特許第6970195号(P6970195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970195
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】軸受部材
(51)【国際特許分類】
   F16C 23/04 20060101AFI20211111BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20211111BHJP
   F03D 80/70 20160101ALI20211111BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F16C23/04 Z
   F16C17/10 Z
   F03D80/70
   F03D1/06 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-521151(P2019-521151)
(86)(22)【出願日】2017年10月19日
(65)【公表番号】特表2019-534428(P2019-534428A)
(43)【公表日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】AT2017060273
(87)【国際公開番号】WO2018071941
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2020年8月27日
(31)【優先権主張番号】A50969/2016
(32)【優先日】2016年10月21日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015564
【氏名又は名称】ミバ・グライトラーガー・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス セバスチャン ヘルツル
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/191163(WO,A1)
【文献】 特開2010−210082(JP,A)
【文献】 特開2004−308682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 21/00−27/08
F16C 17/00−17/26,
33/00−33/28
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向(8)及び/又は軸方向(9)並びに傾きモーメント(10)によって負荷を受ける構成部分を軸承するための、軸受部材(7)であって、
少なくとも1つの内側のリング部材(11)と少なくとも1つの外側のリング部材(14)を有し、それらが負荷を受けない状態において中央の長手軸線(22)に関して互いに同軸に配置され、前記内側のリング部材(11)と前記外側のリング部材(14)の間に滑り軸承部(17)が形成され、該滑り軸承部が少なくとも2つの、互いに対して軸方向の間隔(18)で配置された滑り軸受(19)によって形成され、該滑り軸受(19)が収容側(23)において前記内側のリング部材及び前記外側のリング部材(11、14)の1つと結合され、かつ収容側(23)と対向して滑り面(24)が形成され、該滑り面が対向する前記内側のリング部材及び前記外側のリング部材(11、14)の走行面(25)と協働する、軸受部材において、
前記滑り軸受(19)の新規状態において、該滑り軸受(19)の滑り面(24)が横断面で見て少なくとも1つの第1の部分(30)と第2の部分(31)とを有し、前記第1の部分(30)に添接する接線(32)が中央の長手軸線(22)に関して第1の角度(33)で配置され、前記第2の部分(31)に添接する接線(34)が中央の長手軸線(22)に関して第2の角度(35)で配置され、前記第1の角度(33)が前記第2の角度(35)と異なる大きさであり、
前記第1の部分(30)と前記第2の部分(31)とが、横断面で見て直線によって形成され、該直線が移行半径(42)によって互いに結合されている、ことを特徴とする軸受部材。
【請求項2】
滑り軸受(19)と協働する前記内側のリング部材又は前記外側のリング部材(11、14)の前記走行面(25)に添接する接線(28)が、中央の長手軸線(22)に関して第3の角度(29)で配置されており、負荷を受けない状態において前記走行面(25)の第3の角度(29)が、滑り面(24)の第1の部分(30)の第1の角度(33)と同じ大きさである、ことを特徴とする請求項1に記載の軸受部材。
【請求項3】
前記滑り軸受(19)が前記外側のリング部材(14)と結合され、前記滑り面(24)が前記滑り軸受(19)の内側(20)に形成され、前記走行面(25)が前記内側のリング部材(11)の外側(13)に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受部材。
【請求項4】
前記滑り軸受(19)の少なくとも1つが、周方向に分配して配置された複数の滑り軸受パッドによって形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の軸受部材。
【請求項5】
前記滑り軸受(19)が内側(20)に配置された前記滑り面(24)を有する場合に、前記第1の部分(30)に添接する接線(32)の、中央の長手軸線(22)に関する前記第1の角度(33)が、前記第2の部分(31)に添接する接線(34)の、中央の長手軸線(22)に関する前記第2の角度(35)よりも小さく、
前記滑り軸受(19)が外側(21)に配置された前記滑り面(24)を有する場合に、前記第1の部分(30)に添接する接線(32)の、中央の長手軸線(22)に関する前記第1の角度(33)が、前記第2の部分(31)に添接する接線(34)の、中央の長手軸線(22)に関する前記第2の角度(35)よりも大きい、ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の軸受部材。
【請求項6】
径方向力(8)及び/又は軸方向力(9)によって軸受部材(7)に負荷がかかった場合に、前記内側のリング部材又は前記外側のリング部材(11、14)の前記走行面(25)が滑り軸受(19)の軸受部材(7)の第1の部分(30)に、特に第1の接触線(36)に沿って添接し、前記内側のリング部材又は前記外側のリング部材(11、14)と前記滑り軸受(19)が、中央の長手軸線(22)を中心に互いに対して相対回動可能であって、かつ
前記軸受部材(7)が傾きモーメント(10)によって負荷を受けた場合に、前記内側のリング部材又は前記外側のリング部材(11、14)の前記走行面(25)が前記滑り軸受(19)の前記滑り面(24)の前記第2の部分(31)に、特に第2の接触線(37)に沿って添接し、前記内側のリング部材又は前記外側のリング部材(11、14)と前記滑り軸受(19)が中央の長手軸線(22)を中心に互いに対して相対回動可能である、ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の軸受部材。
【請求項7】
前記第2の部分(31)の接線(34)は、次のように、すなわち前記軸受部材(7)が負荷を受けない状態において、前記走行面(25)の接線(28)が前記軸受部材(7)の中心点を中心に傾くことが可能であり、前記第2の部分(31)の接線(34)に対して等しく重なるように形成され、かつ、そのように重なる角度(35)を有するように構成されている、ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の軸受部材。
【請求項8】
前記第1の部分(30)に添接する接線(32)と前記第2の部分(31)に添接する接線(34)の間の開口角度(41)が、175°と179.99°の間、特に178°と179.99°の間であり、好ましくは179°と179.99°の間である、ことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の軸受部材。
【請求項9】
ロータハブ(5)とゴンドラ(2)を有し、ロータハブ(5)が軸受部材(7)によって前記ゴンドラ(2)に軸承されている、風力設備(1)において、
前記軸受部材(7)が請求項1〜の何れか一項に従って形成されている、ことを特徴とする風力設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部分を軸承するための軸受部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、風力設備のロータハブを軸承するための軸受部材が知られている。この軸受部材は、アウターリング、インナーリング及びアウターリングとインナーリングの間に配置されている複数の滑り軸受パッドを有している。軸受部材は、径方向もしくは軸方向の力の負荷用に設計されており、重畳される傾きモーメントは制限された状態でしか吸収できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】オーストリア国特許第509625(B1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服して、径方向力、軸方向力及び傾きモーメントによって負荷を受ける構成部分を軸承することができる、軸受部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項に記載の装置によって解決される。
【0006】
本発明によれば、径方向力、軸方向力及び傾きモーメントによって負荷を受ける構成部分を軸承するための軸受部材、特にロータハブ軸承部が形成されている。軸受部材は少なくとも1つの内側のリング部材と少なくとも1つの外側のリング部材とを有しており、それらは負荷を受けない状態において中央の長手軸線に関して互いに同軸に配置されて、内側のリング部材と外側のリング部材との間に滑り軸承部が形成され、その滑り軸承部が少なくとも2つの、互いに対して軸方向に間隔をおいて配置された滑り軸受によって形成されている。これらの軸受部材は、収容側においてリング部材の1つと結合され、かつ収容側に対向して滑り面が形成され、その滑り面が対向するリング部材の走行面と協働する。滑り軸受の新規状態において、滑り軸受の滑り面が横断面で見て少なくとも1つの第1の部分と第2の部分とを有し、第1の部分に添接する接線が中央の長手軸線に関して第1の角度で配置され、第2の部分に添接する接線が中央の長手軸線に関して第2の角度で配置され、第1の角度が第2の角度とは異なる大きさである。
【0007】
軸受部材の本発明に係る形成の利点は、滑り軸受の第1の部分が、軸受部材に作用する軸方向力もしくは径方向力を良好に吸収できるように形成することができ、かつ第2の部分が軸受部材に作用する傾きモーメントを良好に吸収することができるように形成できることである。従来の滑り軸受とは異なり、本発明に係る軸受部材によって、内側のリング部材が外側のリング部材に対して傾いた場合に点状の負荷がもたらされず、内側のリング部材が外側のリング部材に対して傾いた場合でも、滑り面が走行面に少なくとも線形状に添接する。それによって面圧力は従来の軸受部材に比較して減少させることができ、それによって軸受部材における摩耗も小さく抑えることができる。
【0008】
さらに、滑り軸受と協働するリング部材の走行面に添接する接線が、中央の長手軸線に関して第3の角度で配置されており、負荷を受けない状態において走行面の第3の角度が滑り面の第1の部分の第1の角度と同じ大きさであると、効果的であり得る。好ましくは、この措置によって、径方向力もしくは軸方向力によって負荷を受ける軸受部材(この軸受部材は内側のリング部材と外側のリング部材の間に傾きをもたず、かつ傾きモーメントによって負荷を受けない)内に、線形状の接触を形成することができる。
【0009】
さらに、滑り軸受が外側のリング部材と結合されて、滑り面が滑り軸受の内側に形成され、かつ走行面が内側のリング部材の外側に形成されることが、可能である。軸受部材をこのように形成することは、外側のリング部材が回転する構成部分として形成されて、内側のリング部材が固定の構成部分として形成されている場合に、効果的である。というのは、それによって軸受部材における摩耗が減少されるからである。
【0010】
代替的な実施変形例においては、滑り軸受が内側のリング部材と結合されており、滑り面が滑り軸受の外側に形成され、かつ走行面が外側のリング部材の内側に形成されることが可能である。
【0011】
軸受部材のこの種の形成は、内側のリング部材が回転する構成部分として形成されており、外側のリング部材が固定の構成部分として形成されている場合に効果的である。この理由は、それによって軸受部材における摩耗が減少されるからである。
【0012】
さらに、滑り軸受の少なくとも1つを、周方向に分配された複数の滑り軸受パッドによって形成することができる。好ましくは、この種の滑り軸受パッドは保守の場合に簡単に交換され、もしくは取り出すことができ、軸受部材全体を分解する必要はない。
【0013】
また、好ましい形態によれば、滑り軸受が内側に配置された滑り面を有する場合に、第1の部分に添接する接線の、中央の長手軸線に関する第1の角度が、第2の部分に添接する接線の、中央の長手軸線に関する第2の角度よりも小さく、かつ、滑り軸受が外側に配置された滑り面を有する場合には、第1の部分に添接する接線の、中央の長手軸線に関する第1の角度が、第2の部分に添接する接線の、中央の長手軸線に関する第2の角度よりも大きいことが、可能である。
【0014】
展開によれば、軸受部材が径方向力又は軸方向力によって負荷を受けた場合に、リング部材の走行面が滑り軸受の滑り面の第1の部分に、特に第1の接触線に沿って添接し、かつリング部材と滑り軸受が中央の長手軸線を中心に互いに対して相対回動可能であること、及び軸受部材が傾きモーメントによって負荷を受けた場合に、リング部材の走行面が滑り軸受の滑り面の第2の部分に、特に第2の接触線に沿って添接し、かつリング部材と滑り軸受が中央の長手軸線を中心に互いに対して相対回動可能であることが、可能である。好ましくは、2つの部分の各々が特殊な負荷状態の負荷を吸収するように形成されており、それによって軸受部材の可能な寿命を高めることができる。
【0015】
さらに、第2の部分の接線が、次のように、すなわち軸受部材が負荷を受けない状態において走行面の接線が軸受部材の中心点を中心に第2の部分の接線に対して等しく重なるように、形成されており、もしくはそのような角度を有していると、好ましい場合がある。好ましくは、軸受部材が傾きモーメントによって負荷を受けた場合に、したがって外側のリング部材が内側のリング部材に対して傾いた状態において、走行面と滑り面が第2の接触線において互いに重なる。
【0016】
さらに、第1の部分と第2の部分は、横断面で見て直線によって形成され、それらの直線が移行半径によって互いに結合されることが、可能である。好ましくは、横断面で見て直線によって形成されるそれらの部分が、同様に横断面で見て直線として形成される相手側面と協働することができ、線形状の接触が形成される。移行半径は、好ましくはできるだけ小さく選択されている。好ましくは、移行半径はほぼゼロとすることができ、したがって直線は直接互いに交差して、鋭角を形成する。
【0017】
さらに、第1の部分に添接する接線と第2の部分に添接する接線との間の開口角度が、175°と179.99°の間、特に178°と179.99°の間、好ましくは179°と179.99°の間であると、好ましい場合がある。好ましくは、この種の開口角度を実現することによって、それに応じて小さい軸受の遊びを達成することができる。
【0018】
さらに、ロータハブとゴンドラを有する風力設備を形成することができ、ロータハブは記述された軸受部材によってゴンドラに軸承されている。
【0019】
接線は、たとえば円のような、湾曲したカーブにも、直線にも添接することができる。直線の特別な場合においては、接線は直線上の長さ全体において直線に添接する。
【0020】
軸受部材は、新規状態において幾何学的な形成を有している。これは特に、効果的である。というのはそれによって滑り軸受の過度の摩耗ができる限り回避されるからである。
【0021】
本発明をよりよく理解するために、以下の図を用いて本発明を詳細に説明する。
図は、それぞれ著しく簡略化された図式的な表示である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】風力設備の実施例を示している。
図2】軸受部材の第1の実施例を、負荷を受けない状態において示す横断面図である。
図3】軸受部材の第1の実施例を、傾きモーメントによって負荷を受けた状態において示す横断面図である。
図4】軸受部材の第1の実施例を、負荷を受けない状態で示す図式的な詳細図である。
図5】軸受部材の第1の実施例を、軸方向力及び/又は径方向力によって負荷を受けた状態において示す図式的な詳細図である。
図6】軸受部材の第1の実施例を、傾きモーメントによって負荷を受けた状態において示す図式的な詳細図である。
図7】軸受部材の第2の実施例を、負荷を受けない状態において示す図式的な詳細図である。
図8】軸受部材の第2の実施例を、軸方向力及び/又は径方向力によって負荷を受けた状態において示す図式的な詳細図である。
図9】軸受部材の第2の実施例を、傾きモーメントによって負荷を受けた状態において示す図式的な詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
最初に記録しておくが、異なるように記載される実施形態において、同一の部分には同一の参照符号ないし同一の構成部分名称が設けられており、説明全体に含まれる開示は、同一の参照符号ないし同一の構成部分名称を有する同一の部分へ意味に従って移し替えることができる。また、説明内で選択される、たとえば上、下、側方などのような位置記載は、直接説明され、かつ示される図に関するものであって、この位置記載は位置が変化した場合には意味に従って新しい位置へ移し替えられる。
【0024】
図1は、風エネルギから電気エネルギを発生させるための風力設備1の図式的な表示である。風力設備1は、ゴンドラ2を有しており、そのゴンドラがタワー3に回転可能に収容されている。ゴンドラ2内には、風力設備1のジェネレータのような、複数の電気機械的コンポーネントが配置されている。
【0025】
さらに、ロータ4が形成されており、そのロータはロータハブ5とそれに配置されたロータブレード6を有している。特に、ロータハブ5は軸受部材7によって回転運動可能にゴンドラ2に収容されている。
【0026】
軸受部材7がこの文書に記述される仕様に従って形成されていると、特に効果的である。その理由は、ゴンドラ2にロータハブ5を軸承するために軸受部材7が1つだけ使用される場合に、径方向力8も軸方向力9も、そして傾きモーメント10も1つの軸受部材7によって吸収されなければならないからである。軸方向力9は風の力によって生じる。径方向力8は、ロータ4の自重に相当し、かつロータ4の重心に作用する。ロータ4の重心は軸受部材7の外部に位置しているので、軸受部材7内に径方向力8によって傾きモーメント10がもたらされる。傾きモーメント10は、ロータブレード6の不均一な負荷によっても同様にもたらされることがある。
【0027】
軸受部材7を風力設備1内で使用する代わりに、このように形成された軸受部材7を、たとえばドレッジャのターンテーブルに使用すること、あるいは径方向力8及び/又は軸方向力8も、傾きモーメント10も軸受部材7に作用するところにおける、その他の適用も、考えられる。
【0028】
本発明に係る軸受部材7は、たとえば0.5mと5mの間の直径を有することができる。もちろん軸受部材がそれより小さく、あるいは大きいことも、考えられる。
【0029】
図2には、軸受部材7の第1の実施例が、負荷を受けない状態において示されている。図3においては、図2に示す軸受部材7の第1の実施例が、傾きモーメントによって負荷を受けた状態において示されており、ここでも、先行する図2におけるのと同じ部分には同一の参照符号もしくは構成部分名称が使用される。不必要な繰り返しを避けるために、軸受部材7は図2と3を一緒に見たものに基づいて説明される。
【0030】
軸受部材7は、少なくとも1つの内側のリング部材11を有しており、それが内側12と外側13とを有している。さらに外側のリング部材14が設けられており、それが内側15と外側16とを有している。さらに内側のリング部材11と外側のリング部材14との間に滑り軸承部17が形成されており、その滑り軸承部が少なくとも2つの、互いに対して軸方向の間隔18で離隔した滑り軸受19を有している。2つの滑り軸受19は、それぞれ内側20と外側21とを有している。
【0031】
図2の表示においては、軸受部材7は負荷を受けない状態で示されている。負荷を受けない状態と定義されるのは、軸受部材7に力が作用せず、したがって重力も作用しない状態である。この状態は仮想であって、したがって軸受部材7の構成部分もしくは機能を説明するためだけに示されている。図2から明らかなように、軸受部材7が負荷を受けない状態において、内側のリング部材11と外側のリング部材14及び滑り軸受19は、共通の中央の長手軸線22に関して同心に配置されている。
【0032】
図2〜6に示すような、軸受部材7の第1の実施例において、滑り軸受19は外側のリング部材14と結合されている。滑り軸受19の、外側のリング部材14と結合されている側は、この実施例においては滑り軸受の収容側23と称される。滑り軸受19の収容側23においては、滑り軸受19と外側のリング部材14との間に相対運動は行われない。滑り軸受部材19と外側のリング部材14とのこの種の結合は、たとえばオーストリア国特許第509625(B1)号明細書にすでに記述されているような措置によって達成することができる。
【0033】
さらに、滑り軸受19がたとえば接着結合によって外側のリング部材14内に収容されることも考えられる。更に、他の実施例においては、滑り軸受19がたとえば形状係合で外側のリング部材14内に収容されることも可能である。
【0034】
滑り軸受19は、周面上に分配された複数のリング部材に分割することができる。さらに、滑り軸受19が唯一の一周するリングとして形成されることも、考えられる。この種の一周するリングは、たとえば外側のリング部材14内へ挿入することができ、摩擦結合によって外側のリング部材14に対して滑り軸受19が一緒に回転することは、阻止される。
【0035】
滑り軸受19の収容側23に対向して、滑り面24が形成されており、その滑り面が内側のリング部材11の走行面25と協働する。第1の実施例において、内側のリング部材11の外側13が走行面25として形成されている。
【0036】
特に第1の実施例において、滑り軸受19が内側のリング部材11に対して回動し、滑り軸受19の滑り面24と内側のリング部材11の走行面25との間の滑り移動が可能になる。それによって軸受部材7の機能を実現することができる。軸受部材7の正確な機能又は正確な関係が図4〜6に詳細に示されており、又はこれらの表示は軸受部材7の第1の実施例を理解するための補足として用いられる。
【0037】
図2に示すように、内側のリング部材11と滑り軸受19の間には、軸受のあそび26が形成されている。
【0038】
ここで述べておくが、図2と3においても、図4〜6及び7〜9においても、軸受のあそび26は、はっきりさせるために過度に大きく示されている。特に図4〜6及び7〜9においては、機能及び技術的効果を見えるように示すことができるようにするために、滑り軸承の幾何学配置も著しく誇張して示されている。
【0039】
図2から明らかなように、2つの内側のリング11が形成されており、それらが互いに対して間隔27で配置されている。内側のリング部材11の外側13は、それぞれ円錐状に形成されており、かつ互いに向き合っている。2つの内側のリング部材11の互いに対する間隔27によって、軸受のあそび26を調節することができる。
【0040】
走行面25は、中央の長手軸線22に関して回転対称に形成された面であり、その面は円錐台の特殊な形状を有することができる。図2に示すように、軸受部材7の横断面において、走行面25は直線を形成している。走行面25に接線28を引くと、この接線28は中央の長手軸線22に関して角度29で形成されている。
【0041】
図2から、そして特に図4に示す拡大された表示から明らかなように、滑り軸受19はその滑り面24に第1の部分30と第2の部分31とを有している。
【0042】
第1の部分30に引いた接線32は、中央の長手軸線22に対して角度33で配置されている。第2の部分31に引いた接線34は、中央の長手軸線22に対して角度35で配置されている。
【0043】
特に、第2の部分32の角度35と第1の部分30の角度33は異なる大きさである。さらに、走行面25の角度29と第1の部分30の角度33は等しい大きさであって、したがって軸受部材7が負荷を受けない状態において、走行面25の接線28と第1の部分30の接線32は、互いに対して平行になる。したがって三次元の表示において見て、走行面25と第1の部分30は、等しい開口角度を有する円錐台の外表面を有している。
【0044】
図5に示すように、軸受部材7が軸方向力9及び/又は径方向力8によって負荷を受けた場合に、滑り軸受19の滑り面24の第1の部分30と内側のリング部材11の走行面25とが第1の接触線36において添接する。したがって、滑り軸受19の滑り面24と内側のリング部材11の走行面25が第1の接触線36において互いに接触する。この理由は、径方向力8によって、もしくは軸方向力9によって2つの構成部分の互いに対する平行摺動がもたらされるからである。もちろん平行摺動は、百分の1から十分の1ミリメートルの領域内で移動し、かつ著しく誇張して示されている。
【0045】
しかし、図3と6の表示に示すように軸受部材7内へ傾きモーメント10が導入された場合に、内側のリング部材11に対する外側のリング部材14の傾きがもたらされ、それによって滑り軸受19の滑り面24の第2の部分31が第2の接触線37において内側のリング部材11の走行面25に添接する。
【0046】
図3から明らかなように、2つの滑り軸受19は対角線状に対向して内側のリング部材11に載置される。このように傾いた場合に、特に回転点38に関して外側のリング部材14が内側のリング部材11に対して回動し、その回転点は中央の長手軸線22と長手中心軸線39の交点内に位置する。
【0047】
もちろん、外側のリング部材14が説明したように傾いた後に、走行面25の接線28と滑り軸受19の滑り面24の第2の部分31の接線34とが互いに等しく重なると、理想的である。それによって、軸受部材7が傾きモーメント10によって負荷を受けた場合でも、滑り面24と走行面25の間の線形状の接触がもたらされ、それによって面圧力とそれに伴って滑り面における摩耗を軽減することができる。
【0048】
傾いた後に第2の部分31の接線34と走行面25の接線28が等しく重なることは、滑り軸受19の構造において、図2に示す負荷を受けない状態において接線28が走行面25に接するものとされ、かつ回転点38に関して所定角度回動されるので、それが第2の部分31の接線34を形成し、かつ第1の部分30の接線32と滑り軸受19のほぼ中心で交差することによって、達成することができる。滑り軸受19の構造において接線28が走行面25に接して回動するこの角度の大きさが、次に最大の変位角度40°を定める。
【0049】
第2の部分31の接線34と第1の部分30の接線32の間に開口角度41が形成され、その開口角度41は180°−(最大の変位角度40°)の角度に相当する。したがってそれなりに小さい軸受のあそび26が、百分の1ミリメートルから十分の1ミリメートルで移動する場合に、最大の変位角度40°も百分の1から十分の1度の領域内におちつく。
【0050】
さらに、第1の部分30と第2の部分31の間に移行半径42を形成することができ、その移行半径は製造に基づくものである。好ましくは、移行半径42はできるだけ小さくされるので、第1の接触線36又は第2の接触線37はできる限り長くなり、したがって滑り軸受19の滑り面24と内側のリング部材11の走行面25の間に生じる面圧力はできるかぎり小さくなる。言い換えると、理想的な場合においては、第1の部分30と第2の部分31は、直接もしくは移行半径42なしで、互いに連続する。
【0051】
図7〜9には、第2の実施例において他の、そして場合によってはそれ自体自立した、軸受部材7の実施形態が示されており、ここでも先行する図2〜6におけるのと同じ部分には同一の参照符号又は構成部品名称が使用される。不必要な繰り返しを避けるために、先行する図2〜6における詳細な説明を参照する。
【0052】
軸受部材7の第2の実施例においては、滑り軸受19は内側のリング部材11と結合することができ、滑り軸受19と外側のリング部材14との間で滑り移動が行われる。
【0053】
第2の実施例から明らかなように、滑り軸受19は内側のリング部材11と結合することができ、したがって滑り軸受19の収容側23はその内側20に形成することができる。それに従ってこの実施例においては、滑り軸受19の滑り面24はその外側21に形成されており、かつ、この実施例において走行面25として形成されている、外側のリング部材14の内側15と協働する。
【0054】
滑り軸受19の滑り面24の第1の部分30及び第2の部分31と、それと協働する外側のリング部材14の走行面25との間の関係は、図2から6においてすでに説明した第1の実施例と同様にふるまう。したがって簡単にするために、第2の実施例は別に詳細に説明せずに、当業者にとっては図2から6で説明した第1の実施例についての記述に基づいて、もしくは図7〜9に基づいて、機能は明らかである。
【0055】
図7〜9に示すように、内側に配置された滑り軸受19を有する軸受部材7のこの種の第2の実施例は、好ましくは、外側のリング部材14が固定位置に形成されており、かつ内側のリング部材11が滑り軸受部材19によって外側のリング部材14に対して回動可能である場合に、使用される。
【0056】
これらの実施例は、可能な実施変形例を示すものであって、ここで記録しておくが、本発明は具体的に示されたその実施変形例に限定されるものではなく、むしろ個々の実施変形例の互いに対する様々な組合せが可能であって、これらの変更可能性は具体的な発明による技術的に取り扱うための教示に基づいて、この技術分野で作業する当業者の裁量の範囲内にある。
【0057】
保護領域は、請求項によって定められている。しかし明細書と図面は、請求項を解釈するために利用される。図示され、かつ説明された様々な実施例の個々の特徴又は特徴の組合せは、それ自体自立した進歩的解決を表すことができる。自立した進歩的解決の基礎となる課題は、明細書から読み取ることができる。
【0058】
具体的な説明内の値領域についてのすべての記載は、その任意の部分領域とすべての部分領域を共に含むものであって、たとえば記載1から10は、下限の1と上限の10から始まるすべての部分領域、すなわち下限の1またはそれ以上で始まり、上限の10またはそれ以下で終了する、たとえば1から1.7、または3.2から8.1、あるいは5.5から10のすべての部分領域、を一緒に含んでいるものとする。
【0059】
最後に形式的に指摘しておくが、構造を理解しやすくするために部材は部分的に縮尺通りではなく、かつ/又は拡大及び/又は縮小して示されている。
【符号の説明】
【0060】
1 風力設備
2 ゴンドラ
3 タワー
4 ロータ
5 ロータハブ
6 ロータブレード
7 軸受部材
8 径方向力
9 軸方向力
10 傾きモーメント
11 内側のリング部材
12 内側のリング部材の内側
13 内側のリング部材の外側
14 外側のリング部材
15 外側のリング部材の内側
16 外側のリング部材の外側
17 滑り軸承部
18 軸方向の間隔
19 滑り軸受
20 内側の滑り軸受
21 外側の滑り軸受
22 中央の長手軸線
23 収容側 滑り軸受
24 滑り面 滑り軸受
25 走行面
26 軸受のあそび
27 間隔 内側のリング部材
28 接線 走行面
29 角度 走行面
30 第1の部分
31 第2の部分
32 第1の部分の接線
33 第1の部分の角度
34 第2の部分の接線
35 第2の部分の角度
36 第1の接触線
37 第2の接触線
38 回転点
39 長手中心軸線
40 最大の変位角度
41 開口角度
42 移行半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9