特許第6970410号(P6970410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6970410アンモニア含有水処理材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6970410
(24)【登録日】2021年11月2日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】アンモニア含有水処理材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 21/16 20060101AFI20211111BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20211111BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20211111BHJP
   C02F 1/74 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B01J21/16 M
   B01J37/00 B
   B01J37/08
   C02F1/74 B
   C02F1/74 101
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-63811(P2018-63811)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-171311(P2019-171311A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】三宅 彩香
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 昌平
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 章
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−164671(JP,A)
【文献】 特開昭52−027077(JP,A)
【文献】 特開昭52−056093(JP,A)
【文献】 特開平01−047451(JP,A)
【文献】 特開平03−077691(JP,A)
【文献】 特開2011−183394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C01B 33/20 − 39/54
C02F 1/00
C02F 1/28
C02F 1/70 − 1/78
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−アルミナ又はθ−アルミナから選択されるアルミナ及びアルミノシリケートを含み、化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が0.5〜1.5(モル比)である、アンモニア含有水処理材。
【請求項2】
前記アンモニア含有水処理材が、30質量〜70質量%の前記アルミナを含む、請求項1に記載のアンモニア含有水処理材。
【請求項3】
前記化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が0.8〜1.2(モル比)である、請求項1又は2に記載のアンモニア含有水処理材。
【請求項4】
化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が1.2(モル比)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンモニア含有水処理材。
【請求項5】
前記アルミナがγ−アルミナである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンモニア含有水処理材。
【請求項6】
シリカを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアンモニア含有水処理材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のアンモニア含有水処理材の製造方法であって、
γ−アルミナ又はθアルミナを与える化合物と、ケイ酸塩水和物を混練して混練物を得る工程と、
前記混練物を成形した後、該成形物を900℃〜1200℃の温度で焼成する工程を含み、
前記混練物の固形分におけるγ−アルミナ又はθアルミナを与える化合物の含有量の総和が30質量%〜70質量%である、前記製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のアンモニア含有水処理材の製造方法であって、
γ−アルミナ又はθ−アルミナを与える化合物と、蛙目粘土を混練して混練物を得る工程と、
前記混練物を成形した後、該成形物を900℃〜1200℃の温度で焼成する工程を含み、
前記混練物の固形分におけるγ−アルミナ又はθアルミナを与える化合物の含有量の総和が30質量%〜70質量%である、
前記製造方法。
【請求項9】
前記γ−アルミナ又はθ−アルミナを与える化合物としてγ−アルミナを用いる、請求項7又は8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア含有水処理材及びその製造方法に関する。具体的に、本発明は、触媒湿式酸化法に用いることができる水処理材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、排水中に存在するアンモニアや有機化合物を除去する手法として、低濃度の場合では硝化脱窒法などの生物処理が、高濃度の場合では化学処理が用いられている。
化学処理法の一つである触媒湿式酸化法は、高温高圧条件下で触媒と接触させることにより、連続的に大量の排水を処理することが可能であり、半導体洗浄工程で発生するアンモニア含有排水の処理などに用いられている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
触媒湿式酸化法に用いられる触媒担体としては、ハニカム状や球状、ラッシヒリング状などに成型された触媒担体に活性成分(金属等)を担持したものが用いられる。そのため、高温高圧条件下で、高濃度のアンモニア含有排水と連続的に接触するため、高いアルカリ耐久性(比表面積が低下しないこと)が要求される。
本発明者らは、高濃度のアンモニアを含む排水と接触しても比表面積の低下及び活性成分の脱落を抑制することができると共に成形が容易である触媒担体を提供することを目的として、γ−アルミナと、アルミノシリケート及び/又はカルシウムアルミノシリケートとを含み、前記γ−アルミナの含有量が10質量%〜60質量%である触媒担体が上記の目的を達成できることを見出した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−140864号公報
【特許文献2】特開2003−13077号公報
【特許文献3】特開2017−164671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、先行技術に使用される触媒湿式酸化法は、いずれも、ルテニウム、パラジウム、白金などの活性成分を触媒として使用している。このような、活性成分は長期間使用されていると触媒担体から脱落して流出し処理能力の低下が懸念される。
さらに、これらの活性成分は高価であるため、アンモニア含有水の処理費用を削減するためにもこれらの活性成分の使用量を抑えることも重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、さらに研究を進めた結果、特定のアルミナとアルミノシリケートを含み、化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が0.5〜1.5(モル比)である組成物が、それ自身で高いアンモニア分解能を有し、しかも、高濃度のアンモニアを含む排水と接触しても比表面積の低下を抑制できることを見出した。
【0007】
具体的に本発明は以下のとおりである。
(1)γ−アルミナ又はθ−アルミナから選択されるアルミナ及びアルミノシリケートを含み、化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が0.5〜1.5(モル比)である、アンモニア含有水処理材、
(2)記アンモニア含有水処理材が、30質量〜70質量%の前記アルミナを含む、(1)のアンモニア含有水処理材、
(3)前記化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が0.8〜1.2(モル比)である、(1)又は(2)のアンモニア含有水処理材、
(4)化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が1.2(モル比)である、(1)〜(3)のいずれかのアンモニア含有水処理材、
(5)前記アルミナがγ−アルミナである、(1)〜(4)いずれかのアンモニア含有水処理材、
(6)シリカを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアンモニア含有水処理材。
(7)(1)〜(6)のいずれかのアンモニア含有水処理材の製造方法であって、
γ−アルミナ又はθアルミナを与える化合物と、ケイ酸塩水和物を混練して混練物を得る工程と、
前記混練物を成形した後、該成形物を900℃〜1200℃の温度で焼成する工程を含み、
前記混練物の固形分におけるγ−アルミナ又はθアルミナを与える化合物の含有量の総和が30質量%〜70質量%である、
前記製造方法、
(8)(1)〜(6)のいずれかのアンモニア含有水処理材の製造方法であって、
γ−アルミナ又はθ−アルミナを与える化合物と、蛙目粘土を混練して混練物を得る工程と、
前記混練物を成形した後、該成形物を900℃〜1200℃の温度で焼成する工程を含み、
前記混練物の固形分におけるγ−アルミナ又はθアルミナを与える化合物の含有量の総和が30質量%〜70質量%である、
前記製造方法、
(9)前記γ−アルミナ又はθ−アルミナを与える化合物としてγ−アルミナを用いる、(7)又は(8)の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアンモニア含有水処理剤は、それ自身でアンモニア分解能を有し、また、高濃度のアンモニアを含む排水と接触しても比表面積の低下が抑制され、高いアルカリ耐久性を有する。そのため、触媒湿式酸化法でアンモニア含有水を処理するための処理剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアンモニア含有水処理材は、γ−アルミナ又はθアルミナから選択されるアルミナ及びアルミノシリケートを含み、化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が0.5〜1.5(モル比)である。
【0010】
γ−アルミナ又はθ−アルミナから選択されるアルミナは、本発明のアンモニア含有水処理材の比表面積を高めるのに必要な成分である。本発明のアンモニア含有水処理材の高い比表面積を確保できるため、また、高いアンモニア分解能が得られることから、γ−アルミナを使用することが好ましい。
【0011】
アンモニア含有水処理材の前記アルミナの含有量が少なすぎると、当該処理材の比表面積を十分に高めることができない。一方、当該処理剤中の前記アルミナの含有量が多すぎると、当該処理剤の強度が低下する。これらの理由から、本発明のアンモニア含有水処理材におけるアルミナの含有量は、30質量%〜70質量%、好ましくは、35質量%〜65質量%、より好ましくは38質量%〜62質量%、最も好ましくは40質量%〜60質量%である。
【0012】
アルミノシリケートは、Al(アルミナ)とSiO(シリカ)とからなる複合酸化物(二元酸化物)である。アルミノシリケートとしては、特に限定されないが、例えば、Al・2SiO、Al・4SiOなどが挙げられる。アンモニア含有水処理材に含有されるアルミノシリケートは、単一の種類であっても、2種以上の混合物であってもよい。これらは、γ−アルミナの焼結促進及びアンモニア水による水和抑制に必要な成分である
【0013】
本発明のアンモニア含有水処理材は、さらにシリカを含み得る。シリカは、二酸化ケイ素(SiO)であり、原料であるケイ酸塩水和物中に含まれている石英、焼成により生成するクリストバライト、ムライトやシリカとアルカリ成分と反応したガラス状のシリカなどが挙げられる。これらのシリカは、アンモニア含有水処理材中に1種以上に含有される。
【0014】
本発明のアンモニア含有水処理材におけるアルミノシリケートの含有量は、特に限定されず、アルミナの量に応じて適宜調整すればよい。例えば、アンモニア含有水処理材中のアルミナの含有量を30質量%〜70質量%にする場合、アンモニア含有水処理材中のアルミノシリケートの含有量(シリカを含む場合はシリカとの合計量)を69.5質量%〜28質量%にすればよい。
また、本発明のアンモニア含有水処理材は、CaO、MgO、NaO、KO、Feを合計で0.5質量%〜2.0質量%、好ましくは0.7質量%〜1.8質量%で含みうる。
【0015】
本発明のアンモニア含有水処理材は、本発明の効果を阻害しない範囲において、当該技術分野で一般に使用される各種成分(例えば、上記成分以外の金属酸化物及び複合金属酸化物)を含むことができる。
【0016】
本発明のアンモニア含有水処理材において、その化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)が0.5〜1.5(モル比)である。理論に拘束されないが、この化学組成比が0.5〜1.5の範囲内であると、高いアンモニア分解能を有し、高濃度のアンモニアを含む排水と接触しても比表面積の低下を抑制できる。本発明のアンモニア含有水処理材における化学組成比は、好ましくは、0.8〜1.2で、さらに好ましくは1.2である。
【0017】
本発明のアンモニア含有水処理材は、当該技術分野において公知の様々な形状とすることができる。本発明のアンモニア含有水処理材の形状としては、特に限定されないが、球状、ペレット状、円柱状、直方体状、筒状、破砕片状、ハニカム状、粉末状などが挙げられる。
【0018】
また、本発明のアンモニア含有水処理材は、アンモニア分解能を有するが、処理水の成分や性状などに応じて、活性成分を担持させてもよい。担持させる活性成分としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。活性成分の例としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、インジウム、イリジウム、金、銀、コバルト、銅、ニッケル、タングステン、及びこれらの金属の水不溶性又は水難溶性の化合物が挙げられる。具体的には、一酸化コバルト、一酸化ニッケル、二酸化ルテニウム、三酸化二ロジウム、一酸化パラジウム、二酸化イリジウム、酸化第二銅、二酸化タングステンなどの酸化物;二塩化ルテニウム、二塩化白金などの塩化物;硫化ルテニウム、硫化ロジウムなどの硫化物などを用いることができる。
活性成分の担持量としては、特に限定されないが、コスト面を考慮すると、一般に、触媒担体の重量の0.01質量%〜25質量%である。
【0019】
本発明のアンモニア含有水処理材は、γ−アルミナ又はθアルミナを与える化合物と、ケイ酸塩水和物を混練して混練物を得る工程と、前記混練物を成形した後、該成形物を900℃〜1200℃の温度で焼成する工程を含む。
【0020】
本明細書において「γ−アルミナを与える化合物」とは、γ−アルミナ、又は焼成によってγ−アルミナを生成する化合物のことを意味する。焼成によってγ−アルミナを生成する化合物としては、特に限定されないが、ギブサイト、ダイアスポア、ベーマイトなどの水酸化物、硝酸アルミニウムなどの硝酸塩、塩化アルミニウムなどの塩化物などが挙げられる。γ−アルミナを与える化合物は、単一又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、「θ−アルミナを与える化合物」とは、θ−アルミナ、又は焼成によってθ−アルミナを生成する化合物のことを意味する。焼成によってθ−アルミナを生成する化合物としては、特に限定されないが、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0021】
本発明のアンモニア含有水処理材を製造するための材料として、ケイ酸塩水和物を使用する。このケイ酸塩水和物が焼成されて、本発明のアンモニア含有水処理材にアルミノシリケートを提供する。ケイ酸塩水和物としては、特に限定されないが、カオリン(カオリナイト)、ハロイサイト、パイロフィライト、イモゴライト、アロフェンなどが挙げられる。なお、これらのケイ酸塩水和物を含有する蛙目粘土、木節粘土、信楽土などの陶土を原料として用いてもよい。これらは、単一又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、高いアンモニア分解能を示すことから、蛙目粘土を用いることが好ましい。
【0022】
上記の原料を混練して混練物を得る場合、混練性及びその後の成形性を確保する観点から、水、1,3−ブタンジオールなどの溶剤を混練物に配合してもよい。混練方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の混練機などを用いて行なえばよい。
【0023】
原料の配合割合としては、アンモニア含有水処理材中のγ−アルミナの含有量を30質量%〜70質量%、好ましくは、35質量%〜65質量%、より好ましくは40質量%〜60質量%とするために、混練物の固形分中のγ−アルミナ又はθ−アルミナを与える化合物の含有量を30質量%〜70質量%、好ましくは、35質量%〜65質量%、より好ましくは40質量%〜60質量%に設定する。
【0024】
一方、混練物の固形分中のケイ酸塩水和物の含有量は、一般に30質量%〜70質量%、好ましくは35質量%〜65質量%、より好ましくは、40質量%〜60質量%である。なお、ケイ酸塩水和物が、蛙目粘土などの陶土を用いる場合も、混練物の固形分中の含有量は上記規定と同様である。
【0025】
混練物の成形方法としては、特に限定されず、作製する触媒担体の形状に応じて適切な方法を選択すればよい。例えば、混練物を球状の成形体に成形する場合、造粒機などを用いて成形すればよい。また、混練物を円柱状、直方体状、筒状、ハニカム状などの成形体に成形する場合、押出成形機などを用いて成形すればよい。
【0026】
混練物を成形した後、成形体を直ぐに焼成してもよいが、クラックなどの発生を防止する観点から、必要に応じて焼成前に乾燥を行ってもよい。
【0027】
成形物の焼成は、900℃〜1200℃の温度で行う。このような温度範囲で焼成を行うことにより、強度を高めつつ、γ−アルミナ又はθ−アルミナの比表面積を維持したアンモニア含有水処理材を得ることが可能になる。焼成温度が900℃未満であると、アンモニア含有水処理材の強度が低下し、形状が崩れ易い。一方、焼成温度が1200℃を超えると、γ−アルミナが相転移してコランダム構造のα−アルミナとなり、アルミナの焼結が進行するため、アンモニア含有水処理材の比表面積が低下してしまう。
焼成方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の焼成装置を用いて行うことができる。焼成装置としては、バッチ炉、トンネル窯、ロータリーキルンなどを用いることができる。
【0028】
また、本発明のアンモニア含有水処理材は、高濃度のアンモニアを含む排水と接触しても比表面積の低下が起こり難く、一般に、触媒担体と28%のアンモニア水とを固液比(質量比)が1:10となるように混合して、150℃で12時間処理した後の比表面積の変化率が0%以上である。つまり、前記条件下では比表面積が低くならない。従って、高い比表面積を維持できるため、高いアンモニア分解能を維持できると考えられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0030】
〈試験1〉
以下の実施例及び比較例では、次の原料を用いた。
(1)原料
・アルミナ:γ−アルミナC20(日本軽金属株式会社製)
γ−アルミナ(水澤化学工業株式会社製)
θ−アルミナC40(日本軽金属株式会社製)
水酸化アルミニウム(関東化学株式会社製)
・ケイ酸塩水和物:蛙目粘土(河鈴窯業合資会社製)
笠岡粘土(カサネン工業株式会社製)
カオリン(ハットリ株式会社製)
関西ベントナイト(カサネン工業株式会社製)
・トバモライト(酸化カルシウムと珪石と水とを混合したスラリーを180℃、10,000hPaの条件下で10時間水和反応を行った後、濾過して乾燥させることによって製造した。)
【0031】
各ケイ酸塩水和物含有粘土の化学組成を表1に示す。化学組成はRIGAKU社製 走査型蛍光X線分析装置により酸化物換算で測定し後、「JIS R 5202:セメントの化学分析方法」に準じて測定した強熱減量により補正した。
【0032】
【表1】
【0033】
(2)製造方法
上記原料(アルミナは粉砕品を使用)を所定量計量して、乳鉢中で混合したものに、水を加えて混練し、直径約5mmとなるように造粒した。これを150℃で12時間乾燥し、10℃/分の速度で1000℃〜1200℃まで昇温した炉内で0〜10時間の焼成を行ってアンモニア含有水処理材を得た。
【0034】
(3)評価
アンモニア分解試験は、三愛科学株式会社製 高圧分解反応容器100mL中で、アンモニア含有水処理材2g(直径約5mm)及び関東科学株式会社製 アンモニア水(特級、濃度28%)20gを混合(固液比1:10)して密閉した後、150℃に設定した乾燥機に投入して、アンモニア分解試験を行った。アンモニア分解試験条件は、150℃で12時間とし、アンモニア分解試験終了後、反応容器を乾燥機から取り出して20℃になるまで放冷した。冷却後、反応容器から反応液とアンモニア含有水処理材を取り出した。
反応液のアンモニア濃度は、Vernier社製のLABQUEST2にアンモニアイオン選択電極を接続したイオンメーターにより測定して、アンモニア分解率を評価した。アンモニア分解率は、(アンモニア分解試験前濃度−アンモニア分解試験後濃度)/アンモニア分解試験前濃度×100(%)で算出した。
【0035】
アルカリ耐久性試験は、三愛科学株式会社製 高圧分解反応容器100mL中で、アンモニア含有水処理材2g及び関東科学株式会社製 アンモニア水(特級、濃度28%)20gを混合(固液比1:10)して密閉した後、150℃に設定した乾燥機に投入してエージングを行った。エージング条件は150℃で12時間とし、エージング終了後は、反応容器を取り出して20℃になるまで放冷した。冷却後、反応容器から試料を取り出し、蒸留水で洗浄を行い、105℃で乾燥を行ったものを各種試験に供した。
【0036】
比表面積は、日本ベル社製 BELSORPmaxを用いて窒素吸着BET法によって測定した。
鉱物組成は、リガク社製 Ultima III X線回折装置を用いて測定した。
化学組成比(モル比)は、化学組成をRIGAKU社製 走査型蛍光X線分析装置により測定し、(CaO+MgO)/(NaO+KO)を算出した。
原料配合比、焼成条件及び化学組成比(モル比)を表2に示す。また、各評価結果を表3に示す。
なお、No.15は、原料製造時の焼成工程で、比表面積が1m/g未満であったため、アルカリ耐久性試験後の比表面積は測定しなかった。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
以上より、化学組成比が0.5〜1.5の範囲にある水処理材が、高いアンモニア分解能を有し、かつ、高濃度のアンモニアを含む排水と接触しても比表面積の低下が起こっていない。
【0040】
〈試験2〉
次にアルカリ耐久性試験を行った。
(1)原料
・アルミナ:γ−アルミナC20(日本軽金属株式会社製)
・ケイ酸塩水和物:蛙目粘土(河鈴窯業合資会社製)
ここでの蛙目粘土の化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)は1.2である。
(2)製造方法
γ−アルミナ C20(アルミナは粉砕品を使用)が40質量%、蛙目粘土が60質量%となる量を計量して、乳鉢中で混合したものに、水を加えて混練し、ラッシヒリング状(高さ8.7mm、直径8.9mm)に成型した。これを150℃で12時間乾燥し、1000℃で10時間焼成を行ってアンモニア含有水処理材を得た。
【0041】
(3)評価
アルカリ耐久性試験は、三愛科学株式会社製 高圧分解反応容器100mL中で、アンモニア含有水処理材2g及び関東科学株式会社製 アンモニア水(特級、濃度28%)20gを混合(固液比1:10)して密閉した後、100〜230℃に設定した乾燥機に投入してエージングを行った。エージング条件は100〜230℃で10〜12時間とし、エージング終了後は、反応容器を取り出して20℃になるまで放冷した。冷却後、反応容器から試料を取り出し、蒸留水で洗浄を行い、105℃で乾燥を行ったものを各種試験に供した。
結果を以下の表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
エージング温度を上昇(150〜230℃)させても、アルミナの鉱物組成及び比表面積はほとんど変わらず、優れた耐アルカリ性を示すことが判明した。
【0044】
〈試験3〉
次に耐熱性試験を行った。
(1)原料
・アルミナ:γ−アルミナC20(日本軽金属株式会社製)
γ−アルミナ(水澤化学工業株式会社製)
・ケイ酸塩水和物:蛙目粘土(河鈴窯業合資会社製)
カオリン(ハットリ株式会社製)
ここでの蛙目粘土及びカオリンの化学組成比(CaO+MgO)/(NaO+KO)は、それぞれ1.2及び0.2である。
【0045】
(2)製造方法
アルミナ(アルミナは粉砕品を使用)が40質量%、ケイ酸塩水和物が60質量%となる量を計量して、乳鉢中で混合したものに、水を加えて混練し、ラシヒリング状(高さ8.7mm、直径8.9mm)に成型した。これを150℃で12時間乾燥し、1000℃で10時間焼成を行ってアンモニア含有水処理材を得た。
【0046】
(3)評価
熱耐久性試験は、電気炉を用いてアンモニア含有水処理材を1000℃で0〜48時間焼成し、20℃になるまで放冷したものを各種試験に供した。
形状は、電子ノギスを用いて測定した。測定は10個のアンモニア含有水処理材を用いて実施し、平均値を評価結果とした。
圧環強度は、JIS Z 2507:焼結軸受−圧環強さ試験方法を参考にし、イマダ社製 デジタルフォースゲージを用いて測定した。測定は10個のアンモニア含有水処理材を用いて実施し、平均値を評価結果とした。
結果を以下の表5に示す。
【0047】
【表5】
本発明例のアンモニア含有水処理材を1000℃で0〜48時間焼成しても、形状、圧環強度を保持する。一方、比較例の触媒担体は、製造時の1000℃焼成で熱収縮がおき、焼成時間を長くすることで、圧環強度が低下することが明らかとなった。