(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記触媒層の形成は、前記凸部の位置で開口し且つ前記凸部の上面と高さが等しいか又はそれよりも高さが高い上面を有する第3マスク層の存在下で行う請求項1乃至3の何れか1項に記載のエッチング方法。
前記凹凸構造を形成した後であって、前記触媒層を形成する前に、前記凸部の位置で開口した第3マスク層を形成することを更に含み、前記触媒層は、前記凸部の上面及び前記第3マスク層のうち、前記凸部の上面に対して選択的に形成する請求項1乃至3の何れか1項に記載のエッチング方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るエッチング方法における第1マスク層形成工程を概略的に示す断面図。
【
図2】実施形態に係るエッチング方法における第1マスク層をエッチングマスクとして用いて半導体基板の表面をエッチングする工程を概略的に示す断面図。
【
図3】実施形態に係るエッチング方法における第1マスク層を除去する工程を概略的に示す断面図。
【
図4】実施形態に係るエッチング方法における第3マスク層形成工程を概略的に示す断面図。
【
図5】実施形態に係るエッチング方法における触媒層形成工程を概略的に示す断面図。
【
図6】実施形態に係るエッチング方法におけるエッチング工程開始状態を概略的に示す断面図。
【
図7】
図6に示す状態から一定時間経過後の状態を概略的に示す断面図。
【
図8】比較例においてエッチングする半導体基板を概略的に示す断面図。
【
図9】比較例における触媒層形成工程を概略的に示す断面図。
【
図10】比較例におけるエッチング工程を概略的に示す断面図。
【
図11】実施形態に係るエッチング方法においてエッチングする半導体基板を概略的に示す断面図。
【
図12】実施形態に係るエッチング方法における触媒層形成方法を概略的に示す断面図。
【
図13】実施形態に係るエッチング方法におけるエッチング工程を概略的に示す断面図。
【
図14】別の実施形態に係るエッチング方法における第2マスク層形成工程を概略的に示す断面図。
【
図15】別の実施形態に係るエッチング方法における半導体層形成工程を概略的に示す断面図。
【
図16】別の実施形態に係るエッチング方法における第3マスク層形成工程を概略的に示す断面図。
【
図17】実施形態に係る半導体チップ製造方法において使用する半導体ウエハを概略的に示す平面図。
【
図18】
図17に示す半導体ウエハのXVIII−XVIII線に沿った断面図。
【
図19】実施形態に係る半導体チップ製造方法における半導体層形成工程を概略的に示す平面図。
【
図20】
図19に示す半導体ウエハのXX−XX線に沿った断面図。
【
図21】実施形態に係る半導体チップ製造方法における第3マスク層形成工程を概略的に示す平面図。
【
図22】
図21に示す半導体ウエハのXXII−XXII線に沿った断面図。
【
図23】実施形態に係る半導体チップ製造方法における触媒層形成工程を概略的に示す平面図。
【
図24】
図23に示す半導体ウエハのXXIV−XXIV線に沿った断面図。
【
図26】
図25に示す半導体ウエハのXXVI−XXVI線に沿った断面図。
【
図27】凸部と第3マスク層とを形成した半導体ウエハの断面を示す顕微鏡写真。
【
図28】
図27に示す構造物に触媒層を形成して得られる構造の断面を示す顕微鏡写真。
【
図29】
図28に示す構造物をエッチングして得られる構造の断面を示す顕微鏡写真。
【
図30】凸部を含む凹凸構造を有していない半導体ウエハをエッチングして得られる構造物の断面を示す顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、本明細書において、「顕微鏡写真」は走査電子顕微鏡写真である。
【0009】
先ず、
図1乃至
図7を参照しながら、一実施形態に係るエッチング方法について説明する。
【0010】
この方法では、先ず、
図1に示す半導体基板1を準備する。
半導体基板1の表面の少なくとも一部は、半導体からなる。半導体は、例えば、シリコン(Si);ゲルマニウム(Ge);ヒ化ガリウム(GaAs)及び窒化ガリウム(GaN)などのIII族元素とV族元素との化合物からなる半導体;並びに炭化シリコン(SiC)から選択される。一例によれば、半導体基板1は、シリコンを含んでいる。なお、ここで使用する用語「族」は、短周期型周期表の「族」である。
【0011】
半導体基板1は、例えば、半導体ウエハである。半導体ウエハには、不純物がドープされていてもよく、トランジスタやダイオードなどの半導体素子が形成されていてもよい。また、半導体ウエハの主面は、半導体の何れの結晶面に対して平行であってもよい。
【0012】
次に、
図1に示すように、半導体基板1の表面に、第1マスク層2を形成する。
第1マスク層2は、半導体基板1の表面に後述する凸部を形成するための層である。第1マスク層2は、1以上の開口部を有している。
【0013】
第1マスク層2の材料としては、半導体基板1の表面のうち、第1マスク層2によって被覆された領域をエッチングから保護するものであれば、任意の材料を用いることができる。そのような材料としては、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、及びノボラック樹脂などの有機材料が挙げられる。
【0014】
第1マスク層2は、例えば、既存の半導体プロセスによって形成することができる。有機材料からなる第1マスク層2は、例えば、フォトリソグラフィによって形成することができる。
【0015】
次に、
図2に示すように、第1マスク層2をエッチングマスクとして半導体基板1をエッチングする。
半導体基板1をエッチングすると、半導体基板1の表面に凸部3が形成される。
【0016】
エッチングは、例えば、ドライエッチングである。ドライエッチングとしては、例えば、SF
6、CF
4、C
2F
6、C
3F
8、CClF
2、CCl
4、PCl
3、又はCBrF
3などのガスを用いたプラズマエッチングが挙げられる。
【0017】
凸部3の高さh
1は、0.001μm乃至1μmの範囲内にあることが好ましく、0.15μm乃至0.5μmの範囲内にあることがより好ましい。高さh
1が小さすぎると、後述する触媒層6を形成する際に貴金属元素が、半導体基板1のうち、後述する第3マスク層4の真下の領域へと拡散するため、半導体基板1の厚さ方向に対して交差する方向へのエッチングが進行しやすくなる。高さh
1の上限は、特に限定されないが、通常10μm以下である。
【0018】
なお、ここで、「高さh
1」は、以下の方法により得られる値である。先ず、凸部3を含む半導体基板1の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影する。倍率は、10000倍乃至100000倍の範囲内とする。次に、画像の中の凸部3について高さを測定する。具体的には、凸部3の左側の側壁の高さと凸部3の右側の側壁の高さとを測定する。凸部3の左右の側壁の高さが同じであった場合、何れか一方の側壁の高さを「高さh
1」とする。凸部3の左右の側壁の高さが異なる場合、より低い方の側壁の高さを「高さh
1」とする。
【0019】
次に、
図3に示すように、第1マスク層2を除去する。次いで、
図4に示すように、半導体基板1の表面に第3マスク層4を形成する。
第3マスク層4は、凸部3の位置に開口部を有している。例えば、開口部の寸法及び形状は、凸部3の上面の寸法及び形状と等しい。第3マスク層4は、凸部3の上面と高さが等しいか又はそれよりも高さが高い上面を有している。
【0020】
第3マスク層4は、半導体基板1をエッチングするためのエッチング液に対してエッチング耐性を有している。
第3マスク層4の材料としては、任意の材料を用いることができる。この材料としては、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、及びノボラック樹脂などの有機材料や、酸化シリコン及び窒化シリコンなどの無機材料が挙げられる。
【0021】
第3マスク層4は、例えば、既存の半導体プロセスによって形成することができる。有機材料からなる第3マスク層4は、例えば、フォトリソグラフィによって形成することができる。無機材料からなる第3マスク層4は、例えば、気相堆積法による無機材料層の成膜と、フォトリソグラフィによるマスクの形成と、エッチングによる無機材料層のパターニングとによって成形することができる。或いは、無機材料からなる第3マスク層4は、半導体基板1の表面領域の酸化又は窒化と、フォトリソグラフィによるマスク形成と、エッチングによる酸化物又は窒化物層のパターニングとによって形成することができる。
【0022】
第3マスク層4の厚さt
3は、0.001μm乃至10μmの範囲内にあることが好ましく、0.1μm乃至1μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0023】
なお、ここで「厚さt
3」は、以下の方法により得られる値である。即ち、第3マスク層4の厚さt
3は、その厚さ方向に対して平行な断面を顕微鏡にて観察した画像における、第3マスク層4の上面から第3マスク層4の下面までの距離である。
【0024】
第3マスク層4の厚さt
3と凸部3の高さh
1との比t
3/h
1は、1以上であることが好ましく1.5以上であることがより好ましい。比t
3/h
1が1未満である場合、後述する触媒層を凸部3の上面に形成するとき、凸部3の上面だけでなく、凸部3の側壁にも触媒層が形成される。触媒層のうち凸部3の側壁上に位置した部分は、半導体基板1のエッチングの過程で、半導体基板1の厚さ方向への触媒層の移動を妨げ、エッチングを進行させにくくする可能性がある。比t
3/h
1が1以上である場合、第3マスク層4は、凸部3の側壁に触媒層が付着することを抑制することができる。半導体基板1の比t
3/h
1の上限は、特に限定されないが、通常5以下である。
【0025】
第3マスク層4が有する開口部の幅(即ち、凸部3の幅)は、0.3μm乃至80μmの範囲内にあることが好ましく、1μm乃至20μmの範囲内にあることが好ましい。凸部3の幅が広すぎると、このエッチング方法を半導体基板から半導体チップへの個片化に利用した場合に、1枚の半導体基板1から製造可能な半導体チップの数が少なくなる可能性が高い。開口部の幅が狭すぎると、後述するエッチング液が半導体基板1の表面に到達しにくい。
【0026】
次に、
図5に示すように、貴金属を含む触媒層6を、凸部3の上面に形成する。触媒層6は、例えば、貴金属粒子5を含む。貴金属は、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Ru及びRhからなる群より選ばれる1以上の金属である。
【0027】
触媒層6の厚さは、0.01μm乃至0.3μmの範囲内にあることが好ましく、0.05μm乃至0.2μmの範囲内にあることがより好ましい。触媒層6が厚すぎると、後述するエッチング液7が半導体基板1に到達しにくいため、エッチングが進行しにくい。触媒層6が薄すぎると、エッチングすべき面積に対する、貴金属粒子5の表面積の合計の比が小さすぎるため、エッチングが進行しにくい。
なお、触媒層6の厚さは、その厚さ方向に対して平行な断面を顕微鏡にて観察した画像における、触媒層6の上面から凸部3の上面までの距離である。
【0028】
触媒層6は、凸部3の上面を少なくとも部分的に被覆している。触媒層6は不連続部を有していてもよい。
【0029】
貴金属粒子5の形状は、球状であることが好ましい。貴金属粒子5の形状は、例えば、棒状または板状などの他の形状であってもよい。貴金属粒子5は、それと接している半導体表面の酸化反応の触媒として働く。
【0030】
貴金属粒子5の粒径d
1は、0.001μm乃至1μmの範囲内にあることが好ましく、0.01μm乃至0.5μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0031】
なお、ここで、「粒径d
1」は、以下の方法により得られる値である。先ず、触媒層6の主面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影する。倍率は、10000倍乃至100000倍の範囲内とする。次に、画像の中から、貴金属粒子5の各々について面積を求める。次いで、各貴金属粒子5が球形であると仮定し、先の面積から貴金属粒子5の直径を求める。この直径を、貴金属粒子5の「粒径d
1」とする。
【0032】
触媒層6は、例えば、電解めっき、還元めっき、又は置換めっきによって形成することができる。触媒層6は、貴金属粒子5を含む分散液の塗布、又は、蒸着及びスパッタリング法などの気相堆積法を用いて形成してもよい。これら手法の中でも、置換めっきは、凸部3上に貴金属を直接的且つ一様に析出させることができるため特に好ましい。以下、一例として、置換めっきによる触媒層6の形成について記載する。
【0033】
置換めっきによる貴金属の析出には、例えば、テトラクロロ金(III)酸塩水溶液又は硝酸銀溶液を用いることができる。以下に、このプロセスの一例を説明する。
【0034】
置換めっき液は、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物の水溶液と弗化水素酸との混合液である。弗化水素酸は、半導体基板1の表面の自然酸化膜を除去する作用を有している。
【0035】
半導体基板1を置換めっき液中に浸漬させると、半導体基板1の表面の自然酸化膜が除去されるのに加え、凸部3の上面に、貴金属、ここでは金が析出する。これにより、触媒層6が得られる。
【0036】
置換めっき液中におけるテトラクロロ金(III)酸四水和物の濃度は、0.0001mol/L乃至0.01mol/Lの範囲内にあることが好ましい。また、置換めっき液中における弗化水素濃度は、0.1mol/L乃至6.5mol/Lの範囲内にあることが好ましい。
【0037】
なお、置換めっき液は、硫黄系錯化剤を更に含んでいてもよい。あるいは、置換めっき液は、グリシン及びクエン酸を更に含んでいてもよい。
【0038】
次に、
図6に示すように、触媒層6へエッチング液7を供給する。例えば、凸部3と第3マスク層4と触媒層6とを形成した半導体基板1をエッチング液7に浸漬させる。エッチング液7は、例えば、腐食剤と酸化剤とを含んでいる。エッチング液7は、弗化アンモニウムを更に含んでいてもよい。
【0039】
エッチング液7が半導体基板1の表面に接触すると、酸化剤がその表面のうち貴金属粒子5が近接した部分を酸化させ、腐食剤がその酸化物を溶解除去する。そのため、エッチング液7は、
図7に示すように、触媒層6の触媒としての作用のもとで、半導体基板1の表面を垂直方向(即ち、上記の厚さ方向)にエッチングする。
【0040】
腐食剤は、上記酸化物を溶解させる。この酸化物は、例えば、SiO
2である。腐食剤は、例えば、弗化水素酸である。
【0041】
エッチング液7における弗化水素濃度は、0.4mol/L乃至20mol/Lの範囲内にあることが好ましく、0.8mol/L乃至16mol/Lの範囲内にあることがより好ましく、2mol/L乃至10mol/Lの範囲内にあることが更に好ましい。弗化水素濃度が低すぎると、高いエッチングレートを達成することが難しい。弗化水素濃度が高すぎると、加工方向(例えば、半導体基板1の厚さ方向)のエッチングの制御性が低下する可能性がある。
【0042】
エッチング液7における酸化剤は、例えば、過酸化水素、硝酸、AgNO
3、KAuCl
4、HAuCl
4、K
2PtCl
6、H
2PtCl
6、Fe(NO
3)
3、Ni(NO
3)
2、Mg(NO
3)
2、Na
2S
2O
8、K
2S
2O
8、KMnO
4及びK
2Cr
2O
7から選択することができる。有害な副生成物が発生せず、半導体素子の汚染も生じないことから、酸化剤としては過酸化水素が好ましい。
【0043】
エッチング液7における過酸化水素などの酸化剤の濃度は、0.2mol/L乃至8mol/Lの範囲内にあることが好ましく、0.5mol/L乃至5mol/Lの範囲内にあることがより好ましく、0.5mol/L乃至4mol/Lの範囲内にあることが更に好ましい。酸化剤の濃度が低すぎると、高いエッチングレートを達成することが難しい。酸化剤の濃度が過剰に高すぎると、過剰なサイドエッチングを生じる可能性がある。
【0044】
なお、上述したエッチング方法によると、半導体基板1に針状残留部8が生じることがある。
【0045】
針状残留部8は、例えば、ウェットエッチング及びドライエッチングのうち少なくとも一方を用いて除去してもよい。ウェットエッチングにおけるエッチング液は、例えば、弗化水素酸と硝酸と酢酸との混合液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、及びKOH等から選択することができる。ドライエッチングとしては、例えば、SF
6、CF
4、C
2F
6、C
3F
8、CClF
2、CCl
4、PCl
3、又はCBrF
3などのガスを用いたプラズマエッチングが挙げられる。
【0046】
なお、触媒層6へのエッチング液7の供給は、第3マスク層4を取り除いてから行ってもよい。
【0047】
図1乃至
図7に示す方法では、以上のようにして、半導体基板1のエッチングを行う。
【0048】
ところで、上述した凸部を含む凹凸構造を有していない半導体基板をエッチングすると、エッチング後に残留する部分が多孔質になりやすい。以下に、これについて説明する。
【0049】
比較例に係るエッチング方法では、先ず、
図8に示すように、凸部3を有していない半導体基板1と第3マスク層4とを含む構造物を準備する。
【0050】
次に、
図9に示すように、
図8に示す構造物に上述の置換めっきを施すことで、触媒層6を半導体基板1の表面に形成する。触媒層6は、貴金属粒子5を含む。貴金属粒子5は、貴金属ナノ粒子5aと貴金属粒子5bとを含む。触媒層6を半導体基板1の表面に形成すると、半導体基板1の内部に貴金属元素が拡散する。半導体基板1のうち拡散した貴金属元素を含む部分を貴金属拡散部9とする。貴金属拡散部9は、半導体基板1の表面領域のうち、第3マスク層4の開口部に対応した部分だけでなく、第3マスク層4の真下の部分にも形成される。貴金属粒子5の一部は、第3マスク層4の真下の部分にも存在している。
【0051】
次に、
図10に示すように、
図9に示す構造物をエッチングする。エッチングの進行に伴い、貴金属粒子5と、貴金属拡散部9のうち第3マスク層4の開口部に対応した貴金属拡散部9aとは、半導体基板1の厚さ方向に移動する。一方、貴金属拡散部9のうち第3マスク層4の真下の貴金属拡散部9bは、エッチングの進行に伴って、上記厚さ方向と交差する方向へ移動する。その結果、半導体基板1の表面領域のうち第3マスク層4の真下の部分には、上記厚さ方向と交差する方向に伸びた複数の孔が形成される。
【0052】
以上のとおり、凸部を含む凹凸構造を有していない半導体基板をエッチングすると、エッチング後に残留する部分が多孔質になりやすい。
【0053】
一方、
図1乃至
図7を参照しながら説明したエッチング方法によると、エッチング後に残留する部分が多孔質になりにくい。本発明者らは、これは、以下の理由によると考えている。
【0054】
先ず、
図1乃至
図4を用いて説明した方法によって、
図11に示す構造が得られる。
図11は、凸部3と第3マスク層4とが形成された半導体基板1を示す。
【0055】
次に、
図5を用いて説明した方法によって、
図12に示す構造が得られる。
図12は、凸部3と第3マスク層4と触媒層6とが形成された半導体基板1を示す。触媒層6は貴金属粒子5を含み、貴金属粒子5は貴金属ナノ粒子5a及び貴金属粒子5bを含む。また、半導体基板1は、上述した貴金属拡散部9を備える。
【0056】
貴金属拡散部9は、半導体基板1の表面領域うち、第3マスク層4の開口部に対応した部分に形成されるが、第3マスク層4の真下の部分には形成されにくい。これは、凸部3の上面と第3マスク層4の下面とが十分に離れているからである。
【0057】
次に、
図6及び
図7を用いて説明した方法によって、
図12に示す構造物をエッチングすると、
図13に示す構造が得られる。エッチングの進行に伴い、触媒層6は半導体基板1の厚さ方向に進行する。半導体基板1のうち、第3マスク層4の真下の部分には、貴金属拡散部9がほとんど存在しないことから、この部分においてエッチングは進行しにくい。
【0058】
したがって、
図1乃至
図7を参照しながら説明したエッチング方法は、比較例に係るエッチング方法と比べて、半導体基板1には、その厚さ方向と交差する方向に伸びた複数の孔が形成されにくい。
【0059】
よって、実施形態に係るエッチング方法によると、エッチング後に残留する部分が多孔質になりにくい。
【0060】
以下、半導体基板1の表面に凸部3を含む凹凸構造を形成する方法の別の例について説明する。
【0061】
先ず、
図14に示すように、半導体基板1を準備し、半導体基板1の表面に、第2マスク層10を形成する。第2マスク層10は、半導体基板1の表面に、後述する半導体層11を形成するための層である。第2マスク層10は、1以上の開口部を有している。
【0062】
第2マスク層10の材料としては、後述する半導体層11の成膜プロセスに対する十分な耐性を有している材料であれば、任意の材料を用いることができる。
【0063】
第2マスク層10の材料は、例えば、SiN、SiO
2又はAlである。第2マスク層10の材料は、上述した第3マスク層4の材料と同じ材料であってもよい。
【0064】
次に、
図15に示すように、半導体基板1の表面のうち第2マスク層10の開口部に対応した領域に、半導体層11を形成する。半導体層11は、例えば、第2マスク層10が有する開口部の全域にわたって形成される。半導体層11は、上述した凸部3に相当する。
【0065】
半導体層11は、例えば、半導体からなる。半導体は、
図1を用いて説明した半導体であってもよい。半導体層11の材料は、半導体基板1の材料と同一であってもよく、半導体基板1をエッチングするためのエッチング条件下でエッチング可能であれば、半導体基板1の材料とは異なっていてもよい。
【0066】
半導体層11は、例えば、エピタキシャル成長によって形成することができる。一例によれば、半導体層11は、シリコンをエピタキシャル成長させることで形成することができる。
【0067】
次に、
図16に示すように、第2マスク層10を取り除いて、第3マスク層4を形成する。なお、第2マスク層10を取り除かずに、第2マスク層10を第3マスク層4として用いてもよい。
【0068】
以上、半導体基板1の表面に凸部3を含む凹凸構造を形成する方法の別の例について述べた。
【0069】
上述したエッチング方法は、様々な物品の製造に利用することができる。また、上述したエッチング方法は、凹部若しくは貫通孔の形成、又は、半導体ウエハなどの構造物の分割に利用することもできる。例えば、上述したエッチング方法は、半導体装置の製造に利用することができる。
【0070】
図17乃至
図26を参照しながら、半導体ウエハをエッチングして複数の半導体チップへと個片化することを含んだ半導体チップの製造方法の一例について説明する。
【0071】
先ず、
図17及び
図18に示す構造を準備する。この構造は、半導体ウエハ12と、第2マスク層10と、ダイシングシート14とを含んでいる。半導体ウエハ12には、その表面に、半導体素子領域13が形成されている。第2マスク層10は、半導体ウエハ12の表面のうち、半導体素子が形成された領域である半導体素子領域13を被覆しており、半導体素子を損傷から保護する役割を果たす。ダイシングシート14は、半導体ウエハ12の第2マスク層10が設けられた面の裏側に貼り付けられている。
【0072】
次に、
図19及び
図20に示すように、
図15を用いて参照しながら説明した方法により、半導体ウエハ12の表面に半導体層11を形成する。
次に、
図21及び
図22に示すように、
図16を用いて参照しながら説明した方法により、第2マスク層10を取り除いて、第3マスク層4を形成する。
次に、
図23及び
図24に示すように、
図5を参照しながら説明した方法により、半導体ウエハ12の表面に貴金属を含む触媒層6を形成する。
次に、
図23及び
図24に示す構造を、
図6及び
図7を参照しながら説明した方法によりエッチングして、
図25及び
図26に示す構造を得る。エッチングは、これによって生じる凹部の底面がダイシングシート14の表面に達するまで行う。
【0073】
以上の通り、上述した方法によると、
図25及び
図26に示すように、各々が半導体素子領域13を含む半導体チップ15を得ることができる。
【0074】
また、この方法では、半導体チップの上面の形状は、正方形や長方形に限られない。例えば、半導体チップの上面の形状は、円形又は六角形であってもよい。また、この方法では、上面形状が異なる半導体チップを同時に形成することができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例について説明する。
<実施例>
以下の方法により、半導体ウエハに、凸部と第3マスク層と触媒層とを形成し、これをエッチングした。そして、エッチング後に残留した部分が多孔質になるかを調べた。
【0076】
この方法では、半導体ウエハを個片化して半導体チップを得た。この個片化は、半導体ウエハを個片化する際に除去する体積が、半導体ウエハ全体の体積の5%となるように行った。
【0077】
具体的には、先ず、半導体ウエハの表面に第1マスク層を形成した。第1マスク層は、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィによって形成した。第1マスク層には、開口部を格子状に形成した。開口部の幅は1μmであった。
【0078】
次に、第1マスク層をエッチングマスクとして用いたドライエッチングによって、半導体ウエハに凸部を形成した。凸部の高さは0.2μmであった。
【0079】
次に、第1マスク層を除去し、凸部の位置に開口部を有する第3マスク層を半導体ウエハに形成した。開口部の寸法及び形状は、凸部の上面の寸法及び形状と等しくなるように形成した。また、第3マスク層は、その上面の高さが凸部の上面と高さが等しくなるように形成した。
図27は、凸部及び第3マスク層を形成した半導体ウエハの走査電子顕微鏡で観察した結果を示す。
【0080】
図27は、凸部と第3マスク層とを形成した半導体基板の断面を示す顕微鏡写真である。
図27に示すように、第3マスク層の上面の高さと凸部の上面の高さとは等しい。
【0081】
次に、テトラクロロ金(III)酸四水和物の水溶液と弗化水素酸を含む50mLのめっき液Aを調製した。
【0082】
次に、凸部と第3マスク層とを形成した半導体ウエハを室温で60秒間めっき液Aに浸漬させて、凸部の上面に触媒層を形成した。浸漬は、半導体ウエハを回転させずに行った。
図28に、触媒層を形成した半導体ウエハの走査電子顕微鏡で観察した結果を示す。
図28は、
図27に示す構造物に触媒層を形成して得られる構造の断面を示す顕微鏡写真である。
【0083】
次に、27.5mLの弗化水素酸と8.6mLの過酸化水素と63.9mLの水とを混合して100mlのエッチング液を調製した。このエッチング液に、凸部と第3マスク層と触媒層とを形成した半導体ウエハを25℃で30分間浸漬させて、これをエッチングした。
図29に、エッチングした半導体ウエハを走査電子顕微鏡で観察した結果を示す。
【0084】
図29は、
図28に示す構造物をエッチングして得られる構造物の断面を示す顕微鏡写真である。
図29に示すように、実施例に係るエッチング方法によると、エッチング後に残留する部分は多孔質にならなかった。
【0085】
<比較例>
半導体ウエハに凸部を形成しなかったこと以外は、実施例において説明したエッチング方法と同様の方法により、第3マスク層と触媒層とを半導体基板に形成し、これをエッチングした。
【0086】
図30は、凸部を含む凹凸構造を有していない半導体ウエハをエッチングして得られる構造物の断面を示す顕微鏡写真である。
図30に示すように、半導体ウエハの領域のうち、エッチング後に残留する部分は多孔質であった。
【0087】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
以下に、原出願の当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
半導体基板の表面に、凸部を含んだ凹凸構造を形成することと、
貴金属を含む触媒層を、前記表面のうち前記凸部の上面に対して選択的に形成することと、
前記触媒層へエッチング液を供給して、前記貴金属の触媒としての作用のもとで前記半導体基板をエッチングすることと
を含んだエッチング方法。
[2]
前記凹凸構造の形成は、
前記表面に、開口部を有する第1マスク層を形成することと、
前記第1マスク層をエッチングマスクとして用いて、前記表面をエッチングすることと、
前記第1マスク層を除去することと
を含んだ項1に記載のエッチング方法。
[3]
前記凹凸構造の形成は、
前記表面に、開口部を有する第2マスク層を形成することと、
前記表面上であって前記開口部の位置に、半導体層を形成することと
を含んだ項1に記載のエッチング方法。
[4]
前記半導体層をエピタキシャル成長法によって形成する項3に記載のエッチング方法。
[5]
前記触媒層の形成は、前記凸部の位置で開口し且つ前記凸部の上面と高さが等しいか又はそれよりも高さが高い上面を有する第3マスク層の存在下で行う項1乃至4の何れか1項に記載のエッチング方法。
[6]
前記触媒層への前記エッチング液の供給は、前記第3マスク層を残したまま行う項5に記載のエッチング方法。
[7]
前記第3マスク層は、前記凸部と比較して、前記エッチング液に対するエッチング耐性がより高い項6に記載のエッチング方法。
[8]
前記エッチング液は腐食剤と酸化剤とを含む項1乃至7の何れか1項に記載のエッチング方法。
[9]
前記腐食剤は、弗化水素酸を含み、
前記酸化剤は、過酸化水素、硝酸、AgNO
3、KAuCl
4、HAuCl
4、K
2PtCl
6、H
2PtCl
6、Fe(NO
3)
3、Ni(NO
3)
2、Mg(NO
3)
2、Na
2S
2O
8、K
2S
2O
8、KMnO
4、及びK
2Cr
2O
7のうち少なくとも1つを含んだ項8に記載のエッチング方法。
[10]
前記凸部の高さは、0.15μm乃至0.5μmの範囲内にある項1乃至9の何れか1項に記載のエッチング方法。
[11]
前記貴金属はAuである項1乃至10の何れか1項に記載のエッチング方法。
[12]
半導体ウエハを項1乃至11の何れか1項に記載のエッチング方法によりエッチングして半導体チップへと個片化することを含み、前記表面は前記半導体ウエハの表面である半導体チップの製造方法。
[13]
項1乃至12の何れか1項に記載のエッチング方法により、前記表面をエッチングすることを含んだ物品の製造方法。