【文献】
Ankur Jain, Huikai Xie,A sigle-crystal silicon micromirror for large bi-directional 2D scanning applications,Sensors and Actuators A,2006年,vol 130,454-460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1アクチュエータ、前記第2アクチュエータ、前記第3アクチュエータ又は前記第4アクチュエータは、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に順に積層された、第1酸化物層及び第1金属層を有し、
前記第1枠部又は前記ステージは、前記第3方向に順に積層された、第2酸化物層、第2金属層及び第3酸化物層を有する、
請求項4乃至請求項6いずれか一項に記載の半導体装置。
前記第1アクチュエータ、前記第2アクチュエータ、前記第3アクチュエータ又は前記第4アクチュエータは、前記第1酸化物層と前記第1金属層の間に設けられ、前記第1酸化物層より前記第1方向又は前記第2方向における幅の狭い第4酸化物層をさらに備える請求項10又は請求項11記載の半導体装置。
前記第4酸化物層は、第1部分と、前記第1部分と前記第1金属層の間に設けられ前記第1部分より前記第1方向又は前記第2方向における幅の狭い第2部分を有する請求項12記載の半導体装置。
前記第1アクチュエータ、前記第2アクチュエータ、前記第3アクチュエータ及び前記第4アクチュエータは、圧電アクチュエータである請求項1乃至請求項9いずれか一項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。尚、図面中、同一又は類似の箇所には、同一又は類似の符号を付している。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の半導体装置100の模式図である。
【0009】
図1(a)は、本実施形態の半導体装置100の模式上面図である。
【0010】
本実施形態の半導体装置100は、MEMS技術を用いて形成されたスキャナー(光スキャナー)である。光スキャナーは、例えば、レーザー光等の光の走査に用いられる。
【0011】
ここで、x軸と、x軸に交差するy軸と、x軸及びy軸に交差するz軸と、を定義する。なお、本実施形態の「交差する」とは、「略直交する」ということを示している。また、x軸に平行な方向であるx方向は第1方向の一例、y軸に平行な方向であるy方向は第2方向の一例、z軸に平行な方向であるz方向は第3方向の一例である。
【0012】
第1アクチュエータ2は、矩形状の形状を有し、長辺2aがx方向に平行に配置されている。そして、後述するように、第1アクチュエータ2により、ステージ20はy軸周りに回動可能である。
【0013】
第2アクチュエータ4は、矩形状の形状を有し、長辺4aがx方向に平行に配置されている。そして、後述するように、第2アクチュエータ4により、ステージ20はy軸周りに回動可能である。
【0014】
第1アクチュエータ2は第13接続部96に接続されている。第2アクチュエータ4は第14接続部98に接続されている。例えば第13接続部96及び第14接続部98は、
図1において図示しないシリコン(Si)基板等の基板に接続されている。そして、半導体装置100は、
図1において図示しない基板上に支持されている。第13接続部96は、第1アクチュエータ2の一端と第1アクチュエータ2の他端の中間付近に、第1アクチュエータ2と隣接して設けられていることが好ましい。また、第14接続部98は、第2アクチュエータ4の一端と第2アクチュエータ4の他端の中間付近に、第2アクチュエータ4と隣接して設けられていることが好ましい。
【0015】
第1枠部6は、第1アクチュエータ2と第2アクチュエータ4の間に設けられている。第1枠部6は、例えばxy面に平行に設けられた、矩形の形状を有する枠状の部材である。第1枠部6がxy面に平行に設けられていると、構造が簡易になるため好ましい。第1枠部6の一辺は、例えばx軸に平行に設けられている。また、第1枠部6の他の一辺は、y軸に平行に設けられている。しかし第1枠部6の形状及び配置は、これに限定されるものではない。
【0016】
第1接続部8は、第1アクチュエータ2と第1枠部6を接続している。第2接続部10は、第1アクチュエータ2と第1枠部6を、第1接続部8と異なる位置で接続している。より具体的には、第1アクチュエータ2の一端が第1接続部8により、また第1アクチュエータ2の他端が第2接続部10により、
図1(a)において図面の左側に示された第1枠部6のx軸に平行な一辺と接続されていることが、スキャナーの可動域を大きく出来るため、好ましい。
【0017】
また、第1接続部8と第2接続部10は、第13接続部96の中心を通りyz面に平行な面を基準に、対称に設けられていることが好ましい。この場合は、第1アクチュエータ2の一端に第1接続部8が接続されていなくても良く、第1アクチュエータ2の他端に第2接続部10が接続されていなくても良い。
【0018】
第3接続部12は、第2アクチュエータ4と第1枠部6を接続している。第4接続部14は、第2アクチュエータ4と第1枠部6を、第3接続部12とは異なる位置で接続している。より具体的には、第2アクチュエータ4の一端が第3接続部12により、また第2アクチュエータ4の他端が第4接続部14により、
図1(a)において図面の右側に示された第1枠部6のx軸に平行な一辺と接続されていることが、スキャナーの可動域を大きく出来るため、好ましい。
【0019】
また、第3接続部12と第4接続部14は、第14接続部98の中心を通りyz面に平行な面を基準に、対称に設けられていることが好ましい。さらに、この場合は、第2アクチュエータ4の一端に第3接続部12が接続されていなくても良く、第2アクチュエータ4の他端に第4接続部14が接続されていなくても良い。
【0020】
第3アクチュエータ16は、第1枠部6の内側に設けられている。第3アクチュエータ16は、矩形状の形状を有し、長辺16aがy方向に平行に配置されている。そして、後述するように、第3アクチュエータ16により、ステージ20はx軸周りに回動可能である。
【0021】
第4アクチュエータ18は、第1枠部6の内側に設けられている。第4アクチュエータ18は、矩形状の形状を有し、長辺18aがy方向に平行に配置されている。そして、後述するように、第4アクチュエータ18により、ステージ20はx軸周りに回動可能である。
【0022】
ステージ20は、第3アクチュエータ16と第4アクチュエータ18の間に設けられている。ステージ20は、例えば後述する光反射部(ミラー)94や、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)等のデバイスを有する。ステージ20の面20aは、例えばxy面に平行である。
【0023】
第5接続部22は、第3アクチュエータ16とステージ20を接続している。第6接続部24は、第3アクチュエータ16とステージ20を、第5接続部22とは異なる位置で接続している。より具体的には、第3アクチュエータ16の一端が第5接続部22により、また第3アクチュエータ16の他端が第6接続部24により、ステージ20と接続されていることが好ましい。
【0024】
第7接続部26は、第4アクチュエータ18とステージ20を接続している。第8接続部28は、第4アクチュエータ18とステージ20を、第7接続部26とは異なる位置で接続している。より具体的には、第4アクチュエータ18の一端が第7接続部26により、また第4アクチュエータ18の他端が第8接続部28により、ステージ20と接続されていることが好ましい。
【0025】
第9接続部30は、第3アクチュエータ16と第1枠部6を接続している。第9接続部30は、第3アクチュエータ16の一端と第3アクチュエータ16の他端の中間付近に、第3アクチュエータ16と隣接して設けられ、第3アクチュエータ16と第1枠部6を接続していることが好ましい。
【0026】
また、第5接続部22と第6接続部24は、第9接続部30の中心を通りxz面に平行な面を基準に対称に設けられていることが好ましい。さらに、この場合は、第3アクチュエータ16の一端に第5接続部22が接続されていなくても良く、第3アクチュエータ16の他端に第6接続部24が接続されていなくても良い。
【0027】
第10接続部32は、第4アクチュエータ18と第1枠部6を接続している。第10接続部32は、第4アクチュエータ18の一端と第4アクチュエータ18の他端の中間付近に、第4アクチュエータ18と隣接して設けられ、第4アクチュエータ18と第1枠部6を接続していることが好ましい。
【0028】
また、第7接続部26と第8接続部28は、第10接続部32の中心を通りxz面に平行な面を基準に対称に設けられていることが好ましい。さらに、この場合は、第4アクチュエータ18の一端に第7接続部26が接続されていなくても良く、第4アクチュエータ18の他端に第8接続部28が接続されていなくても良い。
【0029】
なお、本明細書の記載において「対称」とは、完全に互いに対応してつりあっていなくてもよく、製造誤差の程度で互いにずれが生じていてもかまわないものとする。
【0030】
図1(b)は、
図1(a)のA−A’断面における、本実施形態の半導体装置100の模式断面図である。
図1(c)及び
図1(d)は、
図1(b)における第6アクチュエータ36及び第8アクチュエータ40の断面を拡大して示した模式断面図である。
【0031】
図2は、本実施形態の半導体装置100における、アクチュエータ及びその周辺の模式上面図である。
図2(a)は、第1アクチュエータ2及びその周辺の構造を示す模式上面図である。
図2(b)は、第3アクチュエータ16及びその周辺の構造を示す模式上面図である。
【0032】
図1(b)、
図1(c)、
図1(d)及び
図2を用いて、本実施形態のアクチュエータの構造を説明する。
【0033】
第1アクチュエータ2は、x方向に互いに隣接して設けられる第5アクチュエータ34と第6アクチュエータ36を有する。第5アクチュエータ34は、
図1(a)において図面の上側に設けられている。第6アクチュエータ36は、
図1(a)において図面の下側に設けられている。例えば、第5アクチュエータ34は、第13接続部96と第1接続部8の間に設けられている。また、第6アクチュエータ36は、第13接続部96と第2接続部10の間に設けられている。
【0034】
例えば、
図2(a)に示すように、第5アクチュエータ34は、xy面に平行な面内において蛇行した形状の、第1金属層64aを有している。第1金属層64aは、y方向に平行な部分よりも長い、x方向に平行な部分を有している。第6アクチュエータ36は、xy面に平行な面内において蛇行した形状の、第1金属層64aとは電気的に接続されない第1金属層64bを有している。第1金属層64bは、y方向に平行な部分よりも長い、x方向に平行な部分を有している。
【0035】
例えば、
図1(c)に示すように、
図1(a)のA−A’断面においては、第6アクチュエータ36は、z方向に順に積層された、第1酸化物層60、第4酸化物層70及び第1金属層64を有している。言い換えると、第4酸化物層70は、第1酸化物層60と第1金属層64の間に設けられている。そして、第4酸化物層70の幅は、第1酸化物層60の幅よりも狭い。なお、第5アクチュエータ34の断面も、同様の形状を有している。そのため、第5アクチュエータ34の断面の形状については、説明を省略する。
【0036】
例えば、第1金属層64aには図示しない配線が接続されている。また、第1金属層64bには、例えば、第1金属層64aに接続された配線とは異なる、図示しない配線が接続されている。
【0037】
上述の図示しない配線を用いて、第1金属層64bに電流が流される場合を考える。このとき、第1金属層64bがジュール熱により発熱する。ここで、第1金属層64bは、上述の通り、y方向よりもx方向に長い部分を有している。そのため、発熱による熱膨張の大きさは、y方向よりもx方向に大きい。なお蛇行した形状を有している理由は、ジュール熱による発熱を大きくするため、第1金属層64bを流れる電流の抵抗を大きくすることが望ましいためである。
【0038】
一方、発熱による第1酸化物層60の熱膨張の大きさは、第1金属層64bの熱膨張の大きさに比べて小さい。そのため第6アクチュエータ36については、発熱により、
図1(a)において第2接続部10に隣接する部分が、図面の奥側に変形することとなる。これに伴い、第1枠部6の第2接続部10に接続されている部分が図面の奥側に変形する。これに伴い、第10接続部32、第4アクチュエータ18及び第7接続部26が変形する。結果として、ステージ20の、
図1(a)における左下の部分が、図面の奥側に変形する。このように、第6アクチュエータ36により、ステージ20はy軸周りに回動可能である。一方、第1金属層64bに電流が流されなくなると、発熱が止まるため、形状も元に戻る。
【0039】
次に、第1金属層64aに電流が流される場合を考える。このとき、第1金属層64aがジュール熱により発熱する。ここで、第1金属層64aは、上述の通り、y方向よりもx方向に長い部分を有している。そのため、発熱による熱膨張の大きさは、y方向よりもx方向に大きい。
【0040】
一方、発熱による第1酸化物層60の熱膨張の大きさは、第1金属層64aの熱膨張の大きさに比べて小さい。そのため第5アクチュエータ34については、発熱により、
図1(a)において第1接続部8に隣接する部分が、図面の奥側に変形することとなる。これに伴い、第1枠部6の第1接続部8に接続されている部分が図面の奥側に変形する。これに伴い第9接続部30、第3アクチュエータ16及び第5接続部22が変形する。結果として、ステージ20の、
図1(a)における左上の部分が、図面の奥側に変形する。このように、第5アクチュエータ34により、ステージ20はy軸周りに回動可能である。一方、第1金属層64aに電流が流されなくなると、発熱が止まるため、形状も元に戻る。
【0041】
第2アクチュエータ4は、x方向に互いに隣接して設けられる第7アクチュエータ38と第8アクチュエータ40を有する。第7アクチュエータ38は、
図1(a)において図面の上側に設けられている。第8アクチュエータ40は、
図1(a)において図面の下側に設けられている。例えば、第7アクチュエータ38は、第14接続部98と第3接続部12の間に設けられている。また、第8アクチュエータ40は、第14接続部98と第4接続部14の間に設けられている。
【0042】
例えば、第7アクチュエータ38の形状は、第5アクチュエータ34の形状と同様である。また、第8アクチュエータ40の形状は、第6アクチュエータ36の形状と同様である。
【0043】
第7アクチュエータ38の第1金属層64に接続された図示しない配線を用いて、第7アクチュエータの第1金属層64に電流が流される場合を考える。このとき、第1金属層64がジュール熱により発熱する。ここで、第1金属層64は、上述の通り、y方向よりもx方向に長い部分を有している。そのため、発熱による熱膨張の大きさは、y方向よりもx方向に大きい。
【0044】
一方、発熱による第1酸化物層60の熱膨張の大きさは、第1金属層64の熱膨張の大きさに比べて小さい。そのため第7アクチュエータ38については、発熱により、
図1(a)において第3接続部12に隣接する部分が、図面の奥側に変形することとなる。これに伴い、第1枠部6の第3接続部12に接続されている部分が図面の奥側に変形する。これに伴い第9接続部30、第3アクチュエータ16及び第6接続部24が変形する。結果として、ステージ20の、
図1(a)における右上の部分が、図面の奥側に変形する。このように、第7アクチュエータ38により、ステージ20はy軸周りに回動可能である。一方、第1金属層64に電流が流されなくなると、発熱が止まるため、形状も元に戻る。
【0045】
次に、第8アクチュエータ40の第1金属層64に接続された図示しない配線を用いて、第8アクチュエータの第1金属層64に電流が流される場合を考える。このとき、第1金属層64がジュール熱により発熱する。ここで、第1金属層64は、上述の通り、y方向よりもx方向に長い部分を有している。そのため、発熱による熱膨張の大きさは、y方向よりもx方向に大きい。
【0046】
一方、発熱による第1酸化物層60の熱膨張の大きさは、第1金属層64の熱膨張の大きさに比べて小さい。そのため第8アクチュエータ40については、発熱により、
図1(a)において第4接続部14に隣接する部分が、図面の奥側に変形することとなる。これに伴い、第1枠部6の第4接続部14に接続されている部分が図面の奥側に変形する。これに伴い第10接続部32、第4アクチュエータ18及び第8接続部28が変形する。結果として、ステージ20の、
図1(a)における右下の部分が、図面の奥側に変形する。このように、第8アクチュエータ40により、ステージ20はy軸周りに回動可能である。一方、第1金属層64に電流が流されなくなると、発熱が止まるため、形状も元に戻る。
【0047】
第3アクチュエータ16は、y方向に互いに隣接して設けられる第9アクチュエータ42と第10アクチュエータ44を有する。第9アクチュエータ42は、
図1(a)において図面の左側に設けられている。第10アクチュエータ44は、
図1(a)において図面の下側に設けられている。例えば、第9アクチュエータ42は、第9接続部30と第5接続部22の間に設けられている。また、第10アクチュエータ44は、第9接続部30と第6接続部24の間に設けられている。
【0048】
例えば、
図2(a)に示すように、第9アクチュエータ42は、xy面に平行な面内において蛇行した形状の、第1金属層64cを有している。第1金属層64cは、x方向に平行な部分よりも長い、y方向に平行な部分を有している。第10アクチュエータ44は、xy面に平行な面内において蛇行した形状の、第1金属層64cとは電気的に接続されない第1金属層64dを有している。第1金属層64dは、x方向に平行な部分よりも長い、y方向に平行な部分を有している。なお、第9アクチュエータ42の断面構造及び第10アクチュエータ44の断面構造は、第5アクチュエータ34、第6アクチュエータ36、第7アクチュエータ38及び第8アクチュエータ40と同様であるため、記載を省略する。
【0049】
例えば、第1金属層64cには図示しない配線が接続されている。また、第1金属層64dには、例えば、第1金属層64cに接続された配線とは異なる、図示しない配線が接続されている。
【0050】
上述の図示しない配線を用いて、第1金属層64cに電流が流される場合を考える。このとき、第1金属層64cがジュール熱により発熱する。ここで、第1金属層64cは、上述の通り、x方向よりもy方向に長い部分を有している。そのため、発熱による熱膨張の大きさは、x方向よりもy方向に大きい。
【0051】
一方、発熱による第1酸化物層60の熱膨張の大きさは、第1金属層64cの熱膨張の大きさに比べて小さい。そのため第9アクチュエータ42については、発熱により、
図1(a)において第5接続部22に隣接する部分が、図面の奥側に変形することとなる。結果として、ステージ20の、
図1(a)における左上の部分が、図面の奥側に変形する。このように、第9アクチュエータ42により、ステージ20はx軸周りに回動可能である。一方、第1金属層64cに電流が流されなくなると、発熱が止まるため、形状も元に戻る。
【0052】
次に、第1金属層64dに電流が流される場合を考える。このとき、第1金属層64dがジュール熱により発熱する。ここで、第1金属層64dは、上述の通り、x方向よりもy方向に長い部分を有している。そのため、発熱による熱膨張の大きさは、x方向よりもy方向に大きい。
【0053】
一方、発熱による第1酸化物層60の熱膨張の大きさは、第1金属層64dの熱膨張の大きさに比べて小さい。そのため第10アクチュエータ44については、発熱により、
図1(a)において第6接続部24に隣接する部分が、図面の奥側に変形することとなる。結果として、ステージ20の、
図1(a)における右上の部分が、図面の奥側に変形する。このように、第10アクチュエータ44により、ステージ20はx軸周りに回動可能である。一方、第1金属層64dに電流が流されなくなると、発熱が止まるため、形状も元に戻る。
【0054】
第4アクチュエータ18は、y方向に互いに隣接して設けられる第11アクチュエータ46と第12アクチュエータ48を有する。第11アクチュエータ46は、
図1(a)において図面の左側に設けられている。第10アクチュエータ44は、
図1(a)において図面の右側に設けられている。例えば、第11アクチュエータ46は、第10接続部32と第7接続部26の間に設けられている。また、第12アクチュエータ48は、第10接続部32と第8接続部28の間に設けられている。
【0055】
例えば、第11アクチュエータ46の形状は、第9アクチュエータ42の形状と同様である。また、第12アクチュエータ48の形状は、第10アクチュエータ44の形状と同様である。
【0056】
第11アクチュエータ46の第1金属層64に接続された図示しない配線を用いて、第11アクチュエータの第1金属層64に電流が流される場合を考える。このとき、第1金属層64がジュール熱により発熱する。ここで、第1金属層64は、上述の通り、x方向よりもy方向に長い部分を有している。そのため、発熱による熱膨張の大きさは、x方向よりもy方向に大きい。
【0057】
一方、発熱による第1酸化物層60の熱膨張の大きさは、第1金属層64の熱膨張の大きさに比べて小さい。そのため第11アクチュエータ46については、発熱により、
図1(a)において第7接続部26に隣接する部分が、図面の奥側に変形することとなる。結果として、ステージ20の、
図1(a)における左下の部分が、図面の奥側に変形する。このように、第11アクチュエータ46により、ステージ20はx軸周りに回動可能である。一方、第1金属層64に電流が流されなくなると、発熱が止まるため、形状も元に戻る。
【0058】
次に、第12アクチュエータ48の第1金属層64に接続された図示しない配線を用いて、第12アクチュエータの第1金属層64に電流が流される場合を考える。このとき、第1金属層64がジュール熱により発熱する。ここで、第1金属層64は、上述の通り、x方向よりもy方向に長い部分を有している。そのため、発熱による熱膨張の大きさは、x方向よりもy方向に大きい。
【0059】
一方、発熱による第1酸化物層60の熱膨張の大きさは、第1金属層64の熱膨張の大きさに比べて小さい。そのため第12アクチュエータ48については、発熱により、
図1(a)において第8接続部28に隣接する部分が、図面の奥側に変形することとなる。結果として、ステージ20の、
図1(a)における右下の部分が、図面の奥側に変形する。このように、第12アクチュエータ48により、ステージ20はx軸周りに回動可能である。一方、第1金属層64に電流が流されなくなると、発熱が止まるため、形状も元に戻る。
【0060】
第1アクチュエータ2(第5アクチュエータ34及び第6アクチュエータ36)及び第2アクチュエータ(第7アクチュエータ38及び第8アクチュエータ40)のyz面に平行な断面において、第1金属層64は複数設けられていることが好ましい。複数の第1金属層64は、y方向に並列して第1酸化物層60と積層されていることが好ましい。そして、複数の第1金属層64と第1酸化物層60の間に、それぞれ第4酸化物層70が設けられていることが好ましい。さらに第4酸化物層70は、第1部分72aと、第1部分72aと第1酸化物層60の間に設けられ第1部分72aよりy方向の幅が狭い第2部分72bを有する事が好ましい。なお、例えば、第1部分72aと第1酸化物層60のy方向の幅は等しくてもかまわない。また、例えば、第1部分72aのy方向の幅は第1酸化物層60のy方向の幅より狭くても構わない。また、第3アクチュエータ16(第9アクチュエータ42、第10アクチュエータ44)、第4アクチュエータ18(第11アクチュエータ46、第12アクチュエータ48)についても同様である。
【0061】
一方、
図1(b)に示されるように、第1枠部6及びステージ20は、z方向に順に積層された、第2酸化物層62、第2金属層66及び第3酸化物層68を有する。言い換えると、第2金属層66は第2酸化物層62と第3酸化物層68により挟まれている。そのため、第2金属層66が発熱により膨脹しようとしたとしても、第2酸化物層62及び第3酸化物層68により固定されて、膨脹することは困難である。同様に、第1接続部8、第2接続部10、第3接続部12、第4接続部14、第5接続部22、第6接続部24、第7接続部26、第8接続部28、第9接続部30及び第10接続部32は、同様の積層構造(第2酸化物層62、第2金属層66及び第3酸化物層68)を有しているため、発熱により膨脹することは困難である。
【0062】
結果として、熱が加わることにより、アクチュエータのみが大きく変形するため、ステージ20が変形することとなる。
【0063】
言い換えると、本実施形態の半導体装置100は、第1アクチュエータ2と、第2アクチュエータ4と、第1アクチュエータ2と第2アクチュエータ4の間に設けられた第1枠部6と、第1枠部6の内側に設けられた第3アクチュエータ16と、第1枠部6の内側に設けられた第4アクチュエータ18と、第3アクチュエータ16と第4アクチュエータ18の間に設けられたステージ20と、を備え、第1アクチュエータ2、第2アクチュエータ4、第3アクチュエータ16又は第4アクチュエータ18から生じた発熱によりステージ20が回動し、発熱の一部は、第1枠部6に伝わる、半導体装置である。そして、第1枠部6に伝わった発熱の一部は、発熱を生じない、第1アクチュエータ2、第2アクチュエータ4、第3アクチュエータ16又は第4アクチュエータ18に伝わる。
【0064】
上述のように第2金属層66の形状は、熱膨張による伸び縮みの制御が求められない。そのため、製造を容易にするために、アクチュエータに用いられている第1金属層64の形状と異なり、
図1(a)に示したような単純な層状でかまわない。なお、第2金属層66の形状は、勿論これに限定されるものではない。
【0065】
第1酸化物層60、第2酸化物層62、第3酸化物層68及び第4酸化物層70は、例えばSiO
x(シリコン酸化物)を含むことが、特に基板90としてSi基板を用いる場合、SiO
xは基板90の一部の酸化により容易に形成できるため、好ましい。
【0066】
第1金属層64、第2金属層66は、Ag(銀)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)等を含むことが、作成が容易であるため好ましい。特にAlを含む場合、基板90としてのSi基板上にAlの金属層を形成することは容易であるため好ましい。
【0067】
例えば第2金属層66がAl等を含む場合には、第2金属層66によりレーザー光等の光が反射される。そのため、第2金属層66を光反射部(ミラー)94として用いることが可能である。なお、例えばステージ20上に別途光反射部を形成しても良い。
【0068】
図3は、本実施形態の半導体装置の製造方法における製造途中の半導体装置の模式断面図である。なお以下では、基板90としてSi基板を用いた例を記載する。
【0069】
まず、基板90の上に、例えばLOCOS(Local Oxidation of Silocon)法により、SiO
xを含む酸化物層80を形成する。次に、例えばポリシリコンを含むストッパ88を、酸化物層80の上の一部に形成する(
図3(a))。なお、ストッパ88は、半導体装置100においてアクチュエータの部分に形成される。
【0070】
次に、酸化物層80及びストッパ88の上に、例えばTEOS(TetraEthOxySilane)膜又はBPSG(Boro Phospho Silicate Glass)膜である酸化物層82を形成する(
図3(b))。酸化物層80及び酸化物層82は、半導体装置100において第1酸化物層60、第2酸化物層62及び第4酸化物層70を構成する。
【0071】
次に、酸化物層82の上の一部に、例えばAlを含む金属層84を形成する。金属層84は、第1金属層64及び第2金属層66になる金属層である。次に、酸化物層82及び金属層84の上に、例えばTEOS膜である酸化物層86を形成し、表面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化する(
図3(c))。酸化物層86は、半導体装置100において第3酸化物層68を構成する。
【0072】
次に、酸化物層80、酸化物層82及び酸化物層86の一部を、例えばエッチングにより除去する(
図3(d))。これにより、接続部(第1接続部8、第2接続部10、第3接続部12、第4接続部14、第5接続部22、第6接続部24、第7接続部26、第8接続部28、第9接続部30、第10接続部32)、第1枠部6、ステージ20、第13接続部96及び第14接続部98が形成される。なお、アクチュエータとなる部分については、ストッパ88が設けられている。そのため、ストッパ88の下に配置された酸化物層80が除去されない。
【0073】
次に、ストッパ88、及び半導体装置100を構成する部分の下に位置する基板90の一部を、例えばウェットエッチングによりまとめて除去する(
図3(e))。これにより、アクチュエータ(第1アクチュエータ2、第2アクチュエータ4、第3アクチュエータ16及び第4アクチュエータ18)が形成される。ここで、基板90がSi基板であり、またストッパ88がポリシリコンを含む場合には、どちらも同じ材料であるため、同様のプロセスにおいて除去することが可能である。このようにして、実施形態の半導体装置100を得る。
【0074】
次に、本実施形態の半導体装置100の作用を記載する。
【0075】
本実施形態の半導体装置により、高性能な半導体装置の提供が可能となる。
【0076】
熱アクチュエータを用いたスキャナーにおいては、静電アクチュエータに求められる真空空間や、電磁アクチュエータに求められる磁石を用いなくとも良いため、スキャナーの小型化が可能となる。
【0077】
一方、スキャナー内の熱伝導に時間がかかるためスキャナーの動作速度を確保することが問題となり得る。しかし、MEMS技術により製造されたスキャナーは当然のことながら小型であるため、短い時間でスキャナー内を熱が伝導する。そのため、動作速度の問題が生じにくい。
【0078】
しかし、熱アクチュエータをスキャナーに用いる場合には、スキャナー内において、どのように熱分離を行うかが問題であった。ここで熱分離とは、スキャナー内において熱を伝導させたい場所に対してどのように熱を伝導させ、熱を伝導させたくない場所に対してどのように熱伝導を抑制するか、ということを意味している。
【0079】
本実施形態の半導体装置100は、第1枠部6を備えている。そのため、x軸周りに駆動させるためのアクチュエータに加わる熱と、y軸周りに駆動させるためのアクチュエータに加わる熱の熱分離がより良く行われる。さらに、x軸周りに駆動させるためのアクチュエータに加わる熱と、y軸周りに駆動させるためのアクチュエータに加わる熱のバランスを取ることが出来る。そのため、比較的簡易な構造で制御性が高く、性能が高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0080】
また、第1アクチュエータ2と第1枠部6は、第1接続部8により接続されている。さらに、第1アクチュエータ2と第1枠部6は、第2接続部10により、第1接続部8とは異なる位置で接続されている。そのため、一箇所で接続する場合と比較して、第1アクチュエータ2から発生する熱が、より均等に第1枠部6で保持される。結果として、余剰の熱が第1枠部6を介して第3アクチュエータ16及び第4アクチュエータ18に伝わりづらくなる。そのため、比較的簡易な構造で制御性が高く、性能が高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0081】
また、第2アクチュエータ4と第1枠部6は、第3接続部12により接続されている。さらに、第2アクチュエータ4と第1枠部6は、第4接続部14により、第3接続部12とは異なる位置で接続されている。そのため、一箇所で接続する場合と比較して、第2アクチュエータ4から発生する熱が、より均等に第1枠部6で保持される。結果として、余剰の熱が第1枠部6を介して第3アクチュエータ16及び第4アクチュエータ18に伝わりづらくなる。そのため、比較的簡易な構造で制御性が高く、性能が高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0082】
また、第3アクチュエータ16とステージ20は、第5接続部22により接続されている。さらに、第3アクチュエータ16とステージ20は、第6接続部24により、第5接続部22とは異なる位置で接続されている。これにより、第3アクチュエータ16から発生した熱が、より均等にステージ20に伝わりやすくなる。そのため、一箇所で接続する場合と比較して、余剰の熱が第1枠部6を介して第1アクチュエータ2及び第2アクチュエータ4に伝わりづらくなる。そのため、比較的簡易な構造で制御性の高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0083】
また、第4アクチュエータ18とステージ20は、第7接続部26により接続されている。さらに、第4アクチュエータ18とステージ20は、第8接続部28により、第7接続部26とは異なる位置で接続されている。これにより、第4アクチュエータ18から発生した熱が、より均等にステージ20に伝わりやすくなる。そのため、一箇所で接続する場合と比較して、余剰の熱が第1枠部6を介して第1アクチュエータ2及び第2アクチュエータ4に伝わりづらくなる。そのため、比較的簡易な構造で制御性の高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0084】
また、第13接続部96は、第1アクチュエータ2の一端と第1アクチュエータ2の他端の中間付近に、第1アクチュエータと隣接して設けられている。これにより、第5アクチュエータ34に印加された熱が第13接続部96に逃げる量と、第6アクチュエータ36に印加された熱が第13接続部96に逃げる量を等しくすることが容易になる。そのため、第5アクチュエータ34に加わる熱によりステージ20が回動する距離と、第6アクチュエータ36に加わる熱によりステージ20が回動する距離を等しくすることが容易になる。結果として、比較的簡易な構造で制御性が高く、性能が高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0085】
また、第14接続部98は、第2アクチュエータ4の一端と第2アクチュエータ4の他端の中間付近に、第2アクチュエータ4と隣接して設けられている。これにより、第7アクチュエータ38に印加された熱が第14接続部98に逃げる量と、第8アクチュエータ40に印加された熱が第14接続部98に逃げる量を等しくすることが容易になる、そのため、第7アクチュエータ38に加わる熱によりステージ20が回動する距離と、第8アクチュエータ40に加わる熱によりステージ20が回動する距離を等しくすることが容易になる。結果として、比較的簡易な構造で制御性が高く、性能が高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0086】
また、第9接続部30が、第3アクチュエータ16の一端と第3アクチュエータ16の他端の中間付近に、第3アクチュエータ16と隣接して設けられ、第3アクチュエータ16と第1枠部6を接続している。このため、第1アクチュエータ2の熱が第3アクチュエータ16に伝わる際に第1接続部8、第1枠部6及び第9接続部30を移動する距離と、第2アクチュエータ4の熱が第3アクチュエータ16に伝わる際に第3接続部12、第1枠部6及び第9接続部30を移動する距離を、どちらも長く取ることが出来る。そのため、第1アクチュエータ2及び第2アクチュエータ4において発生する熱が、第3アクチュエータ16に伝わりづらくなる。よって、比較的簡易な構造で制御性の高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0087】
また、第10接続部32が、第4アクチュエータ18の一端と第4アクチュエータ18の他端の中間付近に、第4アクチュエータ18と隣接して設けられ、第4アクチュエータ18と第1枠部6を接続している。このため、第1アクチュエータ2から発生した熱が第4アクチュエータ18に伝わる際に第2接続部10、第1枠部6及び第10接続部32を移動する距離と、第2アクチュエータ4から発生した熱が第4アクチュエータ18に伝わる際に第4接続部14、第1枠部6及び第10接続部32を移動する距離を、どちらも長く取ることが出来る。そのため、第1アクチュエータ2及び第2アクチュエータ4において発生する熱が、第4アクチュエータ18に伝わりづらくなる。よって、比較的簡易な構造で制御性の高い半導体装置(スキャナー)の提供が可能となる。
【0088】
第1接続部8が第1アクチュエータ2の一端と第1枠部6を接続し、第2接続部10が第1アクチュエータ2の他端と第1枠部6を接続する場合、言い換えると、アクチュエータの端と第1枠部6が接続されている場合、第1アクチュエータ2によってステージ20が変形する範囲を大きくすることが出来る。
【0089】
第3接続部12が第2アクチュエータ4の一端と第1枠部6を接続し、第4接続部14が第2アクチュエータ4の他端と第1枠部6を接続する場合、言い換えると、アクチュエータの端と第1枠部6が接続されている場合、第2アクチュエータ4によってステージ20が変形する範囲を大きくすることが出来る。
【0090】
第5接続部22が第3アクチュエータ16の一端とステージ20を接続し、第6接続部24が第3アクチュエータ16の他端とステージ20を接続する場合、言い換えると、アクチュエータの端とステージ20が接続されている場合、第3アクチュエータ16によってステージ20が変形する範囲を大きくすることが出来る。
【0091】
第7接続部26が第4アクチュエータ18の一端とステージ20を接続し、第8接続部28が第4アクチュエータ18の他端とステージ20を接続する場合、言い換えると、アクチュエータの端とステージ20が接続されている場合、第4アクチュエータ18によってステージ20が変形する範囲を大きくすることが出来る。
【0092】
第1接続部8と第2接続部10は、第13接続部96の中心を通りyz面に平行な面を軸に対称に設けられていることが好ましい。これは、第5アクチュエータ34から第1接続部8を経由して第1枠部6に伝達される熱及びその熱が伝達される速度と、第6アクチュエータ36から第2接続部10を経由して第1枠部6に伝達される熱及びその熱が伝達される速度を等しくするためである。
【0093】
第3接続部12と第4接続部14は、第14接続部98の中心を通りyz面に平行な面を軸に対称に設けられていることが好ましい。これは、第7アクチュエータ38から第3接続部12を経由して第1枠部6に伝達される熱及びその熱が伝達される速度と、第8アクチュエータ40から第4接続部14を経由して第1枠部6に伝達される熱及びその熱が伝達される速度を等しくするためである。
【0094】
第5接続部22と第6接続部24は、第9接続部30の中心を通りxz面に平行な面を基準に対称に設けられていることが好ましい。これは、第9アクチュエータ42から第5接続部22を経由してステージ20に伝達される熱及びその熱が伝達される速度と、第10アクチュエータ44から第6接続部24を経由して第1枠部6に伝達される熱及びその熱が伝達される速度を等しくするためである。
【0095】
第7接続部26と第8接続部28は、第10接続部32の中心を通りxz面に平行な面を基準に対称に設けられていることが好ましい。これは、第11アクチュエータ46から第7接続部26を経由してステージ20に伝達される熱及びその熱が伝達される速度と、第12アクチュエータ48から第7接続部26を経由して第1枠部6に伝達される熱及びその熱が伝達される速度を等しくするためである。
【0096】
第1アクチュエータ2、第2アクチュエータ4、第3アクチュエータ16及び第4アクチュエータ18は、z方向に順に積層された第1酸化物層60及び第1金属層64を有している。第1金属層64の熱による伸び縮みにより簡易な構造でアクチュエータとしての機能が得られるものである。
【0097】
一方、接続部(第1接続部8、第2接続部10、第3接続部12、第4接続部14、第5接続部22、第6接続部24、第7接続部26、第8接続部28、第9接続部30、第10接続部32)、第1枠部6、ステージ20、第13接続部96及び第14接続部98は、z方向に順に積層された第2酸化物層62、第2金属層66及び第3酸化物層68を有している。第2金属層66の熱による伸び縮みは第2酸化物層62及び第3酸化物層68により抑制されるため、簡易な構造で熱的に安定した構造物が得られる。
【0098】
図5は、本実施形態の半導体装置100において、アクチュエータの断面の例を示した模式図である。
図5(a)は本実施形態のアクチュエータの断面の例であり、
図5(b)は比較形態となるアクチュエータの断面の例である。
【0099】
第1酸化物層60は、
図5(b)に示すような、酸化物層60a、60b及び60cのように分離しているよりも、
図5(a)に示すように、一体として形成された方が良い。
図5(b)の場合、第1金属層64で個別に酸化物層60a、60b及び60cをz方向に押すと、酸化物層60a、60b及び60cそれぞれのz方向における移動距離が異なる場合が生じ得るため、安定した移動距離を得ることが難しくなる。これに対して、
図5(a)のように、一体であれば、第1酸化物層60全体としてより安定にz方向に押されることになる。
【0100】
図5(a)のような、一体である第1酸化物層60を得るためには、
図3(c)のように、ストッパ88を設けて、ストッパ88と基板90の酸化物層80が除去されないようにすることが好ましい。これにより、ストッパ88を除去した後には、第1酸化物層60より幅の狭い第4酸化物層70が設けられることになる。さらに、第4酸化物層70には、第1部分72aと、第1部分72aと第1酸化物層60の間に設けられ第1部分72aより幅が狭い第2部分72bが設けられる。
【0101】
第1アクチュエータ2が、x方向に互いに隣接して設けられる第5アクチュエータ34と第6アクチュエータ36を有することにより、例えばステージ20の動作について、ステージの図面における上半分側と下半分側で独立した制御を行うことが可能となる。そのため、より精密なステージ20の制御が可能となる。
【0102】
なお、第2アクチュエータ4が、x方向に互いに隣接して設けられる第7アクチュエータ38と第8アクチュエータ40を有し、第3アクチュエータ16が、y方向に互いに隣接して設けられる第9アクチュエータ42と第10アクチュエータ44を有し、第4アクチュエータ18が、y方向に互いに隣接して設けられる第11アクチュエータ46と第12アクチュエータ48を有することによっても、同様の効果が得られる。
【0103】
第1金属層64、第2金属層66は、特にAlを含むことが、加工が容易でかつ大きな熱膨張率が得られるため、好ましい。
【0104】
図4は、本実施形態の比較形態となる半導体装置の模式図である。
【0105】
図4(a)に示した半導体装置800aは、第1枠部6の、図面の下側に、アクチュエータ816a及び816bを有する。第1枠部6内には、ステージ20、アクチュエータ802a及び802bが設けられている。ここで、アクチュエータ802a及び802bは、第1枠部6の、図面の右側に設けられている。アクチュエータ816a及び816bにより、ステージ20はy軸周りに回動る。また、アクチュエータ802a及び802bにより、ステージ20はx軸周りに回動する。
【0106】
しかし、例えばアクチュエータ816bに熱を加えた場合、第1枠部6を介して熱がアクチュエータ802bに伝わってしまう。そのため、半導体装置800aをy軸周りに駆動させようとすると、x軸周りにも駆動してしまい、光軸が意図しない方向にずれてしまうという問題があった。
【0107】
図4(b)に示した半導体装置800bは、第1枠部6を、第1アクチュエータ2及び第2アクチュエータ4で挟んでいる。第1アクチュエータ2及び第2アクチュエータ4は、第1接続部8及び第3接続部12により第1枠部6と接続されている。第1枠部6とステージ20の間には、第3アクチュエータ16及び第4アクチュエータ18が設けられている。第3アクチュエータ16は、第9接続部30により第1枠部6と接続され、第5接続部22によりステージ20と接続されている。第4アクチュエータ18は、第10接続部32により第1枠部6と接続され、第7接続部26によりステージ20と接続されている。第1アクチュエータ2及び第2アクチュエータ4により、ステージ20はy軸周りに駆動する。また、第3アクチュエータ16及び第4アクチュエータ18により、ステージ20はx軸周りに駆動する。
【0108】
半導体装置800bは、第1枠部6を設けることにより、x軸周りに駆動させるためのアクチュエータに加わる発熱と、y軸周りに駆動させるためのアクチュエータに加わる発熱の分離がより良く行われ、半導体装置800aに見られるような光軸のずれの緩和が可能となる。しかし、例えば
図4(b)においては、例えば第1接続部8及び第3接続部12が、図面の上側に設けられている。そのため、第1アクチュエータ2と第2アクチュエータ4に加えられた熱が、第4アクチュエータ18にはあまり伝導されない一方で、第1枠部6及び第9接続部30を介して第3アクチュエータ16に良く伝導されてしまう。そのため半導体装置(スキャナー)の挙動が非対称挙動となってしまうという問題があった。
【0109】
さらに、
図4(c)に示した半導体装置800c及び
図4(d)に示した半導体装置800dのような、第1枠部6のない半導体装置は、半導体装置内における熱伝導やそれに伴うアクチュエータの挙動が複雑で、半導体装置(スキャナー)としての制御が困難であるという問題があった。
【0110】
本実施形態の半導体装置によれば、高性能な半導体装置の提供が可能となる。
【0111】
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置110は、第1枠部6の内側にさらに第2枠部50を備える点と、第1枠部6と第2枠部50を接続する第11接続部52及び第12接続部54を備える点で、第1の実施形態の半導体装置100と異なっている。ここで、第1の実施形態と重複する点については、記載を省略する。
【0112】
図6は、本実施形態の半導体装置110の模式図である。
【0113】
第2枠部50は、例えば、x方向及びy方向を含む面に平行に設けられていると、構造が簡易になるため好ましい。第2枠部50をさらに備えることにより、x軸周りに駆動させるためのアクチュエータに加わる熱と、y軸周りに駆動させるためのアクチュエータに加わる熱の熱分離が、さらにより良く行われる。
【0114】
第11接続部52が、第1アクチュエータ2の一端と第1アクチュエータ2の他端の中間付近に、第1アクチュエータ2と隣接して設けられている場合、第1アクチュエータ2から発生し、第1枠部6を介して第2枠部50に伝達する熱の釣り合い(バランス)が良くなり、より均等に熱が第2枠部50に伝わるようになる。そのため、第1枠部6及び第2枠部50を設けたことによる、第1アクチュエータ2の発熱と、第3アクチュエータ16及び第4アクチュエータ18の発熱の分離が、より促進される。
【0115】
第12接続部54が、第2アクチュエータ4の一端と第2アクチュエータ4の他端の中間付近に、第2アクチュエータ4と隣接して設けられている場合、第2アクチュエータ4から発生し、第1枠部6を介して第2枠部50に伝達する熱の釣り合い(バランス)が良くなり、より均等に熱が第2枠部50に伝わるようになる。そのため、第1枠部6及び第2枠部50を設けたことによる、第2アクチュエータ4で発生する熱と、第3アクチュエータ16及び第4アクチュエータ18で発生する熱の分離が、より促進される。
【0116】
本実施形態の半導体装置によれば、高性能な半導体装置の提供が可能となる。
【0117】
(第3の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1、第2、第3及び第4アクチュエータが圧電アクチュエータである点で、第1及び第2の実施形態の半導体装置と異なっている。ここで、第1及び第2の実施形態の半導体装置と重複する点については、記載を省略する。
【0118】
図7は、本実施形態の半導体装置において、第9アクチュエータ42が圧電アクチュエータであった場合の動作の一例を示す模式図である。本実施形態のアクチュエータは、導電板234と、導電板234を挟むように設けられた第1の圧電材料230及び第2の圧電材料232と、を有する。
図7(a)はスイッチ210が入っていない状態である。
図7(b)のようにスイッチ210を入れると、電源220から第1の圧電材料230及び第2の圧電材料232に電界が印加される。ここで、第1の圧電材料230に印加される電界と、第2の圧電材料232に印加される電界は、向きが逆向きになる。そのため、第1の圧電材料230及び第2の圧電材料232は、
図7(b)に示したように全体として反り返ることとなる。
【0119】
第1、第2、第3及び第4アクチュエータが圧電アクチュエータであっても、簡易な構造で二軸制御が可能であるため、高性能な半導体装置の提供が可能となる。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。