(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970198
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】車両のアルミニウムサイドレールと制御アームの結合装置
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20211111BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D21/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-530102(P2019-530102)
(86)(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公表番号】特表2019-536689(P2019-536689A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2017080756
(87)【国際公開番号】WO2018104120
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2020年9月11日
(31)【優先権主張番号】1661998
(32)【優先日】2016年12月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァリエ, マクシム
(72)【発明者】
【氏名】エスティオット, クリストフ
【審査官】
立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05915727(US,A)
【文献】
特開2008−201416(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0063408(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第19612885(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体構造のアルミニウム側方サイドレール(10、20)と、円筒形関節リング(81)を備えるサスペンションアーム(91、94)の端部とを連結するための装置であって、前記サイドレール(10、20)の下に固定される上面(51、61)と、クレードルの上に固定される下側部分と、側壁とを備えるアルミニウム鋳物(50、60)であって、前記側壁から、外側側面に垂直に、少なくとも第1のサスペンションアーム境界接触面が延在しており、前記第1のサスペンションアーム境界接触面が、前記サスペンションアーム(91、94)の端部を取り付けるように、前記円筒形関節リング(81)の長さより大きい空隙値だけ互いに離間したフィン(56、66、98、99)の対を備える、アルミニウム鋳物(50、60)を備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記第1のサスペンションアーム境界接触面が、鋳造工場を出た後に機械加工を受けて前記アルミニウム鋳物(50、60)の一体部分を形成するフィン(55、56)の対を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィン(55、56)の対が、その位置を堅固に維持するために厚みのあるベース部を有する第1のフィン(72)と、第2のフィン(71)であって、前記2つのフィンの間で前記円筒形関節リング(81)を締め付けるように、前記第1のフィン(72)に向かって前記第2のフィン(71)の対向する端部を配向できるようにするために薄いベース部を有する第2のフィン(71)とを備えることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記円筒形関節リング(81)の端部(83、84)と、前記フィンの対の内側面との間に挿入される少なくとも1つのウェッジ(73、74)を備えることを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
2つのウェッジ(73、74)が細いバー(79)によって連結されることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記アルミニウム鋳物(50、60)が、クランプロッカーバー(92)の端部を取り付けるためのフィン(57)の対であって、鋳造工場を出た後に機械加工を受けて前記アルミニウム鋳物(50、60)の一体部分を形成するフィン(57)の対を備えるクランプロッカーバー境界接触面を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のサスペンションアーム境界接触面または第2のサスペンションアーム境界接触面が、フィン(98、99)の対を備える鋼のUリンク(93)であって、前記アルミニウム鋳物(50、60)にねじ留めされるUリンク(93)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
1つのサスペンションアーム境界接触面の前記フィン(56、66、98、99)の対の空隙値を締付けによって低減するために、前記フィンおよび前記円筒形関節リング(81)を貫通するねじ(97)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
それぞれのフィン(71、72)が、前記アルミニウム鋳物の前記上面(61)に実質的に平行な長さをもつ楕円窓(85)を備え、それにより、前記楕円窓(85)内で前記ねじ(97)の本体をスライドすることによって、前記円筒形関節リング(81)、したがって前記アルミニウム鋳物の前記サスペンションアームの端部を、近づけることおよび遠ざけることが可能になることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ねじ(97)が、フィン面に当てて配置するための偏心ディスク(76)を備え、前記フィン面が、前記偏心ディスク(76)の一部分が当たる少なくとも1つのスライド(78)を備え、それにより、前記ねじ(97)を回すことによって、前記ねじ(97)の前記本体を前記楕円窓(85)内でスライドすることが可能になることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体構造、特にモータ車両本体構造のアルミニウム側方サイドレールと、円筒形関節リングを備えるサスペンションアームの端部とを連結するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化のために、車両のホワイトボディはアルミニウム製である。この場合、本体の底面は、特に高度な機械的応力および/または熱応力を受ける部分について、接着、リベット締め、および/または溶接によって組み立てられたアルミニウムプロファイルの構成を主に備える。
【0003】
その目的は、エンジン組立体が後方に配設される車両について、底面、特に後方サイドレールを補強するための解決策を得ることである。この領域には、サスペンション機能も組み込むことが可能でなくてはならない。
【0004】
一般的には、車両は、プレス加工された鋼部品を組み合わせることによって設計される。実際、鋼は容易にプレス加工することができ、それにより強い部品を得ることが可能になる。したがって、サイドレールおよび後方クレードルは、プレス加工された部品から作られる構造部を、それ自体知られているやり方で構成する。同様に、サスペンション機能を実行する部品が、曲げ加工またはプレス加工された鋼から作られる部品に組み付けられ、構造部に加えられる。
【0005】
構造の軽量化という文脈では、押出し成形されたプロファイルを使用すると、サスペンション要素と境界接触する可能性が制限される。この場合、アルミニウム鋳造が、有利な工程になる。
【0006】
文献FR2890641A1は、アルミニウムを圧力下で成形することによって作られる下枠の側方部分であって、押出し成形されたアルミニウムプロファイルの形で生産された下枠の中央部分に溶接される下枠の側方部分を開示している。圧力下での成形は、厚みのある部分よりも薄い部分の生産により適している。薄さには、強度が低下するという欠点があり、この欠点を、先行技術の文献は、補強リブを提供することによってなくすことを提案している。開示された下枠にエンジン組立体を取り付けることは、たとえば、ホイールに向かってドライブシャフトを支持し通すこと、またはサスペンションアームの関節部により振動が伝達されることなど、多くの問題を呈する。
【発明の概要】
【0007】
先行技術の問題を解決するために、本発明の主題は、車両本体構造のアルミニウム側方サイドレールと、円筒形関節リングを備えるサスペンションアーム端部とを連結するための装置である。装置はアルミニウム鋳物を備え、このアルミニウム鋳物は、サイドレールの下に固定される上面と、側壁とを備え、この側壁から、外側側面に垂直に、少なくとも第1のサスペンションアーム境界接触面が延在しており、この第1のサスペンションアーム境界接触面が、サスペンションアームの端部を取り付けるように、円筒形リングの長さより大きい空隙値だけ互いに離間したフィンの対を備えることが注目に値する。
【0008】
特に、第1のサスペンションアーム境界接触面は、鋳造工場を出た後に機械加工を受けてアルミニウム鋳物の一体部分を形成するフィンの対を備える。
【0009】
より具体的には、フィンの対は、その位置を堅固に維持するために厚みのあるベース部を有する第1のフィンと、第2のフィンであって、2つのフィンの間で前記円筒形リングを締め付けるように、第2のフィンの対向する端部を第1のフィンに向かって配向できるようにするために薄いベース部を有する第2のフィンとを備える。
【0010】
また、より具体的には、装置は、円筒形リングの端部と、フィンの対の内側面との間に挿入される少なくとも1つのウェッジを備える。
【0011】
さらにより具体的には、2つのウェッジは細いバーによって連結される。
【0012】
また具体的には、アルミニウム鋳物は、クランプロッカーバーの端部を取り付けるためのフィンの対であって、鋳造工場を出た後に機械加工を受けてアルミニウム鋳物の一体部分を形成するフィンの対を備えるクランプロッカーバー境界接触面を備える。
【0013】
また、具体的には、第1または第2のサスペンションアーム境界接触面は、フィンの対を備える鋼のUリンクであって、アルミニウム鋳物にねじ留めされるUリンクを備える。
【0014】
有利には、装置は、1つのサスペンションアーム境界接触面のフィンの対の空隙値を締付けによって低減するために、フィンおよび円筒形関節リングを貫通するねじを備える。
【0015】
特に、それぞれのフィンは、アルミニウム鋳物の上面に実質的に平行な長さをもつ楕円窓を備え、それにより、楕円窓内でねじの本体をスライドすることによって、円筒形関節リング、したがってアルミニウム鋳物のサスペンションアームの端部を、近づけることおよび遠ざけることが可能になる。
【0016】
より具体的には、ねじは、フィン面に当てて配置するための偏心ディスクを備え、このフィン面は、偏心ディスクの一部分が当たる少なくとも1つのスライドを備え、それにより、ねじを回すことによって、ねじの本体を楕円窓内でスライドすることが可能になる。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、決して限定するものではない、添付図面に示される実施形態の説明を読むと、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を適用可能な本体のクレードル組立体の拡大概略斜視図である。
【
図2】
図1の組立体の機能と組み合わされたメインサスペンションの機能を示す、鋳物の細部の概略斜視図である。
【
図3】サスペンション要素を装着できるように設計された鋳物の外側面の概略斜視図である。
【
図4】クレードルに固定された鋳物に関連するサスペンション要素の拡大概略斜視図である。
【
図5】クレードルに固定されるように設計された鋳物の内側面の概略斜視図である。
【
図6】本発明による装置の実施形態の拡大概略斜視図である。
【
図7】
図6の装置による三角サスペンションの装着を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による組立体によって、サスペンション要素を容易に装着することができる小型で軽量な強い部品が得られるようになる。
【0020】
本発明の設計は、車両本体構造のサイドレールとクレードルとの連結を可能にしながら、サスペンション要素に必要な締付け部を提供するアルミニウム鋳物を生産するという選択に基づく。したがって、反り防止バー、下側三角サスペンション、クランプロッカーバーを、鋳物にしっかりと、かつ十分に境界接触した状態で固定することができる。機械加工に関連した重力鋳造工程は、許容される形状およびそれらの精度においてかなりの自由度を提供する。それに加えて、鋳物を使用することによって、すべての機能を最小限の空間量内に一体化し、したがって、車両アーキテクチャの制約に適合することが可能になる。
【0021】
例として、後輪駆動車について以下で説明する例示的な実施形態では、特に、ドライブシャフトを通すことができるように広い範囲でくぼみのある後方サイドレールにおいて、鋳物がどのように車両構造に剛性を提供するかも理解することができる。
【0022】
ここで、鋳物が3つの基本的な機能、すなわちサイドレールに後方クレードルを組み付ける機能および構造を強化する機能、ならびにサスペンション要素の境界接触面を提供する機能をどのように果たすかについて説明する。
【0023】
図1は、両方ともアルミニウム製の右側方サイドレール10および左側方サイドレール20を備える本体構造に対する、車両用のアルミニウムクレードル30の組付けを示す。ここでは特に後輪駆動車向けとして説明される本体構造部40は、本体構造の後方部分を構成する。当業者であれば、残りの説明を読みながら、本発明の教示を必要に応じて前輪駆動車に容易に置き換えることができる。
【0024】
開示する実施形態では、後方サイドレール10、20のそれぞれは、車両の乗員空間を構成する中央本体部分に固定される正面11、21をそれぞれ備えており、この乗員空間それ自体は、好ましくは押出し成形、プレス加工、または曲げ加工されたアルミニウムから作られ、接着リベット締めによって組み立てられる。これらの部品について、サイドレール10、20は、好ましくは熱間押出し形成されたアルミニウムから作られる。
【0025】
それぞれのサイドレール10、20の外側側面、言い換えれば車両の外側に向かって配向されるそれぞれのサイドレール面は、下向きに配向された先端を有する円錐形の凹状くぼみ12、22を備え、ショックアブソーバ(図示せず)が通れるようにするために、このくぼみは、上面の最も深い側(円錐のベース部)と、サイドレールの外側側面の円錐軸の側との両方が開口している。
【0026】
エンジン組立体を支持するような寸法を有するサイドレール10、20は、その上側部分では中央クロス部材42によって、その後方端部では後方端部クロス部材41によって連結され、これらのクロス部材は両方とも、押出し成形されたアルミニウム製であり、溶接および/またはねじ留めされている。右側方サイドレール10、左側方サイドレール20、および中央クロス部材42は、たとえば熱間押出し成形された真っ直ぐなアルミニウムプロファイルである。後方端部クロス部材41は、たとえば押出し成形され、次いで熱間曲げ加工されたアルミニウムプロファイルである。
【0027】
好ましくは、右側方サイドレール10、および左側方サイドレール20は、中央クロス部材42のそれぞれの端部において溶接され、後方端部クロス部材41は、サイドレール10、20の後方端部にねじ留めされることによって固定される。
【0028】
アルミニウム鋳物50は、右側方サイドレール10の下に固定される上面51を備える。好ましくは、上面51は、凹状くぼみ12の半円錐の先端に対して後方位置に固定される後方部分51aと、凹状くぼみ12の半円錐の先端に対して前方位置に固定される前方部分51bとを備える。したがって、アルミニウム鋳物50は、凹状くぼみ12によって形成された半円錐の先端位置の下で、サイドレール10を補強することを可能にする。対称的に、凹状くぼみ22によって形成される半円錐の先端位置の下でサイドレール20を補強するために、アルミニウム鋳物60は、アルミニウム鋳物50と対称的に比較可能なように左側方サイドレール20の下に固定される上面61を備える。
【0029】
より具体的には、この場合、クレードル30は、右側方ビーム31および左側方ビーム32を備える後方クレードルであり、これらのビームは、後方横ビーム34および前方横ビーム33によって連結される。ビーム31〜34は、プレス加工および曲げ加工されたアルミニウムから作ることができる。たとえば熱間押出し成形によって得られるアルミニウムプロファイルの形のビーム31〜34の実施形態は、より良好な機械的および熱的な耐性を提供する。前方横ビーム33は、より良好に車両の中央ユニットに固定されるように、クレードルの各側部から突き出ている。後方横ビーム34は、実質的に中央のスターラップ(stirrup)37を支持し、そのスターラップを用いて後方横ビーム34が、たとえばねじ留め連結によって一体にされており、そのスターラップ上に、エンジントルク吸収ロッカーバー(図示せず)用の補強タイロッド38が固定される。
【0030】
ビーム31から乗員空間の内部に向かってビーム33を貫通して配向された傾斜ビーム35、およびビーム32から乗員空間の内部に向かってビーム33を貫通して配向された傾斜ビーム36は、乗員空間の前方から、車両の後方にあるエンジン区画にケーブルおよびダクトを通すためのトンネル(図示せず)にかかる力を、吸収によって拡散するのを可能にする。
【0031】
鋳物50および鋳物60の少なくとも下側部分は、クレードル30に固定される。下側部分とは、上面51の下にある、鋳物の考えられる任意の部分を意味する。
図5に示す実施形態では、アルミニウム鋳物50はその下側部分に、内側側面の後方にある突出部52、および内側側面の前方にある突出部53を備える。内側側面とは、エンジン区画の内部に向かって配向された、言い換えればそれに面した、鋳物の任意の面を意味する。突出部52、53は、異なる高さの下側部分にあってもよい。各突出部52、53は、アルミニウム鋳物50の上面51に実質的に平行な表面を備え、その表面は、横ビーム31の上面に固定するためのねじが通れるようにするために、その実質的に中央が穿孔されている。互いに実質的に平行な表面とは、それらの平面に垂直な線同士の互いからの逸脱が、たとえば10°未満の角度である表面を意味する。同様に、アルミニウム鋳物60はその下側部分に、内側側面の後方にある突出部62、および内側側面の前方にある突出部63を備え、これも
図1に見ることができる。
【0032】
右側ホイール(図示せず)に向かってエンジン組立体のドライブシャフトを通すことができるようにするために、鋳物50は、内側側面から外側側面に貫通開口部54を備える。したがって鋳物50は、サイドレール10を貫通してドライブシャフトが通った結果、サイドレール10が壊れやすくなるのを防止する。開口部54は、管形状に作られてもよいが、この実施形態では、ドライブシャフトを通すために必要な管形状の直径を収容するのに十分なほど高さのある鋳物が必要とされる。
【0033】
鋳物50のサイズを小さくするために、開口部54は、鋳物50の上面51に形成された半円筒形の凹状くぼみの形である。したがって、サイドレール10の下側面は半円筒形の凹状くぼみ13を備えており、この凹状くぼみ13は、半円筒形の凹状くぼみの形の開口部54上にこれに面して凹状くぼみ13が配設されたときに、ドライブシャフトが通るのに十分な直径を有する中空の円筒形を形成するように設計される。次いで、上面51の後方部分51aが、開口部54を構成する半円筒形の凹状くぼみに対して後方位置に固定され、次いで前方部分51bが、開口部54を構成する半円筒形の凹状くぼみに対して前方位置に固定される。したがって、鋳物50は、鋳物の凹状くぼみと組み合わされてドライブシャフトを通れるようにするサイドレール10の凹状くぼみによって十分な開口部が形成され得る位置を、最小限のサイズで補強し、また、その近傍に、同じく凹状くぼみによって開口部12を形成することができ、この開口部は、サイドレール10のできるかぎり近くにショックアブソーバ(図示せず)を通すのに十分である。
【0034】
同様に、左側ホイール(図示せず)に向かってエンジン組立体のドライブシャフトを通すことができるようにするため、鋳物60は、内側側面から外側側面に貫通開口部64を備える。
【0035】
それぞれのアルミニウム鋳物は、冷却時の縮みやマイクロバブルの現象を回避するためのよく知られた必要な手法を取ることにより、たとえばシンクヘッドを使用することにより、圧力下での成形によって得ることができる。必要な機械的特性をより容易に得るために、各鋳物50、60は、アルミニウムの重力鋳造によって得られる。砂型成形と比較して有利には、重力ダイ鋳造では、永久型の使用および再使用が可能である。
【0036】
重力ダイ鋳造工程は、適切なアルミニウム合金、特に引張耐性285〜295MPaをもたらす、6.5〜7.5%のケイ素、および0.25〜0.45%のマンガンを含むアルミニウム合金を使用することによって、それぞれの鋳物50、60の特に顕著な機械的特性を得ることを可能にする。
【0037】
それぞれアルミニウム鋳物である部品50および60のそれぞれ上面51および61は、それぞれサイドレール10および20の下にねじ15によって固定される。比較可能なように、アルミニウム鋳物50および60のそれぞれ下側部分52、53および62、63は、クレードル30のそれぞれビーム31および32の上面にねじによって固定される。好ましくは鋼ねじが使用されるが、それはこの金属の機械的特性が固定用として特に適しているからであり、鋼ねじは予め亜鉛−ニッケル処理を受けるが、それはこの処理には、アルミニウムに接触する鋼に適合性をもたせるという特性があるからである。
【0038】
図3に示すように、アルミニウム鋳物50、および同じく対称的にアルミニウム鋳物60は、三角サスペンションのアームまたは第1の枝部91の端部を取り付けるために、側壁上に第1のフィン56の対を備える。特に、フィン56の対は、上面51の後方部分51aの下で、アルミニウム鋳物50の外側側面に垂直に延在する。それぞれのフィンは、実質的にその中心に開口部が穿孔されており、その開口部によって、三角サスペンションのアームまたは第1の枝部91を保持するためのシャフトまたはねじ97が通れるようになる。
【0039】
アルミニウム鋳物50、および同じく対称的にアルミニウム鋳物60は、クランプロッカーバー92の端部を取り付けるために、前記側壁上に第2のフィン57の対を備える。
【0040】
アルミニウム鋳物50、および同じく対称的にアルミニウム鋳物60は、Uリンク93を固定するための境界接触面58、59も側壁に備える。
図4に示すように、Uリンク93は、三角サスペンションの第2の枝部94の端部を取り付けるための2つの垂直壁を備える。Uリンク93を鋼から作ることによって、機械的品質を損なうことなく、それぞれの垂直壁のうち上側部分を外向きに配向されるように、下側部分を内向きに配向されるように曲げて、境界接触面のそれぞれ2つの突出部59および2つの垂直な平坦部分58に当てて、ねじによりそれらを固定することが可能になる。
【0041】
それに加えて、アルミニウム鋳物50、および同じく対称的にアルミニウム鋳物60は、それぞれ傾斜した平坦部分55および65を備え、その上に安定化バー96のベアリング95が固定される。ポリマー材料からベアリング95を作ることによって、組立体の軽量化が促進される。
【0042】
図6および
図7は、サスペンションアームをどのようにアルミニウム鋳物60に固定するかをさらに詳細に示す。以下の説明は、車両の長手方向軸に対する対称性によってアルミニウム鋳物50に容易に置き換えることができ、その長手方向軸は、サイドレール20に対するサイドレール10の対称軸でもある。
【0043】
本発明による装置は、車両ホイールに直接連結されることから、高い機械的応力を受ける領域に属することに留意すべきである。
【0044】
図6は、円筒形関節リング81(ブッシュ)を備えるサスペンションアーム91の端部を示す。ベアリングとして知られていることもある円筒形リングは、サスペンションアーム91の端部とアルミニウム鋳物60との枢動連結を提供する。この目的のために、サスペンションアーム91の端部は、その中に円筒形リング81を収容するために中空の円筒形端部を備える。
図8に見ることができるように、円筒形リング81は、ねじ97を通すことができるようにするために、その中央が穿孔されたエラストマシリンダ82を備える。エラストマシリンダ82の外側母線は、中空の円筒形端部の内側母線と直接または間接的に一体である。円筒形リング81の各側方端部は、金属ディスク83、84と一体であり、そのディスクは周りの部分との境界接触面を形成する。全般的に鋼製の各ディスク83、84も、ねじ97を通すことができるようにするために、その中央が穿孔されている。
【0045】
この組立て原理は、2つの支持平面間に円筒形リング81を収容し、次いで締め付けることである。連結は、ねじタイプの軸要素によって強固になり、したがってこの軸要素は、エラストマシリンダ82のねじれにより、サスペンションアームの中空の円筒形端部をねじ周りに回転できるようにすることによって、2つの平坦な支持部間で円筒形リング81を締め付けることを可能にし、そのエラストマシリンダ82のねじれは、ホイールとアルミニウム鋳物60の間で振動の伝達を減衰させ、その結果として、ホイールと、鋳物60の上面61がその下に固定された側方サイドレール20との間で、振動の伝達を減衰させる。
【0046】
車両本体構造のアルミニウム側方サイドレールと、サスペンションアームの端部とを連結するための装置のアルミニウム鋳物は、側壁も備え、その側壁から、フィンの対を備えるサスペンションアーム境界接触面が延在しており、フィンの対は、サスペンションアームの端部を取り付けるために、円筒形リング81の長さよりも長い空隙値だけ互いに離間している。2つのフィン間の空隙は、円筒形関節リング81を収容するように設計されており、したがって、組立て遊びを提供し、この遊びは、装置の順調な動作を保証するように、円筒形関節リング81の側方表面にフィンを完全に当てて配置することによって、ねじを締めた後には取り除かれる(reabsorbed)。
【0047】
サスペンションアーム境界接触面の実施形態は、鋼のUリンク93を備えることができ、この鋼のUリンク93は、鋼製のフィン98、99の対を備え、
図7の三角サスペンション90の枝部94の端部の場合と同様に、アルミニウム鋳物60にねじ留めされるか、
図4の三角サスペンション90の枝部94の端部の場合と同様に、アルミニウム鋳物50にねじ留めされる。
【0048】
サスペンションアーム境界接触面の特に有利な実施形態は、鋳造工場を出た後に機械加工を受けてアルミニウム鋳物50、60の一体部分を形成するフィン56、66の対を備える。この機械加工は、特に鋳造におけるフィンの機械加工のばらつき、および関節リング(ブッシュ)の生産に関わらず、リング81の組付けを容易にしながら、なくすべき組立て遊びをできるだけ小さくすることを目的とする。この第2の実施形態は、
図4および
図7の三角サスペンション90の枝部端部91を構成するサスペンションアームに適用される実施形態である。
【0049】
第2の実施形態は、鋼Uリンク93ほど大きくなく、それほど重くないという利点を有する。アルミニウム鋳物から直接出ている
図4のフィン56の対、および
図6のフィン66の対は、クランプロッカーバー92の端部を取り付けるためにフィン57の対を備えるクランプロッカーバー境界接触面のために空間を開けることができ、フィン57の対も、鋳造工場を出た後に機械加工を受けてアルミニウム鋳物50または60の一体部分を形成する。クランプロッカーバーは、それ自体知られているやり方で、単一軸のホイールの平行度に作用することが知られている。
【0050】
しかし、ディスク83、84が鋼から作られている場合、この金属に比べるとアルミニウムは柔らかい材料である。円筒形関節リング81による鋳物フィンのハンマリングを防止するために、装置は少なくとも1つのウェッジ73、および必要に応じてウェッジ74を備え、これらは、一方では円筒形リング81の端部にあるディスク83と、フィン66の対のうちフィン72の内側面との間に挿入され、かつ/または、他方では円筒形リング81の端部にあるディスク84と、
図6および
図8のフィン66の対のうち、または
図4のフィン56の対のうちフィン71の内側面との間に挿入される。
【0051】
したがって、ウェッジによって、フィン上での円筒形リング81の支持表面を増大することが可能になる。力がより良好に分散され、ハンマリングが制限される。しかし、これらのウェッジにも生産のばらつきがあり、それにより一連の組立体の寸法にさらなる結合が追加される。言い換えれば、部品の生産のばらつきに応じた最小限の組立て遊びを保証して組立てを容易にするように、名目上の空隙を拡大することが必要である。
【0052】
2つのウェッジ73、74を連結する細いバー79によって、組立てが容易になる。したがって、この細いバー79を単に押すことによって、2つのフィン71、72間に2つのウェッジ73、74を同時に導入することが可能である。
【0053】
アルミニウム製のフィン66の対は、第1のフィン72を備えており、この第1のフィン72は、サスペンションアーム91の端部において、したがってアームがその枝部である場合には三角形において、幾何形状的な基準点として作用するように、その位置を堅固に維持するために厚みのあるベース部を有する。フィン66の対は、第2のフィン71も備えており、この第2のフィン71は、2つのフィンの間で円筒形リング81を締め付けるように、第1のフィン72に向かって第2のフィン71の対向する端部を配向できるようにするために薄いベース部を有する。円筒形リング81に近づくのに十分な柔軟性をフィンにもたせるが、柔軟すぎてそれ自体が受ける機械的な力に耐えられなくならないように、好ましくは機械加工を実施することによって、フィンが薄くされる。柔軟性と機械的応力に対する耐性との間の妥協点は、車両および使用される鋳造合金の技術的特性を含む様々な要因に依存する。車両のタイプごとの良好な妥協点は、当業者によりそれ自体知られているやり方で、反復計算によって得られる。したがって、たとえばAlSi7Mg0.3KT6として知られるアルミニウムグレードで、ダイ型における重力鋳造によるアルミニウム鋳物の生産工程において、フィン72の良好な剛性が容易に得られる。フィン71の柔軟性と機械的強度との良好な妥協点は、好ましくは凹状の円筒形状をフィン71のベース部の外側面に設けることによって、フィン71のベース部の厚さをフィン72のベース部の厚さの3分の1〜2分の1の範囲内で低減することによって、得ることができる。
【0054】
装置は、サスペンションアームの境界接触面のフィン66の対の空隙値を締付けによって低減するために、フィン71、72、円筒形関節リング81、および存在する場合にはウェッジ73、74を貫通するねじ97を備える。同じことが、フィン56の対に当てはまり、同等にUリンク93のフィン98、99にも当てはまる。
【0055】
それぞれのフィン71、72は、アルミニウム鋳物の上面61に実質的に平行な長さをもつ楕円窓85を備える。組立て段階の間、および/またはサスペンションアームの端部の配置段階の間に、この形状によって、円筒形関節リング81、したがってアルミニウム鋳物のサスペンションアームの端部を、楕円窓85内のねじ97の本体をスライドさせることによって近くにまたは遠くに動かすことが可能になり、この窓の幅は、ねじ97の本体の直径よりもほんのわずかに広い。
【0056】
偏心ディスク76は、ねじ97のヘッドに当接してねじの本体に固定される。言い換えれば、偏心ディスク76の中心は、ねじ97の軸にからずれている。ねじ97は、偏心ディスク76がフィン72の外側面に当たって配置されるまでフィン72の楕円窓の中に入れられる。
【0057】
フィン72の外側面は、2つのショルダ間にチャネルを備え、それぞれのショルダは、偏心ディスク76の一部分が当たるスライド78を形成する。ショルダは、偏心ディスク76の直径よりもほんのわずかに広い距離だけ互いに離間しており、それにより、ねじ97を回すことによって楕円窓85内でねじ97の本体をスライドすることが可能になる。偏心ディスク76と同様に、フィン71の外側面に当たるように偏心ワッシャー75も設けることができる。偏心ワッシャー75は、ねじ97の直径を有するボアを備え、その中でリブまたはキーが、ねじ97の本体に沿って形成された溝の中に入り、それにより、ワッシャー75が、偏心ディスク76と同じようにねじとともに回る。したがって、偏心ディスク76の角度位置によって得られる調整は、ワッシャー75によってフィン71に引き継がれる。ねじ97、したがってサスペンションアームの端部が、必要な位置に到達したら、ねじ97は回されなくなり、ねじの回転をブロックし、必要な締付けを得るために、ヘッドとは反対側のねじの端部にナット77が固定される。装置のこの特徴は、サスペンションアームが、下側三角サスペンションの枝部を構成する場合に有利である。同様の偏心機構が、下側三角の他方の枝部のために、Uリンク93のフィン98、99に実装される。
【0058】
したがって、サスペンションアーム91および94の端部を、同じやり方で偏心ディスクによってアルミニウム鋳物から離れるように動かすことによって、車両の中心のホイールの上部が近づけられる。相互的に、サスペンションアーム91および94の端部を、同じやり方で偏心ディスクによってアルミニウム鋳物に近づけると、車両の中心のホイールの上部が引き離される。したがって、この装置によって、車両の車体を調整することが可能になる。