特許第6970148号(P6970148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970148
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】スクータ型電動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62K 11/10 20060101AFI20211111BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20211111BHJP
   B62J 43/16 20200101ALI20211111BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20211111BHJP
【FI】
   B62K11/10
   B62M7/02 C
   B62J43/16
   B62J45/00
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-168767(P2019-168767)
(22)【出願日】2019年9月17日
(65)【公開番号】特開2021-46046(P2021-46046A)
(43)【公開日】2021年3月25日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勇介
(72)【発明者】
【氏名】國石 賢
(72)【発明者】
【氏名】小森 拓也
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−194930(JP,A)
【文献】 特開2012−76571(JP,A)
【文献】 特開2008−11680(JP,A)
【文献】 特開2006−347427(JP,A)
【文献】 特開2005−231424(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0168170(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 1/00− 11/14
B62M 7/02
B62M 7/12
B62J 43/16
B62J 45/00
B60L 1/00− 3/12
B60L 15/00− 58/40
B60K 6/20
B60K 6/547
B60W 10/00− 10/02
B60W 10/06− 10/10
B60W 10/18
B60W 10/26− 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端がピボット軸(25)を介し車体フレーム(2)に対し上下揺動自在に支持され、後輪(15)を支持するスイングアーム(4)を備え、
同スイングアーム(4)の上方に着座シート(18)を備え、
内燃機関(81)と交流発電機(83)を内蔵した発電装置(8)を備えるとともに、
前記発電装置(8)の発電電力によるバッテリ(6)の蓄電電力で、走行駆動モータ(7)が前記後輪(15)を走行駆動するスクータ型電動二輪車において
前記スイングアーム(4)前記走行駆動モータ(7)と前記発電装置(8)が位置し、
前記走行駆動モータ(7)は前記スイングアーム(4)に取付けられ、
前記ピボット軸(25)の後方の前記スイングアーム(4)の上面は、前記発電装置(8)が取付けられる平坦部(3)を有し、
前記発電装置(8)は、前記着座シート(18)の下方で前記スイングアーム(4)上面に取付けられ、
前記バッテリ(6)と同バッテリ(6)に接続するパワーコントロールユニット(61)は、前記車体フレーム(2)において前記ピボット軸(25)の支持部(24)を有するロアフレーム(22,22)上に搭載されたことを特徴とするスクータ型電動二輪車
【請求項2】
側面視で、前記ピボット軸(25)と、前記スイングアーム(4)の上方に位置する前記車体フレーム(2)のシートレール(23)の後部でリヤクッション(17)が接続するブラケット(23a)と、前記スイングアーム(4)の後端部(41)とに囲まれた空間に、前記発電装置(8)が取付けられたことを特徴とする請求項に記載のスクータ型電動二輪車
【請求項3】
前記スイングアーム(4)は、前記平坦部(3)の後方と車両幅方向一方側とに立壁(44、45)を備え、前記平坦部(3)の前方と車両幅方向他方側は立壁を備えず平坦であることを特徴とする請求項2に記載のスクータ型電動二輪車。
【請求項4】
前記発電装置(8)の下部は、凸状係合部(85)を備え、
前記スイングアーム(4)の前記平坦部(3)は、前記凸状係合部(85)が着脱可能な溝状凹部(31)を前記立壁(44、45)の一方に対し垂直方向に備え、
前記溝状凹部(31)は溝方向に前記立壁(44、45)がない側の端部断面(31c)が溝方向に解放するとともに、前記凸状係合部(85)と前記溝状凹部(31)とは、溝方向視で位置が一致することを特徴とする請求項に記載のスクータ型電動二輪車。
【請求項5】
前記発電装置(8)は、前記内燃機関(81)と前記交流発電機(83)と燃料タンク(84)とを備えて一体に構成されたことを特徴とする請求項に記載のスクータ型電動二輪車。
【請求項6】
前記一方の立壁(44、45)は、前記溝状凹部(31)と平行な接続方向の電力入力コネクタ(46)を備え、
前記発電装置(8)は、前記平坦部(3)に載置され前記凸状係合部(85)が前記溝状凹部(31)に嵌挿された状態で、前記電力入力コネクタ(46)と接続し得る位置に電力出力コネクタ(86)を備えたことを特徴とする請求項または請求項に記載のスクータ型電動二輪車。
【請求項7】
前記発電装置(8)は、前記スイングアーム(4)に取付けられた状態において、内蔵された前記内燃機関(81)のクランク軸(81a)が前記平坦部(3)に対して垂直に配向し、前記クランク軸(81a)の下端側に取付けられた前記交流発電機(83)が前記内燃機関(81)のクランクケース(81b)の下方に配置されたことを特徴とする請求項ないし請求項のいずれか一項に記載のスクータ型電動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載の発電装置の電力により走行するスクータ型電動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
車載の発電装置の発電電力とバッテリの蓄電電力によって走行駆動される従来のスクータ型電動二輪車の例が、例えば、下記特許文献1に示されている。同特許文献1に示されるものにおいては、車両前方の上方に位置する燃料タンクの近傍に発電装置が取り付けられている。
そのため、下記特許文献1に示されたものにおいては、車両の重心が高い位置となる。
また、バッテリは車両中央に設置され、走行駆動モータは前輪と後輪の軸芯に設けられるのでバッテリや発電装置との距離が大きく、相互を接続するハーネスが長くなるなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−085797号公報(図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術に鑑みなされたものであり、車載の発電装置の発電電力によるバッテリの蓄電電力で走行駆動されるスクータ型電動二輪車において、車両の低重心化が図られるスクータ型電動二輪車を提供することを課題とする。
またさらに、走行駆動モータとバッテリや発電装置との距離を短縮できるスクータ型電動二輪車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、
前端がピボット軸を介し車体フレームに対し上下揺動自在に支持され、後輪を支持するスイングアームを備え、同スイングアームの上方に着座シートを備え、内燃機関と交流発電機を内蔵した発電装置を備えるとともに、前記発電装置の発電電力によるバッテリの蓄電電力で、走行駆動モータが前記後輪を走行駆動するスクータ型電動二輪車において
前記スイングアーム前記走行駆動モータと前記発電装置が位置し、
前記走行駆動モータは前記スイングアームに取付けられ、前記ピボット軸の後方の前記スイングアームの上面は、前記発電装置が取付けられる平坦部を有し、前記発電装置は、前記着座シートの下方で前記スイングアーム上面に取付けられ、
前記バッテリと同バッテリに接続するパワーコントロールユニットは、前記車体フレームにおいて前記ピボット軸の支持部を有するロアフレーム上に搭載されたことを特徴とするスクータ型電動二輪車である。
【0006】
上記構成によれば、
スイングアーム走行駆動モータと発電装置が位置するので、車両の低重心化が図られ、車体の安定化がなされる。特に発電装置が、着座シートの下方でスイングアーム上面に取付けられるので、車両の低重心化が図られ、車体の安定化がなされる。
また、走行駆動モータと発電装置がともに、ロアフレーム上のバッテリとパワーコントロールユニットに近いスイングアームに設けられたので、その間の距離を短縮でき、相互を接続するハーネス長が短縮される。
【0008】
本発明の好適な実施形態によれば、
側面視で、前記ピボット軸と、前記スイングアームの上方に位置する前記車体フレームのシートレールの後部でリヤクッションが接続するブラケットと、前記スイングアームの後端部とに囲まれた空間に、前記発電装置が取付けられる。
そのため、発電装置がスイングアーム上で車両中心寄りに配置され、車両の低重心化と安定化に寄与する。
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記スイングアームは、前記平坦部の後方と車両幅方向一方側とに立壁を備え、前記平坦部の前方と車両幅方向他方側は立壁を備えず平坦である。
そのため、立壁によりスイングアームの強度が確保できるとともに、発電装置を立壁のない車両幅方向他方側、または前方から容易に取付け取外し可能とすることができ、また、立壁により発電装置の仮置き位置を規制できるので、メンテナンス性が向上する。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記発電装置の下部は、凸状係合部を備え、
前記スイングアームの前記平坦部は、前記凸状係合部が着脱可能な溝状凹部を前記立壁の一方に対し垂直方向に備え、
前記溝状凹部は溝方向に前記立壁がない側の端部断面が溝方向に解放するとともに、前記凸状係合部と前記溝状凹部とは、溝方向視で位置が一致する。
そのため、スイングアームの平坦部の溝状凹部に、発電装置の凸状係合部を容易に装着でき、凸状係合部が溝状凹部に嵌挿された状態で発電装置の仮置き状態が得られ、調整操作が容易となり、発電装置のスイングアームへの取付け取外しが容易となる。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記発電装置は、前記内燃機関と前記交流発電機と燃料タンクとを備えて一体に構成される。
そのため、燃料タンクを含め内燃機関と交流発電機とが発電装置として一体で取付け取出しが可能であり、メンテナンス性が向上する。なお、燃料容量の増備のため別の個所に第二燃料タンクを備えることもできる。
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記一方の立壁は、前記溝状凹部と平行な接続方向の電力入力コネクタを備え、
前記発電装置は、前記平坦部に載置され前記凸状係合部が前記溝状凹部に嵌挿された状態で、前記電力入力コネクタと接続し得る位置に電力出力コネクタを備える。
そのため、スイングアームの平坦部上を溝状凹部に沿って発電装置をスライドさせることで、スイングアーム側の電力入力コネクタと発電装置側の電力出力コネクタとを接続あるいは離脱させることが可能であり、発電装置取出し取付けにおいて電力回路の断接が同時に行えて、発電装置の着脱性、メンテナンス性の向上が図れる。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記発電装置は、前記スイングアームに取付けられた状態において、内蔵された前記内燃機関のクランク軸が前記平坦部に対して垂直に配向し、前記クランク軸の下端側に取付けられた前記交流発電機が前記内燃機関のクランクケースの下方に配置される。
そのため、スイングアームに取付けられた発電装置において、重量物である交流発電機がクランクケースの下方に配置されたので、発電装置が安定するとともに、車両重心を下げることに寄与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスクータ型電動二輪車によれば、
スイングアーム走行駆動モータと発電装置が位置するので、車両の低重心化が図られ、車体の安定化がなされる。特に発電装置が、着座シートの下方でスイングアーム上面に取付けられるので、車両の低重心化が図られ、車体の安定化がなされる。
また、走行駆動モータと発電装置がともに、ロアフレーム上のバッテリとパワーコントロールユニットに近いスイングアームに設けられたので、その間の距離を短縮でき、相互を接続するハーネス長が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るスクータ型電動二輪車の左側面図である。
図2図1中のスイングアームの左側面図である。
図3図2中III−III矢視によるスイングアームの、一部断面とする平面図である。
図4図3中IV−IV矢視によるスイングアームの右側面図である。
図5図3図4中のV矢視によるスイングアームの、前方斜め右上から見た斜視図である。
図6図4中のVI部の、2点鎖線で示される発電装置を取出して示す、同方向で見た右側面概要図である。また、図7中VI−VI矢視に相当する。
図7図6中VII−VII矢視による、発電装置の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るスクータ型電動二輪車の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスクータ型電動二輪車(以下、単に「電動二輪車」という)1の左側面図である。
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲において、前後左右上下の向きは、本実施の形態に係る電動二輪車1の直進方向を前方とする通常の基準に従うものとし、図面において、FRは前方を、LHは左方を、RHは右方を、UPは上方を示すものとする。
【0018】
図1に示されるように、電動二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ20から下方に延びるダウンフレーム21と、ダウンフレーム21の下端部から左右車幅方向に分岐しながら若干下方に下がってから略水平に車両後方に延びる左右一対のロアフレーム22,22と、ロアフレーム22,22の後端部から斜め後ろ上がりに延びるシートレール23,23とからなる。
【0019】
ヘッドパイプ20に回転可能に軸支されるステアリング軸11の上端に操向ハンドル12が設けられ、ステアリング軸11の下端部に連結される左右一対のフロントフォーク13,13が前下がりに延び、フロントフォーク13,13の下端部に前輪14が回転自在に軸支される。
一方、ロアフレーム22,22の後部における屈曲して斜め上方に延びる傾斜部にはピボットプレート(本発明における「支持部」)24,24を有し、左右のピボットプレート24,24間に架設されたピボット軸25を介して、スイングアーム4が前端を軸支されて、車体フレーム2に対して上下揺動自在に設けられている。
【0020】
スイングアーム4は、ピボットプレート24,24にピボット軸25を介して支持された前端より後方の左側が車両後方に延出する前後方向に長尺のフレームである。スイングアーム4の後部には、後輪15が後車軸16に軸支されて回転可能に設けられており、後輪15はスイングアーム4取付けられた走行駆動モータ7により走行駆動される。
スイングアーム4の後端部41と、スイングアーム4の上方に位置するシートレール23の後部のブラケット23aとの間に、リヤクッション17が介装されている。
【0021】
左右のロアフレーム22,22の水平部前端側22aと水平部後端側22bには、下方に垂下し且つ左右のロアフレーム22,22を連結する前下連結パイプ26と後下連結パイプ27が固定されており、前下連結パイプ26と後下連結パイプ27との間にはロアフレーム22,22に略平行に床梁28が渡されて固定されている。
左右のロアフレーム22,22の間で、床梁28上には、バッテリ6が搭載される。
【0022】
車体フレーム2は、車体カバー10で覆われる。
スイングアーム4の上方において、シートレール23を覆う車体カバー10のセンタカバー部10aの上には、着座シート18が設けられる。
また、左右のロアフレーム22,22の上にステップ部10b,10bが設けられ、ステップ部10b,10bの間でバッテリ6の上方は、バッテリカバー部10cが覆っている。
バッテリカバー部10cとバッテリ6との間には、バッテリ6に接続するパワーコントロールユニット61が設けられている。
すなわち、バッテリ6とバッテリ6に接続するパワーコントロールユニット61は、車体フレーム2におけるピボット軸25の支持部であるピボットプレート24,24を有するロアフレーム22,22上に搭載されている。
【0023】
図2は、図1中のスイングアーム4の左側面図である。スイングアーム4の前端側には、ピボット軸25を介して、ロアフレーム22,22のピボットプレート24,24軸支されるための左右のハンガブラケット4a,4aが前方に突出して設けられている(図3図5参照)。
車両左側後方に延出するスイングアーム4の後方寄りには、後輪15を走行駆動する走行駆動モータ7が取付けられ、走行駆動モータ7の左側方(図2図示手前側)はスイングアーム4に取付けられたモータカバー42で覆われている。
【0024】
走行駆動モータ7のモータ出力軸71より後方のスイングアーム4の右側(図2図示向こう側)には後車軸16が軸支されており、スイングアーム4のモータ出力軸71と後車軸16との間には、後述の減速歯車機構5が設けられている。減速歯車機構5の右側方はスイングアーム4に取付けられた減速機カバー43で覆われている(図3参照)。
【0025】
図3は、図2中III−III矢視によるスイングアーム4の、一部断面とする平面図である。
なお、図2においては、図示左方を車両前方としているが、図3においては逆に、図示右方を車両前方としている。
図3に示されるように、スイングアーム4の後部左側面に取付けられた走行駆動モータ7は、ステータコイルとロータとが径方向に配置されたラジアルギャップ型の交流電動機であり、モータ出力軸71にインナロータ72が一体に設けられ、インナロータ72の外周に環状のアウタステータ73が覆っている。
【0026】
モータ出力軸71は左右車幅方向に指向しており、インナロータ72を囲うアウタステータ73は、スイングアーム4に固定されている。
アウタステータ73のステータ鉄心にはステータコイル73aが巻回されている。
インナロータ72およびアウタステータ73はモータカバー42内に収容されている。
【0027】
スイングアーム4の後部右側面には、減速機カバー43により覆われ、内部に減速歯車機構5が収納される減速機室50が形成される。
モータ出力軸71は、スイングアーム4を左右に挿通して嵌装されたベアリング50aを右方に貫通して支持されるとともに、減速機室50内に突出し、その右端が減速機カバー43に嵌装されたベアリング50bに支持されている。
減速歯車機構5は、モータ出力軸71と後部の後輪15を支持する後車軸16との間に、中間軸51を介した2段減速機構として構成されている。
【0028】
中間軸51に嵌着された中間大径ギヤ51bが、モータ出力軸71に形成された小径ギヤ71aと噛合している。
中間軸51に形成された中間小径ギヤ51aは、後車軸16の減速機室50内の後車軸大径ギヤ16bと噛合している。
【0029】
後車軸16は、スイングアーム4と減速機カバー43にベアリング52a、52bを介して軸支され、後車軸16の減速機カバー43より右方に突出した部分に後輪15のホイール15aが嵌着される。
したがって、モータ出力軸71の回転は、減速歯車機構5の小径ギヤ71aと中間大径ギヤ51bの噛合、および中間小径ギヤ51bと後車軸大径ギヤ16bの噛合を介して2段減速されて後車軸16に伝達されて後輪15が回転される。
【0030】
図3に示されるように(図5参照)、本実施形態の電動二輪車1のスイングアーム4は、前方に突出しピボット軸25を介して車体フレーム2に支持される左右のハンガブラケット4a,4aの後方、スイングアーム4の前部の上面に、左右に幅広の平坦部3を有している。
なお、平坦部3の右側面には、右スイングアーム4bが締結されて後方に延出して、後車軸16の先端を軸支している。
【0031】
平坦部3の上には、内燃機関81と交流発電機83を内蔵した発電装置8が搭載され、発電装置8からの発電電力により充電されたバッテリ6の蓄電電力で、スイングアーム4に取付けられた走行駆動モータ7が後輪15を走行駆動する。
具体的には、バッテリ6はインバータ機能を有するパワーコントロールユニット61と接続しており、発電装置8で発電された交流電力は、パワーコントロールユニット61において直流電力に変換され、バッテリ6を充電するとともに、パワーコントロールユニット61は、バッテリ6の蓄電電力である直流電力を交流電力に変換し且つ運転者の操作に基づき速度制御を加え、走行駆動モータ7に電力を供給する。
【0032】
したがって、スイングアーム4走行駆動モータ7と発電装置8が位置し、発電装置8は、着座シート18の下方でスイングアーム4上取付けられるので、車両の低重心化が図られ、車体の安定化がなされる。
また、図1に示されるように、側面視で、ピボット軸25と、スイングアーム4の上方に位置するシートレール23の後部でリヤクッション17が接続するブラケット23aと、スイングアーム4の後端部41とに囲まれた空間に、発電装置8が取付けられている。
そのため、発電装置8がスイングアーム4上で車両中心寄りに配置されるので、車両の低重心化と安定化に寄与している。
【0033】
また、バッテリ6とパワーコントロールユニット61が、スイングアーム4のピボット軸25の支持部であるピボットプレート24,24を有するロアフレーム22,22上に搭載され、走行駆動モータ7と発電装置8はともにスイングアーム4上に設けられている。
そのため、走行駆動モータ7と発電装置8が、バッテリ6とパワーコントロールユニット61の近くに位置するので、その間の距離を短縮でき、図示しない相互を接続するハーネス長を短縮することができる(図1参照)。
【0034】
発電装置8は、内燃機関81と交流発電機83と燃料タンク84を備えて一つの発電装置ケース80内に一体に構成されており、燃料タンク84を含め内燃機関81と交流発電機83とが発電装置8として一体で、スイングアーム4上に取付け取出しが可能であり、メンテナンス性が向上する。なお、燃料容量の増備のため別の個所に第二燃料タンクを備えることもできる。
【0035】
図4は、図3中IV−IV矢視によるスイングアーム4の右側面図である。
また、図5は、図3図4中のV矢視によるスイングアーム4の、前方斜め右上から見た斜視図である。
図3図4図5に示されるように、スイングアーム4はその前部の上面に、発電装置8が取付けられる左右に幅広の平坦部3を備えているが、平坦部3の後方と車両幅方向左側には、後部立壁(本発明における「立壁」)44と側部立壁(本発明における「立壁」)45を備えている。
そして、平坦部3の前方と車両幅方向右側は立壁を備えず平坦に形成されている。
【0036】
したがって、後部立壁44と側部立壁45によってスイングアーム4の強度が確保できるとともに、発電装置8を、側部立壁45のない車両幅方向右側、または後部立壁44のない前方から略水平に平坦部3上を移動させながら容易に取付け取外し可能とすることができ、また、後部立壁44と側部立壁45により発電装置8を取付けの際に仮置き位置を規制できるので、作業の容易さと安全性が得られ、メンテナンス性が向上する。
なお、スイングアーム4は、側部立壁45を車両幅方向右側に設け、車両幅方向左側には立壁を設けず平坦に形成したものであってもよい。その場合は、発電装置8の後述の構成は、車両幅方向左側から平坦部3上に取付け取外しするように構成される。
【0037】
図6は、図4中のVI部の、2点鎖線で示される発電装置8を取出して示す、同方向で見た右側面概要図である。
図7は、図6中VII−VII矢視による、発電装置8の前面図である。
図6に示されるように、発電装置8は、一つの発電装置ケース80内に、内燃機関81と交流発電機83と燃料タンク84を備えて一体に構成されているが、発電装置8を平坦部3上に位置決めするために、発電装置8の下部、すなわち発電装置ケース80の下面には、下方に向けて突出し下端に拡径部85aを有する凸状係合部85が、下方からボルト85bで締結されている。
【0038】
また、図3図4に示されるように、本実施形態では、スイングアーム4の平坦部3には、発電装置8の凸状係合部85が着脱可能な溝状凹部31が、側部立壁45に対し垂直方向に設けられている。
溝状凹部31は、後部立壁44に対し垂直方向に設けられてもよく、側部立壁45と後部立壁44の一方に対して垂直方向に設けられる。
また、本実施形態では、溝状凹部31は車幅方向に配向して2本設けられている。凸状係合部85は各溝状凹部31に対応して2カ所設けられている。
溝状凹部31は、凸状係合部85の拡径部85aが上方に抜け出ないように拡径部85aより溝幅の狭い上部溝部31aと、拡径部85aが溝方向に挿通できる溝幅の広い下部溝部85bとを備え、溝方向に側部立壁45がない側、すなわち車幅方向右端側の端部断面31cが溝方向に解放している。
そして、凸状係合部85と溝状凹部31とは、溝状凹部31の溝方向視で位置が一致している。
【0039】
したがって、発電装置8の凸状係合部85を、車幅方向右端側の端部断面31cに差し込むようにして、発電装置8を平坦部3上に滑り込ませるように載せて、仮置き状態にすることができる。その場合、側部立壁45により発電装置8の仮置き位置が規制できて、作業の容易さと安全性が得られ、メンテナンス性が向上することは前述のとおりである。
そのように、スイングアーム4の平坦部3の溝状凹部31に、発電装置8の凸状係合部85を容易に装着でき、凸状係合部85が溝状凹部31に嵌挿された状態で発電装置8の仮置き状態が得られ、調整操作が容易となり、発電装置8のスイングアーム4への取付け取外しが容易となっている。
【0040】
なお、図3に示すように、溝状凹部31の途中に、すべての発電装置8の凸状係合部85の拡径部85aが上下に通過できる溝幅拡大箇所31dを設けて、適宜平坦部3上に乗せた発電装置8の凸状係合部85を、上方から溝状凹部31に嵌めることができるようにしてもよい。
【0041】
また、図3中に2点鎖線で示すように、平坦部3の溝状凹部31を、車両前後方向に配向して設けて、発電装置8の凸状係合部85をそれに合わせた配置としても、同様の構成によって同様の効果が得られる。その場合の発電装置8の平坦部3への取付け取出し時のアクセスは車両前方向からとなる。
【0042】
図3に示されるように、本実施形態において、スイングアーム4の側部立壁45の平坦部3側には、溝状凹部31と平行な接続方向の電力入力コネクタ46が備えられている。電力入力コネクタ46はスイングアーム4内を経て、パワーコントロールユニット61に接続しいている。
また、図3図7に示されるように、発電装置8は、平坦部3に載置され凸状係合部85が溝状凹部31に嵌挿された状態で、電力入力コネクタ46と接続し得る位置に電力出力コネクタ86を備えている。
【0043】
そのため、スイングアーム4の平坦部3上を溝状凹部31に沿って発電装置8をスライドさせることで、スイングアーム4側の電力入力コネクタ46と発電装置8側の電力出力コネクタ86とを接続あるいは離脱させることが可能であり、発電装置8の取出し取付けにおいて電力回路の断接が同時に行えて、発電装置8の着脱性、メンテナンス性が向上している。
また、図7に示されるように、発電装置ケース80には、発電装置8を溝状凹部31に沿ってスライドさせたり、電力出力コネクタ86の電力入力コネクタ46との着脱する操作に際の、操作員の把持のためのハンドル80aが、電力出力コネクタ86と反対の側面に取付けられている。
【0044】
なお、平坦部3上の溝状凹部31が、図3に2点鎖線で示したように車両前後方向に配向して設けた場合は、スイングアーム4側の電力入力コネクタ46は後部立壁44の平坦部3側に設けられる。
【0045】
図6に示されるように、発電装置8は、スイングアーム4に取付けられた状態において、内蔵された内燃機関81のクランク軸81aが平坦部3に対して垂直に配向されている。
また、クランク軸81aの下端側には同軸心に交流発電機83が取付けられており、交流発電機83は内燃機関81のクランクケース81bの下方に配置されている。
そのように、スイングアーム4に取付けられた発電装置8において、重量物である交流発電機83がクランクケース81bの下方に配置されたので、発電装置8が安定するとともに、車両重心を下げることに寄与している。
【0046】
また、発電装置8の凸状係合部85が溝状凹部31に嵌挿され、スイングアーム4側の電力入力コネクタ46と発電装置8側の電力出力コネクタ86とが接続した状態で、図6に略図示するように、発電装置8の発電装置ケース80とスイングアーム4とには、発電機側締結孔87とスイングアーム側締結孔88とが、相互の位置が一致する位置に設けられている。
本実施形態では、発電機側締結孔87を雌ねじ孔として、スイングアーム側締結孔88から挿入された締結ボルト89で、発電装置8はスイングアーム4の平坦部3上に締結固定されている。
なお、図6の図示は一例であって、締結位置、締結個所数は、実施態様に従って適宜に設定可能であり、スイングアーム側締結孔88を雌ネジ孔として、発電機側締結孔87から締結ボルト89で、相互を締結固定してもよい。
また、発電機側締結孔87とスイングアーム側締結孔88を、ボルトとナットにより締結してもよい。
【0047】
以上、本発明のスクータ型電動二輪車の一実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、上述したもののほか、本発明の要旨の範囲でその他種々の変更が可能である。
なお、説明の便宜上、装置の左右配置は図示の実施形態に沿って説明したが、それに限定されず、左右配置が逆であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…電動二輪車(スクータ型電動二輪車)、2…車体フレーム、3…平坦部、4…スイングアーム、4a…ハンガブラケット、5…減速歯車機構、6…バッテリ、7…走行駆動モータ、8…発電装置、10…車体カバー、10c…バッテリカバー部、15…後輪、16…後車軸、18…着座シート、22…ロアフレーム、22a…水平部前端側、22b…水平部後端側、23…シートレール、24…ピボットプレート(本発明における「支持部」)、25…ピボット軸、26…前下連結パイプ、27…後下連結パイプ、28…床梁、31…溝状凹部、31a…上部溝部、31b…下部溝部、31c…端部断面、44…後部立壁(本発明における「立壁」)、45…側部立壁(本発明における「立壁」)、46…電力入力コネクタ、61…パワーコントロールユニット、71…モータ出力軸、80…発電装置ケース、80a…ハンドル、81…内燃機関、81a…クランク軸、81b…クランクケース、83…交流発電機、84…燃料タンク、85…凸状係合部、85a…拡径部、85b…ボルト、86…電力出力コネクタ、87…発電機側締結孔、88…スイングアーム側締結孔、89…締結ボルト
図1
図2
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図4
図5
図6
図7