【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成によって上記課題を解決したセメント系固化材スラリーとその製造方法に関する。
〔1〕
ポルトランドセメントクリンカー30〜86質量%、高炉スラグ10〜50質量%、および石膏(無水石膏換算)4〜20質量%を含むセメント系固化材の水固化材比50%〜300%のスラリーにおいて、練り上がり温度30℃以上
で、開き目が2mmの網篩を通過させたときの該網篩上に残る塊状物がスラリー全体の3.5質量%以下であり、または/および、開き目が1mmの網篩を通過させたときの該網篩上に残る塊状物がスラリー全体の5.0質量%以下であることを特徴とするセメント系固化材スラリー。
〔2〕セメント系固化材が、少量混合成分として石灰石または/およびフライアッシュを含有する上記[1]に記載するセメント系固化材スラリー。
〔3〕
ポルトランドセメントクリンカー30〜86質量%、高炉スラグ10〜50質量%、および石膏(無水石膏換算)4〜20質量%を含むセメント系固化材に練り混ぜ水を加えて
水固化材比50%〜300%のスラリーにする製造方法において、温度30〜40℃の上記セメント系固化材および練り混ぜ水を用い、該セメント系固化材の材料に応じて水固化材比および混練方法の何れか又は両方を調整することによって、練り上がり温度30℃以上で、練り混ぜ後のスラリーを開き目が2mmの網篩を通過させたときの該網篩上に残る塊状物の割合がスラリー全体の3.5質量%以下であり、または/および、スラリーを開き目が1mmの網篩を通過させたときの該網篩上に残る塊状物の割合がスラリー全体の5.0質量%以下であるスラリーにすることを特徴とするセメント系固化材スラリーの製造方法。
〔4〕練り混ぜ水に分散剤を添加して用いる上記[3]に記載するセメント系固化材スラリーの製造方法。
【0012】
〔セメント系固化材スラリー〕
本発明のセメント系固化材スラリーは、
ポルトランドセメントクリンカー30〜86質量%、高炉スラグ10〜50質量%、石膏(無水石膏換算)4〜20質量%を含むセメント系固化材の水固化材比50%〜300%のスラリーにおいて、練り上がり温度30℃以上で、以下の(イ)または/および(ロ)の特徴を有るスラリーである。
(イ)開き目が2mmの網篩を通過させたときの該網篩上に残る塊状物がスラリー全体の3.5質量%以下である。
(ロ)開き目が1mmの網篩を通過させたときの該網篩上に残る塊状物がスラリー全体の5.0質量%以下である。
【0013】
セメント系固化材スラリーにおいて、後述の実施例に示すように、練り上がり温度30℃以上において、(A)開き目が2mmの網篩を通過させたときの該網篩上に残る塊状物がスラリー全体の3.5質量%より多いと、あるいは、(B)開き目が1mmの網篩を通過させたときの該網篩上に残る塊状物がスラリー全体の5.0質量%より多いと、流下試験のスラリー流下時間が長くなり、スラリーの流動性が低下する。一方、該スラリーが上記(イ)または上記(ロ)の何れかの状態、あるいは上記(イ)と上記(ロ)の両方の状態であれば、良好な流動性を有し、上記(イ)と上記(ロ)の両方の状態であればさらに流動性が良い。
【0014】
具体的には、セメント系固化材スラリーの練り上がり温度30℃以上において、セメント系固化材スラリーを、開き目2mmの網篩を通過させたときに、該網篩上に残る塊状物の質量がスラリー全体質量の3.5質量%以下であるときは、練り上がり直後および練り上がりから15分経過後の何れもスラリーの粘性が低く、良好な流動性を有する。
【0015】
一方、該網篩上に残る塊状物の割合が3.5質量%を超えて5.0質量%以下の範囲では、練り上がり直後のスラリーの流動性は良好であるが、練り上がりから15分経過後は流動性が低下する。さらに塊状物の割合が5.0質量%を超えると、練り上がり直後からスラリーの流動性が不良である。
【0016】
また、セメント系固化材スラリーを、開き目1mmの網篩を通過させたときに、該網篩上に残る塊状物の割合がスラリー全体質量の5.0質量%以下であるときは、練り上がり直後および練り上がりから15分経過後の何れもスラリーの粘性が低く、良好な流動性を有する。一方、網篩上に残る塊状物の割合が5.0質量%を超えて6.0質量%以下の範囲では、練り上がり直後のスラリーの流動性は良好であるが、練り上がりから15分経過後はスラリーの流動性が低下する。さらにさらに塊状物の割合が6.0質量%を超えると、練り上がり直後からスラリーの流動性が不良である。
【0017】
なお、上記塊状物の残留割合の測定に用いる網篩は、規格(JIS Z 8801-1:試験用ふるい 第1部金属製網ふるい)に規定される、公称目開き1mmおよび2mmのものである。材質は、ステンレス製や真鍮製のものが好ましいが、これに限定はされない。
【0018】
〔セメント系固化材〕
本発明のセメント系固化材の構成材料は、ポルトランドセメント又は混合セメント、高炉スラグ微粉末、石膏の混合物、または、ポルトランドセメントクリンカー、高炉スラグ、石膏の混合粉砕物からなる。また、セメント系固化材には、少量混合成分としてフライアッシュ、改質石炭灰、石灰石微粉末、シリカフューム、石粉、消石灰などを用いることができる。これらの少量混合成分は、セメント系固化材を混合または混合粉砕にて製造する際に添加することができる。
【0019】
本発明のセメント系固化材
は、必須成分のポルトランドセメントクリンカー、石膏、および高炉スラグの合計量を100質量%としたとき、ポルトランドセメントクリンカーが30〜86質量%、高炉スラグが10〜50質量%、石膏(無水石膏換算)が4〜20質量%
であり、好ましくは、ポルトランドセメントクリンカーが35〜70質量%、高炉スラグが12〜45質量%、石膏(無水石膏換算)が6〜15質量%である。なお、高炉セメントを用いるときは、高炉スラグ量は上記範囲より少なくて良い。
【0020】
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、または高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメントなどの混合セメントを用いることができる。混合粉砕ではこれらのクリンカーが用いられる。
【0021】
石膏は、無水石膏、二水石膏、半水石膏のいずれかまたは両方が用いられる。また、石膏の産出源としては、天然無水石膏、排煙脱硫石膏、フッ酸石膏などが用いられる。フライアッシュは規格(JIS A 6201:コンクリート用フライアッシュのII種)に適合するものが用いられる。
【0022】
セメント系固化材のブレーン比表面積は、2500〜6000cm
2/gであることが好ましく、さらに3000〜5000cm
2/gであることが好ましい。ブレーン比表面積が2500cm
2/g以下の場合には、スラリーにした場合にブリーディングによる固液分離が生じ改良体強度のばらつきや強度不足が生じる原因となる。ブレーン比表面積が6000cm
2/g以上の場合には、水固化材比が100%より低い領域で練り混ぜた場合に流動性が低下する。セメント系固化材に添加される高炉スラグ微粉末は、ブレーン比表面積が3000〜6000cm
2/gのものが好ましい。混合粉砕をする場合には、未粉砕の高炉スラグを用いることができる。
【0023】
本発明のセメント系固化材は、セメント、高炉スラグ微粉末、石膏、および少量成分を混合して得ることができる。混合装置としてはV型混合機、プローシアミキサー、ヘンシェル混合機、リボン型混合機など一般の混合装置を用いることができる。また、混合粉砕する場合には、セメントまたはセメントクリンカー、高炉スラグ微粉末または高炉スラグ未粉砕物、石膏および少量混合成分を粉砕機に投入し粉砕することにより、セメント系固化材を得ることができる。粉砕機としては、ボールミル、縦型ミル、振動ミルなどを用いることができる。
【0024】
本発明のセメント系固化材には、さらにセメント系固化材スラリーを練り混ぜるときに発生する粉塵発生を低減するために、ジエチレングルコール、有機短繊維を混合時に少量添加しても良い。有機短繊維としては、パルプなどの天然繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維などを用いることができる。また、この有機繊維はセメント系固化材スラリーの流動性を阻害しない観点から、繊維長は1mm〜6mmのものが好ましく、添加量はセメント系固化材に対して0.01質量%〜0.2質量%が好ましい。
【0025】
本発明のセメント系固化材は、早期硬化性が要求される場合には、アルミナセメント、カルシウムアルミネート系速硬材などを添加することができる。具体的には、例えば、速硬材は、C
12A
7などのカルシウムアルミネート粉砕物と無水石膏の混合物、超速硬セメント、アルミナセメントなどを用いることができる。カルシウムアルミネート粉砕物と無水石膏の混合物からなる速硬材は、カルシウムアルミネート粉砕物と無水石膏が概ね40:60〜60:40質量比で含まれている。市販品としては、例えば三菱マテリアル社製のコーカエーススーパー(商品名)などを用いることできる。
【0026】
〔製造方法〕
本発明のセメント系固化材スラリーは、上記セメント系固化材に練り混ぜ水を加えてスラリーにすることによって製造される。この製造方法において、温度30〜40℃のセメント系固化材および練り混ぜ水を用い、セメント系固化材の材料に応じて水固化材比および混練方法の何れか又は両方を、所定開き目の網篩を通過させたときの該網篩に残る塊状物の割合が上記(イ)または上記(ロ)の範囲になるように選定することによって製造することができる。
【0027】
セメント系固化材スラリーの製造には、現場においては容量が50〜1000Lのバッチ式の撹拌混合ミキサー、連続練りミキサー(プツマイスター社製)などを用いることができる。また、ラボスターラ、ハンドミキサなどを用いてスラリーを製造してもよい。
【0028】
セメント系固化材スラリーの製造時に分散剤を添加することができる。この分散剤は、スラリー中におけるセメント系固化材の粒子の分散性を高め、これによってスラリーの流動性を改善することができる。分散剤の種類としては、ポリカルボン酸系、リグニンスルフォン酸系、ナフタレンスルフォン酸系、メラミンスルフォン酸系があげられる。セメント系固化材に対する添加量は0.01〜1.0質量%の範囲であり、練り混ぜ水に混ぜて使用すればよい。