【文献】
今井 淑夫,ポリイミドの構造と物性,エレクトロニクス実装学会誌,2001年11月01日,Vol. 4, No. 7,第640-646頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐熱性樹脂が、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエーテルケトン及びポリアミドイミドから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱離型シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧着対象物の熱圧着時における熱圧着温度のさらなる上昇が予想される。熱圧着温度のさらなる上昇により、例えば、従来よりも多くの層を積層した圧着対象物の熱圧着が可能となり、半導体チップの製造効率及び実装効率を高めることができる。しかし、特許文献1の離型用シートは、熱硬化性樹脂の一般的なモールド温度である最大200℃程度での使用が前提となっている。特許文献1では、熱加圧ヘッドによる熱圧着において今後予想される熱圧着温度のさらなる上昇について何も考慮されていない。また、特許文献1の離型用シートは、あくまでも熱硬化性樹脂のモールド成形に使用される離型用シートであって、熱加圧ヘッドによる熱圧着への使用は想定外である。
【0006】
本発明の目的は、熱加圧ヘッドによる熱圧着における熱圧着温度のさらなる上昇の要求に対してより確実に対応できる耐熱離型シートの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
熱加圧ヘッドによる圧着対象物の熱圧着時に前記圧着対象物と前記熱加圧ヘッドとの間に配置されて、前記圧着対象物と前記熱加圧ヘッドとの固着を防ぐための耐熱離型シートであって、
厚さ35μm以下の単層の耐熱性樹脂フィルムから構成され、
前記耐熱性樹脂フィルムを構成する耐熱性樹脂は、310℃以上の融点及び/又は210℃以上のガラス転移温度を有する耐熱離型シート、
を提供する。
【0008】
別の側面から、本発明は、
熱加圧ヘッドによる圧着対象物の熱圧着方法であって、
前記熱加圧ヘッドと前記圧着対象物との間に耐熱離型シートを配置した状態で、前記熱加圧ヘッドにより前記圧着対象物を熱圧着し、
前記耐熱離型シートが、上記本発明の耐熱離型シートである熱圧着方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
第一に、本発明の耐熱離型シートを構成する耐熱性樹脂フィルムは高い耐熱性を有している。第二に、本発明者らの検討によれば、熱圧着温度をさらに上昇させた熱加圧ヘッドによる熱圧着に特許文献1の離型用シートを使用した場合、表面の離型層の分解に伴う汚染が圧着対象物に生じる。しかし、本発明の耐熱離型シートによれば、当該シートが単層の耐熱性樹脂フィルムから構成されているため、圧着対象物に対する汚染を防ぐことができる。第三に、熱圧着温度をさらに上昇させた場合、とりわけ、従来よりも多くの層を積層した圧着対象物に対する熱圧着を実施する際には、熱加圧ヘッドと圧着対象物との間に配置される耐熱離型シートの熱伝導性が熱圧着の効率に大きな影響を与える。本発明の耐熱離型シートによれば、当該シートが単層であり、かつ所定以下の厚さを有しているため、良好な熱伝導性の確保が可能である。これらの点に基づき、本発明の耐熱離型シートは、熱加圧ヘッドによる熱圧着における熱圧着温度のさらなる上昇の要求に対してより確実に対応できる。
【0010】
なお、耐熱性樹脂フィルムは、耐熱性樹脂フィルムを構成する耐熱性樹脂の特性上、従来の熱圧着温度である200℃近傍では厚さ方向のクッション性に乏しいために熱加圧ヘッドによる圧力を圧着対象物に対して均一に印加することが難しく、このため、「熱加圧ヘッドによる熱圧着の耐熱離型シートとしては使用できない」と長年にわたり当業者に考えられ続けていた。しかし、本発明者らの検討によれば、熱圧着温度を例えば250℃程度、とりわけ300℃程度、にまで上昇させた場合には、意外にも、厚さ方向のクッション性を確保することが可能となり、熱加圧ヘッドによる熱圧着の耐熱離型シートとしての使用が可能となることが判明した。本発明の耐熱離型シートは、本発明者らの上記各検討に基づいたこれまでにない知見により達成されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
[耐熱離型シート]
本発明の耐熱離型シートの一例を
図1に示す。
図1に示す耐熱離型シート1は、ポリイミドフィルム2から構成される。
図1の耐熱離型シート1は、ポリイミドフィルム2の単層構造を有している。耐熱離型シート1は、フィルム2に含まれるポリイミドに由来する高い耐熱性を有している。耐熱離型シート1の耐熱性は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ素樹脂のフィルムから構成された耐熱離型シートに比べて高い。
【0014】
また、ポリイミドフィルム2は、例えばフッ素樹脂のフィルムに比べて、高温でも変形し難い。このため、ポリイミドフィルム2から構成された耐熱離型シート1は、高温での寸法安定性に優れている。この観点からも耐熱離型シート1は、熱加圧ヘッドによる熱圧着における熱圧着温度のさらなる上昇の要求に対してより確実な対応が可能となる。
【0015】
工業的な熱圧着工程では、一般に、圧着対象物の搬送経路に熱加圧ヘッドを配置し、当該経路を順次搬送されてくる圧着対象物を連続して熱圧着する。この熱圧着工程において、帯状の耐熱離型シートが、熱加圧ヘッドと圧着対象物との間に搬送により供給されることがある。この場合、耐熱離型シートには、熱加圧ヘッドによる熱とともに、搬送による長手方向への張力が加わる。しかし、ポリイミドフィルムは、高温下での引張力による伸びが少ない。このため、ポリイミドフィルム2を有する耐熱離型シート1は、上記供給時に安定して搬送できる。この観点からも耐熱離型シート1は、熱加圧ヘッドによる熱圧着における熱圧着温度のさらなる上昇の要求に対してより確実な対応が可能となる。
【0016】
ポリイミドフィルム2、及びポリイミドフィルム2から構成された耐熱離型シート1の厚さは、35μm以下である。厚さ35μm以下の単層のポリイミドフィルム2から構成されることにより、耐熱離型シート1では、良好な熱伝導性の確保が可能である。上記厚さの上限は、30μm以下、25μm以下、さらには20μm以下であってもよい。上記厚さの下限は、例えば5μm以上であり、5μm超、7μm以上、さらには10μm以上であってもよい。
【0017】
工業的な熱圧着工程において、熱加圧ヘッドと圧着対象物との間に帯状の耐熱離型シートが搬送により供給されることがあるのは上述のとおりである。この場合、1回の熱圧着ごとに新たな耐熱離型シートが供給されることが通常であり、言い換えると、毎回の熱圧着ごとに、常温から熱圧着温度にまで耐熱離型シートが加熱されて、必要な熱が圧着対象物に伝えられる。このため、耐熱離型シートが持つ熱伝導性の僅かな差が、熱圧着に要する時間であるワークタイムに与える影響は大きい。また、熱圧着温度が上昇するにつれて、この影響はさらに大きくなり、例えば、熱圧着工程による半導体チップの製造効率及び実装効率を大きく左右する。しかし、ポリイミドフィルム2から構成された耐熱離型シート1では、良好な熱伝導性の確保が可能である。したがって、耐熱離型シート1によれば、熱圧着温度のさらなる上昇の要求に加えてワークタイムの短縮の要求に対しても、より確実な対応を図ることができる。
【0018】
耐熱離型シート1の厚さ方向のクッション性は、熱機械分析(以下、「TMA」と記載する)のいわゆる「針入モード」により測定した当該シートの押込み硬さにより評価できる。耐熱離型シート1の250℃における押込み硬さは、式:A
250(%)=(d
250/t
0)×100により与えられる押込み度A
250により表示して、例えば3%以上であり、4%以上、5%以上、6%以上、6.5%以上、7%以上、さらには7.5%以上であってもよい。押込み度A
250の上限は、例えば15%以下である。また、耐熱離型シート1の300℃における押込み硬さは、式:A
300(%)=(d
300/t
0)×100により与えられる押込み度A
300により表示して、例えば3%以上であり、5%以上、6%以上、9%以上、9.5%以上、10%以上、10.5%以上、さらには11%以上であってもよい。押込み度A
300の上限は、例えば20%以下であり、15%以下であってもよい。ただし、t
0は、常温(20℃)における耐熱離型シート1の厚さである。d
250は、以下の測定条件に基づくTMAにより評価した、耐熱離型シート1に対する250℃での針入プローブの押込み量である。d
300は、以下の測定条件に基づくTMAにより評価した、耐熱離型シート1に対する300℃での針入プローブの押込み量である。
[測定条件]
・測定モード:針入モード、昇温測定
・針入プローブの形状及び先端径:円柱状及び1mmφ
・印加圧力:1MPa
・昇温開始温度及び昇温速度:20℃及び10℃/分
【0019】
耐熱離型シート1が、上述した範囲の押込み度A
250及び/又はA
300を有する場合、熱加圧ヘッドによる熱圧着における熱圧着温度のさらなる上昇の要求に対してさらに確実に対応できる。また、この場合、熱加圧ヘッドによる熱圧着の際に圧着対象物に対してより均一に圧力を印加できることで、例えば、圧着対象物の熱圧着精度及び効率を高めることができる。
【0020】
耐熱離型シート1の引張強度は、例えば200MPa以上であり、220MPa以上、240MPa以上、さらには260MPa以上であってもよい。引張強度の上限は、例えば500MPa以下である。これらの範囲の引張強度を有する耐熱離型シート1によれば、熱加圧ヘッドと圧着対象物との間への搬送による供給をより確実かつ安定して実施できる。
【0021】
耐熱離型シート1の最大引張伸びは、例えば200%以下であり、180%以下、150%以下、100%以下、50%以下、40%以下、さらには35%以下であってもよい。最大引張伸びの下限は、例えば5%以上である。これらの範囲の最大引張伸びを有する耐熱離型シート1によれば、熱加圧ヘッドと圧着対象物との間への搬送による耐熱離型シート1の供給時に、熱加圧ヘッド及び/又は圧着対象物と耐熱離型シート1との間に部分的に接合が生じたときにも、伸びによってシート1がこれらの部材に追従することを抑制できる。言い換えると、熱加圧ヘッド及び/又は圧着対象物に対する耐熱離型シート1の離型性をさらに向上できる。
【0022】
ポリイミドフィルム2、及びポリイミドフィルム2から構成された耐熱離型シート1は、通常、非多孔質シートであり、水等の流体(fluid)を厚さ方向に透過しない不透性シートである。また、ポリイミドフィルム2、及びポリイミドフィルム2から構成された耐熱離型シート1は、ポリイミドの有する高い絶縁性に基づいて、絶縁シート(非導電シート)であってもよい。
【0023】
耐熱離型シート1の形状は、例えば、正方形及び長方形を含む多角形、円形、楕円形、並びに帯状である。多角形の角は丸められていてもよい。ただし、耐熱離型シート1の形状は、これらの例に限定されない。多角形、円形及び楕円形の耐熱離型シート1は枚葉としての流通が、帯状の耐熱離型シート1は、巻芯に巻回した巻回体(ロール)としての流通が、それぞれ可能である。帯状である耐熱離型シート1の幅、及び、帯状である耐熱離型シート1を巻回した巻回体の幅は自由に設定できる。
【0024】
ポリイミドフィルム2を構成するポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合重合体である。ただし、ポリイミドフィルム2を構成するポリイミドは、上記例に限定されない。また、ポリイミドが上記縮合重合体である場合、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類は限定されない。ポリイミドフィルム2を構成するポリイミドは、典型的には、芳香族ポリアミドである。
【0025】
耐熱離型シート1は、例えば、一般的なポリイミドフィルムの製造方法に基づいて製造できる。製造方法の一例を以下に示す。最初に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとからポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液を形成する。次に、形成したポリアミック酸溶液を基材シートの表面に塗布する。基材シートは、例えば、樹脂、金属、紙及びこれらの複合材料から構成される。基材シートにおけるポリアミック酸溶液を塗布する表面には、基材シートからのポリイミドフィルムの剥離を容易にするための剥離処理が施されていてもよい。剥離処理には公知の方法を適用できる。基材シートへのポリアミック酸溶液の塗布には、公知の各種のコーターを使用できる。基材シートをポリアミック酸溶液に浸漬することにより、基材シートの表面にポリアミック酸溶液を塗布してもよい。次に、基材シートの表面に形成したポリアミック酸溶液の塗布膜に対してイミド化を進行させてポリイミドフィルムを形成する。イミド化は、例えば、加熱及び/又は触媒の添加により進行させることができる。次に、溶媒等を除去するための後加熱を必要に応じて実施した後、形成したポリイミドフィルムを基材シートから剥離して、ポリイミドフィルム2が得られる。得られたポリイミドフィルム2は、そのまま耐熱離型シート1として使用しても、所定の処理を経た後に耐熱離型シート1として使用してもよい。この方法では、基材シートに対するポリアミック酸溶液の塗布厚みによって、得られるポリイミドフィルム2の厚さを制御できる。
【0026】
耐熱離型シート1は、ポリイミド以外の耐熱性樹脂から構成されていてもよい。耐熱性樹脂は、310℃以上の融点及び/又は210℃以上のガラス転移温度を有する。融点は、310℃超、315℃以上、320℃以上、さらには325℃以上であってもよい。融点の上限は、例えば400℃以下である。ガラス転移温度は、220℃以上、230℃以上、240℃以上、さらには250℃以上であってもよい。ガラス転移温度は、例えば300℃以下である。なお、本明細書における「樹脂の融点」とは、示差走査熱量測定(以下、「DSC」と記載)において一定の昇温速度、例えば10℃/分、で樹脂を昇温した場合に測定される「結晶融解に基づく吸熱ピーク」のピーク温度を意味する。また、本明細書における「樹脂のガラス転移温度」とは、DSCにおいて一定の昇温速度、例えば10℃/分、で樹脂を昇温した場合に測定される「ガラス転移に基づく吸熱ピーク」のピーク温度を意味する。
【0027】
耐熱性樹脂は、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエーテルケトン及びポリアミドイミドから選ばれる少なくとも1種である。耐熱性樹脂は、ポリイミド及び/又は芳香族ポリエーテルケトンであってもよい。芳香族ポリエーテルケトンは、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトンである。芳香族ポリエーテルケトンは、PEEKであってもよい。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素樹脂は、耐熱性樹脂から除かれていてもよい。
【0028】
ポリイミドフィルム2以外の耐熱性樹脂フィルムから構成された耐熱離型シート1は、ポリイミドフィルム2の単層構造の代わりに当該耐熱性樹脂フィルムの単層構造を有する以外は、ポリイミドフィルム2から構成された上述の耐熱離型シート1と同様の構成及び/又は特性を有しうる。また、ポリイミドフィルム2以外の耐熱性樹脂フィルムは、当該フィルムを構成する材料がポリイミドではなく他の耐熱性樹脂である以外は、ポリイミドフィルム2と同様の構成及び/又は特性を有しうる。
【0029】
ポリイミドフィルム2以外の耐熱性樹脂フィルムは、例えば、溶融押出等の各種のフィルム成形手法に基づいて製造できる。
【0030】
別の側面から、本発明は、
熱加圧ヘッドによる圧着対象物の熱圧着時に前記圧着対象物と前記熱加圧ヘッドとの間に配置されて、前記圧着対象物と前記熱加圧ヘッドとの固着を防ぐための耐熱離型シートであって、
厚さ35μm以下の単層の耐熱性樹脂フィルムから構成され、
前記耐熱性樹脂フィルムを構成する耐熱性樹脂は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエーテルケトン及びポリアミドイミドから選ばれる少なくとも1種である、耐熱離型シート、
を提供する。この耐熱離型シートは、ポリイミドフィルム2から構成された上述の耐熱離型シート1と同様の構成及び/又は特性を有しうる。
【0031】
[耐熱離型シートの使用]
図2に示すように、耐熱離型シート1は、熱加圧ヘッド21による圧着対象物22の熱圧着時に熱加圧ヘッド21と圧着対象物22との間に配置して両者の固着を防ぐ耐熱離型シートとして使用できる。耐熱離型シート1は離型性に優れている。耐熱離型シート1によれば、熱圧着時の熱による、熱加圧ヘッド21及び/又は圧着対象物22に対する当該シート1の固着(熱固着)を防ぐことができる。
【0032】
耐熱離型シート1は、熱加圧ヘッド21と圧着対象物22との間に搬送により供給及び配置してもよい。搬送により供給及び配置される耐熱離型シート1は、例えば、帯状である。
【0033】
圧着対象物22は、例えば、半導体チップ、PCB、電子部品である。耐熱離型シート1は、例えば、熱圧着による半導体チップの製造及びフリップチップ実装、PCBの製造、並びに電子部品の接続等に使用できる。
【0034】
熱圧着時における熱加圧ヘッド21の加熱設定温度、言い換えると、耐熱離型シート1の使用温度は、例えば250℃以上とすることができる。使用温度は、260℃以上、270℃以上、280℃以上、290℃以上、さらには300℃以上であってもよい。ただし、耐熱離型シート1の使用温度は、これらの範囲に限定されない。
【0035】
[熱圧着方法]
本発明の耐熱離型シート1を用いて圧着対象物22を熱圧着できる。当該熱圧着方法は、熱加圧ヘッド21による圧着対象物22の熱圧着方法であって、熱加圧ヘッド21と圧着対象物22との間に耐熱離型シート1を配置した状態で、熱加圧ヘッド21により圧着対象物22を熱圧着する。耐熱離型シート1は、例えば搬送により、熱加圧ヘッド21と圧着対象物22との間に供給及び配置できる。
【0036】
[熱圧着物の製造方法]
本発明の耐熱離型シート1を用いて熱圧着物を製造できる。当該熱圧着物の製造方法は、熱加圧ヘッド21と圧着対象物22との間に耐熱離型シート1を配置した状態で熱加圧ヘッド21を用いた圧着対象物22の熱圧着を実施して、圧着対象物22の熱圧着体である熱圧着物を得る工程、を含む。熱圧着物の例は、PCB及び電子部品である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0038】
最初に、本実施例において作製した耐熱離型シートの評価方法を示す。
【0039】
[熱圧着時の離型性]
熱圧着時における離型性を以下のように評価した。
【0040】
熱加圧ヘッドとステージとを備える熱圧着装置(東レエンジニアリング製、フリップチップボンダーFC−3000W)のステージ上に、模擬的な圧着対象物として半導体チップ(サイズ7.3mm×7.3mm、厚さ725μm)を配置し、さらに当該半導体チップの上に、サイズ75mm×75mmに裁断した評価対象の耐熱離型シートを配置した。耐熱離型シートは、ステージの配置面に垂直な方向から見て、耐熱離型シートのほぼ中央に半導体チップが位置するように配置した。ステージの設定温度は120℃とした。次に、熱加圧ヘッドを20Nの加圧圧力に達するように下降させた後、当該ヘッドを300℃に昇温して加圧時間10秒の熱圧着試験を実施して、熱加圧ヘッド又は圧着対象物である半導体チップに対する耐熱離型シートの熱固着が生じるかを評価した。熱圧着試験後に熱加圧ヘッド又は半導体チップから耐熱離型シートが自然に、又は手で当該シートを引っ張ることにより剥離した場合を離型性良(○)、手で当該シートを引っ張っても剥離しなかった場合を離型性不可(×)と判断した。
【0041】
[熱圧着時の熱伝導性]
熱圧着時における熱伝導性を以下のように評価した。具体的な評価方法を、
図3を参照しながら説明する。
【0042】
模擬的なフリップチップ実装を想定して、熱加圧ヘッド57とステージ51とを備える熱圧着装置(東レエンジニアリング製、フリップチップボンダーFC−3000W)のステージ51上に、シリコン基盤52(厚さ360μm)、NCFを想定した接着シート53(日東電工製、EM−350ZT−P、厚さ60μm)及び半導体チップ54(サイズ7.3mm×7.3mm、厚さ725μm)を順に配置した。なお、接着シート53の中に、熱圧着試験時における接着シート53の最大到達温度を測定するための熱電対55を埋め込んだ。熱電対55は、ステージ51の配置面に垂直な方向から見て、接着シート53のほぼ中央に先端の測定部が位置するように配置した。次に、半導体チップ54上に、サイズ150mm×150mmに裁断した評価対象の耐熱離型シート56を配置した。耐熱離型シート56は、ステージ51の配置面に垂直な方向から見て、耐熱離型シート56のほぼ中央に半導体チップ54が位置するように配置した。ステージ51の設定温度は120℃とした。次に、熱加圧ヘッド57を20Nの加圧圧力に達するように下降させた後、当該ヘッドを300℃に昇温して加圧時間10秒の熱圧着試験を実施して、試験時における接着シート53の最大到達温度を熱電対55により測定し、測定した最大到達温度により、熱加圧ヘッドを用いた熱圧着時における耐熱離型シートの熱伝導性を評価した。
【0043】
[耐熱性]
280℃、290℃又は300℃に設定した半田ごての先端を押し当てることにより、耐熱性を評価した。具体的には、上記各温度に設定した半田ごての先端を評価対象の耐熱離型シートの表面に10秒押し当て、耐熱離型シートの表面が半田ごての熱により溶融しなかった場合を耐熱性良(○)、溶融した場合を耐熱性不可(×)と判断した。
【0044】
[厚さ方向のクッション性(押込み硬さ)]
250℃及び300℃の各温度における厚さ方向のクッション性として、押込み度A
250及び押込み度A
300を上述の方法により評価した。具体的には、次のとおりである。最初に、評価対象である耐熱離型シートを7mm×7mmの正方形に切り出して試験片を得た。次に、厚さt
0として、試験片の厚さをマイクロメーター(ミツトヨ製)により測定した。次に、TMA測定装置(BRUKER製、TMA4000S)の評価台上に試験片を戴置し、径1mmの円柱状の針入プローブを使用して、針入モード及び昇温測定の測定モードにて、試験片に対する250℃及び300℃での針入プローブの押込み量d
250及びd
300を測定した。なお、試験片に加える印加圧力は1MPaの一定圧力とし、昇温開始温度を20℃、昇温速度を10℃/分とした。そして、測定された厚さt
0及び押込み量d
250,d
300から、式:A
250(%)=(d
250/t
0)×100により押込み度A
250を、式:A
300(%)=(d
300/t
0)×100により押込み度A
300を、それぞれ求めた。
【0045】
[引張強度及び最大引張伸び]
引張強度(引張破断強度)及び最大引張伸びは、引張試験機(島津製作所製、AG−I)を用いた引張試験により求めた。引張方向は、耐熱離型シートの長手方向(MD方向)とした。試験片の形状は、JIS K6251:1993に定められたダンベル1号形とした。測定条件は、測定温度25℃、試験片の標線間距離40mm、チャック間距離70mm及び引張速度200mm/分とした。最大引張伸びは、試験前の上記標線間距離と、破断時の標線間距離とから算出した。
【0046】
(実施例1)
実施例1の耐熱離型シートとして、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン100H)を準備した。
【0047】
(実施例2)
実施例2の耐熱離型シートとして、厚さ17.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン70H)を準備した。
【0048】
(比較例1)
比較例1の耐熱離型シートとして、厚さ25μmのPFAフィルム(ダイキン工業製、ネオフロン PFA AF−0025)を準備した。
【0049】
(実施例3)
実施例3の耐熱離型シートとして、厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン50H)を準備した。
【0050】
(実施例4)
実施例4の耐熱離型シートとして、厚さ25μmのPEEKフィルム(信越ポリマー製、Shin-Etsu Sepla Film)を準備した。
【0051】
実施例及び比較例の耐熱離型シートに対する特性の評価結果を以下の表1に示す。比較例1の熱伝導性(最大到達温度)は、耐熱離型シートが溶融したため、測定不能であった。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、実施例の耐熱離型シートは、耐熱性及び離型性に優れるとともに、熱加圧ヘッドによる熱圧着を想定した熱伝導性試験において、優れた熱伝導性を示した。なお、PFAフィルムから構成された比較例1の耐熱離型シートにおいて押込み度A
250が負の値、押込み度A
300が正の値となったが、これは、PFAフィルムが200〜280℃の温度域において大きな熱膨張を示した後、280℃以上の温度において急激に熱軟化することを反映している。