特許第6970168号(P6970168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6970168-被膜形成方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970168
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】被膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20211111BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20211111BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20211111BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20211111BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20211111BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B05D1/28
   B05D7/00 C
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 303A
   B05D5/06 A
   B05D5/06 101Z
   B05D1/36 Z
   B05D7/24 302P
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-225004(P2019-225004)
(22)【出願日】2019年12月13日
(62)【分割の表示】特願2016-33081(P2016-33081)の分割
【原出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2020-37113(P2020-37113A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-42705(P2015-42705)
(32)【優先日】2015年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-203939(P2015-203939)
(32)【優先日】2015年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 恵介
(72)【発明者】
【氏名】北尾 成史
(72)【発明者】
【氏名】守本 浩直
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−305327(JP,A)
【文献】 特開2006−015326(JP,A)
【文献】 特開2007−268386(JP,A)
【文献】 特開昭54−096544(JP,A)
【文献】 特開2003−251269(JP,A)
【文献】 特開2008−012454(JP,A)
【文献】 特開2009−050841(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0029435(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0074758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
B05C 1/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質材料に対する被膜形成方法であって、
無機質材料の表面に対し、
第1工程としてシラン系浸透性吸水防止材を塗付した後、
第2工程として、合成樹脂エマルション及び顔料を含み、形成被膜の隠蔽率が90%以上である被覆材(I)を塗付し、
第3工程として、合成樹脂及び顔料を含み、上記被覆材(I)とは異なる色調の被覆材(II)を塗付して、模様を付与し、
上記シラン系浸透性吸水防止材は、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキルアルコキシシラン化合物を含み、シリコン系樹脂を含まないものであり、
上記被覆材(I)の合成樹脂エマルションは、当該合成樹脂を構成するモノマーとして、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上、溶解度パラメータが9.5以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、
上記被覆材(II)は、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上の吸液材が円筒外周面に混在するローラーブラシによって塗付することを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
上記被覆材(I)の合成樹脂エマルションは、ガラス転移温度が10〜60℃であることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法。
【請求項3】
上記被覆材(I)の合成樹脂エマルションは、平均粒子径が120nm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の被膜形成方法。
【請求項4】
上記被覆材(I)の合成樹脂エマルションは、シリコン変性アクリル樹脂エマルションであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、セメントモルタル等の無機質材料に対する、新規な被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物等の基材として用いられているコンクリート、セメントモルタル等の無機質材料に、吸水防止性を付与し、耐久性を向上させる方法として、浸透性吸水防止材を塗付する方法が広く用いられている。
【0003】
浸透性吸水防止材は、無機質材料の中に浸透して撥水層を形成するものである。よって、このような浸透性吸水防止材を塗付することで、外部から基材への水や炭酸ガス等の浸入を遮断し、基材の中性化による強度低下を防止し、さらに基材内部に存在する鉄骨あるいは鉄筋の腐食を抑制する効果等を発揮することができる。また、基材内部のカルシウム成分の移行による基材表層でのエフロレッセンス発生を防止することもできる。
【0004】
このような浸透性吸水防止材としては、シラン系化合物を主成分とするもの(例えば特許文献1)等が知られている。しかしながら、このような浸透性吸水防止材を塗付するのみでは、十分な撥水性、吸水防止性等が得られない場合があり、実用上改善の余地がある。
【0005】
特許文献2には、コンクリート表面に対し、溶剤系の撥水防水材(下塗り材)を塗付し、その表面にエマルション系透明合成樹脂からなる防水材(中塗り材)、さらに別の防水材(上塗り材)を塗付する方法が記載されている。このような方法によれば、コンクリート表面の吸水防止性が向上し、耐久性が高まるものと期待される。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の方法では、エマルション系防水材の密着性が不十分となり、吸水防止性、耐久性等において所望の効果が得られないおそれがある。また、上記特許文献の方法では、無機質材料表面に汚染等の不具合が生じている場合、これら不具合が目立ってしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−256581号公報
【特許文献2】特開2002−89006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、無機質材料に優れた吸水防止性、耐久性、美観性等を付与することができる被膜形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討の結果、第1工程として浸透性吸水防止材を塗付した後、第2工程として特定の被覆材(I)を塗付し、第3工程として特定の器具で被覆材(II)を塗付して模様を付与する方法に想到し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の被膜形成方法は、以下の特徴を有するものである。
1.無機質材料に対する被膜形成方法であって、
無機質材料の表面に対し、
第1工程としてシラン系浸透性吸水防止材を塗付した後、
第2工程として、合成樹脂エマルション及び顔料を含み、形成被膜の隠蔽率が90%以上である被覆材(I)を塗付し、
第3工程として、合成樹脂及び顔料を含み、上記被覆材(I)とは異なる色調の被覆材(II)を塗付して、模様を付与し、
上記シラン系浸透性吸水防止材は、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキルアルコキシシラン化合物を含み、シリコン系樹脂を含まないものであり、
上記被覆材(I)の合成樹脂エマルションは、当該合成樹脂を構成するモノマーとして、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上、溶解度パラメータが9.5以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、
上記被覆材(II)は、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上の吸液材が円筒外周面に混在するローラーブラシによって塗付することを特徴とする被膜形成方法。
2.上記被覆材(I)の合成樹脂エマルションは、ガラス転移温度が10〜60℃であることを特徴とする1.記載の被膜形成方法。
3.上記被覆材(I)の合成樹脂エマルションは、平均粒子径が120nm以下であることを特徴とする1.または2.記載の被膜形成方法。
4.上記被覆材(I)の合成樹脂エマルションは、シリコン変性アクリル樹脂エマルションであることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の被膜形成方法。




【発明の効果】
【0011】
本発明の被膜形成方法では、無機質材料の表面に対し、第1工程として浸透性吸水防止材を塗付した後、第2工程として、特定の合成樹脂エマルション及び顔料を含む被覆材(I)を塗付し、第3工程として、特定の器具で被覆材(II)を塗付して、模様を付与することにより、無機質材料に優れた吸水防止性、耐久性、美観性等を付与する被膜を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明で使用するローラーブラシの断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1.吸液材(1a〜1e)
2.円筒外周面
3.円筒外径方向
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
本発明の被膜形成方法は、無機質材料の表面に対し、第1工程として浸透性吸水防止材を塗付した後、第2工程として特定の被覆材(I)を塗付し、第3工程として特定の器具で被覆材(II)を塗付して被膜を形成するものである。
<無機質材料>
無機質材料は、建築物、土木構造物等の表面を構成するものである。このような基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、煉瓦、タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜が形成されたもの等であってもよい。本発明は特に、コンクリート壁面等のコンクリート面に対して適用することが好ましい。このようなコンクリート面は、通常、セメント、水、骨材、さらに混和材料を適当な割合に調合して練り混ぜて得られるコンクリートを、型枠内または所定の場所に流し込み、硬化、脱型することにより得られるものである。本発明は、新設されたコンクリート面、あるいは経年劣化したコンクリート面のいずれにも適用することができる。
【0016】
なお、本発明では、第1工程に先立ち、無機質材料に対し洗浄等の処理を行うこともできる。洗浄処理は、無機質材料に対し各種洗浄剤を塗付した後、水洗いする方法等を採用すればよい。
【0017】
<第1工程>
本願発明における第1工程の浸透性吸水防止材は、吸水防止効果が発揮可能な材料であれば特に制限されず使用でき、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を主成分として含む樹脂系浸透性吸水防止材;アルキルシリコネート化合物を主成分として含むシリコネート系浸透性吸水防止材;加水分解性シラン化合物及び/またはその縮合物を主成分として含むシラン系浸透性吸水防止材、等が挙げられる。本発明では、シラン系浸透性吸水防止材が好ましく使用できる。シラン系浸透性吸水防止材としては、例えば、オルガノアルコキシシラン化合物、オルガノアセトキシシラン化合物、オルガノハロゲンシラン化合物、オルガノジシラン化合物、オルガノシランカルボン酸化合物、オルガノシランチオール化合物、オルガノシリコンイソシアナート化合物、オルガノシリコンイソチアナート化合物、あるいはこれらの縮合物から選ばれる1種以上を含むもの等が挙げられる。
【0018】
浸透性吸水防止材は、上述の成分が媒体に溶解ないし分散した溶液であり、乳化剤等によって分散されたものであってもよい。浸透性吸水防止材における媒体としては特に限定されず、芳香族炭化水素系溶剤を主成分とする強溶剤系、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする弱溶剤系、水を主成分とする水性系等の各種形態が使用可能であるが、本発明では特に、弱溶剤系が好ましく使用できる。なお、主成分となる溶剤は、それぞれの媒体中に50重量%以上(好ましくは70重量%以上)含まれていればよい。
【0019】
このような浸透性吸水防止材において、その主成分となる化合物の含有比率は、好ましくは0.1〜50重量%(より好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%)である。このような範囲の場合、十分な吸水防止効果が発揮可能となる。
【0020】
本発明では特に、主成分となる化合物としてアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキルアルコキシシラン化合物を0.1〜50重量%(より好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%)含有するものが好ましい。このようなアルキルアルコキシシラン化合物は、珪素原子にアルキル基とアルコキシシリル基が結合した化合物であり、例えば下記式(1)で示される化合物及び/またはその縮合物を使用することができる。
−Si(OR (1)
(式中R、Rはアルキル基を示す。Rの炭素数は1〜18。)
【0021】
具体的に、アルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの縮合物としては、平均縮合度1〜10程度のものが使用できる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0022】
アルキルアルコキシシラン化合物としては、アルキル基Rの炭素数が1〜18(好ましくは3〜12、より好ましくは5〜8)のものを使用する。アルキル基は、その一部がハロゲン等で置換されたものであってもよい。アルキル基の炭素数がこのような範囲内であれば、吸水防止性を高めることが可能となる。アルキルアルコキシシラン化合物におけるアルコキシル基としては、その炭素数(上記Rの炭素数)が1〜8(好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2)のものを使用すればよい。
【0023】
このような浸透性吸水防止材においては、アルキルアルコキシシラン化合物の作用を十分に発揮させるため、樹脂成分はあまり多く混合しないことが望ましく、アルキルアルコキシシラン化合物よりも低い含有比率とすることが望ましい。浸透性吸水防止材における樹脂成分(固形分)の含有比率は、好ましくは20重量%未満(より好ましくは10重量%以下)であり、樹脂成分を含まない形態も好適である。
【0024】
浸透性吸水防止材は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内において、例えば着色剤、増粘剤、湿潤剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等を含むものであってもよい。浸透性吸水防止材は、上述の各成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0025】
第1工程では、このような浸透性吸水防止材を基材に均一に塗付する。塗付器具は特に限定されず、刷毛、スプレー、ローラー、コーター等公知の塗付器具を使用することができる。浸透性吸水防止材を塗付する際の所要量は、基材の種類・状態等を勘案して適宜設定すればよいが、好ましくは30〜500g/m(より好ましくは80〜400g/m)程度である。浸透性吸水防止材の塗付、乾燥は、好ましくは常温(0〜40℃)で行えばよい。本発明では、浸透性吸水防止材の乾燥後、次工程の塗装を行うことができる。工程間の間隔は、通常1時間以上10日以内、好ましくは3時間以上7日以内である。
【0026】
<第2工程>
第2工程の被覆材(I)としては、特定の合成樹脂エマルション及び顔料を含むものを使用する。この被覆材における合成樹脂エマルションは、当該合成樹脂を構成するモノマーとして、ホモポリマーのガラス転移温度(以下「Tg」ともいう。)が50℃以上(好ましくは60〜120℃)、溶解度パラメータ(以下「sp値」ともいう。)が9.5以下(好ましくは6〜9.5)である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A)(以下「(A)成分」ともいう。)を含むものである。このような成分を含む被覆材を塗付することにより、上述の浸透性吸水防止材との密着性において優れた性能を発揮し、無機質材料の耐久性等を高めることができる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記する。
【0027】
本発明の(A)成分としては、例えば、tert−ブチルメタクリレート(Tg:107℃、sp値:9.07)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg:83℃、sp値:7.44)、等が挙げられる。(A)成分以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルメタクリレート(Tg:105℃、sp値:9.93)、エチルアクリレート(−20℃、sp値:10.2)、n−ブチルアクリレート(Tg:−56℃、sp値:9.77)、n−ブチルメタクリレート(Tg:20℃、sp値:9.45)、2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃、sp値:9.22)等が挙げられる。なお、ホモポリマーのガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定装置)によって測定可能である。また、溶解度パラメータは、「ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE)」、1974年、VoL.14,No.2、P.147―154に記載の方法によって算出される値である。
【0028】
上記(A)成分の含有量は、本発明の合成樹脂エマルションの固形分中に、3〜70重量%(より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは8〜40重量%)であることが好ましい。このような範囲である場合、上述の浸透性吸水防止材との密着性において優れた性能を発揮し、無機質材料の耐久性等を高めることができる。
【0029】
また、合成樹脂エマルションのガラス転移温度は、モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このガラス転移温度は、最終的な要求性能等を考慮して適宜設定すればよいが、本発明では、10〜60℃(より好ましくは15〜55℃)であることが好ましい。このような場合、本発明の効果をより一層高めることができる。なお、合成樹脂エマルションのガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
【0030】
さらに、合成樹脂エマルションは、平均粒子径が120nm以下(より好ましくは30nm以上100nm以下)であることが好ましい。このような場合、本発明の効果をより一層高めることができる。なお、平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
【0031】
本発明の合成樹脂エマルションとしては、上記条件を満たすものであれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂エマルション、エポキシ変性アクリル樹脂エマルション、ウレタン変性アクリル樹脂エマルション、シリコン変性アクリル樹脂エマルション、フッ素変性アクリル樹脂エマルション、等、あるいはこれらの複合系等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0032】
本発明の合成樹脂エマルションは、シリコン変性アクリル樹脂エマルションであることが好ましい。シリコン変性アクリル樹脂エマルションは、反応性シリル基含有化合物を必須成分として得られるものである。シリコン変性アクリル樹脂エマルション使用することにより、密着性、耐久性等を高めることができ、さらに耐汚染性、耐候性、耐黄変性、耐水性、耐薬品性等が良好な塗膜を形成することができる。
【0033】
本発明において、シリコン変性アクリル樹脂エマルションとしては、例えば、モノマー成分として上記(A)成分を含み、さらに下記(1)〜(4)のいずれかの条件を満たすものが好適である。
(1)モノマー成分として反応性シリル基含有モノマーを含む合成樹脂エマルション
(2)モノマー成分として反応性シリル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、及びカルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーを含む樹脂に、シラン化合物を付加させてなる合成樹脂エマルション、
(3)樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤とを反応させてなる合成樹脂エマルション、
(4)樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤とを反応させ、さらにシラン化合物を付加させてなる合成樹脂エマルション、等が挙げられる。
【0034】
反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン等が結合したものが挙げられる。本発明では、珪素原子にアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基が好適である。
【0035】
上記(1)、(2)における反応性シリル基含有モノマーは、反応性シリル基と重合性二重結合を含有する化合物であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0036】
上記(2)における水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。(2)におけるカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0037】
上記(2)、(4)におけるシラン化合物としては、反応性シリル基を一分子中に2個以上有するものが用いられ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン類;テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等のクロロシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアセトキシシラン類等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、反応性シリル基を一分子中に1個有する化合物を併用することもできる。
【0038】
上記(3)、(4)における官能基の組み合わせとしては、例えば、水酸基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アルコキシシリル基どうし等が挙げられる。シランカップリング剤は、例えば、一分子中に、少なくとも1個以上の反応性シリル基とそのほかの置換基を有する化合物であり、具体的には、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート官能性シラン等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0039】
これらモノマーと共重合可能なその他の共重合モノマーとしては、例えば、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;
スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系モノマー;
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有モノマー;
エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル等のアルキレングリコールモノアリルエーテル;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;
エチレン、プロピレン、イソブチレン等を使用することができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。この他、エチレン性不飽和二重結合含有紫外線吸収剤、エチレン性不飽和二重結合含有光安定剤等を用いることもできる。
【0040】
シリコン変性アクリル樹脂エマルションにおけるシリコン成分量は、エマルションの固形分中にSiO換算で0.1〜30重量%(より好ましくは0.2〜10重量%)が好ましい。シリコン成分量がこのような範囲であることにより、上述の浸透性吸水防止材との密着性において優れた性能を発揮し、無機質材料の耐久性等を高めることができる。
【0041】
なお、SiO換算とは、Si−O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO)となって残る重量分にて表したものである。一般に、アルコキシシランやシリケート等は、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノールどうしやシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO)となる。これらの反応は一般式、
RO(Si(OR)O)R+(n+1)HO→nSiO+(2n+2)ROH
という反応式で表される。本発明では、この反応式をもとにシリコン成分量の換算を行っている。
【0042】
顔料としては、例えば、屈折率2以上、平均粒子径0.1〜2μm、白色度95以上の顔料(a)(以下「(a)成分」ともいう。)、屈折率2未満、平均粒子径0.5〜50μm、白色度50以上95未満の顔料(b)(以下「(b)成分」ともいう。)、上記(a)(b)以外の顔料(c)(以下「(c)成分」ともいう。)が挙げられる。
上記(a)成分としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、中空樹脂粒子等が挙げられる。
上記(b)成分としては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、陶土、チャイナクレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪石粉、珪藻土等の体質顔料等が挙げられる。
【0043】
上記(c)成分としては、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の着色顔料が挙げられ、これらの粒子径は、好ましくは50μm未満(より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは0.01〜20μm)である。本発明では、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0044】
ここで言う、「屈折率」とは、アッベ屈折計を用いて測定される値である。また、「白色度」とは、酸化マグネシウムの白色度を100、暗闇の状態を0とした場合の白色計(ケット式光電管白色時計)による比較値である。
【0045】
被覆材(I)は、形成被膜の隠蔽率が90%以上(好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上)であることを特徴とする。隠蔽率が90%以上であることにより、容易かつ安定して目的とする仕上りを得ることが可能である。また、基材表面の不具合、汚染等を緩和し、美観性を高めることが可能である。この場合の色は、例えばコンクリート近似の灰色等に設定することが好ましい。
【0046】
なお、形成塗膜の隠蔽率は、被覆材を隠蔽率試験紙にフィルムアプリケータ(隙間150μm)で塗付し、温度23℃・湿度50%環境下(以下「標準状態」という)で24時間乾燥させて得た試験片について、視感反射率を測定した後、下記式によって算出される値である。
<式>
隠蔽率(%)=(黒地上の塗膜の視感反射率)/(白地上の塗膜の視感反射率)×100
【0047】
また、被覆材(I)としては、艶消し被膜を形成するものが好ましい。この場合、美観性に優れたコンクリート打ち放し調模様を容易に形成することが可能である。
なお、ここで言う「艶消し」とは、一般に艶消しと呼ばれるものの他に、3分艶、5分艶等と呼ばれるものも包含する。具体的に、本発明では、鏡面光沢度によって艶を規定することができる。被覆材(I)における鏡面光沢度は、好ましくは40以下(より好ましくは20以下、さらに好ましくは0.1以上10以下)である。
【0048】
また、「鏡面光沢度」とは、JIS K5600−4−7「鏡面光沢度」に準じて測定される値である。具体的には、ガラス板の片面に、すきま150μmのフィルムアプリケータを用いて被覆材を塗り、塗面を水平に置いて標準状態で48時間乾燥したときの鏡面光沢度(測定角度60度)を測定することによって得られる値である。
【0049】
被覆材(I)における隠蔽率及び艶は、被覆材に配合する顔料の種類、粒子径、混合比率等によって適宜調整することができる。被覆材(I)では、上記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含むものが好ましい。被覆材(I)における顔料比率の好ましい態様としては、合成樹脂の固形分100重量部に対し、上記(a)成分を10〜500重量部(より好ましくは30〜300重量部、さらに好ましくは50〜250重量部)、上記(b)成分を10〜500重量部(より好ましくは30〜300重量部、さらに好ましくは50〜250重量部)、及び上記(c)成分を0.1〜50重量部(より好ましくは0.5〜20重量部)である。このような場合、コンクリートの質感が得られやすい。
【0050】
本発明の被覆材(I)は、上記成分以外に、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内において、例えば増粘剤、湿潤剤、凍結防止剤、造膜助剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等を含むものであってもよい。また、本発明の効果が著しく損なわれない限り、合成樹脂エマルションとして上記以外の合成樹脂エマルションを含むこともできる。被覆材(I)は、上述の各成分を常法により均一に混合することで製造することができる。
【0051】
第2工程では、このような被覆材(I)を基材に均一に塗付する。塗付器具は特に限定されず、刷毛、スプレー、ローラー等公知の塗付器具を使用することができる。被覆材を塗装する際の所要量は、基材の種類・状態等を勘案して適宜設定すればよいが、好ましくは30〜500g/m(より好ましくは80〜200g/m)程度である。被覆材の塗付、乾燥は、好ましくは常温で行えばよい。
【0052】
<第3工程>
本発明では、さらに、第3工程として、特定の被覆材(II)を塗付して、模様を付与することができる。これにより、ランダムで微妙な色調変化を有する自然な模様が得られる。第3工程における被覆材(II)は、合成樹脂及び顔料を必須成分とし、必要に応じ各種添加剤を含むものである。
【0053】
被覆材(II)において、合成樹脂は、特に限定されず、例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。このような合成樹脂としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂、NAD型樹脂、溶剤可溶型樹脂、無溶剤樹脂型等が挙げられ、1液タイプ、2液タイプ等特に限定せず用いることができる。本発明では特に、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂の1液タイプが好ましい。また、合成樹脂として上記被覆材(I)と同様のものを使用することもできる。顔料としては、上記被覆材(I)と同様のものを使用することができる。
【0054】
被覆材(II)は、形成被膜の隠蔽率が90%以上(好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上)であり、被覆材(I)とは異なる色調であることを特徴とする。このような場合、被覆材(I)と被覆材(II)の色調の組み合わせにより、種々の模様を形成することができ、美観性に優れた模様層を形成することができる。また、本発明では、被覆材(II)の色は、被覆材(I)よりも濃い色調であることが好ましい。このような場合、よりいっそう自然な模様を付与することができる。例えば、コンクリート打ち放し調模様を形成する場合には、被覆材(II)の色は、被覆材(I)よりも濃い色調であることが好ましく、さらには被覆材(I)よりも濃い色調の灰色等に設定することが好ましい。なお、ここで言う、「濃い」とは、第1被覆材よりも明度値L(CIE L色空間)が低いことを示す。
【0055】
また、本発明の被覆材(II)としては、艶消し被膜を形成するものが好ましい。この場合、よりいっそう自然な模様を付与することができる。特に、美観性に優れたコンクリート打ち放し調模様を容易に形成することが可能である。被覆材(II)における鏡面光沢度は、好ましくは40以下(より好ましくは20以下、さらに好ましくは0.1以上10以下)である。
【0056】
被覆材(II)における隠蔽率及び艶は、被覆材に配合する顔料の種類、粒子径、混合比率等によって適宜調整することができる。被覆材(II)では、上記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含むものが好ましい。被覆材(II)における顔料比率の好ましい態様としては、合成樹脂の固形分100重量部に対し、上記(a)成分を10〜500重量部(より好ましくは30〜300重量部、さらに好ましくは50〜250重量部)、上記(b)成分を10〜500重量部(より好ましくは30〜300重量部、さらに好ましくは50〜250重量部)、及び上記(c)成分を0.1〜50重量部(より好ましくは0.5〜20重量部)である。このような場合、コンクリートの質感が得られやすい。
【0057】
第3工程では、このような被覆材(II)を塗付して模様を付与する。塗付器具は、模様を付与することができれば特に限定されず、刷毛、スプレー、ローラー等公知の塗付器具を使用することができが、本発明では、図1に示すような硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上の吸液材(図1:1a〜1e)が円筒外周面(図1:2)に混在するローラーブラシよって形成されることが好ましい。このような特定のローラーブラシを使用することにより、コンクリート面特有の、連続的かつ微妙に変化する模様を付与することができる。特に、円筒外周面に凹凸形状を有する場合、よりいっそう自然な模様を付与することができる。本発明において、ローラーブラシの外径(図1:R)は、所望の模様に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは20〜60mm(より好ましくは30〜50mm)である。
【0058】
上記ローラーブラシにおいて、円筒外周面に混在する吸液材としては、例えば、フェルト、不織布、スポンジ材等が挙げられ、これらの硬度、密度のいずれかまたは両方が異なる少なくとも2種以上(好ましくは3種以上)のものを混合して使用する。本発明では、2種以上(好ましくは3種以上)のスポンジ材を組み合わせて使用することが好ましい。各吸液材の硬度は、好ましくは10〜3000N(より好ましくは20〜2000N、さらに好ましくは30〜1500N)、密度は、好ましくは1〜300kg/m(より好ましくは3〜200kg/m、さらに好ましくは5〜150kg/m)である。このような吸液材を組み合わせたローラーブラシを使用することにより、各吸液材の変形具合や被覆材の転写性等に対応した模様を形成することができる。ここで言う、「硬度」とは、JIS K6400−2に準じ、試験片の厚さ40%まで圧縮したときの力から測定される硬さ(C法)の値である。また、「密度」とは、JIS K7222に準じ、試験片の重量及び寸法から算出される見掛け密度の値である。
【0059】
また、上記吸液材は、円筒外周面を覆うように固定された形態が好ましく、硬度及び/または密度が異なる少なくとも2種以上(好ましくは3種以上)の吸液材が円筒外径方向(図1:3)に積み重なるように固定されている形態がより好ましい。さらには、多数の吸液材が外周方向及び外径方向にランダムに混在するように圧縮成形された形態であることがいっそう好ましい。このような吸液材を有するローラーブラシを使用することにより、本発明の効果を高めることができる。
【0060】
上記吸液材は、外形が不定形の立体形のものであり、その個々の大きさは、好ましくは1〜30mm(より好ましくは2〜20mm)である。このような吸液材が集合して、吸液体を形成する。本発明では、大きさの異なる多数の吸液材が混在することが好ましい。このような場合、硬度及び/または密度に加え大きさも異なる吸液材が円筒外周面にランダムに混在するため、本発明の効果を一層高めることができる。吸液材どうしの間で不定形の凹凸形状が形成されやすいため、本発明の効果を一層高めることができる。なお、ここで言う「大きさ」は、外形の最長軸であり、例えば、一辺が所定寸法の升目を有する篩いにより篩い分けされて測定されるものである。また、円筒外周面に固定された吸液体の厚みは、個々の吸液体の大きさにもよるが、好ましくは50mm以下(より好ましくは1〜30mm、さらに好ましくは2〜15mm)である。さらに、本発明では、吸液体の外周面に所望の模様に応じて凹凸模様を設けることが好ましい。凹凸形状を設ける方法としては、吸液材の圧縮成形時にエンボス加工等をする方法や、圧縮成形された吸液材を部分的に除去する方法等が挙げられる。これにより、本発明の効果をより一層高めることができる。圧縮成形された吸液材を部分的に除去する場合、摘み取り、毟り等の公知の方法によれば、ランダムな凹凸形状が得られやすい。
【0061】
本発明の第3工程において被覆材(II)は、被覆材(I)の乾燥後に塗付することが好ましい。これにより、美観性の高い仕上りを安定的に得ることができる。また、この場合、被覆材(I)により形成された層(以下「被覆層(I)」ともいう。)の全面に上記ローラーブラシを転動させ、塗付することが好ましい。その塗付け量は、上記被覆材(I)の塗付け量よりも少ないことが好ましく、好ましくは0.005〜0.3kg/m(より好ましくは0.01〜0.2kg/m)である。このような所要量の範囲内で、複数回に分けて塗装することも可能である。このような場合、被覆層(I)の色調を活かしつつ、ランダムで微妙な色調変化を有する自然な模様が形成でき、美観性向上の点で有利である。
なお、被覆材(II)の塗付、乾燥は、好ましくは常温で行えばよい。
【0062】
本発明の被膜形成方法では、上記第2工程または上記第3工程後に、コーン跡による窪み(以下「窪み」という。)を補修することもできる。窪みの補修は、被覆材(I)の色調よりも濃い被覆材(好ましくは被覆材(I)及び被覆材(II)の色調よりも濃い被覆材)を刷毛等により塗付することで行うことが望ましい。これにより、窪みに陰影感が付与される。
【0063】
本発明の被膜形成方法では、第3工程の後に、必要に応じクリヤー層を設けることもできる。クリヤー層を設けることで、耐候性等が高まるだけでなく、被覆材(I)及び被覆材(II)による濃淡の色調がよりいっそう調和し、連続的かつ微妙に変化した色調(さらには濃淡)を有するコンクリート面特有の質感を高めることができる。このようなクリヤー層は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等を結合材とするクリヤー被覆材によって形成することができる。クリヤー被覆材は、水系または溶剤系、艶消しタイプまたは艶有りタイプのいずれであっても良い。また、クリヤー被覆材は低汚染タイプの方が好ましい。さらに、本発明の効果を阻害しない限り、着色することも可能である。クリヤー被覆材は、全面に塗付することが好ましい。塗付方法としては、刷毛塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等種々の方法を採用することができる。塗付け量は、好ましくは0.01〜0.5kg/m(より好ましくは0.05〜0.4kg/m)である。このような塗付け量の範囲内で、複数回に分けて塗装することも可能である。
【実施例】
【0064】
以下に試験例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
[浸透性吸水防止材]
・浸透性吸水防止材A(ヘキシルトリメトキシシランと脂肪族炭化水素系溶剤の混合物、重量比率3:97)
・浸透性吸水防止材B(ヘキシルトリメトキシシランと脂肪族炭化水素系溶剤の混合物、重量比率12:88)
・浸透性吸水防止材C(ヘキシルトリメトキシシラン、可溶形アクリル樹脂、脂肪族炭化水素系溶剤の混合物、重量比率3:25:72)
【0065】
[被覆材(I)]
・被覆材(I−A)
合成樹脂エマルションA100重量部、白色顔料A70重量部、体質顔料A20重量部、体質顔料B30重量部、着色顔料0.8重量部、造膜助剤4重量部、紫外線吸収剤0.2重量部、消泡剤0.1重量部、及び水10重量部を均一に混合・攪拌することによって被覆材(I−A)(灰色、L=76、光沢度1.8)を製造した。
【0066】
・被覆材(I−B)〜(I−P)
表1、表2に示す配合に基づき、被覆材(I−A)と同様の方法により、被覆材(I−B)〜(I−P)を製造した。
【0067】
[被覆材(II)]
・被覆材(II−A)
合成樹脂エマルションC100重量部に対し、白色顔料A70重量部、体質顔料A20重量部、体質顔料B30重量部、着色顔料0.8重量部、造膜助剤4重量部、紫外線吸収剤0.2重量部、消泡剤0.1重量部、及び水10重量部を常法により混合・攪拌することによって被覆材(II−A)(灰色、L=71、光沢度1.8)を製造した。
【0068】
・被覆材(II−B)〜(II−G)
表3に示す配合に基づき、被覆材(II−A)と同様の方法により、被覆材(II−B)〜(II−G)を製造した。
【0069】
なお、原料としては下記のものを使用した。
・合成樹脂エマルションA:シリコン変性アクリル樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート・メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体のメチルトリメトキシシラン付加物、固形分中のシクロヘキシルメタクリレート含有量20重量%、固形分中のシリコン成分量2重量%、固形分50重量%、Tg32℃、平均粒子径78nm)
・合成樹脂エマルションB:シリコン変性アクリル樹脂エマルション(t-ブチルメタクリレート・シクロヘキシルメタクリレート・メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体のメチルトリメトキシシラン付加物、固形分中のt-ブチルメタクリレート含有量10重量%、固形分中のシクロヘキシルメタクリレート含有量10重量%、固形分中のシリコン成分量2重量%、固形分50重量%、Tg38℃、平均粒子径75nm)
・合成樹脂エマルションC:シリコン変性アクリル樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート・メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体のメチルトリメトキシシラン付加物、固形分中のシクロヘキシルメタクリレート含有量20重量%、固形分中のシリコン成分量2重量%、固形分50重量%、Tg50℃、平均粒子径72nm)
【0070】
・合成樹脂エマルションD:シリコン変性アクリル樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート・メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体のメチルトリメトキシシラン付加物、固形分中のシクロヘキシルメタクリレート含有量20重量%、固形分中のシリコン成分量8重量%、固形分50重量%、Tg36℃、平均粒子径75nm)
・合成樹脂エマルションE:シリコン変性アクリル樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート・メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体のメチルトリメトキシシラン付加物、固形分中のシクロヘキシルメタクリレート含有量6重量%、固形分中のシリコン成分量2重量%、固形分50重量%、Tg32℃、平均粒子径78nm)
・合成樹脂エマルションF:シリコン変性アクリル樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート・メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体のメチルトリメトキシシラン付加物、固形分中のシクロヘキシルメタクリレート含有量20重量%、固形分中のシリコン成分量2重量%、固形分50重量%、Tg12℃、平均粒子径72nm)
・合成樹脂エマルションG:シリコン変性アクリル樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート・メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体のメチルトリメトキシシラン付加物、固形分中のシクロヘキシルメタクリレート含有量20重量%、固形分中のシリコン成分量2重量%、固形分50重量%、Tg32℃、平均粒子径130nm)
【0071】
・合成樹脂エマルションH:アクリル樹脂エマルション(シクロヘキシルメタクリレート・メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体、固形分中のシクロヘキシルメタクリレート含有量20重量%、固形分50重量%、Tg32℃、平均粒子径80nm)
・合成樹脂エマルションI:アクリル樹脂エマルション(メチルメタクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体、固形分50重量%、Tg32℃、平均粒子径80nm)
【0072】
・白色顔料A:酸化チタン(白色度97、屈折率2.71、平均粒子径0.3μm)
・体質顔料A:タルク(白色度60、屈折率1.57、平均粒子径4μm)
・体質顔料B:カオリン(白色度80、屈折率1.56、平均粒子径6μm)
・体質顔料C:重質炭酸カルシウム(白色度89、屈折率1.56、平均粒子径36μm)
・体質顔料D:クレー(白色度92、屈折率1.55、平均粒子径4μm)
・体質顔料E:珪石粉(白色度90、屈折率1.54、平均粒子径18μm)
・体質顔料F:珪藻土(白色度88、屈折率1.46、平均粒子径30μm)
・着色顔料:カーボンブラック
【0073】
(隠蔽率測定)
被覆材(I−A)〜(I−P)、及び被覆材(II−A)〜(II−G)をそれぞれ、隠蔽率試験紙にフィルムアプリケータ(隙間150μm)で塗付し、温度23℃・湿度50%環境下(以下「標準状態」という)で24時間乾燥させて得た試験片について、色彩色差計「CR−300」(ミノルタ株式会社製)を用いて黒地上塗膜と白地上塗膜の視感反射率を測定し、これらより隠蔽率を算出した。結果は、表1〜3に示した。
【0074】
試験例1〜16、比較例1〜3)
部分的に劣化が生じたコンクリート基材に対し、第1工程として浸透性吸水防止材を所要量200g/mで全面に刷毛塗りし、標準状態(気温23℃・相対湿度50%)にて16時間乾燥させた。次いで、第2工程として被覆材(I)を所要量100g/mで全面に刷毛塗りし、標準状態で24時間乾燥させ、側面養生した後さらに14日間乾燥させて試験体を作製し、以下の評価を行った。なお、浸透性吸水性防止材、及び被覆材(I)の組み合わせ、並びに結果は表4に示す。
【0075】
・吸水防止性試験
試験体を垂直に固定し、その試験体に対しホースを用いて60分間連続的に散水を行い、その際の色変化を観察した。評価基準は、試験前後で色変化が認められなかったものを「◎」、色変化がほとんど認められなかったものを「○」、色変化が認められたものを「△」、著しい色変化が認められたものを「×」とした。
【0076】
吸水防止性試験後の試験体について、JIS K 5600−5−6に準じ、クロスカット法にて密着性を評価した。評価基準は、欠損部面積が5%以内のものを「◎」、欠損部面積が5%超20%以内のものを「○」、欠損部面積が20%超35%以内のものを「△」、欠損部面積が35%超のものを「×」とした。
【0077】
・耐久性試験
試験体について、水浸漬(20℃)18時間→−20℃3時間→50℃3時間を1サイクルとする温冷繰返しを合計10サイクル行った。その後、JIS K 5600−5−6に準じ、クロスカット法にて密着性を評価した。評価基準は、欠損部面積が5%以内のものを「◎」、欠損部面積が5%超20%以内のものを「○」、欠損部面積が20%超35%以内のものを「△」、欠損部面積が35%超のものを「×」とした。
【0078】
・美観性
形成された被膜の外観が、コンクリート基材の劣化部等が全く視認されず、コンクリート面の質感に近似した仕上り(模様)を有するものを「◎」、コンクリート基材の劣化部等が全く視認されず美観性に優れるものを「〇」、劣化部が視認されるものを「×」とした。
【0079】
試験例17)
試験例1の被覆材(I−A)の乾燥後、第3工程として被覆材(II−A)を塗付け量70g/m図1に示すような硬度及び/または密度が異なる5種のスポンジ材1〜5(各スポンジ材は、大きさ2〜18mmを満たす不定形立体)が混在し、円筒外周面にランダムな凹凸形状を有するローラーブラシ1(外径45mm、吸液体の厚み2〜10mm)によって塗付し、標準状態で24時間乾燥させ、側面養生した後さらに14日間乾燥させて試験体を作製し、試験例1と同様の評価を行った。
・スポンジ材1:硬度45〜60N、密度50〜100kg/m
・スポンジ材2:硬度75〜110N、密度15〜30kg/m
・スポンジ材3:硬度110〜140N、密度15〜50kg/m
・スポンジ材4:硬度110〜300N、密度30〜85kg/m
・スポンジ材5:硬度10〜12kN、密度5〜15kg/m
【0080】
試験例18)
試験例17の被覆材(II−A)を硬度及び/または密度が異なる3種の上記スポンジ材2〜4(各スポンジ材は、大きさ2〜18mmを満たす不定形立体)が混在し、円筒外周面にランダムな凹凸形状を有するローラーブラシ2(外径45mm、吸液体の厚み2〜10mm)によって塗付した以外は、試験例17と同様に試験体を作成し、同様の評価を行った。結果は表5に示す。
【0081】
試験例19〜試験例23、比較例4)
試験例17の被覆材(I−A)、被覆材(II−A)に代えて、表5に示す被覆材(I)と被覆材(II)を使用した以外は、試験例17と同様に試験体を作成し、同様の評価を行った。結果は表5に示す。
【0082】
試験例17〜試験例23によって形成された被膜の外観は、比較例4に比べ、コンクリート面の質感に近似した良好な仕上りとなった。中でも、試験例17〜21は優れた仕上りとなった。
【0083】
試験例24)
試験例17によって形成された被膜の上に、さらにクリヤー被覆材(水性アクリルシリコン樹脂クリヤー、艶消しタイプ)を塗付け量100g/mとなるようにウールローラー塗付し、被膜を形成した。形成された被膜の外観は、試験例17よりもさらに優れた仕上りとなった。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】


図1