(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970194
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】リニア電気機械およびリニア電気機械を制御するためのパワーエレクトロニクスコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02P 25/064 20160101AFI20211111BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20211111BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20211111BHJP
B66B 9/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
H02P25/064
H02K41/02 C
H02K41/03 A
B66B9/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-521121(P2019-521121)
(86)(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公表番号】特表2019-534667(P2019-534667A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2017077230
(87)【国際公開番号】WO2018077916
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2020年9月1日
(31)【優先権主張番号】16196217.0
(32)【優先日】2016年10月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518102517
【氏名又は名称】ダンフォス・エディトロン・オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ラウマ,キンモ
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−296874(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/110948(WO,A1)
【文献】
韓国登録特許第10−0426616(KR,B1)
【文献】
特表2002−504880(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0262095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/064
H02K 41/02
H02K 41/03
B66B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して直線的に移動可能である一次側部分(101、201)および二次側部分(102、202)を含むリニア電気機械を制御するためのパワーエレクトロニクスコンバータ(160)であって、前記一次側部分は、空隙面をそれぞれ有する一次側セクション(103、104)を含み、前記二次側部分は、前記一次側セクションのそれぞれの1つの前記空隙面に面する空隙面をそれぞれ有する二次側セクション(105、106、205、206、215、216)を含み、各一次側セクションは、前記一次側部分を前記二次側部分に対して縦方向に移動させる傾向がある縦方向の磁気推力と、前記一次側セクションを前記二次側セクションのそれぞれの1つに向かって引く横方向の磁気力とを発生させるための力発生巻線(U1、V1、W1、U2、V2、W2)を含み、前記一次側セクションに作用する前記横方向の磁気力が互いに打ち消すように制御可能であるように、前記一次側セクションは、互いに機械的に接続され、かつ前記二次側セクションは、互いに機械的に接続され、および前記一次側部分は、前記一次側部分の縦方向と前記二次側部分の縦方向との間の角度ずれを制御するように、1つまたは複数の横方向の磁気的な傾斜制御力を発生させるための1つまたは複数の傾斜制御巻線(T1、T11、T12)を少なくとも前記一次側部分の第1の端部領域に含み、前記パワーエレクトロニクスコンバータは、
− 前記リニア電気機械の前記力発生巻線に力発生電流を供給するための第1の電流供給セクション(114)と、
− 前記リニア電気機械によって発生される縦方向の磁気推力に関連する制御情報に従って前記力発生電流を制御するための第1のコントローラセクション(116)と、
− 前記一次側部分を前記二次側部分に対して磁気的に浮上させるように、前記リニア電気機械の前記二次側部分に対する前記リニア電気機械の前記一次側部分の横方向の位置を示す位置情報に従って、前記一次側セクションの異なるものに関連する前記力発生電流の差を制御するための第2のコントローラセクション(117)と
を含む、パワーエレクトロニクスコンバータ(160)において、
− 前記リニア電気機械の前記1つまたは複数の傾斜制御巻線に1つまたは複数の傾斜制御電流を供給するための第2の電流供給セクション(119)と、
− 前記リニア電気機械の前記一次側部分の前記縦方向と前記リニア電気機械の前記二次側部分の前記縦方向との間の前記角度ずれを示す傾斜情報に従って前記1つまたは複数の傾斜制御電流を制御するための第3のコントローラセクション(118)と
をさらに含むことを特徴とする、パワーエレクトロニクスコンバータ(160)。
【請求項2】
リニア電気機械(100)と、前記リニア電気機械を制御するための請求項1に記載のパワーエレクトロニクスコンバータ(160)とを含むリニア電気駆動装置であって、前記リニア電気機械は、互いに対して直線的に移動可能である一次側部分(101、201)および二次側部分(102、202)を含み、前記一次側部分は、空隙面をそれぞれ有する一次側セクション(103、104)を含み、前記二次側部分は、前記一次側セクションのそれぞれの1つの前記空隙面に面する空隙面をそれぞれ有する二次側セクション(105、106、205、206、215、216)を含み、各一次側セクションは、前記一次側部分を前記二次側部分に対して縦方向に移動させる傾向がある縦方向の磁気推力と、前記一次側セクションを前記二次側セクションのそれぞれの1つに向かって引く横方向の磁気力とを発生させるための力発生巻線(U1、V1、W1、U2、V2、W2)を含み、前記一次側セクションに作用する前記横方向の磁気力が互いに打ち消すように制御可能であるように、前記一次側セクションは、互いに機械的に接続され、かつ前記二次側セクションは、互いに機械的に接続され、および前記一次側部分は、前記一次側部分の縦方向と前記二次側部分の縦方向との間の角度ずれを制御するように、1つまたは複数の横方向の磁気的な傾斜制御力を発生させるための1つまたは複数の傾斜制御巻線(T1、T11、T12)を少なくとも前記一次側部分の第1の端部領域に含む、リニア電気駆動装置。
【請求項3】
前記一次側部分は、1つまたは複数の他の横方向の磁気的な傾斜制御力を発生させるための1つまたは複数の他の傾斜制御巻線(T2、T21、T22)を前記一次側部分の第2の端部領域に含む、請求項2に記載のリニア電気駆動装置。
【請求項4】
前記一次側部分は、前記角度ずれを制御するときに、前記一次側部分の前記第1の端部領域において前記傾斜制御巻線(T1)で発生された前記横方向の磁気的な傾斜制御力に反して作用するための横方向の磁気力を発生させるための永久磁石(107)を前記一次側部分の第2の端部領域に含む、請求項2または3に記載のリニア電気駆動装置。
【請求項5】
前記一次側部分は、前記角度ずれを制御するときに、前記一次側部分の前記第1の端部領域において前記傾斜制御巻線(T1)で発生された前記横方向の磁気的な傾斜制御力に反して作用するための横方向の磁気力を発生させるための永久磁石(108)を前記一次側部分の前記第1の端部領域に含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載のリニア電気駆動装置。
【請求項6】
前記二次側セクション(105、106)は、前記二次側セクションの前記空隙面が反対の方向を向き、および前記二次側セクションのヨーク部分が互いの方を向くように互いに機械的に接続される、請求項2〜5のいずれか一項に記載のリニア電気駆動装置。
【請求項7】
前記二次側セクション(205、206、216、216)は、前記二次側部分の前記縦方向に沿って見たときに前記二次側セクションの前記空隙面が略正多角形を構成するように互いに機械的に接続される、請求項2〜5のいずれか一項に記載のリニア電気駆動装置。
【請求項8】
前記二次側セクション(205、206、216、216)は、前記二次側部分の前記縦方向に沿って見たときに前記二次側セクションの前記空隙面が略正方形を構成するように互いに機械的に接続される、請求項7に記載のリニア電気駆動装置。
【請求項9】
前記リニア電気機械は、磁束切換リニア電気機械であり、各一次側セクションは、均一な第1の間隔に調整された一次側セクション歯(109)を含み、前記力発生巻線のコイル幅は、前記第1の間隔に等しく、および各二次側セクションは、前記第1の間隔と異なる均一な第2の間隔に調整された二次側セクション歯(110)を含む、請求項2〜8のいずれか一項に記載のリニア電気駆動装置。
【請求項10】
前記力発生巻線のコイルによって囲まれる各一次側セクション歯は、前記一次側部分の前記縦方向において連続的に2つの部分(111、112)と、前記2つの部分間の間隙に配置される永久磁石(113)とを含み、前記永久磁石の磁化方向は、前記一次側部分の前記縦方向と平行であり、および前記一次側セクション歯の隣接するものの前記永久磁石は、互いに反対の磁化方向を有する、請求項9に記載のリニア電気駆動装置。
【請求項11】
コンベヤシステムであって、
− コンベヤ車(321)と、
− 前記コンベヤ車を移動させるためのリニア電気機械(300)と、
− 前記リニア電気機械を制御するための請求項1に記載のパワーエレクトロニクスコンバータ(360)と
を含み、前記リニア電気機械は、互いに対して直線的に移動可能である一次側部分(101、201)および二次側部分(102、202)を含み、前記一次側部分は、空隙面をそれぞれ有する一次側セクション(103、104)を含み、前記二次側部分は、前記一次側セクションのそれぞれの1つの前記空隙面に面する空隙面をそれぞれ有する二次側セクション(105、106、205、206、215、216)を含み、各一次側セクションは、前記一次側部分を前記二次側部分に対して縦方向に移動させる傾向がある縦方向の磁気推力と、前記一次側セクションを前記二次側セクションのそれぞれの1つに向かって引く横方向の磁気力とを発生させるための力発生巻線(U1、V1、W1、U2、V2、W2)を含み、前記一次側セクションに作用する前記横方向の磁気力が互いに打ち消すように制御可能であるように、前記一次側セクションは、互いに機械的に接続され、かつ前記二次側セクションは、互いに機械的に接続され、および前記一次側部分は、前記一次側部分の縦方向と前記二次側部分の縦方向との間の角度ずれを制御するように、1つまたは複数の横方向の磁気的な傾斜制御力を発生させるための1つまたは複数の傾斜制御巻線(T1、T11、T12)を少なくとも前記一次側部分の第1の端部領域に含む、コンベヤシステム。
【請求項12】
前記リニア電気機械(300)の前記一次側部分は、前記コンベヤ車に取り付けられ、および前記リニア電気機械の前記二次側部分は、前記コンベヤ車の移動経路を画定する機械構造に取り付けられる、請求項11に記載のコンベヤシステム。
【請求項13】
前記コンベヤ車の移動が略垂直であるエレベータである、請求項11または12に記載のコンベヤシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニア電気機械およびリニア電気機械を制御するためのパワーエレクトロニクスコンバータに関する。さらに、本開示は、リニア電気機械と、リニア電気機械を制御するためのパワーエレクトロニクスコンバータとを含むコンベヤシステムに関する。コンベヤシステムは、たとえば、コンベヤ車が垂直、水平または傾斜経路に沿って移動可能であるエレベータまたは任意の他のコンベヤシステムであり得る。
【背景技術】
【0002】
リニア電気機械は、互いに対して直線的に移動可能である一次側部分および二次側部分を含む。一次側部分および二次側部分には、リニア電気機械がリニアモータとして作動するときに電気エネルギを一次側部分と二次側部分との間の直線運動に変換し、リニア電気機械がリニア発電機として作動するときに一次側部分と二次側部分との間の直線運動を電気エネルギに変換するための磁気作動手段が設けられる。磁気作動手段は、たとえば、交流電流が多相巻線に供給されたときに多相巻線に対して移動する磁界を発生させるための多相巻線を含み得る。さらに、磁気作動手段は、多相巻線で発生する移動磁界に応答して推力を発生させるための機器を含み得る。上記機器は、たとえば、空間的磁気抵抗変化を提供する永久磁石、電磁石、導電構造および/または機械構造を含み得る。多相巻線は、リニア電気機械の可動部分に配置することができ、移動磁界に応答して推力を発生させるための機器は、リニア電気機械の静止部分に配置することができる。多相巻線を静止部分に配置し、移動磁界に応答して推力を発生させるための機器を可動部分に配置することも可能である。
【0003】
多くの用途において、リニア電気機械は、リニア電気機械の可動部分および可動部分に接続された機械構造が磁気的に浮上する磁気浮上と組み合わされる。磁気浮上式リニア電気機械を含む多くのシステムに関連する不都合な点は、システムの複雑さであり、それは、推力を発生させるための第1の磁気作動手段と、可動部分および可動部分に接続された機械構造を浮上させるための第2の磁気作動手段とが存在するためである。
【0004】
公報欧州特許第2131477号明細書は、固定子の上面および下面に等ピッチで対称的に形成される歯を有する固定子を含むリニア電気モータを説明している。リニア電気モータは、固定子の上方に配設される上部コアと、上部コアと対称に固定子の下方に配設される下部コアと、固定子の周りで上部コアおよび下部コアを接続するヨーク部とを含む可動部材を含む。上部コアおよび下部コアは、その周囲に巻かれた上部コイルおよび下部コイルと、固定子と上部コアまたは下部コアとの間の間隙および可動部材の傾斜を検出する少なくとも1つのギャップセンサとを有する。制御装置は、間隙の変化に基づいて上部コイルおよび下部コイルに流される電流の振幅を調整することによって浮上制御を行い、電流位相を変えることによって直線運動を駆動する。多チャンネル電圧電流電力増幅器は、上部コアおよび下部コアの各コイルに接続される。
【0005】
公報米国特許出願公開第2012262095号明細書は、i)第1の磁束搬送部材を支持する第1の部材と、ii)第2の磁束発生部材を支持し、かつ第1の部材に対して移動可能である第2の部材と、iii)第1の部材または第2の部材に結合される空隙制御システムとを含む機器を説明している。空隙制御システムは、第1の部材と第2の部材との間の最小距離を維持するように、第1の部材と第2の部材との間の距離を減少させる方向へ第1の部材および/または第2の部材が移動することに応答して、第1の部材または第2の部材に力を及ぼすように構成される空隙制御装置を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下は、さまざまな本発明の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、単純化された概要を提示する。この概要は、本発明の広範な概説ではない。これは、本発明の主要または重要な要素を識別することを意図しておらず、かつ本発明の範囲を線引きすることも意図していない。以下の概要は、本発明の例示的な実施形態のさらに詳細な説明に対する前置きとして、本発明のいくつかの概念を単純化された形態において提示するものにすぎない。
【0007】
本発明によると、互いに対して直線的に移動可能である一次側部分および二次側部分を含むリニア電気機械を制御するための新しいパワーエレクトロニクスコンバータが提供され、ここで、一次側部分は、空隙面をそれぞれ有する一次側セクションを含み、二次側部分は、一次側セクションのそれぞれの1つの空隙面に面する空隙面をそれぞれ有する二次側セクションを含み、各一次側セクションは、一次側部分を二次側部分に対して縦方向に移動させる傾向がある縦方向の磁気推力と、一次側セクションを二次側セクションのそれぞれの1つに向かって引く横方向の磁気力とを発生させるための力発生巻線を含み、一次側セクションに作用する横方向の磁気力が互いに打ち消すように制御可能であるように、一次側セクションは、互いに機械的に接続され、かつ二次側セクションは、互いに機械的に接続され、および一次側部分は、一次側部分の縦方向と二次側部分の縦方向との間の角度ずれを制御するように、1つまたは複数の横方向の磁気的な傾斜制御力を発生させるための1つまたは複数の傾斜制御巻線を少なくとも一次側部分の第1の端部領域に含む。
【0008】
本発明によるパワーエレクトロニクスコンバータは、
− リニア電気機械の力発生巻線に力発生電流を供給するための第1の電流供給セクションと、
− リニア電気機械によって発生される縦方向の磁気推力に関連する制御情報に従って力発生電流を制御するための第1のコントローラセクションと、
− 一次側部分を二次側部分に対して磁気的に浮上させるように、リニア電気機械の二次側部分に対するリニア電気機械の一次側部分の横方向の位置を示す位置情報に従って、一次側セクションの異なるものに関連する力発生電流の差を制御するための第2のコントローラセクションと、
− リニア電気機械の1つまたは複数の傾斜制御巻線に1つまたは複数の傾斜制御電流を供給するための第2の電流供給セクションと、
− リニア電気機械の一次側部分の縦方向とリニア電気機械の二次側部分の縦方向との間の角度ずれを示す傾斜情報に従って1つまたは複数の傾斜制御電流を制御するための第3のコントローラセクションと
を含む。
【0009】
上記位置情報および傾斜情報は、たとえば、光学および/または誘導測定に基づくことができる。
【0010】
一次側部分の2つの一次側セクションおよび二次側部分の2つの二次側セクションがある例示的な場合において、二次側セクションは、たとえば、二次側セクションの空隙面が反対の方向を向き、および二次側セクションのヨーク部分が互いの方を向くように互いに機械的に接続され得る。一次側セクションは、一次側セクションのヨーク部分が互いの方を向き、および一次側セクションの空隙面が反対の方向を向くように互いに機械的に接続されることも可能である。上に示された例示的な場合において、一次側セクションに作用する横方向の磁気力の合力は、リニア電気機械の縦方向に略垂直である1つの幾何学的次元において制御され得る。合力の方向および強さは、一次側セクションの力発生巻線に供給される電流間の差を制御することによって制御され得る。
【0011】
一次側部分の3つ以上の一次側セクションおよびそれに対応する二次側部分の3つ以上の二次側セクションがある例示的な場合において、二次側セクションは、二次側部分の縦方向に沿って見たときに二次側セクションの空隙面が略正多角形、たとえば正三角形または正方形を構成するように互いに機械的に接続され得る。この例示的な場合において、一次側セクションに作用する横方向の磁気力の合力は、リニア電気機械の縦方向に略垂直である2つの幾何学的次元において制御され得る。
【0012】
しかしながら、望ましい推力および横方向の磁気力の望ましい合力を実現することに加えて、二次側部分に対する一次側部分の傾斜を許容限度内に維持するように、力発生巻線に供給される電流を制御することは難しい。本明細書において、用語「傾斜」は、一次側部分の縦方向と二次側部分の縦方向との間の角度ずれを意味する。傾斜は、一次側部分の端部領域の一方または両方で作用する1つまたは複数の横方向の磁気的な傾斜制御力を発生させるための上記1つまたは複数の傾斜制御巻線を使用して制御することができる。
【0013】
本発明によるリニア電気駆動装置は、上記の種類のリニア電気機械と、リニア電気機械を制御するための本発明によるパワーエレクトロニクスコンバータとを含む。
【0014】
本発明によると、コンベヤシステムであって、
− コンベヤ車と、
− コンベヤ車を移動させるための上記の種類のリニア電気機械と、
− リニア電気機械を制御するための本発明によるパワーエレクトロニクスコンバータと
を含む新しいコンベヤシステムも提供される。
【0015】
コンベヤシステムは、たとえば、しかし必ずしもそうではないが、コンベヤ車の移動が略垂直であるエレベータであり得る。
【0016】
本発明のさまざまな例示的かつ非限定的な実施形態は、添付の従属請求項で説明される。
【0017】
構造および作動方法の両方に関する本発明のさまざまな例示的かつ非限定的な実施形態は、さらなる目的およびその利点とともに、添付の図面とともに読まれたときに特定の例示的かつ非限定的な実施形態の以下の説明から最もよく理解されるであろう。
【0018】
「含む」および「包含する」という動詞は、本明細書では、記述されていない特徴の存在を排除せず必要ともしない開かれた限定として使用される。従属請求項において記述されている特徴は、そうではない旨が明示的に記述されていない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用、すなわち単数形の使用は、本明細書の全体を通じて複数形を排除するものではないことを理解されたい。
【0019】
以下では、例の意味においてかつ以下の添付図面を参照して、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態およびその利点についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気駆動装置と、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械とを示す。
【
図1b】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気駆動装置と、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械とを示す。
【
図1c】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気駆動装置と、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械とを示す。
【
図1d】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気駆動装置と、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械とを示す。
【
図1e】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気駆動装置と、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械とを示す。
【
図2】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気駆動装置のリニア電気機械を示す。
【
図3】本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるコンベヤシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において付与される説明で提供される特定の例は、添付の請求項の範囲および/または適用可能性を限定するものとして解釈してはならない。以下において付与される説明で提供される例のリストおよび群は、そうではない旨が明示的に記述されていない限り、すべてを網羅したものではない。
【0022】
図1aは、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気駆動装置の概略図を示す。リニア電気駆動装置は、
図1aに断面図として示されるリニア電気機械100を含む。断面は、
図1bに示される線A1−A1に沿ってとられ、断面平面は、座標系199のyz平面と平行である。
図1bは、リニア電気機械100の断面を示す。断面は、
図1aに示される線A2−A2に沿ってとられ、断面の断面平面は、座標系199のxy平面と平行である。
【0023】
リニア電気機械100は、リニア電気機械100の縦方向において、互いに対して直線的に移動可能である一次側部分101および二次側部分102を含む。縦方向は、座標系199のz軸と平行である。一次側部分101は、一次側セクション103および104を含み、そのそれぞれが空隙面を有する。二次側部分102は、二次側セクション105および106を含み、そのそれぞれが一次側セクションのそれぞれの1つの空隙面に面する空隙面を有する。
【0024】
一次側セクション103は、電流が供給されたときに縦方向の磁気推力および横方向の磁気力を発生させるための力発生三相巻線U1、V1およびW1を含む。縦方向の磁気推力は、一次側部分101を二次側部分102に対して縦方向に移動させる傾向があり、横方向の磁気力は、それぞれの二次側セクション105の方へ一次側セクション103を引く。縦方向の磁気推力は、座標系199のz軸と略平行であり、横方向の磁気力は、座標系199のy軸と略平行である。同様に、一次側セクション105は、電流が供給されたときに縦方向の磁気推力および横方向の磁気力を発生させるための力発生三相巻線U2、V2およびW2を含む。縦方向の磁気推力は、一次側部分101を二次側部分102に対して縦方向に移動させる傾向があり、横方向の磁気力は、それぞれの二次側セクション106の方へ一次側セクション104を引く。
【0025】
図1aおよび1bに示されるように、一次側セクション103および104に作用する横方向の磁気力が互いに打ち消すように制御可能であるように、一次側セクション103および104は、互いに機械的に接続され、かつ二次側セクション105および106は、互いに機械的に接続され、実質的に座標系199のy軸の正方向を向く合力を形成するか、または実質的に座標系199のy軸の負方向を向く合力を形成する。従って、合力は、座標系199のy軸と略平行である1つの幾何学的次元で制御可能である。
図1bに示されるように、一次側セクション103および104は、フレーム構造125を使用して互いに機械的に接続される。二次側セクションの空隙面が反対の方向を向き、二次側セクションのヨーク部分が互いの方を向くように、二次側セクション105および106は、互いに機械的に接続される。この例示的な場合において、二次側部分102は、二次側セクション105および106の両方を構成する単一の機械構造である。従って、二次側セクション105および106のヨーク部分間に論理的境界のみが存在する。二次側部分102は、たとえば、座標系199のx方向において、互いの上に重ねられた電気的に絶縁された強磁性シートを含むことができる。
【0026】
一次側部分101は、第1の傾斜制御電流が供給されたときに一次側部分の第1の端部領域に作用する第1の横方向の磁気的な傾斜制御力を発生させるための第1の傾斜制御巻線T1を一次側部分の第1の端部領域に含む。一次側部分101は、第2の傾斜制御電流が供給されたときに一次側部分の第2の端部領域に作用する第2の横方向の磁気的な傾斜制御力を発生させるための第2の傾斜制御巻線T2を一次側部分の第2の端部領域に含む。一次側セクション103に作用する第1および第2の横方向の磁気的な傾斜制御力は、実質的に座標系199のy軸の負方向を向く。一次側部分101の縦方向と二次側部分102の縦方向との間の角度ずれ、すなわち一次側部分101の二次側部分102に対する傾斜は、第1の傾斜制御力と第2の傾斜制御力との差を制御することによって制御され得る。
【0027】
図1aおよび1bに示される例示的なリニア電気機械は、磁束切換リニア電気機械であり、ここで、一次側セクション103および104のそれぞれは、均一な第1の間隔に調整された一次側セクション歯を含み、力発生巻線U1、V1、W1、U2、V2、W2のコイル幅は、第1の間隔に等しく、および二次側セクションのそれぞれは、第1の間隔と異なる均一な第2の間隔に調整された二次側セクション歯を含む。
図1aにおいて、一次側セクション歯の1つは、参照番号109で示され、二次側セクション歯の1つは、参照番号110で示される。力発生巻線のコイルによって囲まれる各一次側セクション歯は、一次側部分101の縦方向に連続的に2つの部分と、2つの部分間の間隙に配置される永久磁石とを含む。
図1aにおいて、一次側セクション歯109の2つの部分は、参照番号111および112で示され、部分111および112間の間隙に配置される永久磁石は、参照番号113で示される。各永久磁石の磁化方向は、一次側セクション歯の隣接するものに配置される永久磁石の磁化方向が互いに反対であるように一次側部分101の縦方向と平行である。
図1aにおいて、永久磁石の磁化方向は、矢印で示される。本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械において、一次側セクション103および104は、磁気推力をなめらかにするために、すなわち磁気推力の起伏を低減するために、縦方向、すなわち座標系199のz方向に互いに対して移動する。
【0028】
図1cは、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械130を示す。
図1cは、リニア電気機械130の一次側部分101の端部領域を示す。リニア電気機械130は、
図1aおよび1bに示されるリニア電気機械100に別様に類似させることができるが、リニア電気機械130は、一次側セクション103および104の両方に傾斜制御巻線を含む。一次側セクション103は、第1の端部領域の傾斜制御巻線T11と、第2の端部領域の傾斜制御巻線T21とを含む。一次側セクション104は、第1の端部領域の傾斜制御巻線T12と、第2の端部領域の傾斜制御巻線T22とを含む。
【0029】
図1dは、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械140を示す。
図1dは、リニア電気機械140の一次側部分101の端部領域を示す。リニア電気機械140は、
図1aおよび1bに示されるリニア電気機械100に別様に類似させることができるが、リニア電気機械140の一次側セクション103は、一次側部分101の第1の端部領域にのみ傾斜制御巻線T1を含む。一次側セクション103は、一次側部分101の傾斜を制御するときに、傾斜制御巻線T1で発生される横方向の磁気的な傾斜制御力の反力として作用する横方向の磁気力を発生させるための永久磁石107を一次側部分101の第2の端部領域に含む。傾斜制御巻線T1で発生される磁気的な傾斜制御力は、一次側セクション103の第1の端部領域を二次側セクション105の方へ引くことのみができるが、一次側セクション103の第1の端部領域を二次側セクション105から押しのけないため、反力が必要である。
【0030】
図1eは、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気機械150を示す。
図1eは、リニア電気機械150の一次側部分101の端部領域を示す。リニア電気機械150は、
図1aおよび1bに示されるリニア電気機械100に別様に類似させることができるが、リニア電気機械150の一次側セクション103は、一次側部分101の第1の端部領域にのみ傾斜制御巻線T1を含む。一次側セクション104は、一次側部分101の傾斜を制御するときに、傾斜制御巻線T1で発生される横方向の磁気的な傾斜制御力の反力として作用する横方向の磁気力を発生させるための永久磁石108を一次側部分101の第1の端部領域に含む。
【0031】
図1aに示される例示的なリニア電気駆動装置は、リニア電気機械100を制御するためのパワーエレクトロニクスコンバータ160をさらに含む。パワーエレクトロニクスコンバータ160は、リニア電気機械100の力発生巻線U1、V1、W1、U2、V2、W2に力発生電流を供給するための第1の電流供給セクション114を含む。パワーエレクトロニクスコンバータ160は、リニア電気機械の傾斜制御巻線T1およびT2に傾斜制御電流を供給するための第2の電流供給セクション119を含む。電流供給セクション114は、たとえば、力発生電流を供給するための周波数変換器を含み得る。電流供給セクション119は、たとえば、傾斜制御電流を供給するための制御可能な直流電源を含み得る。パワーエレクトロニクスコンバータ160は、第1および第2の電流供給セクション114および119を制御するための制御システム115を含む。制御システム115は、リニア電気機械100によって発生される縦方向の磁気推力に関連する制御情報に従って力発生電流を制御するための第1のコントローラセクション116を含む。制御システム115は、一次側部分を二次側部分に対して磁気的に浮上させるように、二次側部分102に対する一次側部分101のy方向位置を示す位置情報に従って、一次側セクション103および104に関連する力発生電流の差を制御するための第2のコントローラセクション117を含む。制御システム115は、一次側部分101の縦方向と二次側部分102の縦方向との間の角度ずれを示す傾斜情報に従って傾斜制御電流を制御するための第3のコントローラセクション118を含む。上記位置情報および傾斜情報は、たとえば、光学および/または誘導測定に基づくことができる。
【0032】
制御システム115には、それぞれに適切なソフトウェアが提供されるプログラム可能なプロセッサ回路であり得る1つまたは複数のプロセッサ回路、たとえば特定用途向け集積回路「ASIC」などの専用ハードウェアプロセッサまたはたとえばフィールドプログラマブルゲートアレイ「FPGA」などの構成可能なハードウェアプロセッサを実装することができる。さらに、制御システム115は、それぞれランダムアクセスメモリ「RAM」であり得る1つまたは複数のメモリ回路を含み得る。
【0033】
図2は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるリニア電気駆動装置のリニア電気機械200を示す。リニア電気機械200は、座標系299のz軸と平行な方向で互いに対して直線的に移動可能である一次側部分201および二次側部分202を含む。一次側部分201は、空隙面をそれぞれ有する一次側セクションを含む。二次側部分202は、一次側セクションのそれぞれの1つの空隙面に面する空隙面をそれぞれ有する二次側セクション205、206、215および216を含む。各一次側セクションは、一次側部分201を二次側部分202に対して縦方向に移動させる傾向がある縦方向の磁気推力と、注目する一次側セクションを二次側セクションのそれぞれの1つに向かって引く横方向の磁気力とを発生させるための力発生巻線を含む。一次側セクションに作用する横方向の磁気力の合力がゼロであるように、または座標系299のxy平面において望ましい方向および望ましい強さを有するように制御可能であるように、一次側セクションは、互いに機械的に接続され、かつ二次側セクション205、206、215および216は、互いに機械的に接続される。一次側部分201は、一次側部分201の縦方向と二次側部分202の縦方向との間の角度ずれを制御するための1つまたは複数の傾斜制御巻線を一次側部分201の一方または両方の端部領域に含む。一次側セクションは、
図2に示されていないが、各一次側セクションは、たとえば、
図1aに示される一次側セクション103と類似し得る。1つまたは複数の傾斜制御巻線は、
図2に示されていないが、1つまたは複数の傾斜制御巻線は、
図1a、1c、1dまたは1eで提示されるものに従うことができる。
図2に示される例示的なリニア電気機械200は、磁気浮上が作動していない状況で一次側部分201を二次側部分202に対して支持するための補助輪をさらに含む。
図2において、補助輪の1つが参照番号240で示される。
【0034】
図2に示される例示的なリニア電気駆動装置において、二次側セクション205、206、216および216は、二次側部分201の縦方向に沿って見たときに、すなわち座標系299のz軸と平行な幾何学的な線に沿って見たときに二次側セクションの空隙面が略正方形を構成するように互いに機械的に接続される。二次側セクションの数が少なくとも3である場合、二次側セクションは、二次側部分の縦方向に沿って見たときに二次側セクションの空隙面が略正多角形を構成するように互いに機械的に接続され得る。
【0035】
図3は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態によるコンベヤシステムの概略断面図を示す。断面平面は、座標系399のxz平面と平行である。この例示的な場合において、コンベヤシステムは、たとえば、建物、たとえば共同住宅の一部であり得る略垂直のコンベヤ軸320を含むエレベータである。コンベヤシステムは、コンベヤ車321の移動経路を画定する機械構造を表すコンベヤ軸320で移動可能であるコンベヤ車321を含む。コンベヤシステムは、コンベヤ車321を移動させるための、本発明の実施形態によるリニア電気機械300を含む。コンベヤシステムは、リニア電気機械300を制御するための、本発明の実施形態によるパワーエレクトロニクスコンバータ360を含む。リニア電気機械300は、
図1a〜1eを参照して上で説明された種類の力発生巻線および1つまたは複数の傾斜制御巻線を含む一次側部分301を含む。リニア電気機械300は、一次側部分301が垂直方向に移動可能である二次側部分302を含む。この例示的なコンベヤシステムにおいて、リニア電気機械300の一次側部分301は、コンベヤ車321に取り付けられ、二次側部分302は、コンベヤ軸320に取り付けられる。
図3に示される例示的なコンベヤシステムは、パワーエレクトロニクスコンバータ360に電気エネルギを供給するための可撓ケーブル330を含む。コンベヤ軸320に垂直導体レールを設け、リニア電気機械300がリニアモータとして作動するかまたはリニア発電機として作動するかに応じて、垂直導体レールから電気エネルギを受けるかまたは垂直導体レールに電気エネルギを供給するためのトロリーをコンベヤ車321に設けることも可能である。
【0036】
以上において与えられた説明で提供される特定の例は、添付の請求項の適用可能性および/または解釈を限定するものと解釈してはならない。以上において与えられた説明で提供される例のリストおよび群は、そうではない旨が明示的に記述されていない限り、すべてを網羅するものではない。