(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970140
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】電源ユニットの検査装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
G01R31/00
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-97002(P2019-97002)
(22)【出願日】2019年5月23日
(65)【公開番号】特開2020-190524(P2020-190524A)
(43)【公開日】2020年11月26日
【審査請求日】2020年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(72)【発明者】
【氏名】野澤 鉄文
(72)【発明者】
【氏名】西原 潤
【審査官】
島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2019−041545(JP,A)
【文献】
特開2016−188800(JP,A)
【文献】
特開2010−198201(JP,A)
【文献】
特開2017−044489(JP,A)
【文献】
米国特許第06037782(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に搭載されて使用される電源ユニットから発生するノイズを測定するための電源ユニットの検査装置であって、
前記電源ユニットの検査時に、前記電源ユニットのグラウンドに電気的に接続される導電体と、
前記電源ユニットから供給される電力を消費する負荷と、
一端が前記導電体に電気的に接続される少なくとも1本のダミーケーブルと、
を備え、
前記ダミーケーブルは、前記導電体に接続される側と逆側の一端が接地される
ことを特徴とする電源ユニットの検査装置。
【請求項2】
電気機器に搭載されて使用される電源ユニットであって、電源ケーブルに接続され、当該電源ケーブル経由で外部電源から入力される電力を供給する電源ユニットから発生するノイズを測定するための電源ユニットの検査装置であって、
前記電源ユニットの検査時に、前記電源ユニットのグラウンドに電気的に接続される導電体と、
前記電源ケーブルが前記電源ユニットに接続された状態で、前記電源ケーブル経由で外部電源から前記電源ユニットに入力され、前記電源ユニットから供給される電力を消費する負荷と、
一端が前記導電体に電気的に接続される、前記電源ケーブルとは別の少なくとも1本のダミーケーブルと、
を備えることを特徴とする電源ユニットの検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源ユニットの検査装置において、
前記電気機器は、複数の接続機器を接続するために複数の接続ケーブルが接続された状態で使用され、
前記導電体には、前記複数の接続ケーブルに対応する複数のダミーケーブルが接続される
ことを特徴とする電源ユニットの検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電源ユニットの検査装置において、
前記複数のダミーケーブルのうちの少なくとも1本は、前記導電体に接続される側と逆側の一端が開放端となっている
ことを特徴とする電源ユニットの検査装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電源ユニットの検査装置において、
前記複数の接続機器のうち、外部から供給される電力によって動作する接続機器に対応するダミーケーブルは、前記導電体に接続される側と逆側の一端が接地され、それ以外のダミーケーブルは、前記導電体に接続される側と逆側の一端が開放端となっている
ことを特徴とする電源ユニットの検査装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電源ユニットの検査装置であって、
前記負荷のグラウンドが、前記導電体に電気的に接続されている
ことを特徴とする電源ユニットの検査装置。
【請求項7】
電気機器に搭載されて使用される電源ユニットの検査方法であって、
前記電源ユニットのグラウンドに対して、少なくとも1本のダミーケーブルを電気的に接続し、当該ダミーケーブルの前記グラウンドに接続される側と逆側の一端を接地する工程と、
前記ダミーケーブルが接続された状態で、前記電源ユニットから負荷に対して電力を供給させる工程と、
前記負荷に対して電力が供給されている状態で、前記電源ユニットから発生するノイズを測定する工程と、
を含むことを特徴とする電源ユニットの検査方法。
【請求項8】
電気機器に搭載されて使用される電源ユニットの検査方法であって、
前記電源ユニットのグラウンドに対して、少なくとも1本のダミーケーブルを電気的に接続する工程と、
前記ダミーケーブルとは別の電源ケーブルを前記電源ユニットに接続する工程と、
前記ダミーケーブル及び前記電源ケーブルが接続された状態で、外部電源から前記電源ケーブル経由で前記電源ユニットに入力される電力を、前記電源ユニットから負荷に対して供給させる工程と、
前記負荷に対して電力が供給されている状態で、前記電源ユニットから発生するノイズを測定する工程と、
を含むことを特徴とする電源ユニットの検査方法。
【請求項9】
電気機器に搭載されて使用される電源ユニットと、
前記電源ユニットから発生するノイズを測定するための検査装置と、
を含む検査システムであって、
前記検査装置は、
前記電源ユニットの検査時に、前記電源ユニットのグラウンドに電気的に接続される導電体と、
前記電源ユニットから供給される電力を消費する負荷と、
一端が前記導電体に電気的に接続される少なくとも1本のダミーケーブルと、
を備え、
前記ダミーケーブルは、前記導電体に接続される側と逆側の一端が接地される
ことを特徴とする検査システム。
【請求項10】
電気機器に搭載されて使用される電源ユニットであって、電源ケーブルに接続され、当該電源ケーブル経由で外部電源から入力される電力を供給する電源ユニットと、
前記電源ユニットから発生するノイズを測定するための検査装置と、
を含む検査システムであって、
前記検査装置は、
前記電源ユニットの検査時に、前記電源ユニットのグラウンドに電気的に接続される導電体と、
前記電源ケーブルが前記電源ユニットに接続された状態で、前記電源ケーブル経由で外部電源から前記電源ユニットに入力され、前記電源ユニットから供給される電力を消費する負荷と、
一端が前記導電体に電気的に接続される、前記電源ケーブルとは別の少なくとも1本のダミーケーブルと、
を備えることを特徴とする検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ユニットの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、外部の交流電源から供給される電力によって動作する電気機器は、電源ユニットを内蔵している。電源ユニットは、外部の交流電源から入力される電流を直流電流に変換して、電気機器内部の電気回路等に供給するために用いられる。この電源ユニットは、動作時に各種のノイズを発生させるおそれがある。具体的には、周囲の空中にノイズとなる不要な電磁波を放射したり、電源ユニットの入力、及び出力側それぞれの電流経路を経由して周囲の機器にノイズを伝搬させたりすることがある。そのため、電源ユニットを製造するメーカーは、電源ユニットに対してノイズ対策を施すとともに、実際に製造した電源ユニットから発生するノイズをどの程度抑えられているかを事前に検査して、目標とする性能を確保している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電源ユニットを内蔵した電気機器を実際に使用すると、電源ユニットを単体で検査したときには発生しなかったノイズが電源ユニットから発生することがある。このような事態が生じると、電源ユニットを単体で検査しても事前に十分なノイズ対策ができているかを確認することができず、電源ユニットの製造開発に支障が生じることになる。
【0004】
本発明は上述した実情を考慮してなされたものであって、その目的の一つは、電源ユニットを実際に使用した時に発生するおそれがあるノイズを、事前の検査で発見することのできる電源ユニットの検査装置、及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電源ユニットの検査装置は、電気機器に搭載されて使用される電源ユニットから発生するノイズを測定するための電源ユニットの検査装置であって、前記電源ユニットの検査時に、前記電源ユニットのグラウンドに電気的に接続される導電体と、前記電源ユニットから供給される電力を消費する負荷と、一端が前記導電体に電気的に接続される少なくとも1本のダミーケーブルと、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る電源ユニットの検査方法は、電気機器に搭載されて使用される電源ユニットの検査方法であって、前記電源ユニットのグラウンドに対して、少なくとも1本のダミーケーブルを電気的に接続する工程と、前記ダミーケーブルが接続された状態で、前記電源ユニットから負荷に対して電力を供給させる工程と、前記負荷に対して電力が供給されている状態で、前記電源ユニットから発生するノイズを測定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る検査システムは、電気機器に搭載されて使用される電源ユニットと、前記電源ユニットから発生するノイズを測定するための検査装置と、を含む検査システムであって、前記検査装置は、前記電源ユニットの検査時に、前記電源ユニットのグラウンドに電気的に接続される導電体と、前記電源ユニットから供給される電力を消費する負荷と、一端が前記導電体に電気的に接続される少なくとも1本のダミーケーブルと、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電源ユニットの検査装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電源ユニットの検査装置の本体部を正面方向から見た断面図である。
【
図3】検査装置による検査の対象となる電源ユニットが搭載される電気機器の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る電源ユニットの検査装置1の概略構成を示す図であって、背面上方から見た斜視図である。検査装置1は、電源ユニット2が発生させるノイズを測定するために用いられる装置であって、
図1に示されるように、フレーム11と、台座12と、負荷13と、電源ケーブル14と、複数のダミーケーブル15と、を含んで構成されている。なお、
図1において検査装置1は、その本体部がテーブルTの上に配置されている。また、
図2は検査装置1のフレーム11内の様子を示す図であって、検査装置1の本体部を正面方向から見た断面図である。
【0011】
本実施形態において電源ユニット2は、コンピュータ50に搭載されて使用されるためのものである。ここで、コンピュータ50の使用状況の具体例について、
図3を用いて説明する。コンピュータ50は、例えば家庭用ゲーム機等であって、電源ユニット2を内蔵している。電源ユニット2は電源ケーブル51経由で外部の交流電源と接続され、この電源ケーブル51経由で入力される電力を直流電流に変換してコンピュータ50内部の電気回路や電子部品に供給する。
【0012】
また、コンピュータ50は、複数の接続機器が接続された状態で使用されることが想定されている。具体的に、コンピュータ50に対して表示装置52、操作デバイス53、及び通信機器54の3個の接続機器が接続されることが想定されている。
【0013】
表示装置52は、液晶ディスプレイ等であって、映像信号を伝送する信号ケーブル55を介してコンピュータ50と接続される。表示装置52は、コンピュータ50から信号ケーブル55経由で送信される映像信号を受信し、その映像信号に応じた映像を表示する。また、表示装置52には電源ケーブル56が接続され、表示装置52はこの電源ケーブル56を経由して外部の電源から供給される電力によって動作する。
【0014】
操作デバイス53は、家庭用ゲーム機のコントローラ等であって、USB等の通信規格に基づく信号ケーブル57を介してコンピュータ50と接続される。操作デバイス53は、ユーザーから各種の操作入力を受け付けて、その内容を示す操作情報を信号ケーブル57経由でコンピュータ50に送信する。なお、操作デバイス53は内蔵された充電池等の内部電源が供給する電力、又は信号ケーブル57経由でコンピュータ50から供給される電力によって動作する。そのため、表示装置52と異なり、操作デバイス53に対して電源供給のための電源ケーブルは接続されていない。
【0015】
さらに本実施形態では、操作デバイス53に対してヘッドセット58が接続可能になっている。ヘッドセット58は、信号ケーブル59を介して操作デバイス53に接続される。ヘッドセット58は、信号ケーブル57及び信号ケーブル59を経由してコンピュータ50から送信される音声信号に応じた音声を再生したり、装着したユーザーの発話内容を示す音声信号を信号ケーブル59及び信号ケーブル57経由でコンピュータ50に送信したりする。操作デバイス53と同様に、ヘッドセット58も内蔵された充電池等の内部電源が供給する電力によって動作し、電源ケーブルは接続されていない。なお、ヘッドセット58の代わりに音声再生に特化したヘッドホンが接続されてもよい。
【0016】
通信機器54は、コンピュータ50とは別のパーソナルコンピュータ等のコンピュータであって、信号ケーブル60を介してコンピュータ50と接続され、コンピュータ50との間で各種のデータを授受する。ここで信号ケーブル60は、例えばLANケーブル等であってよい。通信機器54には電源ケーブル61が接続され、通信機器54はこの電源ケーブル61経由で外部の電源から供給される電力によって動作する。
【0017】
検査装置1は、電源ユニット2が上述したコンピュータ50に搭載された際の動作環境と近い動作環境で動作できるように構成されている。以下、検査装置1を構成する要素について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0018】
フレーム11は、略直方体形状のケースであって、金属板などの導電体によって形成されている。フレーム11内には、負荷13が設置されている。このフレーム11は、コンピュータ50のフレームシャーシに対応している。
【0019】
台座12は、フレーム11の上面に配置されている。検査対象となる電源ユニット2は、この台座12上に設置される。台座12は、金属板などの導電体によって形成されており、フレーム11と電気的に接続されている。ここでは台座12は、導電性のガスケット12aによってフレーム11と接続されているものとする。この台座12に対して電源ユニット2の筐体をねじ止めなどで固定することで、電源ユニット2のグラウンドは台座12及びフレーム11と電気的に接続されている。
【0020】
負荷13は、フレーム11内に配置されており、その入力側は検査装置1が備える電源入力端子(不図示)と接続されている。電源ユニット2の検査時には、電源ユニット2の出力端子と検査装置1の電源入力端子が接続される。これにより、電源ユニット2から供給される電力が負荷13に入力される。
【0021】
図2では、負荷13はフレーム11内でフレーム11と連結された金属板上に設置されている。この負荷13は、コンピュータ50内で電源ユニット2から供給される電力によって動作する電気回路等に対応する。負荷13は、コンピュータ50内の電気回路等と同程度の電力を消費するものであることが望ましい。また、負荷13は、スイッチ等の操作によって消費電力が変化するものであってもよい。こうすれば、負荷13の消費電力を変化させることによって様々な動作条件で電源ユニット2のノイズ測定を行うことができる。
【0022】
負荷13のグラウンドは、フレーム11と電気的に接続されている。これにより、負荷13のグラウンドは、フレーム11、及び台座12を介して電源ユニット2のグラウンドと接続され、電源ユニット2と負荷13のグラウンドが共通化している。
【0023】
電源ケーブル14は、電源ユニット2に接続されて、交流電源から供給される電力を電源ユニット2に入力する。電源ケーブル14は、例えば100Vや230Vの交流電源から供給される電力を電源ユニット2に入力するものであってよい。電源ケーブル14は、コンピュータ50に電力を供給するために用いられる電源ケーブル51と同じものであってもよい。少なくとも電源ケーブル14は、コンピュータ50の使用時に使用される電源ケーブル51と同程度の長さを備えることが望ましい。
【0024】
複数のダミーケーブル15は、いずれも導線を内蔵し、その導線の一端がフレーム11の外面に電気的に接続されている。なお、ダミーケーブル15の導線は、例えばネジ止めやはんだ付けなど、各種の方法でフレーム11の外面に接続されてよい。これにより、各ダミーケーブル15は、フレーム11、及び台座12を介して電源ユニット2のグラウンドに接続されることになる。本実施形態では、各ダミーケーブル15はフレーム11の上面に接続されている。なお、複数のダミーケーブル15は、互いに遠ざかるようにフレーム11から放射状に配置されている。
【0025】
これらのダミーケーブル15は、それぞれ、コンピュータ50の使用時にコンピュータ50に対して接続される接続ケーブルに対応している。具体的に本実施形態では、前述したように表示装置52、操作デバイス53、及び通信機器54の3個の接続機器がコンピュータ50に対して直接接続されることが想定されており、そのためコンピュータ50には、電源ユニット2に電源を供給する電源ケーブル以外に3本の接続ケーブルが接続することになる。この3本の接続ケーブルに対応して、ダミーケーブル15a、15b、及び15cの3本のダミーケーブル15がフレーム11に接続されている。すなわち、ダミーケーブル15aは、コンピュータ50と表示装置52を接続する信号ケーブル55、及び表示装置52にさらに接続される電源ケーブル56に対応している。ダミーケーブル15bは、コンピュータ50と操作デバイス53を接続する信号ケーブル57、及び操作デバイス50とさらにその先のヘッドセット58とを接続する信号ケーブル59に対応している。ダミーケーブル15cは、コンピュータ50と通信機器54を接続する信号ケーブル60、及び通信機器54にさらに接続される電源ケーブル61に対応している。
【0026】
コンピュータ50に各種のケーブルを介して接続機器が接続された状態では、これらのケーブルが一種のアンテナとして作用し、電源ユニット2からのノイズを放射、又は伝搬することがある。そこで本実施形態に係る電源ユニットの検査装置1は、実際の電源ユニット2使用時にコンピュータ50に接続されることが想定されるケーブルに対応するダミーケーブル15を備えることで、コンピュータ50を実際に使用した際に発生し得るノイズと近い内容のノイズを電源ユニット2から発生させることが期待できる。このダミーケーブル15は、電源ユニット2に対してアンテナとして作用することを目的としたものなので、フレーム11に接続される側と逆側の端部は何らかの機器に接続されるわけではなく、信号や電力を伝送する用途で使用されるものでもない。
【0027】
なお、各ダミーケーブル15はアンテナとして作用すればよいので、コンピュータ50に接続される対応するケーブルと同じ材質や太さの導線を備える必要は必ずしもない。また、各ダミーケーブル15は、それぞれ1本で複数のケーブルに対応することとしているが、対応するケーブルと同じように複数本のケーブルに分かれておらずともよく、1本のケーブルであってよい。一方、コンピュータ50に接続されるケーブルと近い作用を奏するために、各ダミーケーブル15の長さは、対応するケーブルの長さに近いことが望ましい。すなわち、ダミーケーブル15aは対応する信号ケーブル55と電源ケーブル56の長さの合計に相当する長さを有することが望ましい。同様に、ダミーケーブル15bは信号ケーブル57と信号ケーブル59の長さの合計に相当する長さを有することが望ましく、ダミーケーブル15cは信号ケーブル60と電源ケーブル61の長さの合計に相当する長さを有することが望ましい。ただし、コンピュータ50に接続される各種ケーブルの長さは、常に一定であるとは限らず、様々な長さのケーブルが接続される可能性がある。そのため、各ダミーケーブル15の長さも、対応するケーブルの長さと完全に一致している必要はない。
【0028】
複数のダミーケーブル15の中には、フレーム11に接続される側と逆側の一端が開放端となっているものが含まれている。また、フレーム11に接続される側と逆側の一端が接地されているものが含まれている。両者の違いは、各ダミーケーブル15が外部電源に接続される電源ケーブルに対応しているか否かに応じて決定されている。すなわち、電源ケーブル56に対応するダミーケーブル15a、及び電源ケーブル61に対応するダミーケーブル15cのそれぞれは、その一端が床面において接地されている。これは、これらの電源ケーブル56及び61がコンピュータ50の使用時に外部電源に接続されることに対応している。一方、内部の充電池等の内部電源で動作したり、コンピュータ50から供給される電力によって動作したりすることで、直接的に電源ケーブルが接続されない操作デバイス53及びヘッドセット58に対応するダミーケーブル15bは、その一端が開放されており、接地されていない。これにより、ダミーケーブル15a及び15cは一種のループアンテナとして作用し、ダミーケーブル15bは一種のモノポールアンテナとして作用する。これらは、コンピュータ50に接続される各ケーブルの作用と類似するものとなる。
【0029】
以下、以上説明した検査装置1を用いた電源ユニット2のノイズ測定の流れの一例について説明する。まず、検査対象となる電源ユニット2を台座12に固定する。これにより、負荷13のグラウンドと電源ユニット2のグラウンドがフレーム11、及び台座12を介して電気的に接続されるとともに、各ダミーケーブル15がフレーム11、及び台座12を介して電源ユニット2のグラウンドに電気的に接続された状態になる。その後、電源ユニット2と負荷13を接続し、電源ケーブル14を電源ユニット2に接続する。そして、電源ケーブル14経由で電源ユニット2に交流電力を供給し、電源ユニット2を動作させる。電源ユニット2は供給される電力を直流電流に変換し、負荷13に入力して電力を消費させる。
【0030】
このように電源ユニット2を動作させた状態において、電源ユニット2から発生するノイズの測定を行う。具体的には、電源ユニット2の周囲に設置した測定器を用いて、電源ユニット2から放射される電磁波の強度を測定する。このとき、測定器の位置を変化させたり、電源ユニット2が搭載された検査装置1全体を回転させたりすることで、電源ユニット2から複数の方向に放射される電磁波を測定することが望ましい。また、このような電磁波の測定を正確に行うために、検査装置1を電波暗室内に設置した状態で測定を行うことが望ましい。また、電源ケーブル14の上流側(電源ユニット2と逆側)や、各ダミーケーブル15の先端側(電源ユニット2と逆側)の位置に測定器を取り付けて、ケーブル経由で伝搬するノイズ電流を測定する。これにより、各種の経路で電源ユニット2から発生するノイズの強さを測定し、発生するノイズが目標とする基準以下になっているか否かを検証することができる。
【0031】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る電源ユニットの検査装置1によれば、コンピュータ50の使用時に近い動作環境で電源ユニット2を動作させ、コンピュータ50に搭載された状態に比較的近いノイズを電源ユニット2から発生させることができる。これにより、コンピュータ50に実際に電源ユニット2を搭載した状態で試験を行うことなく、コンピュータ50に電源ユニット2を搭載した際に発生するノイズの強さを検証することができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えば以上の説明では、電源ユニット2はコンピュータ50に内蔵されることとしたが、電源ユニット2はコンピュータ50に限らず、各種の電気機器に内蔵されるものであってよい。この場合にも、電源ユニット2が内蔵される電気機器の使用時に、電気機器に接続される接続機器までのケーブルに対応したダミーケーブル15を接続した状態で電源ユニット2の検査を行うことによって、実際の使用時に発生しうるノイズの大きさを事前に検査することができる。また、以上の説明におけるダミーケーブル15の総数や接地されるダミーケーブル15の数、一端が開放されるダミーケーブル15の数も例示に過ぎず、電源ユニット2が搭載される電気機器に接続することが想定されるケーブルの数や接続機器の接続形態に応じて変化してよい。
【0033】
また、以上の説明におけるフレーム11の構造は例示に過ぎず、これと異なる構造を有してもよい。また、以上の説明ではフレーム11と電気的に接続された台座12に電源ユニット2を設置することとしたが、フレーム11に電源ユニット2を直接接続してもよい。この場合、台座12はなくともよい。また、ダミーケーブル15はフレーム11ではなく台座12に接続されることとしてもよい。いずれにせよ、電源ユニット2のグラウンドと電気的に接続される導電体に対してダミーケーブル15の一端を電気的に接続させることによって、ダミーケーブル15をアンテナとして作用させ、コンピュータ50搭載時に比較的近いノイズを電源ユニット2から発生させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 検査装置、2 電源ユニット、11 フレーム、12 台座、12a ガスケット、13 負荷、14 電源ケーブル、15a,15b,15c ダミーケーブル、50 コンピュータ、51,56,61 電源ケーブル、52 表示装置、53 操作デバイス、54 通信機器、55,57,59,60 信号ケーブル、58 ヘッドセット。