【文献】
ADAM J M,CYCLODEXTRIN-DERIVED HOST MOLECULES AS REVERSAL AGENTS FOR THE NEUROMUSCULAR BLOCKER 以下備考,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2002年,V45 N9,P1806-1816,https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jm011107f,ROCURONIUM BROMIDE: SYNTHESIS AND STRUCTURE-ACTIVITY RELATIONSHIPS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から3のいずれか一項に記載の少なくとも1つの置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な助剤とを含む医薬組成物であって、局所投与用に、ゲル、クリーム、軟膏、包帯、湿布、ギプス、バンドエイド、又はパッチとして配合される、医薬組成物。
対象における抗凝固剤の抗凝固作用に拮抗するための、請求項1から3のいずれか一項に記載の置換シクロデキストリン又はその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物。
前記対象が、抗凝固剤を用いた治療を受けている、手術を受けている、歯科治療を受けている、外傷を負っている、誘発性又は特発性の大量出血を負っている、及び/又は遺伝性若しくは薬物誘発性血小板減少症を患っているか若しくはそのリスクがある、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
前記障害が、先天性又は後天性の血友病A、血友病B、血友病C、フォンヴィルブランド病、第V因子、第VII因子、第X因子、及び/又は第XI因子欠乏症、第XIII因子又はアルファ2-抗プラスミン欠乏症、並びに、免疫性血小板減少症性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、胎児又は新生児の同種免疫血小板減少症、及び輸血後血小板減少性紫斑病を含めた、遺伝性又は薬物誘発性血小板減少症、ウィスコットアルドリッチ症候群、グランツマン血小板無力症、ベルナール・スーリエ症候群、特発性濃染顆粒異常症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、灰色血小板症候群、パリス・トルソー/ヤコブセン症候群、播種性血管内凝固、並びに、新生児のビタミンK欠乏症を含めた、ビタミンK欠乏症からなる群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の発明者らは、インビトロ及びインビボの両方で凝血促進効果を有する、1つ又は複数の特定の置換基を有する一連のシクロデキストリンを特定した。シクロデキストリンのそのような凝血促進効果は以前は知られていなかった。トロンビン生成のいくつかのパラメーターに対するシクロデキストリンの効果が特に決定された。トロンビン生成は、血液凝固プロセスの最終段階の1つであり、したがって凝固プロセスに対する化合物の効果を評価する際に特に重要なパラメーターである。シクロデキストリンの凝血促進活性は、本発明のシクロデキストリンの存在下で、トロンビン生成のタイムラグの減少、ピークトロンビンレベルの増加、ピークトロンビンレベルまでの時間の減少、又はそれらの組み合わせによって証明される。加えて、シクロデキストリンの凝血促進活性は、血餅形成の刺激によって証明されるように、インビボで実証された。実施例で示されるように、本明細書に記載のシクロデキストリンは幅広い抗凝固剤の抗凝固効果に少なくとも部分的に拮抗することが可能である。本明細書に記載の特定のシクロデキストリンは正常なプール血漿において凝血促進効果を発揮する、すなわちそれらは抗凝固剤の非存在下で又は凝固因子の欠乏の非存在下で正常な血液凝固に影響を与えることが更に分かった。更に、本明細書に記載のシクロデキストリンは、血液凝固因子が不足した血漿中で凝血促進効果を有する。
【0028】
本明細書に記載のシクロデキストリンを凝血促進剤として使用することは、公知の凝血促進剤の使用を上回る多くの利点がある。例えば、シクロデキストリンは、多様な抗凝固剤の抗凝固効果に拮抗するために使用できるという利点がある。直接作用経口抗凝固剤、例えば第Xa因子阻害剤(例えばリバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)、及び直接トロンビン阻害剤(例えばダビガトラン)等、五糖、例えばフォンダパリヌクス等、低分子量ヘパリン、例えばナドロパリン及びチンザパリン等、未分画ヘパリン、及びビタミンKアンタゴニストの抗凝固剤活性に、本明細書に記載のシクロデキストリンが拮抗する。反対に、現在知られている凝血促進剤の多くは1つの抗凝固剤又は1つのクラスの抗凝固剤に対して特異的である。したがって、本発明のシクロデキストリンは、最初に特異的な抗凝固剤を特定することを必要とせずに抗凝固効果に拮抗させるために使用でき、なぜなら緊急の状況ではこれは多くの場合に不明だからである。どのタイプの抗凝固療法が使用されているかに関わらず使用することができる一般的な凝血促進剤は、緊急の状況ではより選択的な中和剤よりも好ましい。
【0029】
加えて、本発明のシクロデキストリンは、現在は拮抗剤が入手可能ではない、アルガトロバン、ビバリルジン、リバーロキサバン、エドキサバン、及びアピキサバン等の化合物の抗凝固剤に拮抗することが可能である。
【0030】
更に、12〜24時間後に初めてビタミンKアンタゴニストの抗凝固効果に拮抗することができる、ビタミンK等の多くの公知の特異的な凝血促進剤とは異なり、本発明のシクロデキストリンは原理上、投与後に急速に、例えば数分以内にそれらの凝血促進活性を発揮する。しかし、シクロデキストリンの半減期はそれらの親水性に依存する。したがって、本発明のシクロデキストリンの半減期は、典型的にはより親水性の高い基の導入又は更なる親水性基の導入によって影響を受ける場合がある。これはシクロデキストリンの半減期の増加につながる。このように、シクロデキストリンは所望の用途において最適な半減期を有するように修飾することができる。
【0031】
上記に加えて、シクロデキストリンは食品及び医薬組成物において広く使用されてきた。それらはわずかしか副作用を伴わない。例えば、シクロデキストリンは、凝固因子の欠乏症を患う患者を治療するのに現在使用される組換え型凝固因子等のタンパク性凝血促進剤と比較して、ヒトに投与された場合に免疫原性が低い。
【0032】
したがって、本発明は、nが1又は3〜10の整数であり、Rが-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から選択される、少なくとも1つの置換基-S-(Cnアルキレン)-Rを含む置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。好ましくはnは3〜7の整数である。
【0033】
本発明は、凝血促進剤としての使用のための、nが1又は3〜10、好ましくは3〜7の整数であり、Rが-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から選択される、少なくとも1つの置換基-S-(Cnアルキレン)-Rを含む置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩を更に提供する。
【0034】
nが1又は3〜10、好ましくは3〜7の整数であり、Rが-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から選択される、少なくとも1つの置換基-S-(Cnアルキレン)-Rを含む置換シクロデキストリンは、本明細書において「本発明による置換シクロデキストリン」とも呼ばれる。
【0035】
シクロデキストリンは、環状オリゴ糖のファミリーである。シクロデキストリンは、1,4結合した6個以上のα-D-グルコピラノシド単位(
図1aを参照)で構成される。6、7、及び8個の糖単位を含有するシクロデキストリンは、それぞれアルファ-シクロデキストリン(α-CD)、ベータ-シクロデキストリン(β-CD)、及びガンマ-シクロデキストリン(γ-CD)と呼ばれる。シクロデキストリンは、やや親油性の中心空洞及び親水性の外側表面を含有する。それらは食品、医薬、及び化学産業において、並びに薬物送達において使用される。-OH基の1つ又は複数を置換して多様なシクロデキストリン誘導体又は置換シクロデキストリンを得ることができる。
【0036】
本明細書で使用する、「シクロデキストリン」という用語は、α-(1,4)グルコシド結合を介して結合している6個以上の-D-グルコピラノシド単位で構成された環状オリゴ糖部分を指す。本明細書で使用する「置換シクロデキストリン」という用語は、n及びRが本明細書において定義される通りである、少なくとも1つの置換基-S-(C
nアルキレン)-R基で置換されているシクロデキストリン部分を指す。そのような置換シクロデキストリンは、シクロデキストリン誘導体とも呼ばれる。好ましくは、シクロデキストリン部分の第1の面上に位置している1つ又は複数の-OH基(
図1bを参照)が、-O-S-(C
nアルキレン)-R基で置き換えられており、式中、n及びRは本明細書において定義される通りである。前記シクロデキストリン部分は更なる置換基を含有しない。
【0037】
本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、好ましくは6〜10個のグルコピラノシド単位、より好ましくは6〜8個の単位を含む。したがって、置換シクロデキストリンは好ましくは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、又はそれらの混合物を含む。更に好ましいのは、1つ又は複数の置換α-シクロデキストリン、1つ又は複数の置換β-シクロデキストリン、及び/又は1つ又は複数の置換γ-シクロデキストリンの混合物である。したがって、置換シクロデキストリンはより好ましくは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、又はそれらの混合物を含む。
【0038】
置換シクロデキストリンは好ましくは、包接錯体化合物、すなわちシクロデキストリンと錯体を形成しシクロデキストリンの親油性の中心空洞内に位置する化合物を実質的に含まない。
【0039】
本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、少なくとも1つの置換基-S-(C
nアルキレン)-Rを含み、式中、nは1又は3〜10の整数であり、Rは-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から選択される。好ましくはnは3〜7の整数である。置換は、好ましくはグルコピラノース単位の第1の面上に位置している第1級ヒドロキシル基の置換によって行われる(
図1bを参照)。
【0040】
本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、好ましくは式(I):
【0042】
(式中、nは1又は3〜10の整数であり、好ましくはnは3〜7の整数であり、pは0〜7の整数であり、qは1〜8の整数であり、ただし、p+qは6、7、又は8であるものとする。好ましくは、p+qは7又は8である)
を有する。
【0043】
本明細書で使用する、「-C
nアルキレン-」という用語は、n個の炭素原子を有する分岐又は非分岐の飽和アルキレン基を指す。例えば、nが4であるC
nアルキレンは、-(CH
2)
4-、-C(CH
3)
2-CH
2-、-CHCH
3-(CH
2)
2-であってもよい。置換基-S-(C
nアルキレン)-Rにおいて、nは好ましくは3〜10、より好ましくは3〜9、より好ましくは3〜8、より好ましくは3〜7、又は3〜5の整数である。特に好ましい置換シクロデキストリンにおいて、nは3〜7の整数である。前記置換基-S-(C
nアルキレン)-Rは好ましくは-S-(CH
2)
m-Rであり、式中、mは1又は3〜10の整数であり、-(CH
2)
m-部分は1〜3個のCH
3基で場合により置換されており、ただし、炭素原子の総数が10を超えないものとする。更なる好ましい実施形態において、mは3〜10、より好ましくは3〜9、より好ましくは3〜8、より好ましくは3〜7、より好ましくは3〜5の整数であり、-(CH
2)
m-部分は1〜3個のCH
3基で場合により置換されており、ただし、炭素原子の総数が10を超えないものとする。炭素原子の総数は好ましくは8を超えず、より好ましくは7を超えず、より好ましくは6を超えず、より好ましくは5を超えない。特に好ましい実施形態において、-(CH
2)
m-部分は非置換である。
【0044】
したがって、本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、好ましくは式(II):
【0046】
(式中、mは1又は3〜10の整数であり、好ましくはmは3〜7の整数であり、-(CH
2)
m-部分は1〜3個のCH
3基で場合により置換されており、ただし、炭素原子の総数が10を超えないものとし、pは0〜7の整数であり、qは1〜8の整数であり、ただし、p+qは6、7、又は8であるものとする。好ましくは、p+qは7又は8である。特に好ましい実施形態において、-(CH
2)
m-部分は非置換であり、mは3〜7、より好ましくは3〜5の整数である)
を有する。
【0047】
本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、少なくとも1つの置換基-S-(C
nアルキレン)-Rを有する。好ましい実施形態において、置換α-シクロデキストリンは1〜6個のそのような置換基を含み、置換β-シクロデキストリンは1〜7個のそのような置換基を含み、及び/又は置換γ-シクロデキストリンは1〜8個のそのような置換基を含む。特に好ましい実施形態において、本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリン、好ましくはα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及び/又はγ-シクロデキストリンは、モノ置換又は全置換シクロデキストリンである。
【0048】
本明細書で使用する、「モノ置換シクロデキストリン」という用語は、本明細書において定義される1つの置換基-S-(C
nアルキレン)-R又は-S-(CH
2)
m-Rを含むシクロデキストリンを指す。式(I)又は式(II)によるモノ置換α-シクロデキストリンにおいて、pは5であり、qは1である。式(I)又は式(II)によるモノ置換β-シクロデキストリンにおいて、pは6であり、qは1である。式(I)又は式(II)によるモノ置換γ-シクロデキストリンにおいて、pは7であり、qは1である。
【0049】
本明細書で使用する「全置換シクロデキストリン」という用語は、すべての第1級OH-基が本明細書において定義される置換基-S-(C
nアルキレン)-R又は-S-(CH
2)
m-Rで置換されているシクロデキストリンを指す。したがって、全置換α-シクロデキストリンは本明細書において定義される6個の置換基-S-(C
nアルキレン)-R又は-S-(CH
2)
m-Rを含有し、全置換β-シクロデキストリンは本明細書において定義される7個の置換基-S-(C
nアルキレン)-R又は-S-(CH
2)
m-Rを含有し、全置換γ-シクロデキストリンは本明細書において定義される8個の置換基-S-(C
nアルキレン)-R又は-S-(CH
2)
m-Rを含有する。式(I)又は式(II)による全置換α-シクロデキストリンにおいて、pは0であり、qは6である。式(I)又は式(II)による全置換β-シクロデキストリンにおいて、pは0であり、qは7である。式(I)又は式(II)による全置換γ-シクロデキストリンにおいて、pは0であり、qは8である。
【0050】
したがって、式(I)及び式(II)において、好ましくはp+qは7であり、それによりpは0であり、qは7である、若しくはpは6であり、qは1であるか;又はp+qは8であり、それによりpは0であり、qは8である、若しくはpは7であり、qは1である。
【0051】
置換基-S-(C
nアルキレン)-R及び置換基-S-(CH
2)
m-Rにおいて(式中、n及びmは本明細書において定義される通りである)、Rは、COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から選択される。最も好ましくは、RはCOOH及びOHからなる群から選択される。
【0052】
本発明による又は本発明による使用のための特に好ましい置換シクロデキストリンは、
- pが0〜7の整数であり、qが1〜8の整数であり、ただし、p+qが7又は8であるものとし;
- nが1又は3〜10の整数であり、好ましくはnが3〜7の整数であり、より好ましくは3〜5の整数であり;
- Rが、-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から、より好ましくは-COOH及び-OHからなる群から選択される、
式(I)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0053】
本発明による又は本発明による使用のための更なる好ましい置換シクロデキストリンは、
- p+qが7であり、それによりpが0であり、qが7である、若しくはpが6であり、qが1であるか;又はp+qが8であり、それによりpが0であり、qが8である、若しくはpが7であり、qが1であり;
- nが1又は3〜10の整数であり、好ましくはnが3〜7、より好ましくは3〜5の整数であり;
- Rが、-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から、より好ましくは-COOH及び-OHからなる群から選択される、
式(I)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0054】
本発明による又は本発明による使用のための更なる好ましい置換シクロデキストリンは、
- p+qが7であり、それによりpが0であり、qが7である、若しくはpが6であり、qが1であるか;又はp+qが8であり、それによりpが0であり、qが8である、若しくはpが7であり、qが1であり;
- mが3〜7、好ましくは3〜5の整数であり;
- -(CH
2)
m-部分が1〜3個のCH
3基で場合により置換されており、好ましくは-(CH
2)
m-部分が非置換であり;
- Rが、-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から、より好ましくは-COOH及び-OHからなる群から選択される、
式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0055】
本発明による又は本発明による使用のための更なる好ましい置換シクロデキストリンは、
- p+qが7であり、それによりpが0であり、qが7である、若しくはpが6であり、qが1であるか;又はp+qが8であり、それによりpが0であり、qが8である、若しくはpが7であり、qが1であり;
- mが3〜7、好ましくは3〜5の整数であり;
- -(CH
2)
m-部分が非置換であり;
- Rが、-COOH及び-OHからなる群から選択される、
式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0056】
本発明による又は本発明による使用のための更なる好ましい置換シクロデキストリンは、
- p+qが7であり、それによりpが0であり、qが7であり;
- -(CH
2)
m-部分が非置換であり;
- mが3又は4、好ましくは3であり;
- Rが、-COOH及び-OHからなる群から選択され、好ましくはRがCOOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0057】
本発明による又は本発明による使用のための更なる好ましい置換シクロデキストリンは、
- p+qが7であり、それによりpが6であり、qが1であり;
- -(CH
2)
m-部分が非置換であり;
- mが3〜7の整数、好ましくは3〜5の整数であり、より好ましくは3〜5の整数であり、より好ましくはmが5であり;
- Rが、-COOH及び-OHからなる群から選択され、好ましくはRがCOOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0058】
本発明による又は本発明による使用のための更なる好ましい置換シクロデキストリンは、
- p+qが8であり、それによりpが0であり、qが8であり;
- -(CH
2)
m-部分が非置換であり;
- mが3〜7、好ましくは3〜5の整数であり、より好ましくは3又は5であり;
- Rが、-COOH及び-OHからなる群から選択され、好ましくはRがCOOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。
【0059】
本発明による又は本発明による使用のための更なる好ましい置換シクロデキストリンは、
- p+qが8であり、それによりpが7であり、qが1であり;
- -(CH
2)
m-部分が非置換であり;
- mが3〜7、好ましくは3〜5の整数であり、より好ましくは3又は5であり;
- Rが、-COOH及び-OHからなる群から選択され、好ましくはRがCOOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。
【0060】
本発明による及び/又は本発明に従って使用される特に好ましい置換シクロデキストリンは、
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがCOOHである;
- pが7であり、qが1であり、mが3であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが3であり、RがCOOHである;
- pが6であり、qが1であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが7であり、qが1であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが3であり、RがOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが6であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが4であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが6であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが7であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがOHである;
- pが5であり、qが1であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである;
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである;
- pが7であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである;又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はこれらの置換シクロデキストリンのいずれかの薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。好ましい実施形態において、前記置換シクロデキストリンは、6-ペル-デオキシ-6-ペル-(5-カルボキシペンチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩、6-ペル-デオキシ-6-ペル-3-カルボキシプロピル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩、又は6-ペル-デオキシ-6-ペル-(3-カルボキシプロピル)チオ-β-シクロデキストリンナトリウム塩ではない。別の更なる好ましい実施形態において、前記薬学的に許容可能な塩はナトリウム塩ではない。
【0061】
より好ましくは、本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、
- pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが3であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが7であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがOHである、
- pが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はこれらの置換シクロデキストリンのいずれかの薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。好ましい実施形態において、前記置換シクロデキストリンは、6-ペル-デオキシ-6-ペル-(5-カルボキシペンチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩、又は6-ペル-デオキシ-6-ペル-3-カルボキシプロピル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩ではない。別の更なる好ましい実施形態において、前記薬学的に許容可能な塩はナトリウム塩ではない。
【0062】
更なる好ましい実施形態において、本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、
- pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが7であり、qが1であり、mが3であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
シクロデキストリン、又はこれらの置換シクロデキストリンのいずれかの薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。好ましい実施形態において、前記置換シクロデキストリンは、6-ペル-デオキシ-6-ペル-(5-カルボキシペンチル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩、又は6-ペル-デオキシ-6-ペル-3-カルボキシプロピル)チオ-γ-シクロデキストリンナトリウム塩ではない。別の更なる好ましい実施形態において、前記薬学的に許容可能な塩はナトリウム塩ではない。
【0063】
別の更なる好ましい実施形態において、本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、
- pが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが7であり、qが1であり、mが3であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
シクロデキストリン、又はこれらの置換シクロデキストリンのいずれかの薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。
【0064】
特に好ましい本発明による又は本発明による使用のための置換シクロデキストリンは、pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである、式(II)のシクロデキストリン、又はそのエステルであり、好ましくは、pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである、式(II)のシクロデキストリンである。本発明による又は本発明による使用のための、別の特に好ましいシクロデキストリンは、pが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである、式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルであり、好ましくはpが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである、式(II)のシクロデキストリンである。
【0065】
本発明による置換シクロデキストリンの塩も提供される。そのような塩は、本発明の方法及び使用において凝血促進剤として使用できる。そのような塩としては、限定はされないが、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。本明細書で使用する「薬学的に許容可能な塩」という用語は、置換シクロデキストリンの薬理学的活性を保持し、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、炎症、アレルギー反応等を伴わずにヒト又は動物において使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合っている、塩を指す。薬学的に許容可能な塩は当技術分野において良く知られている。それらは、本発明の置換シクロデキストリンを単離及び精製する際にin situで、又は別途にそれらを、無機若しくは有機塩基、及び無機若しくは有機酸を含めた薬学的に許容可能な非毒性の塩基又は酸と反応させることにより、例えば塩が不溶性である溶媒又は媒体中で、又は後で真空内で若しくは凍結乾燥により除去される水又は有機溶媒等の溶媒中で、生成物の遊離酸又は遊離塩基型を、1当量又は複数当量の適切な酸又は塩基と反応させることにより、又は適切なイオン交換樹脂上で既存の塩のカチオンを別のカチオンと交換することにより、調製できる。薬学的に許容可能な酸及び塩基の例としては、有機及び無機酸例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、トリフルオロ酢酸、桂皮酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、過塩素酸、及びリン酸等、並びに塩基、例えばエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、及び他のモノ、ジ、及びトリアルキルアミン、及びアリールアミン等、並びにナトリウム塩、カリウム塩、及びリチウム塩が挙げられる。
【0066】
本発明による置換シクロデキストリンのエステルも提供される。そのようなエステルは、本発明の方法及び使用において凝血促進剤として使用できる。エステル基又はエステル結合を含有する化合物は、カルボン酸を含有する化合物のプロドラッグとして良く知られている。そのようなエステルは、患者への投与後にエステラーゼによりインビボで活性化される。そのようなエステルは好ましくは、Rが-COO(1〜4C)アルキル、好ましくは-COO(1〜2C)アルキルである、本明細書において定義されるシクロデキストリンである。
【0067】
本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩又はエステル、及び少なくとも1つの薬学的に許容可能な助剤を含む医薬組成物も提供される。薬学的に許容可能な助剤の例としては、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、及び/又は賦形剤が挙げられる。「薬学的に許容可能な」とは、助剤、担体、希釈剤、又は賦形剤が、配合物の他の成分と適合性がなければならず、その受容者にとって有害であってはならないことを意味する。一般に、活性化合物の機能と干渉しない、任意の薬学的に適切な添加剤を使用できる。本発明による医薬組成物は、好ましくはヒトへの使用に適している。適切な担体の例は、溶液、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体等、又はそれらの混合物を含む。好ましい実施形態において、前記適切な担体は、溶液、例えば食塩水である。用量単位、例えば錠剤を作るために、フィラー、着色剤、ポリマーバインダー等の従来の添加剤の使用が考えられる。錠剤、カプセル等に取り込むことができる賦形剤の例は、バインダー、例えばトラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、又はゼラチン等;賦形剤、例えば微結晶セルロース等;崩壊剤、例えばコーンスターチ、アルファ化デンプン、アルギン酸等;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム等;甘味料、例えばスクロース、ラクトース、又はサッカリン等;香味剤、例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、又はチェリー等である。静脈内投与のための組成物は、殺菌等張水性緩衝液中に本発明の抗体を含む溶液であってもよい。静脈内用組成物としては、例えば可溶化剤、安定化剤、及び/又は注射の部位の痛みを和らげる局所麻酔薬を挙げることができる。
【0068】
一実施形態において、本発明による医薬組成物は、全身投与、好ましくは非経口投与(限定はされないが、静脈内、筋肉内、及び皮下投与が挙げられる)に向けて、又は経口投与(限定はされないが錠剤、カプセル、液体、エマルション、懸濁液が挙げられる)に向けて配合される。
【0069】
本発明による医薬組成物は、好ましくは局所投与、出血の局所(局部)治療に適している。したがって医薬組成物は、好ましくは局所投与のために、好ましくはゲル、クリーム、軟膏、スプレー、洗口液、点眼薬、包帯、湿布、ギプス(plaster)、バンドエイド、又はパッチとして配合される。そのような局所的配合物は、創傷及び/又は局部の(大量)出血の治療において使用するのに特に適している。
【0070】
- 本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルと、
- 組換え型又は単離された凝固因子と
を含むパーツのキットが更に提供される。
【0071】
「単離された、組換え型凝固因子」という用語は、組換えにより生成された、又は血液若しくは血漿から単離された凝固因子を指す。限定はされないが、好ましい凝固因子は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XIII因子、アルファ2-抗プラスミン、フォンヴィレブランド因子である。特に好ましいのは、第VIII因子及び第IX因子である。好ましくは、本発明によるパーツのキット中に存在する凝固因子は、組換え型凝固因子である。
【0072】
そのようなパーツのキットは、凝固因子が不十分である患者、例えば血友病A、血友病B、フォンヴィルブランド病、又は血友病Cを患う患者等の治療における併用療法を提供するのに特に適している。そのようなパーツのキットの使用は、そのような患者の治療に必要とされる単離された又は組換え型凝固因子がより少ないという利点がある。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明によるパーツのキットは、組換え型又は単離された凝固因子としての第VIII因子と、
- pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが7であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがOHである、
- pが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
式(II)のシクロデキストリンの群から選択される置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルとを含む。
【0074】
別の好ましい実施形態において、本発明によるパーツのキットは、組換え型又は単離された凝固因子としての第IX因子と、
- pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが7であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
式(II)のシクロデキストリンの群から選択される置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルとを含む。
【0075】
別の好ましい実施形態において、本発明によるパーツのキットは、組換え型又は単離された凝固因子としての第XI因子と、pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである、置換シクロデキストリンとを含む。
【0076】
本発明の一実施形態において、本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステル、及び組換え型又は単離された凝固因子を満たした1つ又は複数の容器を含む、パーツのキットが提供される。使用説明書、又は医薬製品の製造、使用、若しくは販売を規制する行政機関によって規定される形態の注意書き等の、様々な資料がそのような容器に付随していてもよく、この注意書きはヒト若しくは動物への投与のための製造、使用、若しくは販売の行政機関による承認を示す。好ましくは、本発明によるパーツのキットは使用説明書を含む。
【0077】
本明細書で使用する、「凝固」という用語は、血餅の形成を生じさせ、それにより血液又は血漿が液体からゲル相へ変化する、フィブリンモノマーの重合のプロセスを指す。本明細書において使用される、「凝血促進剤としての使用」という用語は、血餅形成のプロセスを開始又は促進させることを指す。本明細書に記載の置換シクロデキストリンの凝血促進効果を決定するのに、例えばトロンビン生成及び/又は血漿又は血液試料中で血餅が生成する前の時間の長さを測定するのに、当技術分野において公知の任意の方法を使用できる。トロンビン生成を測定するために、特に適切な方法が本明細書において実施例に記載されている。簡潔に言えば、正常な血漿にシクロデキストリン及び場合により抗凝固剤を混ぜる。凝固は、例えば組換え型ヒト組織因子及び蛍光発生基質Z-Gly-Gly-Arg-AMCの存在下で、再石灰化が引き金となって生じる。蛍光をモニタリングすることができ、続いてトロンビン形成のタイムラグ、ピークトロンビン、速度指数、及び曲線の下の面積を計算する。
【0078】
nが3〜10、好ましくは3〜7の整数であり、Rが-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から選択される、少なくとも1つの置換基-S-(C
nアルキレン)-Rを含む置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩の、凝血促進剤としての使用も提供される。nが3〜10の整数であり、Rが-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から選択される、少なくとも1つの置換基-S-(C
nアルキレン)-Rを含む治療有効量の置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、凝血促進の方法も提供される。nが3〜10の整数であり、Rが-COOH、-OH、及び-COO(1〜4C)アルキルからなる群から選択される、少なくとも1つの置換基-S-(C
nアルキレン)-Rを含む治療有効量の置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩を、対象に投与することを含む、それを必要とする対象において凝固を誘発する又は刺激する方法も提供される。
【0079】
本明細書に記載のシクロデキストリンは、抗凝固剤の抗凝固効果に拮抗する、すなわち抗凝固剤の中和剤として拮抗するのに特に適している。実施例において実証されるように、置換シクロデキストリンは、試験されたあらゆる抗凝固剤の抗凝固剤活性に拮抗することが可能であった。したがって、対象において抗凝固剤の抗凝固効果に拮抗する方法で使用するための、本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルが提供される。それを必要とする対象において抗凝固剤の抗凝固効果に拮抗する方法であって、前記抗凝固剤が投与されている対象に、治療有効量の本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルを投与することを含む、方法も提供される。対象において抗凝固剤の抗凝固効果に拮抗する薬剤の調製のための、本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルが更に提供される。
【0080】
本明細書で使用する「抗凝固剤」という用語は、インビトロ及び/又はインビボで血餅の形成を予防する又は遅らせることが可能である薬剤又は化合物を指す。
【0081】
本明細書で使用する、「抗凝固剤の抗凝固効果に拮抗する」という用語は、抗凝固剤が血餅の形成を予防する又は遅らせる能力を低下させることを指す。したがって、抗凝固剤の抗凝固効果は少なくとも部分的に拮抗される。特に、この用語は、抗凝固剤の存在下であるが置換シクロデキストリンの非存在下における、血餅の形成の開始までの時間、又は血餅の強度と比較した、本明細書に記載の置換シクロデキストリン及び抗凝固剤の存在下での、血餅の形成の開始までの時間の短縮、又は血餅の強度の増加を指す。本明細書に記載の置換シクロデキストリンの凝血促進効果を決定するのに当技術分野において公知の任意の方法を使用することができ、例えば、血漿若しくは血液試料中又はインビボ出血モデルでのトロンビン生成、血餅強度、及び/又は血餅が生成する前の時間の長さを測定することである。適切なトロンビン形成アッセイは実施例及び上記で記載される。適切なインビボ出血アッセイも、実施例に記載される。簡潔に言えば、麻酔下のマウスの後脚にある伏在静脈を、針で刺し続いて切開することにより切断する。止血が生じるまで穏やかに流血させ、次いで血餅を除去し、止血が生じるまで再び流血させ、これを30分間繰り返す。評価することができるパラメーターは、30分で止血が生じる回数及び各止血に要した時間である。
【0082】
本発明によるシクロデキストリンはあらゆる試験される抗凝固剤に対して明らかな活性を有するので、抗凝固剤は当技術分野において公知の任意の抗凝固剤であってもよい。好ましい実施形態において、抗凝固剤は、
- 直接トロンビン阻害剤、例えばダビガトラン、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、又はアルガトロバン等、
- 直接第Xa因子阻害剤、例えばリバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、レタキサバン、又はエリバキサバン等、
- 五糖、例えばフォンダパリヌクス又はイドラパリヌクス等、
- 低分子量ヘパリン、例えばナドロパリン、チンザパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ベミパリン、レビパリン、パルナパリン、又はセルトパリン等、
- 未分画ヘパリン、
- ビタミンK拮抗薬、例えばアセノクマロール、フェンプロクモン、ワルファリン、アトロメンチン、又はフェニンジオン等、並びに
- 抗血小板薬、例えば不可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害剤(アスピリン又はその誘導体又はトリフルサル等)、ADP受容体阻害剤(クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、カングレロル、又はエリノグレル等)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(シロスタゾール等)、PAR-1拮抗薬(ボラパキサル等)、GPIIB/IIIa阻害剤(アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、ロキシフィバン、又はオルボフィバン等)、アデノシン再取り込み阻害剤(ジピリダモール等)、トロンボキサン阻害剤(イフェトロバン又はピコタミド等)、又はトロンボキサン受容体拮抗薬(テルトロバン(terutroban)又はピコタミド等)等
からなる群から選択される。
【0083】
このリストは完全に網羅するものではなく、抗凝固剤のリストに記載されたカテゴリーに属する多くの他の抗凝固剤が当業者に知られていることに注意する。それらの抗凝固効果にもまた本発明の置換シクロデキストリンを使用して拮抗することができる。本発明の特定の実施形態において、抗凝固剤は、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ナドロパリン、チンザパリン、未分画ヘパリン、ヒルジン、ビバリルジン、及びビタミンK拮抗薬からなる群から選択される。好ましい一実施形態において、抗凝固剤は、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンからなる群から選択される。
【0084】
好ましい実施形態において、対象において抗凝固剤の抗凝固効果に拮抗するための、本発明に従って使用される置換シクロデキストリンは、OKL-1105、OKL-1106、OKL-1107、OKL-1108、OKL-1109、OKL-1110、OKL-1111、OKL-1146、OKL-1171、OKL-1172、OKL-1174、OKL-1178、OKL-1180、OKL-1181、OKL-1186、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、OKL-1190、OKL-1191(これらの構造を表1に示す)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはOKL-1105、OKL-1106、OKL-1107、OKL-1108、OKL-1110、OKL-1111、OKL-1146、OKL-1171、OKL-1172、OKL-1174、OKL-1178、OKL-1180、OKL-1181、OKL-1186、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、OKL-1190、OKL-1191、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特に好ましい実施形態において、対象において抗凝固剤の抗凝固効果に拮抗するための、本発明に従って使用される置換シクロデキストリンは、置換基が-S-(CH
2)
5-COOHである式(II)の全置換γ-シクロデキストリンOKL-1111、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステル、又は置換基が-S-(CH
2)
5-COOHである式(II)の全置換α-シクロデキストリンOKL-1187、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。
【0085】
特定の抗凝固剤の効果に本発明の特定の置換シクロデキストリンが拮抗することができるかどうかは、例えば本明細書において実施例に記載される凝固アッセイを行うことにより、当業者によって容易に評価できる。そのようなアッセイでは、抗凝固剤を含有する正常なヒトの血漿を、置換シクロデキストリン有り及び無しでインキュベートし、本明細書に記載のパラメーターの1つ又は複数(トロンビン形成のタイムラグ、ピークトロンビン、速度指数、及び曲線の下の面積)を決定して、置換シクロデキストリンが特定の血漿試料の抗凝固効果に拮抗することができるかどうかを評価する。
【0086】
実施例は、本発明のシクロデキストリンが、凝固因子の1つが不十分である患者の血漿において凝血促進効果を有することを更に示す。したがって本発明のシクロデキストリンは、血液凝固障害に拮抗する、すなわち止血促進剤として拮抗するのに更に特に適している。したがって、血液凝固障害を治療又は予防する方法で使用するための、本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルが提供される。治療有効量の本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルを、それを必要とする対象に投与することを含む、血液凝固障害を治療又は予防する方法も提供される。血液凝固障害を治療又は予防するための薬剤の調製のための、本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルも提供される。
【0087】
本明細書で使用する、「血液凝固障害」という用語は、止血系及び/又は凝固系の異常を引き起こす疾患を指す。そのような疾患は典型的には出血傾向によって特徴づけられる。血液凝固障害の良く知られている例としては、凝固因子VIII(FVIII)の欠乏症によって特徴づけられる血友病A、凝固因子IX(FIX)の欠乏症によって特徴づけられる血友病B、及び凝固因子XI(FXI)の欠乏症によって特徴づけられる血友病Cが挙げられる。特定の血液凝固障害が本発明の特定の置換シクロデキストリンによって治療可能であるかどうかは、例えば本明細書において実施例に記載される凝固アッセイを行うことにより、当業者により容易に評価できる。そのようなアッセイでは、血液凝固障害を患う1人又は複数人の患者の血漿を、置換シクロデキストリン有及び無しでインキュベートし、本明細書に記載のパラメーター(トロンビン形成のタイムラグ、ピークトロンビン、速度指数、及び曲線の下の面積)の1つ又は複数を決定して、置換シクロデキストリンが特定の血漿試料において凝血促進効果を有するかどうかを評価する。血液凝固障害の、好ましいが非限定的な例は、先天性又は後天性の血友病A、血友病B、血友病C、フォンヴィルブランド病、凝固因子欠乏症、例えば第V因子、第VII因子、及び/又は第X因子欠乏症等、第XIII因子又はアルファ2-抗プラスミン欠乏症、遺伝性又は薬物誘発性血小板減少症(免疫性血小板減少症性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、胎児又は新生児の同種免疫血小板減少症、及び輸血後血小板減少性紫斑病を含める)、ウィスコットアルドリッチ症候群、グランツマン血小板無力症、ベルナール・スーリエ症候群、特発性濃染顆粒異常症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、灰色血小板症候群、パリス・トルソー/ヤコブセン症候群、播種性血管内凝固、及びビタミンK欠乏症(新生児のビタミンK欠乏症を含める)である。本発明の好ましい実施形態において、血液凝固障害は、前記疾患からなる群から選択される。更なる好ましい実施形態において、前記疾患は、凝固因子の欠乏症、特に第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XIII因子、及びアルファ2-抗プラスミンからなる群から選択される凝固因子の欠乏症である。本発明に従って治療又は予防され
る特に好ましい疾患は、血友病A、血友病B、及び血友病Cからなる群から選択される。
【0088】
好ましい実施形態において、血液凝固障害、好ましくは血友病A、血友病B、又は血友病Cの治療又は予防のために本発明に従って使用される置換シクロデキストリンは、OKL-1111、OKL-1171、OKL-1172、OKL-1174、OKL-1180、OKL-1181、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、OKL-1191からなる群、好ましくはOKL-1111、OKL-1172、OKL-1180、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、及びOKL-1191からなる群、好ましくはOKL-1111、OKL-1180、及びOKL-1187からなる群(これらの構造を表1に示す)、及びそれらの組み合わせから選択される。更なる好ましい実施形態において、血液凝固障害、好ましくは血友病A、血友病B、又は血友病Cの治療又は予防のために本発明に従って使用される置換シクロデキストリンは、mが5〜10、より好ましくは5〜7の整数、より好ましくは5であり、pが0であり、qが7又は8である、式(II)の置換シクロデキストリンである。特に好ましい実施形態において、血液凝固障害、好ましくは血友病A、血友病B、又は血友病Cの治療又は予防のために本発明に従って使用される置換シクロデキストリンは、OKL-1111、OKL-1172、OKL-1180、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、及びOKL1191、又はそれらの混合物からなる群、好ましくは、置換基が-S-(CH
2)
5-COOHである式(II)の全置換γ-シクロデキストリンOKL-1111、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルから選択される。
【0089】
好ましい実施形態において、血液凝固障害は血友病Aであり、置換シクロデキストリンは、
- pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが7であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがOHである、
- pが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はこれらの置換シクロデキストリンのいずれかの薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。
【0090】
別の好ましい実施形態において、血液凝固障害は血友病Bであり、置換シクロデキストリンは、
- pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが7であり、RがCOOHである、
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである、
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はこれらの置換シクロデキストリンのいずれかの薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。
【0091】
別の好ましい実施形態において、血液凝固障害は血友病Cであり、置換シクロデキストリンは、pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。
【0092】
実施例は、本発明のシクロデキストリンが抗凝固剤の存在下及び非存在下の両方で正常な血漿中において凝血促進効果を有することを更に示す。したがって、本発明のシクロデキストリンはまた、出血の原因に関係なく、対象における出血を低減又は予防するのに、すなわち出血状態での止血促進剤として、特に適している。したがって、対象における出血を低減又は予防する方法において使用するための、本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルが更に提供される。それを必要とする対象において出血を低減又は予防する方法であって、治療有効量の本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルを対象に投与することを含む、方法も提供される。対象における出血を低減又は予防する薬剤の調製のための、本発明による置換シクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルも提供される。
【0093】
好ましくは、前記対象は、抗凝固剤で治療されている、手術を受けている、歯科治療を受けている、外傷を負っている、誘発性又は特発性の大量出血、例えば頭蓋内出血又は胃腸出血等を負っている、及び/又は遺伝性若しくは薬物誘発性血小板減少症を患っている若しくはそのリスクがある。
【0094】
本発明によるシクロデキストリンは、あらゆる試験される抗凝固剤に対して明らかな活性を有するので、抗凝固剤は当技術分野において公知の任意の抗凝固剤であってもよい。好ましい実施形態において、抗凝固剤は、
- 直接トロンビン阻害剤、例えばダビガトラン、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、又はアルガトロバン等、
- 直接第Xa因子阻害剤、例えばリバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、レタキサバン、又はエリバキサバン等、
- 五糖、例えばフォンダパリヌクス又はイドラパリヌクス等、
- 低分子量ヘパリン、例えばナドロパリン、チンザパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ベミパリン、レビパリン、パルナパリン、又はセルトパリン等、
- 未分画ヘパリン、
- ビタミンK拮抗薬、例えばアセノクマロール、フェンプロクモン、ワルファリン、アトロメンチン、又はフェニンジオン等、並びに
- 抗血小板薬、例えば不可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害剤(アスピリン又はその誘導体又はトリフルサル等)、ADP受容体阻害剤(クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、カングレロル、又はエリノグレル等)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(シロスタゾール等)、PAR-1拮抗薬(ボラパキサル等)、GPIIB/IIIa阻害剤(アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、ロキシフィバン、又はオルボフィバン等)、アデノシン再取り込み阻害剤(ジピリダモール等)、トロンボキサン阻害剤(イフェトロバン又はピコタミド等)、又はトロンボキサン受容体拮抗薬(テルトロバン又はピコタミド等)等
からなる群から選択される。
【0095】
このリストは完全に網羅するものではなく、本発明の方法又は使用によりその効果に拮抗することができる、抗凝固剤のリストに記載されたカテゴリーに属する多くの他の抗凝固剤が当業者に知られていることに注意する。本発明の特定の実施形態において、抗凝固剤は、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、フォンダパリヌクス、ナドロパリン、チンザパリン、未分画ヘパリン、ヒルジン、ビバリルジン、及びビタミンK拮抗薬からなる群から選択される。
【0096】
好ましい実施形態において、対象において出血を低減又は予防するための、本発明に従って使用される置換シクロデキストリンは、
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがCOOHである;
- pが7であり、qが1であり、mが3であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが3であり、RがCOOHである;
- pが6であり、qが1であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが7であり、qが1であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが3であり、RがOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが6であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが8であり、mが4であり、RがOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが4であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが6であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが7であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが7であり、mが3であり、RがOHである;
- pが5であり、qが1であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが0であり、qが6であり、mが5であり、RがCOOHである;
- pが6であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである;
- pが6であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである;
- pが7であり、qが1であり、mが6であり、RがCOOHである;又は
- pが7であり、qが1であり、mが4であり、RがOHである、
式(II)のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルからなる群から選択され、より好ましくはOKL-1105、OKL-1106、OKL-1107、OKL-1108、OKL-1109、OKL-1110、OKL-1111、OKL-1146、OKL-1171、OKL-1172、OKL-1174、OKL-1178、OKL-1180、OKL-1181、OKL-1186、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、OKL-1190、OKL-1191、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはOKL-1105、OKL-1106、OKL-1107、OKL-1110、OKL-1111、OKL-1146、OKL-1172、OKL-1174、OKL-1180、OKL-1181、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、OKL-1191、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはOKL-1106、OKL-1107、OKL-1111、OKL-1146、OKL-1172、OKL-1174、OKL-1180、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、OKL-1191、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはOKL-1106、OKL-1111、OKL-1174、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、OKL-1191、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。更なる好ましい実施形態において、対象において出血を低減又は予防するための、本発明に従って使用される置換シクロデキストリンは、mが5〜10、より好ましくは5〜7の整数、より好ましくは5であり、pが0であり、qが7又は8である、式(II)の置換シクロデキストリンである。特に好ましい実施形態において、対象において出血を低減又は予防するための、本発明に従って使用される置換シクロデキストリンは、置換基が-S-(CH
2)
5-COOHである式(II)の全置換γ-シクロデキストリンOKL-1111、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステル、又は置換基が-S-(CH
2)
5-COOHである式(II)の全置換α-シクロデキストリンOKL-1187、又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルである。
【0097】
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、治療される疾患の予防、治療、又は管理における治療上の利益をもたらす、医薬組成物の量を指す。
【0098】
本明細書で使用する、「対象」という用語は、ヒト及び動物、好ましくは哺乳類を包含する。好ましくは、対象は哺乳類、より好ましくはヒトである。特定の実施形態において、対象は、抗凝固剤で治療されている、血液凝固障害を患っている、手術を受けている、歯科治療を受けている、外傷を負っている、誘発性又は特発性の大量出血、例えば頭蓋内出血又は胃腸出血等を負っている、及び/又は遺伝性若しくは薬物誘発性血小板減少症を患っている若しくはそのリスクがある、患者である。
【0099】
本明細書で使用する、「予防」という用語は、まだ疾患の臨床症状を経験していない対象において、疾患の開始及び/又は疾患の臨床症状の発現を予防する又は遅らせることを指す。「治療」という用語は、疾患を阻害すること、すなわち、その進行又はその少なくとも1つの臨床症状を停止させる又は低減させること、及び疾患の症状を緩和させることを指す。
【0100】
本明細書に記載の置換シクロデキストリンは、シクロデキストリンの調製のための、当技術分野において公知の任意の方法を使用して調製できる。市販の中間体シクロデキストリンから出発する、置換シクロデキストリン、特に置換α-シクロデキストリン、置換β-シクロデキストリン、及び置換γ-シクロデキストリンの調製、及びそれらの精製の特に適切な方法は、実施例に記載されている。
【0101】
明確性及び簡潔な説明の目的のために、本発明の同じ又は別々の態様又は実施形態の一部として、特徴が本明細書に記載される場合がある。本発明の範囲は、同じ又は別々の実施形態の一部として本明細書に記載の特徴のすべて又は一部の組み合わせを有する実施形態を含む場合があることを、当業者は理解することになる。
【0102】
本発明を、以下の非限定的な実施例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0103】
(実施例1)
材料及び方法
シクロデキストリンの合成
チオールによる修飾β-シクロデキストリンの合成の一般的手順
モノ修飾β-シクロデキストリン誘導体の合成において、DMSO(3mL)中の6-モノトシル-β-シクロデキストリン(500mg、0.388mmol、1.0当量)の溶液を脱ガスした。この溶液を、DMSO/H
2O(4mL/2mL)中の適切なチオール(H-S-R; 4.67mmol、12当量)及びNaOH(460mg、11.5mmol、30当量)の脱ガス溶液へ滴下して加えた。懸濁液を50℃で一晩撹拌した。反応混合物を室温まで冷却させた。メタノール(8mL)を加えた。白色析出物をろ過しメタノールで洗浄した。析出物をH
2O(5mL)中に溶解させ、3M HCl水溶液でpHを7に調整した。溶液をMeOH(8〜16mL)又はアセトン中に注いだ。析出物をろ過し、メタノール又はアセトンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0104】
市販のヘプタキス-(6-ブロモ-6-デオキシ)-β-シクロデキストリンを出発物質として使用して、硫黄結合による全修飾β-シクロデキストリン誘導体の合成を行った。塩基としてNaHを使用してDMF中で、室温にて一晩撹拌しながら、適切なチオール(H-S-R)及びNaOHとの反応を良好に行った。
【0105】
スキーム1は全修飾β-シクロデキストリン誘導体の反応を示す。
【0106】
【化3】
【0107】
チオールによる修飾γ-シクロデキストリンの合成の一般的手順
全修飾γ-シクロデキストリン誘導体の合成において、DMSO(9mL)中のオクタキス-6-ブロモ-6-デオキシ-γ-シクロデキストリン(1.8g、1mmol、1.0当量)の溶液を脱ガスした。この溶液を、DMSO/H
2O(12mL/6mL)中の適切なチオール(12.5mmol、12.5当量)及びNaOH(1.1g、27.5mmol、27当量)の脱ガス溶液へ滴下して加えた。懸濁液を50℃で一晩撹拌した。反応混合物を室温まで冷却させた。メタノール(80mL)を加えた。白色析出物をろ過しメタノールで洗浄した。析出物をH
2O(50mL)中に溶解させ、3M HCl水溶液でpHを7に調整した。溶液をEtOH(100mL)又はアセトン中に注いだ。析出物をろ過し、メタノール又はアセトンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0108】
モノ修飾γ-シクロデキストリン誘導体の合成において、モノ修飾ベータ-シクロデキストリンについて記載されるのと同様にしてモノトシル化γ-シクロデキストリンを官能化させた。
【0109】
【化4】
【0110】
ベータ-シクロデキストリンと同様に、γ-シクロデキストリンを官能化させた(全置換γ-シクロデキストリンについてのスキーム2を参照)。NaOH及び溶媒としてのDMSOを使用して化合物を合成し、単離が困難であったが、最終的にEtOAcの添加により良好な析出が得られた。
【0111】
精製
一般には、官能化シクロデキストリンは、適切な溶媒から析出させ、続いて溶媒で数回洗浄して過剰の試薬及び副生成物を除去することにより、単離された。多くの場合はこの手順によって、
1HNMR(多くの場合はブロードなピーク又は特にモノ置換の場合はやや複雑なスペクトルが得られた)又はHPLC-MSのいずれか、又はその両方の組み合わせに基づき、使用に関して純粋と考えられる物質が得られた。いくつかのケースでは、純粋な生成物を単離するために修飾シクロデキストリンに向けての反応を繰り返して新しいバッチを調製しなければならなかった。加えて、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、及び分取HPLCを含めた、シクロデキストリンを精製するための他の方法を行った。
【0112】
修飾アルファシクロデキストリンの合成
6-メルカプトヘキサン酸(131μl、140mg、0.943mmol)、NaOH(38mg、0.0925mmol)、及び6-モノデオキシ-6-モノヨード-α-シクロデキストリン(200mg、0.185mmol)を使用して、上記の一般的手順に従ってアルファ-モノ-S-C6酸(OKL-1186)を調製した。適切な出発化合物を使用して、本発明による他のアルファ-モノ置換シクロデキストリンを同様に調製できる。
【0113】
アルファ-ペル-S-C6酸(OKL-1187): N2雰囲気下で、NaH(70mg、1.70mmol、23.0当量)をDMF(5mL)中に懸濁させた。DMF(2mL)中の6-メルカプトヘキサン酸(134mg、0.897mmol、12.1当量)の溶液を滴下して加えた。10分後、ヘキサキス-(6-ブロモ-6-デオキシ)-α-シクロデキストリン(102mg、0.0741mmol、1.0当量)を加え、反応混合物を室温で一晩撹拌した。アセトン(大過剰)を加えることにより反応混合物を析出させ、ろ過し、アセトンで洗浄した。析出物を脱塩水(5mL)中に溶解させ、脱塩水中の3M HCl溶液でpHを7よりわずかに下に調整した。得られる懸濁液をアセトンで希釈し、ろ過し、アセトンで洗浄し、真空内で乾燥させて生成物を得た。適切な出発化合物を使用して、本発明による他のアルファ-全置換シクロデキストリンを同様に調製できる。
【0114】
Table 1及び2(表1及び2)は調製されたシクロデキストリンを示す。
図2は、4つの例示的なモノ置換及び全置換の、ベータ及びガンマシクロデキストリン(化合物OKL-1108、OKL-1109、OKL-1110、及びOKL-1111)の構造を示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
凝固アッセイ
Calibrated Automated Thrombogram(登録商標)は、マイクロタイタープレート読み取り蛍光光度計(Fluoroskan Ascent、ThermoLab systems、Helsinki、フィンランド)及びThrombinoscope(登録商標)ソフトウェア(Thrombinoscope BV、Maastricht、オランダ)を使用して、凝固する血漿中のトロンビンの生成を分析する。このアッセイは、Hemkerら(Pathofysiol. Haemost. Thromb. 2003、33、4〜15頁)により記載されるように、及びThrombinoscope(登録商標)マニュアルに記載されるように行われた。凝固は、1又は5pMの組換え型ヒト組織因子(Innovin(登録商標)、Siemens、Marburg、ドイツ)、4μMのリン脂質、及び417μMの蛍光発生基質Z-Gly-Gly-Arg-AMC(Bachem、Bubendorf、スイス)の存在下で、再石灰化が引き金となって生じた。Fluoroskan Ascent蛍光光度計(ThermoLabsystems、Helsinki、フィンランド)を使用して蛍光をモニタリングし、Thrombinoscope(登録商標)ソフトウェア(Thrombinoscope BV)を使用してタイムラグ、ピークトロンビン、速度指数、及び曲線の下の面積(ETP)を計算した。
【0118】
インビボ出血モデル
すべての動物プロトコルはノースカロライナ大学のInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。C57BL6/JマウスをCharles Rivers Laboratories社(Willmington、MA)から購入した。出血の研究は、本質的にはPastoftら(Haemophilia 2012; 18:782〜8)により過去に記載されたように行われた。すべての手順を通して、マウスはイソフルランによる麻酔下とした。両後脚の腹側の毛を除去した。動物を温度及びECGモニタリングボード上に仰向けに置いた。軟質ポリエチレンチューブを脚の周りに巻き付けてチューブをECGボードへ取り付けることにより、脚をやさしく拘束した。左及び右の腹側の後脚の皮膚を切開し、これにより伏在神経血管束の長さを露出させ;乾燥を防ぐために血管束を生理食塩水で覆った。止血を評価するために、右の伏在静脈を23-G針で刺すことにより横に切断し、続いて血管の末梢部で長手方向の切開を行った。止血が生じるまで血液を静かに逃した。次いで血餅を除去して出血を再開させ、止血が再び生じるまで血液を再び逃した。30分間、毎回の止血の発生後に血餅の破壊を繰り返した。食事の1g当たり0.1mgのリバーロキサバンを含有する食事をマウスに与えた。マウスにこの食事を4日間続けさせて定常状態に到達させた。出血アッセイの開始の5分前に尾静脈注射によりシクロデキストリンを投与した。1)30分間で止血が生じる回数、及び2)各止血に要した時間の2つのパラメーターを測定した。
【0119】
結果
正常な血漿における凝固アッセイ
正常なプール血漿において抗凝固剤の添加有り及び無しでトロンビン生成分析を行った。結果をTable 3(表3)にまとめる。
【0120】
【表3】
【0121】
アルファ-モノ-カルボキシルシクロデキストリン:
OKL-1186は正常血漿中で相当な凝血促進剤効果を有し、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンの抗凝固効果に拮抗した(Table 4(表4)及び
図14)。
【0122】
アルファ-ペル-カルボキシルシクロデキストリン:
OKL-1187は正常血漿中で非常に強い凝血促進効果を示し、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンの抗凝固効果に強く拮抗した(Table 4(表4)及び
図15)。
【0123】
ベータ-モノ-カルボキシルシクロデキストリン:
OKL-1108は血漿中で相当な凝血促進効果を有し、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンの抗凝固効果に拮抗した(Table 4(表4)及び
図3)。OKL-1188は正常血漿において強い凝血促進効果を示し、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンの抗凝固効果に拮抗した(Table 4(表4)及び
図16)。
【0124】
ベータ-ペル-カルボキシルシクロデキストリン:
OKL-1105の添加により血漿中で著しい凝血促進効果が得られた。ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンの存在下でも凝血促進効果が見られた。このようにNOACの抗凝固効果は拮抗された(Table 4(表4)及び
図4)。OKL-1109は血漿中のトロンビン生成に対して小さな効果があった。ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンの存在下で、トロンビン生成に対してわずかしか又は全く効果がなかった(Table 4(表4)及び
図5)。OKL-1178、OKL-1179、及びOKL-1180は、正常血漿中で様々な度合いで凝血促進活性を示した(Table 4(表4)及び
図25〜26)。
【0125】
ガンマ-モノ-カルボキシルシクロデキストリン
OKL-1106は正常血漿中で凝血促進効果を生じ、ダビガトラン及びリバーロキサバンの抗凝固作用に著しく拮抗した。アピキサバン及びエドキサバンの抗凝固作用に対するその効果はあまり顕著ではなかった(Table 4(表4)及び
図6)。OKL-1110は正常血漿中で非常に強い凝血促進効果を生じ、Xa-拮抗薬であるリバーロキサバン、エドキサバン、及びアピキサバンの抗凝固効果に完全に対抗した。OKL-1110も直接トロンビン阻害剤であるダビガトランの抗凝固効果に強く拮抗した(Table 4(表4)及び
図7)。OKL-1190は正常血漿中で凝血促進効果を有し、またダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンの抗凝固効果に拮抗した(Table 4(表4)及び
図18)。
【0126】
ガンマ-ペル-カルボキシルシクロデキストリン
OKL-1107の添加により、血漿中で強い凝血促進効果が得られた。ピークトロンビンは大幅に増加し、タイムラグはかなり短くなった。ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、又はエドキサバンの添加後、OKL-1107の効果は持続し、トロンビン生成は完全に回復した又は非抗凝固処理血漿中よりも更に高くなった(Table 4(表4)及び
図8)。OKL-1171及びOKL-1172は、血漿中で著しい凝血促進活性を示した(Table 4(表4)
図22〜23)。
【0127】
OKL-1111の添加により、血漿中で非常に強い凝血促進効果が得られた(Table 4(表4)及び
図9)。ピークトロンビンはシクロデキストリンの非存在下よりも大幅に増加し、タイムラグはかなり短くなった。ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、又はエドキサバンの添加後、OKL-1111の効果は依然として高い凝血促進性があり、非抗凝固処理血漿におけるレベルをはるかに上回るレベルまでトロンビン生成が回復した(
図10)。OKL-1111は、未分画及び低分子量ヘパリン、五糖(アリクストラ)、ヒルジン、及びビバリルジンで抗凝固処理された血漿中でトロンビン生成を回復させることも可能であった(
図10)。また、ビタミンK拮抗薬を使用している患者の血漿中で、OKL-1111の添加によりトロンビン生成を改善させることができた(
図11)。
【0128】
ベータ-モノ-ヒドロキシルシクロデキストリン
OKL-1189は正常血漿中で強い凝血促進活性を示し、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバ、及びエドキサバンの抗凝固効果に強く拮抗した(Table 4(表4)及び
図17)。
【0129】
ベータ-ペル-ヒドロキシルシクロデキストリン
OKL-1181は血漿中で著しい凝血促進活性を示した(Table 4(表4)及び
図27)。
【0130】
ガンマ-モノ-ヒドロキシルシクロデキストリン
OKL-1191は血漿中で強い凝血促進活性を示し、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、及びエドキサバンの抗凝固効果にも拮抗した(Table 4(表4)及び
図19)。
【0131】
ガンマ-ペル-ヒドロキシルシクロデキストリン
OKL-1146の添加により、血漿中で非常に強い凝血促進効果が得られた(Table 4(表4)及び
図12)。シクロデキストリンの非存在下よりもピークトロンビンは大幅に増加し、タイムラグはかなり短くなった。ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、又はエドキサバンの添加後、OKL-1146の効果は依然として高い凝血促進性があり、非抗凝固処理血漿におけるレベルをはるかに上回るレベルまでトロンビン生成が回復した(
図12)。同様に、OKL-1174は、抗凝固剤の存在下でも血漿中で強い凝血促進効果をもたらした(
図24)。
【0132】
C2置換基を含有する置換シクロデキストリン
ベータ-モノ-、ベータ-ペル-、ガンマ-モノ-、及びガンマ-ペル-ヒドロキシル置換シクロデキストリンOKL-1100、OKL-1101、OKL-1102、及びOKL-1103/OKL-1170は、正常血漿でも、抗凝固剤を含有する血漿中でも凝血促進活性を示さなかった。したがってこれらのシクロデキストリンは欠乏血漿中で試験しなかった。
【0133】
ガンマ-ペル-アミン-置換シクロデキストリン
アミン-置換γ-シクロデキストリンOKL-1147は血漿中で凝血促進効果がなく、NOACの抗凝固効果にも影響を与えなかったので、いくつかの実験において、アミン-置換γ-シクロデキストリンOKL-1147をγ-シリーズのシクロデキストリンの負の対照として使用した(
図13)。
【0134】
欠乏血漿における凝固アッセイ
置換シクロデキストリンの凝血促進効果を、凝固因子VIII及びIXが欠乏した血漿中でも試験した。凝固因子XIが欠乏したヒト血漿において、シクロデキストリンOKL-1107、OKL-1110、OKL-1111の凝血促進効果を更に調べた。結果をTable 4(表4)にまとめ、OKL-1111、OKL-1180、及びOKL-1187の代表的なグラフを
図20に示す。
【0135】
OKL-1111は、因子VIII、IX、及びXI欠乏血漿中で凝固を著しく刺激することができた(Table 4(表4)、
図20)。OKL-1171、OKL-1172、OKL-1174、OKL-1180、OKL-1181、OKL-1187、OKL-1188、OKL-1189、及びOKL-1191も、因子VIII欠乏血漿中で凝血促進効果を示し、OKL-1172、OKL-1174、OKL-1180、OKL-1181、OKL-1188、OKL-1189、及びOKL-1191は因子IX欠乏血漿中で凝血促進剤活性を示した(Table 4(表4))。
【0136】
【表4】
【0137】
抗体で前処理した血漿における凝固アッセイ
第VIII因子(Sanquin、VK34、14μg/ml)、第IX因子(Sanquin、5F5、20μg/ml)、又は第XI因子(Sanquin、#203及び#175の混合物、75μg/ml)に対する阻害抗体を正常血漿に加えた。1pMの組織因子(TF)を使用してトロンビン生成アッセイにおいてOKL-1111の効果を試験した。このモデルは、治療に使用されている血漿由来又は組換え型因子VIII又はIX又はXIに対する阻害抗体が作られている血友病A、B、及びC患者において典型的である。
【0138】
OKL-1111は、第VIII因子、第IX因子、及び第XI因子に対する阻害抗体で前処理された正常なヒト血漿において、濃度依存的にトロンビン生成を刺激した(
図21A〜C)。
【0139】
血友病A患者の血漿における凝固アッセイ
OKL-1111、OKL-1180、及びOKL-1187の凝血促進効果を血友病A患者の血漿(George King Bio-Medical、米国)においても試験した。患者は血漿採取前に第VIII因子に対する抗体が作られていた。血漿は高レベルの抗-FVIII抗体(50BU)を含有していた。すべての試験されたシクロデキストリンは、抗-FVIII抗体を含有するこの血漿中で濃度依存的にトロンビン生成を刺激した(
図28)。
【0140】
インビボ出血モデル
インビトロアッセイで観察された凝血促進効果がインビボでも観察されるかどうかを調べるため、リバーロキサバンで抗凝固処理されたマウスにOKL-1111を投与した。
【0141】
非抗凝固処理マウスでは、血管に穴を開けた1分あまり後に血餅が形成される。このように、30分の時間内に約20〜25個の血餅が形成されることになる。リバーロキサバンを与えられたマウスでは、出血の時間はおおよそ2倍であったので、動物は30分で約10〜13個の血餅しか形成しなかった。血漿中で25μMになると予測されるOKL-1111の用量は、凝血時間を正常化させた。対照的に、OKL-1147はこの点において有意の効果がなかった(
図29)。
【0142】
血友病におけるOKL-1111及びOKL-1187の有効性をインビボで試験するために、伏在静脈出血モデルも使用した。血友病AマウスにOKL-1111又はOKL-1187有り又は無しで非常に低用量の第VIII因子(2.5IU/kg、これは約0.0625IU/dLの血漿レベルが得られるように計画されている)を注射した。
【0143】
血友病のマウス(第VIII因子が完全に欠如している)は、伏在静脈に穴を開けた後の30分で血餅を形成しないか又は1つしか血餅を形成しないが、一方野生型マウスではこれは約20個の血餅になる。低用量の第VIII因子の存在下で、血友病のマウスにおける血餅の数はおよそ2〜3個の血餅まで増加する。25μMの血漿値が得られるように計画された、1μmol/kgの用量では、OKL-1111は第VIII因子のみと比較して著しく高く止血を向上させた。OKL-1111の存在下で、7〜9個の血餅が30分の時間にわたって形成される(
図30)。0.2μmol/kgのOKL-1187の存在下で同様の結果が得られた。