアフィン方程式系から算出するように構成されており、Φは前記測定対象の信号の位相遅延の値であり、aは前記測定対象の信号(s(t))の前記振幅(A)を、前記基準信号(r(t))の前記振幅(A
ref)で割った商であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記変数Pが前記変数Qに1を足した数に等しい請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記合成ユニット(1)、前記ラッチレジスタ(140)、および前記演算ユニット(3)のうち少なくとも1つがプログラマブルロジック回路(FPGA)、または専用回路(ASIC)である
請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記演算ユニット(3)は、前記基準信号(r(t))の位相について前記選択された値(ψk)からアフィン方程式系の係数を算出し、アフィン方程式系を解くための、例えば、アフィン方程式反転アルゴリズム、または最小二乗分解アルゴリズムといった、アルゴリズムを適用することによって前記測定対象の信号(s(t))の前記同相成分の振幅(X)と、前記直交振幅(Y)と、の値を算出する、ように構成されている
請求項1から3の何れか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記演算ユニット(3)は、アフィン方程式系における前記測定対象の信号s(t)の前記同相成分の振幅(X)と、前記直交振幅(Y)と、の係数の近似値を特定するように構成され、
前記係数の近似値は、前記基準信号(r(t))の位相について前記選択された値(ψk)とは独立しており、前記基準信号の位相について前記選択された値は、アフィン方程
式系のアフィン項を構成しており、
さらに、前記演算ユニットは、前記基準信号の位相について前記選択された値の線形結合として、前記測定対象の信号(s(t))の前記同相成分の振幅(X)と、前記直交振幅(Y)と、の近似値を算出するように構成されている
請求項1から3の何れか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記演算ユニット(3)は、前記基準信号(r(t))の位相について前記選択した値(ψk)について、同相の基本成分の振幅(H1p)と、直交の成分の振幅(H1q)と、調和成分の振幅(H2p,H2q,…)と、を算出するように構成され、
さらに、前記演算ユニットは、前記測定対象の信号(s(t))の前記同相成分の振幅(X)と、前記直交振幅(Y)と、の近似値を、前記基準信号の位相について前記選択された値の、前記同相の基本成分の振幅と、前記直交成分の振幅と、前記調和成分の振幅と、の線形結合から算出するように構成されている
請求項1から3の何れか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記演算ユニット(3)は、前記基準信号(r(t))の位相について前記選択した値(ψk)について、前記同相の基本成分の振幅(H1p)と、前記直交成分の振幅(H1q)と、前記調和成分の振幅(H2p,H2q,…)と、を前記基準信号の位相について前記選択された値の足し算、および引き算の組み合わせとして算出するように構成され、
さらに、前記演算ユニット(3)は、前記測定対象の信号(s(t))の前記同相成分の振幅(X)と、前記直交振幅(Y)と、の近似値を、前記基準信号の位相について前記選択された値の、前記同相の基本成分の振幅と、前記直交の成分の振幅と、前記調和成分の振幅と、の線形結合から算出するように構成されている
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
Pが60の倍数である請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
それぞれが時間(t)の経過に伴う正弦状の変化を有する複数の測定対象の信号(s0(t),s1(t),…)であって、当該測定対象の信号が全て前記周波数Fを有する信号に関する振幅値(A)と、位相遅延値(Φ)と、を提供するように構成され、
前記システムは、前記測定対象の信号(s0(t),s1(t),…)に個別に設けられた対応する取得チャンネル(20,21,…)であって、それぞれの取得チャンネルが、他の取得チャンネルとは別に、請求項1に従って、構成され、接続されたコンパレータ(130,131,...)と、ラッチレジスタ(140,141,...)と、を備え、
前記合成ユニット(1)は、前記基準信号(r(t))を全ての前記コンパレータ(130,131,...)に同時に送信し、前記基準信号の前記位相(ψ(t))の前記瞬間的な値を全ての前記ラッチレジスタ(140,141,...)に同時に送信するために、全ての前記取得チャンネル(20,21,…)に共通である
請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記合成ユニット(1)が
クロック信号を受信する入力と、
前記クロック信号から、第1のアキュムレーションインクリメント(W1)に従って、励起信号(E(t))の位相を生成するように構成された第1のサイクリックアキュムレータ(102)と、
前記クロック信号から、第2のアキュムレーションインクリメント(W2)に従って、前記基準信号(r(t))の位相(ψ(t))を生成するように構成された第2のサイクリックアキュムレータ(103)と、
前記第1のサイクリックアキュムレータ(102)によって生成された前記位相から、正弦波状の時間変化を有する前記励起信号(E(t))を生成するための第1の信号形成ユニット(110)と、
前記第2のサイクリックアキュムレータ(103)によって生成された前記位相(ψ(t))から、前記基準信号(r(t))を生成するための第2の信号形成ユニット(111)と、を備え、
前記システムは、外部装置(200)に前記励起信号(E(t))を提供し、前記励起信号に対する前記外部装置の応答として、前記測定対象の信号(s(t))を収集するように構成され、
前記第1のアキュムレーションインクリメント(W1)、および、前記第2のアキュムレーションインクリメント(W2)は、前記第1アキュムレーションインクリメント(W1)をQで割ったのが、前記第2のアキュムレーションインクリメント(W2)をPで割った商と同じであり、サイクルインクリメントと称される自然数の変数(W0)と等しい自然数の変数であり、
前記周波数Fは、前記クロック信号の周波数(FCLK)に、変数Qと、前記サイクルインクリメント(W0)と、を掛け、NAがそれぞれの前記サイクリックアキュムレータ(102,103)で用いられているビット数である2NAで割った、第1の結果に等しく、
前記周波数Frefは、前記クロック信号の前記周波数(FCLK)に、変数Pと、前記サイクルインクリメント(W0)と、を掛け、2NAで割った、第2の結果に等しい
請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
時間(t)の経過に伴う正弦状の変化を有する周波数Fの測定対象の信号(s(t))に関する振幅値(A)と、位相遅延値(Φ)とを提供する方法であって、
前記測定対象の信号(s(t))と連続的な位相コヒーレンス状態にある正弦波状の時間変化を有する基準信号(r(t))であって、前記測定対象の信号の前記振幅(A)よりも大きな振幅(A
ref)を有し、周波数が
【数39】
と等しく、P、およびQが、2つの固定の、0ではない自然数の変数であり、PがQよりも大きい前記基準信号を生成するステップと、
前記測定対象の信号(s(t))が前記基準信号よりも小さくなる、または、前記測定対象の信号が前記基準信号よりも大きくなる、瞬間的な値を選択するステップと、
前記選択した値から、前記測定対象の信号(s(t))の前記振幅値(A)と、前記位相遅延値(Φ)と、を算出するステップと、を備え
選択された前記瞬間的な値は、前記基準信号(r(t))の位相(ψ(t))の瞬間的な
値であり、前記測定対象の信号(s(t))の前記振幅値(A)と、前記位相遅延値(Φ)とは、前記基準信号(r(t))の位相について前記選択された値(ψ
k)から算出され、
また
、演算ユニット(3)が、a・cosΦである、前記測定対象の信号(s(t))の同相成分の振幅値(X)と、a・sinΦである、前記測定対象の信号の直交振幅値(Y)と、であって、前記基準信号の位相に対して前記選択された値(ψ
k)に依存する、前記測定対象の信号(s(t))の前記同相成分の振幅(X)と、前記直交振幅(Y)とを、係数を有するアフィン方程式系から算出するように構成されおり、Φは前記測定対象の信号の位相遅延の値であり、aは前記測定対象の信号(s(t))の前記振幅(A)を、前記基準信号(r(t))の前記振幅(A
ref)で割った商であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から10の何れか1項に記載のシステムによって実現される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
周波数Fの正弦波状の時間変化を有する励起信号(E(t))によって振動させられる共振回路の応答を特徴付けるために用いられ、前記測定対象の信号(s(t))が、前記励起信号に対する前記共振回路の応答となっている請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記共振回路は、振動加速度計、または振動ジャイロスコープの一部であり、測定対象の信号(s(t))に関する、前記振幅値(A)、および位相遅延値(Φ)は、前記加速度計、または前記ジャイロスコープを搭載している装置、または車両の加速度、または回転速度の値を算出するために用いられる
請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正弦波信号の振幅、および位相遅延を提供するためのシステム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、用語「正弦波信号の位相遅延」は、時間原点に対する当該信号の位相の値の反対を意味している。時間原点を、初期時間とも呼び、t=0に対応する。ここでtは時間変数を示す。
【0003】
多くの用途において、正弦関数をその振幅と位相遅延とによって特徴付けることが必要である。例えば、振動加速度計、または振動ジャイロスコープの一部である共振回路の応答を励起信号に特徴付けるといった特定の場合がある。
【0004】
これを行うための最も一般的な方法の一つは、正弦波信号をデジタル化し、それからそれを、例えばフーリエ変換によって解析することである。しかしながら、信号のデジタル化は、所定の半導体技術によって実現された混合された電子部品によるアナログデジタルコンバータを用いて、信号を所定のタイミングでサンプリングし、それらのタイミングにおいて有効な信号の値を定量化することによって行われる。このため、アナログデジタルコンバータは、宇宙用途に適用するためには、大幅な進展が必要であり、コストを増大させる。
【0005】
アナログデジタルコンバータのこれらの欠点を避けるために、米国特許5166959から知られているように、正弦波信号を、当該信号のキャンセル期間(cancellation times)を識別することで特徴付けることが知られている。しかし、このような方法では、正弦波信号の振幅を特定することはできず、その位相遅延を特定することしかできない。また、位相遅延も、信号の振幅が小さい場合、および/または、信号対ノイズの比率が小さい場合には、正確に特定することはできない。
【0006】
WO2008/022653には、識別するための信号と基準信号との日付の比較に基づいて正弦波を測定するシステムが開示されている。
一方で、「Phase Angle Measurement Between Two Sinusoidal Signals」と題されたR.Michelettiによる論説(IEEE Trans. Instr. Meas. Vol.40, No.1, 1st February 1991, pp.40-42, XP055353815)は、2つの信号間の位相角を計測するアルゴリズム提案する。このアルゴリズムは、最小二乗法に基づいており、デジタル信号から実施されている。
最後に、「Direct Digital Synthetizer (DDS) design parameters optimisation for vibrating MEMS sensors」と題されたB.Marechalらによる論説(2014 SYMPOSIUM ON DESIGN, TEST, INTEGRATION AND PACKAGING OF MEMS/MOEMS (DTIP), CIRCUITS MULTI PROJETS-CMP-1stapril 2014, pp.1-5, XP032746454)は、デジタル信号の合成ユニットについて最適化されたデザインを提案している。
【0007】
このことから、本発明の目的は、アナログデジタルコンバータを必要とすることなく、正弦波信号の振幅と、位相遅延とを特定するための新たな方法を定義することである。
【0008】
本発明の関連する目的は、高価ではなく、かつ、低コストで宇宙用途に適している、正弦波信号の波長と位相遅延とを特定することができるシステムを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、それぞれが他のチャンネルとは異なる、正弦波の振幅と位相遅延とを特定するため用の複数のチャンネル間で共有することができる特徴的な部分を有し、全てのチャンネルが継続的に、且つ、同時に動作するシステムを提供することである。
【0010】
最後に、本発明の更なる別の目的は、ノイズに重畳されている可能性のある低振幅の正弦波信号についても正確なシステムを提供することである。
【0011】
これらの目的、または他の目的の少なくとも1つを達成するために、本発明の第1の態様は、時間とともに周波数Fの正弦状の変化を有する測定対象の信号に関連する振幅値、および、位相遅延値を提供するシステムであって、正弦波状の時間変化を有し、測定対象の信号と連続的な位相コヒーレンス状態にある基準信号を生成するように構成された合成ユニットであって、当該基準信号が、測定対象の信号よりも大きな振幅を有し、且つ、周波数が
【数1】
であり、P及びQが2つの固定の、0ではない自然数の変数であり、PがQよりも大きい合成ユニットと、当該コンパレータの2つの入力において、測定対象の信号と基準信号とを受信するように接続され、測定対象の信号が基準信号よりも小さくなる度に、または、測定対象の信号が基準信号よりも大きくなる度に、信号遷移を出力するように構成されたコンパレータと、当該レジスタのデータ入力において、基準信号の位相における瞬間的な値を受信するように接続されるとともに、コンパレータによって出力される信号を当該レジスタのイネーブル入力として受信し、コンパレータによって生成された信号の遷移と同時に当該レジスタによって受信された基準信号の位相値を選択するように構成されたラッチレジスタであって、コンパレータとレジスタとが、測定対象の信号の取得チャンネルを形成しているラッチレジスタと、基準信号の位相について選択された値を受信するように接続され、これらの基準信号の位相について選択された値から、測定対象の信号の振幅値、および位相遅延の値を算出するように構成された演算ユニットと、を備えたシステムを提案する。
【0012】
このように、本発明のシステムは、測定対象の信号が基準信号よりも小さい、または、基準信号よりも大きい、基準信号の位相値を特定することによって処理を行う。これらの位相値から、演算ユニットは、測定対象の信号の振幅と、位相遅延とを特定する。
【0013】
よって、本発明のシステムは、測定される正弦波信号の振幅と位相遅延とを、アナログデジタルコンバータを用いることなく、特定する。
【0014】
ラッチレジスタ、および、基準信号を生成する合成ユニットは、安価で単純な電子部品であり、特別な進展を行うことなく、基本的なデジタル機能を公知技術を用いて適切化すれば、宇宙用途に適合させることができる。コンパレータについては、混合された機能を実行するが、基本的な一対の差動体トランジスタであるため、特別な困難なく宇宙用途に適合させることができる。
【0015】
演算ユニットについても同様であり、ASICの略称で呼ばれる用途特定の専用回路である集積回路の形態、または、コストが急激に低下するなか、実現可能な演算のレベルが近年劇的に進化しているFPGAの略称で呼ばれるプログラマブル回路の形態で構成、または、備えられる。実際には、測定対象の信号の振幅と位相遅延は、主に、予め記録可能な固定の数値を部分的に含む、数字の足し算、掛け算、引き算によって算出することができる。既知の方法では、設計、および、ASIC、または、FPGAの形態の演算ユニットの記述は、とても柔軟で、経済的な言語、例えば、VHDL、または、Verilogによって行うことができる。一般的に、本発明では、合成ユニット、ラッチレジスタ、および、演算ユニットの少なくとも1つが、このような専用回路(ASIC)、または、このようなプログラマブルロジック回路(FPGA)によって構成することができる。
【0016】
最後に、特定される期間は、測定対象の信号を可変の基準信号と比較することに関連するため、これらの期間は、たとえ測定対象の信号が低振幅であり、ノイズ干渉を受けていても、正確に特定することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、整数Pは、整数Qに1を足した
【数2】
であってもよい。
【0018】
また、本発明では一般的に、演算ユニットは測定対象の信号の同相(in−phase)の振幅値であるa・cosΦであって、Φが測定対象の信号の位相遅延の値であり、aが測定対象の信号の振幅を、基準信号の振幅で割った商であるa・cosΦと、測定対象の信号の直交振幅値であるa・sinΦとを算出するように構成されていてもよい。基準信号の位相に対して選択された値に依存する測定対象の信号の位相の振幅、および、直交振幅のこれらの値は、係数を有するアフィン方程式系から算出することができる。
【0019】
演算ユニットの考えられる第1の構成によれば、測定対象の信号の位相振幅値a・cosΦ、および、直交振幅値a・sinΦを未知数として有するアフィン方程式系の厳密な分解を実現することができる。この場合、演算ユニットは、基準信号の位相について選択された値からアフィン方程式のシステムの係数を算出し、アフィン方程式のシステムを解くためのアルゴリズムを適用することによって、測定対象の信号の位相の振幅と直交振幅との値を算出するように構成されてもよい。特に、測定対象の信号の位相と、直交振幅値とを未知数として有するアフィン方程式のシステムを解くために、アフィン方程式反転アルゴリズム、または、最小二乗分解アルゴリズムが演算ユニットによって適用されてもよい。
【0020】
演算ユニットの考えられる第2の構成によれば、当該ユニットは、測定対象の信号の位相振幅値a・cosΦと、直交振幅値a・sinΦを未知数として有するアフィン方程式のシステムの一次分解を、測定対象の信号の振幅の関数として実現することができる。このような方法は、測定対象の信号の振幅が基準信号よりも小さい場合に適している。この場合、演算ユニットは、アフィン方程式のシステムにおける位相振幅、および、直交振幅の係数の近似値を特定する構成とすることができる。これらの係数の近似値は基準信号の位相の選択値とは無関係であり、基準信号の位相の選択値はアフィン方程式のシステムのアフィン項を構成する。そして、演算ユニットは、さらに、測定対象の信号の位相振幅と、直交振幅の近似値とを、基準信号の位相についての選択値の単純な線形結合として算出するように構成されていてもよい。
【0021】
演算ユニットの考えられる第3の構成によれば、当該ユニットは、ラッチレジスタによって選択された基準信号の位相値を、基本成分(fundamental components)、及び、調和成分(harmonic components)に分解することによってアフィン方程式のシステムを解くことを実現することができる。特に、演算ユニットは、基準信号の位相について選択した値について、同相の基本成分の振幅、および直交成分の振幅、並びに、調和成分の振幅を算出する構成とすることができる。そして、演算ユニットは、測定対象の信号の位相振幅値a・cosΦと、直交振幅値a・sinΦとの近似値を、基準信号の位相における選択値に関する、同相の基本成分の振幅、直交成分の振幅、及び、調和成分の振幅の線形結合から算出する構成とすることができる。
【0022】
好ましくは、第3の構成の演算ユニットが用いられる場合には、演算ユニットは、基準信号の位相における選択値の足し算、および引き算の組み合わせとして、基準信号の位相について選択した値について、同相の基本成分の振幅、および直交成分の振幅、並びに、調和成分の振幅を算出するように構成されていてもよい。そして、さらに、演算ユニットは測定対象の信号の位相振幅a・cosΦと、直交振幅値a・sinΦの近似値を、基準信号の位相における選択値に関する、同相の基本成分の振幅、直交成分の振幅、及び、調和成分の振幅の線形結合から算出するように構成されてもよい。この場合、整数Pは、好適には60の倍数である。
【0023】
複数の正弦波信号が、同時に、および連続的に特徴付けられなければならない場合、取得チャンネルは、それぞれの信号に個別に設けられ、一方で、合成ユニットは、取得チャンネルのそれぞれに基準信号と、各位相における瞬間的な値とを提供するために、これらの全ての取得チャンネルで共有されている。よって、それぞれが時間経過に伴う周波数Fの正弦状の変化を有する複数の測定対象の信号に関する振幅および位相遅延値とを提供するように構成されているこのようなシステムは、測定対象の信号のそれぞれに個別に用意されている取得チャンネルを備えていてもよい。それぞれの取得チャンネルは、他の取得チャンネルとは別に、上述のように構成および接続されたコンパレータと、ラッチレジスタと、を備えている。合成ユニットは、全てのコンパレータに同時に基準信号を送信し、全てのラッチレジスタに同時に基準信号の位相における瞬間的な値を送信するために、これらの全ての取得チャンネルに共通であってもよい。可能であれば、演算ユニットは、取得チャンネルの1つに割り当てられている、それぞれの測定対象の信号に個別に振幅値と遅延値とを特定するために、全ての取得チャンネルに対して共通であってもよい。
【0024】
本発明のある特定の実施形態の上記システムは、クロック信号を受信する入力と、第1のアキュムレーションインクリメントに従って、クロック信号から励起信号の位相を生成するように構成された第1のサイクリックアキュムレータと、第2のアキュムレーションインクリメントに従って、クロック信号から基準信号の位相を生成するように構成された第2のサイクリックアキュムレータと、第1のサイクリックアキュムレータによって生成された位相から、正弦波状の時間変化を有する励起信号を生成する第1の信号形成ユニットと、第2のサイクリックアキュムレータによって生成された位相から基準信号を生成する第2の信号形成ユニットと、を備えていてもよい。
【0025】
上記システムは、上記構成において、励起信号を外部装置に提供し、励起信号に対する外部装置の応答として測定対象の信号を収集するように構成されていてもよい。これをするためには、第1、および第2のアキュムレーションインクリメントは、第1のアキュムレーションインクリメントをQで割った商が、第2のアキュムレーションインクリメントをPで割った商と等しい自然数の変数であり、さらに、サイクルインクリメントと称する自然数の変数と等しい。これにより、周波数Fは、クロック信号の周波数に自然数Qと、サイクルインクリメントとを掛けて、2
NAで割った第1の答えと等しくてもよい。ここで、NAは、それぞれのサイクリックアキュムレータで用いられているビット数である。また、基準周波数F
refは、クロック信号の周波数に、自然数Pと、サイクルインクリメントとを掛けて、2
NAで割った第2の答えと等しくてもよい。
【0026】
第2のサイクリックアキュムレータからの出力は、基準信号の位相の瞬間的な値を送信するために、取得チャンネルのそれぞれのラッチレジスタの入力に接続される。また、第2の信号生成ユニットの出力は、基準信号自体を送信するために、取得チャンネルのそれぞれのコンパレータの入力に同時に接続されている。
【0027】
本発明の第2の態様は、時間経過に伴う正弦状の変化を有する周波数Fの測定対象の信号に関する振幅値、および位相遅延値とを提供する方法を提案する。上記方法は、測定対象の振幅よりも大きな振幅を有し、周波数が、PおよびQが2つの固定の0ではない自然数の変数であり、PがQよりも大きいときに、
【数3】
で示される基準信号であって、測定対象の信号と連続的な位相コヒーレンス状態にある正弦波状の時間変化を有する基準信号を生成するステップと、測定対象の信号が基準信号よりも小さくなる、または、測定対象の信号が基準信号よりも大きくなる、基準信号の位相の瞬間的な値を選択するステップと、基準信号の位相について選択された値から測定対象の信号の振幅と位相遅延との値を算出するステップと、を含んでいる。
【0028】
このような方法は、第1の態様のシステムによって実現されてもよい。
【0029】
本発明の方法は、周波数Fの正弦波状の時間変化を有する励起信号によって振動する共振回路の応答を特徴付けるために好適に用いられてもよい。測定対象の信号は、励起信号に対する共振回路の応答によって生成される。特に、共振回路は、振動加速度計、または、振動ジャイロスコープの一部であってもよく、測定対象の信号に関する振幅、および、位相遅延の値は、装置の、または、加速度計かジャイロスコープを搭載している車両の、加速、または、回転速度の値を算出するのに用いられる。
【0030】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照した、非限定的な実施形態の以下の記載において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1は本発明に係るシステムのブロック図である。
図2は、本発明に係るシステムによって選択された位相値を示すタイミング図である。
図3の(a)〜(c)は、未知数として、同相成分の振幅と、測定対象の信号の直交振幅とを有するアフィン方程式系の3つの態様を示している。
図4の(a)は、本発明で用いられる位相値のフーリエ級数分解を示し、
図4の(b)は、本発明で用いられる位相値のフーリエ係数の近似値を算出する方法を示す図である。
図5は、
図1で示した態様の変形例を示し、複数の信号を同時に計測するのに適したシステムの例を示す図である。
図1、および
図5において、2重線の矢印は、バイナリ信号の伝送を示し、1重線の矢印はアナログ信号の伝送を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係るシステムは、測定対象の信号と称され、s(t)と表記される、周波数の時間的変化は知られているものと仮定された、正弦波信号を特徴付けるためのものである。よって、測定対象の信号は、以下の(式1)で示され、
【数4】
(式1)において、tは時間を示し、Fは、予め知られている信号s(t)の周波数を示し、A、およびΦは、それぞれ信号s(t)の振幅と位相遅延とを示している。本発明の目的は、よって、振幅Aの値と、位相遅延Φの値とを求めるものである。
【0033】
こうすることにより、本願発明は、基準信号と呼ばれ、r(t)と表記される別の正弦波信号を利用する。正弦波信号は、良く知られているものであり、測定対象の信号s(t)と、連続的な位相コヒーレンス状態にあるように生成される。信号s(t)と、信号r(t)との間の連続的な位相コヒーレンスは、当初から2つの信号間に存在する位相差から始まり、それぞれの周波数に基づきそれぞれが発展するこれらの信号の特性を意味すると理解される。換言すれば、それぞれの信号は、少なくとも測定対象の信号s(t)を特徴付けるために必要な時間の間は、自らの位相遅延に対する固定値の周波数安定度を有している。t=0と定義される初期時間を適切に選択することによって、基準信号は、以下の(式2)で示すことができる。
【数5】
換言すれば、初期時間t=0は、基準信号が、πである位相遅延を有するとして定義される。A
ref、およびF
refは、それぞれ、既知であると仮定される、振幅と、基準信号r(t)の周波数の時間変化とである。以下の説明では、基準信号r(t)の位相は、ψ(t)と表記され、
【数6】
で示される。
【0034】
図1に示されるように、基準信号r(t)は、合成ユニット1によって生成される。本発明に好適な、合成ユニット1の1つの実施可能な実態形態によれば、当該ユニットは、下記の説明において第2のサイクリックアキュムレータとも称され、ACCUMと表記されるサイクリックアキュムレータ103を備えている。サイクリックアキュムレータ103は、CLKと表記されるクロック100によって供給される周期的な信号を入力として受信する。クロック100は、合成ユニット1とは別体でも良く、特に、他の電気モジュール、もしくは本願発明のシステムの外部のシステムと共有されていてもよい。サイクリックアキュムレータ103は、このため、周波数が
【数7】
で示される、自動でリセットされる線形ランプ信号を出力する。ここで、F
CLKはクロック100の周期であり、W
2は固定のアキュムレーションインクリメントであり、NAはサイクリックアキュムレータで用いられているビット数である。SINUSと表記される信号形成ユニット111は、サイクリックアキュムレータ103によって生成されたランプ信号を、周波数にF
refを維持する正弦関数に変換する。既知の方法で、信号形成ユニット111は、デジタルアナログコンバータに統合されたデジタルルックアップテーブルの形態、もしくは、フィルタリング変換機の形態等の形態で設けられてもよい。信号形成ユニット111によって生成された信号は、基準信号r(t)であり、サイクリックアキュムレータ103によって生成された信号は、基準信号r(t)の位相であり、tを時間としてψ(t)と表記される。
【0035】
実際に、本願発明の多くの応用において、測定対象の信号s(t)は、一般的に、強制振動子と称される、RESONと表記された共振回路200の励起信号に対する応答である。よって、E(t)と表記される励起信号は、測定対象の信号s(t)と等しい周波数Fを有している。よって、励起信号E(t)、および、測定対象の信号s(t)は、自然に、互いに連続的な位相コヒーレンス状態にあり、このため、励起信号E(t)、および、基準信号r(t)を、確実に互いに連続的な位相コヒーレンス状態にすることが必要である。このような、励起信号E(t)と、基準信号r(t)との連続的な位相コヒーレンス状態を確実なものとするための好適な方法は、後者もまた、合成ユニットを用いて生成することからなる。こうするためには、合成ユニット1は、第1のサイクリックアキュムレータと称され、クロック100から提供される周期的な信号を入力として受信する別のサイクリックアキュムレータ102を備えていてもよい。サイクリックアキュムレータ102は、周波数が
【数8】
で示される、自動でリセットされる別の線形ランプ信号を出力する。ここで、W
1は別の固定のアキュムレーションインクリメントである。下記の説明において、W
1と、W
2とは、それぞれ、第1のアキュムレーションインクリメントと、第2のアキュムレーションインクリメントと称される。
【0036】
信号形成ユニット110は、サイクリックアキュムレータ102によって生成されたランプ信号を、周波数Fの別の正弦波信号に変換する。この信号形成ユニット110は、デジタルアナログコンバータに統合されたデジタルルックアップテーブルの形態、もしくは、フィルタリング変換機の形態等の形態で設けられてもよい。信号形成ユニット110によって生成された信号であって、増幅器112によって増幅されたかもしれない信号は、励起信号E(t)である。
【0037】
アキュムレーションインクリメントW
1,W
2は、自然数の変数であり、更に、W
1/Q=W
2/P=W
0となるように選択される。ここで、PおよびQは2つの固定の、0ではない自然数の変数であり、PはQよりも大きい。このため、
【数9】
【数10】
及び
【数11】
が成立する。よって、基準信号r(t)の周波数F
refは、測定対象の信号s(t)の周波数Fよりも高い。例えば、クロック周波数F
CLKは、300MHzであってもよく、サイクリックアキュムレータ102,103によって用いられているビット数NAは、32ビットであってもよい。このような場合、F
refとF
CLKとの比は、例えば、1/1000程度であってもよい。
【0038】
更に、変数P、および変数Qは、W
0もまたサイクルインクリメントと称させる自然数となるように、好適に選択されてもよい。この場合、合成ユニット1は、更に、
図1において符号101で示され、周波数F
CLKのクロック信号を受信し、サイクルインクリメントW
0をアキュムレーションインクリメントとして有する、別のサイクリックアキュムレータを備えていてもよい。サイクリックアキュムレータ101は、このため、
【数12】
で示される周期によって、周期的にリセットされる線形ランプ信号を出力する。よって、
【数13】
および
【数14】
であり、基準信号r(t)の期間は、Pに、サイクリックアキュムレータ101によって生成された信号よりも短い期間を掛けたものであり、測定対象の信号s(t)の期間は、Qに、サイクリックアキュムレータ101によって生成された信号よりも短い期間を掛けたものである。よって、この別のアキュムレータは、サイクル同期信号を生成する。
【0039】
測定対象の信号s(t)は、増幅器120を可能であれば経て、共振回路200によって収集される。共振回路200の例は、本説明の最後に述べられている。測定対象の信号s(t)は、この後、取得チャンネル2によって処理され、その後、CALCと表記された演算ユニット3によって処理される。演算ユニット3は、測定対象の信号s(t)の振幅Aと、位相遅延Φとの結果として、数値を生成する。
【0040】
取得チャンネル2は、COMPと表記されたコンパレータ130と、REGと表記されたラッチレジスタ140と、を備えている。コンパレータ130は、基準信号r(t)と、測定対象の信号s(t)とを、2つの異なる入力に受信する。コンパレータ130は、基準信号r(t)が、測定対象の信号s(t)よりも大きくなる度に遷移を有する比較信号を出力する。なお、本実施形態は、コンパレータ130の作用に従って記載されているが、同様の作用は、測定対象の信号s(t)が基準信号r(t)よりも大きくなる度に比較信号の遷移を生成するコンパレータによって実現されてもよい。比較信号は、この後、サイクリックアキュムレータ103からの、基準信号r(t)の位相ψ(t)の瞬間の値を、異なる入力に同時に受信するラッチレジスタ140に送信される。ラッチレジスタ140は、基準信号r(t)が、測定対象の信号s(t)よりも大きくなった時の位相ψ(t)の値を、遂次出力する。これらの値は、ψ
kと表記され、1から始まる変数kを用いて番号付けられ、演算ユニット3に送信される。
【0041】
演算ユニット3は、専用回路(ASIC)、または、プログラマブルロジック回路(FPGA)によって好適に構成することができる。コンパレータ130、及びラッチレジスタ140の関数もまた、ASIC、またはFPGAによって実行されてもよい。
【0042】
図2は、信号r(t)、および信号s(t)のタイミング図である。
図2は、基準信号r(t)が、測定対象の信号s(t)よりも大きくなる時間t
1,t
2,t
3,…,t
k,…を示している。基準信号r(t)の位相ψ(t)に対応する値は、それぞれ、下記にψ
1と表記されたψ
k=1=ψ(t
1)、ψ
2と表記されたψ
k=2=ψ(t
2)、ψ
3と表記されたψ
k=3=ψ(t
3)…、ψ
k=ψ(t
k)…である。よって、インデックスkは、初期期間t=0から始まる基準信号r(t)の後続の期間をカウントする。信号r(t)の曲線と、信号s(t)の曲線とが交差する点における2つの連続する振幅値、および、位相値は、周期間の長さが1/F
cycの周期的である。この期間の長さは、本発明に適用するのに適している、位相値ψ
kの取得サイクルを定義する。好適な取得サイクルは、上述したサイクリックアキュムレータ101によって生成された信号に基づくものとすることができ、インデックスkは、それぞれの長さが1/F
cycである各取得サイクル中で1からPの範囲である。
【0043】
本発明にとって、一般に、変数Pは、変数Qに1を足したのと等しい(P=Q+1)。例えば、Qは3であってもよく、Pは4であってもよい。
図3は、これらのP、およびQの値に対応し、次サイクルの始めを含む、1つの取得サイクル全体を示している。
【0044】
時間t
kによって成立した公式は、
【数15】
であり、以下の(式3)となる。
【数16】
【0045】
取得チャンネル2の作用によれば、以下の(式4)となる。
【数17】
【0046】
これにより、上記の(式3)は、それぞれのkの値について、以下の(式5)となる。
【数18】
【0047】
a=A/A
ref、およびα
k0=(Q/P)・(2k−1)πの表記を用いることにより、位相値ψ
kによって成立する式は、
図3aに示したように、以下の(式6)である。
【数19】
【0048】
基準信号r(t)の振幅値であるA
refの値は、演算ユニット3によって後で用いられるために保持される。第1項のsinを展開することによって、以下の(式7)が得られる。
【数20】
【0049】
次に、測定対象の信号s(t)の、同相成分の振幅Xと、直交振幅Yと、を導入する以下の(式8a)、および(式8b)で示される変数の変更が行われる
【数21】
【数22】
【0050】
kのそれぞれの値について、上記の(式7)は、第1の位相の分解におけるA
refと、Φとを置き換える未知数X、および未知数Yの関数であるとして、下記の(式9)となり、
【数23】
これは、
図3bのマトリックス表記に対応する。
【0051】
上記の(式9)の連立方程式を解くことによって、計測された信号s(t)の同相成分の振幅Xの値と、直交振幅Yの値と、が提供される。これらのXとYの値から、(式8a)、および(式8b)は、例えば、(X
2+Y
2)
1/2と、Φ=Arctan(Y/X)とによって、aの値と、位相遅延Φの値とをもたらし、続いて、測定対象の信号s(t)の振幅Aは、aと、A
refの積として計算される。その結果、以下の説明は、演算ユニット3によって実行されるいくつかの代替方法である、厳密な分解方法、概算分解方法、および、フーリエ級数の位相値ψ
kに分解することによる方法、を提案することによって、
図3bに示した(式9)の連列方程式を解くことを焦点とする。
【0052】
〔厳密な解〕
図3bに表記したマトリックス表記に対応する、2つの振幅X、およびYを未知数とする、(式9)の連立方程式は、係数が取得チャンネル2によって提供された位相値ψ
kに依存するアフィン方程式系である。別の式に応じたkのそれぞれの値に対するこれらの係数、sin[α
k0+(Q/P)・ψ
k]、および−cos[α
k0+(Q/P)・ψ
k]は、演算ユニット3によって演算され、これにより、アフィン方程式系は、(式21)の連立方程式の2つからなるアフィン方程式系の行列反転、または、最小二乗分解法等の既知の方法で当業者によって厳密に解くことができる。行列反転法を用いた場合、(式9)の2つの方程式内で用いられたXとYの係数の2×2の行列が演算され、反転されて、反転された行列が、(式9)の2つの方程式の第2項のsin(ψ
k)に、XとYの値を得るために適用される。最小二乗分解法は、もっと正確であるが、(式9)の全ての方程式を用いる。
係数sin[α
k0+(Q/P)・ψ
k]と、係数−cos[α
k0+(Q/P)・ψ
k]とは、取得チャンネル2によって提供された位相値ψ
kに応じた変数であるため、方程式(式9)のXとYの係数を構成するsineと、cosineとの値の算出は、時間と、計算資源とを消費する。好ましくは、XとYとの値の結果に生じるエラーを限定するために、sineと、cosineとの関数を、それらの、少なくとも5次まで行った、有限展開(finite expansions)によって置き換えることができる。
【0053】
〔aの小さな値についての近似解〕
この方法は、基準信号r(t)の振幅A
refが、測定対象の信号s(t)の振幅Aよりも遥かに大きい、またはそのように調整できる場合に、用いることができる。換言すれば、a<<1であり、方程式(式6)から、位相値ψ
kがπよりも遥かに低く、よって、α
k0の値よりも遥かに低い。これらの条件に基づいて、方程式(式6)は、以下の(式10)となり、
【数24】
換言すれば、未知数XとYの関数として、以下の(式11)であり、
【数25】
これは、
図3cに表記した行列に対応する。
【0054】
この場合、アフィン方程式である方程式(式23)内のXとYとに対応する係数sin(α
k0)と、−cos(α
k0)とは、一定である。よって、これらは、事前に計算することができる。また、方程式(式23)の、どの2つの方程式から形成される2×2の行列であっても、事前に反転させることができ、反転行列は、演算ユニット3が直接的に利用可能とするために保存することができる。よって、振幅Xと、振幅Yとの値は、方程式(式23)の2つの方程式の第2項のψ
kに、この反転行列を適用することで簡単に算出することができる。このように、予め反転行列を保存しておくことは、最小二乗分解法でも用いることができる。
【0055】
〔フーリエ級数分解法〕
既に述べられたように、一連の位相値ψ
kは、1/F
cycを1期間とする周期的である。α
k0の連続する値も同様である。よって、位相値ψ
kをsin(α
k0),cos(α
k0),sin(2・α
k0),cos(2・α
k0),sin(3・α
k0),cos(3・α
k0)の線型結合と表現することにより(式9)の連立方程式を解こうとすることは、下記の(式12)を意味し、
【数26】
これは、
図4aに展開した表記に対応する。この表記は、位相値ψ
kを、α
k0の値に基づいて、フーリエ級数に分解したものである。よって、H
1pは、ψ
kの値と同相の基準の構成要素の振幅であり、H
1qは、ψ
kの値と直交する基準の構成要素の振幅であり、1よりも大きいiに対する係数H
ipと、H
iqとは、i次の調和成分の振幅である。
【0056】
しかしながら、方程式(式9)は、以下の(式13)のように表記することができる。
【数27】
【0057】
cos((Q/P)・ψ
k)と、sin((Q/P)・ψ
k)と、sin(ψ
k)とを、(Q/P)・ψ
kと、ψ
kとのフーリエ級数に展開するとともに、(式24)をψ
kについて転換し、続いて、全ての形式のsin
n(i・α
k0)と、cos
n(i・α
k0)とを、sin(n’・i・α
k0)と、cos(n’・i・α
k0)との形式の線形結合に変換することによって、sin(n・i・α
k0)と、cos(n・i・α
k0)との形式による0の線形結合が得られる。よって、この線形結合のそれぞれの因子は、0でなければならず、iが、Pより小さい、もしくはPに等しい0ではない自然数の変数の組み合わせである、未知数が係数H
ipと、係数H
iqとであるアフィン方程式系を導く。よって、ψ
kのフーリエ級数への分解の1次係数は、以下の(式14a)から(式14h)のように求められる。
【数28】
【数29】
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
【数34】
【数35】
【0058】
さらに、フーリエ級数分解の係数H
ipと、係数H
iqとは、取得チャンネル2から供給された位相値ψ
kから一般的な方法で算出することができる。しかしながら、H’
1p、および、H’
1qと表記される、係数H
ipと、係数H
iqとの近似値を、
図4bの1次行列を位相値ψ
k(Pが12である例が示された)に適用することによって、さらに早く算出することができる。このように算出されたH’
1p、および、H’
1qの値は、H
ipと、H
iqとの値として、直接用いられる。同じ単純化の条件下で、3次と、5次との調和した振幅の係数を算出するためには、変数Pは、H
1qとH
2p、H
2qおよびH
4pとH
4qの単純化された演算のため4の倍数であるのに加えて、3と、5との倍数でなければならない。このような演算の単純化を実行するために、Pは、よって、好適には60の倍数である。変数Pが、また12である場合には、
図4bの第2の行列関係は、H’
3pおよびH’
3qと表記された、係数H
3pと、係数H
3qとの近似値の算出を示す。
【0059】
取得チャンネル2によって供給されたこれらの位相値ψ
kから計算された位相値ψ
kのフーリエ分解の第1の係数H
ipおよびH
iqを、方程式(式14a)から(式14h)の表記に同一視することによって、振幅Xと、振幅Xとは、方程式(式14a)から(式14h)の幾つかを、下記の(式15a),(式15b)ように組み合わせることで、近似方式で得られる。
【数36】
【数37】
よって、Xの近似値は、単純に、フーリエ成分H
1p、H
3p、およびH
5pの3つの振幅の値だけを、一定化され、予め設定された結合因子と線形結合することで算出することができる。同様に、Yの近似値は、単純に、フーリエ成分H
1q、およびH
3qの2つの振幅の値だけを線型結合することで算出することができる。方程式(式27aと式27b)の組み合わせとして、第1の無視された項は、X・Y
2である。X・Y
2の項の代わりに、X
3の項を無視する、他の結合が、XとYの振幅の近似値を算出するために代わりに用いられてもよい。
【0060】
測定対象の信号s(t)の同相成分の振幅Xの値を、P位相値ψ
k間の回転を最初に適用するにことによって、直交振幅Yに対して最大にすることが可能であることを記しておく。このような回転は、位相遅延Φを減らすために、初期時間t=0をシフトすることになる。これは、H
ipのX・Y
2に残留する交差項を最小にする。
【0061】
図5は、共振回路200、もしくは、同等に、200と表記された一式の共振回路が、1つの励起信号E(t)に対する複数の応答を同時に生成する場合の
図1に対応する。このような場合は、例えば、共振回路、もしくは一式の共振回路200が、振動加速度計、または振動ジャイロスコープの一部である場合である。s
0(t)、s
1(t)、…、s
n(t)と表記される測定対象の信号のそれぞれは、励起信号E(t)に対する別の応答を構成し、個別の取得チャンネルがこれらの測定対象の信号のそれぞれに用意されている。よって、コンパレータ130、およびラッチレジスタ140と、可能であれば増幅器120と、を備えている取得チャンネル2
0は、測定対象の信号s
0(t)用とされている。
【0062】
同様に、コンパレータ131、およびラッチレジスタ141と、可能であれば増幅器121と、を備えている取得チャンネル2
1は、測定対象の信号s
1(t)用とされており、コンパレータ13n、およびラッチレジスタ14nと、可能であれば増幅器12nと、を備えている取得チャンネル2
nは、測定対象の信号s
n(t)用とされている。コンパレータ130,131,...,13nは、基準信号r(t)を信号形成ユニット111から並列に受信し、ラッチレジスタ140,141,...,14nは、基準信号r(t)の位相ψ(t)をサイクリックアキュムレータ103から並列に受信する。よって、合成ユニット1は、全ての取得チャンネル2
0,2
1,...,2
nによって共有される。演算ユニット3もまた、例えば、1または他の取得チャンネルから提供される位相値によって、連続する取得期間において、順番に動作することによって、全ての取得チャンネル2
0,2
1,...,2
nによって共有されていてもよい。よって、演算ユニット3は、全ての測定対象の信号の振幅、および位相遅延の値、つまり、測定対象の信号s
0(t)の振幅A
0、および位相遅延Φ
0、測定対象の信号s
1(t)の振幅A
1、および位相遅延Φ
1、…測定対象の信号s
n(t)の振幅A
n、および位相遅延Φ
n、を特定する。
【0063】
一式の共振回路200が加速度計である場合、それは少なくとも3つのビームから構成されている。これらのビームは、それぞれが慣性質量によって張力をかけられ、それぞれが他の軸とは異なる方向、例えば、3つの直交する方向、に配置されている。各ビームは、励起信号E(t)によって横方向に振動するように構成され、測定対象の信号s
1(t),s
2(t)およびs
3(t)は、3つのビームの横方向の振動による瞬間的な変位のそれぞれを特徴付けてもよい。そして、当業者は、それぞれが測定対象の信号s
1(t),s
2(t)およびs
3(t)の振幅および位相遅延の値である、A
1およびΦ
1と、A
2およびΦ
2と、A
3およびΦ
3とから、加速度の3つの構成要素をどのように特定するかを知っている。
【0064】
共振回路200がジャイロスコープである場合、少なくとも4つの、コリオリ力場を伴い得る固有モードを有する振動構造から構成されている。測定対象の信号s
1(t),s
2(t)およびs
3(t)は、これにより、1つの励起固有モードと、コリオリ力場によって励起固有モードと対になる3つの異なる励起固有モードとの結合を特徴付ける。励起信号E(t)は、励起固有モードに適用され、3つの他の振動固有モードに関連する瞬間的な変位の信号は、3つの測定対象の信号s
1(t),s
2(t)およびs
3(t)を構成する。そして、当業者は、それぞれが、3つの測定対象の信号s
1(t),s
2(t)およびs
3(t)の振幅および位相遅延の値である、A
1およびΦ
1と、A
2およびΦ
2と、A
3およびΦ
3とから、駆動回転の3つの構成要素をどのように特定するかを知っている。
【0065】
よって、測定対象の駆動加速度、もしくは、駆動回転は、加速度計、もしくはジャイロスコープを備えている飛行機、衛生、宇宙船等のような装置、もしくは車両の動きに固有のものであるという結果となり得る。