【文献】
Xin Zhao et al.,In-Plane Vacancy-Enabled High-Power Si-Graphene Composite Electrode for Lithium-Ion Batteries,Advanced Energy Materials,2011年,Vol 1,1079-1084
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本明細書に開示された発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し
、本明細書に開示された発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本明細書
に開示された発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変
更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限
定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機
能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、同様のも
のを指す際には同じハッチパターンを使用し、特に符号を付さない場合がある。
【0036】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、説明を分かりやすくす
るために、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示す
る発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0037】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同
を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0038】
[実施の形態1]
本実施の形態では、まず、リチウム二次電池の負極及びその作製方法について
図1を用い
て以下に説明する。
【0039】
<負極の作製方法>
まず、酸化グラフェンの作製方法について説明する。酸化グラフェンは、例えば、単結晶
グラファイト粉末に、過マンガン酸カリウムの硫酸溶液、過酸化水素水等を加えて酸化反
応させて酸化グラファイトを含む分散液を作製する方法を用いて作製することができる。
当該酸化グラファイトは、グラファイトの炭素の酸化により、エポキシ基、カルボニル基
、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基を有する。
【0040】
また、酸化グラファイトが上記のような官能基を有することで、複数のグラフェンの層間
距離がグラファイトと比較して長くなる。
【0041】
次に、酸化グラファイトを含む分散液に、超音波振動を加えることで、層間距離が長い酸
化グラファイトを劈開し、酸化グラフェンを分離すると共に、酸化グラフェンを含む分散
液を作製することができる。そして、酸化グラフェンを含む分散液から溶媒を取り除くこ
とで、酸化グラフェンを得ることができる(ステップS101)。
【0042】
酸化グラフェンは極性を有する溶液中においては、官能基によりマイナスに帯電するため
、異なる酸化グラフェン同士で凝集しにくい。このため、極性を有する液体においては、
均一に酸化グラフェンが分散しやすい。
【0043】
また、用いる酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう)は数μm〜数十μ
mであることが好ましい。
【0044】
なお、本明細書中において、グラフェンとは、リチウム等のイオンを通過させる空隙を有
する1原子層の炭素分子で構成された1枚の薄片、又は該1枚の薄片が2枚乃至100枚
積層された積層体をいう。なお、該積層体は還元された多層グラフェンとも呼ぶことがで
きる。
【0045】
単層グラフェン(上記1原子層の炭素分子で構成された1枚の薄片)には、炭素で構成さ
れる六員環が平面方向に広がっており、一部に、七員環、八員環、九員環、十員環等の、
六員環の一部の炭素結合が切断された多員環が形成される。
【0046】
また、本明細書において、酸化グラフェンとは、炭素で構成される六員環等の多員環に酸
素原子が結合しているグラフェンであり、具体的には、炭素で構成される六員環又は多員
環にエポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基又は水酸基などが結合しているグラフェ
ンである。そのため、酸化グラフェンは、炭素原子、酸素原子、窒素原子の和のうち酸素
原子の割合が15原子%を超えるものをいう。また、酸化グラフェンは、その作製方法に
よって、酸化グラフェン塩を形成していることがある。当該酸化グラフェン塩は、例えば
、炭素で構成される六員環等の多員環に結合しているエポキシ基、カルボニル基、カルボ
キシル基又は水酸基に、アンモニウム基、アミノ基、アルカリ金属等が結合している塩で
ある。そこで、本明細書において、「酸化グラフェン」は、「酸化グラフェン塩」を含む
ものである。なお、酸化グラフェン及び酸化グラフェン塩は、1枚の薄片、又は該1枚の
薄片が2枚乃至100枚積層された積層体を含み、当該積層体を多層酸化グラフェン及び
多層酸化グラフェン塩とも呼ぶことができる。
【0047】
なお、本明細書において、還元された酸化グラフェンとは、還元により炭素同士のπ結合
(すなわちC=C結合に由来するsp
2軌道)を有する酸化グラフェンということができ
る。当該酸化グラフェンは、C=C結合、C−C結合またはC−H結合、C−O結合、C
=O結合、O=C−O結合の和に対してC=C結合の割合が5%以上であることが好まし
い。
【0048】
また、還元された酸化グラフェンとは、酸化グラフェンを還元したことにより酸素の割合
が減少した酸化グラフェンということもできる。当該酸化グラフェンは、炭素原子、酸素
原子、窒素原子の和に対して酸素原子の割合が2原子%以上20原子%以下、好ましくは
3原子%以上15原子%以下である。
【0049】
また、還元された酸化グラフェンは、還元により炭素同士のπ結合が生成されたことで導
電性が向上した酸化グラフェンということもできる。当該酸化グラフェンは、電気伝導率
が10
−6S/m以上であることが好ましい。
【0050】
なお、酸化グラフェンは、市販の酸化グラフェン、または市販の酸化グラフェン分散液を
用いてもよい。
【0051】
次いで、粒子状の負極活物質、酸化グラフェン、及び結着剤を混合する(ステップS10
2)。
【0052】
負極活物質としては、上述のように、例えばシリコンなど、キャリアイオンの吸蔵及び放
出が可能な材料が用いられる。シリコンは、炭素に比べ、約10倍のキャリアイオンを吸
蔵することが可能であるため、理論容量が大きく、蓄電装置の大容量化という点において
優れている。
【0053】
また、負極活物質として、シリコン以外にも、例えば、リチウム、アルミニウム、炭素系
材料、スズ、酸化スズ、酸化シリコン、炭化シリコン、シリコン合金、又はゲルマニウム
などを用いることができる。又は、リチウム、アルミニウム、炭素系材料、スズ、酸化ス
ズ、シリコン、酸化シリコン、炭化シリコン、シリコン合金、及びゲルマニウムから選択
される一以上を含む化合物でもよい。また、シリコン、シリコン合金、ゲルマニウム、リ
チウム、アルミニウム、及びスズの方が、炭素系材料に比べてリチウムイオンを吸蔵でき
る容量が大きいので好適である。
【0054】
本実施の形態では、粒子状の負極活物質としてシリコン粒子を用いる。
【0055】
なお、活物質とは、キャリアであるイオンの挿入及び脱離に関わる物質を指す。電極(正
極又は負極、あるいはその両方)を作製する時には、活物質と共に、導電助剤、結着剤、
溶媒等の他の材料を混合したものを活物質層として集電体上に形成する。よって、活物質
と活物質層は区別される。よって正極活物質及び正極活物質層、並びに、負極活物質及び
負極活物質層は区別される。
【0056】
シリコンは炭素と比較すると導電性が低く、また、充放電による非晶質化によりさらに電
気導電性が低下するため、シリコンを活物質とする負極は導電性が低くなる。しかしなが
ら、グラフェンは導電性が高いため、シリコンをグラフェンで被覆することで、キャリア
イオンが通過する場であるグラフェンにおいて電子の移動を高速化することができる。す
なわち、グラフェンは導電助剤としても機能する。また、グラフェンは厚さの薄いシート
状であるため、複数シリコン粒子をグラフェンで覆うことで、活物質層に含まれるシリコ
ン量をより多くすることが可能である。すなわち、グラフェンは結着剤としても機能する
。複数のシリコン粒子をグラフェンで覆うことで、活物質層に含まれるシリコン量をより
多くすることが可能であると共に、キャリアイオンの移動がグラファイトに比べて容易と
なる。これらの結果、キャリアイオンの導電性を高めることができ、活物質であるシリコ
ン及びキャリアイオンの反応性を高めることが可能であり、キャリアイオンがシリコンに
吸蔵されやすくなる。このため、当該負極を用いた非水系二次電池において、急速充放電
が可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、結着剤として、耐熱性の高い結着剤、例えばポリイミドを用い
る。ただし、当該混合工程(ステップS102)において混合される物質は、ポリイミド
の前駆体であり、後の加熱工程にて当該前駆体がイミド化され、ポリイミドとなる。
【0058】
上述の粒子状の負極活物質、酸化グラフェン、及び結着剤を混合する方法には、例えば、
ボールミル処理がある。具体的な方法としては、例えば、秤量した粒子状の負極活物質、
酸化グラフェン、及び結着剤に溶媒を添加(ステップS103)して、金属製またはセラ
ミック製のボールとともに容器に入れ、容器を回転させる。ボールミル処理を行うことに
より、粒子状の負極活物質、酸化グラフェン、及び結着剤の混合と同時に微粒子化を行う
ことができ、作製後の電極用材料の微粒子化を図ることが可能となる。また、ボールミル
処理を行うことにより、原料となる粒子状の負極活物質、酸化グラフェン、及び結着剤を
均一に混合することができる。なお、溶媒としては原料が溶解せず、原料が溶媒に分散す
る溶媒を用いることができる。本実施の形態では、負極活物質として、平均粒径60nm
のシリコン粒子を用い、導電助剤兼結着剤として酸化グラフェン、結着剤としてポリイミ
ドを、重量パーセントで40:40:20の比率となるように秤量した。これにより、負
極活物質であるシリコン粒子及び酸化グラフェンの質量は同じとなる。また、本実施の形
態では、溶媒として、N−メチルピロリドン(N−methylpyrrolidone
(NMP)を用いる。
【0059】
以上の工程にて、粒子状の負極活物質、酸化グラフェン、結着剤、及び溶媒が混合された
スラリーを形成する(ステップS104)。
【0060】
次に、負極集電体上にスラリーを塗布する(ステップS105)。そして、当該スラリー
を乾燥して溶媒を除去する乾燥工程を行う(ステップS106)。当該乾燥工程は、例え
ば、室温における乾燥雰囲気中などで行うことができる。なお、後の加熱工程にて溶媒を
除去可能な場合は、必ずしも当該乾燥工程を行う必要はない。
【0061】
負極集電体にはチタン、アルミ、銅又はステンレスなどの導電材料を箔状、板状又は網状
等の形状にしたものを用いることができる。本実施の形態では、負極集電体として、チタ
ン箔を用いる。
【0062】
次いで、当該スラリーが塗布された負極集電体の加熱を行う。当該加熱工程は、加熱温度
が200℃以上400℃以下の温度、好ましくは300℃で、加熱時間が1時間以上2時
間以下、好ましくは1時間で行う。当該加熱工程によりスラリーが焼成されて、上記ポリ
イミドの前駆体がイミド化されポリイミドとなる。また、同時に、当該加熱工程により、
酸化グラフェンが還元され、グラフェンを形成することができる(ステップS107)。
以上のようにして、負極活物質層を形成する。
【0063】
本実施の形態により、スラリー焼成の加熱工程を、酸化グラフェン還元のための加熱工程
と兼ねることができるため、加熱工程を二回行う必要がない。よって、負極の作製工程を
削減することが可能である。
【0064】
また、本実施の形態では、スラリー焼成及び酸化グラフェン還元のための加熱工程を、結
着剤が分解されない温度、例えば200℃以上400℃以下の温度、好ましくは300℃
で行う。これにより、結着剤が分解されることを防ぐことができる。また、結着剤が分解
されない温度で加熱することにより、負極の破壊を抑制できる。負極が破壊されないので
、リチウム二次電池の信頼性が低下されるのを防ぐことが可能である。
【0065】
また、上述のように、還元した酸化グラフェンは分散性が低く、活物質と還元した酸化グ
ラフェンを混合した場合、還元した酸化グラフェンと活物質が均一に混合されない恐れが
ある。還元した酸化グラフェンと活物質が均一に混合されない場合、作製されたリチウム
二次電池の電気特性が低いという恐れが生じる。
【0066】
酸化グラフェンはグラファイトを酸化することによって形成されるが、当該酸化によって
形成された官能基が分散性に寄与するため、酸化グラフェンは分散性が高い。しかしなが
ら、酸化グラフェンを還元する過程において、当該分散性に寄与する官能基が還元されて
減少するため、還元した酸化グラフェンの分散性は低い。
【0067】
酸化グラフェンと活物質を混合した後に、当該混合物を加熱して形成した電極(負極)で
は、官能基が還元されて減少する前に酸化グラフェンが分散されているため、当該還元さ
れた酸化グラフェンは均一に分散されている。よって、電極(負極)を用いたリチウム二
次電池は、その電気特性が高いという利点がある。
【0068】
以上述べた作製工程にて、負極集電体上に形成された負極活物質層を有する負極を形成す
る(ステップS108)。
【0069】
<負極の構造>
上述の作製工程により作製された負極を
図2に示す。
図2(A)は負極101の断面図で
ある。負極101は、負極集電体107上に負極活物質層109が形成される。負極集電
体107として、上述の材料及び上述の形状を有する負極集電体を用いればよい。
【0070】
図2(B)は、負極活物質層109として、キャリアイオンの吸蔵及び放出が可能な粒子
状の負極活物質121と、当該負極活物質121の複数を覆いつつ、当該負極活物質12
1が内部に詰められたグラフェン123(上記還元された酸化グラフェン)、及び結着剤
で構成される負極活物質層109の上面図である。複数個の負極活物質121の表面を異
なるグラフェン123が覆う。また、一部において、負極活物質121が露出していても
よい。
【0071】
また、負極活物質121の表面にグラフェン123が被覆されていなくとも十分な特性が
得られるが、グラフェン123が負極活物質121を十分に被覆していると、キャリアイ
オンが負極活物質121間をホッピングし、電流が流れやすくなるためより好適である。
【0072】
図2(C)は、
図2(B)の負極活物質層109の一部における断面図である。負極活物
質121、及び該負極活物質121を覆うグラフェン123を有する。グラフェン123
は断面図においては線状で観察される。同一のグラフェンまたは複数個のグラフェンによ
り、複数個の負極活物質121を内包する。即ち、同一のグラフェンまたは複数個のグラ
フェンの間に、複数個の負極活物質121が内在する。なお、グラフェンは袋状になって
おり、該内部において、複数個の負極活物質121を内包する場合がある。また、グラフ
ェン123に覆われず、一部の負極活物質121が露出している場合がある。
【0073】
なお、キャリアイオンの吸蔵により体積が膨張する負極活物質121では、充放電により
負極活物質層109が脆くなり、負極活物質層109の一部が崩落してしまう恐れがある
。負極活物質層109の一部が崩落してしまうと、蓄電装置の信頼性が低下する。しかし
ながら、負極活物質121が充放電により体積膨張しても、当該周囲をグラフェン123
が覆うため、グラフェン123は負極活物質121の分散や負極活物質層109の崩落を
妨げることが可能である。即ち、グラフェン123は、充放電にともない負極活物質12
1の体積が増減しても、負極活物質121同士の結合を維持する機能を有する。
【0074】
また、グラフェン123は、複数個の負極活物質121と接しており、導電助剤としても
機能する。また、キャリアイオンの吸蔵及び放出が可能な負極活物質121を保持する機
能を有する。このため、負極活物質層109に占める負極活物質の割合を増加させること
が可能であり、リチウム二次電池の放電容量を高めることができる。
【0075】
図3は、本実施の形態の負極活物質層109の断面SEM写真である。
図3の断面SEM
写真では、複数のグラフェンの層の間に複数の粒子状のシリコンが挟まれていることが示
されている。別言すれば、当該複数の粒子状のシリコンは、複数のグラフェンの層により
覆われている。これにより、導電性の高いグラフェンでシリコンを被覆することで、電子
の移動を高速化することができる。また、炭素と比較して約10倍のキャリアイオンを吸
蔵するシリコンであるが、キャリアイオンの吸蔵により体積が膨張する膨張率が高い。し
かしながら、上述のように、当該複数の粒子状のシリコンの周囲をグラフェンが覆ってい
るため、粒子状のシリコンが分散すること、粒子状のシリコンが分散して負極活物質層1
09が崩壊するのを防ぐことが可能である。
【0076】
以上本実施の形態により、電極作製工程において、作製工程数を削減することができる。
【0077】
また、本実施の形態により、電極の破壊を抑制することができる。
【0078】
また、本実施の形態により、電極の破壊を抑制することにより、信頼性の高い蓄電装置を
得ることができる。
【0079】
また、本実施の形態により、均一に分散された還元された酸化グラフェンを有する電極を
得ることができる。
【0080】
また、本実施の形態により、均一に分散された還元された酸化グラフェンを有する電極を
用いることにより、電気特性が高いリチウム二次電池を得ることができる。
【0081】
[実施の形態2]
本実施の形態では、リチウム二次電池の構造及び製造方法の一形態について、以下に説明
する。
【0082】
図4(A)は、コイン形(単層式偏平型)のリチウム二次電池の外観図であり、
図4(B
)は、その断面図である。
【0083】
コイン形のリチウム二次電池600は、正極端子を兼ねた正極缶603と負極端子を兼ね
た負極缶601とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット602で絶縁シールされ
ている。正極610は、正極集電体608とこれに接するように設けられた正極活物質層
607により形成される。一方、負極609は、負極集電体604とこれに接するように
設けられた負極活物質層605により形成される。正極活物質層607と負極活物質層6
05との間にはセパレータ606と、液体の電解質として非水電解液(図示せず)を有す
る。
【0084】
負極は、実施の形態1に示す負極101を適宜用いて形成すればよい。
【0085】
正極集電体608及び正極活物質層607はそれぞれ、以下示す正極集電体及び正極活物
質層を適宜用いることができる。
【0086】
正極集電体608には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等
の金属、及びこれらの合金など、導電性の高い材料を用いることができる。また、シリコ
ン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加
されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを
形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素
としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム
、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。正極集電体608は、箔状
、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜
用いることができる。
【0087】
正極活物質層607は、LiFeO
2、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、
V
2O
5、Cr
2O
5、MnO
2等の化合物を材料として用いることができる。
【0088】
または、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物(一般式LiMPO
4(Mは、Fe(
II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上))を用いることができる
。一般式LiMPO
4の代表例としては、LiFePO
4、LiNiPO
4、LiCoP
O
4、LiMnPO
4、LiFe
aNi
bPO
4、LiFe
aCo
bPO
4、LiFe
a
Mn
bPO
4、LiNi
aCo
bPO
4、LiNi
aMn
bPO
4(a+bは1以下、0
<a<1、0<b<1)、LiFe
cNi
dCo
ePO
4、LiFe
cNi
dMn
ePO
4、LiNi
cCo
dMn
ePO
4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0
<e<1)、LiFe
fNi
gCo
hMn
iPO
4(f+g+h+iは1以下、0<f<
1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を材料として用いること
ができる。
【0089】
または、一般式Li
(2−j)MSiO
4(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(
II),Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等の複合酸化物を用いることができる。一
般式Li
(2−j)MSiO
4の代表例としては、Li
(2−j)FeSiO
4、Li
(
2−j)NiSiO
4、Li
(2−j)CoSiO
4、Li
(2−j)MnSiO
4、L
i
(2−j)Fe
kNi
lSiO
4、Li
(2−j)Fe
kCo
lSiO
4、Li
(2−
j)Fe
kMn
lSiO
4、Li
(2−j)Ni
kCo
lSiO
4、Li
(2−j)Ni
kMn
lSiO
4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li
(2−j)Fe
m
Ni
nCo
qSiO
4、Li
(2−j)Fe
mNi
nMn
qSiO
4、Li
(2−j)N
i
mCo
nMn
qSiO
4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1
)、Li
(2−j)Fe
rNi
sCo
tMn
uSiO
4(r+s+t+uは1以下、0<
r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等の化合物を材料として用いることがで
きる。
【0090】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属
イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、正極活物質層607とし
て、上記リチウム化合物及び複合酸化物において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(
例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロン
チウム、バリウム等)、ベリリウム、またはマグネシウムを用いてもよい。
【0091】
また、正極活物質層607は、正極集電体608上に直接接して形成する場合に限らない
。正極集電体608と正極活物質層607との間に、正極集電体608と正極活物質層6
07との密着性の向上を目的とした密着層や、正極集電体608の表面の凹凸形状を緩和
するための平坦化層、放熱のための放熱層、正極集電体608又は正極活物質層607の
応力を緩和するための応力緩和層等の機能層を、金属等の導電性材料を用いて形成しても
よい。
【0092】
また、正極活物質層607は、実施の形態1の負極活物質層109と同様に、グラフェン
を含んでいてもよい。正極活物質層607にグラフェンが含まれている場合について以下
に説明する。
【0093】
図5(A)は、正極集電体608とこれに接するように設けられた正極活物質層607を
有する正極610の断面図である。
図5(B)は、正極活物質層607として、キャリア
イオンの吸蔵放出が可能な粒子状の正極活物質303と、当該正極活物質303の複数を
覆いつつ、当該正極活物質303が内部に詰められたグラフェン304で構成される正極
活物質層607の上面図である。複数の正極活物質303の表面を異なるグラフェン30
4が覆う。また、一部において、正極活物質303が露出していてもよい。
【0094】
また、正極活物質303の表面にグラフェン304が被覆されていなくとも十分な特性が
得られるが、グラフェン304で被覆されている正極活物質303を用いると、キャリア
イオンが正極活物質303間をホッピングし、電流が流れやすくなるためより好ましい。
【0095】
図5(C)は、
図5(B)の正極活物質層607の一部における断面図である。正極活物
質303、及び該正極活物質303を覆うグラフェン304を有する。グラフェン304
は断面図においては線状で観察される。同一のグラフェンまたは複数のグラフェンにより
、複数の正極活物質を内包する。即ち、同一のグラフェンまたは複数のグラフェンの間に
、複数の正極活物質が内在する。なお、グラフェンは袋状になっており、該内部において
、複数の正極活物質を内包する場合がある。また、グラフェンに覆われず、一部の正極活
物質が露出している場合がある。
【0096】
なお、正極活物質層607は、グラフェンの体積の0.1倍以上10倍以下のアセチレン
ブラック粒子や1次元の拡がりを有するカーボンナノファイバ等のカーボン粒子など、公
知の導電助剤を有してもよい。
【0097】
セパレータ606には、セルロース(紙)、または空孔が設けられたポリプロピレン、ポ
リエチレン等の絶縁体を用いることができる。
【0098】
非水電解液の溶質は、キャリアイオンを有する材料を用いる。非水電解液の溶質の代表例
としては、LiClO
4、LiAsF
6、LiBF
4、LiPF
6、Li(C
2F
5SO
2)
2N等のリチウム塩がある。
【0099】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属
イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、非水電解液の溶質として
、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムや
カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等)
、ベリリウム、またはマグネシウムを用いてもよい。
【0100】
また、非水電解液の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な材料を用いる。非水電
解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例
としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネ
ート、ジエチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメト
キシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができ
る。また、非水電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に
対する安全性が高まる。また、非水系二次電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化
される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリル
ゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある
。また、非水電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)
を一つまたは複数用いることで、二次電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上
昇しても、二次電池の破裂や発火などを防ぐことができる。
【0101】
また、非水電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や
、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることが
できる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また
、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0102】
正極缶603、負極缶601には、耐腐食性のある鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン
等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(ステンレス鋼など)を用いる
ことができる。特に、二次電池の充放電によって生じる非水電解液による腐食を防ぐため
、ニッケル等を腐食性金属にめっきすることが好ましい。正極缶603は正極610と、
負極缶601は負極609とそれぞれ電気的に接続する。
【0103】
これら負極609、正極610及びセパレータ606を非水電解液に含浸させ、
図4(B
)に示すように、正極缶603を下にして正極610、セパレータ606、負極609、
負極缶601をこの順で積層し、正極缶603と負極缶601とをガスケット602を介
して圧着してコイン形のリチウム二次電池600を製造する。
【0104】
また、以下に、
図4とは異なる構造を有するリチウム二次電池について説明する。
【0105】
図6(A)及び
図6(B)を用いて円筒型の非水系二次電池の構造を説明する。円筒型の
リチウム二次電池700は
図6(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)70
1を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)702を有している。これら正極キャップと
電池缶(外装缶)702とは、ガスケット(絶縁パッキン)710によって絶縁されてい
る。
【0106】
図6(B)は、円筒型のリチウム二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状
の電池缶702の内側には、帯状の正極704と負極706とがセパレータ705を間に
挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを
中心に捲回されている。電池缶702は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶7
02には、耐腐食性のある鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの
合金やこれらと他の金属との合金(ステンレス鋼など)を用いることができる。特に、二
次電池の充放電によって生じる非水電解液による腐食を防ぐため、ニッケル等を腐食性金
属にめっきすることが好ましい。電池缶702の内側において、正極、負極及びセパレー
タが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板708及び絶縁板709により挟まれ
ている。また、電池素子が設けられた電池缶702の内部は、非水電解液(図示せず)が
注入されている。非水電解液は、上述のコイン形のリチウム二次電池と同様のものを用い
ることができる。
【0107】
正極704及び負極706は、上述したコイン形のリチウム二次電池の正極及び負極と同
様に製造すればよいが、円筒型のリチウム二次電池に用いる正極及び負極は捲回するため
、集電体の両面に活物質を形成する点において異なる。負極706は、実施の形態1に記
載の負極を用いることで、高容量の二次電池を製造することができる。正極704には正
極端子(正極集電リード)703が接続され、負極706には負極端子(負極集電リード
)707が接続される。正極端子703及び負極端子707は、ともにアルミニウムなど
の金属材料を用いることができる。正極端子703は安全弁機構712に、負極端子70
7は電池缶702の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構712は、PTC素子71
1(Positive Temperature Coefficient)を介して正
極キャップ701と電気的に接続されている。安全弁機構712は電池の内圧の上昇が所
定の閾値を超えた場合に、正極キャップ701と正極704との電気的な接続を切断する
ものである。また、PTC素子711は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素
子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素
子には、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系半導体セラミックス等を用いることができ
る。
【0108】
なお、本実施の形態では、リチウム二次電池として、コイン形及び円筒型の非水系二次電
池を示したが、封止型非水系二次電池、角型非水系二次電池等様々な形状の非水系二次電
池を用いることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正
極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0109】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0110】
[実施の形態3]
本発明の一態様に係るリチウム二次電池は、電力により駆動する様々な電気機器の電源と
して用いることができる。
【0111】
本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いた電気機器の具体例として、テレビ、モニ
タ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、
ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記
録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、
ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛け時計、コー
ドレス電話子機、トランシーバ、携帯無線機、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、
電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、
デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電
気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナー、加湿器、
除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫
、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、核酸保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソー等の工具、
煙感知器、透析装置等の医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコ
ンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電力の平準化
やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、リチウム二次電
池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるも
のとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持
ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイ
ヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二
輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型又は大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機
、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
【0112】
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための主電源として、本発明の一態様
に係るリチウム二次電池を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や
商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができ
る無停電電源として、本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いることができる。或
いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して
、電気機器への電力の供給を行うための補助電源として、本発明の一態様に係るリチウム
二次電池を用いることができる。
【0113】
図7に、上記電気機器の具体的な構成を示す。
図7において、表示装置8000は、本発
明の一態様に係るリチウム二次電池8004を用いた電気機器の一例である。具体的に、
表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部800
2、スピーカ部8003、リチウム二次電池8004等を有する。本発明の一態様に係る
リチウム二次電池8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000
は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、リチウム二次電池8004に蓄積
された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受
けられない時でも、本発明の一態様に係るリチウム二次電池8004を無停電電源として
用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
【0114】
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光
装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Devi
ce)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field
Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0115】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など
、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0116】
図7において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係るリチウム二次電
池8103を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体810
1、光源8102、リチウム二次電池8103等を有する。
図7では、リチウム二次電池
8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設け
られている場合を例示しているが、リチウム二次電池8103は、筐体8101の内部に
設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもで
きるし、リチウム二次電池8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停
電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係るリチ
ウム二次電池8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能
となる。
【0117】
なお、
図7では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示している
が、本発明の一態様に係るリチウム二次電池は、天井8104以外、例えば側壁8105
、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし
、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0118】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができ
る。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光
素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0119】
図7において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本
発明の一態様に係るリチウム二次電池8203を用いた電気機器の一例である。具体的に
、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、リチウム二次電池8203等を有
する。
図7では、リチウム二次電池8203が、室内機8200に設けられている場合を
例示しているが、リチウム二次電池8203は室外機8204に設けられていても良い。
或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、リチウム二次電池8203が設けら
れていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもでき
るし、リチウム二次電池8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機
8200と室外機8204の両方にリチウム二次電池8203が設けられている場合、停
電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係るリチ
ウム二次電池8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が
可能となる。
【0120】
なお、
図7では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例
示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンデ
ィショナーに、本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いることもできる。
【0121】
図7において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係るリチウム二次電池83
04を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体830
1、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、リチウム二次電池8304等を有する。
図7では、リチウム二次電池8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷
凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、リチウム二次電
池8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源か
ら電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係るリチウム二次電池8304を
無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
【0122】
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気
機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助
するための補助電源として、本発明の一態様に係るリチウム二次電池を用いることで、電
気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0123】
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量の
うち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、リチ
ウム二次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるの
を抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用
扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、リチウム二次電池8
304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉83
03の開閉が行われる昼間において、リチウム二次電池8304を補助電源として用いる
ことで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0124】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0125】
[実施の形態4]
次に、電気機器の一例である携帯情報端末について、
図8を用いて説明する。
【0126】
図8(A)及び
図8(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図8(A)は、開
いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部963
1b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り
替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0127】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示され
た操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部963
1aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域
がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部963
1aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部96
31aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示
画面として用いることができる。
【0128】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部
をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード
表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで
表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0129】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタ
ッチ入力することもできる。
【0130】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを
切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えス
イッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光
の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光セン
サだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を
内蔵させてもよい。
【0131】
また、
図8(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示して
いるが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の
品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルと
してもよい。
【0132】
図8(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池963
3、充放電制御回路9634、バッテリ9635、DCDCコンバータ9636を有する
。なお、
図8(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリ9635、DCD
Cコンバータ9636を有する構成について示しており、バッテリ9635は、上記実施
の形態で説明したリチウム二次電池を有している。
【0133】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態に
することができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐
久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0134】
また、この他にも
図8(A)及び
図8(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(
静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表
示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機
能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することが
できる。
【0135】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、
表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、
筐体9630の一面または二面に効率的なバッテリ9635の充電を行う構成とすること
ができるため好適である。なおバッテリ9635としては、本発明の一態様に係るリチウ
ム二次電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0136】
また、
図8(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図8(C)に
ブロック図を示し説明する。
図8(C)には、太陽電池9633、バッテリ9635、D
CDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9
631について示しており、バッテリ9635、DCDCコンバータ9636、コンバー
タ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図8(B)に示す充放電制御回路9634に
対応する箇所となる。
【0137】
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する
。太陽電池で発電した電力は、バッテリ9635を充電するための電圧となるようDCD
Cコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太
陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9
637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部
9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリ9
635の充電を行う構成とすればよい。
【0138】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、
圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバ
ッテリ9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受
信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また、他の充電手段を組み合わせて行う構
成としてもよい。
【0139】
また、上記実施の形態で説明したリチウム二次電池を具備していれば、
図8に示した電気
機器に特に限定されないことはいうまでもない。
【0140】
[実施の形態5]
さらに、電気機器の一例である移動体の例について、
図9を用いて説明する。
【0141】
実施の形態1および実施の形態2で説明したリチウム二次電池は、制御用のバッテリに用
いることができる。制御用のバッテリーは、プラグイン技術や非接触給電による外部から
の電力供給により充電をすることができる。なお、移動体が鉄道用電気車両の場合、架線
や導電軌条からの電力供給により充電をすることができる。
【0142】
図9(A)及び
図9(B)は、電気自動車の一例を示している。電気自動車9700には
、リチウム二次電池9701が搭載されている。リチウム二次電池9701の電力は、制
御回路9702により出力が調整されて、駆動装置9703に供給される。制御回路97
02は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置9704によって制御さ
れる。
【0143】
駆動装置9703は、直流電動機若しくは交流電動機単体、又は電動機と内燃機関と、を
組み合わせて構成される。処理装置9704は、電気自動車9700の運転者の操作情報
(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負
荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路9702に制御信号を出力する。制御回路9
702は、処理装置9704の制御信号により、リチウム二次電池9701から供給され
る電気エネルギーを調整して駆動装置9703の出力を制御する。交流電動機を搭載して
いる場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
【0144】
リチウム二次電池9701は、プラグイン技術による外部からの電力供給により充電する
ことができる。例えば、商用電源から電源プラグを通じてリチウム二次電池9701に充
電する。充電は、AC/DCコンバータ等の変換装置を介して、一定の電圧値を有する直
流定電圧に変換して行うことができる。リチウム二次電池9701として、本発明の一態
様に係るリチウム二次電池を搭載することで、充電時間の短縮化などに寄与することがで
き、利便性を向上させることができる。また、充放電速度の向上により、電気自動車97
00の加速力の向上に寄与することができ、電気自動車9700の性能の向上に寄与する
ことができる。また、リチウム二次電池9701の特性の向上により、リチウム二次電池
9701自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与することができる。
【0145】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0146】
本実施例では、実施の形態1で述べた負極を用いたリチウム二次電池の電気特性について
説明する。
【0147】
本実施例の負極は、負極集電体として厚さ15μmのチタン箔を用い、負極活物質層とし
て、粒子状の負極活物質であるシリコン粒子(平均粒径60nm)、酸化グラフェン、及
び結着剤であるポリイミド(より正確には、ポリイミドの前駆体)の混合比率を、40:
40:20(重量%)、より具体的には、シリコン粒子を0.08g、酸化グラフェンを
0.08g、ポリイミドの前駆体を0.292gとしたものを混合した。なお、ポリイミ
ドの前駆体は、全体の13.7%が加熱工程後でイミド化してポリイミドとなる。すなわ
ち、イミド化してポリイミドとなる重量は、0.04g(0.292g×0.137)で
ある。
図1に示す作製工程に従い、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極を作製
した。
【0148】
なお、スラリー焼成及び酸化グラフェンの還元を兼ねる加熱工程(
図1のステップS10
7)において、120℃で0.5時間加熱、その後250℃まで昇温し、250℃で0.
5時間加熱して前処理を行った。さらにその後300℃まで昇温し、300℃で1時間加
熱工程を行った。
【0149】
図10は、上述のように作製した負極を用いた場合のリチウム二次電池の充放電特性を示
したものであり、ハーフセルを形成して測定した結果を示すものである。当該ハーフセル
での測定においては、正極に金属リチウムを用いている。また、当該ハーフセル作製にお
いて、日本トムセル社製の基礎セルを用いた。
【0150】
また、電解液には六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を、エチレンカーボネート(E
C)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液に溶解させたものを用いた。セパレ
ータにはポリプロピレンを用いた。
【0151】
図10に示される充放電特性は、以下のようにして測定された結果である。まず、1回目
の充放電は、0.05C(電流密度0.1A/g)で行った。これは、作製された二次電
池に可能な限り多くの電荷を蓄積させるためである。2回目以降の充放電は、1C(電流
密度2A/g)で行った。また、当該測定において、充電及び放電は定電流にて行われ、
充放電電圧範囲は、0.03V以上1V以下であった。なお本明細書では、充電1回及び
放電1回を1サイクルとする。つまり、本実施例では、1サイクル目は0.05Cで行い
、2サイクル目以降10サイクル目までを1Cで行った。
【0152】
図10は、当該測定で得られた充放電曲線である。
図10において、縦軸に電圧、横軸に
容量を示す。図中の実線は充電、点線は放電を示す。また、当該測定において、充放電は
10回行われた。
【0153】
図10において、「充」は充電、「放」は放電、数字は回数を示している。すなわち、例
えば「充5」は、充電5回目を示している。
【0154】
図10に示されるように、本実施例のリチウム二次電池は、1回目の充放電後、2回目の
充放電では、容量が急激に減少している。これは、1回目の充放電が0.05Cであるの
に対して、2回目の充放電が1Cであるので、レートの違いによるものである。低レート
(例えば0.05C)では、キャリアイオンの移動時間が充分であるので、大きな容量を
得ることができる。一方、高レート(例えば、0.05Cに比較して高レートである1C
)では、キャリアイオンの移動時間が充分ではないので、容量は小さくなる。
【0155】
しかしながら、3回目以降の充放電では、充放電を重ねる毎に(サイクル数が増えると共
に)、充電容量及び放電容量が共に増加している。充電容量及び放電容量が増大する理由
は以下の通りである。上述の加熱処理で酸化グラフェンを還元するが、負極活物質層内に
は、加熱処理で残った未還元の酸化グラフェンが存在する。
図10において、充放電を始
めたばかりでは、酸化グラフェンの還元が不十分である。しかし、充放電を重ねる毎に(
サイクル数が増えると共に)、還元な不十分な酸化グラフェンが、電気的に還元される。
これにより、充放電を重ねる毎に充電容量及び放電容量が共に増加する。
【実施例2】
【0156】
本実施例では負極活物質として、実施例1とは異なる形状のシリコン粒子を用いて形成し
た負極、及び当該負極を用いて作製したリチウム二次電池について述べる。
【0157】
本実施例の負極は、負極集電体として厚さ15μmのチタン箔を用い、負極活物質層とし
て、粒子状の負極活物質であるシリコン粒子(平均粒径3μm)、酸化グラフェン、及び
結着剤であるポリイミド(より正確には、ポリイミドの前駆体)の混合比率を、40:4
0:20(重量%)、より具体的には、シリコン粒子を0.08g、酸化グラフェンを0
.08g、ポリイミドの前駆体を0.292g(ポリイミドとしては0.04g)とした
ものを混合し、
図1に示す作製工程に従い、負極集電体上に負極活物質層が形成された負
極を作製した。
【0158】
なお、スラリー焼成及び酸化グラフェンの還元を兼ねる加熱工程(
図1のステップS10
7)において、120℃で0.5時間加熱、その後250℃まで昇温し、250℃で0.
5時間加熱して前処理を行った。さらにその後300℃まで昇温し、300℃で1時間加
熱工程を行った。
【0159】
本実施例と実施例1で異なる点は、粒子状の負極活物質であるシリコン粒子として、平均
粒径5μmのシリコン粒子を、微粒化装置にて粉砕し、平均粒径3μmとなったシリコン
粒子を用いている点である。より具体的には、平均粒径5μmのシリコン粒子(粉末状シ
リコン)を純水に分散させ、純水に分散された当該シリコン粒子を、圧力200MPaで
、当該装置内で10回衝突させる。以上により、平均粒径5μmのシリコン粒子を粉砕し
て、平均粒径3μmのシリコン粒子を得た。
【0160】
図11は、本実施例の負極活物質層の断面SEM写真である。
図11(A)の断面SEM
写真では、シリコン粒子の表面にグラフェンが付着していることが示されている。また、
図11(B)では、シリコン粒子が複数のグラフェンの層の間に挟まれていることが示さ
れている。
【0161】
図12は、上述のように作製した負極を用いた場合のリチウム二次電池の充放電特性を示
したものであり、ハーフセルを形成して測定した結果を示すものである。当該ハーフセル
での測定においては、正極に金属リチウムを用いている。また、当該ハーフセル作製にお
いて、日本トムセル社製の基礎セルを用いた。
【0162】
また、電解液には六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を、エチレンカーボネート(E
C)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液に溶解させたものを用いた。セパレ
ータにはポリプロピレンを用いた。
【0163】
図12に示される充放電特性は、以下のようにして測定された。まず、1回目の充放電は
、0.05C(電流密度0.1A/g)で行った。これは、作製された二次電池に可能な
限り多くの電荷を蓄積させるためである。2回目以降の充放電は、1C(電流密度2A/
g)で行った。また、当該測定において、充電及び放電は定電流にて行われ、充放電電圧
範囲は、0.03V以上1V以下であった。
【0164】
図12は、当該測定で得られた充放電曲線である。
図12において、縦軸に電圧、横軸に
容量を示す。図中の実線は充電、点線は放電を示す。また、当該測定において、充放電は
10回行われた。
【0165】
また、
図12において、「充」は充電、「放」は放電、数字は回数を示している。すなわ
ち、例えば「充5」は、充電5回目を示している。
【0166】
図12に示されるように、1回目の充放電後、2回目の充放電では、容量が急激に減少し
ている。これは、1回目の充放電が0.05Cであるのに対して、2回目の充放電が1C
であるので、レートの違いによるものである。低レート(例えば0.05C)では、キャ
リアイオンの移動時間が充分であるので、大きな容量を得ることができる。一方、高レー
ト(例えば、0.05Cに比較して高レートである1C)では、キャリアイオンの移動時
間が充分ではないので、容量は小さくなる。
【0167】
しかしながら、3回目以降の充放電では、充放電を重ねる毎に(サイクル数が増えると共
に)、充電容量は増加している。一方、放電容量については、サイクル数が増加すると放
電容量も増加傾向にはあるが、サイクル数が増加しても放電容量は単調に増加していない
。
図12では、サイクル数が増加すると、放電容量が増加及び減少を繰り返すことが示さ
れている。
【0168】
充電容量及び放電容量が増える理由は、以下の通りである。上述の加熱処理で酸化グラフ
ェンを還元するが、負極活物質層内には、加熱処理で残った未還元の酸化グラフェンが存
在する。
図12において、充放電を始めたばかりでは、酸化グラフェンの還元が不十分で
ある。しかし、充放電を重ねる毎に(サイクル数が増えると共に)、還元が不十分な酸化
グラフェンが、電気的に還元される。これにより、充放電を重ねる毎に充電容量及び放電
容量が共に増加する。
【0169】
一方、サイクル数が増加しても放電容量が減少する理由は、電極、又は/及び電解液の劣
化が原因である。したがって、本発明の一態様に用いる粒子状の負極活物質であるシリコ
ン粒子は、実施例1で用いたような微粉末とすることが好ましいということができる。
【0170】
<参考例>
本参考例では、負極活物質層の材料にグラフェンを用いないリチウム二次電池について説
明する。
【0171】
本参考例の負極は、負極集電体として厚さ15μmのチタン箔を用い、負極活物質層とし
て、粒子状の負極活物質であるシリコン粒子(平均粒径5μm)を、導電助剤としてケッ
チェンブラック、及び結着剤であるポリイミド(より正確には、ポリイミドの前駆体)の
混合比率を、80:5:10(重量%)を混合したものを用いた。より具体的には、カー
ボンコートされたシリコン粒子を0.4g、ケッチェンブラックを0.025g、ポリイ
ミドの前駆体を0.75gとしたものを混合した。
【0172】
上記材料を混合した後、混合された材料に溶媒を添加してスラリーを形成し、負極集電体
上にスラリーを塗布した。その後、負極集電体上に塗布されたスラリーを加熱してスラリ
ーを焼成し、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極を作製した。
【0173】
なお上記加熱工程にて、当該ポリイミドの前駆体がイミド化され、ポリイミドとなる。
【0174】
なお、本参考例において、粒子状の負極活物質であるシリコン粒子は、混合される前にカ
ーボンコートしたものを用いた。本明細書において、カーボンコートとは、活物質の表面
に炭素材料が担持されることを言う。当該カーボンコートされたシリコン粒子は、シリコ
ン粒子に加熱分解により導電性炭素を生じ得る物質(以下「導電性炭素前駆物質」という
)を添加し、その後加熱することによって形成される。導電性炭素前駆物質として、例え
ば糖類、具体的にはグルコースを用いればよい。
【0175】
より具体的には、シリコン粒子(平均粒径5μm)4g及びグルコース0.4gを混合、
さらに溶媒としてアセトンを添加する。当該シリコン粒子、グルコース、及びアセトンを
、ボールミルにて混合し、その後窒素雰囲気中で、加熱温度600℃、加熱時間10時間
で加熱した。以上のようにして、カーボンコートされたシリコン粒子(表面に炭素材料が
担持されたシリコン粒子)を作製した。
【0176】
図13は、上述のように作製した負極を用いた場合のリチウム二次電池の充放電特性を示
したものであり、ハーフセルを形成して測定した結果を示すものである。当該ハーフセル
での測定においては、正極に金属リチウムを用いている。また、当該ハーフセル作製にお
いて、日本トムセル社製の基礎セルを用いた。
【0177】
また、電解液には六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を、エチレンカーボネート(E
C)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液に溶解させたものを用いた。セパレ
ータにはポリプロピレンを用いた。
【0178】
図13に示される充放電特性は、以下のようにして測定された。まず、1回目の充放電は
、0.05C(電流密度0.1A/g)で行った。これは、作製された二次電池に可能な
限り多くの電荷を蓄積させるためである。2回目以降の充放電は、1C(電流密度2A/
g)で行った。また、当該測定において、充電及び放電は定電流にて行われ、充放電電圧
範囲は、0.03V以上1V以下であった。
【0179】
図13は、当該測定で得られた充放電曲線である。
図13において、縦軸に電圧、横軸に
容量を示す。図中の実線は充電、点線は放電を示す。また、当該測定において、充放電は
10回行われた。
【0180】
また、
図13において、「充」は充電、「放」は放電、数字は回数を示している。すなわ
ち、例えば「充5」は、充電5回目を示している。
【0181】
図13に示されるように、本参考例のリチウム二次電池では、1回目の充放電後、2回目
の充放電では、容量が急激に減少している。また、3回目以降の充放電では、充放電を重
ねる毎に充電容量は減少している。放電容量についても、充放電数が増加すると放電容量
は減少している。
【0182】
本参考例により、負極活物質層の材料としてグラフェン(還元された酸化グラフェン)を
用いないリチウム二次電池は、充放電を繰り返すと容量が減少することが明らかになった
。
【0183】
一方、負極活物質層の材料としてグラフェンを用いると、充放電を繰り返すと容量が増加
するので好適である。ただし、負極活物質層の材料としてグラフェンを用いる場合は、酸
化グラフェンを還元する必要がある。しかしながら、酸化グラフェンを還元するための加
熱工程と、スラリー焼成(ポリイミド前駆体のイミド化)のための加熱工程を別々に行う
と、作製工程が増えてしまう。しかしながら、開示される発明の一態様では、酸化グラフ
ェンの還元と、スラリー焼成(ポリイミド前駆体のイミド化)を同じ加熱工程で行う。こ
れにより、負極の作製工程において、作製工程数を削減することが可能である。